説明

超音波撮像装置

【課題】被検体に過剰な情報を与えることなく、オペレータが臨床現場で計測等の検査を充分に行うことができる超音波撮像装置を実現する。
【解決手段】被検体1の検査で、オペレータ2のみが観察する第1のディスプレイ21および被検体1のみが観察する第2のディスプレイ22を用い、第2のディスプレイ22には、被検体1の断層画像のみを表示することとしているので、オペレータ2が行う断層画像を用いた計測等により、被検体1が過剰な情報を与えられることなく、またオペレータ2も、被検体1の存在を気にせず、充分に検査を行うことを実現させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベッドサイド(bedside)で,被検体の断層画像情報を取得しつつ各種計測等の検査を行う超音波撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超音波撮像装置の高機能化に伴い、取得された断層画像情報に対して、各種計測を行い、診断精度を高めることが行われる。例えば、表示された断層画像に腫瘍が描出されている際には、腫瘍部分にROI(Region Of Interest;関心領域)を設定し、腫瘍の大きさを計測することが行われる(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
一方、被検体に対する情報開示,例えば治療または診断に対する説明と同意(informed consent)が強く要求される時代背景に伴い、検査中に取得される超音波撮像装置の断層画像は、オペレータ(operator)と共に被検体も目視可能なものとされる。この場合、1つあるいは2つのディスプレイ(display)に同様の画像が表示され、オペレータおよび被検体の双方が共通の画像を目視できる様にされる。被検体にとって、臨床現場で検査画像を目視できることは、検査に伴う不安感を軽減する効果があり、好ましいものである。
【非特許文献1】日本電子機械工業会編、「改訂 医用超音波機器ハンドブック」、コロナ社、1997年1月20日、p.134〜146
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記背景技術によれば、臨床現場において、被検体に過剰な情報を与えることにもなる。すなわち、被検体は、オペレータが行う断層画像情報を用いた各種計測等の検査も同様に目視することになり、場合によっては、不安を生じさせることもある。
【0005】
例えば、オペレータは、断層画像に腫瘍等の画像が含まれている場合には、この腫瘍部分にROIを設定し計測を行う。一方、被検体は、同様にこの作業を目視することになり、腫瘍の位置および大きさ等を認識することとなる。これら検査過程を被検体が目視することは、診断に至る前の未確定の情報を被検体が過大に評価することにもなりかねず、好ましいことではない。
【0006】
なお、オペレータは、被検体の撮像を行った後に、別途取得した断層画像情報を用いて、計測等の検査を行うこともできる。この場合、被検体が検査過程を目視することは無く、被検体に過剰な情報を与えることにはならないが、オペレータにとって、効率的な検査とは言い難いものとなる。
【0007】
これらのことから、被検体に過剰な情報を与えることなく、オペレータが臨床現場で計測等の検査を充分に行うことができる超音波撮像装置をいかに実現するかが重要となる。
【0008】
この発明は、上述した背景技術による課題を解決するためになされたものであり、被検体に過剰な情報を与えることなく、オペレータが臨床現場で計測等の検査を充分に行うことができる超音波撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、第1の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、被検体の断層画像情報を取得する画像取得部と、前記断層画像情報を表示する複数のディスプレイを有する表示部と、前記ディスプレイごとに、前記断層画像情報を含む、異なる画像情報を表示するディスプレイ表示制御手段とを備える。
【0010】
この第1の観点の発明では、オペレータおよび被検体が、異なるディスプレイを参照し、異なる画像情報を目視する。
【0011】
また、第2の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第1の観点に記載の超音波撮像装置において、被検体の断層画像情報を取得する画像取得部と、前記断層画像情報を、複数の異なる方向に表示するマルチビューディスプレイを有する表示部と、前記異なる方向ごとに、前記断層画像情報を含む、異なる画像情報を表示するディスプレイ表示制御手段とを備える。
