説明

超音波センサ装置

【課題】路面からの跳ねた泥や雪などの飛散物が装置に付着しないような超音波センサ装置を提供する。
【解決手段】超音波センサ装置1はブラケット47を有し、ブラケット47の下面には超音波センサ21が取り付けられている。
また、ブラケット47には前部カバー43a、側部カバー43b、43c、後部カバー43dが設けられている。
超音波センサ21の周囲には整流部材45が設けられている。
整流部材45を設けることにより、走行風49aが整流部材45の形状に沿って整流され、巻き返しを起すことなく流れる。
従って、路面からの飛散物(泥、雪)51は走行風49aによって進路を妨げられ、超音波センサ21に付着することはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラック等の大型車両においては、近年、高輝度のヘッドランプを採用することが多い。
高輝度ヘッドランプは安全性の寄与度が高い反面、対向車両にとってはより眩感を与えることになるため、超音波センサによって路面に対する車両の傾斜角度を算出し、ヘッドランプの光軸を自動調整する装置が開発されている。
【0003】
かかる自動調整装置は、路面に超音波を発信し、受信するまでの時差から傾斜角度を算出し、傾斜角度を基に、制御装置がヘッドランプの光軸を制御している。
【0004】
一方、このような超音波を用いた自動調整装置は、路面からの泥水が装置に付着すると、装置が測定エラーを生じるおそれがあるため、表面をカバーで覆っているものがあり、以下のようなものが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004-117281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなカバーを用いても、超音波発信子および受信子に付着する泥水などの飛散物を0にするのは難しく、特に、質量の小さい雪や泥は装置に付着しやすく、測定エラーを生じる原因となっていた。
そこで、図10に示すように、超音波センサ21の周囲にカバー(前部カバー43a、側部カバー43b、後部カバー43c)を設けることで、超音波センサ21の超音波発信子および受信子への泥や雪の付着を防止する構造が考えられる。
本出願人は、図10に示す構造の効果を実験にて確認した。その結果、泥や雪がカバー内に流入することをある程度防止することはできたが、本構造のカバーは超音波センサ21を囲う形状としているため、車両前方から吹く走行風によって、カバー内部に巻き返しの風が発生しやすく、前輪のタイヤから跳ね上げられた泥や雪が前方に飛び、勢いのある泥や雪はカバー内周面に付着するが、走行風によって勢いを失った泥や雪は、カバー内部で発生した巻き返しの風によってカバー内周面はもちろんのこと、超音波センサ21の超音波発信子および受信子にも付着してしまい、効果は十分とはいえなかった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は路面から跳ねた泥や雪などの飛散物が装置に付着しないような超音波センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明は、車両に設けられ、路面に超音波を発信し、路面から反射した前記超音波を受信することにより前記車両と前記路面との間の傾斜角を測定する超音波センサと、前記超音波センサの周囲に設けられ、前記超音波センサの周囲を通過する走行風を整流する整流部材と、からなることを特徴とする超音波センサ装置である。
さらに、前記超音波センサは、前記路面に超音波を発信する超音波発信子と、前記路面から反射した前記超音波を受信する超音波受信子と、前記超音波発信子と超音波受信子の周囲を覆うセンサカバーと、から構成されることが望ましい。
さらに、前記整流部材は、前記超音波発信子および前記超音波受信子の下部に開口部を有し、前記開口部は、前記超音波センサ側から前記路面側に向けて、徐々に拡径することが好ましい。
さらに、前記開口部は、断面形状が曲線となる曲線部を有していることが好ましい。
さらに、前記整流部材を構成する材料は、弾性体であることが好ましい。
さらに、前記超音波センサおよび前記整流部材の周囲に設けられ、前記路面からの撥水が前記超音波センサに付着するのを防ぐカバーを有することが好ましい。
さらに、前記曲線部は、前記曲線部の延長が前記カバーの車両前側および後側のカバーの下端部まで滑らかに続く曲線となるように設定されていることが好ましい。
前記整流部材と前記カバーとが一体に構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、路面からの跳ねた泥や雪などの飛散物が装置に付着しないような超音波センサ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波センサ装置1が設けられたトラック1を示す側面図であって、図2は図1のA方向矢視図である。
【0010】
図1および図2に示すように、トラック2はサイドフレーム11a、11b上にキャブ3および荷台5が設けられており、サイドフレーム11aとサイドフレーム11bはクロスメンバ13a、13b、13c、13dによって結合されている。
【0011】
また、サイドフレーム11a、11bには前輪7a、7bおよび後輪9a、9bが設けられている。
【0012】
