説明

超音波振動ユニットと超音波圧入装置と超音波圧入方法

【課題】 超音波振動の付加による圧入荷重の軽減効果を何等損なうことなく、超音波振動付加時における圧入部品の姿勢の崩れを防止することを可能にする超音波振動ユニットとそのような超音波振動ユニットを使用した超音波圧入装置と超音波圧入方法を提供すること。
【解決手段】 超音波振動子により発生された超音波振動をホーンを介して出力する超音波振動ユニットにおいて、上記ホーンに溝を設けることにより曲げ振動が発生し易い状態にしたものであり、例えば、これを超音波圧入装置に適用した場合には、圧入部品に曲げ振動を加えることができ、それによって、圧入時における姿勢の崩れを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動ユニットと、そのような超音波振動ユニットを使用し、圧入部品としてのピンを被圧入部材としてのワークに設けられた孔内に超音波振動を加えながら圧入する超音波圧入装置と超音波圧入方法に係り、特に、圧入動作時における圧入部品の姿勢の崩れ(例えば、捩れ、傾斜等)を防止して精度良く圧入することができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波振動を加えながらピンをワークに設けられた孔内に圧入していく超音波圧入装置としては、例えば、特許文献1、特許文献2等に記載されたものがある。
尚、圧入時に超音波振動を加える目的は圧入荷重の軽減にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭50−36343号公報
【0004】
【特許文献2】特開2007−296615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の構成によると次のような問題があった。
すなわち、圧入時にピンに対して超音波振動を加えると、ピンの姿勢が崩れてしまうことがあり(例えば、捩れ、傾斜等)、そのような状態で圧入動作を継続すると、姿勢が崩れたままの状態でピンがワークの孔内に圧入されてしまうという問題があった。
このような問題に対しては、例えば、ピンの姿勢の崩れを防止するための固定冶具を使用することが考えられる。しかしながら、そのような固定冶具を使用した場合には、超音波振動が減衰してしまい、超音波振動の付加による圧入荷重の軽減効果が損なわれてしまうという問題があった。
【0006】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、超音波振動の付加による圧入荷重の軽減効果を何等損なうことなく、超音波振動付加時における圧入部品の姿勢の崩れを防止することを可能にする超音波振動ユニットとそのような超音波振動ユニットを使用した超音波圧入装置と超音波圧入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく本願発明の請求項1による超音波振動ユニットは、超音波振動子により発生された超音波振動をホーンを介して出力する超音波振動ユニットにおいて、上記ホーンに溝を設けることにより曲げ振動が発生し易い状態にしたことを特徴とするものである。
又、請求項2による超音波振動ユニットは、請求項1記載の超音波振動ユニットにおいて、円周方向に沿って異なる位置に複数の溝を設けるようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項3による超音波振動ユニットは、請求項2記載の超音波振動ユニットにおいて、上記複数の溝を軸方向に沿って異なる位置に設けるようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項4による超音波振動ユニットは、請求項3記載の超音波振動ユニットにおいて、軸方向に沿って異なる位置に設けられた第1の溝と第2の溝があり、上記第1の溝に対して60°〜120°の範囲で周方向にずれた位置に上記第2の溝が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項5による超音波振動ユニットは、請求項4記載の超音波振動ユニットにおいて、上記第1の溝に対して上記第2の溝が曲げ振動の位相差が60°〜120°となるように軸方向に沿ってずれた位置に設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項6による超音波振動ユニットは、請求項1記載の超音波振動ユニットにおいて、上記溝は環状溝であることを特徴とするものである。
又、請求項7による超音波圧入装置は、プレス手段と、上記プレス手段の先端に取り付けられる請求項1〜請求項6の何れかに記載の超音波振動ユニットと、を具備し、上記超音波振動ユニットを介して圧入部品を被圧入部材の孔内に圧入するようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項8による超音波圧入方法は、超音波振動により発生される超音波振動をホーンを介して圧入部品に付与すると共にプレス手段により押圧することにより上記圧入部品を被圧入部材の孔内に圧入する超音波圧入方法において、上記ホーンに回転運動を発生させ、それによって、圧入部品の姿勢の崩れを防止するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
