説明

超音波撮像装置

【課題】超音波画像の鮮明度が不足する場合にも、治療前のリファレンス画像との位置ずれを補正することが可能な超音波撮像装置を提供する。
【解決手段】被検体の被識別位置を識別するための位置識別デバイス1と、前記被識別位置の位置情報を含む、前記被検体の断層画像データを作成する断層画像作成部6と、前記被検体に超音波を送受信するプローブ2と、前記プローブ2が受信した超音波に基づいて複数の超音波画像データを作成する超音波画像作成部3と、前記複数の超音波画像データから、前記被識別部位を含む超音波画像データを選択する画像選択部7と、前記断層画像データと前記被識別部位を含む超音波画像データとについて、前記被識別部位で位置合わせをする画像処理部4と、前記画像処理部の処理結果を表示する表示部5を有する画像処理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波断層像を表示する超音波撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像診断装置の1つである超音波診断装置は、ハンドリングが容易で、かつ無侵襲で任意の断面をリアルタイムに観察できるため、診断に非常に多く利用されている。一方、超音波診断装置で撮像される超音波像は、形態情報がより鮮明に描出されるX線CT装置やMRI装置などの他の画像診断装置で撮像された断層像(以下、リファレンス像という)と対比しながら、総合的に診断することがある。
【0003】
特にMRI画像は、様々なパラメータ(T1強調、T2強調、拡散イメージングなど)で撮像を行なうことができるため、超音波画像にない情報を付加できるので、リアルタイムの超音波画像と、予め撮像したリファレンス画像を対比することは有用である。
【0004】
例えば、特許文献1には、リファレンス画像と超音波画像の対応のずれを補正する方法に関して記述がある。開示された補正方法を適宜行なうことにより、撮像中にずれが生じても、ずれが小さいうちに補正を行なうことで、リファレンス画像を超音波画像と対応がつけやすい状態で用いることが提案されている。
【特許文献1】特願2005−506006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、頭蓋の外から頭蓋内の超音波撮像を行なう場合には、頭蓋骨での超音波の減衰などの影響により感度不足となり、治療中に撮像された超音波画像が不鮮明となる。このような不鮮明な画像では、治療の進行によって生じていく治療前のリファレンス画像との位置ずれを修正することが困難であるという未解決の問題があった。
【0006】
本発明の目的は、超音波画像の鮮明度が不足する場合にも、治療前のリファレンス画像との位置ずれを補正することが可能な超音波撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の超音波撮像装置は、位置識別デバイスが取り付けられた被検体に超音波を送受信する超音波プローブと、超音波プローブが受信した超音波に基づいて超音波断層像を作成する超音波画像作成部と、予め取得した被検体のボリューム画像データを記憶した画像データ記憶部と、画像データ記憶部に記憶された被検体のボリューム画像データから所望のスライス画像データを選択するデータ選択部と、データ選択部によって選択されたスライス画像データから超音波プローブが送受信した超音波に基づく超音波断層像に相当する断層画像を再構成する断層画像再構成部と、超音波プローブの座標系とボリューム画像データの座標系を対応付けする制御部と、位置合わせされた超音波断層像と断層画像再構成部によって再構成された断層画像とを関連づけて表示する表示部とを有する。
【0008】
画像データ記憶部には、X線CT装置又はMRI装置で撮像されたボリューム画像データを記憶することができ、ボリューム画像データには、位置識別デバイスの配置予定位置と超音波プローブの配置予定位置に位置マーカが配置されている。制御部は、予定位置に配置された超音波プローブが送受信した超音波に基づいて作成された、位置識別デバイスを表す像を含む超音波断層像と、データ選択部によって選択された位置マーカを含むスライス画像データから断層画像再構成部によって再構成された断層画像とを、両者に含まれる位置識別デバイスの像と位置マーカの像を用いて位置あわせする。
【0009】
位置識別デバイスは、送受信部及び信号処理部を備え超音波プローブからの超音波の受信に応じて信号を送信するチップを用いることができる。位置識別デバイスと超音波プローブの相対位置を確認するデバイスとしてレーザーポインタを用いることができる。
【0010】
