説明

超音波探傷装置の探触子用の治具

【課題】 被検査体との関係において、探触子が具体的にどこにあるかという位置情報を把握する機能を有し、検査しようとする溶接部から探傷子までの位置等を、正確且つ簡便に計測することができる探傷子用の治具を提供することを目的とする。
【解決手段】 治具1は、本体2及びガイド部材3から基本的に構成され、ガイド部材3は、ガイド部材3の一部を構成するガイドプレート3bの外側面と本体2の一部を構成するベースプレート2bの外側面との仮想交線を軸として自由に回動できるように本体2に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探傷装置の探触子用の治具に関し、特に、被検査体との関係において、探触子がどこにあるかという位置情報を把握する機能を有する探触子用の治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、溶接部の欠陥等を、被検査体を破壊することなく探知する方法として、超音波探傷法が知られている。超音波探傷法は、被検査体の表面に、超音波パルスを送受信する探触子を密着させて移動させながら、反射波をモニターにて確認することによって、被検査体内部の検査を行う方法である。
【0003】
ところで、この超音波探傷法においては、探触子を密着させる際に、探触子を被検査体に一定の強さで押し付ける必要がある。これは、探触子を押さえ付ける強さが一定でないと、超音波パルスの読み取りを同一条件下で行えないため、被検査体内部の正確な検査が行えない、という問題が生じるからである。
【0004】
そこで、探触子を被検査体に一定の強さで押さえ付けることを可能にするため、従来より、探触子を保持固定するための治具が開発されている。例えば、実開昭61−155762号公報(特許文献1)や、特開平11−142379号公報(特許文献2)には、このような治具に関する技術が開示されている。
【特許文献1】実開昭61−155762号公報
【特許文献2】特開平11−142379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの特許文献に開示された探触子用の治具は、主として、探触子を被検査体に密着させることを目的として開発されているため、探触子が、被検査体との関係において、具体的にどこにあるかという位置情報を把握する機能は有していない。そのため、これら従来の治具だけでは、例えば溶接欠陥の場合、検査しようとする溶接部から探傷子までの位置等を正確且つ簡便に計測できない、という問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであって、探触子が、被検査体との関係において、具体的にどこにあるかという位置情報を把握する機能を有し、検査しようとする溶接部から探傷子までの位置等を、正確且つ簡便に計測することができる探傷子用の治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのための手段として、本発明に係る超音波探傷装置の探傷子用の治具は、本体、ガイド部材、及び、探触子保持機構から構成されており、前記ガイド部材は、当該ガイド部材の一部を構成するガイドプレートの外側面と前記本体の一部を構成するベースプレートの外側面との仮想交線を軸として自由に回動できるように前記本体に取り付けられており、前記探触子保持機構は、超音波探傷装置用の探触子を保持するように構成され、前記本体の一部に取り付けられており、前記ベースプレートの外側面及び前記ガイドプレートの外側面において、マグネットが配設されていることを主な特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る探傷子用の治具は、探触子が、被検査体との関係において、具体的にどこにあるかという位置情報を把握する機能を有しているので、本発明に係る探傷子用の治具によれば、検査しようとする溶接部から探傷子までの位置等を、正確且つ簡便に計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る探傷子用の治具1を示したものである。図示されているように、この治具1は、本体2、ガイド部材3、及び、探触子保持機構4から構成されている。
【0010】
また、図2は、治具1を、既設橋梁の鋼床版21において使用した際の様子を示したものである。尚、図2において、22はデッキプレート、23はトラフリブ、24は舗装、25はデッキプレート22とトラフリブ23との溶接部、26は溶接基準位置(デッキプレート22及びトラフリブ23の溶接された側の面同士が交わる位置)を示している。また、図2では、治具1を構成する本体2及びガイド部材3の構造を分かり易く示すため、探触子保持機構4の記載を省略してある。
【0011】
これらの図に示されているように、治具1の本体2は、方形状の平面板からなるベースプレート2bと、当該ベースプレート2bに対して垂直に延びる平面板であって、中心部分を欠く扇形をした二つの側壁2s,2sとから構成されている。
【0012】
また、治具1のガイド部材3は、方形状の平面板からなるガイドプレート3bと、当該ガイドプレート3bに対して垂直に延びる平面板であって、中心部分を欠く扇形をした二つの側壁3s,3sとから構成されている。そして、ガイド部材3は、ガイドプレート3bの外側面とベースプレート2bの外側面との仮想交線を軸として自由に回動できるように、本体2の内側に取り付けられている。
【0013】
尚、このようなガイド部材3の動きを可能にするため、図示されているように、ガイド部材3の側壁3s,3sには、前記仮想交線を中心とする円弧に沿って形成されたガイド溝5が、また、本体2の側壁2s,2sには、このガイド溝5内を移動するように構成された凸部6がそれぞれ設けられている。
【0014】
また、ベースプレート2bの外側面、及び、ガイドプレート3bの外側面には、それぞれの外側面の一部をなすようにして、マグネット7が配設されている。
