説明

超音波洗浄装置

【課題】 汚れの落ちにくい箇所の汚れを良く落とし、且つ十分な抗菌力を与えることのできる超音波洗浄装置を提供する。
【解決手段】 超音波洗浄装置1は、筐体11の中に超音波振動ホーン21を有する。超音波振動ホーン21のヘッド部22は筐体11の開口部14から露出し、ここに被洗浄物が押し付けられる。ヘッド部22には給水部26より水を供給する。この水の中に、イオン溶出ユニット30が金属イオンを溶出させる。イオン溶出ユニット30は、銀、銅、亜鉛などの金属からなる電極34、35に電圧を印加して、抗菌作用を有する金属イオンを溶出させるものである。超音波洗浄装置1はベース12により任意位置に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は布帛類を部分洗いすることのできる超音波洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カッターシャツの襟や袖、靴下の底などは汚れがひどくなりやすく、これらの汚れは通常の洗濯ではなかなか落ちない。そこで、汚れのひどい部分を超音波を用いて集中的に洗う超音波洗浄装置が開発されている。特許文献1、2にはハンディタイプの超音波洗浄装置が開示されている。特許文献3には取付手段により任意箇所に取り付けることのできる超音波洗浄装置が開示されている。
【0003】
また近年、清潔志向の高まりと共に抗菌・防カビ加工した繊維製品が相次いで商品化されている。繊維製品に抗菌・防カビ効果を付与するにあたっては、キトサンやヒノキチオール、あるいは銀、銅、亜鉛などを用いるが、その効果は洗濯を重ねる度に薄れる。そこで、洗濯の都度金属イオンにより洗濯物を抗菌処理するという考えが生まれた。例えば特許文献4には、銀イオン、銅イオンなど殺菌力を有する金属イオンを発生するイオン発生機器を装備した電気洗濯機が記載されている。特許文献5には洗浄水に銀イオンを添加する銀イオン添加ユニットを具備した洗濯機が記載されている。
【特許文献1】特開2000−310094号公報(第2頁−第5頁、図1−図4)
【特許文献2】特開2001−310165号公報(第3頁−第5頁、図1−図3)
【特許文献3】特開2004−121712号公報(第6頁−第7頁、図1−図5)
【特許文献4】実開平5−74487号公報(全文、図1)
【特許文献5】特開2001−276484号公報(第3頁−第4頁、図1−図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
洗濯物の中で、布地が厚かったり、布地が幾重にも重なっていたりする箇所の汚れはなかなか落ちない。通常の洗濯機で金属イオンを含んだ水に洗濯物を漬けたとしても、上記のような箇所には金属イオンが浸透しにくい。また汚れと金属イオンが反応したり、汚れが栄養源となり、少々の金属イオンでは歯が立たないほど細菌が増殖していたりして、折角金属イオンを供給しても使用者が期待するほどの抗菌力が得られないことがある。本発明はこのような点に鑑みなされたもので、汚れの落ちにくい箇所の汚れを良く落とし、且つ十分な抗菌力を与えることのできる超音波洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記目的を達成するために本発明は、超音波洗浄装置が、筐体と、この筐体から露出する超音波振動ホーンと、被洗浄物に対し水を供給する給水部と、電極間に電圧を印加して、前記給水部より供給される水の中に金属イオンを溶出させるイオン溶出ユニットとを具備することを特徴としている。
【0006】
この構成によると、超音波振動ホーンから被洗浄物に超音波振動を伝えてしつこい部分汚れをしっかり落とし、汚れという抗菌処理阻害要因を排除した上で金属イオンによる抗菌力を付与できるから、所期の抗菌効果を確実に得ることができる。また厚い布地あるいは布地が幾重にも重なったような被洗浄物であっても、金属イオンを含んだ水を超音波のエネルギーで奥まで浸透させることができる。
【0007】
(2)また本発明は、上記構成の超音波洗浄装置において、前記給水部は前記超音波振動ホーンに水を注ぎ、超音波振動ホーンを介して被洗浄物に水を供給することを特徴としている。
