説明

超音波人体センサ及びそれを有するトイレ装置

【課題】 トイレ空間のように狭く、多くの反射部材が存在する空間で複雑な反射を発生する状況でも人体の検知を容易に行える超音波人体センサに関する。
【解決手段】 監視空間に向け超音波を間欠的に送信し、送信に対する反射波を受信する超音波人体センサにおいて、受信波形変換手段から出力される受信波形データのうち、人体が存在していないタイミングで得られる受信波形データを基準波形データとして記憶する基準波形記憶手段と、前記受信波形変換手段から順次出力される受信波形データと前記基準波形データとを比較して前記両波形データ間に差分が認められる場合に人体が存在すると判定する判定手段とを有するとともに、前記判定手段は、前記差分が認められない状態となっても、その直前に、前記監視空間の近距離側の領域の差分が認められる時間が所定時間以上継続していた場合、人体が近接して存在すると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波人体センサに関わり、特にトイレ空間のように狭く、多くの反射部材が存在する空間で複雑な反射を発生する状況であっても人体の検知を行える超音波人体センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、所定のエリア内の物体を検出するセンサとして超音波センサが用いられており、例えば車の前方、後方の障害物を検知する障害物センサ、エレベーター内の人間の存在確認用の超音波人体センサ等として多く使われている。
【0003】
この超音波センサは、圧電素子を利用したセンサであり、この圧電素子による超音波の送受信に基づいて人体や障害物を検出するものである。以下、超音波センサの動作原理について、図面を参照して具体的に説明する。図16は、超音波センサを距離センサとして使用する時の動作原理図である。
【0004】
超音波センサは、圧電素子を有しており、この圧電素子に超音波領域のパルス電圧が印加されると、圧電素子が歪み振動し、送波形Aのように超音波が送信される。この送信波は人体や対象物に当たり、反射された超音波が受波形Bのように圧電素子で受信される。
【0005】
また、この時の反射波の一部が超音波センサ表面より反射されて再び対象物に達し、対象物により再反射された超音波が2回反射波Cとして図16のように受信される。同様にして、3回、4回と、超音波センサ表面と対象物の間を反射する超音波振動が存在するが、徐々に減衰するため、次第に検出は困難となる。
【0006】
このように超音波が送波形Aのように送信され、T時間後に受波形Bのように受信された場合、超音波の空気中伝搬速度Vとすると、対象物までの距離はV×T/2で知ることが出来る。従って、受信した反射波を電圧信号に変換して、処理回路によってV×T/2を算出することによって、人体や障害物の距離或いは存在を検出することが可能となる。
【0007】
例えば、超音波センサで監視する空間の人体や障害物の存在を検出しようとするとき、広い空間で、途中に超音波を遮るものや反射するものがない理想的な状況であれば、前述のような理論計算で求められる時間に受信でき、人体や障害物の存在を捉えることが出来る。
【0008】
また、比較的広い空間を持つエレベーター内に人が存在するか否かを検出しようとするとき、予め人がいない時の反射波の波形を基準波形として予め固定的な物体を記憶し、その基準波形との差がある反射波を受信したときに人がいると判定するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
また、対象物が超音波センサに近いほど、図16の受波形Bは送波形Aに近づいていくが、その距離が更に近くなれば、最終的に送波形Aと受波形Bが重なってしまい、検出不能となる。送波形Aの波形は、超音波センサの圧電素子に送信時の電圧を印加している時間だけでなく、圧電素子の送信時の振動が減衰するまでの時間に渡って信号として現れる。これは「残響」と言われるが、これは、超音波センサが至近距離の対象物の検出を苦手とする要因となっている。そのような場合、前述の2回反射波Cのように、対象物と超音波センサの間を複数回往復する信号を利用する考案がある(例えば、特許文献2参照)
【0010】
また、1次反射波と2次反射波とが共に検知されている状態から、検物体に近づきつつある条件下において1次反射波が残響波の中に隠れて、手前側に2次反射波のみしか検知できない状態が検出されると、距離測定限界となったと判断するものがある(例えば特許文献3参照)
【特許文献1】特開昭56−160673号公報
【特許文献2】特開平5−210800号公報
【特許文献3】特開平10−090407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来技術で構成されている超音波センサを、トイレのような狭い空間で入出場する人体の検出に使用しようとすると、人体に向けた超音波の反射波が壁や置物にも当たり、乱反射し、1回の送信で至る所で多数反射波が発生してしまう。
【0012】
超音波は空気中を伝搬する波であることから、多数反射が発生すると、反射波同士が重なり合って、強まったり、弱まったり、時にはなくなったりする。図16の反射波Cのように対象物に2回反射するものもあるが、図16のように明確に波形が現れて判別できるとは限らない。
【0013】
更に、超音波センサと対象物の距離が接近し、密着するほどに近くなれば、複数回の反射があっても、その受波形は図16の送波形Aの残響に埋もれてしまい、検出不能となる。
【0014】
また、人体に当たると反射波に減衰が生じるが、その減衰の比率は、人が着ている服などの素材で大きく異なり、しかも、その反射の方向も多種多様である。よって、服の素材によっても、反射波がすぐに減衰してしまい、受波形Aに埋もれて検出できない場合がある。
【0015】
