説明

超音波測定装置,それに用いる超音波センサおよび超音波測定方法

【課題】厚板材の深部の探傷に適しており、センサ開口の大型化が可能であるとともに、SN比の向上する超音波測定装置,それに用いる超音波センサおよび超音波測定方法を提供することにある。
【解決手段】2次元アレイセンサ401Bの内周部401Mは、隣接する超音波振動素子の重心位置の間の距離が、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離L0以内である。外周部401Nは、隣接する超音波振動素子の重心位置の間の距離が、ノイズが発生しない距離以内のものとノイズが発生しない距離以上のものとを含む。使用素子選択回路403Cは、内周部401Mの全ての超音波振動素子と、外周部401Nの超音波振動素子の内、超音波の送受信方向をアレイセンサの面に投射した送受信方向における隣接する前記超音波振動素子の重心位置の間の距離が、ノイズが発生しない距離以内である超音波振動素子を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波測定装置,それに用いる超音波センサおよび超音波測定方法に係り、特に、超音波振動素子を2次元配列したアレイセンサを用いるに好適な超音波測定装置,それに用いる超音波センサおよび超音波測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超音波振動素子を2次元配列したマトリクスアレイセンサを用い、3次元に超音波を送・受信することを可能とした3次元超音波技術の研究開発が盛んに行われている。この技術は、機械的な回転走査をすることなく、短時間でSN比良く全方位測定を行うことができることを可能としている(例えば、特許文献1参照)。
そこで、本発明者らは、マトリクスアレイセンサを用いた3次元超音波技術を、厚板材の検査へ適用することを検討している。
3次元超音波技術を用いた検査方法で、厚板材の深部に位置するき裂の有無を判定するには、超音波の送受信を行うセンサ開口を大型化する必要がある。そのため、従来の矩形マトリクスセンサやセグメントアレイセンサのように、超音波振動素子の面積がおおよそ一定な超音波振動素子で構成されるマトリクスアレイセンサでセンサ開口の大型化を行うと、センサ開口の2乗に比例して超音波振動素子数が増加する。
しかし、フェーズドアレイ装置で制御可能な総超音波振動素子数には技術的な限界があり、また、制御可能な超音波振動素子数を増やせたとしても装置が大型で高価なものとなるため、センサ開口の大型化は困難であった。
それに対して、角度方向に均等分割したアレイセンサを構成する超音波振動素子のうちで、電子走査方向に沿った配列の超音波振動素子群のみ超音波の送受信に使用する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−351718号公報
【特許文献2】特開平5−244691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2記載のように、単純に等角度で分割したアレイセンサまたは、最内周の超音波振動素子のみを円盤にしたアレイセンサでは、分割する角度によっては内周側の超音波振動素子サイズが小さくなり、センサ配線時に加工が困難となるばかりか、センサの内周側で十分な感度が得られず、サイドローブなどのノイズが増加するという問題があった。
さらに、特許文献2記載のセンサ形状と測定手法では、内周部において使用している超音波振動素子範囲が狭いために音の指向性が悪くなり、探傷画像のSN比の向上ができないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、厚板材の深部の探傷に適しており、センサ開口の大型化が可能であるとともに、SN比の向上する超音波測定装置,それに用いる超音波センサおよび超音波測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、複数の超音波振動素子が2次元的に配置された2次元アレイセンサと、該2次元アレイセンサから超音波を送信し、また、測定対象内部からの反射波を受信する送受信部と、該送受信部による超音波の送受信を制御する制御部とを有する超音波測定装置であって、前記2次元アレイセンサは、前記超音波振動素子の配列パターンの異なる内周部と外周部とを備え、前記内周部は、隣接する前記超音波振動素子の重心位置の間の距離が、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離以内であり、前記外周部は、隣接する前記超音波振動素子の重心位置の間の距離が、ノイズが発生しない距離以内のものとノイズが発生しない距離以上のものとを含み、前記制御部は、前記2次元アレイセンサを構成する複数の超音波振動素子の内、使用する素子を選択する使用素子選択回路を備え、該使用素子選択回路は、前記内周部の全ての超音波振動素子と、前記外周部の超音波振動素子の内、超音波の送受信方向を前記アレイセンサの面に投射した送受信方向における隣接する前記超音波振動素子の重心位置の間の距離が、ノイズが発生しない距離以内である超音波振動素子を選択するようにしたものである。