超音波プローブの動きを検知する位置センサを有し、データ選択部で画像データ記憶部から位置センサによって検知された超音波プローブの位置に対応するスライス画像データを選択し、そのスライス画像データから再構成された断層像を表示すれば、超音波プローブが移動しても、超音波断層像とそれに対応するリファレンス像とを関連づけて表示することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の超音波撮像装置によれば、超音波画像の鮮明度が不足する場合にも、治療前のリファレンス画像との位置ずれを補正することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明による超音波撮像装置の一例を示す装置ブロック図である。ここでは、被検体として例えば患者の頭部を想定する。まず、被検体に対し、位置識別デバイス1を固定する。位置識別デバイス1は超音波撮像装置で撮像した超音波断層像上で識別可能なものであり、例えば後述するトランスポンダからなり、その固定位置は、超音波プローブ2の断層面位置の推定精度を高くするために、なるべく被検体に対するプローブ設置面から離した方が好ましい。経頭蓋超音波撮像の用途からいうと、プローブ設置位置に対して頭蓋骨の反対側の外側に設置するのが好ましい。これは、頭蓋骨において、超音波を強く散乱する板間層が、こめかみ部分において少ないため、片方のこめかみをプローブ設置面として、反対側のこめかみに位置識別デバイス1を設定すると、位置識別デバイス1が最も観察しやすくなるからである。超音波プローブ2で送受信された超音波パルスエコー信号は、超音波画像作成部3において公知の超音波信号処理が行われ、断層像として表示部5に表示される。
【0013】
本発明においては、事前に取得したX線CT像やMR像のマルチスライス画像データ、すなわち3次元ボリュームデータを記憶した画像データ記憶部8から、プローブ2及び位置識別デバイス1に対応する断層面の位置を算出し、図2に示したように、断層面を中心として有限のスライス厚みの中に含まれるボリュームデータ(図中の格子点位置に輝度情報として存在する)をデータ選択部7により選択し、断層画像再構成部6において断層画像の座標にスキャンコンバージョンし、超音波断層像に対応したリファレンス画像を作成する。このリファレンス画像を、超音波断層像と関連づけて、たとえば並べて表示部5に表示する。ここでは、両画像を並べて参照するが、画面領域が小さいなど制約がある場合は、両画像の表示を切り替えて交互に表示してもよい。また、両画像を加算するなど合成表示して、位置合わせを行いやすくしてもよい。装置各部は、制御部4の制御下に作動する。
【0014】
ここで、事前に取得したX線CT像やMR像には、上記超音波プローブ設置位置及び位置識別デバイス設置位置にマークが含まれるようにしておく。そのために、3次元ボリュームデータとしてX線CT像を用いる場合には、被検体の超音波プローブ設置予定位置及び位置識別デバイス設置予定位置にプラスチックタグなどの位置マーカを貼り付けてX線CT像を撮像する。また、3次元ボリュームデータとしてMR像を用いる場合には、被検体の超音波プローブ設置予定位置及び位置識別デバイス設置予定位置に脂肪の塊などでできた位置マーカを貼り付けてMR像を撮像する。なお、プローブ位置マーカは、被検体内の解剖学的な特徴点でも良い。その結果、画像データ記憶部8に記憶されている3次元ボリュームデータと、超音波プローブを用いて撮像した超音波断層像とは、少なくともプローブ設置位置及び位置識別デバイス設置位置が相互に対応付け可能になっている。
【0015】
次に、治療中の超音波画像とリファレンス画像の位置を対応付けるための方法を、図3及び図4のフローチャートを用いて説明する。この処理は処理部4で行われる。まず2つの座標系、すなわちリファレンス画像を作るためのボリュームデータの座標系と、超音波プローブ2の位置を示す座標系をそれぞれ初期化する(S101)。次に後述する方法で、前記2つの座標系の対応付けを行なう(S102)。座標系の対応付けが出来ると、プローブ2の位置に対応したリファレンス画像の作成(S103)が可能となる。超音波画像とリファレンス画像を並べて表示した状態で、位置ずれがあった場合、画像上で対応が取れるように、プローブ2を固定してリファレンス画像を動かすか、リファレンス画像を固定してプローブ2を動かすかによって、超音波画像とリファレンス画像の対応関係を修正する(S104)。位置の修正が終わると、プローブの座標系とボリュームデータの座標系の相対位置を固定する(S105)。あとは位置センサでプローブの移動量(平行移動及び、回転移動)を検出し(S106)、プローブの動きに対応してリファレンス画像の更新を行なう(S107)。プローブの移動量の検出方法については後述する。
【0016】
