説明

超音波溶接装置、超音波溶接用矯正部材及び超音波溶接方法

【課題】簡易かつより確実に、複数の導体を加圧方向に沿って並べた状態で、導体同士を超音波溶接すること。
【解決手段】超音波溶接用のチップ20とアンビル25との間の空間周りに、対向するようにして第1ガイド部材30と第2ガイド部材35とが配設されると共に、板状矯正部材40A,40Bが配設される。板状矯正部材40A,40Bは、上方に向けて第1ガイド部材30の第1ガイド受面30aから徐々に離間するように傾斜する傾斜ガイド辺部41A,41Bを有している。各導体3を傾斜ガイド辺部41A,41Bに沿って斜めに配設した状態で、第2ガイド部材35を第1ガイド部材30に近接移動させると、各導体3が縦方向に並べられ、この状態で、導体3同士の超音波接合が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線の導体同士を超音波溶接するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線の導体同士の超音波溶接は、例えば、図7に示すようにして行われている。
【0003】
すなわち、まず、複数の導体110を、一対のガイド治具120により、超音波溶接用のチップ132とアンビル134との間に寄せるように配設する。この後、該チップ132とアンビル134とを近接移動させて、各導体110に加圧力と超音波振動とを付与する。これにより、導体110の表面同士が擦り合され、その表面がクリーニングされると共に、導体同士が接合されるようになる。
【0004】
なお、本願発明に関連する先行技術としては、例えば特許文献1に記載のものがある。
【0005】
【特許文献1】特開平08−31469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、チップ132とアンビル134間で、導体110の並び方向は自由であり、何ら規制されていない。
【0007】
このため、図8(a)に示すように、各導体110が加圧方向に沿って並んだ形態(以下、縦並び形態という)で接合されることもあれば、図8(b)に示すように、各導体110が加圧方向に対して略直交する方向に沿って並んだ形態(以下、横並び形態という)で接合される場合もあり得る。
【0008】
そして、図8(a)に示す形態では、導体110同士を強く押付け合った状態で、超音波振動を付与することができるため、比較的強い接合強度を得ることができる。
【0009】
ところが、図8(b)に示す形態では、各導体110同士を強く押付け合う力を作用させることはできないため、接合強度は比較的弱くなってしまうことになる。
【0010】
そこで、本発明は、簡易かつより確実に、複数の導体を、加圧方向に沿って並べた状態超音波溶接できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の第1の態様は、電線の導体同士を超音波溶接するための超音波溶接装置であって、相対的に接近離隔移動自在に設けられ、前記各導体を加圧しつつそれらを超音波溶接するための一対の超音波溶接部材と、前記一対の超音波溶接部材の周りに設けられ、前記一対の超音波溶接部材による加圧方向に沿った第1ガイド受面を有する第1ガイド部材と、前記第1ガイド受面に対して略平行姿勢で対向しかつ前記第1ガイド受面に対して相対的に接近離隔移動自在とされた第2ガイド受面を有する第2ガイド部材と、前記第1ガイド受面から徐々に離間するように傾斜する傾斜ガイド部を有する矯正部材と、を備え、前記各導体を、前記第1ガイド部材と前記第2ガイド部材間で前記傾斜ガイド部に沿って配設した状態で、前記第2ガイド受面を前記第1ガイド受面に向けて近接させることで、前記各導体が前記一対の超音波溶接部材間で前記加圧方向に沿って並べられるものである。
【0012】
この場合に、前記矯正部材は、前記第1ガイド受面から徐々に離間するように傾斜する傾斜ガイド辺部を有し、前記一対の超音波溶接部材間の空間を挟込むように配設された一対の板状矯正部材により構成されていてもよい。