かかる構成により、厚板材の深部の探傷に適しており、センサ開口の大型化が可能であるとともに、SN比が向上する。
【0007】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記使用素子選択回路は、射影した超音波の送受信方向を長辺とし、前記内周部の直径を短辺とする長方形の範囲に重心位置が存在する素子を選択するようにしたものである。
【0008】
(3)また、上記目的を達成するために、本発明は、超音波を送信し、また、測定対象内部からの反射波を用いる超音波測定装置に用いられ、複数の超音波振動素子が2次元的に配置された超音波センサであって、前記超音波振動素子の配列パターンの異なる内周部と外周部とを備え、前記内周部は、隣接する前記超音波振動素子の重心位置の間の距離が、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離以内であり、前記外周部は、隣接する前記超音波振動素子の重心位置の間の距離が、ノイズが発生しない距離以内のものとノイズが発生しない距離以上のものとを含むものである。
かかる構成により、厚板材の深部の探傷に適しており、センサ開口の大型化が可能であるとともに、SN比が向上する。
【0009】
(4)さらに、上記目的を達成するために、本発明は、複数の超音波振動素子が2次元的に配置された2次元アレイセンサから超音波を送信し、また、測定対象内部からの反射波を用いる超音波測定方法であって、前記2次元アレイセンサとして、前記超音波振動素子の配列パターンの異なる内周部と外周部とを備えるものを用い、前記内周部は、隣接する前記超音波振動素子の重心位置の間の距離が、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離以内であり、前記外周部は、隣接する前記超音波振動素子の重心位置の間の距離が、ノイズが発生しない距離以内のものとノイズが発生しない距離以上のものとを含み、前記内周部の全ての超音波振動素子と、前記外周部の超音波振動素子の内、超音波の送受信方向を前記アレイセンサの面に投射した送受信方向における隣接する前記超音波振動素子の重心位置の間の距離が、ノイズが発生しない距離以内である超音波振動素子を選択して測定するようにしたものである。
かかる構成により、厚板材の深部の探傷に適しており、センサ開口の大型化が可能であるとともに、SN比が向上する。
ことを特徴とする超音波測定方法。
【0010】
(5)上記(4)において、好ましくは、前記2次元アレイセンサによる超音波の送受信時に結ばれる焦点を複数個所設定し、前記複数の焦点に対して超音波を送受信する場合に使用する素子範囲をそれぞれ選択し、各焦点に対して測定対象内部からの反射信号を収録し、得られた各焦点からの反射信号を処理し、測定対象内部を2次元画像化または3次元画像化するようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、厚板材の深部の探傷に適しており、センサ開口の大型化が可能であるとともに、SN比の向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による超音波探傷装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による超音波探傷装置に用いるアレイセンサの構成を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態による超音波探傷装置に用いるアレイセンサの重心位置を示す模式図である。
【図4】本発明の一実施形態による超音波探傷装置による探傷方法の説明図である。
【図5】本発明の一実施形態による超音波探傷装置に用いるアレイセンサの説明図である。
【図6】本発明の一実施形態による超音波探傷装置おけるセンサ素子の選択方法の説明図である。
【図7】本発明の一実施形態による超音波探傷装置による探傷方法の内容を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態による超音波探傷装置における使用素子のパターンの説明図である。
【図9】本発明の一実施形態による超音波探傷装置における使用素子のパターンの説明図である。
【図10】本発明の一実施形態による超音波探傷装置に用いるアレイセンサの他の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図10を用いて、本発明の一実施形態による超音波探傷装置の構成及び動作について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による超音波探傷装置の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による超音波探傷装置の構成を示すブロック図である。
