説明

超音波洗浄および消毒の装置および方法

樽の内表面を消毒しおよび微生物を殺すための装置および方法が開示される。一実施形態では、超音波装置は、樽の栓口内に配置された鞘に入ったソノトロードを含む。超音波発振器がソノトロードに接続される。超音波装置はまた、超音波発振器に接続されおよびソノトロードを伴う超音波振動子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に超音波学に関し、および、より具体的には、25℃から95℃の温度範囲の、および特に30℃ないし60℃の温度範囲の、加熱された液体の存在下での超音波消毒の装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイン樽のリサイクルはワイン産業では習慣である。樽を再使用することは、ワイナリーが諸経費を削減する方法の一つである。これは、どの時点においても何百個もの樽が活躍している大規模ワイナリーに特に当てはまる。樽の寿命は有限であり、および一定回数しか洗浄できない。樽の寿命を延ばすため、樽はまず白ワインに用いられ、洗浄されおよび次に赤ワインに用いられる。ワインが特定の樽内で経過する時間は、製造されているワインの種類および質に依存する。
【0003】
新しい樽の木材は、ワインに最も多くの香りを与え、その作用は樽の各回の再使用に伴って減少する。したがって、新しい樽は高価なため、新しい樽の最初の使用は通常は高級ワインのために取っておかれる。樽の三回目の使用は、普通はワインにあまり香りを加えない。このため、多くの製造者は樽を注意深く管理し、ワインに過剰にオークの風味を与えるのを避けるため、新しい樽と中古の樽を混合した中でワインを熟成させる。しかし、洗浄した樽に入れるべきワインを汚染しうる細菌および酵母が内部に隠れる可能性があるため、古い樽を使用するには注意しなければならない。そのような汚染のため、ワイン産業は毎年大量の腐ったワインを失っている。さらに、ワイン生産者は、ワインが樽の中である時間を経過するまで、ワインが腐っているかどうかわからない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この問題を克服するため、ワイン樽の内表面が、ワイン残留物を除去するためにしばしば削られる。切断加工機、かんな、および回転ワイヤーブラシを含むさまざまな装置が、樽の樽板の内表面から少量の木材を除去するために用いられてきている。その処理は、樽の解体または樽の一端の除去のどちらかを含む。樽の内部の木材が次いで、残留物を除去するために削られる。木材を削ることは、後で樽に入れるべきワインを汚染する機会を減らす。その方法はしかし、樽を削ることができる場所へ樽を移動させなければならないため、時間効率が悪い。さらに、樽の内表面を再度焼かなければならない。
【0005】
樽の汚染を除去するために用いられる別の方法は、樽の内表面を洗浄するための、高圧の湯または冷水または蒸気の使用を含む。高圧の水または蒸気の槍が栓口から入れられ、および水または蒸気のジェットを樽の内表面全体に噴射するよう手で操作または回転される。このことがワイン残留物である酒石酸塩などをほぐし、それらは次いで除去されうる。その破片は次いで、ポンプの使用によって、または樽を反転させることによって、排出されうる。
【0006】
使用されている代替の方法は、樽の内表面全体に高圧の湯または水または蒸気を吹き付ける洗浄ノズル上で樽を反転させることを含む。内表面から残留物を清掃するために蒸気または高圧の湯を用いることの長所は、それが表面を消毒もすることである。しかし、蒸気または水を用いる両方の方法が、蒸気または水の適用が樽の内表面上に直接行われることを必要とするために限定される。このことは特に栓口周囲に問題を生じるが、なぜなら表面が蒸気または水に直接に接触する位置へノズルを回転することが困難なためである。さらに、水を加熱する必要があるため、これらの方法はしばしば、大量の水および動力を必要とする。
【0007】
本明細書の全体を通じて、振動子から生じる超音波振動を音波処理すべき材料へ伝える部品を表すのに、ソノトロード(sonotrode)の語が用いられる。
【0008】
発明の目的
