説明

超音波探触子

【課題】摩擦負荷を低減し超音波振動子アセンブリ1を長期間安定して揺動することができる信頼性の高い超音波探触子を提供する。
【解決手段】音響伝達媒体を封止する封止手段を構成する部品は超音波振動子アセンブリ1の揺動時に摺動部を有さないよう構成する。アーム3に一体に形成され揺動面に軸方向が垂直なコイル6aと一対の一体化したマグネット6bとバックヨーク6cから駆動手段を構成することで装置の小型化が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探触子に関し、例えば、超音波を用いて被検体内の画像を得る超音波診断装置に使用される超音波探触子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波振動子の配列方向の電子走査と、この電子走査方向と直交する方向に移動または揺動させる機械走査とによって、任意の断層画像や立体画像の構築を行うことができる医療用の超音波探触子が知られている。
【0003】
図6は上述した従来の超音波探触子の主要部の構成を示す斜視図である。図6において、複数の配列された超音波振動子(不図示)を含んで構成された超音波振動子アセンブリ101はアーム103に一体に組みつけられ、アーム103には揺動軸104がアーム103の両端で一体的に結合されている。揺動軸104は基台109に組みつけられた軸受105に回動可能に支持され、さらに、揺動軸104に一体に組みつけられた第一のプーリ120とベルト121と第二のプーリ122を介して、駆動モータ123の駆動モータ出力軸124に係合される。超音波振動子アセンブリ101に対する電気信号の送受信は、接続部材102を介して行われる。音響窓108は釣鐘状の形状をしており超音波振動子アセンブリ101の外側を覆うように配置され、音響窓108の内側には液状の音響伝達媒体が封入されている。また駆動モータ出力軸124と基台109の間にはシール125が組み込まれており音響伝達媒体の漏れ出しを防止している。
【0004】
以上の構成により、駆動モータ123を正・逆回転駆動することによって、揺動軸104を中心にして超音波振動子アセンブリ101を揺動させることができる。したがって、超音波振動子アセンブリ101を構成する複数の超音波振動子の電子走査と、揺動軸104を中心とする超音波振動子アセンブリ101の揺動による機械走査とによって、被検体内の任意の断層画像や立体画像を取得することが可能になる。
【0005】
この様な被検体内の任意の断層画像や立体画像を取得することが可能な超音波探触子において安定した画像を得る為には超音波振動子アセンブリ101を安定して動作させることが必要であり、その為には揺動負荷を低減することが重要であった。このような課題に対して、たとえば特許文献1に記載されているように、駆動モータにボイスコイルモータを使用することで、前記ベルト121などの動力伝達手段を無くし慣性モーメントや動力伝達手段における負荷を低減し、揺動負荷を低減できる超音波探触子が紹介されている。
【特許文献1】特開平2−34154号公報(第4頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の超音波探触子では、駆動モータ出力軸やエンコーダを構成する回転軸とシールとの間の摺動で大きな摩擦負荷が生じ、更にはこの摩擦負荷は製品間でばらついたり、環境温度や長期の使用などによって変動するという課題があった。このため超音波振動子アセンブリを常に安定した速度で動作させるには、このような摩擦負荷を吸収する複雑な制御回路や製造工程における厳しい調整などが要求された。また製品寿命を考えた場合、他の部品に比べて回転軸とシール間の磨耗が最もはやく損傷するため、更に長い製品寿命を実現する為には回転軸とシール間の磨耗を改良する必要があった。
【0007】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、摩擦負荷が少なく超音波振動子アセンブリを長期間安定して揺動させることができる信頼性の高い超音波探触子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の超音波探触子は、超音波を送受信する複数の超音波振動子が配列された超音波振動子アセンブリと、前記超音波振動子アセンブリに対して信号を送受する接続部材と、前記超音波振動子アセンブリを支持するアームと、前記超音波振動子アセンブリと前記アームを超音波振動子の配列方向と直交する方向へ揺動させる駆動手段と、前記アームの揺動中心となる揺動軸と、前記揺動軸を支持する軸受と、前記超音波振動子アセンブリの位置を検出する位置検出手段と、鐘形状の形状を有し前記超音波振動子アセンブリの超音波送受側を覆うように配置された音響窓と、前記音響窓の内側で前記超音波振動子の周囲を充填する液状の音響伝達媒体と、前記音響伝達媒体を封止する封止手段とを有し、前記封止手段を構成する部品は前記揺動時に摺動部を有さないよう構成している。この構成により、封止部における摺動負荷が無くなり、摩擦負荷を低減させることができるので、長期間安定して超音波振動子アセンブリを揺動させることができる。