【0014】
本実施形態の超音波測定装置は、例えば、被検体400の内部または表面における反射源400AをSN比よく測定を行うものである。被検体400は、例えば、厚さが200mm〜300mmの厚板材である。
【0015】
本実施形態の超音波測定装置は、探傷部401と、送・受信部402と、制御部403と、表示部404から構成されている。探傷部401は、測定対象400に超音波を送・受信するアレイセンサ401Bを備えている。アレイセンサ401Bは、複数の超音波振動素子401Aを備えている。
【0016】
送・受信部402は、アレイセンサ401Bの複数の超音波振動素子401Aに遅延時間を与えて超音波を送信するパルサ402Aと、受信した超音波をアナログ‐デジタル変換して受信信号とするレシーバ402Zとを備えている。
【0017】
制御部403は、記憶装置403Bを有する制御・処理用コンピュータ403Aと、使用素子選択回路403Cと、遅延時間制御回路403Dと、加算回路403Zとを備えている。
使用素子選択回路403Cは、超音波の送・受信素子に用いる超音波振動素子401Aを切り替え制御する。制御回路403Dは、送・受信時の遅延時間を制御する。加算回路403Zは、レシーバ402Zから得られた複数の受信信号を加算する。制御・処理用コンピュータ403Aは、使用素子選択回路403C,遅延時間制御回路403D,加算回路403Zを制御するとともに受信した信号を記憶装置403Bに収録し、また受信した信号の処理を行う。
【0018】
表示部404は、各種設定を表示し入力可能とする設定入力画面404Aと、受信信号及び測定画像を表示する表示画面404Zとを備えている。
【0019】
次に、各部の動作について説明する。
【0020】
制御・処理用コンピュータ403Aは、超音波を送・受信して測定対象からの反射信号を収録する際に、使用素子選択回路403Cへ超音波の送・受信に用いる超音波振動素子の選択のための送・受信素子切替信号を送信するとともに、遅延制御回路403Dを通じて、超音波を集束して送・受信するための超音波振動素子への遅延時間を与える。
【0021】
送信信号と遅延時間を受取った送信遅延回路402Bは、与えられた遅延時間で送信信号を送信素子選択部402Cに送る。送信素子選択部402Cは、送信遅延回路102Bから遅延時間を付与して送信された送信信号を受け、使用素子選択回路403Cからの送信素子の選択信号に基づき、送信素子を選択して、送信信号を送信増幅器402Eへ送信する。
またこのようにして送信された超音波に対して受信側は、使用素子選択回路403Cに与える情報と同じく、加算回路403Zにて受信すべき信号を選択すると良い。
【0022】
次に、図2及び図3を用いて、本実施形態による超音波探傷装置に用いるアレイセンサ401Bの構成について説明する。
図2は、本発明の一実施形態による超音波探傷装置に用いるアレイセンサの構成を示す平面図である。図3は、本発明の一実施形態による超音波探傷装置に用いるアレイセンサの重心位置を示す模式図である。
【0023】
図2に示すように、アレイセンサ401Bは、円形であり、複数の超音波振動素子が配列されている。アレイセンサ401Bは、異なる配列パターンを有する内周部401Mと、外周部401Nとからなる。
【0024】
内周部401Mの超音波振動素子は、六角形状としており、平面を効率的に充填可能な形状としている。内周部401Mの各超音波振動素子のサイズは、同じである。そして、内周部401Mの各超音波振動素子のサイズは、音の指向性が良好で、探傷画像のSN比が向上できるサイズとしている。
【0025】
外周部401Nの超音波振動素子は、同心円をセンサの中心から放射状に分割した扇形形状としている。外周部401Nの各超音波振動素子のサイズは、内側に比べて外側が大きくなっている。
【0026】
ここで、検査に必要と考えられるセンサ開口径をφとすると、中心部の1/2φの領域を内周部401Mとし、それ以外の部分を外周部401Nとしている。なお、内周部401の範囲は、1/4φ〜3/4φとすることが好ましく、その理由については、図6を用いて後述する。
【0027】
このように、内周部401Mの各超音波振動素子のサイズは、音の指向性が良好で、探傷画像のSN比が向上できる。一方、外周部401Nの各超音波振動素子のサイズは、内周部401Mの各超音波振動素子のサイズよりも大きく、しかも、外側に行くほどサイズが大きくなっているため、開口径φを大きくしても、アレイセンサ401Bを構成する各素子の総数が増えることがないものである。
【0028】
