説明

超音波振動子ユニット

【課題】振動面の振動モードを均一化させて洗浄力を向上させる超音波振動子ユニットを提供する。
【解決手段】本発明の超音波振動子ユニットは、振動面1aと、互いに隣り合い且つ振動面1aに超音波振動を加える第1乃至第3の振動子5aとを具備し、板状振動体10の他方面は、第1乃至第3の第1領域3と、第1領域3それぞれを覆う第2領域4とを有し、第1乃至第3の振動子それぞれは第1領域3に配置され、第1乃至第3の振動子によって他方面内に作られる三角形の内側に位置し且つ第2領域4に位置する板状振動体10の厚さは、第1乃至第3の第1領域3に位置する板状振動体の厚さより厚く形成され、第1乃至第3の振動子の相互の間隔はλ/2以上であり、第1領域3それぞれの外周は第1乃至第3の振動子それぞれからλ/4以上離れている。λは板状振動体の横波の波長である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄槽内の洗浄液に超音波を照射するための超音波振動子ユニット等に関する。
【背景技術】
【0002】
図8(A)は、従来の超音波振動子ユニットを示す平面図であり、図8(B)は,図8(A)に示す7B−7B'に沿う断面図である。
【0003】
従来の超音波振動子ユニットは、図示せぬ洗浄槽内の洗浄液に振動面から超音波を照射するものであり、例えば洗浄槽に超音波振動子ユニットを投げ込んで使用する投込型超音波振動子として用いても良い。
【0004】
この超音波振動子ユニットは厚さが一定のSUS製の振動板101を有しており、この振動板101の一方面には振動面101aが形成されている。振動板101の他方面上には複数のボルト締めランジュバン振動子(以下、「BL振動子」という。)102が接着されており、複数のBL振動子102は振動面101aに超音波振動を加えるものである。
【0005】
BL振動子102は一般的に円形の振動面を持つため、BL振動子102からの振動は振動板101の振動面101aにおいて円状に広がり、隣のBL振動子からの振動と干渉して複雑な振動モードを発生してしまう。詳細には、振動面101aは本来の縦振動の他に隣のBL振動子102からの振動の影響を受け、複雑な振動モードの横振動が発生し、特定の振動子に超音波電力が集中したり、洗浄効果が低下するといった問題があった。
【0006】
そこで、超音波振動子ユニットにおいて振動面101aの振動モードを改善し、音場の均一化や洗浄効果の向上が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、振動面の振動モードを均一化させて洗浄力を向上させる超音波振動子ユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、洗浄槽内の洗浄液に超音波を照射するための超音波振動子ユニットにおいて、
板状振動体と、
前記板状振動体の一方面に形成された振動面と、
前記板状振動体の他方面上に取り付けられ、互いに隣り合い且つ前記振動面に超音波振動を加える第1乃至第3の振動子と、
を具備し、
前記板状振動体の他方面は、第1乃至第3の第1領域と、前記第1乃至第3の第1領域それぞれを覆う第2領域とを有し、
前記第1の振動子は前記第1の第1領域に配置され、
前記第2の振動子は前記第2の第1領域に配置され、
前記第3の振動子は前記第3の第1領域に配置され、
前記第1乃至第3の振動子によって前記他方面内に作られる三角形の内側に位置し且つ前記第2領域に位置する前記板状振動体の厚さは、前記第1乃至第3の第1領域に位置する前記板状振動体の厚さより厚くまたは薄く形成され、
前記第1乃至第3の振動子の相互の間隔は、λ/2以上であり、
前記第1乃至第3の第1領域それぞれの外周は、前記第1乃至第3の振動子それぞれからλ/4以上離れていることを特徴とする超音波振動子ユニットである。
ただし、前記λは、前記第1乃至第3の振動子それぞれによって超音波振動が加えられることで発生する前記板状振動体の横波の波長である。
【0009】
また、本発明の一態様において、
前記板状振動体は、振動板及び錘を有し、
前記第1乃至第3の振動子は、前記振動板上に取り付けられ、
前記錘が前記第2領域に位置する前記振動板上に取り付けられることで、前記第2領域に位置する前記板状振動体の厚さが、前記第1乃至第3の第1領域に位置する前記板状振動体の厚さより厚く形成されることも可能である。
【0010】
また、本発明の一態様において、