クロスメンバ13aの両端にはヘッドランプ15a、15bが設けられており、クロスメンバ13aの、ヘッドランプ15aとヘッドランプ15bの間には超音波センサ装置1が設けられている。
【0013】
次に、超音波センサ装置1を用いた光軸調整の測定原理について説明する。図3は超音波センサ装置1に設けられた超音波センサ21の測定原理を示す図であって、図4は超音波センサ21の構造を示す図である。また、図5は図4のB−B断面図である。
【0014】
図3に示すように、超音波センサ21の基部23には発信子25a、25bおよび受信子27a、27bが設けられている。なお、基部23は車両の傾きと一致するように車両に設けられる。
【0015】
発信子25a、25bは超音波を発信する部品であり、受信子27a、27bは超音波を受信する部品である。
【0016】
光軸調整の際はまず、発信子25a、25bが路面29に向けて超音波31a、31bを発信する。超音波31a、31bは路面で反射するが、これを、受信子27a、27bが受信する。この際の送受信に要する時間と音速から路面29と基部23の間の高さ33a、33bが求められる。
【0017】
そして、発信子25aと発信子25bの間の距離34と高さ33a、33bから基部23と路面29の間の傾斜角35が求められる。
【0018】
傾斜角35は図示しない制御装置等に送信され、制御装置が傾斜角35を元にして、ヘッドランプ15aとヘッドランプ15bの光軸を調整する。
【0019】
なお、超音波センサ21には図4および図5に示すようにセンサカバー37が備えられている。これは発信子25a、25bおよび受信子27a、27bに跳ね石が命中したり泥や雪が付着したりしないようにするためである。
【0020】
また、センサカバー37は、発信子25aと発信子25bの下部に円錐部39a、39bを有している。これは超音波の発受信をセンサカバー37が妨害しないようにするためである。円錐部39a、39bの頂角41a、41bは超音波の発信角度に干渉しない角度となっている。
【0021】
なお、受信子27aと受信子27bの下部にも同様に円錐部が設けられている。
【0022】
次に、超音波センサ21を用いた超音波センサ装置1の構造について説明する。図6は超音波センサ装置1を示す断面図であって、図7は図6のC方向矢視図、図8は整流部材45付近の詳細図である。また、図9は整流部材45の変形例であって、図10は整流部材45を設けない場合の超音波センサ装置1を示す図である。
【0023】
図6および図7に示すように、超音波センサ装置1はブラケット47を有し、ブラケット47はクロスメンバ13aに取り付けられている。
また、ブラケット47の下面には超音波センサ21が取り付けられており、超音波センサ21の周囲には整流部材45が設けられている。
【0024】
ブラケット47の前部には前部カバー43aが設けられ、後部には後部カバー43dが設けられている。なお、前部カバー43aはアプローチアングルを確保する高さまで設けられている。
また側部には側部カバー43b、43cが設けられている。
【0025】
ブラケット47は超音波センサ装置1をクロスメンバ13aに取り付けるための治具であり、また、超音波センサ21を固定するための治具でもある。
【0026】
前部カバー43a、側部カバー43b、43c、後部カバー43dは路面からの飛散物(泥、雪)51が、超音波センサ21の内部に付着するのを防ぐカバーである。
【0027】
ここで、整流部材45の構造について詳細に説明する。
図8に示すように、整流部材45は発信子25a、25bの下部に開口部53を有し、開口部53は、ブラケット47と接する側(整流部材45の上面)から路面側(整流部材45の下面)にかけて徐々に拡径する形状を有しており、側面の断面形状は曲線部55a、55bのように曲線となっている。
【0028】
整流部材45を設けることにより、図6に示すように、走行風49aが整流部材の形状に沿って整流され、カバー内部で巻き返しを起すことなく流れる。
また、曲線部55a、55bは曲線部55a、55bの延長が、前部カバー43a、後部カバー43dの下端部まで滑らかに続く曲線となるように設定されている。そのため、走行風49aは層流となり、車両前方側から整流部材45の曲線部55a、55bに沿い、車両後方側まで更に流れやすくなる。
従って、路面からの飛散物(泥、雪)51は走行風49aによって進路を妨げられ、超音波センサ21の内部に付着することはない。
【0029】
ここで、整流部材45を設けなかった場合は、図10に示すように走行風50aは整流されないため、超音波センサ21の形状等の影響によりカバー内部で巻き返しをおこしてしまう。
この結果、質量の小さい飛散物(泥や雪)51aは走行風50aに巻き上げられ、超音波センサ21に付着し、測定エラーの原因となる。
【0030】
なお、整流部材45に設けられた開口部53の側面の断面形状は、図9に示すように直線形状を有する直線部54a、54bでも良いが、図8に示す曲線部55a、55bのように曲線となっている方が、直線形状となっている場合と比べてより整流効果を上昇させることができる。
即ち、センサカバー37の下側開口端を含む面に対し、曲線部55a、55bを含む面がなす角度αが、直線部54a、54bを含む面がなす角度βよりも小さくなるため、走行風がセンサカバー37の円錐部39a、39b内に流入しにくくなる。
【0031】
なお、整流部材45を構成する材料は弾性体であることが望ましく、例えばゴムやウレタンウォームである。
