説明

超音波接合装置およびその制御方法、並びに超音波接合の接合検査装置およびその接合検査方法

【課題】代用特性でなく、製品の接触抵抗を直接測定でき、この接触抵抗に基づいて短時間で精度高く接合状態を判定し、その判定結果を振動制御部へフィードバックすることができる超音波接合装置を提供する。
【解決手段】超音波振動を与えるホーン30とアンビル20との間に2枚の被接合材を挟んで加圧し、被接合材の接触面に平行に超音波振動を加えて固相接合する超音波接合装置1であって、振動制御部70と接合検査部80とを有する制御装置60を備え、接合検査部80は、ホーン30とアンビル20間に電圧を印加する電圧印加部82と、ホーン30とアンビル20間の印加電圧を測定する電圧計83と、ホーン30とアンビル20間に流れる電流を測定する電流計84と、電圧計83および電流計84の各測定値から接触抵抗を算出して接合状態を判定する電気抵抗測定回路81と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚の被接合材の接合面を重ね合わせ、加圧しながら超音波振動を与えることにより固相接合する超音波接合装置およびその制御方法、並びに超音波接合の接合検査装置およびその接合検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波接合装置は、支持部材としてのアンビルと、超音波振動を与えるホーンとの間に2枚の金属板を挟んで加圧し、2枚の金属板の接触面に平行に超音波振動を与え、振動による摩擦熱で界面間の酸化物等を破壊して新生面を出すことにより接合を行う装置である。たとえば、特許文献1には、高周波振動の振幅を接合状態の代用特性として用いて、接合面の面性状等によらずに精度良く接合状態を検知しうる技術が開示されている。
【0003】
この超音波接合装置による接合状態は固相接合となり、溶融による脆い金属間化合物の生成が少ないため、特に異種金属間の接合に適している。たとえば、リチウムイオン二次電池の電極タブを接合する場合には、負極タブの材質はアルミニウム(Al)、正極タブの材質は銅(Cu)であり、異種金属の接合となる。
【0004】
電極タブの接合においては、荷重印加時に破断しないように、一定以上の接合部強度を保つ必要がある。その接合強度の検査方法としては、次の3つの方法を単独または組合せて行っている。第1は、生産と同条件にてテストピースに接合を行い、引張試験にて接合強度を測定する方法である。第2は、超音波接合時に振動子に印加した電力(電圧×電流)を測定する方法であり、電力の積分値(エネルギー)が予め決めた一定値以上であれば、強度良と判断する。第3は、超音波接合時に振動子に印加した電力(電圧×電流)を測定する方法であり、電力の最大値(ピークパワー)が予め決めた一定値以上であれば、強度良と判断する。
【0005】
また、電極タブの接合は、電極として電流通路という機能を果たすため、電気抵抗を一定以下に保つ必要がある。その電気抵抗の検査方法としては、次の2つの方法がある。第1は、生産と同条件にてテストピースに接合を行い、電圧を印加して電流を測定し、これらより電気抵抗値を測定する方法である。第2は、製品に測定プローブを接続し、電圧を印加して電流を測定し、これらにより電気抵抗値を測定する方法である。
【特許文献1】特開平6−99289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の超音波接合における接合強度の検査方法において、第1の方法は破壊検査であるため、生産時の製品を検査することができないという問題があった。また、第2および第3の方法は代用特性による判定であるため、判定精度に劣り、誤判定の可能性があるという問題があった。
【0007】
一方、電気抵抗の検査方法において、第1の方法はテストピースを対象とするため、生産時の製品を検査することができないという問題があった。