本発明の目的は、ソノトロードが第一の液体に少なくとも実質的に浸漬され、および第一の液体が膜によって第二の液体と分離されている、ソノトロードが超音波活動を実施するための装置を提供することである。
【0009】
本発明の目的は、先行技術の不利および短所を克服するかまたは少なくとも実質的に改善することである。
【0010】
本発明の他の目的および長所は、付属の図面と併せて、本発明の一実施態様が説明および例によって開示される下記の説明から明らかになる。
【0011】
ワイン樽を洗浄および消毒するための本装置および方法は、前記の問題の少なくとも一部を克服するために、超音波学を前記の湯と組み合わせて用い、およびワイン産業に有用な選択肢を提供する。
【0012】
本発明の他の目的および長所は、付属の図面と併せて、本発明の一実施態様が説明および例によって開示される下記の説明から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると、使用の際にソノトロードが容器の中に置かれ;容器には第一の液体が入っており、ソノトロードが少なくとも一部が第二の液体に囲まれており、膜がソノトロードが第二の液体と直接に接触しおよび第一の液体とは直接に接触しないように第一の液体と第二の液体の間に位置するように、少なくとも実質的に膜に囲まれたソノトロード、ソノトロードと接続された超音波発振器;および超音波発振器と接続された超音波振動子を含む超音波装置が提供される。
【0014】
好ましくは、膜は膨張性である。
【0015】
好ましくは、膜はソノトロードを少なくとも部分的に囲む袋を形成し、そのため袋は第二の液体で満たされる際に膨張する。
【0016】
好ましくは、容器に挿入される際に膜に保護を与えるように、容器の開口部と膜が接触する位置に膜が強化された領域を有する。これはその結果、膜が容器の開口部と接触した場合に膜が摩耗する可能性を低減する。
【0017】
好ましくは、液体を膜の中へおよび外へ移すための導管がある
【0018】
好ましくは、ソノトロードは、中空のおよび中実の(solid)ソノトロードから成る群から選択される
【0019】
好ましくは、導管はソノトロードの内部に位置する。
【0020】
好ましくは、ソノトロードは、ソノトロードの側面が平行、凹面、または凸面の形状とされる点でさらに特徴づけられる
【0021】
好ましくは、ソノトロードは、複数の方向の向きを有する終端を含み、その複数の方向は、長軸に対して垂直またはそうでない平面、長軸に対して垂直またはそうでない凹面または凸面、および対称または非対称の縮小または一定断面を含む。
【0022】
好ましくは、容器内の超音波活性の量を示すように適応された超音波活性センサーがある。
【0023】
好ましくは、超音波振動子は10kHzないし2000kHzの範囲内の周波数の超音波エネルギーを生じる。
【0024】
好ましくは、膜は透過性である。
【0025】
本発明の別の一態様では、第一の液体25℃ないし95℃の温度範囲のおよび特に30℃ないし60℃の温度範囲の第一の液体を、容器の内表面の一部と接触させて配置すること;少なくとも実質的に膜に囲まれた超音波ソノトロードを配置し、前記膜を5℃ないし50℃の温度範囲のおよび特に5℃ないし25℃の温度範囲の第二の液体の一定量で膨張させ、ソノトロードと接続した超音波発振器および超音波発振器と接続した超音波振動子を有する容器のボイドボリュームを満たすこと、結果として使用の際にソノトロードが第二の液体と直接に接触しおよび第一の液体とは直接に接触せず、超音波ソノトロードを操作して、第一の液体および第二の液体の両方においてキャビテーションを生じることを含む、超音波消毒のための方法が記載される。
【0026】
好ましくは、超音波ソノトロードを操作することは、超音波ソノトロードを操作して超音波キャビテーションを液体の中で誘導し、および容器の内表面を消毒することを含む。
【0027】
超音波装置を操作するための装置および方法が開示される。一態様では、ソノトロードは少なくとも一部が膜に囲まれており、および湯といった第一の液体(L1)の入った容器内に配置される。
【0028】