このように、超音波センサと対象物の距離が近づき過ぎると、超音波の反射波形が複雑に変化したり、残響に埋もれての検出ができなくなる場合があり、特許文献2のように、反射波形が残響に接近してくる様子を追って、2回反射と1回反射を区別する判断処理は、極めて難しい。
【0016】
そして、更に対象物が超音波センサに接近すれば、2回、3回と往復する反射波形が消えてしまうため、特許文献2あるいは特許文献3のような方式は成立しなくなる。
【0017】
本発明は上記問題点に鑑みなされたもので、トイレ空間のように狭く、多くの反射部材が存在する空間で複雑な反射を発生する状況で、反射波が消えてしまうほど超音波センサに接近しても人体の検知を容易に行える超音波人体センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
かかる課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
監視空間に向け、超音波を間欠的に送信すると共に、この送信に対する反射波を受信する超音波送受信手段と、
前記超音波送受信手段によって前記超音波を間欠的に送信するごとに、その反射波に対応して出力される受信信号を、所定周期で順次サンプリングしてA/D変換し、複数のサンプリング値から構成される受信波形データとする受信波形変換手段と、を備えた超音波人体センサにおいて、
前記受信波形変換手段から出力される受信波形データのうち、人体が存在していないタイミングで得られる受信波形データを基準波形データとして記憶する基準波形記憶手段と、
前記受信波形変換手段から順次出力される受信波形データと前記基準波形データとを比較して前記両波形データ間に差分が認められる場合に人体が存在すると判定し、その結果を出力する判定手段と、を有するとともに、
前記判定手段は、前記差分が認められない状態となっても、その直前に、前記監視空間の近距離側の領域の差分が認められる時間が所定時間以上継続していた場合、人体が近接して存在すると判定することを特徴とする。
【0019】
また、請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の超音波人体センサにおいて、
前記判定手段は、
前記監視空間を、超音波人体センサに対して近距離側の第1の領域と、これよりも遠い第2の領域に分け、それぞれの領域について、前記受信波形データ及び前記基準波形データのサンプリング値ごとの差分の合計値を計算し、
前記第1及び第2の領域の差分の合計値のうち、少なくとも一方が所定の第1の閾値以上の場合、人体が存在すると判断し、
前記第1及び第2の領域の差分の合計値の両方が所定の第1の閾値未満の場合、人体が存在しないと判断するものであって、
前記第1及び第2の領域の差分の合計値の両方が所定の第1の閾値未満となった状態であっても、その直前の前記第1の領域の差分の合計値の減少速度が所定の第2の閾値よりも緩やかであった場合は、前記第1の領域よりも近距離側に人体が存在すると判断することを特徴とする。
【0020】
また、請求項3に記載の発明は、
請求項2に記載の超音波人体センサにおいて、
前記第1の領域の差分の合計値の減少速度の判断は、該合計値が、前記第1の閾値よりも大きい第3の閾値と前記第1の閾値との中間の値である時間を計測し、その時間が所定の第4の閾値を超えたという条件で速度が緩やかであると判断することを特徴とする。
【0021】
また、請求項4に記載の発明は、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波人体センサを有することを特徴とするトイレ装置である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明によれば、受信波形と人体が存在しない時の基準波形の差分が消失すると、人体が存在しないと判定するのが一般的な考え方だが、波形の差分が消失する際の様子を観察し、超音波センサに対して近い側の波形に差分が発生している時間がある程度の長さで継続し、その直後に波形全体の差分が消失したとすれば、それは、人体が超音波センサの近距離側の検出限界を越えて接近したと判断する。このため、人体が超音波センサに極めて接近しても、それを不在と誤って判定することなく、人体を検出できる。こうして、超音波センサの近距離側の検出限界を克服し、極めて接近しても正確な判断ができる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、
超音波人体センサに対して近距離側の第1の領域の差分、すなわち変化を観察し、人体が超音波センサに極めて接近して第1の領域の変化が少なくなって消えていく際には、その減少速度が緩やかとなる傾向を利用して、受信波形全体に渡って変化が見られない程に人体が接近した場合でも、その状態を検出できる。
【0024】
また、請求項3に記載の発明によれば、
第1の領域の差分の合計値の減少速度の判断を、差分の合計値の大小と時間の計測によって行うため、簡単で安価な回路でも実現できる。
【0025】
また、請求項4に記載の発明によれば、
超音波人体センサをトイレ装置に応用することによって、トイレ装置に人体が極めて接近した場合でも、人体を正確に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
発明の実施の形態に係る超音波人体センサについて、以下図面を用いて具体的に説明する。図1は、本発明の実施形態の超音波人体センサの全体構成を示すブロック図である。
【0027】
図1に示すように、本発明の実施形態における超音波人体センサ10は、発振手段1と、昇圧回路2と、超音波送受信手段3と、受信・検波回路4と、受信波形変換手段5と、基準波形記憶手段6と、判定手段7とを備えている。
【0028】