この処理のなかで、特にポイントとなるプローブの座標系とボリュームデータの座標系の対応付け処理(S102)の詳細について、図4を用いて説明する。まずリファレンス画像の座標系とプローブ座標系の連動の解除を行なう(S110)。これは、座標系補正の場合に必要で、座標系の初期化直後の場合は、元々連動していない。次に、リファレンス画像中のプローブ位置マーカの探索を行なう(S111)。次に、このプローブ位置マーカの近くに超音波プローブを設置する(S112)。この結果、超音波画像については、プローブ位置が、画像上に必然的に含まれるので、プローブ位置を探索する必要は無い。次に、超音波画像中の位置識別デバイスの探索を行なう(S113)。ここで言う探索とは、オペレータが目視で探しても良いし、予め装置として設定された閾値以上の輝度や、相互相関や最小二乗法などの、予め設定された特異的な波形との類似度の計算結果が閾値以上になったときに、自動的に装置が判定するようにしても良い。続いて、リファレンス画像中で位置識別デバイスに対応する位置マーカの探索を行なう(S114)。同様にして、第2の位置識別デバイス及びそれに対応する位置マーカに関しても超音波画像中、及びリファレンス画像中で探索を行なう(S115,S116)。このようにプローブ位置マーカ1つと、位置識別デバイス(位置マーカ)が2つの合計3点で対応が取れることによって、超音波画像とリファレンス画像の2つの断層面は完全に一致する。この状態において、リファレンス画像の座標系とプローブ座標系の連動を開始する(S117)。また治療中に、顕著な患者の動きがあって、プローブの位置と治療部位の相対位置が動いた可能性がある場合には、図4のフローチャートの先頭に戻り、適宜プローブの座標系とボリュームデータの座標系の対応付けを行なう。
【0017】
図3のフローチャート中のプローブの動き検出に関して、いくつかの方法がある。システムの構成要素を少なくするという観点からは、異なる時間に撮像された、画像同士の比較によって、その時間の間のプローブ位置の移動を推定する方法がある。例えば、ある時間に撮像された画像データと、別の時間に撮像された画像データとの相互相関処理を行えば、相関係数の最も高い位置までその時間内にプローブが動いたものと推定できる。より簡便には、一方の画像データの位置をずらしながら両画像データの差分を逐次的に計算し、その差分が最も小さくなる位置を検出し、その位置ずれの分だけプローブが動いたものとして推定してもよい。なお、比較する画像データは、画像データの一部を用いてもよいし、画像データの元となる受信エコーデータを用いてもよい。この場合には、プローブ2の位置を検出するためのセンサは必要ない。しかし、特に本発明のように、超音波画像の感度が十分に高いと言えない場合には、位置推定の精度も低下してしまう。そのような場合には図5に示すように、プローブ2に対して固定された位置センサ9を用いることが有用である。この位置センサ9はジャイロや加速度センサのようなものでも良いし、トランスミッタとセットで用いられる磁気センサのようなものでもよい。これらのいずれかの方法もしくは組み合わせによって、平行移動の3自由度と回転の3自由度、計6自由度に関するプローブ2の動きを検出することが出来る。特に、経頭蓋超音波治療のように、被検体と超音波プローブがなんらかの手段によって固定されている場合は、6自由度全てを検出しなくても、最も動きが問題となる自由度に限定して、プローブの動き検出、リファレンス画像の追随を行なってもよい。
【0018】
これまでに述べた方法を用いることによって、図6に示すように、治療前に所得したX線CTやMR画像などの3次元データから治療中の超音波撮像面に対応した画像を作成し、リアルタイムで取得した超音波断層像と並べて表示することが出来る。並べて表示する代わりに、2つの画像から合成した画像を表示してもよい。頭蓋内超音波撮像においては、患者ごとに板間層の状態や、板間層以外の骨の状態が異なるため、超音波画像の感度が大きく異なり、表示部5の中のリアルタイム超音波画像が良く映らない場合がある。そのような場合に本発明においては、位置識別デバイス1を用いることで、図7に示すように、位置合わせ精度を向上することが出来る。位置識別デバイス1は、トランスポンダと呼ばれる電子デバイスで構成されることが好ましい。
【0019】