以上述べたように、本願発明の請求項1による超音波振動ユニットによると、超音波振動子により発生された超音波振動をホーンを介して出力する超音波振動ユニットにおいて、上記ホーンに溝を設けることにより曲げ振動が発生し易い状態にしたので、例えば、これを超音波圧入装置に適用した場合には、圧入部品に曲げ振動を加えることができ、それによって、圧入時における姿勢の崩れを防止することができる。
又、請求項2による超音波振動ユニットは、請求項1記載の超音波振動ユニットにおいて、円周方向に沿って異なる位置に複数の溝を設けるようにしたので、異なる方向の複数の曲げ振動を発生させることができ、例えば、これを超音波圧入装置に適用した場合には、圧入部品に異なる方向の複数の曲げ振動を加えることができ、それによって、圧入時における姿勢の崩れを防止することができる。
又、請求項3による超音波振動ユニットは、請求項2記載の超音波振動ユニットにおいて、上記複数の溝を軸方向に沿って異なる位置に設けるようにしたので、回転運動を発生させることができる。すなわち、共振周波数が異なる複数の曲げ振動が発生し、その曲げ振動と超音波振動子の縦振動の共振周波数を近付けるように工夫することにより、縦振動励磁時に振動変位方向と位相の異なる曲げ振動が同時に発生し、それによって、ホーンの先端に回転運動が発生する。これを超音波圧入装置に適用した場合には、圧入部品に回転運動を加えることができ、それによって、圧入時における姿勢の崩れを防止することができる。
又、請求項4による超音波振動ユニットは、請求項3記載の超音波振動ユニットにおいて、軸方向に沿って異なる位置に設けられた第1の溝と第2の溝があり、上記第1の溝に対して60°〜120°の範囲で周方向にずれた位置に上記第2の溝が設けられているので、回転運動を得るために必要な方向に曲げ振動の振動変位を得ることができ、それによって、上記効果をより確実なものとすることができる。
又、請求項5による超音波振動ユニットは、請求項4記載の超音波振動ユニットにおいて、上記第1の溝に対して上記第2の溝の曲げ振動の位相差が60°〜120°となるように軸方向に沿ってずれた位置に設けられているので、上記回転運動を円軌道に近づけることができ、それによって、上記効果をより確実なものとすることができる。
又、請求項6による超音波振動ユニットは、請求項1記載の超音波振動ユニットにおいて、上記溝は環状溝として設けられているので、簡単な構成によって上記効果を得ることができる。
又、請求項7による超音波圧入装置は、プレス手段と、上記プレス手段の先端に取り付けられる請求項1〜請求項6の何れかに記載の超音波振動ユニットと、を具備し、上記超音波振動ユニットを介して圧入部品を被圧入部材の孔内に圧入するようにしたので、圧入部品に曲げ方向の振動を加えることができ、それによって、圧入時における姿勢の崩れを防止することができる。
又、請求項8による超音波圧入方法は、超音波振動により発生される超音波振動をホーンを介して圧入部品に付与すると共にプレス手段により押圧することにより上記圧入部品を被圧入部材の孔内に圧入する超音波圧入方法において、上記ホーンに回転運動を発生させ、それによって、圧入部品の姿勢の崩れを防止するようにしたので、圧入部品に回転運動を加えることができ、それによって、圧入時における姿勢の崩れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、超音波圧入装置の全体の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、超音波圧入装置の超音波圧入ユニットの構成を示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図2のIII−III断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図4(a)は超音波圧入装置の超音波圧入ユニットの先端部の構成を示す側面図、図4(b)は図4(a)のb部を拡大して示す側面図、図4(c)は図4(b)のc−c矢視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態を示す図で、作用・効果を説明するための測定の様子を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態を示す図で、作用・効果を説明するための特性図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図7(a)作用・効果を説明するための底面図、図7(b)は作用・効果を説明するための別のタイミングの底面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態を示す図で、図8(a)は超音波圧入装置の超音波圧入ユニットの先端部の構成を示す側面図、図8(b)は図8(a)のb部を拡大して示す側面図、図8(c)は図8(b)のc−c矢視図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態を示す図で、図9(a)は超音波圧入装置の超音波圧入ユニットの先端部の構成を示す側面図、図9(b)は図9(a)のb部を拡大して示す側面図、図9(c)は図9(b)のc−c矢視図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態を示す図で、超音波圧入装置の超音波圧入ユニットの先端部の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1乃至図7を参照して本発明の第1の実施の形態を説明する。