発振手段1は、判定手段7によって制御され、超音波周波数帯域のパルス信号(以下、「超音波領域パルス」とする。)を生成するものであり、このように生成された超音波領域パルスは、昇圧回路2へ出力される。なお、判定手段7は、所定時間連続する超音波領域パルスを所定間隔で間欠的に出力するように発振手段1を制御する。この所定時間は、超音波送受信手段3の内部の圧電素子が振動して超音波を発するのに必要な時間であり、通常は数100μs程度である。また、所定間隔は、人体を検出する時間的な感度によって異なり、本発明の実施形態においては、100msであるとする。
【0029】
発振手段1からの超音波領域パルス出力は昇圧回路2で昇圧され、昇圧された高電圧の超音波領域パルス信号で超音波送受信手段3より、所定時間連続する超音波を間欠的に監視する空間(以下、「監視空間」とする。)に向けて送信する。この間欠的に送信された送信波ごとの反射波に対応して、出力された受信信号は、受信・検波回路4を介して検波され、受信波形変換手段5に取り込まれる。
【0030】
間欠的に送信するごとにその反射波に対応して出力される受信信号は、受信マスク終了後、所定周期で順次サンプリングされて受信波形変換手段5のA/D変換等の手段を介してA/D変換され、複数のデジタルサンプリング値から構成される受信波形データに変換される。
【0031】
なお、上述の受信マスクは、超音波送受信手段3が送受信部一体の圧電素子であり、同一の圧電素子で送信と受信も行うために必要なものである。超音波送受信手段3の送信直後は、送信時の振動が残っており、これが前述の「残響」であるが、残響が減衰して受信信号が安定するまでの時間、受信波形変換手段5の始動を遅らせる処理が受信マスクである。
【0032】
本発明の実施形態においては、受信マスクを1ms、その後、受信信号を50μS周期で100回サンプリングすることにより、100個のサンプリング値から構成される受信波形データに変換されるものとする。
【0033】
サンプリングされる受信波形データの範囲は、送信後の1〜6msの時間範囲であり、音速を340m/sとすると、17cm〜102cmの距離範囲で、この間を100等分してサンプリングすることになる。つまり、n番目のサンプリングデータに対応する距離D[cm]は、(D=17+0.85×n)で計算される。
【0034】
なお、17cm〜102cmという距離範囲は、超音波センサと対象物の間を、超音波が最短距離で1往復する場合の範囲であって、2往復、3往復する場合、多角形をつくるように反射する場合は、見かけ上、近いところにあるものが遠いところにあるような受信波形となる。つまり、17cmよりも近いものを検出することもある。一方で、音速の温度変動を除けば、102cmより遠いところにあるものの反射を検出することはない。
【0035】
受信波形変換手段5から出力される受信波形データは、人体がいない時のタイミングで、基準波形データとして基準波形記憶手段6に記憶される。基準波形データ取得後は、受信波形変換手段5のデジタル値は受信波形データとして基準波形記憶手段6を介さず、直接判定手段7に受信波形データが送られ、判定手段7によって、受信波形データが基準波形データと比較演算される。
【0036】
判定手段7は、受信波形データ及び基準波形データのサンプリング値ごとの差分を、超音波人体センサに対して近距離側の第1の領域と、遠距離側の第2の領域のデータに分け、それぞれの領域について差分の合計値を計算する。
【0037】
第1及び第2の領域の差分の合計値のうち、少なくとも一方が所定の第1の閾値以上の場合、人体が存在すると判断し、第1及び第2の領域の差分の合計値の両方が所定の第1の閾値未満の場合、人体が存在しないと判断する。
【0038】
なお、所定の第1の閾値とは、ノイズなどの影響で受信波形データが変動し、その結果、差分の合計値に現れる値よりも大きく、実際に人体が存在して差分の合計値に現れる値よりは小さい値である。
【0039】
ここで、本発明の特徴である例外があって、第1及び第2の領域の差分の合計値の両方が所定の第1の閾値未満となった状態であっても、その直前の第1の領域の差分の合計値の減少速度が所定の第2の閾値よりも緩やかであった場合は、人体が超音波センサの近くにいなくなって受信波形の差分が消えてしまったのではなく、人体が超音波センサに近づき過ぎて受信波形の差分が消えたと判断し、人体が存在すると判断する。
【0040】
なお、所定の第2の閾値とは、人体が超音波センサに極めて接近し、やがて受信波形の差分が消失するという状況において、受信波形の差分が消えるまで減少速度がどの程度であるかを実際に測定し、その結果から求めたものである。例えば、実測定の減少速度の平均値とすればよい。超音波センサが取り付けられる機器とその取り付け位置、超音波センサの特性などにより決まるものであり、一律に最適値がある訳ではない。
【0041】
例えば、洋式大便器の足元に超音波センサが取り付けられた場合、使用者が便器に座る動作に応じて所定の第2の閾値を決めるが、便器のサイズや取り付け位置によって受信波形の特徴は異なる。場合によっては、駅、学校、病院、高齢者施設など、便器の設置場所によっても最適値が変わることが予想される。
【0042】
判定手段7は、このように監視空間内に人体が存在すると判定すると検知信号を出力する。なお、発振手段1,受信波形変換手段5,基準波形記憶手段6,判定手段7はコンピュータ8であって、1つのパッケージに収まっている。
【0043】
図1の構成の結果得られる具体的な例として、図2〜図5を説明する。図2〜図5は、本発明の実施形態における超音波人体センサ10の判定手段の動作説明図である。
【0044】
まず、受信波形データと基準波形データとに基づく人体検出について、具体的に説明する。図2は、基準波形データ、受信波形データ、受信波形データと基準波形データの差をとった差分波形データの2次元表示図である。なお、図2において、横軸がサンプリングの順番を示すサンプリングタイミング番号(以下、「タイミング番号」とする。)、縦軸はサンプリング値、すなわち、タイミング番号に対応する受信波形の大きさを示す。