次に、図3を用いて、図2に示したアレイセンサ401Bを構成する各素子の重心位置について説明する。図中の黒丸が各素子の重心位置を示している。
【0029】
内周部401Mにおいては、各素子の形状は六角形として、互いの辺が接触するように配置されているため、隣接する超音波振動素子の重心位置間の距離L1は全て等しくなっている。
【0030】
一方、外周部401Nにおいて、各素子は、同心円をセンサの中心から放射状に分割した扇形形状としているため、半径方向に隣接する超音波振動素子の重心位置間の距離L2に比べて、周方向に隣接する超音波振動素子の重心位置間の距離L3は、大きくなっている。さらに、半径方向に隣接する超音波振動素子の重心位置間の距離L2は、内周部401Mの隣接する超音波振動素子の重心位置間の距離L1と等しくしている。
【0031】
次に、隣接する素子間の距離と、ノイズ(グレーティングローブ)の発生の関係について説明する。
【0032】
一般にアレイ状のセンサの場合、隣接する素子の超音波送受信方向に対する重心位置の距離をLとし、送受信する超音波の送受信角θとの間に、
L0≦(λ/(1+|sinθ|)
の関係が満たされる場合には、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しないものである。
【0033】
ここで、λは、送受信する超音波の波長である。例えば、超音波を±90度方向に送受信する場合には、L0≦λ/2とすれば、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しないものである。超音波を±30度方向に送受信する場合には、L0≦λ/1.5とすれば、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しないものである。
【0034】
そこで、アレイセンサ401Bの内周部401Mに用いる各素子において、隣接する超音波振動素子の重心位置間の距離L1は、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離L0以下としている。
【0035】
また、アレイセンサ401Bの外周部401Nに用いる各素子において、半径方向に隣接する超音波振動素子の重心位置間の距離L2は、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離L0以下としている。一方、アレイセンサ401Bの外周部401Nに用いる各素子において、周方向に隣接する超音波振動素子の重心位置間の距離L3は、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離L0よりも大きくなっている。
【0036】
SN比を向上させるには、全ての素子の重心位置間の距離を、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離L0以下にすれば良いわけであるが、そのためには、外周部401Nの各素子の周方向の長さを短くする必要があり、結果として、1つの素子サイズが小さくなり、開口径φを大きくしても、アレイセンサ401Bを構成する各素子の総数が増えることになる。
【0037】
それに対して、外周部401Nの各超音波振動素子のサイズは、内周部401Mの各超音波振動素子のサイズよりも大きく、しかも、外側に行くほどサイズが大きくなっているため、開口径φを大きくしても、アレイセンサ401Bを構成する各素子の総数が増えることがないものである。ただし、外周部401Nの各素子においては、周方向に隣接する超音波振動素子の重心位置間の距離L3は、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離L0よりも大きくなっているため、そのまま使用すると、ノイズ(グレーティングローブ)が発生することになる。
【0038】
そこで、本実施形態では、図2に示すアレイセンサ401Bを用い、しかも、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しないようにするため、送受信方向に応じて、図2に示すアレイセンサ401Bの中で、外周部401Nの素子については、使用する素子を選択するようにしている。なお、内周部401Mの素子は、隣接する超音波振動素子の重心位置間の距離L1は、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離L0以下としているため、あらゆる送受信方向に対して、全ての素子を使用する。なお、ここで、「送受信方向」とは、実際に超音波が送受信される方向ではなく、図4を用いて後述するように、実際の超音波の送受信方向を、アレイセンサの平面に射影した送受信方向のことである。
【0039】