前記錘は、前記第2領域に位置する前記振動板上に接合された板状体であることも可能である。
【0011】
また、本発明の一態様において、
前記板状振動体は、振動板を有し、
前記第1乃至第3の振動子は、前記振動板上に取り付けられ、
前記第1乃至第3の第1領域に位置する前記振動板が削り込まれることで、前記第2領域に位置する前記板状振動体の厚さが、前記第1領域に位置する前記板状振動体の厚さより厚く形成されることも可能である。
【0012】
また、本発明の一態様において、
前記板状振動体は、穴または溝を備えた振動板を有し、
前記第1乃至第3の振動子は、前記振動板上に取り付けられ、
前記穴または溝が前記第2領域に位置する前記振動板に彫り込まれることで、前記第2領域に位置する前記板状振動体の厚さが、前記第1乃至第3の第1領域に位置する前記板状振動体の厚さより薄く形成されることも可能である。
【0013】
本発明の一態様は、洗浄槽内の洗浄液に超音波を照射するための超音波振動子ユニットにおいて、
板状振動体と、
前記板状振動体の一方面に形成された振動面と、
前記板状振動体の他方面上に取り付けられ、前記振動面に超音波振動を加える3個以上の振動子と、
を具備し、
前記板状振動体の他方面は、3個以上の第1領域と、前記第1領域それぞれを覆う第2領域とを有し、
前記第2領域に位置する前記板状振動体の厚さは、前記第1領域に位置する前記板状振動体の厚さより厚くまたは薄く形成され、
前記3個以上の振動子それぞれは前記第1領域に配置され、
前記3個以上の振動子における互いに隣り合う振動子の間隔は、λ/2以上であり、
前記第1領域の外周は、前記第1領域に配置された前記振動子からλ/4以上離れていることを特徴とする超音波振動子ユニットである。
ただし、前記λは、前記3個以上の振動子それぞれによって超音波振動が加えられることで発生する前記板状振動体の横波の波長である。
【0014】
また、本発明の一態様において、
前記板状振動体は、振動板及び板状の錘を有し、
前記3個以上の振動子は、前記振動板上に取り付けられ、
前記板状の錘が前記第2領域に位置する前記振動板上に接着されることで、前記第2領域に位置する前記板状振動体の厚さが、前記3個以上の第1領域に位置する前記板状振動体の厚さより厚く形成されることも可能である。
【0015】
また、本発明の一態様において、
前記板状振動体は、振動板を有し、
前記3個以上の振動子は、前記振動板上に取り付けられ、
前記3個以上の第1領域に位置する前記振動板が削り込まれることで、前記第2領域に位置する前記板状振動体の厚さが、前記3個以上の第1領域に位置する前記板状振動体の厚さより厚く形成されることも可能である。
【0016】
また、本発明の一態様において、
前記板状振動体は、溝を備えた振動板を有し、
前記3個以上の振動子は、前記振動板上に取り付けられ、
前記溝が前記第2領域に位置する前記振動板に彫り込まれることで、前記第2領域に位置する前記板状振動体の厚さが、前記3個以上の第1領域に位置する前記板状振動体の厚さより薄く形成されることも可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、振動面の振動モードを均一化させて洗浄力を向上させる超音波振動子ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)は本発明の一態様に係る超音波振動子ユニットを示す平面図、(B)は(A)に示す1B−1B'線に沿う断面図である。
【図2】(A)は本発明の一態様に係る超音波振動子ユニットを示す平面図、(B)は(A)に示す2B−2B'線に沿う断面図である。
【図3】(A)は本発明の一態様に係る超音波振動子ユニットを示す平面図、(B)は(A)に示す3B−3B'線に沿う断面図である。
【図4】(A)は本発明の一態様に係る超音波振動子ユニットを示す平面図、(B)は(A)に示す4B−4B'線に沿う断面図である。
【図5】(A)は本発明の一態様に係る超音波振動子ユニットを示す平面図、(B)は(A)に示す5B−5B'線に沿う断面図である。
【図6】(A)は図8に示す超音波振動子ユニットの振動面直上の音圧特性を示す図、(B)は図1に示す超音波振動子ユニットの振動面直上の音圧特性を示す図である。
【図7】(A)は図8に示す超音波振動子ユニットのアドミッタンス特性の変化を示す図、(B)は図1に示す超音波振動子ユニットのアドミッタンス特性の変化を示す図である。