トランスポンダは、図8に示すように、超音波パルスを受信すると、直ちに、超音波パルスを送信するような、受波器、増幅器202、送波回路203、識別部(ID入力部)204、送波器から構成されている。なお、通常、受波器と送波器は同一の振動子201となることが多い。図8(a)はアナログ回路を用いたトランスポンダの例であり、図8(b)はデジタル回路を用いたトランスポンダの例である。図8(a)の送波回路203が、図8(b)では、A/D変換器206、判定回路207、D/A変換器208、波形メモリ205、増幅器209から構成されている。特に、複数のトランスポンダを使う場合は、トランスポンダ毎の区別が必要なために、トランスポンダのID入力部204が必要となる。ただし、後述するように、複数のトランスポンダを特異的な配置に並べて、認識度を向上させる場合には、配置方法によって、IDを持たせることも出来る。ここで、回路込みの振動子を小型化する方法としては、capacitive micromachined ultrasound transducer(cMUT)のような半導体膜を用いた超音波振動子を用いる方法も有用である。cMUTは、半導体基板上に上下電極に挟まれた空隙を形成し、上下電極間にDCバイアスを印加し、蓄積した電荷間に働くクーロン力を用いて振動させるデバイスであり、従来の圧電セラミックスなどによる振動子に比べて、シリコンなどの半導体プロセスによって形成が可能なため、プリアンプなどの回路の内蔵がモノリシックに出来るという特徴がある。
【0020】
このような能動的な反射体を用いることで、受動的な反射エコーよりも信号強度、信号特異度を上げることが出来る。信号特異度を上げるとは、受信した信号とは、異なる周波数や、周波数が同じでも特異的な符号化を行なった送波を行なうことで、超音波プローブに入った信号の中で、トランスポンダからの信号を特異的に認識できるような工夫を行なうことである。ここでいう符号化とは、通常一つのパルスで送信する方法を信号+1で送信すると表現した場合に、例えば、+1、+1、−1、−1、+1、−1のように、時間軸上に配列した複数のパルスシーケンス(パルス間隔は、たとえば、送信周波数逆数の時間間隔など)を用い、このパルスシーケンスからなる受信信号を、特異的に時間軸上で圧縮するフィルタ(上記パルスシーケンスの自己相関関数や、mismatchedフィルタなどの、この自己相関関数を変形した関数)を用いて、一つの点として、表示する方法である。
【0021】
図7の下図に示すように、左側の超音波画像にトランスポンダしか表示されない場合に、超音波画像を表示する意味は、以下の点において重要である。図9に示すような経頭蓋超音波治療において、イメージングのプローブと治療用のプローブの相対的な位置関係を固定しておくことによって、超音波画像が見えていなくても、超音波プローブの座標が明確であることによって、治療照準位置を的確にナビゲートすることが可能となる。図9において、治療部11は超音波プローブ2中に備えられている治療用の超音波送波用トランスジューサを制御する。経頭蓋のような極端な例でなくても、皮下脂肪や、肺、腸管内のガスに妨げられて画像化が困難な場合に、位置あわせを正確に行うためのトランスポンダを使う用途においても本方法は有効である。通常の術前画像と超音波画像の対応において利用する特徴点は、超音波プローブからなるべく遠い方が、超音波撮像面の位置を決定する際の精度が向上する。しかし、遠い特徴点は超音波画像上で認識されにくくなり、結局位置精度を向上するのが困難になるというトレードオフが存在する。そこで、トランスポンダのようなactiveな反射を用いることで、前記のトレードオフを回避することが出来るからである。このトランスポンダを用いることによって、頭蓋内の超音波以外にも、腹部からプローブをあてているときに被験者の背面にトランスポンダを配置したり、超音波画像の死角になるような肺や腸管を介した位置にトランスポンダを設置することで、画像合わせの精度が向上する。
【0022】
超音波血栓溶解においては、イメージングは2MHz、血栓溶解剤の効果増強用には500kHzと異なる周波数を用いる方法が提案できる。これは、イメージングに関しては空間分解能をあげたいが、治療用に関しては、脳組織の温度を過度に上げないために、あまり周波数をあげない方が良いからである。このような二つの異なる周波数を用いる場合、特に本発明のような術前画像をナビゲートに使う効果が大きくなる。イメージング用で絵が見えなくても、治療用には低周波のよりペネトレーションの高い超音波を使うことが出来るからである。また、この二つの周波数が使えるという構成を積極的に用いると、トランスポンダからの送波超音波は、イメージング用ではなく、治療用の周波数バンドを使うことで、トランスポンダの位置検出に関する感度を上げることが出来る。
【0023】