例えば、図3において、矢印TR1方向に送受信する場合について説明する。この場合、内周部401Mの中で、例えば、隣接する素子401M−1の重心位置と素子401M−2の重心位置との間の、矢印TR1方向に対する距離L1Aは、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離L0=L1以下であるため、素子401M−1と素子401M−2を用いた場合には、ノイズ(グレーティングローブ)は発生しないものである。
【0040】
また、外周部401Nの中で、例えば、隣接する素子401N−1の重心位置と素子401N−2の重心位置との間の、矢印TR1方向に対する距離L2Aは、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離L0=L2以下であるため、素子401N−1と素子401N−2を用いた場合には、ノイズ(グレーティングローブ)は発生しないものである。
【0041】
しかしながら、外周部401Nの中で、例えば、隣接する素子401N−3の重心位置と素子401N−4の重心位置との間の、矢印TR1方向に対する距離L3Aは、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離L0=L2よりも大きいため、素子401N−3と素子401N−4を用いた場合には、ノイズ(グレーティングローブ)は発生する。
【0042】
そこで、矢印TR1方向に送受信する場合は、素子401M−1,401M−2と、素子401N−1,401N−2は用いるが、素子401N−3,401N−4を用いないことにより、ノイズ(グレーティングローブ)は発生しないようにすることができる。
【0043】
図3において、例えば、矢印TR2方向や、TR3方向に送受信する場合は、矢印L1で重心位置間の距離が示される隣接する素子を用いても、それらの間の矢印TR2方向,TR3方向の重心位置間の距離は、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離L0=L1以下であるため、これらの素子を用いても、ノイズ(グレーティングローブ)は発生しないものである。
【0044】
内周部401Mの素子は、隣接する超音波振動素子の重心位置間の距離L1は、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離L0以下としているため、あらゆる送受信方向に対して、全ての素子を使用しても、ノイズ(グレーティングローブ)は発生しないものである。
【0045】
それに対して、外周部の素子に関しては、例えば、矢印TR4方向に送受信する場合は、矢印L2で重心位置間の距離が示される隣接する素子を用いても、それらの間の矢印TR4方向の重心位置間の距離は、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離L0=L2以下であるため、これらの素子を用いても、ノイズ(グレーティングローブ)は発生しないものである。
【0046】
但し、外周部に関して、例えば、矢印TR5方向に送受信する場合は、矢印L3で重心位置間の距離が示される隣接する素子を用いると、それらの間の矢印TR5方向の重心位置間の距離は、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離L0=L2よりも大きいため、これらの素子を用いると、ノイズ(グレーティングローブ)は発生するため、矢印TR5方向に送受信する場合は、これらの素子は用いないようにする。
【0047】
すなわち、図2に示した本実施形態のアレイセンサ401Bの特徴は、内周部401Mは、隣接する素子の重心位置が既定の間隔以内となるような配列パターンにより構成されている。ここで、規定の間隔とは、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離L0である。一方、外周部401Nは、隣接する素子の重心位置が既定の間隔以内となる場合と、隣接する素子の重心位置が既定の間隔以上となる配列パターンにより構成されている。
【0048】
なお、内周部401Mの素子配列パターンとしては、図2に示した六角形以外にも、三角形や、四角形や、図2に示した六角形を対角線で分割した台形をも用いることができる。
【0049】
また、外周部401Nの素子配列パターンとしては、図2に示した、センサ中心から放射線状に分割した、同心円状のもの以外にも、多角形の用いることができる。
【0050】
以上、内周部と外周部これらを組み合わせた配列パターンにすることによって、センサ開口が広くなり、深部の探傷を可能とすることができる。そして、超音波の送受信方向に応じて、外周部を構成する素子の内、送受信に用いる素子を選択することで、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しないで、SN比をこうじょうできる。
【0051】
次に、図4及び図5を用いて、本実施形態による超音波探傷装置による探傷方法について説明する。