【0012】
この第2の観点の発明では、複数のディスプレイの機能を、一台のマルチビューディスプレイで機能させる。
【0013】
また、第3の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、被検体の断層画像情報を取得する画像取得部と、前記断層画像情報および前記断層画像情報に基づいた検査の検査情報の表示を制御する画像表示制御部と、前記制御された画像情報を表示する表示部と、を備える超音波撮像装置であって、前記表示部は、第1のディスプレイおよび第2のディスプレイを有し、前記画像表示制御部は、前記第1のディスプレイに表示される画像情報を制御する第1のディスプレイ表示制御手段と、前記第2のディスプレイに、前記第1のディスプレイに表示される画像情報の一部の情報を表示する第2のディスプレイ表示制御手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
この第3の観点による発明では、表示部は、第1のディスプレイを、オペレータの視野範囲に位置させ、第2のディスプレイを、被検体の視野範囲に位置させ、画像表示制御部は、第1のディスプレイ表示制御手段により、第1のディスプレイの表示を制御し、第2のディスプレイ表示制御手段により、第2のディスプレイに、第1のディスプレイに表示される表示画像の一部を表示させる。
【0015】
また、第4の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第3の観点に記載の超音波撮像装置において、前記第2のディスプレイに前記検査情報を表示するかどうかを選択する入力部を備えることを特徴とする。
【0016】
この第4の観点の発明では、オペレータは、被検体に検査情報を公開するかどうかを選択する。
【0017】
また、第5の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第3または4の観点に記載の超音波撮像装置において、前記検査情報が、前記断層画像情報を用いて行われる計測の最中に表示される計測情報を含むことを特徴とする。
【0018】
この第5の観点の発明では、被検体に対して計測の最中に表示されるROI等を、非表示にする。
【0019】
また、第6の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第3ないし5の観点のいずれか一つに記載の超音波撮像装置において、前記第2のディスプレイが、前記超音波撮像装置に機械的に接続されていないことを特徴とする。
【0020】
この第6の観点の発明では、第2のディスプレイ位置は、超音波撮像装置の位置とは無関係に、オペレータにより自由に配置される。
【0021】
また、第7の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第6の観点に記載の超音波撮像装置において、前記第2のディスプレイを収納する収納ボックスを備えることを特徴とする。
【0022】
この第7の観点の発明では、超音波撮像装置の移動と共に、第2のディスプレイも移動させられる。
【0023】
また、第8の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第3ないし7の観点のいずれか一つに記載の超音波撮像装置において、前記第2のディスプレイ表示制御手段が、前記制御された画像情報を、無線で前記第2のディスプレイに送信する無線送信手段を備えることを特徴とする。
【0024】
この第8の観点の発明では、第2のディスプレイが配置される位置が、より自由に選択される。
【0025】
また、第9の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、被検体の断層画像情報を取得する画像取得部と、前記断層画像情報および前記断層画像情報に基づいた検査の検査情報の表示を制御する画像表示制御部と、前記制御された画像情報を表示する表示部と、を備える超音波撮像装置であって、前記表示部は、液晶ディスプレイの視野角を制御して、異なる2方向に異なる画像を出力するデュアルビューディスプレイを有し、前記画像表示制御部は、前記デュアルビューディスプレイの一方向に表示される第1の画像情報を制御する第1のディスプレイ表示制御手段と、前記デュアルビューディスプレイのもう一方向に前記第1の画像情報の一部の情報を表示する第2のディスプレイ表示制御手段とを備えることを特徴とする。
【0026】