図1は本実施の形態による超音波圧入装置の全体の構成を示す斜視図であり、まず、装置架台1がある。この装置架台1にはプレス手段としてのプレス機3が取り付けられている。この実施の形態の場合には、プレス機3が電動アクチュエータにより構成されている。すなわち、電動モータ5と、この電動モータ5に連結された図示しないボールネジと、このボールネジに螺合・配置され、ボールネジの回転によりスライドする図示しないボールナットと、このボールナットに固着されたロッド7等から構成されている。上記ボールネジ、ボールナット等はハウジング9内に内装されている。
【0011】
上記ロッド7の先端には超音波圧入ユニット11が連結されている。上記超音波圧入ユニット11は、図2及び図3に示すような構成になっている。まず、略中空円筒形状をなす接続具13があり、この接続具13の図2、図3中上端には端部材15が複数本のボルト17によって取付・固定されている。上記端部材15の中心部には雌ねじ部19が形成されている。一方、既に説明したロッド7の先端には図示しない雄ねじ部が形成されている。この雄ねじ部を上記雌ねじ部19に螺合させることにより、ロッド7と上記端部材15が連結・固定されている。
【0012】
上記接続具13内には、超音波振動子としてのランジュバン振動子21が内装されている。又、このランジュバン振動子21の先端側にはホーン23が、連結ボルト25を介して連結されている。又、上記ホーン23には鍔部材27が一体に形成されていて、この鍔部材27は上記接続具13の先端側に複数本のボルト29によって取付・固定されている。
【0013】
既に説明したプレス機3の駆動モータ5はモータ制御装置31によって制御されるものであり、又、上記ランジュバン振動子21は超音波圧入制御装置33によって制御されるように構成されている。上記ランジュバン振動子21はケーブル35、37を介して上記超音波圧入制御装置33に接続されている。上記ケーブル35、37は接続具13に形成された貫通孔39を介して設置されており、又、上記ランジュバン振動子21側には電極21a、21bが突出・配置されていて、これら電極21a、21bに上記ケーブル35、37が接続されている。又、本実施の形態の場合には、ベルトコンベア41によって搬送されてくる被圧入部材としてのワーク43に予め孔が穿孔されていて、その孔内に圧入部品としてのピン45を圧入するものである。
尚、上記ベルトコンベア41によって搬送されてくる段階では、ワーク43の孔内にピン45の下端が僅かに差し込まれた状態となっている。
【0014】
上記ホーン23は、図4に示すように、略逆円錐形状をなしている。又、その先端部には、一対の第1の溝51、51と別の一対の第2の溝53、53が形成されている。まず、上記一対の第1の溝51、51は180°の位置に対向・配置された状態で設けられている。同様に、上記一対の第2の溝53、53も180°の位置に対向・配置された状態で設けられている。上記一対の第2の溝53、53は、上記第1の溝51、51に対して、60°〜120°の範囲の任意の角度(この実施の形態の場合には90°)だけ回転方向にその位置をずらした状態で設けられている。又、上記一対の第2の溝53、53は、上記第1の溝51、51に対して、超音波振動子(ランジュバン振動子21)を駆動する周波数において、曲げ振動の位相差が60°〜120°の範囲の任意の角度(この実施の形態の場合には90°)だけずれるように、その軸方向位置をずらした状態で設けられている。
【0015】
本実施の形態の場合には、上記一対の第1の溝51、51と別の一対の第2の溝53、53を設けているものであるが、それを軸方向に沿って異なる位置に設けることにより、共振周波数が異なる複数の曲げ振動が発生する。その曲げ振動とランジュバン振動子21の縦振動の共振周波数を近付けるように工夫することにより、縦振動励振時に振動変位方向と位相の異なる曲げ振動が同時に発生し、それによって、ホーン23の先端に回転運動が発生することになる。また、超音波振動子を駆動する周波数で、溝を設けたことにより起こる曲げ振動を、励振可能にすることになる。
【0016】
又、この実施の形態の場合には、上記一対の第2の溝53、53が上記第1の溝51、51に対して90°だけ回転方向にその位置をずらした状態で設けられていると共に、上記一対の第2の溝53、53が上記第1の溝51、51に対して、曲げ振動の位相差が90°だけずれるように、その軸方向位置をずらした状態で設けられているので、上記回転運動が円軌道の回転運動になるものである。
因みに、上記各角度を90°以外の角度に設定した場合には、例えば、楕円軌道の回転運動が得られることになる。
【0017】
以上の構成を基にその作用を説明する。