【図8】(A)は従来の超音波振動子ユニットを示す平面図、B)は(A)に示す7B−7B'に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0020】
(第1の実施形態)
図1(A)は本発明の一態様に係る超音波振動子ユニットを示す平面図であり、図1(B)は図1(A)に示す1B−1B'線に沿う断面図である。
【0021】
超音波振動子ユニットは、図示せぬ洗浄槽内の洗浄液に振動面から超音波を照射するものであり、例えば洗浄槽に超音波振動子ユニットを投げ込み、図示せぬ発振器によってBL振動子2を超音波振動させることで振動面1aから超音波を洗浄液に照射することができる。なお、本実施形態では、BL振動子2を用いているが、他の振動子を用いても良く、例えばフェライト振動子を用いても良い。
【0022】
超音波振動子ユニットは板状振動体10と複数のBL振動子2を備えており、この板状振動体10は振動板1と第1及び第2の錘5a,5bを有している。振動板1としては例えば厚さが一定の金属製(例えばSUS、ハステロイ、チタン等)の振動板を用いることができる。振動板1の一方面には振動面1aが形成されており、振動板1の他方面上には複数のBL振動子2が接合されている。振動板1とBL振動子2を接合する方法としては、例えば接着剤を用いて接合しても良いし、スタットボルトと接着剤等を用いて接合しても良い。複数のBL振動子2は振動面1aに超音波振動を加えるものである。
【0023】
図1(A)に示すように、複数のBL振動子2は、振動板1の他方面上において互いに隣り合う3個のBL振動子2の中心を結ぶことで作られる形状が三角形となるように配置され、隣り合う2個のBL振動子2の相互の間隔がλ/2以上となるように配置されている。また、振動板1の厚さは、縦波のλ/100以下が好ましい。しかし、スタットボルト付では強度やエロージョン耐久性から2mm〜10mm迄の厚さの振動板1を用いることも可能である。λは、BL振動子2によって超音波振動が加えられることで発生する振動板1の縦波の波長である。
【0024】
複数のBL振動子2それぞれは振動板1の他方面の第1領域3上に配置されており、第1領域3の外周は複数のBL振動子2それぞれを囲んでいる。第1領域3の外周は、その第1領域3に配置されたBL振動子2からλ/4離れている。なお、本実施形態では、複数のBL振動子2を上述した正三角形となるような配置としているが、隣り合う2個のBL振動子2の相互の間隔がλ/2以上で且つ第1領域3の外周がBL振動子2からλ/4以上離れていれば、複数のBL振動子2の配置が上述した正三角形となる必要は必ずしもない。ただし、振動板1の他方面の単位面積当たりのBL振動子2の数をなるべく多く配置しようとする場合は、図1(A)に示すような配置とするのが好ましい。
【0025】
振動板1の他方面は複数の第1領域3それぞれを覆う第2領域4を有しており、上述した3個のBL振動子2によって作られる三角形の内側で且つ第2領域4に位置する振動板1の他方面上には第1の錘5aが設けられている。第1の錘5aと3個のBL振動子2それぞれとの間隔は略等しいことが好ましく、第1の錘5aは3個のBL振動子2の中央点に設置されていることが好ましい。
【0026】
また、図1(A)に示すように、振動板1の端側に位置する隣り合う2個のBL振動子2から略等しい距離に位置し且つ振動板1の端側に位置する第2領域4には第2の錘5bが設けられている。
【0027】
第1及び第2の錘5a,5bそれぞれの質量はBL振動子2の質量の1/150以上であることが好ましい。また、第1及び第2の錘5a,5bそれぞれの高さは、BL振動子2によって超音波振動が加えられることで発生する振動板1の縦振動の波長λ'の1/2の共振長の90%以下の高さであることが好ましく、第1及び第2の錘5a,5bそれぞれの直径は、λ'/2の整数倍近傍以外の大きさであることが好ましい。これにより、第1及び第2の錘5a,5bそれぞれが共振することを抑制できる。
【0028】
また、第1及び第2の錘5a,5bそれぞれの形状は、円筒、角形、多角形形、円錐、台形の形状、スタットボルトまたは板でも良い。また、第1及び第2の錘5a,5bそれぞれの材料は、ステンレス、チタン、チタン合金、アルミニューム、アルミニューム合金、鉄、銅、タンタルなどの金属を使用しても良いし、陶器、磁器、セラミックス、フェライト石英などでも振動板1に接着できれば使用しても良い。
【0029】
また、第1及び第2の錘5a,5bそれぞれと振動板1との接合は溶接が好ましいが、接着剤によって接着しても良い。また、BL振動子2の対応周波数は300kHz以下が好ましい。