10℃ないし25℃の温度を有する水といった第二の液体(L2)が、次いでソノトロードと直接接触して配置される。膜はしたがって、二種類の液体L1およびL2の間の障壁を形成し、そのためそれらは分離される。加えられる第二の液体の量は、容器内の自由水(L1)が容器の全内表面を濡らすように、前記の一部満たされた容器の任意のボイドボリュームを満たすように膜が拡張されるのに十分である。超音波発振器がソノトロードに接続される。超音波装置はまた、超音波発振器に接続されおよびソノトロードを伴う、超音波振動子を含む。
【0029】
超音波活性の本装置および方法の一態様によると、超音波エネルギーを放出する軸は、以後ソノトロードといい、袋に入れられているが、一部満たされた容器の開口部を通じて容器内に導入でき、それによって容器を解体する必要を回避する。前記袋は次いで水で満たされ、および前記の一部満たされた容器のボイドボリュームを満たすように拡張され、結果として樽内の自由な液体が容器の全内表面を濡らす。超音波エネルギーは湯を通じてよりも冷水を通じてのほうが少ない伝搬損失で伝達され、および、ソノトロードが5℃ないし50℃の温度範囲のおよび特に5℃ないし25℃の温度範囲の水といった一定量の液体の入った袋に入れられており前記量が空の容器のボイドボリュームの相当な割合と等しい場合にソノトロードから容器の濡れた表面への超音波エネルギーの伝達が促進されおよびより効果的なキャビテーションが容器の濡れた表面で起こる。前記の鞘の存在はまた、樽内部の洗浄および消毒に必要な、使い捨ての液体の量を減らすのに役立つ。
【0030】
本発明の別の一実施形態では、袋の中に入れられたソノトロードは、一部または完全に満たされた容器の開口部を通じて樽内に導入でき、それによって容器を解体する必要を回避する。前記の袋は次いで水で満たされる。連続膜から構築されているが袋でないものに入った水中で生じた超音波エネルギーは、容器に入った自由水へ袋の壁を通じて伝達される。袋の存在は、ソノトロードによって発生する超音波の一部の内部反射によって、樽に入った自由水中へ伝達される超音波エネルギーから生じる、結果として生じるキャビテーション洗浄および消毒作用を促進するのに役立つことが見出されている。
【0031】
本発明のさらに別の一態様では、拡張できない多孔性の鞘に入れられたソノトロードは、一部または完全に満たされた容器の栓口を通じて樽内に導入でき、それによってワイン樽を解体する必要を回避する。次いで、樽が水で満たされる際に、前記袋は水で満たされる。袋に入った水の中で生じた超音波エネルギーは、容器に入った自由水へ袋の壁を通じて伝達される。袋の存在は、ソノトロードによって発生する超音波の一部の内部反射によって、容器に入った自由水中へ伝達される超音波エネルギーから生じる、容器内の水中のキャビテーション気泡の集団密度を増大させる調波周波数を生じ、および結果として生じるキャビテーション洗浄および消毒作用を促進するのに役立つことが見出されている。
【0032】
本発明のさらに別の一態様では、付属の回転式パラボラ反射器を備えたソノトロードは、一部または完全に満たされた容器の開口部を通じて容器内に導入でき、それによって容器を解体する必要を回避する。前記回転式パラボラ反射器は、ソノトロードの縦軸と同様の長さであり、およびソノトロードの縦軸を中心に連続的に回転される。生じる超音波エネルギーはパラボラ反射器によって濃縮され、および前記反射器の反対側の、濡れた容器表面の限定された範囲に集中される。パラボラ反射器の存在は、容器に入った自由水へ伝達される超音波エネルギーから生じる、結果として生じる洗浄および消毒作用を促進することが見出されている。
【0033】
本発明のさらに別の一実施形態では、袋の中に入れられたソノトロードは、外側から開口部の上に配置され、および一部が満たされた容器の開口部を通じて容器内に導入でき、それによって容器を解体する必要を回避する。前記袋は次いで、容器内のおよび袋の外の水が容器の全内表面を濡らすように、5℃ないし50℃の温度範囲のおよび特に5℃ないし25℃の温度範囲の水で満たされる。袋内の水中で発生される超音波エネルギーは、容器に入った自由水へ袋の壁を通じて伝達される。
【0034】
本発明の別の一態様では、超音波洗浄および消毒の装置および方法は、容器を外へ輸送する必要なしに、その場(in situ)での洗浄および消毒を可能にする。
【0035】