このようなトランスポンダは、最低一つの場所に関して一つ用いればよいが、一点だけだと、特異性が十分でない場合がある。その場合には図7の下図に示すように、一つの場所に関しても複数のトランスポンダを並べ、その配置パターンに特異性をもたせることで、トランスポンダからの信号の特異度を上げる方法がある。また、一つの撮像面をリファレンス像とあわせるのであれば、プローブ位置と認識部2点の計3点で十分である。しかし、位置ずれごとに、照射位置と異なるリファレンス位置補正用位置にプローブを動かすのは煩雑であるため、位置識別デバイスを3つ以上設定し、治療部位を含む撮像面に一番近い位置で、位置補正を行なうことは有用である。このときに、位置識別デバイスのトランスポンダからの信号を個々に変えておく必要性がある。それは、前記の配置の仕方で変えても良いし、周波数や符号化の方法で異なるようにしてもよい。
【0024】
トランスポンダの位置に関する空間分解能を良くするには、トランスポンダからの信号を広帯域にする必要がある。しかし複数のトランスポンダ間の分離度を良くするには、帯域がなるべく重ならないようにする必要がある。例えば図10(a)に示すように、トランスポンダ1の周波数帯域f1を1〜2MHz、トランスポンダ2の周波数帯域f2を2〜4MHzのように、重なり無く分けることが好ましい。ただこの場合、周波数比例減衰や、骨を透過するときの骨の厚み共振に依存する、透過率の周波数依存性の影響を受けるため、なるべく周波数帯域が一致しているほうが好ましい場合もある。そのような場合には、図10(b)に示すように、周波数帯域は一致するが、区別が可能な符号化信号を用いて、分離できるようにするのも有用な方法である。また別の、周波数帯域が同一で分離するための手法としては、図7の中に示すような、一つの識別部について複数のトランスポンダを配置し、空間的な配置の仕方で識別部毎の区別を有効にする方法もある。このような空間分布を持たせる方法は、トランスポンダ一点の方法にくらべ、ノイズとの区別がしやすくなるために非常に有効な方法である。
【0025】
以上、説明したように、本実施形態によれば、頭蓋内の超音波撮像など、超音波画像の感度が十分でない場合にも、治療前のリファレンス画像の使用中に位置ずれを補正することができる。これによって、治療用超音波照射の位置精度が向上し、治療の安全性が向上する。
【0026】
また、別の実施形態として、プローブ位置とプローブ位置決定用マーカを点であわせるのではなく、線であわせることによって、その後の位置あわせを容易にする方法も有用である。以下、図11を用いて説明する。図11(a)は側面図、図11(b)は正面図である。位置識別デバイス12を、プローブ2の設置面側から見て見えやすい位置に並べる。一方、超音波プローブ2上には、レーザダイオード13を図11(a)に示すような角度で設置することで、超音波プローブの撮像面が、被検体上に、ラインとして表示されるように設定しておく。このようにラインとして表示するには、レーザダイオードを表示したいラインに沿って動かしても良いし、シリンドリカルレンズのような、ラインを表示するレンズを用いても良い。このレーザのラインと、位置識別デバイス12の位置が重なるように、超音波プローブ2を設置することで、超音波画像とリファレンス画像の対応づけを容易にすることが出来る。また、上述したように、トランスポンダなどの位置識別デバイス1aを設置し、位置検出することによって、さらに精度のよい位置あわせが可能となる。なお、リファレンス画像取得の際には、プローブ2の位置、位置識別デバイス1a、12の位置など、多くの位置マーカを貼り付けて、X線CT像やMR像を撮像しておく方が、位置あわせ精度を高める上で好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を実施するための装置のブロック図。
【図2】ボリュームデータと再構成画像のスライス位置を説明する図。
【図3】本発明を実施するためのフローチャート。
【図4】本発明を実施するためのフローチャート。
【図5】本発明を実施するための装置のブロック図。
【図6】ボリュームデータとプローブの位置関係を説明する図及び表示部における画像表示の例を示す図。
【図7】被検体とプローブの位置関係を説明する図及び表示部における画像表示の例を示す図。
【図8】トランスポンダの構成図。
【図9】本発明を実施するための装置のブロック図。
【図10】トランスポンダからの信号の周波数帯域を説明する図。
【図11】被検体とプローブの位置関係を説明する図。
【符号の説明】
【0028】
1…位置識別デバイス、2…プローブ、3…超音波画像作成部、4…制御部、5…表示部、6…断層画像再構成部、7…データ選択部、8…画像データ記憶部、9…位置センサ、10…位置検出部、11…治療部、12…プローブ位置設定部、13…レーザダイオード、201…振動子、202…増幅器、203…送波回路、204…ID入力部、205…波形メモリ、206…A/D変換器、207…判定回路、208…D/A変換器、209…増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置識別デバイスが取り付けられた被検体に超音波を送受信する超音波プローブと、