この第9の観点の発明では、2台のディスプレイの機能を、一台のデュアルビューディスプレイで機能させる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、臨床現場において、被検体は、自身の断層画像を参照しつつも、オペレータが行う計測等の検査を目視することがなく、過剰な情報が与えられることが無いと共に、オペレータは、被検体を気にすることなく検査に集中し、充分な検査を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる超音波撮像装置を実施するための最良の形態について説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
【0029】
まず、本実施の形態1にかかる超音波撮像装置100の全体構成について説明する。図1は、本実施の形態1にかかる超音波撮像装置100の全体構成を示すブロック(block)図である。超音波撮像装置100は、探触子部101、送受信部102、画像処理部103、シネメモリ(cine memory)部104、画像表示制御部105、表示部106、入力部107および制御部108を有する。また、画像表示制御部105は、第1のディスプレイ表示制御部23および第2のディスプレイ表示制御部24を含み、表示部106は、第1のディスプレイ21および第2のディスプレイ22の2つのディスプレイを含む。ここで、探触子部101、送受信部102および画像処理部103は、画像取得部をなす。
【0030】
探触子部101は、超音波を送受信するための部分、つまり被検体1の撮像断面の特定方向に超音波を繰り返し照射し、被検体1の内部から繰り返し反射される超音波信号を,時系列的な音線として受信する。探触子部101は、同時に超音波の照射方向を順次切り替えながら電子走査を行う。なお、探触子部101の内部には、圧電素子がアレイ(array)状に配置されている。
【0031】
送受信部102は、探触子部101と同軸ケーブル(cable)によって接続され、探触子部101の圧電素子を駆動するための電気信号の発生および受信した超音波信号の初段増幅を行う。
【0032】
画像処理部103は、送受信部102で増幅された超音波信号から断層画像の描出を行う。例えば、受信した超音波信号の遅延加算処理、A/D(analog/digital)変換処理、変換した後のデジタル(digital)情報を、Bモード(mode)等の画像情報として、後述のシネメモリ部104に書き込む処理等である。
【0033】
シネメモリ部104は、Bモード画像情報等を蓄積するための画像メモリ(memory)である。特に、シネメモリ部104は、時間的に変化するBモード画像情報等を、時間情報と共に保存する。
【0034】
第1のディスプレイ表示制御部23および第2のディスプレイ表示制御部24は、画像処理部103で生成されたBモード画像情報等の画像情報に対して、表示フレームレート(frame rate)の変換を行い、表示画像の形状制御や位置制御を行う。また、第1のディスプレイ表示制御部23および第2のディスプレイ表示制御部24は、表示画像上での関心領域を示すROI(region of interest)の表示および計測、さらには計測結果の表示等も行う。
【0035】
第1のディスプレイ21および第2のディスプレイ22は、液晶ディスプレイ(display)等を用いて構成され、画像表示制御部105によって表示フレームレート変換および画像表示の形状や位置制御された断層画像情報を、オペレータに対して可視表示する。ここで、第1のディスプレイ21は、超音波撮像装置100の本体と機械的に接続されるのに対して、第2のディスプレイ22は、超音波撮像装置100の本体と機械的に接続されておらず、自由にディスプレイ位置を移動することができる。なお、第2のディスプレイ22は、超音波撮像装置100の本体と、同軸ケーブルにより電気的な接続がなされており、これにより表示される画像情報および同期信号等の通信が行われる。
【0036】
入力部107は、キーボード(keyboard)およびポインティングデバイス(pointing device)等からなり、オペレータにより、Bモード等の撮影モードを選択する操作入力信号、撮像を行う際の撮像条件および各種計測を行う際の指定情報等を制御部108に伝える。入力部107は、ディスプレイの表示画像上に位置するROIの位置設定およびROI位置の各種計測も行う。
【0037】
制御部108は、入力部107から与えられた操作入力信号および予め記憶したプログラム(program)やデータ(data)に基づいて、上述した超音波撮像装置各部の動作を制御し、表示部106にBモード画像等を表示する。特に、制御部108は、入力部から指定されたディスプレイの選択情報に基づいて、第1のディスプレイ21にのみ表示を行う場合および第1のディスプレイ21および第2のディスプレイ22の双方に表示を行う場合の選択を行う。