【0013】
また、前記第1ガイド受面は、前記一対の超音波溶接部材の溶接面と交わっており、前記傾斜ガイド部又は前記傾斜ガイド辺部は、前記第1ガイド受面と前記一対の超音波溶接部材の溶接面が交わる部分を始点として、前記第1ガイド受面から徐々に離間するように傾斜する形状に形成されていてもよい。
【0014】
また、この発明の第2の態様は、一対の超音波溶接部材間で、複数の電線の導体同士を加圧しつつそれらを超音波溶接する超音波溶接装置に用いられる超音波溶接用矯正部材であって、前記一対の超音波溶接部材による加圧方向に対して斜めに傾斜する傾斜ガイド部を備えたものである。
【0015】
さらに、この発明の第3の態様は、電線の導体同士を超音波溶接する超音波溶接方法であって、(a)一対の超音波溶接部材間に、それらによる加圧方向に対して傾斜する方向に、複数の電線の導体を配設する工程と、(b)前記工程(a)の後、前記各導体を一対の超音波溶接部材間に寄せて前記加圧方向に沿って並べる工程と、(c)前記工程(b)の後、前記一対の超音波溶接部材間で前記各導体を加圧しつつそれらを超音波溶接する工程と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明の第1態様によると、第1ガイド受面から徐々に離間するように傾斜する傾斜ガイド部を有する矯正部材を備えており、前記各導体を、前記第1ガイド部材と前記第2ガイド部材間で前記傾斜ガイド部に沿って配設した状態で、前記第2ガイド受面を前記第1ガイド受面に向けて近接させることで、前記各導体が前記一対の超音波溶接部材間で前記加圧方向に沿って並べられるため、簡易かつより確実に、複数の導体を加圧方向に沿って並べた状態で超音波溶接できる。また、傾斜ガイド部は、前記第1ガイド受面から徐々に離間するように傾斜しているため、多様な径を持つ導体を、第1ガイド部材と第2ガイド部材間で傾斜ガイド部に沿って配設して、超音波溶接できる。
【0017】
また、矯正部材は、前記第1ガイド受面から徐々に離間するように傾斜する傾斜ガイド辺部を有し、前記一対の超音波溶接部材間の空間を挟込むように配設された一対の板状矯正部材により構成されていると、一対の超音波溶接部材の両側外方で導体或は電線を支持して、各導体を所定の斜め方向に並べた状態にすることができる。
【0018】
さらに、前記傾斜ガイド部又は前記傾斜ガイド辺部は、前記第1ガイド受面と前記一対の超音波溶接部材の溶接面が交わる部分を始点として、前記第1ガイド受面から徐々に離間するように傾斜する形状に形成されていると、比較的細い導体であっても、各導体を所定の斜め方向に並べた状態にすることができ、より多様な径の導体に対応できる。
【0019】
この発明の第2態様によると、一対の超音波溶接部材による加圧方向に対して斜めに傾斜する傾斜ガイド部を備えているため、各導体を、傾斜ガイド部に沿って配設した状態で、各導体を一対の超音波溶接部材間に寄せることで、各導体が一対の超音波溶接部材間で前記加圧方向に沿って並べられる。このため、簡易かつより確実に、複数の導体を加圧方向に沿って並べた状態で、導体同士を超音波溶接できる。
【0020】
また、傾斜ガイド部は、加圧方向に対して斜めに傾斜しているため、多様な径を持つ導体に対応できる。
【0021】
この発明の第3の態様によると、一対の超音波溶接部材間に、それらによる加圧方向に対して傾斜する方向に、複数の電線の導体を配設した後、前記各導体を一対の超音波溶接部材間に寄せて前記加圧方向に沿って並べ、さらにこの後、前記一対の超音波溶接部材間で前記各導体を加圧しつつそれらを超音波溶接するため、簡易かつより確実に、複数の導体を加圧方向に沿って並べた状態で、導体同士を超音波溶接できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の実施形態に係る超音波溶接装置について説明する。
【0023】
図1は超音波溶接装置を示す斜視図であり、図2は同超音波溶接装置の要部を示す説明図である。
【0024】