【0008】
この構成によると、金属イオンを含む水を超音波振動ホーンより被洗浄物に供給しつつ超音波洗浄を行うことになり、部分洗いの箇所に確実に金属イオンが浸透する。従って部分洗いと同時に抗菌効果を得ることができる。また超音波振動ホーンの冷却も達成される。
【0009】
(3)また本発明は、上記構成の超音波洗浄装置において、前記給水部は、前記超音波振動ホーンに水を注ぐ第1の給水管と、直接外部に放水する第2の給水管とを備え、これら第1及び第2の給水管を選択使用することを特徴としている。
【0010】
この構成によると、金属イオンを含む水に被洗浄物を漬け置きしたい場合など、金属イオンを含む水を超音波振動ホーンを伝わらせることなく第2の給水管より放水することができる。このため、超音波振動ホーンに水が当たり噴霧状にされることもなく、スムーズに水を流出させることができる。
【0011】
(4)また本発明は、上記構成の超音波洗浄装置において、前記イオン溶出ユニットのイオン溶出量が可変であることを特徴としている。
【0012】
超音波洗浄を行うため被洗浄物に給水するときは流量小でよいのに対し、金属イオンを含む水に被洗浄物を漬け置きするため素早く水を貯めるときは流量大にする必要があり、使用目的によって求められる流量が異なる。流量の多少にかかわらずイオン溶出量を一定としていたのでは、単位量の水中のイオン濃度を一定にできない。あるいは、被洗浄物によりイオン濃度を異ならせたいときや、超音波振動ホーンを介して流し出す水とそれ以外の場所から流し出す水とでイオン濃度を異ならせたいときもある。この構成によると、流し出す水の目的に応じて適切なイオン溶出量に調整することができる。
【0013】
(5)また本発明は、上記構成の超音波洗浄装置において、前記超音波振動ホーンに対して設けられた超音波振動子駆動回路と、前記イオン溶出ユニットの駆動回路とが、連動して動作することを特徴としている。
【0014】
この構成によると、部分洗いを行う際、超音波洗浄と金属イオンによる抗菌処理の両方を1回の操作で始めることができる。また抗菌処理をし忘れることがない。
【0015】
(6)また本発明は、上記構成の超音波洗浄装置において、前記イオン溶出ユニットの駆動回路は、前記超音波振動子駆動回路が所定時間動作した後に動作を開始することを特徴としている。
【0016】
超音波洗浄開始直後は、これから除去されるべき汚れが被洗浄物に多量に残っており、ここに金属イオンを供給してもそれが被洗浄物に確実に付着して抗菌作用を発揮することを期待しにくい。この構成によると、超音波洗浄が開始されてからある程度時間が経過し、汚れが除去されて金属イオンが被洗浄物に付着する条件が整った状態で金属イオンの溶出が開始されるので、金属イオンが無駄になる率が低い。そして電極金属の長寿命化を図ることができる。
【0017】
(7)また本発明は、上記構成の超音波洗浄装置において、前記超音波振動ホーンに対して設けられた超音波振動子駆動回路と、前記イオン溶出ユニットの駆動回路とが、互いに独立して動作可能であることを特徴としている。
【0018】
この構成によると、被洗浄物に目立った汚れが見られないときは超音波洗浄を行わず、金属イオンによる抗菌処理のみ行うことができる。逆に、抗菌処理を行いたくないときは超音波洗浄のみ行うことができる。また、被洗浄物の汚れがひどく長時間の超音波洗浄を必要とし、超音波洗浄と時間をずらして抗菌処理を行いたいときなど、任意の時間にイオン溶出ユニットのみ動作させることができる。いずれにせよ、無駄な電力を使わずに済み、イオン溶出ユニットの電極金属を無駄に消耗することもないので、経済的である。
【0019】
(8)また本発明は、上記構成の超音波洗浄装置において、前記イオン溶出ユニットの電極への印加電圧が所定値を超えたときに警報を発する警報装置を備えることを特徴としている。
【0020】
超音波振動ホーンの温度が過度に上昇すると、超音波振動ホーン、超音波振動子が異常発振し、不安定な状態になる。そのため、超音波振動ホーンには水を供給して温度上昇を抑える必要がある。一方、イオン溶出ユニットの電極間が水で導通されていないと、印加電圧が上昇する。この構成によると、イオン溶出ユニットの中に水が存在しない状態、すなわち超音波振動ホーンに水が供給されない状態になると印加電圧の上昇を検知して警報装置が警報を発するので、超音波振動子が異常発振するような運転を未然に防ぐことができる。