【0038】
制御部108は、第1のディスプレイ21にのみ表示を行う場合には、第1のディスプレイ表示制御部23にのみ画像情報の入力を行い、第1のディスプレイ21および第2のディスプレイ22の双方に表示を行う場合には、第1のディスプレイ表示制御部23および第2のディスプレイ表示制御部24の双方に画像情報の入力を行う。制御部108は、入力部からの指定により、第2のディスプレイ22に画像処理部103で取得された断層画像情報のみを表示する場合には、第2のディスプレイ表示制御部24に断層画像情報のみの書き込みを行う。
【0039】
図2は、超音波撮像装置100の臨床現場での使用環境を説明する説明図である。超音波撮像装置100は、ベッド(bed)11の脇に配置され、ベッド11を介してこの配置位置と対向する位置に自立器具12も配置される。ベッド11には、被検体1が仰向けの状態で寝かされている。オペレータ(operator)2は、超音波撮像装置100の第1のディスプレイ(display)21と向き合って着座しており、左手で超音波撮像装置100の操作パネル(panel)を操作すると共に、右手で図示しない探触子部101を保持し、この探触子部101を被検体1に密着させBモード画像情報等の取得を行う。
【0040】
自立器具12は、床の上に直立させられる第2のディスプレイ22の支持具で、第2のディスプレイ22が固定され、被検体1が容易に第2のディスプレイ22のディスプレイ画面を観察できる様にされる。超音波撮像装置100および第2のディスプレイ22は、図示しないケーブル(cable)により、電気的な接続が行われる。なお、被検体1は、オペレータが観察する第1のディスプレイ21のディスプレイ画面を、見ることができない配置とされている。
【0041】
図3は、画像表示制御部105の第1のディスプレイ表示制御部23および第2のディスプレイ表示制御部24の構成を示すブロック図である。第1のディスプレイ表示制御部23は、書き込み部31、画像メモリ32、読み出し部33を有し、第2のディスプレイ表示制御部24は、書き込み部34、画像メモリ35、読み出し部36を有する。
【0042】
画像メモリ32および35は、第1のディスプレイ21および第2のディスプレイ22の表示画面に表示される画像情報と一対一に対応する情報を含むメモリである。書き込み部31および34は、画像処理部103、シネメモリ部104および制御部108からの画像情報および検査情報を、制御部108から指定された画像メモリ32および35のアドレス(address)位置に書き込む。読み出し部33および36は、第1のディスプレイ21および第2のディスプレイ22が有する表示画面上の表示位置を指定する電気信号およびこの表示位置に対応する画像メモリ32および35の画素値情報を、ディスプレイに出力する。画像表示制御部105は、2つのディスプレイ制御部を有しているので、画像メモリ32および35に異なる画像情報を読み込むことにより、異なる画像を第1のディスプレイ21および第2のディスプレイ22に出力することができる。
【0043】
図4は、オペレータ2が検査情報およびスキャン(scan)情報等を入力する入力部107の操作パネル(panel)を示す図である。入力部107は、キーボード(key board)70、TGC(Time Gain Controller)71、ニューペイシェントキー(New Patient Key)等を含む患者指定部72、トラックボール(track ball)、ROI設定および計測等を含む計測入力部73、第1のディスプレイ21および第2のディスプレイ22の2つのディスプレイを同時使用する場合に用いられるデュアルディスプレイ(dual display)選択部74等を含む。デュアルディスプレイ選択部74は、ディスプレイ選択キー75および検査情報選択キー76を含む。
【0044】
キーボード70は、文字情報あるいは数値情報を入力する場合に用いられ、例えば被検体1の氏名、IDNo.(Identification No.)等の入力に用いられる。TGC71は、深さ方向に受信超音波信号の利得を調整する。患者指定部72は、新たな患者による撮像を行うごとに入力が行われる。この入力により、被検体1の氏名またはIDNo.と関連付けて、検査情報を格納するメモリ領域が確保される。計測入力部73は、ROIの設定、ROI面積の計測およびROI内画素値を用いた計測等を、トラックボール等を用いて行う。
【0045】