図4は、本発明の一実施形態による超音波探傷装置による探傷方法の説明図である。図5は、本発明の一実施形態による超音波探傷装置に用いるアレイセンサの説明図である。
【0052】
図2及び図3に示したような構造をもつ2Dアレイセンサにおいて、超音波の送受信を行う場合、内周部401Mの超音波振動素子は、隣接する素子の重心位置間隔L1を既定の間隔以内となるように配置することで、ノイズ源となる部分がないように設計することができて、内周側の超音波振動素子全てを用いて超音波の送受信をすることが可能である。
【0053】
しかし、外周部401Nの超音波振動素子の重心の間隔は、矢印L3で示すように既定の距離を超える部分が存在し、送受信方向によって非常に強いノイズ源となる場合がある。
【0054】
図4において、超音波アレイセンサ401Bは、深さ方向Depに対して直交する平面に設置される。その上で、超音波アレイセンサ401Bは、超音波送受信方向TRに、超音波を送信し、また、反射波を受信する。このとき、超音波送受信方向TRを、超音波アレイセンサ401Bの平面に射影した送受信方向をTR’とする。
【0055】
図5は、超音波アレイセンサ401Bの平面を示しており、超音波の送受信方向に沿った軸に重心位置を射影した場合、外周部401Nの超音波振動素子の内、射影した超音波の送受信方向TR’に直交する軸に対して外周部に配列された素子401N−5,401N−6,401N−7,401N−8の間の間隔L3B,L3C,L3Dは、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離L0よりも広がっており、グレーティングローブと呼ばれる望まない方向に強く伝搬する超音波を発生する。
【0056】
それに対して、射影した超音波の送受信方向TR’に配列される素子401N−9,401N−10の間の間隔L2Bは、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離L0よりも狭く、グレーティングローブが発生しない。
【0057】
そこで、図5のハッチング部分2に示すように、射影した重心位置の間隔が既定の距離を超えないような素子を選択することで、内周部の全ての超音波振動素子と、超音波の送受信方向に配列する外周部の超音波振動素子の一部を用いることでSN比の良い探傷を行うことができる。
【0058】
次に、図6を用いて、本実施形態による超音波探傷装置おけるセンサ素子の選択方法について説明する。
図6は、本発明の一実施形態による超音波探傷装置おけるセンサ素子の選択方法の説明図である。
【0059】
図5にて説明したように、内周部の全ての超音波振動素子と、超音波の送受信方向に配列する外周部の超音波振動素子の一部を用いるために、図6に示すように、使用する超音波振動素子を選択するようにしている。
【0060】
すなわち、射影した超音波の送受信方向TR’に対して、この送受信方向に沿って配列している点線で囲まれた範囲に重心位置が存在する素子を用いて探傷する。この時、点線で囲まれた長方形の範囲としては、センサ内周部含むよう通常設定する。すなわち、長方形の短辺Lsは、アレイセンサ401Bの内周部401Mの直径と等しくする。長方形の長辺Llは、射影された送受信方向TR’においてアレイセンサ401Bの外周部401Nを含む長さとする。
【0061】
図2にて説明したように、センサ開口径φに対して、内周部401Mの涼気を1/2φとした場合、短辺Lsと長辺Llの長さの比率が、1:2の長方形の範囲となる。また、内周部401の範囲は、1/4φ〜3/4φとした場合には、短辺Lsと長辺Llの長さの比率が、1:4〜3:4の長方形の範囲となる。
【0062】
次に、図7を用いて、本実施形態による超音波探傷装置による探傷方法について説明する。
図7は、本発明の一実施形態による超音波探傷装置による探傷方法の内容を示すフローチャートである。
【0063】
設定を開始すると、ステップS101において、検査者は、アレイセンサに関する初期設定として、図2に示したアレイセンサ401Bを構成する超音波振動素子の素子情報(素子大きさや配列、素子位置の情報)や音速等の必要な情報を、図1に示した設定入力画面404Aを用いて入力する。
【0064】
次に、ステップS102において、検査者は、設定入力画面404Aを用いて、N個の超音波振動素子に対して、遅延時間や画像表示の際の基準となるセンサ中心位置を設定する。一般的には、超音波振動素子の中心をセンサ中心Cとして設定する。
次に、ステップS103において、制御処理用コンピュータ403Aは、アレイセンサ401Bの各超音波振動素子に対する焦点F及び遅延時間を計算し、設定する。
【0065】
一方、ステップS104において、使用素子選択回路103Cは、ステップS101の初期設定で与えた情報を用いて、図5や図6に示したようなノイズとなる素子を省いた受送信に使用する超音波振動素子群を設定する。