【0021】
(9)また本発明は、上記構成の超音波洗浄装置において、前記イオン溶出ユニットの累計駆動時間を動作制御パラメータとすることを特徴としている。
【0022】
この構成によると、イオン溶出ユニットの累計駆動時間をもって電極金属の減耗状況を把握し、それに基づき動作制御を行うことができる。このため、電極金属が減耗して所期の量の金属イオンを溶出することができなくなっているにもかかわらずイオン溶出ユニットを運転してしまうといった事態を防ぐことができる。
【0023】
(10)また本発明は、上記構成の超音波洗浄装置において、電源としてバッテリーを備え、水源として給水タンクを備えることを特徴としている。
【0024】
この構成によると、超音波洗浄装置を電源コードや給水ホースに束縛されることなくどこにでも持ち運んで使用することができ、使い勝手が良い。
【0025】
(11)また本発明は、上記構成の超音波洗浄装置において、前記筐体を任意箇所に取り付ける取付手段を備えることを特徴としている。
【0026】
この構成によると、超音波洗浄装置を手で持って洗浄作業を行うことを考えなくて良いので、超音波振動装置の重量軽減は大きな問題にならない。そのため、小型軽量だが小出力の超音波振動装置でなく、大型大出力の超音波振動装置を備えさせることができる。従ってエネルギーレベルの高い超音波を広い範囲に伝えることができ、短時間で効果的な洗浄を行うことが可能となる。使用者が超音波洗浄装置の重量を支えなくて済むので使用者の疲労の程度も小さい。
【0027】
また使用者は両手が使えるので被洗浄物をしわやよじれが生じないように適度に張った状態で保持することができる。これにより超音波振動ホーンと被洗浄物との接触状態が最適になるよう被洗浄物の押し当て状態を加減し、超音波洗浄装置の洗浄能力を十分に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、超音波振動ホーンから被洗浄物に超音波振動を伝えて部分汚れを落とした上で金属イオンによる抗菌処理を行うことにより、被洗浄物に所期の抗菌効果を確実に付与することができる。被洗浄物の形態が厚い布地、あるいは布地が幾重にも重なって厚くなったものであっても、金属イオンを含んだ水を超音波のエネルギーで被洗浄物の奥まで浸透させ、余すところなく抗菌処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の第1実施形態を図1−図4に基づき説明する。図1は超音波洗浄装置の本体部の垂直断面図、図2は超音波振動ホーンの正面図、図3はイオン溶出ユニットの水平断面図、図4はイオン溶出ユニットの電極の斜視図である。
【0030】
超音波洗浄装置1の本体部10は合成樹脂製の筐体11を有する。筐体11は水平方向に延びるアームの形状を有し、その一方の端が根元部となる。この部分を合成樹脂製のベース12に連結する。ベース12は本体部10を任意箇所に取り付けるための取付手段を構成する。ベース12からは垂直な支軸13が立ち上がり、この支軸13が本体部10を水平面内での旋回及び上下動できるように支える。洗浄中に本体部10が勝手に首を振らないよう、本体部10と支軸13の間、あるいは本体部10とベース12の間に適宜のロック手段を設けておく。
【0031】
筐体11の内部には超音波振動子20及びこれに結合した超音波振動ホーン21が配置されている。超音波振動ホーン21は略T字形で、これを横に寝かせたものであり、先端のヘッド部22が筐体11の下面に設けた開口部14から露出する。ヘッド部22の両側面からは突起23が対称的に突出する。突起23は振動伝達の分岐点である無振動域にあたる箇所に設けられている。この突起23と、超音波振動ホーン21のフランジ部24とを利用して超音波振動子20及び超音波振動ホーン21の支持が行われる。
【0032】