デュアルディスプレイ選択部74は、ディスプレイ選択キー75および検査情報選択キー76を有し、第1のディスプレイ21と共に第2のディスプレイ22に画像情報を表示するかどうかの選択を行う。オペレータは、ディスプレイ選択キー75を押すことにより、第1のディスプレイ21および第2のディスプレイ22の双方を、断層画像情報の表示手段として動作させることができる。この際、制御部108は、第1のディスプレイ表示制御部23および第2のディスプレイ表示制御部24の双方に断層画像情報を書き込む。
【0046】
また、オペレータは、検査情報選択キー76を押すことにより、第2のディスプレイ22に検査情報を表示するかどうかの選択を行う。第2のディスプレイ22に検査情報を表示しない場合には、制御部108は、第2のディスプレイ表示制御部24の画像メモリ35に書き込む画像情報を、断層画像情報のみとし、検査情報の書き込みは行わない。ここで、検査情報とは、被検体1の診断をする上で必要とされる情報のことで、断層画像情報を用いて行われる各種計測の最中に表示されるROI等の画像および計測結果を示す計測値等の計測情報を含む。
【0047】
つぎに、本実施の形態1にかかる超音波撮像装置100の動作について、図5を用いて説明する。図5は、超音波撮像装置100の動作を示すフローチャートである。まず、被検体1、オペレータ2および超音波撮像装置100は、図2に示した様な配置とされる。オペレータは、被検体1をベッド11に仰向けに配置し(ステップS501)、超音波撮像装置100の本体を、被検体1の頭部近傍位置にベッド11と平行になるように配置する。
【0048】
その後、オペレータは、第2のディスプレイ22を配設する(ステップS502)。例えば、オペレータは、第2のディスプレイ22を、自立器具12等に固定する。ここで、被検体1の頭部は、第2のディスプレイ22のディスプレイ画面正面に位置する様にされる。この様な配置では、図2に示す様に、被検体1は、第1のディスプレイ21を観察することができない。一方、オペレータ2は、同様に第2のディスプレイ22を観察することができない。
【0049】
その後、オペレータは、デュアルディスプレイ選択部74により、第1のディスプレイ21および第2のディスプレイ22を共に表示する選択を行い、撮像を行う(ステップS503)。同時に、オペレータは、検査情報選択キー76を押し、第2のディスプレイ22には断層画像情報のみが表示される様にする。そして、オペレータは、取得される断層画像情報を観測しつつ、各種計測を行い(ステップS504)、本処理を終了する。
【0050】
図6は、ここで、第1のディスプレイ21および第2のディスプレイ22に表示される表示画面の一例を示す図である。図6(A)は、第1のディスプレイ21に表示される表示画面の一例である。この表示画面には、断層画像61および検査情報をなすROI62およびROI値63等の情報が表示されている。例えば、ROI62は、断層画像61で観察される腫瘍部分に設定されており、表示画面には、この領域の面積等の計算値であるROI値63が表示されている。
【0051】
図6(B)は、第2のディスプレイ22に表示される表示画面の一例である。この表示画面には、断層画像61のみが表示されている。ここで、被検体1は、第2のディスプレイ22の表示画面のみを観察しているので、撮像の最中に自分の断層画像を参照しつつも、第1のディスプレイ22に表示されているROI62等は観察できない。従って、被検体1は、撮像中に自分の断層画像を目視する満足を味わいつつも、オペレータ2が行う計測を目視出来ないので、ROIの設定等により判明する腫瘍の位置に関する情報を認識することができない。
【0052】
一方、オペレータ2は、撮像の最中に行われる断層画像61を用いた腫瘍等の計測を、被検体1に目視されることがないので、被検体1の存在を気にせず思う通りの計測を撮像の最中に行うことができる。
【0053】
上述してきたように、本実施の形態1では、被検体1の検査で、オペレータ2のみが目視する第1のディスプレイ21および被検体1のみが目視する第2のディスプレイ22を用い、第2のディスプレイ22には、被検体1の断層画像のみを表示することとしているので、オペレータ2が行う断層画像を用いた計測等により、被検体1に過剰な情報を与えることなく、またオペレータ2も、被検体1の存在を気にせず、充分な検査を行うことができる。
【0054】
また、本実施の形態1では、画像表示制御部105は、第1のディスプレイ表示制御部23および第2のディスプレイ表示制御部24に対応する2つの画像メモリ32、35を有することとしたが、この2つの画像メモリを1つの画像メモリとすることもできる。図7は、1つの画像メモリ38からなる画像表示制御部109の構成を示すブロック図である。なお、画像表示制御部109は、図3に示した画像表示制御部105に対応するものであり、画像表示制御部105と全く同様の機能を有する。画像表示制御部109は、書き込み部37、画像メモリ38、読み出し部39および40を含む。