【0066】
そして、ステップS105において、使用素子選択回路103Cは、ステップS103で定めた焦点F(i)へ超音波を送受信するに際し、この送受信方向に適した使用素子のパターンを選択して、超音波を送受信する。
【0067】
ここで、図8及び図9を用いて、本実施形態による超音波探傷装置における使用素子のパターンについて説明する。
図8及び図9は、本発明の一実施形態による超音波探傷装置における使用素子のパターンの説明図である。
【0068】
図8は、使用素子のパターン表を例示している。使用素子のパターン表は、図1の記憶装置403Bに予め記憶されている。使用素子のパターン表には、パターンA,B,Cと、それぞれのパターン毎に使用する素子を「1」で示し、使用しない素子を「0」で示してある。
【0069】
パターンAは、例えば、図9に示すように使用する素子を選択するものであり、パターンBは、例えば、図9に示すように使用する素子を選択するものである。パターンAを使用することで、図9に示すようなセクタスキャンAが行われ、パターンBを使用することで、図9に示すようなセクタスキャンBが行われる。
【0070】
パターンA,B,Cは、超音波の送受信方向と関連付けられるので、送受信方向を決めると、送受信に必要なパターンを選択できる。
【0071】
再び、図7のステップS105において、使用素子選択回路103Cは、ステップS103で定めた焦点F(i)へ超音波を送受信するに際し、図8及び図9で説明した使用素子のパターンを選択して、パルサ402Aから超音波を送信する。
【0072】
そして、ステップS106において、レシーバ402Zは、焦点F(i)に対するデータ(反射データ)を収録する。
【0073】
次に、ステップS107において、制御・処理用コンピュータ403Aは、全方位でのデータ収録を終了したかどうかの判別を行い、終了していない(NO)場合には、ステップS105に戻り、次の焦点F(i+1)へ移行し、再び超音波の送・受信行い、反射データを収録することを全測定領域での反射データの収録が終了するまで順次繰り返す。
【0074】
ステップS107において、全終了した(YES)と判定された場合は、ステップS108において、制御・処理用コンピュータ103Aは、画素と画素値のマップを作成し、ステップS109において、画像の表示を行い、終了する。
【0075】
以上のように、図8に示す1つのパターンを選択することにより、望むセクタスキャン画像を得ることができるので、図9のパターンA,パターンBで示すパターンを電子的に切り替えていくことにより、多数セクタスキャン画像を収録することが可能で、深部においても高SNで3Dの画像を得ることができる。
【0076】
次に、図10を用いて、本実施形態による超音波探傷装置に用いるアレイセンサの他の構成について説明する。
図10は、本発明の一実施形態による超音波探傷装置に用いるアレイセンサの他の構成を示す平面図である。
【0077】
図10に示すように、アレイセンサ401B’は、円形であり、複数の超音波振動素子が配列されている。アレイセンサ401B’は、異なる配列パターンを有する内周部401M’と、外周部401N’とからなる。
【0078】
内周部401M’の超音波振動素子は、同心円に対して、例えば、最内周は分割せず、最内周のすぐ外周(2周目)は周方向に8分割し、次の外周(3周目)は周方向に16分割し、次の外周(4周目)は周方向に24分割し、次の外周(5周目)は周方向に32分割するというように、外周に行くほど周方向の分割数を増加している。この分割された配列パターンにより、内周部401’Mの各超音波振動素子のサイズは、全く同じではないが、ほぼ同じサイズとなっている。そして、内周部401Mの各超音波振動素子のサイズは、音の指向性が良好で、探傷画像のSN比が向上できるサイズとしている。
【0079】
外周部401N’の超音波振動素子は、図2と同様に、同心円をセンサの中心から放射状に分割した扇形形状としている。外周部401N’の各超音波振動素子のサイズは、内側に比べて外側が大きくなっている。
【0080】
このように、内周部401M’の各超音波振動素子のサイズは、音の指向性が良好で、探傷画像のSN比が向上できる。一方、外周部401N’の各超音波振動素子のサイズは、内周部401M’の各超音波振動素子のサイズよりも大きく、しかも、外側に行くほどサイズが大きくなっているため、開口径φを大きくしても、アレイセンサ401B’を構成する各素子の総数が増えることがないものである。
【0081】
以上説明したように、厚板材の深部に対し超音波検査を行う場合、センサの大開口化が必要であるが、素子数に制限があるために、現状の2Dアレイセンサでは大開口化が困難であった。そこで、センサ内周部と外周部で素子配列パターンが異なる超音波センサを用いることで、センサの大開口化を可能としている。さらに、超音波の送受信時に外周部の素子の一部のみを用いることで、ノイズを抑制し、この大開口のセンサを用いて厚板材の深部に対する点集束効果による高SN比での探傷が可能となる。