さらに別の一態様では、消毒を達成するために本業界で通常使用される、オゾンおよび二酸化硫黄といった化学消毒剤が、容器内の水に添加される。ソノトロードによって放出される高出力超音波は、化学消毒剤と相乗的に作用して、使用される前記化学薬品の非常に少ない濃度にて、十分なレベルの消毒を達成する。
【0036】
微生物を殺すことによって内表面を洗浄および消毒する装置および方法が開示される。
【0037】
一実施形態では、超音波装置は、容器の開口部内に配置された、袋に入れられているソノトロードを含む。超音波発振器がソノトロードに接続されている。超音波装置はまた、超音波発振器に接続されているおよびソノトロードを伴う、超音波振動子を含む。袋は冷水で満たされ、および袋は超音波装置の起動前に湯で満たされる。
【0038】
本明細書の一部として含まれる付属の図面は、本発明の現在好ましい実施形態を説明し、および上記の一般的説明および該好ましい実施形態の下記の詳細な説明と併せて、本発明の原理を説明および教示する役割を果たす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
下記の詳細な説明は、付属の図面に言及する。下記の説明は、容器、および特にワイン容器の洗浄、に関する典型的な実施形態に言及するが、本超音波装置の音響化学および超音波に関連する他の活動における使用といった他の実施形態が可能であり、および、本発明の精神および範囲を離れることなくここに記載の実施形態に変更を加えることが可能である。説明の目的で、本発明の十分な理解を提供するために特定の名称が示される。しかし、本発明を実施するためにこれらの特定の詳細が必要でないことは当業者に明らかとなる。
【0040】
洗浄によるワイン樽のリサイクルの実施は、ワイン産業内で広く行われている。しかし、不完全な洗浄の結果として生じる細菌汚染および酵母汚染のため、ワイン産業は毎年大量の腐ったワインを失っている。ワインおよび酒の容器が直面している問題の一つは、そのような容器の開口部はしばしば限定されていることである。このことは、そのような容器が洗浄される際に顕著な問題を生じる。木製のワイン樽は、部分的にまたは完全に解体され、および樽板の内側は削られる。近年、そのような容器を洗浄するために、高圧の水または蒸気が用いられている。このことは、しかし、ワイン生産者に利用可能な水が限られている、より乾燥した地域では特に、他の問題を生じる。
【0041】
さらに、腐敗性微生物の細胞壁は、超音波エネルギーの不経済に強力なレベルでさえ、雰囲気温度では破壊に耐性であるため、樽内部の十分なレベルの消毒は、腐敗性微生物を水の存在下で雰囲気温度にて強力超音波に曝露することによって達成できない。
【0042】
しかし、25℃から95℃の範囲の温度、および特に30℃ないし60℃の範囲の温度の水の存在下での強力超音波の使用は、腐敗性微生物を殺し、および樽内部の十分なレベルの消毒を与えることが見出されており、なぜなら前記生物の細胞壁はこれらの温度では、前記温度にて強力超音波エネルギーの存在下で破壊するのに十分に弱化するためである。
【0043】
超音波エネルギーは湯を通じてよりも冷水を通じてのほうが少ない伝搬損失で伝達されるため、ソノトロードが5℃ないし50℃の温度範囲のおよび特に5℃ないし25℃の温度範囲の水といった一定量の液体の入った鞘または袋に入れられており前記量が空の樽のボイドボリュームの相当な割合と等しい場合に、ソノトロードから容器の濡れた表面への超音波エネルギーの伝達が促進されおよびより効果的なキャビテーションが容器の濡れた表面で起こることもまたわかっている。特に洗浄すべき容器が木以外の材料からできている場合、他の液体を使用しうることがもちろん当業者に理解される。さらに、袋またはの中の液体は、化学的および/または物理的性質について容器内の液体と異なりうることもまた理解される。
【0044】
本実施形態はしたがって、25℃ないし95℃の温度範囲のおよび特に30℃ないし60℃の温度範囲の湯と組み合わせて超音波を用いて、ワイン樽および接近が限定された同様の容器を消毒および洗浄する。
【0045】