【0055】
ここで、図3に示す第1のディスプレイ表示制御部23に対応する第1のディスプレイ表示制御部41は、読み出し部40、画像メモリ38および書き込み部37を含み、図3に示す第2のディスプレイ表示制御部24に対応する第2のディスプレイ表示制御部42は、読み出し部39、画像メモリ38および書き込み部37を含む。従って、第1のディスプレイ表示制御部41および第2のディスプレイ表示制御部42は、ハードウェア(hardware)的には書き込み部37および画像メモリ38を共有する。読み出し部40は、第1のディスプレイ21に画像情報を出力し、読み出し部39は、第2のディスプレイ22に画像情報を出力する。
【0056】
画像メモリ38には、第1のディスプレイ21に出力される画像情報および第2のディスプレイ22に出力される画像情報が所定のメモリ領域に区分けされて保存される。従って、読み出し部40および39は、所定のメモリ領域からの読み出しを行うことで、第1および第2のディスプレイ21、22に出力される画像情報を、区別して読み出すことができる。
【0057】
また、本実施の形態1では、超音波撮像装置100とは機械的に接続されない第2のディスプレイ22を用いることとしたが、超音波撮像装置100にこの第2のディスプレイ22を収納する収納ボックスを設けることもできる。例えば、超音波撮像装置100のいずれかの側面に、第2のディスプレイ22および第2のディスプレイ22を固定する自立器具等を収納する収納ボックスを設けることにより、移動を行う際の手間の軽減および機動性を高めることができる。
【0058】
また、本実施の形態1では、第2のディスプレイ22は、超音波撮像装置100からケーブルを用いて、有線で画像情報を受信することとしたが、この代わりに無線を用いて、画像情報を受信することもできる。この場合には、超音波撮像装置100に無線送信手段、第2のディスプレイ22に無線受信手段を設け、断層画像情報等を送受信する。
【0059】
また、本実施の形態1では、第2のディスプレイ22は、断層画像61のみを表示することとしたが、被検体1に不安感を与えることのない、検査情報以外の情報、例えば、スキャン情報、時間情報、被検体1の名称等の個人情報等を表示することもできる。
(実施の形態2)
【0060】
ところで、上記実施の形態1では、第1および第2の2つのディスプレイを用いて、被検体1およびオペレータ2に異なる画像情報を示すこととしたが、デュアルビュー(dual view)液晶パネルを用いることにより、1枚のディスプレイを用いて、異なる方向に位置する被検体1およびオペレータ2の各々に異なる画像を示す様にすることもできる。
【0061】
図8は、本実施の形態2にかかる超音波撮像装置110の構成を示すブロック図である。超音波撮像装置110は、探触子部101、送受信部102、画像処理部103、シネメモリ部104、画像表示制御部115、表示部116、入力部107および制御部108を有する。ここで、探触子部101、送受信部102、画像処理部103、シネメモリ部104、入力部107および制御部108は、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0062】
表示部116は、実施の形態1の表示部106に対応するものであり、デュアルビューディスプレイ51を含む。画像表示制御部115は、実施の形態1の画像表示制御部105に対応するものであり、デュアルビューディスプレイ表示制御部52を含む。デュアルビューディスプレイ表示制御部52は、第1または第2のディスプレイ表示制御部23、24と同様のハードウェア構成を有し、単一の書き込み部、画像メモリおよび読み出し部を有する。
【0063】
デュアルビューディスプレイ51は、ディスプレイ画面の視野角を制御し、左右2方向に異なる画像を表示する様にしたものである。図9は、デュアルビューディスプレイ51の原理的な構成および動作を模式的に示す説明図である。デュアルビューディスプレイ51は、デュアルビュー液晶54および視差バリア53を含む。視差バリア53は、デュアルビュー液晶54の被検体1またはオペレータ2に目視される側のディスプレイ画面上に位置する。
【0064】
視差バリア53は、左右方向に一定間隔の間隙を有する表示画面のマスク(mask)装置である。デュアルビュー液晶54の左右方向のディスプレイ画面上には、一枚の画像情報が、1つのピクセル置きに表示されており、一方、図9に斜線で示されている様に中間に位置するピクセルには、もう一枚の異なる画像情報が表示される。