【0009】
また、本発明の超音波探触子は、前記駆動手段を、前記アームに一体に形成され揺動面に軸方向が垂直なコイルと、前記コイルの両側に揺動面に水平に配置された一対の一体となったマグネットとバックヨークとから構成しても良い。
【0010】
この構成により、液状の音響伝達媒体の中で簡素な部品を用いて小型の駆動手段を配置できるので、長期間安定揺動が可能な信頼性が高い装置を安価に小型化できる。
【0011】
また、本発明の超音波探触子は超音波振動子アセンブリを所定の位置に保持する保持手段を有しても良い。
【0012】
この構成により、静止画像を取得時に振動や衝撃に対して超音波振動子アセンブリを強固に固定できるので、安定した画像を得ることができる。
【0013】
また、本発明の超音波探触子は、保持手段が未通電時に超音波振動子アセンブリを保持するよう構成しても良い。
【0014】
この構成により、未使用時において超音波振動子アセンブリは強固に固定されるため、振動や衝撃に対して安全に保護することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば音響伝達媒体を封止する封止手段を構成する部品が揺動時に摺動部を有さないよう構成しているので、超音波振動子アセンブリが長期間安定して揺動することができる信頼性の高い超音波探触子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1及び図2は本発明に係る超音波探触子の第1の実施の構成を示す断面斜視図である。
【0018】
図2は図1の一部を切り欠き内部の構造を詳細に示している。図1及び図2に示す超音波探触子は、複数の超音波振動子(不図示)が配列された超音波振動子アセンブリ1を備えており、この超音波振動子アセンブリ1は、超音波の焦点を機械的に定めるレンズ、超音波を送受信する方向に対してその背面へ超音波が伝達することを抑える背面緩衝材、音響インピーダンスを整合する整合層(以上いずれも不図示)、超音波振動子に電気信号を送受信するための接続部材2が、超音波振動子と共に一体的に組立てられている。
【0019】
アーム3は超音波振動子アセンブリ1の内側で一体的に結合し超音波振動子アセンブリ1を支持している。アーム3の揺動中心となる揺動軸4はアーム3に一体に形成され、軸受5に回転可能に保持されている。アーム3の揺動軸4を挟んで超音波振動子アセンブリ1と反対側には、コイル6aがアーム3と一体的に配置されている。コイル6aは超音波探触子もしくは超音波装置本体に配置された揺動駆動回路(不図示)に電気的に接続している。
【0020】
コイル6aの両側には、磁気回路を形成する一対の一体となったマグネット6bとバックヨーク6cがマグネット6bの側がコイルに向き合う方向で配置されている。コイル6a、マグネット6b及びバックヨーク6cで駆動手段6を構成し、揺動駆動回路からコイル6aに流すことで、揺動軸4を中心とした回転トルクが発生する。
【0021】
マグネットロータ7aは外周部が周方向に着磁されており、揺動軸4に同軸上に固定され超音波振動子アセンブリ1とともに揺動し、マグネットロータ7aに近接して固定された検出器7bがマグネットロータ7aの回転位置を検出する。このマグネットロータ7aと検出器7bで位置検出手段7が構成される。
【0022】
音響窓8は、釣鐘形状を有し超音波振動子アセンブリ1の超音波送受信側から囲うように配置され、内側は液状の音響伝達媒体(不図示)で充填され、外側で非検体に接する。これにより超音波振動子アセンブリ1によって送受信される超音波は空気層を通過せずに、音響伝達媒体および音響窓8の部材を通じて被検体との間を効率良く伝播される。
【0023】
基台9は、例えば軸受5やバックヨーク6cなど超音波探触子の各構成部品が所望の位置にとなるよう支持する支持部材である。また基台9は音響窓8と協働して封止手段を構成し、密閉な状態で音響伝達媒体を充填し封止している。
【0024】