【0045】
超音波送受信手段3から約40cm近辺の距離に人体が存在する状態での超音波人体センサ10の動作について、図2を参照して具体的に説明する。周囲環境は、トイレの個室ブースであり、超音波センサは、トイレ内の便器の洗浄機能などのために便器に設けられたものとする。
【0046】
図2(A)は、人体が監視空間にない時の受信波形データ、すなわち基準波形データを示す図である、なお、本実施の形態においては、受信信号を100回のサンプリングで受信波形データとしているため、タイミング番号nはサンプリング順に1から100までである。
【0047】
図2(A)のタイミング番号1〜15付近の波形は、残響によるものである。同じく、タイミング番号61〜81付近の波形は、トイレの壁など、人体以外の固定物の反射波形である。
【0048】
図2(B)は、超音波送受信手段3から約40cm近辺の距離に通常の服を着た人体が存在する状態における受信波形データを示す図であり、図2(A)に比べ、タイミング番号10、30、80付近のサンプリング値が高くなっている。人体と超音波センサの距離が40cmと言っても、人体には肌の露出した部分や服で覆われた部分があり、腹や手、足、顔など、超音波の反射率や反射角度、面積、更に超音波センサとの距離など、さまざまな反射条件の部分が組み合わさっており、反射波形が40cmの距離の1点に集中する訳ではない。
【0049】
図2(C)は図2(A)に示す基準波形データと図2(B)に示す受信波形データとの比較を同一サンプリングタイミングのサンプリング値ごとに行って、差分演算をした結果である。すなわち、受信波形データのタイミング番号nのサンプリング値から基準波形データのタイミング番号nのサンプリング値を減算した差分値の演算を、タイミング番号nの先頭(n=1)から順次最後(n=100)まで行なったものである。
【0050】
このように、人体による反射波形は複雑となり、人体不在時の波形の差をとっても、どの波形がどの距離と判別するのは難しい。
【0051】
判定手段7は、図2(C)に示される、受信波形データと基準波形データとのサンプリング値ごとの差分値を、先頭のタイミング番号1から15までの範囲で加算した値をsum1、タイミング番号16から100までの範囲で加算した値をsum2として計算する。
【0052】
なお、、先頭のタイミング番号1から15までの範囲が、請求項及び前述の説明の第1の領域であり、タイミング番号16から100までの範囲が第2の領域である。
【0053】
本実施の形態では、n番目のサンプリング値の距離D[cm]が(D=17+0.85×n)で計算できるため、sum1は17〜30cmの距離範囲、つまり超音波センサに対し近距離側の差分値の合計、sum2は30〜102cmの距離範囲、つまり遠距離側の差分値の合計となる。
図3乃至図5に、人体が超音波センサに対して近づいたり離れたりする場合の、sum1、sum2の時間変化を追った結果を示す。
【0054】
図3は、人体が超音波センサからゆっくりと離れていく場合のsum1及びsum2の時間変化である。図3の横軸が0〜2秒の時間では、人体が超音波センサに接近しており、sum1、sum2共に大きな値となっている。
この場合、sum1を大きくする要因となるのは、超音波センサと対象物を1往復した反射信号が主なものであり、sum2は、2往復、3往復の反射信号、或いは壁や床などを経由した反射信号によるものと考えられる。この状態で、判定手段7は感知状態を出力する。
【0055】
人体が超音波センサから離れていくと、時間2〜3秒のタイミングでまず近距離側の差分の合計値であるsum1が小さくなり、それに遅れて、時間3〜4秒のタイミングで遠距離側の差分の合計値であるsum2が小さくなっている。人体が超音波センサから離れていくため、超音波センサに近い側の差分値の合計であるsum1の方がsum2より先に小さくなるのは当然である。
【0056】
図3の時間4秒でsum1、sum2共に閾値TH2を下回ると、人体無し、すなわち非感知と判断する。このように、sum1が先に閾値TH2を下回り、続いてsum2が閾値TH2を下回る変化は、人体が超音波センサから離れていく様子として判別でき、判定手段7は非感知状態を出力する。
【0057】
なお、閾値TH2は、請求項及び前述の説明の、所定の第1の閾値であり、本実施形では50と設定している。
【0058】
図4は、人体が超音波センサから素早く離れていく場合のsum1及びsum2の時間変化である。図4の横軸が0〜2秒の時間では、人体が超音波センサに接近しており、sum1、sum2共に大きな値となっている。この点は図3と同様である。
人体が超音波センサから素早く離れていくと、時間2〜3秒のタイミングでsum1とsum2がほぼ同時に小さくなり、時間3秒までのタイミングで共に閾値TH2を下回っている。
【0059】
sum1とsum2がどれだけ早く小さくなるかは、人体の移動速度次第であるが、超音波センサの間欠駆動周期(本実施形では0.1秒)や、トイレの広さ、トイレ内の設置物など他の反射条件でも変わってくる。このような条件にも左右されるが、図4のように、sum1とsum2がほぼ同時に、かつ短時間で小さくなる場合もある。
【0060】
図4でsum1、sum2がほぼ同時に閾値TH2を下回ると、人体無し、すなわち非感知と判断する。このように、sum1とsum2が短時間で減少して閾値TH2を下回る変化は、人体が超音波センサから素早く離れていく様子として判別でき、判定手段7は非感知状態を出力する。
【0061】
図5は、人体が超音波センサに近づいて行き、密着するほどに接近してしまった場合のsum1及びsum2の時間変化である。図5の横軸が0〜2秒の時間では、人体が超音波センサに接近しており、sum1、sum2共に大きな値となっている。この部分は図3、図4と同様じである。