【0065】
ここで、視差バリア53の間隙の大きさおよび繰り返しを所定の値にすることにより、図9に示す、被検体1の位置からは、空白のピクセルのみが目視され、オペレータ2の位置からは、斜線部分のピクセルのみが目視されるようにできる。一方、被検体1およびオペレータ2は、お互いに相手の画像を目視することはできない状態となる。なお、左右の観察者の距離は、100〜200cm程度、左右の観察者の表示画面からの距離は、50〜200cm程度にされる。
【0066】
図10は、超音波撮像装置110の使用環境を説明する説明図である。超音波撮像装置110は、ベッド(bed)11の脇に配置される。ベッド11には、被検体1が仰向けの状態で寝かされている。被検体1は、ベッド11のオペレータ2が位置する方向に頭部が位置させられる。オペレータ2は、超音波撮像装置110と向き合って着座しており、デュアルビューディスプレイ51の表示画面は、被検体1およびオペレータ2の双方が異なる角度から目視できるように、オペレータ2に対して、被検体1側に斜めに傾いた状態とされる。
【0067】
オペレータ2は、超音波撮像装置110の本体に対して左手で超音波撮像装置110の操作パネルを操作すると共に、右手で図示しない探触子部101を保持し、この探触子部101を被検体1に密着させBモード画像情報等の取得を行う。
【0068】
デュアルビューディスプレイ51のオペレータ2側には、図6(A)に示した様な、各種計測を行う際の検査情報と共に断層画像61を含む第1の画像情報が表示される。一方、デュアルビューディスプレイ51の被検体2側には、図6(B)に示した様な、断層画像61のみが表示される。
【0069】
なお、デュアルビューディスプレイ表示制御部52は、表示画面の左右方向を示す画像メモリのアドレス領域に、1ピクセル(pixel)置きに実施の形態1で第1のディスプレイ21に表示される画像情報を書き込み、これらピクセルの中間にあるピクセルに第2のディスプレイ22に表示される画像情報を書き込む。この場合、デュアルビューディスプレイ表示制御部52の読み出しは、実施の形態1の読み出し部と同様の読み出しを行うことにより、デュアルビュー液晶54で用いられる表示画像情報を形成することができる。
【0070】
上述してきたように、本実施の形態2では、デュアルビューディスプレイ51を用いて、オペレータ2が位置する方向の表示画面と、被検体1が位置する方向の表示画面とを、一台のディスプレイで異なるものにするので、超音波撮像装置110にとって大きなハードウェアの追加とならずに、しかもオペレータ2の検査を遅滞させること無く、被検体1に安心感を与える画像を示すことができる。
【0071】
また、本実施の形態2では、デュアルビューディスプレイ51を用いた例を示したが、2つの異なる方向に異なる画像を出力するデュアルビューに限定されず、3つまたはそれ以上の方向に異なる画像を出力するマルチビューディスプレイ(multiview display)を用いることもできる。
【0072】
また、本実施の形態2では、デュアルビューディスプレイ51の被検体1が目視する方向の画像は、被検体1の断層画像61からなるとしたが、被検体1が検査の不安感を解消する景色等の画像とすることもできる。
【0073】
また、本実施の形態2では、図9に示した動作原理のデュアルビューディスプレイ51を用いたが、この原理のディスプレイは、表示画面上の画像が有する目視可能な視野角が狭いため、特定方向からのみ目視が可能となる。このディスプレイを、実施の形態1に示した第1のディスプレイ21の代わりに用いることにより、オペレータ2により行われる計測等の検査情報を、被検体1により覗き見されないようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】超音波撮像装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかる超音波撮像装置の使用環境を示す説明図である。
【図3】実施の形態1にかかる画像表示制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態1にかかる入力部の操作パネルを示す説明図である。
【図5】実施の形態1にかかる超音波撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】第1のディスプレイおよび第2のディスプレイに表示される表示画面の一例を示す説明図である。
【図7】画像表示制御部の別の構成を示すブロック図である。
【図8】実施の形態2にかかる超音波撮像装置の全体構成を示すブロック図である。