前記超音波プローブが受信した超音波に基づいて超音波断層像を作成する超音波画像作成部と、
予め取得した、前記位置識別デバイスの配置予定位置と前記超音波プローブの配置予定位置に位置マーカが配置された被検体のボリューム画像データを記憶した画像データ記憶部と、
前記画像データ記憶部に記憶された被検体のボリューム画像データから所望のスライス画像データを選択するデータ選択部と、
前記データ選択部によって選択されたスライス画像データから前記超音波プローブが送受信した超音波に基づく超音波断層像に相当する断層画像を再構成する断層画像再構成部と、
前記予定位置に配置された超音波プローブが送受信した超音波に基づいて作成された、前記位置識別デバイスを表す像を含む超音波断層像と、前記データ選択部によって選択された前記位置マーカを含むスライス画像データから前記断層画像再構成部によって再構成された断層画像とを、両者に含まれる前記位置識別デバイスの像と位置マーカの像を用いて位置あわせする制御部と、
前記位置合わせされた超音波断層像と前記断層画像再構成部によって再構成された断層画像とを関連づけて表示する表示部と
を有することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波撮像装置において、前記位置識別デバイスと前記超音波プローブの相対位置を確認するデバイスとしてレーザーポインタを用いることを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項3】
請求項1記載の超音波撮像装置において、前記超音波プローブの動きを検知する位置センサを有し、前記データ選択部は前記画像データ記憶部から前記位置センサによって検知された前記超音波プローブの位置に対応するスライス画像データを選択することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項4】
請求項1記載の超音波撮像装置において、前記位置識別デバイスは送受信部及び信号処理部を備え前記超音波プローブからの超音波の受信に応じて信号を送信するチップであり、前記超音波画像作成部は前記チップからの信号送信位置を認識することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項5】
請求項4記載の超音波撮像装置において、前記表示部は被検体の超音波断層像と前記チップからの信号送信位置とを表示することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項6】
請求項1記載の超音波撮像装置において、前記画像データ記憶部にはX線CT装置又はMRI装置で撮像されたボリューム画像データが記憶されていることを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項7】
請求項1記載の超音波撮像装置において、前記位置識別デバイスは送受信部及び信号処理部を備え前記超音波プローの受信に応じて信号を送信する複数のチップの組み合わせであり、前記複数のチップの空間的な配置又は周波数又は符号化方法の何れか一つによって当該位置識別装置を表現することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項8】
請求項1記載の超音波撮像装置において、前記超音波プローブは治療用超音波を送信する送信部を有することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項9】
請求項1記載の超音波撮像装置において、前記制御部は、前記位置合わせされた超音波断層像と前記断層画像との両画像について、それらの両画像を並置表示する、両画像を切替表示する、若しくは両画像を合成して表示する、の少なくとも一つの表示形態によって両画像を関連付けて表示することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項10】
請求項8記載の超音波撮像装置において、前記位置識別デバイスからの前記超音波プローブの相対的位置を求め、求められた前記超音波プローブの相対的位置に基づき治療用超音波の送信時における前記超音波プローブの照準位置を誘導することを特徴とする超音波撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−302072(P2008−302072A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152889(P2007−152889)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】