筐体11の内部には駆動回路部25が設けられる。駆動回路部25は、その基板上に超音波振動子20の駆動回路と後述するイオン溶出ユニットの駆動回路を形成しているとともに、超音波洗浄装置1全体の制御も司るものである。駆動回路部25から筐体11の外に図示しない電源コードが導出され、この電源コードが商用電源に接続される。
【0033】
また筐体11の内部には給水部26が設けられる。給水部26は、筐体11に外から入り込む給水ホース27に接続される給水弁28と、給水弁28から延び出して超音波振動ホーン21のヘッド部22に水を注ぐ給水管29により構成される。給水弁28は手動式でも電磁式でもよいが、超音波振動子20や後述するイオン溶出ユニットと共に駆動回路部25で統合制御することを考えた場合、電磁式である方が都合がよい。
【0034】
給水弁26と給水管29の間にイオン溶出ユニット30が配置される。イオン溶出ユニット30は合成樹脂製のケース31を有する。ケース31は細長く形成され、長手方向の一端に水の流入口32、他端に水の流出口33を備えている。
【0035】
ケース31の内部には、流入口32から流出口33へと向かう水流に沿う形で、2枚の電極34、35が向かい合わせに配置されている。図4に見られるように電極33、34は矩形であり、長手方向の縁には端子34a、35aが一体成形されている。
【0036】
電極34、35の材料は銀、銅、銀と銅の合金、亜鉛などの合金である。銀から溶出する銀イオン、銅から溶出する銅イオン、亜鉛から溶出する亜鉛イオンは優れた殺菌効果や防カビ効果を発揮する。銀と銅の合金からは銀イオンと銅イオンを同時に溶出させることができる。
【0037】
次に、超音波洗浄装置1の使用法について説明する。まず、ベース12により本体部10を適当な箇所、例えば洗濯機、流し台、洗面台などに設置し、給水ホース27を水栓に接続する。また駆動回路部25を商用電源に接続する。図示しない操作スイッチを操作して駆動回路部25に通電すると、超音波洗浄装置1の自動動作が開始される。超音波洗浄装置1は、ベース12が流し台、洗面台などにあらかじめ設置されたビルトインタイプとしてもよい。
【0038】
まず、超音波振動子駆動回路が超音波振動子20の発振を開始する。発振開始当初は制御が不安定なので、発振が安定するまでの時間(例えば発振開始から1秒間)、他の構成要素の駆動は行わない。
【0039】
超音波振動子20の発振が安定した時点で、給水弁28が開き、給水管29を通じて所定流量の水が超音波振動ホーン21のヘッド部22に注ぎかけられる。この水は超音波振動ホーン21の冷却の役割も果たす。ヘッド部22を濡らした水は開口部14から滴り落ちる。イオン溶出ユニット30はこの時はまだ動作しない。
【0040】
使用者は被洗浄物を両手で持ち、しわやよじれが生じないように適度に張った状態で、部分洗いしたい箇所をヘッド部22に下から押し当てる。ヘッド部22から滴る水が被洗浄物を濡らす。この状態で被洗浄物をゆっくり動かすと、超音波のエネルギーが被洗浄物の濡れた箇所にキャビテーションを発生させ、汚れ成分を剥離させる。洗浄スポットが最適の湿潤状態になるよう、給水部26からの給水量を適量(例えば200mL/分)に設定する。
【0041】
所定時間が経過し、被洗浄物の洗浄が進んだと見込まれる時点で、イオン溶出ユニット30の駆動回路が電極34、35への電圧印加を開始する。電極34、35を構成する金属が銀である場合、陽極側の電極では
Ag → Ag++e-
の反応が生じ、イオン溶出ユニット30を流れる水の中に銀イオンAg+が溶出する。このため陽極側の電極は次第に減耗する。他方、陰極側の電極では水中の不純物がスケールとして固着したり、表面に銀の塩化物及び硫化物が発生するなどの現象が起きる。そこで、適宜の時間間隔で陽極と陰極を交替させ、減耗の均等化と不純物の固着防止を図る。
【0042】
このようにイオン溶出ユニット30が動作を始めると、金属イオンを含んだ水が被洗浄物の超音波洗浄済みの箇所に注がれることになる。汚れという抗菌処理阻害要因を排除した上で金属イオンを付着させるものであるから、所期の抗菌効果を確実に得ることができる。また厚い布地あるいは布地が幾重にも重なったような被洗浄物であっても、超音波のエネルギーで金属イオンを含んだ水を布地の芯の方まで浸透させ、布地の芯から金属イオンによる抗菌処理を行うことができる。