一般的に、ワイン樽は、25℃ないし95℃の温度範囲のおよび特に45℃ないし60℃の温度範囲の湯の存在下で、超音波の使用によって消毒される。この消毒法は、破壊されおよび衝撃波を放出する、顕微鏡的空洞の作用によって働く。25℃ないし95℃の温度範囲のおよび特に45℃ないし60℃の温度範囲の湯の存在下で前記衝撃波は、腐敗性微生物の細胞壁を破壊し、それによって腐敗性微生物を殺す。顕微鏡的空洞は、樽内の25℃ないし95℃の温度範囲のおよび特に45℃ないし60℃の温度範囲の加熱液体中へ高周波音を送ることによって形成される。
【0046】
図1に示す通り、超音波処理機15の袋20に囲まれたソノトロード10が、ワイン樽30の開口部25を通して挿入される。開口部25は、栓口または、たとえばワイン樽30の端部27を取り外すならば、他のより大きな開口部の形でありうる。
【0047】
図1では、袋20に入れられている超音波ソノトロード10は、ワイン樽30の開口部または栓口25を通して挿入される。図1は、ソノトロード10、中間フランジ40、および発振器45を含む超音波処理機15を示す。少なくとも1個の超音波振動子(記載せず)がソノトロード10に随伴する。ソノトロードの総直径は、ワイン樽30の栓口25の直径よりも小さい。袋20に入れられているソノトロード10は、一つの位置に固定、または相応に旋回されうる。ソノトロード10は好ましくはチタン製であるが、しかし本発明はチタンソノトロード10を有する超音波処理機15に限定されないことを読者は理解すべきである。
【0048】
図1に示す通り、中間フランジ40は、袋20に入れられているソノトロード10が栓口25を通じて一旦挿入されると、超音波処理機15を定位置に保持する。洗浄は短時間だけの工程でありおよび水はほとんど失われないため、中間フランジ40は完全な密閉を与える必要は無い。しかし、フランジ40は、樽30が回転または移動される際に、超音波処理機15が栓口25から外れるのを防ぐ。標準的なワイン樽の栓口の平均直径は、樽の外表面にて49〜50mm、および内表面にて47〜48mmである。したがって、超音波処理機15のソノトロード10は、一実施形態によると、栓口25の最小直径よりも小さい。代替の実施形態では、ソノトロード10は先細でありうる。
【0049】
洗浄すべき容器が相当に大きい開口部を有する場合は、フランジ40は必要でない可能性がある。
【0050】
発振器45は、樽30内で、ソノトロード10に随伴する振動子によって放出される超音波信号を発生する。超音波消毒法は、崩壊しおよび衝撃波を放出する顕微鏡的空洞の作用によって働く。前記衝撃波は、25℃ないし95℃の温度範囲のおよび特に45℃ないし60℃の温度範囲の湯の存在下で、腐敗性微生物の細胞壁を破壊し、それによって腐敗性微生物を殺す。顕微鏡的空洞は、消毒すべき表面32と接触している液体へ高周波音を送ることによって形成される。本実施形態では、顕微鏡的空洞は、ワイン樽30の木製樽板50の内表面上で形成する。空洞の破壊によって生じる衝撃波は、樽30の内壁32上の酒石酸塩などのワイン残留物34をほぐす。この破片55は次いでポンプの使用によってまたは樽30を反転させおよび破片55を栓口25を通って流出させることによって排出されうる。
【0051】
固定位置の定在波の発生を回避するため、ワイン樽30内の水L1はかくはんされうる。これは、ポンプ(記載せず)を用いて水をかくはんすることによって、または超音波処理機15の袋20に入れられているソノトロード10を回転または旋回させることによって達成されうる。
【0052】
図1〜4に示す本発明はソノトロード10に対して固定位置に袋20を示すが、本発明の範囲を離れることなくその袋はソノトロード10から分離されうることが明らかである。
【0053】
図2は、定位置にフランジ40を有するワイン樽30の側面断面図を示す。フランジ40はその上に位置する孔60を有し、それを通じて必要に応じて袋20へ水L2がポンプで出し入れされうるように導管65の挿入が可能になる。導管65は、袋20内の液体L2を通じた波の伝搬に干渉しないように、柔軟な材料から構築される。中間フランジ40は、ソノトロード10へ圧を加えることによってソノトロード10の動きを可能にするように適応される。図3Aおよび3Bにさらに示すように、ワイン樽30は水L1で完全に満たされている必要は無い。本実施例では、図3Aに示す通り、樽30は、25℃ないし95℃の温度範囲のおよび特に45℃ないし60℃の温度範囲の水L1で半分しか満たされていない。