整流部材45を弾性体で構成することにより、跳ね石等で整流部材45が破損することを防ぐことができ、また、弾性体は超音波を吸収するため、超音波が整流部材45内で反射して、測定の妨げとなることを防ぐことができる。
【0032】
このように、第1の実施の形態によれば、超音波センサ装置1が整流部材45を有しており、整流部材45が走行風49aを整流する。従って、飛散物(泥、雪)51が超音波センサ21の内部に付着するのを防ぐことができる。
【0033】
次に、第2の実施形態について説明する。図11は第2の実施形態に係る超音波センサ装置1aを示す断面図である。なお、第1の実施形態に係る超音波センサ装置1と同様の機能を果たす要素には同一の番号を付し、説明を省略する。
【0034】
第2の実施形態に係る超音波センサ装置1aは第1の実施形態に係る超音波センサ装置1において、ブラケット47、整流部材45、前部カバー43a、側部カバー43b、43c、後部カバー43dを全て一体化したものである。
【0035】
図11に示すように、超音波センサ装置1aは、整流部材45aを有し、整流部材45aの内部には超音波センサ21が設けられている。
整流部材45aを構成する材料は、整流部材45を構成する材料と同様である。
【0036】
整流部材45aを一体に構成することにより、部品点数を減らすことができるため、作業性が向上する。
【0037】
このように、第2の実施形態によれば、超音波センサ装置1aは、整流部材45aを有している。
従って、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0038】
また、第2の実施形態によれば、整流部材45aが一体に構成されているため、部品点数を減らすことができ、作業性が向上する。
【0039】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】超音波センサ装置1が設けられたトラック1を示す側面図
【図2】図1のA方向矢視図である。
【図3】超音波センサ装置1に設けられた超音波センサ21の測定原理を示す図
【図4】超音波センサ21の構造を示す図
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】超音波センサ装置1を示す断面図
【図7】図6のC方向矢視図
【図8】整流部材45付近の詳細図
【図9】整流部材45の変形例
【図10】整流部材45を設けない場合の超音波センサ装置1を示す図
【図11】超音波センサ装置1aを示す断面図
【符号の説明】
【0041】
1…………超音波センサ装置
1a………超音波センサ装置
2…………トラック
3…………キャブ
5…………荷台
7a………前輪
9a………後輪
11a……サイドフレーム
13a……クロスメンバ
15a……ヘッドランプ
21………超音波センサ
23………基部
25a……発信子
27a……受信子
29………路面
31a……超音波
33a……高さ
35………傾斜角
37………センサカバー
39a……円錐部
41a……頂角
43a……前部カバー
45………整流部材
47………ブラケット
49a……走行風
51………飛散物(泥、雪)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられ、路面に超音波を発信し、路面から反射した前記超音波を受信することにより前記車両と前記路面との間の傾斜角を測定する超音波センサと、
前記超音波センサの周囲に設けられ、前記超音波センサの周囲を通過する走行風を整流する整流部材と、
からなることを特徴とする超音波センサ装置。
【請求項2】
前記超音波センサは、
前記路面に超音波を発信する超音波発信子と、
前記路面から反射した前記超音波を受信する超音波受信子と、
前記超音波発信子と超音波受信子の周囲を覆うセンサカバーと、
からなることを特徴とする請求項1記載の超音波センサ装置。
【請求項3】
前記整流部材は、前記超音波発信子および前記超音波受信子の下部に開口部を有し、
前記開口部は、前記超音波センサ側から前記路面側に向けて、徐々に拡径することを特徴とする請求項1記載の超音波センサ装置。
【請求項4】
前記開口部は、断面形状が曲線となる曲線部を有していることを特徴とする請求項3記載の超音波センサ装置。
【請求項5】
前記整流部材を構成する材料は、弾性体であることを特徴とする請求項1記載の超音波センサ装置。
【請求項6】
前記超音波センサおよび前記整流部材の周囲に設けられ、前記路面からの撥水が前記超音波センサに付着するのを防ぐカバーをさらに有することを特徴とする請求項1記載の超音波センサ装置。
【請求項7】
前記曲線部は、前記曲線部の延長が前記カバーの車両前側および後側のカバーの下端部まで滑らかに続く曲線となるように設定されていることを特徴とする請求項6記載の超音波センサ装置。
【請求項8】
前記整流部材と前記カバーとが一体に構成されていることを特徴とする請求項8記載の超音波センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−171002(P2007−171002A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369395(P2005−369395)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】