また、第2の方法は測定プローブの接続が必要であるため、検査に時間がかかり、大量生産時に全数検査を行えないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みて創案されたものであり、代用特性でなく、製品の電気抵抗を直接測定でき、この電気抵抗に基づいて短時間で精度高く接合状態を判定し、その判定結果を振動制御部へフィードバックすることができる超音波接合装置およびその制御方法、並びに超音波接合の接合検査装置およびその接合検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る超音波接合装置は、超音波振動を与えるホーンとアンビルとの間に2枚の被接合材を挟んで加圧し、これらの被接合材の接触面に平行に超音波振動を加えて固相接合する超音波接合装置において、振動制御部と接合検査部とを有する制御装置を備え、前記接合検査部は、前記ホーンとアンビル間に電圧を印加する電圧印加部と、前記ホーンとアンビル間の印加電圧を測定する電圧計と、前記ホーンとアンビル間に流れる電流を測定する電流計と、前記電圧計および電流計の各測定値から接触抵抗を算出して接合状態を判定する電気抵抗測定回路と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のような本発明に係る超音波接合装置によれば、制御装置に電圧印加部、電圧計、電流計、および電気抵抗測定回路を備えた接合検査部を有するので、代用特性でなく、製品の電気抵抗を直接測定することができ、この電気抵抗に基づいて短時間で接合状態を精度高く判定することができる。したがって、この判定結果を振動制御部へフィードバックして接合条件を修正することにより、良好な接合状態を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
まず、本発明に係る超音波接合装置、および超音波接合の接合検査装置について説明する。
【0013】
図1は超音波接合装置の全体構成を示すブロック図である。図2はホーンへの電圧印加部の正極取付け部位を示す模式図である。図3(a)は超音波接合装置における被接合材を挟んだ状態での抵抗測定状況を示す概念図、図3(b)は基本抵抗の測定状況を示す概念図である。
【0014】
図1から図3を参照して、超音波接合装置1は装置本体10と、これに備えられた制御装置60とからなっている。装置本体10は、2枚の被接合材(板状部材)51、52を挟持するアンビル20とホーン30と呼ばれる接合工具を備えている。たとえば、リチウムイオン二次電池の電極タブを接合する場合、負極タブの材質はアルミニウム(Al)、正極タブの材質は銅(Cu)であり、異種金属の接合となる。
【0015】
アンビル20は、接合する2枚の板状部材(たとえば、負極タブと正極タブ)51、52を載置する台座(支持部材)であって、その挟持面には複数の突起22が形成されている。
【0016】
ホーン30は、アンビル20に対する相対的な位置を適宜調整可能であり、ホーン本体33の延出端側にホーンチップ31が突設されている。このホーンチップ31には、たとえば、圧電振動子等の振動子41により発振された超音波振動がブースター42を介して伝達され、その挟持面にも複数の突起32が形成されている。
【0017】
また、ホーン30には、これを挟持方向の後方(上方)から押圧する不図示の加圧手段が備えられている。すなわち、超音波接合時には、加圧手段によりホーン30がアンビル20に載置された板状部材51、52を一定の圧力で加圧しながら、振動子41がブースター42を介してホーン30に超音波振動を発生させる。
【0018】
さらに、ホーン30の節部(ノード)34には、該節部34を上方から支持する不図示の補強部材(ノーダルサポート)が備えられている。この節部34には、電圧印加部82の正極が取り付けられている。一方、電圧印加部82の負極はアンビル20の適宜部位に取り付けられる。
【0019】
すなわち、超音波接合装置1は、ホーン30による超音波振動で2枚の板状部材51、52に往復直線運動を生じさせ、板状部材51、52の接触面が擦り合わされることにより、部材表面の酸化皮膜等の不純物を除去して新生な金属面を露出させて接触させるとともに、その際に発生する摩擦熱により板状部材51、52を固相接合するものである。
【0020】
制御装置60には、記憶した接合条件に基づいて振動子41の振動状態を制御する振動制御部70と、記憶した抵抗値に基づいてホーン30への電圧印加を制御する接合検査部(接合検査装置)80と、が備えられている。
【0021】
振動制御部70には、発振制御回路71、パワーモジュール72、および電力モニタ73が備えられている。発振制御回路71には初期接合条件が入力され、発振制御回路71は、記憶した接合条件に基づいて、パワーモジュール72に電流・電圧値を指示する。パワーモジュール72は、発振制御回路71から指示された電流・電圧値で振動子41を振動させ、振動子41の作動電力は電力モニタ73によりモニタリングされて、発振制御回路71へとフィードバックされる。