この超音波溶接装置10は、複数の電線2の導体3(図3〜図6参照)同士を超音波溶接するための装置であり、一対の超音波溶接部材としてのチップ20及びアンビル25と、各導体3をチップ20とアンビル25との間に配設するための第1ガイド部材30及び第2ガイド部材35と、各導体3を所定方向に並べて矯正するための板状矯正部材40A,40Bとを備えている。
【0025】
チップ20及びアンビル25は、相対的に接近離隔移動自在に設けられており、これらの間に各導体3を挟込んで加圧しつつ超音波振動を付与することで、それら導体3同士を超音波溶接により接合する。
【0026】
より具体的には、チップ20は、所定の溶接面20aを有する部材に形成されている。このチップ20は、その溶接面20aを上方に向けた姿勢で、装置筐体12の一端側上部に固設されている。
【0027】
また、このチップ20には、装置筐体12内に配設されたホーン14が連結されている。そして、所定の超音波振動子により発生された超音波振動(例えば、20khz)が該ホーン14を介してチップ20に伝達されるようになっている。
【0028】
アンビル25は、所定の溶接面25aを有する略直方体形状に形成されている。このアンビル25は、その溶接面25aを下方に向けた姿勢、即ち、溶接面25aを上記溶接面20aに対向させた姿勢で、装置筐体12の一端側上部に取付けられた可動支持ブラケット13を介して、チップ20の上方で上下動自在に配設されている。
【0029】
また、このアンビル25は、エアシリンダ等のアクチュエータ27及びその動力伝達機構28を含む加圧機構29によって、チップ20に対して接近離隔駆動(ここでは上下駆動)されるように構成されている。
【0030】
そして、アンビル25をチップ20から離隔させた状態(上方位置に配設した状態、図3参照)では、チップ20とアンビル25との間に、各導体3を容易に配設可能な空間が形成される。一方、アンビル25をチップ20に近接させた状態(下方位置に配設した状態、図5参照)では、チップ20とアンビル25との間に所定の加圧力下で各導体3が挟込まれるようになっている。
【0031】
なお、本実施形態では、アンビル25は、可動支持ブラケット13により、後述する第1ガイド部材30の第1ガイド受面30aに対して突出退避移動自在でかつその突出方向に付勢された状態で支持されている。そして、後述する第2ガイド部材35の移動に応じて、アンビル25の一端部が第2ガイド受面35aに当接して、退避移動するようになっている。これにより、溶接対象となる各導体3の径等に応じて、第1ガイド受面30aからのアンビル25の突出寸法を調整できるようになっている。
【0032】
第1ガイド部材30及び第2ガイド部材35は、上記チップ20とアンビル25との間に形成される空間を両側部から挟込む位置に配設されている。
【0033】
この第1ガイド部材30は、チップ20及びアンビル25による加圧方向A(ここでは、アンビル25による加圧方向A)に沿った第1ガイド受面30aを有しており、第2ガイド部材35は、前記加圧方向Aに沿った第2ガイド受面35aを有している。これら第1ガイド受面30aと第2ガイド受面35aとは、互いに略平行姿勢で、上記チップ20とアンビル25間の空間を挟んで対向するように配設されている。そして、第2ガイド部材35の移動により、第2ガイド受面35aが第1ガイド受面30aに対して接近離隔移動自在とされるように構成されている。
【0034】
より具体的には、第1ガイド部材30は、一側面が第1ガイド受面30aとされた略直方体状の部材に形成されている。そして、第1ガイド部材30は、該第1ガイド受面30aをチップ20とアンビル25間の空間に向けた姿勢で、可動支持ブラケット13を介して、チップ20の一側部上方であってアンビル25の下方で上下移動自在に支持されている。また、この第1ガイド部材30は、上記加圧機構29の駆動によって、第1ガイド受面30aをチップ20の一側面に摺接させつつ、アンビル25と共に上下移動するように構成されている。
【0035】