筐体10は、音響窓8の釣鐘形状の閉部と背向した長手方向に延在しており、音響窓8と一体化して、超音波探触子の外形を形成している。
【0025】
以上のように構成された超音波探触子の動作について図3を用いて説明する。図3(a)は、コイル6aに矢印Ia方向に電流を流したときの動作を示す。一対の一体となったマグネット6bとバックヨーク6c(1組は不図示)が形成する磁気回路によりコイル6aには矢印Fa方向の力が発生し、コイル6aが一体に形成されているアーム3や超音波振動子アセンブリ1は駆動軸4を揺動中心に矢印U方向に動作する。図3(b)はコイル6aにIb方向に電流を流したときの動作であり、同様にコイル6aには矢印Fb方向の力が発生しアーム3や超音波振動子アセンブリ1は矢印V方向に動作する。このようにコイル6aに流す電流方向を切り替えることによって超音波振動子アセンブリ1を任意の方向に揺動させることができる。ここで、超音波アセンブリ1の位置は図1、及び図2に示す位置検出手段7で検出している。このようにして、電子走査により平面画像を取得する超音波振動子アセンブリ1がコイル6a、マグネット6b及びバックヨーク6cからなる駆動手段6の駆動力で揺動軸4を中心に揺動し、任意の断層像や立体画像を取得できる。
【0026】
本発明の実施の形態では、以上の揺動動作においてアーム3や、駆動手段6や位置検出手段7のマグネットヨーク7aなどの機械的に動作をする部品はすべて封止手段中の音響伝達媒体の中で構成している。すなわち可動する部品の周囲で液状の音響伝達媒体が漏れないようにシール等をする必要がなく、従って摺動部を無くすることができる。このように封止手段を構成する部材は揺動時に摺動部を有さないように構成しているので、揺動時の摩擦負荷を低減でき、更には摩擦負荷の製品間のばらつきや環境温度や長期使用などによる変動も低減できる。したがって複雑な制御回路や製造工程における厳しい調整を実施することなく、安定した揺動動作を実現できる。また、シールと動作部品の間の摺動磨耗が無くなることにより、揺動寿命も延び信頼性も向上する。
【0027】
更に、本発明の実施の形態では、アーム3に一体に形成され揺動面に軸方向が垂直なコイル6aと、コイルの両側に揺動面に水平に配置された一対の一体となったマグネット6bとバックヨーク6cから駆動手段を形成している。この構成において、コイル6aはアーム3とほぼ同じ厚みに形成し、マグネット6bは平板状に形成し、バックヨーク6cは平板に一部を曲げ加工して形成しているので、それぞれの部品は形状が簡素で容易に形成することが可能となる。また揺動面にそれぞれの部品の主たる平面が略平行に配置されるので少ないスペースで配置が可能となる。このように、液状の音響伝達媒体の中で簡素な部品を用いて小型の駆動手段を配置できるので、装置を安価に小型化できる。
【0028】
以上のように本発明の第一の実施の形態によれば、音響伝達媒体を封止する封止手段を構成する部品は揺動時に摺動部を有さないよう構成し、駆動手段6を、アームに一体に形成され揺動面に軸方向が垂直なコイル6aと、コイルの両側に揺動面に水平に配置されたマグネット6bとバックヨーク6cから構成することにより、負荷が少なく長期間安定して揺動することができる信頼性の高い小型の超音波探触子を提供することができる。
【0029】
次に、本発明の第2の実施の形態について図4及び図5を用いて説明する。図4、図5において保持手段11はプランジャー11a,与圧ばね11b、ステータ11cからなり、ステータ11cに通電と無通電を繰り返すことによりプランジャー11aを上下に駆動させることができる。ここで保持手段11はプランジャー11aが揺動軸4の下方となるように配置されている。
【0030】
図4は保持手段11が無通電の時の状態を示してある。このときプランジャー11aとステータ部11cの間には磁気力が無く与圧ばね11bの力のみが働き、プランジャー11aを上方の揺動軸4に押圧する。このようにして揺動軸4は押圧するプランジャー11aとの間の摩擦により回転できなくなり従って超音波振動子アセンブリ1を固定することができる。
【0031】
図5は保持手段を通電させた状態である。このときステータ11cの内部に構成されたコイル(未図示)が通電され、軟磁性体であるプランジャー11aとの磁気力が働き、磁気力が与圧ばね11bのばね力に打ち勝ち、プランジャー11aが揺動軸4から離間し下方へ移動する。これにより、超音波振動子アセンブリ1は揺動が可能となる。
【0032】