5℃ないし50℃の温度範囲のおよび特に5℃ないし25℃の温度範囲の水L2が、袋20へ導管65を通じて入れられ、および袋20が拡張する際、図3Bに示す通り樽30内の液体L2のレベルが上昇する。上述の通り、より冷たい水L2の使用は、液体L2中でのキャビテーションのより高い効率での発生を可能にし、およびしたがってL1中でのキャビテーションの発生の効率を高める。このことは、液体L1のより高い温度と共同して、樽30の内部での劇的に高まった洗浄作用を結果として生じる。読者がここで理解する通り、使用する水L1の量を減らすことは、特に水の入手が制限される地域で消毒が行われる場合には顕著に有利な点である。
【0054】
加えて、より高温の水L1の必要がより低減されるため、総エネルギー消費もまた低減される。
【0055】
本発明の別の一実施形態では、ポンプ(記載せず)を使用してフィルターを通して水をリサイクルでき、それによって消毒処理に必要な水L1の量を限定できる。
【0056】
ワイン樽は液体L1で半分しか満たされていないため、樽30は、樽の全表面が液体L1および超音波キャビテーションと接触するように、少なくとも一つの軸、一実施形態によると好ましくは水平軸、を中心に回転されなければならない。樽30を回転するためにワイン産業で通常用いられている回転機がこの作業に十分である。しかし、本発明は半分満たされた樽に限定されないことが理解されるべきである。樽は液体で完全にまたは一部が満たされていることが可能であり、液体はその後、他の樽の洗浄での使用のためにろ過およびリサイクルされる。
【0057】
本発明の実施形態に随伴するケーブルおよび配管は、樽が動力源または水源から離れている場合さえ樽をその場(in situ)で消毒するのに十分な長さであることが当業者に理解されるべきである。さらに、超音波処理機15はまた、樽30が積まれているかまたは地上高くの回転機上にある場合でさえ使用者が処理機15を容易に操作できるように、ブーム(boom)上に配置されうる。
【0058】
25℃ないし95℃の温度範囲のおよび特に45℃ないし60℃の温度範囲の湯の存在下での超音波の使用は、ワイン樽30を消毒するための費用対効果の高い方法である。本装置および方法は、ワイン樽30を完全に解体または樽30の一端を除去する必要さえ回避する。25℃ないし95℃の温度範囲のおよび特に45℃ないし60℃の温度範囲の湯の存在下でワイン樽30の内表面を消毒する超音波の能力はまた、細菌および酵母からの交差汚染の機会が減少することを意味する。さらに、本発明を、樽回転機といった現在利用可能な設備と併せて用いることの容易さは、この方法がワイン生産業者に使用される可能性を高める。これらの長所に加えて、消毒時間の減少および消毒処理に必要な水がより少ないことが挙げられる。
【0059】
キャビテーションエネルギーの強度および/または樽のサイズに応じて、ソノトロード10を内部で動かせることは有利でありうる。その動きは、または樽30内で弧を規定および端から端へ旋回またはワイン樽30内で円を描いて回転のどちらかで、一次元または二次元でありうる。両方の動きは、消毒すべき表面範囲とソノトロード10との間の距離を変化させる効果を有する。旋回または回転動作は、電気モーター、水圧を操作するモーター、またはヒンジに搭載された超音波装置15を用いた手動法によってといったよく知られた機械的手段によって達成できる。
【0060】
上記で考察される通り、超音波エネルギーの樽への適用は、オーク材の樽の表面32上に固まった酒石酸塩結晶を、ワインが長期間保存されている樽の底の他の残留物(「おり」と呼ばれる)と共に、除去および懸濁しうる。酒石酸塩の除去の結果として、ワインへオーク香がより良好に移動する。このことは、オーク樽の内表面が、ワインの品質に有害でありうる望ましくない有機物および無機物を完全に欠くことを確実にする。懸濁された物質は、消毒処理中に容易に除去される。超音波を用いた消毒は、加熱コストおよび化学薬品の使用を低減する。強力超音波を用いて木材化合物の損失は、高圧の湯または冷水の噴射と比較して少ない。結果として樽の寿命を延長でき、したがって樽を交換するコストが低減される。
【0061】