【0015】
探触子保持機構4は、図1に示されているように、フレーム8、二つのガイドレール9,9、送りネジ10、及び、探触子固定用の基台11からなり、本体2の一方の側壁2sの外側に取り付けられている。そして、この探触子保持機構4は、送りネジ10の一端に取り付けられたツマミ12を回転させることによって、基台11が、フレーム8の内側に取り付けられたガイドレール9,9に沿って往復移動するように構成されている。尚、図1において、13は、基台11に固定された探触子を示している。
【0016】
そして、図2に示されているように、本実施形態に係る治具1は、ベースプレート2bの外側面においてデッキプレート22に、また、ガイドプレート3bの外側面においてトラフリブ23に、マグネット7の磁力によって密着し、この状態で治具として使用されるようになっている。この際、本体2の側壁2s,2s、及び、ガイド部材3の側壁3s,3sが、中心部分を欠く扇形をしているので、治具1は、溶接部25に当たることなく、デッキプレート22及びトラフリブ23に密着することができる。
【0017】
本実施形態に係る治具1は、このようにして鋼床版21に密着するようになっているので、治具1を鋼床版21に密着させた場合、治具1における仮想交線と、溶接基準線26とが常に一致するようになっている。従って、この治具1によれば、デッキプレート22とトラフリブ23とに密着させて、治具1の仮想交線から探触子13までの距離を計測するだけで、溶接基準位置から探触子13までの位置を正確に求めることができる。
【0018】
このように、本実施形態に係る治具1は、被検査体との関係において、探触子が具体的にどこにあるかという位置情報を把握する機能を有している。そのため、本実施形態に係る治具1によれば、検査しようとする溶接部から探傷子までの位置等を、正確且つ簡便に計測することができる。
【0019】
また、本実施形態に係る治具1のガイド部材3は、先に説明したように、ガイドプレート3bの外側面とベースプレート2bの外側面との仮想交線を軸として自由に回動できるように本体2に取り付けられているので、デッキプレート22とトラフリブ23とがどのような角度で接合されていても、これらに確実に密着することができる。従って、デッキプレートとトラフリブとからなる鋼床版であれば、あらゆる鋼床版に対して、本実施形態に係る治具1を使用することができる。
【0020】
さらに、本実施形態に係る治具1は、ツマミ12を回転させることによって、基台11を移動できるようになっているので、治具1によれば、本体2を被検査体に磁着固定したまま、探触子12を動かすことができる。従って、作業者にとって容易且つ簡便に、反射波のピーク位置の確認をすることができる。
【0021】
この場合、ここでは図示はしないが、基台11の移動量、すなわち、探触子12の移動量を簡単に計測することができるように、ミリ単位の目盛等の計測手段を、フレーム8の上面に設けても良い。
【0022】
また、ベースプレート2bの外側面、及び、ガイドプレート3bの外側面に配設されたマグネット7が、被検査体に直接当たらないようにするため、当該両外側面において、マグネット7よりも僅かに突き出た脚部を設けても良い。また、この場合、脚部を車輪やコロ等に置き換えれば、治具1を被検査体に磁着させたまま移動させることもできる。
【0023】
尚、以上の説明においては、本発明に係る治具1を、既設橋梁におけるデッキプレートとトラフリブとの溶接部の探傷検査について説明したが、本発明に係る探傷子用の治具は、この他、橋梁の横リブ溶接部等の探傷検査にも使用することができる。また、橋梁の溶接部に限られず、T字継手やすみ継手等、所定の角度を有するように溶接された二つの部材の溶接部を探傷するための探触子用の治具として、使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る治具1の斜視図。
【図2】本発明に係る治具1を既設橋梁の鋼床版21に使用した様子を示した図。
【符号の説明】
【0025】
1:治具、
2:本体、
3:ガイド部材、
4:探触子保持機構、
5:ガイド溝、
6:凸部、
7:マグネット、
8:フレーム、
9:ガイドレール、
10:送りネジ、
11:基台、
12:ツマミ、
13:探触子、
21:鋼床版、
22:デッキプレート、
23:トラフリブ、
24:舗装、
25:溶接部、
26:溶接基準位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波探傷装置の探触子用の治具であって、
本体、ガイド部材、及び、探触子保持機構から構成されており、
前記ガイド部材は、当該ガイド部材の一部を構成するガイドプレートの外側面と前記本体の一部を構成するベースプレートの外側面との仮想交線を軸として自由に回動できるように前記本体に取り付けられており、
前記探触子保持機構は、超音波探傷装置用の探触子を保持するように構成され、前記本体の一部に取り付けられており、
前記ベースプレートの外側面及び前記ガイドプレートの外側面において、マグネットが配設されていることを特徴とする探触子用の治具。
【請求項2】
前記探触子保持機構において、前記仮想交線から前記探触子までの距離を計測するための計測手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の探触子用の治具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−178197(P2007−178197A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375271(P2005−375271)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000200367)川田工業株式会社 (41)
【Fターム(参考)】