【0043】
被洗浄物に金属イオンが十分に付着したタイミングを見計らって、駆動回路部25への通電を断つ。通電OFFのタイミングを示すサインランプを設けておくと便利である。タイマー機能により自動的に通電OFFとなるようにしておいてもよい。
【0044】
本実施形態では、超音波振動ホーン21に対して設けられた超音波振動子駆動回路と、イオン溶出ユニット30の駆動回路とが連動して動作する。従って、部分洗いを行う際、超音波洗浄と金属イオンによる抗菌処理の両方を1回の操作で始めることができる。また抗菌処理をし忘れることがない。
【0045】
また、超音波振動子駆動回路と連動するにあたり、イオン溶出ユニット30の駆動回路は、超音波振動子駆動回路が所定時間動作した後に動作を開始する。このため、超音波洗浄が開始されてからある程度時間が経過し、汚れが除去されて金属イオンが被洗浄物に付着する条件が整った状態で金属イオンの溶出が開始されるので、金属イオンが無駄になる率が低い。そして電極金属の長寿命化を図ることができる。
【0046】
本実施形態では駆動回路部25の基板上に超音波振動子駆動回路とイオン溶出ユニット30の駆動回路を形成したが、超音波振動子駆動回路とイオン溶出ユニット30の駆動回路にそれぞれ独立の基板を与えてもよい。また超音波振動子駆動回路とイオン溶出ユニット30の駆動回路とが連動動作するのでなく、互いに独立して動作するものとしてもよい。
【0047】
超音波振動子駆動回路とイオン溶出ユニット30の駆動回路とが互いに独立して動作可能であると、被洗浄物に目立った汚れが見られないときなど、超音波洗浄を行わずに金属イオンによる抗菌処理のみ行うことができる。逆に、抗菌処理を行いたくないときは超音波洗浄のみ行うことができる。また、被洗浄物の汚れがひどく長時間の超音波洗浄を必要とし、超音波洗浄と時間をずらして抗菌処理を行いたいときなど、任意の時間にイオン溶出ユニット30のみ動作させるといったことができる。このように必要な要素のみ動作させることにより、無駄な電力を使用しなくて済む。またイオン溶出ユニット30の電極34、35を無駄に消耗しなくて済む。
【0048】
なお操作スイッチとしては、連動方式の場合のように単一の操作スイッチで済ますのでなく、超音波振動子駆動回路に対しては「洗浄」スイッチを設け、イオン溶出ユニット30の駆動回路に対しては「抗菌」スイッチを設け、使用者の便宜を図るのがよい。
【0049】
超音波振動ホーン21の温度が過度に上昇すると、超音波振動ホーン21、超音波振動子20が異常発振し、不安定な状態になる。そのためもあって、被洗浄物を濡らす水は超音波振動ホーン21のヘッド部22に注いで滴らせるものとし、超音波振動ホーン21の冷却を図っている。一方で、イオン溶出ユニット30の電極34、35間が水で導通されていないと、電極34、35への印加電圧が上昇する。そこで、駆動回路部25には電極34、35への印加電圧を検知する機能を持たせ、印加電圧が所定値を超えた場合、ブザーやランプにより構成される警報装置(図示せず)に警報を発させるようにしている。
【0050】
このように、イオン溶出ユニット30の中に水が存在しない状態、すなわち超音波振動ホーン21に水が供給されない状態になると、駆動回路部25が電極34、35への印加電圧の上昇を検知して警報装置が警報を発するので、超音波振動ホーン21、超音波振動子20が異常発振するような運転を未然に防ぐことができる。
【0051】
駆動回路部25はイオン溶出ユニット30の累計駆動時間を動作制御パラメータとして用いる。すなわちイオン溶出ユニット30の累計駆動時間をもって電極34、35の減耗消耗状況を把握し、電極金属が減耗して所期の量の金属イオンを溶出することができなくなったと判断したときにはイオン溶出ユニット30の運転を停止する。そしてランプや音声などの適宜手段で交換サインを出し、電極34、35の交換、あるいはイオン溶出ユニット30そのものの交換を促す。
【0052】
超音波洗浄装置1をベース12で任意箇所に取り付けておくことにより、被洗浄物にしわやよじれが生じないよう、被洗浄物を両手で張り伸ばして洗浄することができる。ベース12には、特開2004−121712号公報に開示された各種の取付構造を適用することができる。