【0062】
この状態から更に人体が超音波センサに近づくと、超音波センサと人体間を、2往復、3往復した反射信号がsum2でなく、sum1の領域に差分として現れる。更に、複数回以上した反射波は、反射の際に減衰したり、他の反射波と干渉したり、別な方向へ反射してしまい、sum2の領域で信号として検出されることが困難になる。よって、図5のように、sum1よりもsum2の方が先に小さくなり、閾値TH2を下回る。
【0063】
しかし、超音波センサと人体の間に隙間があれば、幾らかは反射を繰り返してsum1の領域に信号として現れる。そのため、sum1は、複雑な変化をし、値も低下するが、簡単にゼロになるまで低下してしまうことは無い。つまり、閾値TH2を下回るまではないが、それより大きい閾値TH1は下回る状態に入る。
【0064】
なお、閾値TH1は、請求項の、所定の第3の閾値であり、本実施形では100と設定している。
【0065】
更に人体が超音波センサに近づき、例えば服の一部が超音波センサの振動面に触れるほどに近づく、もしくは密着すれば、sum1の信号もゼロになる。図5の時間4〜5秒の部分のように、sum1、sum2共に閾値TH2を下回る。この場合、人体が超音波センサに密着するほどに接近したと判断し、判定手段7は感知状態を出力する。
【0066】
このように、近距離側の信号であるsum1が、ある時間をかけて減少していった場合、信号のsum1、sum2共に閾値TH2を下回ったとしても、センサのすぐ近くに対象物があると判断して、感知状態と判断する。
【0067】
sum1とsum2がどれだけ早く小さくなるかは、人体の移動速度次第であるが、超音波センサの間欠駆動周期(本実施形では0.1秒)や、トイレの広さ、トイレ内の設置物などの条件でも変わってくる。このような条件次第では、図4のように、sum1とsum2が短時間で小さくなる場合もあり得る。
【0068】
図4でsum1、sum2がほぼ同時に閾値TH2を下回ると、人体無し、すなわち非感知と判断する。このように、sum1とsum2が短時間で減少して閾値TH2を下回る変化は、人体が超音波センサから素早く離れていく様子として判定できる。
【0069】
更に細かく説明するために、超音波人体センサ10の動作フローチャ−ト図6〜15で説明する。図6は、本実施の形態における超音波人体センサ10の動作を示すメインルーチンのフローチャート、図7は送受信処理サブルーチンのフローチャート、図8は基準値記憶サブルーチンのフローチャート、図9は差分演算処理1サブルーチンのフローチャート、図10は差分演算処理2サブルーチンのフローチャート、図11は差分加算処理1サブルーチンのフローチャート、図12は差分加算処理2サブルーチンのフローチャート、図13は検知判定処理サブルーチンのフローチャートである。
【0070】
図6に示すように人体検出のメインルーチンでは、電源が入ると超音波人体センサ10は、トイレマット等の設置部材がある監視空間に、人体が存在しないタイミングで、超音波送受信手段3から超音波を送信し、その反射波に対応して出力される受信信号を、受信波形変換手段5によって、所定の周期で順次サンプリングしてA/D変換し、複数のサンプリング値からなる受信波形データを得る送受信処理を行う(ステップS001)。
【0071】
ステップS001によって得られた受信波形データは、基準波形データとして、基準波形記憶手段6に記憶され、後述の受信波形データとの演算のためのデータとする(ステップS002)。
【0072】
なお、本実施例では、メインルーチンの起動直後、一般の電気機器であれば電源スイッチを入れた直後に対応するタイミングで無条件に基準波形の記憶(ステップS002)を行ったが、連続する複数の受信波形データにおいて変動が無いことで人が存在しないことを判定し、その条件で随時、基準波形の記憶を更新することも可能である。
【0073】
次に、超音波人体センサ10は、監視空間に向け、所定期間(例えば100μs)連続する超音波を送信し、受信処理を行い、人体からの反射や、トイレマット等の設置部材からの反射を含む受信波形データを取得する(ステップS003)。判定手段7は、取得した受信波形データと基準波形データのサンプリング値との比較、すなわち差分演算処理をサンプリング値ごとに行い、差分波形データを生成する。なお、この演算処理は、超音波センサに対して近距離側の第1の領域と、それより遠距離側の第2の領域に分けて行う(ステップS004、S005)。
【0074】
その後、判定手段7は、差分波形データを第1の領域と第2の領域に分けて加算し(ステップS006、S007)、それらの加算データから人体の検知判定処理を行う(ステップS008)。
【0075】
続いて、超音波送受信手段3から超音波を所定間隔で送信するために、演算終了後に100msのタイマーをおいて(ステップS009)、超音波人体センサ10は、人体の有無を検出するために、監視空間に向けて、超音波の送受信動作を間欠的に繰り返す。
【0076】
図7の送受信処理フローチャートは、メインルーチンの送受信処理(ステップS001、ステップS003)の詳細な内容である。このフローチャートはサブルーチンとして処理される。
【0077】
超音波人体センサ10は、超音波を所定期間(例えば100μs)連続して超音波送受信手段3から出力し(ステップS101)、送信後の、圧電素子が安定するまでの時間、本実施形態では1msの時間をとって(ステップS102)、受信信号を複数のサンプリング値の受信波形データとするために、サンプリング値のタイミング番号nに1を代入してカウントの初期化をする(ステップS103)。
【0078】