また、第2ガイド部材35は、一側面が第2ガイド受面35aとされた略直方体状の部材に形成されている。そして、その第2ガイド受面35aを、チップ20とアンビル25間の空間を挟んで上記第1ガイド受面30aに対向させた姿勢で、本第2ガイド部材35が、装置筐体12の一端側上部に、第1ガイド部材30に対して接近離隔移動自在に支持されている。
【0036】
この第2ガイド部材35は、エアシリンダ等のアクチュエータ37及びその動力伝達機構38を含む水平駆動機構39によって水平駆動される。すなわち、水平駆動機構39の駆動により、第2ガイド部材35は、その下面をチップ20の上面(溶接面20aを含む)に摺接させつつ、第1ガイド部材30に対して接近離隔移動するように構成されている。
【0037】
そして、第2ガイド部材35を第1ガイド部材30から離隔させた状態(離隔位置に配設した状態、図3参照)では、第1ガイド部材30と第2ガイド部材35との間に、各導体3を容易に配設可能な空間が形成される一方、第2ガイド部材35を第1ガイド部材30側に近接させた状態(近接位置に配設した状態、図4参照)では、第1ガイド受面30aと第2ガイド受面35aとの間に、導体3を上記加圧方向Aに沿って並べた状態で配設可能な程度の隙間が形成されるようになっている。なお、この隙間の幅は、導体3の径に応じて適宜調整可能に構成されている。
【0038】
なお、上記のように第2ガイド部材35が第1ガイド部材30側に近接移動する際、第2ガイド受面35aがアンビル25に当接してこれを退避方向に押込むようになっている。従って、アンビル25は、第1ガイド受面30aと第2ガイド受面35aとの間に形成される隙間分だけ、第2ガイド受面30aから突出していることになる。
【0039】
板状矯正部材40A,40Bは、上記第1ガイド受面30aから徐々に離間するように傾斜する傾斜ガイド辺部41A,41Bを有している。
【0040】
具体的には、一対の板状矯正部材40A,40Bは、チップ20とアンビル25間の空間を、上記第1及び第2ガイド部材30,35とは異なる方向から挟込む位置にて、装置筐体12に固定されている。
【0041】
板状矯正部材40Aは、例えば、略方形板状の一部を略三角形状に切り欠いた部材であり、その三角形状に切抜いた斜辺をもって上記傾斜ガイド辺部41Aが形成される。また、板状矯正部材40Bは、例えば、略三角形板状に形成された部材であり、その三角形状の斜辺をもって傾斜ガイド辺部41Bが形成される。これら傾斜ガイド辺部41A,41Bは、より具体的には、加圧方向A及び上記第2ガイド部材35の移動方向Bに直交する方向から観察すると、加圧方向Aとは逆向け(上方)に上記第1ガイド受面30aから徐々に離間する直線状の斜辺に形成されている。
【0042】
また、これら傾斜ガイド辺部41A,41Bは、上記加圧方向A及び移動方向Bに直交する方向から観察すると、第1ガイド受面30aと溶接面20aとが交わる部分を始点として、第1ガイド受面30aから徐々に離間するように傾斜する形状とされている。
【0043】
そして、各導体3を、第1ガイド部材30と第2ガイド部材35との間で傾斜ガイド辺部41A,41Bに沿って斜め方向に沿って並べて配設した状態で、第2ガイド受面35aを第1ガイド受面30aに向けて近接させると、各導体3が第1ガイド受面30aと第2ガイド受面35a間で、加圧方向Aに沿って並べられるようになる。
【0044】
なお、各板状矯正部材40A,40Bは、チップ20とアンビル25とによる超音波溶接の支障とならない程度に、それらチップ20とアンビル25から側方へ離れた位置に配設されている(図2〜図6では説明の便宜上、チップ20に近接した位置に示してある)。
【0045】
この超音波溶接装置10では、制御部45の動作指令に応じて加圧機構29,水平駆動機構39等の動作制御が行われる。この超音波溶接装置10の動作を説明すると次のようになる。
【0046】