25℃ないし95℃の温度範囲のおよび特に30℃ないし60℃の温度範囲の湯の存在下での強力な超音波は、腐敗性酵母Brettanomycesを殺す。この生物および他の腐敗性酵母、および細菌は、オーク材ワイン樽の孔およびひび内、特に樽の内部の内表面周辺に見出される。木製樽の実施形態では、これは木材の内表面層のワイン残留物が見出される位置である。25℃ないし95℃の温度範囲のおよび特に45℃ないし60℃の温度範囲の湯の存在下で高出力超音波エネルギーが、液体および固体物質を加熱および消毒する能力は、本オーク樽の内部樽板表面および深さ最大8mm以上に見出される生物の不活性化を可能にする。超音波エネルギー消毒は、二酸化硫黄およびオゾンといった化学薬品の使用を回避または最小化する。
【0062】
容器の一部しか液体で満たされていない場合、容器の内表面の他の部分を濡らすために液体を動かす必要があり、および液体は、一実施形態に記載の通り、袋20を拡張することによって移動されうる。およびさらに、ソノトロード10は、洗浄を実施するという目的の結果を達成するためには、袋20に一部が挿入されているだけでよい。当業者は、一部の場合にはソノトロード10の長さ全体が洗浄されるべき容器内に入らなくてもよいこと、および必要に応じて小さい適合を行いうることを理解する。
【0063】
洗浄後、袋20に入れられている超音波ソノトロード10は樽30から取り出される。これは、機械によってまたは手動での両方で行われうる。容器が一旦消毒されれば、容器内に残渣があれば除去され、および液体は容器から排出される。
【0064】
本装置および方法は、汚染によって生じるワインの腐敗を回避し、酒石酸塩堆積物の減少によってワインへのオーク香の移動を改善し、既存の洗浄方法によるオーク香の損失を回避し、汚染によって損なわれる樽の交換を回避することによって樽コストを低下させ、樽の使用可能寿命を延長することによって樽コストを低下させ、洗浄操作のための労働コストを低下させ、水コストを低下させ、化学薬品の使用を回避し、および水加熱コストを低下させる。
【0065】
本発明の範囲を逸脱することなく、他の長所および改善が本発明に使用されうる。本発明が具体的な実施例および部分システムに関して説明されているが、本発明はこれらの具体的な実施例および部分システムに限定されず他の実施形態にも拡張されることが当業者に明らかとなる。本発明は付随する請求項に規定されるこれらの他の実施形態すべてを含む。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、本発明の一態様に記載の、樽内の超音波装置の側面断面図である。
【図2】図2は、図1に示す超音波装置の区画Aの拡大側面断面図である。
【図3A】図3Aは、第二の液体の導入前の、本発明の側面断面図である。
【図3B】図3Bは、第二の液体の添加後の、図3Aに示す本発明の側面断面図である。
【図4】図4は、本発明の透視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用の際にソノトロードが容器の中に置かれ;容器には第一の液体が入っており、ソノトロードが少なくとも一部が第二の液体に囲まれており、ソノトロードが第二の液体と直接に接触しおよび第一の液体とは直接に接触しないように膜が第一の液体と第二の液体の間に位置するように、
少なくとも実質的に膜に囲まれたソノトロード;
ソノトロードに接続された超音波発振器;および
超音波発振器に接続されおよびソノトロードを伴う超音波振動子;
を含む超音波装置。
【請求項2】
膜が膨張性であることを特徴とする請求項1の超音波装置。
【請求項3】
膜がソノトロードを少なくとも部分的に囲む袋を形成することを特徴とする請求項2の超音波装置。
【請求項4】
容器に挿入される際に膜に保護を与えるように、容器の開口部と膜が接触する位置に膜が強化された領域を有する点でさらに特徴づけられる、請求項2の超音波装置。
【請求項5】
液体を膜の中へおよび外へ移すための導管がある点でさらに特徴づけられる、請求項4の超音波装置。
【請求項6】
導管がソノトロードの内部に位置する点でさらに特徴づけられる、請求項5の超音波装置。
【請求項7】
ソノトロードが中空のおよび中実のソノトロードから成る群から選択されることを特徴とする請求項6の超音波装置。
【請求項8】