【0082】
したがって、厚板材の深部を、少ない超音波振動素子数で、点集束効果による高SN比の3次元的に探傷可能となる。
【符号の説明】
【0083】
400…被検体
401…探傷部
401A…超音波振動素子
401B…アレイセンサ
401M…内周部
401N…外周部
402…送・受信部
402A…パルサ
402Z…レシーバ
403…制御部
403A…制御・処理用コンピュータ
403B…記憶装置
403C…使用素子選択回路
403D…遅延時間制御回路
403Z…加算回路
404…表示部
404A…設定入力画面
404Z…表示画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の超音波振動素子が2次元的に配置された2次元アレイセンサと、該2次元アレイセンサから超音波を送信し、また、測定対象内部からの反射波を受信する送受信部と、該送受信部による超音波の送受信を制御する制御部とを有する超音波測定装置であって、
前記2次元アレイセンサは、前記超音波振動素子の配列パターンの異なる内周部と外周部とを備え、
前記内周部は、隣接する前記超音波振動素子の重心位置の間の距離が、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離以内であり、
前記外周部は、隣接する前記超音波振動素子の重心位置の間の距離が、ノイズが発生しない距離以内のものとノイズが発生しない距離以上のものとを含み、
前記制御部は、前記2次元アレイセンサを構成する複数の超音波振動素子の内、使用する素子を選択する使用素子選択回路を備え、
該使用素子選択回路は、前記内周部の全ての超音波振動素子と、前記外周部の超音波振動素子の内、超音波の送受信方向を前記アレイセンサの面に投射した送受信方向における隣接する前記超音波振動素子の重心位置の間の距離が、ノイズが発生しない距離以内である超音波振動素子を選択することを特徴とする超音波測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波測定装置において、
前記使用素子選択回路は、射影した超音波の送受信方向を長辺とし、前記内周部の直径を短辺とする長方形の範囲に重心位置が存在する素子を選択することを特徴とする超音波測定装置。
【請求項3】
超音波を送信し、また、測定対象内部からの反射波を用いる超音波測定装置に用いられ、複数の超音波振動素子が2次元的に配置された超音波センサであって、
前記超音波振動素子の配列パターンの異なる内周部と外周部とを備え、
前記内周部は、隣接する前記超音波振動素子の重心位置の間の距離が、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離以内であり、
前記外周部は、隣接する前記超音波振動素子の重心位置の間の距離が、ノイズが発生しない距離以内のものとノイズが発生しない距離以上のものとを含むことを特徴とする超音波センサ。
【請求項4】
複数の超音波振動素子が2次元的に配置された2次元アレイセンサから超音波を送信し、また、測定対象内部からの反射波を用いる超音波測定方法であって、
前記2次元アレイセンサとして、前記超音波振動素子の配列パターンの異なる内周部と外周部とを備えるものを用い、
前記内周部は、隣接する前記超音波振動素子の重心位置の間の距離が、ノイズ(グレーティングローブ)が発生しない距離以内であり、
前記外周部は、隣接する前記超音波振動素子の重心位置の間の距離が、ノイズが発生しない距離以内のものとノイズが発生しない距離以上のものとを含み、
前記内周部の全ての超音波振動素子と、前記外周部の超音波振動素子の内、超音波の送受信方向を前記アレイセンサの面に投射した送受信方向における隣接する前記超音波振動素子の重心位置の間の距離が、ノイズが発生しない距離以内である超音波振動素子を選択して測定することを特徴とする超音波測定方法。
【請求項5】
請求項4記載の超音波測定方法において、
前記2次元アレイセンサによる超音波の送受信時に結ばれる焦点を複数個所設定し、
前記複数の焦点に対して超音波を送受信する場合に使用する素子範囲をそれぞれ選択し、
各焦点に対して測定対象内部からの反射信号を収録し、
得られた各焦点からの反射信号を処理し、測定対象内部を2次元画像化または3次元画像化することを特徴とする超音波測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−69780(P2011−69780A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222818(P2009−222818)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】