まず、超音波圧入装置としての基本的な作用であるが、プレス機3によってワーク43に向かう方向に押圧力が付与されている。それと同時に、超音波圧入ユニット11によって超音波振動が付与されていて、それによって、ピン45は超音波振動が付与された状態で押圧されることになり、ワーク43の孔内に圧入されることになる。
【0018】
その際、本実施の形態の場合にはホーン23の先端部において、一対の第1の溝51、51と別の一対の第2の溝53、53が形成されているので、上記超音波圧入ユニット11により付与される縦振動によって曲げ振動が発生することになる。その結果、ピン45はその下端を支点として、その上端が水平面内で円運動を行うように回転運動する。その結果、ピン45はその姿勢が崩れることなく精度よくワーク43の孔内に圧入されることになる。
【0019】
上記ピン45の上端の円運度に関して、図5及び図6を参照して詳細に説明する。まず、図5に示すように、ホーン23先端部において、第1の溝51に対してレーザを照射し(X方向)、同じく、第2の溝53に対してもレーザを照射し(Y方向)、その回転動作をレーザ振動計によって測定した。その結果、図6に示すような結果を得ることができた。図6は横軸に時間をとり、縦軸に振幅をとり、振幅の時間変化を示す図である。図6に示すように、X方向の曲げ振動とY方向の曲げ振動が90°の位相差をもって発生しているものである。その結果、ピン45はその下端を支点として、その上端が水平面内で円運動を行うように回転運動するものである。その様子を図7に示す。図7(a)、(b)はホーン23を下からみた図であり、図7(a)に示す状態から90°だけ回転した状態が図7(b)に示す状態である。
【0020】
このような円運動が発生すると、ピン45の上端は中心に向かって移動することになり、その結果、ピン45の姿勢の崩れが効果的に防止されるものである。
【0021】
以上、本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
まず、ホーン23の先端部において、一対の第1の溝51、51と別の一対の第2の溝53、53を形成したので、超音波圧入ユニット11により発生される縦振動によって曲げ振動が発生することになり、それによって、ピン45の上端が回転運動してその姿勢の崩れを防止しようとする。それによって、ピン45の姿勢の崩れは防止され、精度の良い圧入を行うことが可能になる。
又、本実施の形態の場合には、上記一対の第2の溝53、53は、上記第1の溝51、51に対して、60°〜120°の範囲の任意の角度(この実施の形態の場合には90°)だけ回転方向にその位置をずらした状態で設けられており、又、上記一対の第2の溝53、53は、上記第1の溝51、51に対して、曲げ振動の位相差が60°〜120°の範囲の任意の角度(この実施の形態の場合には90°)だけずれるように、その軸方向位置をずらした状態で設けられているので、ピン45の上端は下端を支点として、水平面内で円運動を行うことになり、それによって、上記効果をより高めることができる。
【0022】
次に、図8を参照して本発明の第2の実施の形態を説明する。前記第1の実施の形態の場合には、一対の第1の溝51、51と別の一対の第2の溝53、53を形成したが、この実施の形態の場合には、それぞれ一個ずつの第1の溝51と第2の溝53を形成したものである。
その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同様であり、図中同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0023】
この第2の実施の形態の場合には、曲げ振動の中心がホーン23の中心に対してずれるために回転運動が軸芯に対してずれた位置に発生するが、このような構成でも前記第1の実施の形態の場合と略同様の効果を奏することができる。
【0024】
次に、図9及び図10を参照して本発明の第3の実施の形態を説明する。この第3の実施の形態の場合には、ホーン23の先端部に環状溝61を形成した構成になっている。
この実施の形態の場合には、超音波圧入ユニット11により発生される縦振動によって、上記環状溝61を設けることにより曲げ振動を発生させるようにしているが、その際、超音波振動子の共振周波数と、環状溝を設けることにより発生させる曲げ振動の共振周波数が近づくように、上記環状溝61を形成するようにしている。
尚、その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同様であり、図中同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0025】
このような構成であっても、前記第1の実施の形態、第2の実施の形態の場合と略同様の効果を奏することができる。
又、超音波振動子の共振周波数と、環状溝を設けることにより発生させる曲げ振動の共振周波数が近づくように、上記環状溝61を形成するようにしているので、環状のどの方向にも曲げ振動を起こし易くする効果が得られる。又、且つ、環状溝61を形成したホーン23の先端に圧入ピン45の端が接触し、その際、圧入ピン45の姿勢が傾いている場合、傾き方向に曲げ振動が大きく発生することになり、それによって、圧入ピン45の傾き補正効果が得られる。