ソノトロードの側面が平行、凹面、または凸面の形状とされる点でソノトロードがさらに特徴づけられることを特徴とする請求項7の超音波装置。
【請求項9】
ソノトロードが複数の方向の向きを有する終端を含み、その複数の方向が、長軸に対して垂直またはそうでない平面、長軸に対して垂直またはそうでない凹面または凸面、および対称または非対称の縮小または一定断面から成る群から選択されることを特徴とする請求項8の超音波装置。
【請求項10】
超音波振動子が10kHzないし2000kHzの範囲内の周波数の超音波エネルギーを生じることを特徴とする請求項9の超音波装置。
【請求項11】
超音波振動子が10kHzないし40kHzの範囲内の周波数の超音波エネルギーを生じることを特徴とする請求項10の超音波装置。
【請求項12】
容器内の超音波活性の量を示すように適応された超音波活性センサーをさらに含む請求項11の超音波装置。
【請求項13】
25℃ないし95℃の温度範囲のおよび特に30℃ないし60℃の温度範囲の第一の液体を、容器の内表面の一部と接触させて配置すること;
少なくとも実質的に膜に囲まれた超音波ソノトロードを配置し、前記膜を5℃ないし50℃の温度範囲のおよび特に5℃ないし25℃の温度範囲の第二の液体の一定量で膨張させ、容器のボイドボリュームを満たすこと;
ソノトロードと接続した超音波発振器を有すること;および
超音波発振器と接続した超音波振動子;
を含み、結果として、使用の際にソノトロードが容器の内部に配置され、その容器には第一の液体が入っており、ソノトロードは従って第二の液体と直接に接触し、かつ第一の液体とは直接に接触せず;および
超音波ソノトロードを操作して、第一の液体および第二の液体の両方においてキャビテーションを生じる、
超音波消毒のための方法。
【請求項14】
超音波ソノトロードを操作することが、超音波ソノトロードを操作して超音波キャビテーションを加熱液体の中で誘導し、および容器の内表面を消毒することを含むことを特徴とする請求項13の方法。
【請求項15】
容器を回転して加熱液体を内表面の次の部分と接触させることをさらに含む請求項14の方法。
【請求項16】
破片を容器から除去することをさらに含む請求項15の方法。
【請求項17】
少なくとも実質的に膜に囲まれたソノトロードを、外部から容器の開口部より上に配置すること;
前記膜の下部を開口部を通すこと、および25℃ないし95℃の温度範囲のおよび特に45℃ないし60℃の温度範囲の第一の液体の入った容器内へ入れること;
前記膜が前記容器に入った第一の液体と接触するように、前記膜を5℃ないし50℃の温度範囲のおよび特に5℃ないし25℃の温度範囲の第二の液体で満たすこと;および
超音波ソノトロードを操作してキャビテーションを第一のおよび第二の液体中で誘導すること
:をさらに含む請求項13の方法。
【請求項18】
少なくとも実質的に膜に囲まれた超音波ソノトロードを開口部を通じて容器内へ導入し、容器には25℃ないし95℃の温度範囲のおよび特に30℃ないし60℃の温度範囲の第一の液体が入っており、およびソノトロードは5℃ないし50℃の温度範囲の第二の液体に少なくとも一部が囲まれている;
ソノトロードを活性化して、容器の回転中にキャビテーションを液体中に誘導し、内表面の表層および前記層上、層内および層下の腐敗性微生物を超音波エネルギーおよび加熱液体に曝露すること;および
超音波エネルギーへの残留物の曝露の結果として生じた破片を除去すること
を含む、内表面の表層に残留物を有する容器の内部を消毒する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2008−529767(P2008−529767A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554386(P2007−554386)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000150
【国際公開番号】WO2006/084308
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507268123)カヴィタス プロプライエタリー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】