まず、初期状態では、図2に示すように、アンビル25が上方位置に配設されると共に、第2ガイド部材35が第1ガイド部材30から離隔した位置に配設されている。この状態では、チップ20とアンビル25との間、第1ガイド部材30と第2ガイド部材35との間に、それぞれ各導体3を配設可能な空間が形成されている。またアンビル25の一端部と、第2ガイド部材35との間に、各導体3を挿通可能な隙間が形成されている。
【0047】
そして、電線2の被覆部を部分的に皮剥ぎし、所定長に亘って導体3を露出させる。このように導体3を露出させた電線2を複数本(ここでは2本)準備する。そして、図3に示すように、アンビル25の一端部と第2ガイド部材35との間の隙間を通って、各導体3を、チップ20,アンビル25,第1ガイド部材30及び第2ガイド部材35で囲まれる空間内に導入する。そして、各導体3或はその近傍の被覆部分を、傾斜ガイド辺部41A,41B上に配設して、各導体3を傾斜ガイド辺部41A,41Bの延在方向に沿って並べるように配設する。なお、このように各導体3を超音波溶接装置10にセットする作業は、例えば、作業者の人手、或は、自動搬送ロボット等により行われる。
【0048】
そして、上記のように各導体3をセットした後、例えば、作業者が図示省略のスイッチを操作して所定の起動信号を入力すると、図4に示すように、水平駆動機構39の駆動により、第2ガイド部材35が第1ガイド部材30側へ、即ち、所定の移動方向Bへ移動する。この際、各導体3は、傾斜ガイド辺部41A,41B上で、第2ガイド部材35の移動方向Bに対して略直交する上下方向にずれるように配設されている。このため、各導体3は上下方向にずれたまま、第1ガイド受面30aと第2ガイド受面35a間に寄せられて、上下方向(加圧方向A)に沿って並べられる。
【0049】
この後、図5に示すように、加圧機構29の駆動により、アンビル25及び第1ガイド部材30を所定の加圧方向A(下方向)へ移動させる。すると、各導体3は、上下方向(加圧方向A)に沿って並べられたまま、チップ20とアンビル25との間に挟込まれる。そして、この縦並びの形態のまま、各導体2に所定の加圧力下で超音波振動が付与され、両導体3が超音波溶接により接合される。
【0050】
最後に、加圧機構29の駆動により、アンビル25及び第1ガイド部材30を上方(−A方向)に移動させると共に、水平駆動機構39の駆動により、第2ガイド部材35を第1ガイド部材30から離隔する方向(−B方向)に移動させて、それらの間から導体3同士が超音波溶接された被加工物たる電線2を取出すと、超音波溶接作業が終了する。
【0051】
以上のように構成された超音波溶接装置10では、第1ガイド受面30aから徐々に離間するように傾斜する傾斜ガイド辺部41A,41Bを有する板状矯正部材40A,40Bを備えており、第1ガイド部材30と第2ガイド部材35との間で、各導体3を、傾斜ガイド辺部41A,41Bに沿って斜めに並べて配設した状態で、第2ガイド受面35aを第1ガイド受面30aに向けて近接させることで、各導体3がチップ20とアンビル25との間で、加圧方向Aに沿って並べられる。
【0052】
従って、簡易かつより確実に、複数の導体3を加圧方向Aに沿って並べた状態で、それら導体3同士を比較的強い接合強度で超音波溶接できる。
【0053】
換言すれば、特に、2本の導体3同士を接合する場合において、図8(b)に示す横並び形態での接合を防止して、図8(a)に示す縦並び形態でより確実に接合でき、導体3同士の接合部分の信頼性向上を図ることができる。また、作業者の経験度合や習熟度に依存せずに、簡易かつより確実に各導体3を縦並び形態に配設することができる。
【0054】
しかも、傾斜ガイド辺部41A,41Bは、第1ガイド受面30aから徐々に離間するように傾斜しているため、特定の径を持つ導体3に限定されず、多様な径を持つ導体3を、傾斜ガイド辺部41A,41Bに沿って配設し、さらに、加圧方向Aに沿って並べた状態で超音波溶接できるという利点もある。
【0055】
加えて、傾斜ガイド辺部41A,41Bは、第1ガイド受面30aと溶接面20aとが交わる部分を始点として、第1ガイド受面30aから徐々に離間するように傾斜する形状に形成されているため、比較的細い導体3であっても、各導体3を所定の斜め方向に並べて状態にすることができ、より多様(特に細径)な径の導体3に対応できる。