続いて、ステップS101にて超音波送受信手段3から送信された超音波に対する反射波を受信信号として受信・検波回路4により取り込む。受信波形変換手段5は、この受信信号をA/D変換し(ステップS104)、その結果をdata(1)として出力する(ステップS105)。そして、受信波形変換手段5は、サンプリング値のタイミング番号nをアップカウントして(ステップS106)、タイミング番号nが100回になるまで(ステップS107:Yes)受信信号のA/D変換を繰り返して、data(n)の出力を繰り返し、タイミング番号nが100回より大きくなると(ステップS107:No)、メインルーチンへ戻る(ステップS108)。
【0079】
このようにして、data(1)〜data(100)の100個のサンプリング値からなる受信波形データが生成される。なお、本実施例の場合には、A/D変換の繰り返しのループ時間が50μsになるようにプログラムを調整する。
【0080】
図8の基準値記憶処理フローチャートは、メインルーチンの基準値記憶処理(ステップS002)の詳細な内容である。このフローチャートはサブルーチンとして処理される。この基準値記憶処理をするために、基準波形記憶手段6では、人体を検出していない状態で、受信波形変換手段5から出力される受信波形データdata(n)をdata(1)から順に受信するために、サンプリング値のタイミング番号nに1を代入してカウントの初期化をする(ステップS201)。次に、受信波形変換手段5から出力される受信波形データdata(1)を基準波形データref(1)として基準波形記憶手段6内に記憶する(ステップS202)。
【0081】
そして、基準波形記憶手段6は、サンプリング値のタイミング番号nをアップカウントして(ステップS203)、タイミング番号nが100回になるまで(ステップS204:Yes)、data(n)を基準波形データref(n)として記憶する動作を繰り返し、nが100回より大きくなると(ステップS204:No)、受信波形データを基準波形データとして基準波形記憶手段6へ記憶する動作は終了する。
【0082】
その後、メインルーチンへ戻る(ステップS205)。
【0083】
図9の差分演算処理フローチャートは、メインルーチンの差分演算処理1(ステップS004)の詳細な内容である。このフローチャートはサブルーチンとして処理される。判定手段7は、タイミング番号nに1を代入してカウントの初期化をする(ステップS301)。次に、判定手段7は、受信波形変換手段5から出力される受信波形データのうちタイミング番号1のサンプリング値から基準波形記憶手段6に記憶されている基準波形データのうちタイミング番号1のサンプリング値を減算して差分をとり、差分波形データdif(1)を生成する(ステップS302)。
【0084】
判定手段7は、差分をとったdif(1)が負の場合(ステップS303:Yes)、基準波形データから受信波形データを減算するように差分の演算を入れ替え、dif(1)が負にならないように計算をやり直す(ステップS304)、一方、dif(1)が0以上であれば(ステップS403:No)、dif(1)を置き換えない。こうすることで、dif(1)には、基準波形データと受信波形データの差分の絶対値が計算される。
【0085】
その後、判定手段7は、タイミング番号nをアップカウントして(ステップS305)、タイミング番号nが15になるまで(ステップS306:Yes)、ステップS302からS305の演算を繰り返す。
【0086】
すなわち、タイミング番号1〜15までのサンプリング値をタイミング番号順に、受信波形データと基準波形データとのサンプリング値の差分の絶対値である、差分波形データdif(n)を生成する。その後、タイミング番号nが15より大きくなると(ステップS306:No)、メインルーチンへ戻る(ステップS307)。
【0087】
なお、タイミング番号1〜15は、本実施形では超音波センサ10からの距離が17〜30cmの距離に相当する近距離側のデータであり、この距離範囲を第1の領域とする。
第1の領域は、超音波センサ10に近い、至近距離の領域であり、受信波形には残響も含まれる。残響部分は、受信した反射波によって、反射レベルが増加する場合も減少する場合もあるため、正負の変化のいずれも有為な変化と考え、負のデータを正のデータに置き換えている。
【0088】
図10の差分演算処理フローチャートは、メインルーチンの差分演算処理2(ステップS005)の詳細な内容である。このフローチャートはサブルーチンとして処理される。判定手段7は、タイミング番号nに16を代入してカウントの初期化をする(ステップS401)。次に、判定手段7は、受信波形変換手段5から出力される受信波形データのうちタイミング番号16のサンプリング値から基準波形記憶手段6に記憶されている基準波形データのうちタイミング番号16のサンプリング値を減算して差分をとり、差分波形データdif(16)を生成する(ステップS402)。
【0089】
判定手段7は、差分をとったdif(16)が負の場合(ステップS403:Yes)、dif(16)を0に置き換え(ステップS404)、一方、dif(16)が0以上であれば(ステップS403:No)、dif(1)を置き換えない。その後、判定手段7は、タイミング番号nをアップカウントして(ステップS405)、タイミング番号nが100になるまで(ステップS406:Yes)、ステップS402からS405の演算を繰り返す。
【0090】
すなわち、タイミング番号16〜100までのサンプリング値をタイミング番号順に、受信波形データと基準波形データとのサンプリング値の差分をとり、差分が負にならないように補正して、差分波形データdif(n)を生成する。その後、タイミング番号nが100より大きくなると(ステップS406:No)、メインルーチンへ戻る(ステップS407)。
【0091】
なお、タイミング番号16〜100は、本実施形では超音波センサ10からの距離が30〜102cmの距離に相当する遠距離側のデータであり、この距離範囲を第2の領域とする。