【0022】
接合検査部(接合検査装置)80には、電気抵抗測定回路81、電圧印加部82、電圧計83、電流計84、および表示装置85が備えられている。電気抵抗測定回路81には初期抵抗値が入力される。電気抵抗測定回路81は、記憶した抵抗値に基づいて電圧印加部82へ印加電圧を指示する。また、電気抵抗測定回路81は、電圧計83および電流計84の各測定値から接触抵抗を算出して接合状態を判定する。電圧印加部82は、電気抵抗測定回路81の指示に基づいて、アンビル20およびホーン30に電圧を印加する。電圧計82は、アンビル20およびホーン30に印加された電圧を測定し、その測定値を電気抵抗測定回路81へとフィードバックする。電流計83は、アンビル20およびホーン30に流れる電流を測定し、その測定値を電気抵抗測定回路81へとフィードバックする。そして、表示装置84はCRTや液晶表示装置等の画像表示装置であり、後述するフローに基づいて抵抗基準値に基づく良(OK)/不良(NG)の判定結果が表示される(図7参照)。
【0023】
なお、電気抵抗の測定プローブは、ホーン30およびアンビル20に埋め込む構造としてもよいし、別体として取り外し可能に設けてもよい。特に、測定プローブをホーン30およびアンビル20に埋め込む構造を採用すれば、工具交換時に、電圧印加線を工具(ホーン30およびアンビル20)に取り付ける作業が不要になる。
【0024】
発振制御回路71と電気抵抗測定回路81とは電気的に接続され、発振制御回路71から電気抵抗測定回路81へ接合シーケンス情報を発信し、電気抵抗測定回路81から発振制御回路71へ接合条件の修正指示を発信する。ここで、「接合シーケンス情報」とは、接合が現在どの状態にあるかの情報であり、アイドル、ホーン下降、スクイズ、発振中、ホールド、およびホーン上昇の各状態が挙げられる。
【0025】
以上のように構成された超音波接合装置1によれば、制御装置60に電圧印加部82、電圧計83、電流計84、および電気抵抗測定回路81を備えた接合検査部80を有するので、代用特性でなく、製品の電気抵抗(接合抵抗)を直接測定でき、この接合抵抗に基づいて短時間で接合状態を精度高く判定することができる。したがって、接合検査部(接合検査装置)80の判定結果を振動制御部へフィードバックして接合条件を修正することにより、良好な接合状態を得ることができる。
【0026】
次に、本発明に係る超音波接合装置の制御方法および超音波接合の接合検査方法について説明する。
【0027】
図4(a)は被接合材を挟んだ状態での抵抗測定の計算方法を示す概念図、(b)は基本抵抗の計算方法を示す概念図である。図5は面粗度と接触抵抗と超音波接合との関係を示す説明図である。図6は超音波接合装置の動作状態を示すタイムチャートである。図7は超音波接合装置の制御方法を示すフローチャートである。図8は図7における抵抗測定のフローチャートである。
【0028】
まず、図4を参照して、本発明に係る超音波接合装置の制御方法および超音波接合の接合検査方法の前提概念として、被接合材を挟んだ状態での抵抗測定および基本抵抗の測定について説明する。
【0029】
図4(b)のように、電圧印加部82の正極をホーン30へ、負極をアンビル20へ接続し、予め被接合材を挟まない状態でホーン30とアンビル20間に圧力を加え、電圧を印加して電圧・電流値を測定する。測定抵抗=印加電圧÷測定電流により抵抗値を算出し、これを基本抵抗とする。この基本抵抗は、ホーン導体抵抗Aと工具接触抵抗Bとアンビル導体抵抗Cとの和である。
【0030】
一方、図4(a)のように、測定抵抗は生産時に測定する抵抗であり、ホーン30とアンビル20との間に被接合材51、52を挟んだ状態で測定され、接合抵抗と基本抵抗とを加算して求められる。また、接合抵抗は、上板導体抵抗Xと材料接触抵抗Yと下板導体抵抗Zとの和である。すなわち、接合抵抗=測定抵抗−基本抵抗で算出される。
【0031】
また、図5を参照して、本発明に係る超音波接合装置の制御方法および超音波接合の接合検査方法の前提概念として、抵抗上限および抵抗下限について説明する。
【0032】
予め面粗度の異なる三種類の被接合材を用意して、接触抵抗を測定する(図4参照)。被接合材の面粗度が大きい場合には部材表面が凸凹で接触面積が小さくなるため、接合前の部材間の接触抵抗が大きくなり、その結果、超音波接合は弱くなり、接合時間は遅くなる。したがって、生産時の接合条件で接合を行った場合には、接合低下・接合抵抗増加が発生する。