【0053】
図5に本発明の第2実施形態を示す。図5は超音波洗浄装置の本体部の垂直断面図である。第1実施形態と同一又は機能共通の構成要素には第1実施形態と同じ符号を付し、説明は省略する。第3実施形態以下の実施形態についても同様とする。
【0054】
第2実施形態では、筐体11の開口部14に非接触型のセンサ40を配置した。センサ40としては、例えば赤外線反射式のものを使用することができる。このセンサ40を駆動回路部25の操作スイッチとして用いる。使用者が被洗浄物を超音波振動ホーン21のヘッド部22に近づけると、センサ40がこれを検知し、駆動回路部25が動作を開始する。このため、使用者は超音波洗浄装置1に触れることなく洗浄や抗菌処理を行うことができ、使い勝手が良い。また、筐体11に触れないので手指に付着した汚れが筐体11に移ることもなく、超音波洗浄装置1を美しく清潔に保つことができる。
【0055】
図6に本発明の第3実施形態を示す。図6は超音波洗浄装置の本体部の垂直断面図である。
【0056】
第3実施形態は、給水部26が第1の給水管29aと第2の給水管29bを備えることを特徴とする。第1の給水管29aは第1、第2実施形態の給水管29と同じく超音波振動ホーン21のヘッド部22に水を注ぎかけるものであるが、第2の給水管29bは筐体11の外に突き出し、筐体11の外部に直接放水するようになっている。イオン溶出ユニット30の流出口33に電磁式の切換弁41が接続され、この切換弁41から第1の給水管29aと第2の給水管29bが突き出す。
【0057】
超音波洗浄を行うときは、切換弁41により第1の給水管29aを選択し、第1の給水管29aから給水を行う。一方で、特に超音波洗浄を行うことなく、金属イオンを含む水に被洗浄物を漬け置いて抗菌処理のみ行いたいという場合がある。このような場合には切換弁41により第2の給水管29bを選択し、第2の給水管29bから放水される水を容器(超音波洗浄装置1を洗面台に取り付けている場合には、洗面台のボウルを容器として使用することができる)に受けるようにする。超音波洗浄の場合の給水と異なり、キャビテーションが発生する適量の給水量ということにあまり気を使わなくて良いので、第2の給水管29bは第1の給水管29aよりも太くし、流量の増大を図ることができる。
【0058】
この第3実施形態の変形態様として、次のような構成も可能である。すなわち切換弁41を給水弁28に接続し、この切換弁41に第1の給水管29aとイオン溶出ユニット30を接続する。そしてイオン溶出ユニット30の流出口33に第2の給水管29bを接続する。この構成によると、金属イオンを含まない水で超音波洗浄を行った後、第2の給水管29bを通じて取り出した、金属イオンを含む水に被洗浄物を漬けて抗菌処理を行うことになる。
【0059】
このように複数の経路から給水を行うときは、イオン溶出ユニット30のイオン溶出量を可変とし、経路毎の流量に合わせてイオン溶出量を調整する。これは、超音波洗浄を行うため被洗浄物に給水するときは流量小でよいのに対し、金属イオンを含む水に被洗浄物を漬け置きするため素早く水を貯めるときは流量大にする必要があり、使用目的によって求められる流量が異なるためである。流量の多少にかかわらずイオン溶出量を一定としていたのでは、単位量の水中のイオン濃度を一定にできない。そのため、流量が多いときにはイオン溶出量を増やし、水中のイオン濃度の一定化を図る。
【0060】
一方で、被洗浄物によりイオン濃度を異ならせたいときや、超音波振動ホーン21を介して流し出す水とそれ以外の場所から流し出す水とでイオン濃度を異ならせたいときもある。そのようなときには、イオン溶出ユニット30のイオン溶出量を流し出す水の目的に応じて適切な値に調整する。
【0061】
図7に本発明の第4実施形態を示す。図7は超音波洗浄装置の本体部の垂直断面図である。
【0062】
第4実施形態では、超音波洗浄装置1を手持ち式の設計にした。すなわち筐体11は片手で握れる太さとし、その先端に開口部14を形成した。またT字形でなく直行形の超音波振動ホーン21aを採用し、超音波振動子20の振動がそのまま超音波振動ホーン21aの振動になるようにした。電源としては筐体11の外側に取り付けられるバッテリー50を用意し、給水部26の水源としては同じく筐体11の外側に取り付けられる給水タンク51を用意する。