第2の領域は、第1の領域に比較して、超音波センサ10から遠い距離の領域であり、受信波形には残響は含まれない。よって、受信波形の変化分として有効なのは、反射レベルが基準波形に対して増加したもののみと考え、負のデータをゼロに置き換えている。
【0092】
図11の差分加算処理1フローチャートは、メインルーチンの検知判定処理(ステップS006)の詳細な内容である。このフローチャートはサブルーチンとして処理される。判定手段7は、タイミング番号nに1を代入してカウントの初期化をし(ステップS501)、タイミング番号1から順次加算してゆく加算値の初期値である第1の領域の受信波形差分加算データsum1を0に初期化する(ステップS502)。
【0093】
次に、判定手段7は、sum1にタイミング番号1の差分波形データdif(1)を加算する(ステップS503)。その後、判定手段7は、タイミング番号nをアップカウントして(ステップS504)、タイミング番号nが15になるまで(ステップS505:Yes)、ステップS503の演算を繰り返す。その後、タイミング番号nが15より大きくなると(ステップS505:No)、メインルーチンへ戻る(ステップS506)
【0094】
図12の差分加算処理2フローチャートは、メインルーチンの検知判定処理(ステップS007)の詳細な内容である。このフローチャートはサブルーチンとして処理される。判定手段7は、タイミング番号nに16を代入してカウントの初期化をし(ステップS601)、タイミング番号16から順次加算してゆく加算値の初期値である第2の領域の受信波形差分加算データsum2を0に初期化する(ステップS602)。
【0095】
次に、判定手段7は、sum2にタイミング番号16の差分波形データdif(16)を加算する(ステップS603)。その後、判定手段7は、タイミング番号nをアップカウントして(ステップS604)、タイミング番号nが100になるまで(ステップS605:Yes)、ステップS603の演算を繰り返す。その後、タイミング番号nが100より大きくなると(ステップS605:No)、メインルーチンへ戻る(ステップS606)
【0096】
図13の検知判定処理フローチャートは、メインルーチンの検知判定処理(ステップS008)の詳細な内容である。このフローチャートはサブルーチンとして処理される。
【0097】
判定手段7は、近距離側の第1の領域の受信波形差分加算データsum1が閾値TH2以上であった場合(ステップS701:Yes)、sum1を閾値TH1と比較する(ステップS702)。なお、閾値TH2は、「sum1がこの値以下であれば、ノイズ等を考慮しても、受信波形に差分があると見られない」と判断できる程度の値であり、小さい値となる。本実施形では50としている。
【0098】
また、閾値TH1は、「sum1がこの値以上であれば、明らかに受信波形に差分があると認められる」値であり、受信波形に確実に差分があると判断できる比較値の下限値である。当然ながら、閾値TH2より大きいが、人体を感知している時のsum1の平均的な値よりは小さい値となる。本実施形では100としている。
【0099】
ステップS702で、sum1が閾値TH1以上の場合(ステップS702:Yes)、時間変数Tをゼロとし、リセットする(ステップS704)。ここで時間変数Tは、sum1が十分大きな値(閾値TH1以上)から、十分小さい値(閾値TH2以下)に減少する際の時間を計るための変数であり、単位は秒である。
【0100】
ステップS702で、sum1が閾値TH1未満の場合(ステップS702:No)、時間変数Tに0.1(秒)を加える(ステップS703)。こうして、Tは、sum1が十分大きな値(閾値TH1以上)から、十分小さい値(閾値TH2以下)に減少する際の時間を計ることができる。ステップS703、S704のいずれも場合も、判定手段は、感知状態と判断して(ステップS705)、メインルーチンに戻る(ステップS709)。
【0101】
ステップS701で、sum1が閾値TH2未満の場合(ステップS701:No)、判定手段7は、遠距離側の第2の領域の受信波形差分加算データsum2が閾値TH2以上かを比較し、sum2がTH2以上の場合(ステップS706:Yes)、時間変数Tをゼロとし、リセットして(ステップS704)、感知状態と判断して(ステップS705)、メインルーチンに戻る(ステップS709)。ここで、時間変数Tをゼロとする(ステップS704)のは、その前に、ステップS701でsum1が閾値TH2未満と判断されいるためである。
【0102】
ステップS706で、sum2が閾値TH2未満の場合(ステップS706:No)、判定手段7は、時間変数Tが1(秒)以上か判断し、1秒以上であれば(ステップS707:Yes)、感知状態と判断して(ステップS705)、メインルーチンに戻る(ステップS709)。
そうでなければ(ステップS707:No)、非感知状態と判断して(ステップS708)、メインルーチンに戻る(ステップS709)。
【0103】
なお、、時間変数Tの判定(ステップS707)の閾値である「1秒」は、請求項の、所定の第4の閾値のことである。本実施形では、所定の第4の閾値を1秒と設定している。更に、請求項の、所定の第2の閾値とは、sum1が閾値TH1から閾値TH2まで減少する速度に対応したものであり、本実施形では「(TH1−TH2)÷1秒」となる。
【0104】
以上説明したように、本発明によれば、超音波人体センサに対して近距離側の領域の差分、すなわち変化を観察し、人体が超音波センサに極めて接近して近距離側の領域の変化が少なくなって消えていく際には、その減少速度が緩やかとなる傾向を利用して、受信波形全体に渡って変化が見られない程に人体が接近した場合でも、その状態を検出できる。こうして、超音波センサの近距離側の検出限界を克服し、極めて接近しても正確な判断ができる。
【0105】