【0033】
一方、被接合材の面粗度が小さい場合には部材表面が滑らかで接触面積が大きくなるため、接合前の部材間の接触抵抗が小さくなり、その結果、超音波接合は強くなり、接合時間は速くなる。したがって、生産時の接合条件で接合を行った場合には、凝着、亀裂が発生する。ここで、「凝着」とは、接合条件が強く、被接合材料が工具に接着してしまう状態をいい、「亀裂」とは、接合条件が強く、被接合材料に穴が開く状態をいう。
【0034】
面粗度が中程度である通常の被接合材の場合には、接触抵抗および超音波接合も中程度になる。したがって、生産時の接合条件で接合を行った場合には、接合強度低下・接合抵抗増加が発生しない。
【0035】
これらの考察から、面粗度が大と中との境界となる接触抵抗値を図7のフローチャートにおける抵抗上限とする。また面粗度が中と小との境界となる接触抵抗値を図7のフローチャートにおける抵抗下限とする。
【0036】
図6を参照して、超音波接合装置1の動作タイムチャートを説明する。
【0037】
超音波接合装置1の接合シーケンスは、1)アイドル、2)ホーン下降、3)スクイズ、4)発振、5)ホールド、6)ホーン上昇の各工程によって構成される。アイドル工程では、ホーン30は原位置(初期位置)に待機している。接合開始によりホーン下降工程となり、ホーン30が原位置から下降端まで下降する。スクイズ工程では、超音波発振前にホーン30とアンビル20とで被接合材を加圧している。発振工程では、振動子41の振動がブースター42を介してホーン30に伝達され、ホーン30が被接合材の接触面と平行に往復振動している。ホールド工程では、超音波発振終了後にホーン30とアンビル20とで被接合材を加圧している。接合終了によりホーン上昇工程となり、ホーン30が下降端から原位置まで上昇する。そして、再びアイドル工程へと移行する。
【0038】
図7を参照して、超音波接合装置1の制御方法は、まず、超音波接合装置1の接合シーケンスが「スクイズ」工程にあるか否かを判断する(ステップ1;以下、「S1」のように表記する。)。
【0039】
ステップ1において、「スクイズ」工程にあると判断されると、接合検査部(接合検査装置)80の電気抵抗測定回路81が抵抗測定を行う(S2)。
【0040】
図8を参照して、抵抗測定(S2)を開始すると、電気抵抗測定回路81が電圧印加部82にアンビル20とホーン30間への電圧印加を指示する(S21)。次に、電流計83に電流測定が指示され、その測定値が電気抵抗測定回路81に入力される(S22)。さらに、電気抵抗測定回路81は、印加電圧を測定電流(電流測定値)で割って測定抵抗を算出する(S23)。そして、電気抵抗測定回路81が電圧印加部82にアンビル20とホーン30間への電圧印加の終了を指示する(S24)。さらに、電気抵抗測定回路81が電流計83に電流測定の終了を指示して(S25)、抵抗測定を終了し、図7のステップ3へと移行する。
【0041】
そして、図8のフローで得られた測定抵抗から基本抵抗を差し引いて接触抵抗を求める(S3)。ここで、基本抵抗は図4(b)の計算方法で求められる。
【0042】
次に、ステップ3で求めた接触抵抗が電気抵抗測定回路81に記憶した抵抗下限より小さいか(接触抵抗<抵抗下限)否かを判断する(S4)。
【0043】
ステップ4において、接触抵抗が抵抗下限以上である場合(接触抵抗≧抵抗下限)には、接触抵抗が抵抗上限を超えるか(接触抵抗>抵抗上限)否かを判断する(S5)。一方、接触抵抗が抵抗下限未満である場合(接触抵抗<抵抗下限)には、振動子41の振幅低下を指示(たとえば、振幅を予め決めた生産条件から10%下げる指示)するか、または/および振動子41の発振時間の短縮を指示した後(S6)、ステップ8へと移行する。
【0044】
ステップ5において、接触抵抗が抵抗上限以下である場合(接触抵抗≦抵抗上限)には、ステップ8へと移行する。一方、接触抵抗が抵抗上限を超える場合(接触抵抗>抵抗上限)には、振動子41に振幅増加を指示(たとえば、振幅を予め決めた生産条件から10%上げる指示)するか、または/および発振時間の延長を指示した後(S7)、ステップ8へと移行する。
【0045】