このように超音波アセンブリ1は、保持手段11に対して未通電にすることで任意の位置に固定され、通電することで固定が解除され任意に揺動できる。従って、超音波振動子アセンブリ1が静止し複数の超音波振動子の配列方向の電子走査を用いた2次元画像取得時には保持手段11を未通電にし超音波振動子アセンブリ1固定することで振動や衝撃などが加えられたとしても超音波振動子アセンブリ1がぶれずに安定した画像を得ることができ、立体画像取得時などの超音波振動子アセンブリ1の揺動時には保持手段11を通電し、超音波振動子アセンブリ1を任意に揺動させることができる。更には、未使用時には超音波振動子アセンブリ1を安全な位置に退避させてから保持手段11を未通電にすることで、超音波振動子アセンブリ1を安全に固定させることができる。
【0033】
以上のように第2の実施の形態によれば、超音波振動子アセンブリ1を所定の位置に保持する保持手段11を有し、保持手段11が未通電時に超音波振動子アセンブリ1を保持するよう構成されているので、電子走査による2次元画像を取得時には振動や衝撃に対して超音波振動子アセンブリ1を強固に固定し安定した画像を得ることができ、未通電時の振動や衝撃に対しても超音波振動子アセンブリ1は動くことは無く安全に保護することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、本発明に係る超音波探触子は、揺動時の摩擦負荷が少なく超音波振動子アセンブリを長期間安定して揺動させることができるという効果を有し、超音波を用いて被検体内の画像を得る超音波診断装置に使用される超音波探触子等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施の形態における超音波探触子の断面斜視図
【図2】本発明の第1の実施の形態における超音波探触子の内部詳細図
【図3】本発明の第1の実施の形態における揺動動作を示す図
【図4】本発明の第2の実施の形態における超音波振動アセンブリの保持状態を示す図
【図5】本発明の第2の実施の形態における超音波振動アセンブリの保持状態が開放されている状態を示す図
【図6】従来の超音波探触子の断面斜視図
【符号の説明】
【0036】
1,101 超音波振動子アセンブリ
2,102 接続部材
3,103 アーム
4,104 揺動軸
5,105 軸受
6 駆動手段
6a コイル
6b マグネット
6c バックヨーク
7 位置検出手段
7a マグネットヨーク
7b 検出器
8,108 音響窓
9,109 基台
10 筐体
11 保持手段
11a プランジャー
11b 与圧ばね
11c ステータ
120 第1のプーリ
121 ベルト
122 第2のプーリ
123 駆動モータ
124 駆動モータ出力軸
125 シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信する複数の超音波振動子が配列された超音波振動子アセンブリと、前記超音波振動子アセンブリに対して信号を送受する接続部材と、前記超音波振動子アセンブリを支持するアームと、前記超音波振動子アセンブリと前記アームを超音波振動子の配列方向と直交する方向へ揺動させる駆動手段と、前記アームの揺動中心となる揺動軸と、前記揺動軸を支持する軸受と、前記超音波振動子アセンブリの位置を検出する位置検出手段と、鐘形状の形状を有し前記超音波振動子アセンブリの超音波送受側を覆うように配置された音響窓と、前記音響窓の内側で前記超音波振動子の周囲を充填する液状の音響伝達媒体と、前記音響伝達媒体を封止する封止手段とを有する超音波探触子において、前記封止手段を構成する部品は前記揺動時に摺動部を有さないことを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記アームに一体に形成され揺動面に軸方向が垂直なコイルと、前記コイルの両側に揺動面に水平に配置された一対の一体となったマグネットとバックヨークからなる請求項1記載の超音波探触子。
【請求項3】
前記超音波振動子アセンブリを所定の位置に保持する保持手段を有する請求項2記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記保持手段は未通電時に超音波振動子アセンブリを保持することを特徴とする請求項3記載の超音波探触子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−289315(P2007−289315A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118911(P2006−118911)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】