また、本発明の実施形態における超音波人体センサ10をトイレ装置に利用することによって、人体がトイレ装置に接近した場合での人体の検出の確率が高くなる。以下その構成について図14、15を用いて説明する。図14、15に、発明の実施形態における超音波人体センサ10を適用したトイレ装置を示す。
【0106】
図14に示すように、トイレルーム30に大便器20が配置されており、大便器20は、その前方下部に超音波人体センサ10が取り付けられている。
【0107】
大便器20は、超音波人体センサ10からの検出信号に基づいて、人体の存在を検出すると、便蓋を開く制御を行い、その後、人体がいなくなったことを検出すると、便蓋を閉じる制御を行う。或いは、便器を自動的に洗浄する制御を行う。
【0108】
図15は図14の上面図である。超音波センサ10に対して、S1が第1の領域であり、S2が第2の領域である。大便器20の使用時の足の位置は性別や体格、座り方に個人差があり、大便器に極めて接近する場合があるが、第1の領域よりも更に超音波センサに接近しても、本発明によれば、足の存在、すなわち人体の存在を間違いなく検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施形態における超音波人体センサの全体構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施形態における超音波人体センサの判定手段の動作説明図1。
【図3】本発明の実施形態における超音波人体センサの判定手段の動作説明図2。
【図4】本発明の実施形態における超音波人体センサの判定手段の動作説明図3。
【図5】本発明の実施形態における超音波人体センサの判定手段の動作説明図4。
【図6】本発明の実施形態における超音波人体センサのメインルーチンを説明した制御フローチャート。
【図7】本発明の実施形態の送受信処理サブルーチンのフローチャート。
【図8】本発明の実施形態の基準値記憶処理サブルーチンのフローチャート。
【図9】本発明の実施形態の差分演算処理1サブルーチンのフローチャート。
【図10】本発明の実施形態の差分演算処理2サブルーチンのフローチャート。
【図11】本発明の実施形態の差分加算処理1サブルーチンのフローチャート。
【図12】本発明の実施形態の差分加算処理2サブルーチンのフローチャート。
【図13】本発明の実施形態の感知判定処理サブルーチンのフローチャート。
【図14】本発明の実施形態においるトイレ装置の斜視図。
【図15】本発明の実施形態においるトイレ装置の上面図。
【図16】超音波の動作原理を説明した図。
【符号の説明】
【0110】
1 発振手段
2 昇圧回路
3 超音波送送受信手段
4 受信・検波回路
5 受信波形処理手段
6 基準波形記憶手段
7 判定手段
8 マイクロコンピュータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視空間に向け、超音波を間欠的に送信すると共に、この送信に対する反射波を受信する超音波送受信手段と、
前記超音波送受信手段によって前記超音波を間欠的に送信するごとに、その反射波に対応して出力される受信信号を、所定周期で順次サンプリングしてA/D変換し、複数のサンプリング値から構成される受信波形データとする受信波形変換手段と、を備えた超音波人体センサにおいて、
前記受信波形変換手段から出力される受信波形データのうち、人体が存在していないタイミングで得られる受信波形データを基準波形データとして記憶する基準波形記憶手段と、
前記受信波形変換手段から順次出力される受信波形データと前記基準波形データとを比較して前記両波形データ間に差分が認められる場合に人体が存在すると判定し、その結果を出力する判定手段と、を有するとともに、
前記判定手段は、前記差分が認められない状態となっても、その直前に、前記監視空間の近距離側の領域の差分が認められる時間が所定時間以上継続していた場合、人体が近接して存在すると判定することを特徴とする超音波人体センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波人体センサにおいて、
前記判定手段は、
前記監視空間を、超音波人体センサに対して近距離側の第1の領域と、これよりも遠い第2の領域に分け、それぞれの領域について、前記受信波形データ及び前記基準波形データのサンプリング値ごとの差分の合計値を計算し、
前記第1及び第2の領域の差分の合計値のうち、少なくとも一方が所定の第1の閾値以上の場合、人体が存在すると判断し、
前記第1及び第2の領域の差分の合計値の両方が所定の第1の閾値未満の場合、人体が存在しないと判断するものであって、
前記第1及び第2の領域の差分の合計値の両方が所定の第1の閾値未満となった状態であっても、その直前の前記第1の領域の差分の合計値の減少速度が所定の第2の閾値よりも緩やかであった場合は、前記第1の領域よりも近距離側に人体が存在すると判断することを特徴とする超音波人体センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波人体センサにおいて、
前記第1の領域の差分の合計値の減少速度の判断は、該合計値が、前記第1の閾値よりも大きい第3の閾値と前記第1の閾値との中間の値である時間を計測し、その時間が所定の第4の閾値を超えたという条件で速度が緩やかであると判断することを特徴とする超音波人体センサ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波人体センサを有することを特徴とするトイレ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−343218(P2006−343218A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169207(P2005−169207)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】