このように本発明に係る超音波接合装置1の制御方法は、スクイズ工程中にホーン30とアンビル20間に電圧を印加し、ホーン30とアンビル20間に印加された電圧の測定値と、ホーン30とアンビル20間に流れた電流の測定値と、から接触抵抗を算出している。そして、接触抵抗が抵抗下限未満である場合(接触抵抗<抵抗下限)には、振動子41の振幅低下を指示するか、または/およびホーン30の発振時間の短縮を指示し(S6)、接触抵抗が抵抗下限以上である場合(接触抵抗≧抵抗下限)には、振動子41の振幅増加を指示するか、または/および発振時間延長を指示して(S7)、電気抵抗測定回路81から発振制御回路71へ接合条件の修正指示を発信してフィードバック制御する。すなわち、接合検査部(接合検査装置)80の判定結果を振動制御部へフィードバックして接合条件を修正するので、初期状態の接触抵抗が小さく、超音波接合の進捗が速い場合、過接合(凝着・亀裂)を抑制することができ、また初期状態の接触抵抗が大きく、超音波接合の進捗が遅い場合、接合不足(強度不足、電気抵抗過大)を抑制することができる。
【0046】
以下のステップ8からステップ13までは、本発明に係る超音波接合装置1の制御方法として実施されるが、本発明に係る超音波接合の接合検査方法として単独で実施することもできる。
【0047】
ステップ8では、超音波接合装置1の接合シーケンスが「ホールド」工程にあるか否かを判断する。ステップ13において、「ホールド」工程であると判断されると、図8のフローのS21〜S25に従って、抵抗測定を行う(S9)。そして、得られた測定抵抗から基本抵抗を差し引いて接触抵抗を求める(S10)。ここで、基本抵抗は図4(b)の計算方法で求められる。
【0048】
次に、接合抵抗が電気抵抗測定回路81に記憶した抵抗基準値以下(接合抵抗≦抵抗基準値)であるか否かを判断する(S11)。
【0049】
ステップ11において、接合抵抗が抵抗基準値以下である場合(接合抵抗≦抵抗基準値)には表示装置84に良(OK)判定を表示装置85に出力し(S12)、接合抵抗が抵抗基準値を超える場合(接合抵抗>抵抗基準値)には不良(NG)判定を表示装置85に出力する(S13)。
【0050】
このように本発明に係る超音波接合装置1の制御方法および超音波接合の接合検査方法は、超音波発振終了後の加圧状態である「ホールド」工程中に、ホーン30とアンビル20間に電圧印加し、ホーン30とアンビル20間に印加された電圧の測定値と、ホーン30とアンビル20間に流れた電流の測定値と、から接触抵抗を算出し、接触抵抗が抵抗基準値以下である場合(接合抵抗≦抵抗基準値)にはOK判定し、抵抗基準値を超える場合(接合抵抗>抵抗基準値)にはNG判定する接合検査を行うので、製品の接合抵抗を直接測定できる。また、超音波接合装置1の接合シーケンス中に短時間で検査が行えるので、生産中に製品の接合抵抗の全数検査が行える。さらに、代用特性でなく、製品の接合抵抗を直接測定するため、判定精度がよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】超音波接合装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】ホーンへの電圧印加部の正極取付け部位を示す模式図である。
【図3】(a)は超音波接合装置における被接合材を挟んだ状態での抵抗測定状況を示す概念図、(b)は基本抵抗の測定状況を示す概念図である。
【図4】(a)は被接合材を挟んだ状態での抵抗測定の計算方法を示す概念図、(b)は基本抵抗の計算方法を示す概念図である。
【図5】面粗度と接触抵抗と超音波接合との関係を示す説明図である。
【図6】超音波接合装置の動作状態を示すタイムチャートである。
【図7】超音波接合装置の制御方法を示すフローチャートである。
【図8】図7における抵抗測定のフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 超音波接合装置、
10 装置本体、
20 アンビル、
30 ホーン、
31 接合チップ、
34 節部、
51、52 被接合材、
60 制御装置、
70 振動制御部、
80 接合検査部、
81 電気抵抗測定回路、
82 電圧印加部、
83 電圧計、
84 電流計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動を与えるホーンとアンビルとの間に2枚の被接合材を挟んで加圧し、これらの被接合材の接触面に平行に超音波振動を加えて固相接合する超音波接合装置において、
振動制御部と接合検査部とを有する制御装置を備え、
前記接合検査部は、