【0026】
尚、本発明は前記第1〜第3の実施の形態に限定されるものではない。
まず、前記第1及び第2の実施の形態の場合には、第1の溝と第2の溝の両方を設ける構成を例に挙げて説明したが、何れか一方の場合でもある程度の効果を奏することはできる。
又、周方向3個所以上の場所において3種類以上の溝を設ける構成も考えられる。
又、前記第1及び第2の実施の形態の場合には、第1の溝と第2の溝の両方を設ける構成において、上記第2の溝を第1の溝に対して、60°〜120°の範囲で90°に設定した場合を例に挙げて説明したが、90°以外の角度で回転方向にその位置をずらした状態で設けることも考えられ、又、第2の溝を第1の溝に対して、曲げ振動の位相差が60°〜120°の範囲の90°に設定した場合を例に挙げて説明したが、90°以外の角度だけずれるようにその軸方向位置をずらした状態で設けることも考えられる。その場合には、ピンの上端は下端を支点として水平面内で楕円運動を行うことになる。
又、60°〜120°の範囲以外の角度で回転方向にその位置をずらして設定するようにしても良いし、60°〜120°の範囲以外の角度で曲げ振動の位相差を設定するようにしても良い。
又、超音波振動子としては、ランジュバン振動子以外にも、様々なタイプのものが考えられ、例えば、磁歪素子のようなものを使用することも考えられる。
又、ホーンに螺旋又は斜めの溝を設けることにより回転運動を発生させるようにしても良い。
又、前記各実施の形態の場合には、ホーンの形状を略逆円錐形状としたが、それに限定されるものではなく、例えば、漏斗形状のようなものも想定される。
又、前記各実施の形態の場合には、超音波圧入装置に適用した場合を例に挙げて説明しているが、それに限定されるものではなく、別の用途の機械に対しても適用可能である。
その他、図示した構成はあくまで一例である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、超音波振動ユニットと、そのような超音波振動ユニットを使用し、圧入部品としてのピンを被圧入部材としてのワークに設けられた孔内に超音波振動を加えながら圧入する超音波圧入装置と超音波圧入方法に係り、特に、圧入動作時における圧入部品の姿勢の崩れ(例えば、捩れ、傾斜等)を防止して精度良く圧入することができるように工夫したものに関し、例えば、ピンをワークの孔内に超音波圧入する場合に好適である。
【符号の説明】
【0028】
3 プレス機(プレス手段)
11 超音波振動ユニット
43 ワーク(被圧入部材)
45 ピン(圧入部品)
12 ランジュバン振動子(超音波振動子)
23 ホーン
51 第1の溝
53 第2の溝



【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動子により発生された超音波振動をホーンを介して出力する超音波振動ユニットにおいて、
上記ホーンに溝を設けることにより曲げ振動が発生し易い状態にしたことを特徴とする超音波振動ユニット。
【請求項2】
請求項1記載の超音波振動ユニットにおいて、
円周方向に沿って異なる位置に複数の溝を設けるようにしたことを特徴とする超音波振動ユニット。
【請求項3】
請求項2記載の超音波振動ユニットにおいて、
上記複数の溝を軸方向に沿って異なる位置に設けるようにしたことを特徴とする超音波振動ユニット。
【請求項4】
請求項3記載の超音波振動ユニットにおいて、
軸方向に沿って異なる位置に設けられた第1の溝と第2の溝があり、上記第1の溝に対して60°〜120°の範囲で周方向にずれた位置に上記第2の溝が設けられていることを特徴とする超音波振動ユニット。
【請求項5】
請求項4記載の超音波振動ユニットにおいて、
上記第1の溝に対して上記第2の溝の曲げ振動の位相差が60°〜120°となるように軸方向に沿ってずれた位置に設けられていることを特徴とする超音波振動ユニット。
【請求項6】
請求項1記載の超音波振動ユニットにおいて、
上記溝は環状溝であることを特徴とする超音波振動ユニット。
【請求項7】
プレス手段と、上記プレス手段の先端に取り付けられる請求項1〜請求項6の何れかに記載の超音波振動ユニットと、を具備し、上記超音波振動ユニットを介して圧入部品を被圧入部材の孔内に圧入するようにしたことを特徴とする超音波圧入装置。
【請求項8】
超音波振動により発生される超音波振動をホーンを介して圧入部品に付与すると共にプレス手段により押圧することにより上記圧入部品を被圧入部材の孔内に圧入する超音波圧入方法において、
上記ホーンに回転運動を発生させ、それによって、圧入部品の姿勢の崩れを防止するようにしたことを特徴とする超音波圧入方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−72990(P2011−72990A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199189(P2010−199189)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(391008515)株式会社アイエイアイ (107)
【Fターム(参考)】