【図9】デュアルビューディスプレイの構成および動作を示す説明図である。
【図10】実施の形態2にかかる超音波撮像装置の使用環境を示す説明図である。
【符号の説明】
【0075】
1 被検体
2 オペレータ
11 ベッド
12 自立器具
21 第1のディスプレイ
22 第2のディスプレイ
23、41 第1のディスプレイ表示制御部
24、42 第2のディスプレイ表示制御部
31、34、37 書き込み部
32、35、38 画像メモリ
33、36、39、40 読み出し部
51 デュアルビューディスプレイ
52 デュアルビューディスプレイ表示制御部
53 視差バリア
54 デュアルビュー液晶
61 断層画像
63 ROI値
70 キーボード
72 患者指定部
73 計測入力部
74 デュアルディスプレイ選択部
75 ディスプレイ選択キー
76 検査情報選択キー
100、110 超音波撮像装置
101 探触子部
102 送受信部
103 画像処理部
104 シネメモリ部
105、109、115 画像表示制御部
106、116 表示部
107 入力部
108 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の断層画像情報を取得する画像取得部と、
前記断層画像情報を表示する複数のディスプレイを有する表示部と、
前記ディスプレイごとに、前記断層画像情報を含む、異なる画像情報を表示するディスプレイ表示制御手段とを備える超音波撮像装置。
【請求項2】
被検体の断層画像情報を取得する画像取得部と、
前記断層画像情報を、複数の異なる方向に表示するマルチビューディスプレイを有する表示部と、
前記異なる方向ごとに、前記断層画像情報を含む、異なる画像情報を表示するディスプレイ表示制御手段とを備える超音波撮像装置。
【請求項3】
被検体の断層画像情報を取得する画像取得部と、
前記断層画像情報および前記断層画像情報に基づいた検査の検査情報の表示を制御する画像表示制御部と、
前記制御された画像情報を表示する表示部と、
を備える超音波撮像装置であって、
前記表示部は、第1のディスプレイおよび第2のディスプレイを有し、
前記画像表示制御部は、前記第1のディスプレイに表示される画像情報を制御する第1のディスプレイ表示制御手段と、前記第2のディスプレイに、前記第1のディスプレイに表示される画像情報の一部の情報を表示する第2のディスプレイ表示制御手段と、
を備えることを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項4】
前記超音波撮像装置は、前記第2のディスプレイに前記検査情報を表示するかどうかを選択する入力部を備えることを特徴とする請求項3に記載の超音波撮像装置。
【請求項5】
前記検査情報は、前記断層画像情報を用いて行われる計測の最中に表示される計測情報を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の超音波撮像装置。
【請求項6】
前記第2のディスプレイは、前記超音波撮像装置に機械的に接続されていないことを特徴とする請求項3ないし5のいずれか一つに記載の超音波撮像装置。
【請求項7】
前記超音波撮像装置は、前記第2のディスプレイを収納する収納ボックスを備えることを特徴とする請求項6に記載の超音波撮像装置。
【請求項8】
前記第2のディスプレイ表示制御手段は、前記制御された画像情報を、無線で前記第2のディスプレイに送信する無線送信手段を備えることを特徴とする請求項3ないし7のいずれか一つに記載の超音波撮像装置。
【請求項9】
被検体の断層画像情報を取得する画像取得部と、
前記断層画像情報および前記断層画像情報に基づいた検査の検査情報の表示を制御する画像表示制御部と、
前記制御された画像情報を表示する表示部と、
を備える超音波撮像装置であって、
前記表示部は、液晶ディスプレイの視野角を制御して、異なる2方向に異なる画像を出力するデュアルビューディスプレイを有し、
前記画像表示制御部は、前記デュアルビューディスプレイの一方向に表示される第1の画像情報を制御する第1のディスプレイ表示制御手段と、前記デュアルビューディスプレイのもう一方向に前記第1の画像情報の一部の情報を表示する第2のディスプレイ表示制御手段とを備えることを特徴とする超音波撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−101073(P2009−101073A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277846(P2007−277846)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】