【0030】
本実施形態によれば、第1及び第2の錘5a,5bを上述したように第2領域4に位置する振動板1上に取り付けることで、第1及び第2の錘5a,5bが取り付けられた部分の板状振動体10の厚さが第1領域3に位置する板状振動体10の厚さより厚く形成される。このため、BL振動子2からの振動が振動板1の振動面1aにおいて円状に広がる際に、第1及び第2の錘5a,5bによって板状振動体10の厚さが異なる部分における振動の伝達を抑制でき、その結果、隣のBL振動子2からの振動との干渉が抑制され、複雑な振動モードの発生を抑制することができる。特に、三角形配置の3個のBL振動子2による3方向からの振動が干渉して複雑な振動モードの横振動の発生を抑制でき、その結果、特定のBL振動子への超音波電力の集中を抑制でき、振動面1aの振動モードを均一化させて洗浄力を向上させることができる。
【0031】
また、第1領域3に第1及び第2の錘5a,5bを配置しない理由は、BL振動子2の周辺のλ/4の範囲はほぼ理想振動となっているため、この範囲の振動を制限しないようにするのが好ましいからである。また、第2領域4に第1及び第2の錘5a,5bを配置する理由は、錘を追加することでBL振動子2の周辺のλ/4を越えた範囲の振動を抑制し、BL振動子2間の相互の影響を低下させ、振動面全体の振動モードを理想振動に近づけるためである。
【0032】
上記の洗浄力の向上効果は、第1の錘5aによる効果が特に顕著であり、第2の錘5bによる効果は認められるが第1の錘5aよる効果より低いものである。なお、第1及び第2の錘5a,5bは、図1(A)に示すように設置しなくても良く、例えば振動面1aの振動モードが悪い所にのみ設置しても良い。
【0033】
また、振動面1aの振動モードを均一化することにより、振動面1aにおけるエロージョンの発生を抑制することもできる。
【0034】
なお、本実施形態では、第1及び第2の錘5a,5bを第2領域4に位置する振動板1上に取り付け、第1及び第2の錘5a,5bの厚さは第1領域3に位置する振動体1の厚さより厚く形成しているが、第2の領域4に位置する振動板1に穴または溝を設けることで、穴または溝が設けられた部分の板状振動体の厚さを第1領域3に位置する板状振動体の厚さより薄く形成することも可能である。この穴は振動板1の板厚をつきぬけていない穴で座ぐり等の方法で加工されるようにする。このような場合においても本実施形態と同様の効果を得ることができる。
錘の質量はBL振動子の1/150以上が好ましい。
【0035】
(第2の実施形態)
図2(A)は本発明の一態様に係る超音波振動子ユニットを示す平面図であり、図2(B)は図2(A)に示す2B−2B'線に沿う断面図である。図2において、図1と同一部分には同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0036】
第1及び第2の錘5a,5bそれぞれは、振動板1に溶着されたスタットボルト8にねじ込まれている。
【0037】
本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0038】
(第3の実施形態)
図3(A)は本発明の一態様に係る超音波振動子ユニットを示す平面図であり、図3(B)は図3(A)に示す3B−3B'線に沿う断面図である。図3において、図1と同一部分には同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0039】
錘5cは、第2領域4に位置する振動板1上に接着された板状体であり、板状の錘5cの厚さは、振動板1の厚さの1/10以上であることが好ましい。詳細には、板状振動体10は振動板1及び板状の錘5cを有しており、板状の錘5cが第2領域4に位置する振動板1上に接着または溶着されることで、第2領域4に位置する板状振動体10の厚さが、第1領域3に位置する板状振動体10の厚さより厚く形成される。
【0040】
本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0041】
(第4の実施形態)
図4(A)は本発明の一態様に係る超音波振動子ユニットを示す平面図であり、図4(B)は図4(A)に示す4B−4B'線に沿う断面図である。図4において、図1と同一部分には同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0042】