前記ホーンとアンビル間に電圧を印加する電圧印加部と、
前記ホーンとアンビル間の印加電圧を測定する電圧計と、
前記ホーンとアンビル間に流れる電流を測定する電流計と、
前記電圧計および電流計の各測定値から接触抵抗を算出して接合状態を判定する電気抵抗測定回路と、
を備えていることを特徴とする超音波接合装置。
【請求項2】
前記接合検査部の判定結果に基づいて接合条件を修正すべく、前記電気抵抗測定回路が前記振動制御部の発振制御回路に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波接合装置。
【請求項3】
前記電圧印加部の正極が前記ホーンの節部に接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超音波接合装置。
【請求項4】
前記ホーンとアンビルに、測定プローブが埋め込まれていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波接合装置。
【請求項5】
超音波振動を与えるホーンとアンビルとの間に2枚の被接合材を挟んで加圧し、これらの被接合材の接触面に平行に超音波振動を加えて固相接合する超音波接合装置の制御方法において、
超音波発振前の加圧状態であるスクイズ工程中に、前記ホーンとアンビル間に電圧を印加し、
前記ホーンとアンビル間に印加された電圧の測定値と、前記ホーンとアンビル間に流れた電流の測定値と、から接触抵抗を算出し、
接触抵抗が抵抗下限より小さい場合には、前記ホーンの振幅低下、または/および発振時間の短縮を指示し、
接触抵抗が抵抗下限より大きい場合には、前記ホーンの振幅増加、または/および発振時間延長を指示して、フィードバック制御することを特徴とする超音波接合装置の制御方法。
【請求項6】
超音波発振終了後の加圧状態であるホールド工程中に、前記ホーンとアンビル間に電圧を印加し、
前記ホーンとアンビル間に印加された電圧の測定値と、前記ホーンとアンビル間に流れた電流の測定値と、から接触抵抗を算出し、
接触抵抗が抵抗基準値以下である場合には良と判定し、抵抗基準値を超える場合には不良と判定する接合検査を行うことを特徴とする請求項5に記載の超音波接合装置の制御方法。
【請求項7】
超音波振動を与えるホーンとアンビルとの間に2枚の被接合材を挟んで加圧し、これらの被接合材の接触面に平行に超音波振動を加えて固相接合する超音波接合の接合検査装置であって、
前記ホーンとアンビル間に電圧を印加する電圧印加部と、
前記ホーンとアンビル間の印加電圧を測定する電圧計と、
前記ホーンとアンビル間に流れる電流を測定する電流計と、
前記電圧計および電流計の各測定値から接触抵抗を算出して接合状態を判定する電気抵抗測定回路と、
を備えていることを特徴とする超音波接合の接合検査装置。
【請求項8】
前記電圧印加部の正極が前記ホーンの節部に接続されていることを特徴とする請求項7に記載の超音波接合の接合検査装置。
【請求項9】
前記ホーンとアンビルに、測定プローブが埋め込まれていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の超音波接合の接合検査装置。
【請求項10】
超音波接合装置の制御装置内に備えられていることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の超音波接合の接合検査装置。
【請求項11】
超音波振動を与えるホーンとアンビルとの間に2枚の被接合材を挟んで加圧し、これらの被接合材の接触面に平行に超音波振動を加えて固相接合する超音波接合の接合検査方法において、
超音波発振終了後の加圧状態であるホールド工程中に、前記ホーンとアンビル間に電圧を印加し、
前記ホーンとアンビル間に印加された電圧の測定値と、前記ホーンとアンビル間に流れた電流の測定値と、から接触抵抗を算出し、
接触抵抗が抵抗基準値以下である場合には良と判定し、抵抗基準値を超える場合には不良と判定することを特徴とする超音波接合の接合検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−142739(P2008−142739A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332342(P2006−332342)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】