【0063】
この超音波洗浄装置1は、電源コードや給水ホースに束縛されることなくどこにでも持ち運んで使用することができ、使い勝手が良い。ちなみに、直線形の超音波振動ホーン21aの場合、超音波発振の制御が容易であり、駆動回路の構成を簡単にしてコストダウンを図ることができる。
【0064】
以上、本発明の各実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は布帛の部分洗いを行う超音波洗浄装置に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超音波洗浄装置の垂直断面図
【図2】超音波振動ホーンの正面図
【図3】イオン溶出ユニットの水平断面図
【図4】イオン溶出ユニットの電極の斜視図
【図5】第2実施形態に係る超音波洗浄装置の垂直断面図
【図6】第3実施形態に係る超音波洗浄装置の垂直断面図
【図7】第4実施形態に係る超音波洗浄装置の垂直断面図
【符号の説明】
【0067】
1 超音波洗浄装置
10 本体部
11 筐体
12 ベース(取付手段)
20 超音波振動子
21 超音波振動ホーン
25 駆動回路部
26 給水部
29 給水管
29a 第1の給水管
29b 第2の給水管
30 イオン溶出ユニット
34、35 電極
50 バッテリー
51 給水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、この本体部から露出する超音波振動ホーンと、被洗浄物に水を供給する給水部と、電極間に電圧を印加して、前記給水部より供給される水の中に金属イオンを溶出させるイオン溶出ユニットとを具備することを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項2】
前記給水部は前記超音波振動ホーンに水を注ぎ、超音波振動ホーンを介して被洗浄物に水を供給することを特徴とする請求項1に記載の超音波洗浄装置。
【請求項3】
前記給水部は、前記超音波振動ホーンに水を注ぐ第1の給水管と、直接外部に放水する第2の給水管とを備え、これら第1及び第2の給水管を選択使用することを特徴とする請求項1に記載の超音波洗浄装置。
【請求項4】
前記イオン溶出ユニットのイオン溶出量が可変であることを特徴とする請求項3に記載の超音波洗浄装置。
【請求項5】
前記超音波振動ホーンに対して設けられた超音波振動子駆動回路と、前記イオン溶出ユニットの駆動回路とが、連動して動作することを特徴とする請求項1に記載の超音波洗浄装置。
【請求項6】
前記イオン溶出ユニットの駆動回路は、前記超音波振動子駆動回路が所定時間動作した後に動作を開始することを特徴とする請求項5に記載の超音波洗浄装置。
【請求項7】
前記超音波振動ホーンに対して設けられた超音波振動子駆動回路と、前記イオン溶出ユニットの駆動回路とが、互いに独立して動作可能であることを特徴とする請求項1に記載の超音波洗浄装置。
【請求項8】
前記イオン溶出ユニットの電極への印加電圧が所定値を超えたときに警報を発する警報装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波洗浄装置。
【請求項9】
前記イオン溶出ユニットの累計駆動時間を動作制御パラメータとすることを特徴とする請求項1に記載の超音波洗浄装置。
【請求項10】
電源としてバッテリーを備え、水源として給水タンクを備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波洗浄装置。
【請求項11】
前記筐体を任意箇所に取り付ける取付手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−75336(P2006−75336A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262349(P2004−262349)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】