板状振動体10は振動板1を有しており、複数の第1領域3に位置する振動板1が削り込まれることまたは掘り込まれることで、第2領域4に位置する板状振動体10の厚さ(即ち振動板1の厚さ)が、複数の第1領域3に位置する板状振動体10の厚さより厚く形成される。
【0043】
第2領域4に位置する振動板1の厚さは、複数の第1領域3に位置する振動板1の厚さの1.1倍以上であることが好ましい。
【0044】
本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
(第5の実施形態)
図5(A)は本発明の一態様に係る超音波振動子ユニットを示す平面図であり、図5(B)は図5(A)に示す5B−5B'線に沿う断面図である。図5において、図1と同一部分には同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0046】
板状振動体10は振動板1を有しており、第1領域の外で第2領域との境に位置する振動板1に溝5dが彫り込まれることで、第2領域4に位置する板状振動体10の厚さ(即ち振動板1の厚さ)が、第1領域3に位置する板状振動体10の厚さより薄く形成される。
【0047】
溝5dは、深さが0.5mm以上で幅が0.2mm以上であることが好ましい。溝5dの断面形状は、種々の形状を用いることが可能であり、例えば、箱型でも良いし、V字型でも良いし、U字型でも良い。
【0048】
本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0049】
図6(A)は、図8に示す超音波振動子ユニットのBL振動子を超音波振動させることで振動面から超音波を洗浄液に照射した際の振動面直上の音圧特性を示す図であり、図6(B)は、図1に示す超音波振動子ユニットのBL振動子を超音波振動させることで振動面から超音波を洗浄液に照射した際の振動面直上の音圧特性を示す図である。
【0050】
図6(A),(b)それぞれの超音波振動子ユニットの仕様は、周波数38kHz、600W、外径320mm×220mmであり、BL振動子を13本使用している。図6(A)の平均音圧は573mVであり、図6(B)の平均音圧は757mVである。
【0051】
図6(A),(B)によれば、図1に示す超音波振動子ユニットの振動面直上の方が、明らかに音場が均一化され、音圧も上がっていることが分かる。
【0052】
図7は、38kHz振動子のアドミッタンス特性の改善例を示すものであって、図7(A)は、図8に示す超音波振動子ユニットのBL振動子を3本纏めたアドミッタンス特性の変化を測定した結果を示す図であり、図7(B)は、図1に示す超音波振動子ユニットのBL振動子を3本纏めたアドミッタンス特性の変化を測定した結果を示す図である。
【0053】
図7(A),(B)それぞれのアドミッタンス特性の測定条件は、厚さ3mmのSUS304の振動板を用い、BL振動子の周波数を38kHzとした。
【0054】
図7(A)では、主共振が押さえつけられた様に分散し、また共振点の値も低くなっているのに対し、図7(B)では、共振点の値が大きく、また鋭く立ちあがり、主共振が理想的な形となり、錘をつけることで主共振が大幅に改善されたことが分かる。
【符号の説明】
【0055】
1,101…振動板
1a,101a…振動面
2,102…BL振動子
3…第1領域
4…第2領域
5a…第1の錘
5b…第2の錘
5c…板状の錘
5d…溝
8…スタットボルト
10…板状振動体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄槽内の洗浄液に超音波を照射するための超音波振動子ユニットにおいて、
板状振動体と、
前記板状振動体の一方面に形成された振動面と、
前記板状振動体の他方面上に取り付けられ、互いに隣り合い且つ前記振動面に超音波振動を加える第1乃至第3の振動子と、
を具備し、
前記板状振動体の他方面は、第1乃至第3の第1領域と、前記第1乃至第3の第1領域それぞれを覆う第2領域とを有し、
前記第1の振動子は前記第1の第1領域に配置され、
前記第2の振動子は前記第2の第1領域に配置され、
前記第3の振動子は前記第3の第1領域に配置され、
前記第1乃至第3の振動子によって前記他方面内に作られる三角形の内側に位置し且つ前記第2領域に位置する前記板状振動体の厚さは、前記第1乃至第3の第1領域に位置する前記板状振動体の厚さより厚くまたは薄く形成され、
前記第1乃至第3の振動子の相互の間隔は、λ/2以上であり、
前記第1乃至第3の第1領域それぞれの外周は、前記第1乃至第3の振動子それぞれからλ/4以上離れていることを特徴とする超音波振動子ユニット。
ただし、前記λは、前記第1乃至第3の振動子それぞれによって超音波振動が加えられることで発生する前記板状振動体の横波の波長である。
【請求項2】
請求項1において、
前記板状振動体は、振動板及び錘を有し、
前記第1乃至第3の振動子は、前記振動板上に取り付けられ、
前記錘が前記第2領域に位置する前記振動板上に取り付けられることで、前記第2領域に位置する前記板状振動体の厚さが、前記第1乃至第3の第1領域に位置する前記板状振動体の厚さより厚く形成されることを特徴とする超音波振動子ユニット。
【請求項3】
請求項2において、
前記錘は、前記第2領域に位置する前記振動板上に接合された板状体であることを特徴とする超音波振動子ユニット。
【請求項4】
請求項1において、
前記板状振動体は、振動板を有し、
前記第1乃至第3の振動子は、前記振動板上に取り付けられ、
前記第1乃至第3の第1領域に位置する前記振動板が削り込まれることで、前記第2領域に位置する前記板状振動体の厚さが、前記第1領域に位置する前記板状振動体の厚さより厚く形成されることを特徴とする超音波振動子ユニット。
【請求項5】
請求項1において、
前記板状振動体は、穴または溝を備えた振動板を有し、
前記第1乃至第3の振動子は、前記振動板上に取り付けられ、
前記穴または溝が前記第2領域に位置する前記振動板に彫り込まれることで、前記第2領域に位置する前記板状振動体の厚さが、前記第1乃至第3の第1領域に位置する前記板状振動体の厚さより薄く形成されることを特徴とする超音波振動子ユニット。
【請求項6】
洗浄槽内の洗浄液に超音波を照射するための超音波振動子ユニットにおいて、
板状振動体と、
前記板状振動体の一方面に形成された振動面と、
前記板状振動体の他方面上に取り付けられ、前記振動面に超音波振動を加える3個以上の振動子と、
を具備し、
前記板状振動体の他方面は、3個以上の第1領域と、前記第1領域それぞれを覆う第2領域とを有し、
前記第2領域に位置する前記板状振動体の厚さは、前記第1領域に位置する前記板状振動体の厚さより厚くまたは薄く形成され、
前記3個以上の振動子それぞれは前記第1領域に配置され、
前記3個以上の振動子における互いに隣り合う振動子の間隔は、λ/2以上であり、
前記第1領域の外周は、前記第1領域に配置された前記振動子からλ/4以上離れていることを特徴とする超音波振動子ユニット。
ただし、前記λは、前記3個以上の振動子それぞれによって超音波振動が加えられることで発生する前記板状振動体の横波の波長である。
【請求項7】
請求項6において、
前記板状振動体は、振動板及び板状の錘を有し、
前記3個以上の振動子は、前記振動板上に取り付けられ、
前記板状の錘が前記第2領域に位置する前記振動板上に接着されることで、前記第2領域に位置する前記板状振動体の厚さが、前記3個以上の第1領域に位置する前記板状振動体の厚さより厚く形成されることを特徴とする超音波振動子ユニット。
【請求項8】
請求項6において、
前記板状振動体は、振動板を有し、
前記3個以上の振動子は、前記振動板上に取り付けられ、
前記3個以上の第1領域に位置する前記振動板が削り込まれることで、前記第2領域に位置する前記板状振動体の厚さが、前記3個以上の第1領域に位置する前記板状振動体の厚さより厚く形成されることを特徴とする超音波振動子ユニット。
【請求項9】
請求項6において、
前記板状振動体は、溝を備えた振動板を有し、
前記3個以上の振動子は、前記振動板上に取り付けられ、
前記溝が前記第2領域に位置する前記振動板に彫り込まれることで、前記第2領域に位置する前記板状振動体の厚さが、前記3個以上の第1領域に位置する前記板状振動体の厚さより薄く形成されることを特徴とする超音波振動子ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図8】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−125743(P2012−125743A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281902(P2010−281902)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000124959)株式会社カイジョー (83)
【Fターム(参考)】