【0056】
また、チップ20とアンビル25との間の空間を挟むように配設された一対の板状矯正部材40A,40Bにて、各導体3を所定の斜め姿勢に保持するようにしているため、チップ20とアンビル25の両側外方で、導体3又は電線2を支持して、所定の斜め方向に並べた状態に支持できる。これにより、板状矯正部材40A,40Bの設置が、チップ20,アンビル25,第1ガイド部材30及び第2ガイド部材35の動作の妨げとなることを防止できる。
【0057】
なお、本実施形態では、2本の導体3を超音波溶接する場合について説明したが、3本以上の導体3を超音波溶接する場合にも、同様に適用できる。
【0058】
また、各導体3を所定の斜め方向に配設するための傾斜ガイド部としては、上記の傾斜ガイド辺部41A,41Bのように、板状部材の斜辺でもって構成する他、立体形状の斜面で構成してもよいし、また、線状或は棒状部材を斜めに配設することで構成してもよい。
【0059】
さらに、本実施形態では、第2ガイド部材35が第1ガイド部材30側に移動する構成としたが、これとは逆に第1ガイド部材30が移動する構成、或は、第1ガイド部材30及び第2ガイド部材35の双方が移動する構成であってもよい。
【0060】
また、チップ20とアンビル25の位置関係は、上記実施形態とは上下逆であってもよいし、両者のうちいずれが、又は、双方が移動する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明の実施形態に係る超音波溶接装置を示す斜視図である。
【図2】同上の超音波溶接装置の要部を示す説明図である。
【図3】同上の超音波溶接装置に導体をセットした工程を示す説明図である。
【図4】同上の超音波溶接装置において各導体を縦方向に並べた工程を示す説明図である。
【図5】同上の超音波溶接装置において各導体を超音波溶接する工程を示す説明図である。
【図6】同上の超音波溶接装置において超音波溶接後の工程を示す説明図である。
【図7】従来例に係る超音波溶接例を示す説明図である。
【図8】図8(a)及び図8(b)は、従来の問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
【0062】
2 電線
3 導体
10 超音波溶接装置
20 チップ
25 アンビル
30 第1ガイド部材
30a 第1ガイド受面
35 第2ガイド部材
35a 第2ガイド受面
40A,40B 板状矯正部材
41A,41B 傾斜ガイド辺部
A 加圧方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の導体同士を超音波溶接するための超音波溶接装置であって、
相対的に接近離隔移動自在に設けられ、前記各導体を加圧しつつそれらを超音波溶接するための一対の超音波溶接部材と、
前記一対の超音波溶接部材の周りに設けられ、前記一対の超音波溶接部材による加圧方向に沿った第1ガイド受面を有する第1ガイド部材と、
前記第1ガイド受面に対して略平行姿勢で対向しかつ前記第1ガイド受面に対して相対的に接近離隔移動自在とされた第2ガイド受面を有する第2ガイド部材と、
前記第1ガイド受面から徐々に離間するように傾斜する傾斜ガイド部を有する矯正部材と、
を備え、
前記各導体を、前記第1ガイド部材と前記第2ガイド部材間で前記傾斜ガイド部に沿って配設した状態で、前記第2ガイド受面を前記第1ガイド受面に向けて近接させることで、前記各導体が前記一対の超音波溶接部材間で前記加圧方向に沿って並べられる、超音波溶接装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波溶接装置であって、
前記矯正部材は、前記第1ガイド受面から徐々に離間するように傾斜する傾斜ガイド辺部を有し、前記一対の超音波溶接部材間の空間を挟込むように配設された一対の板状矯正部材により構成された、超音波溶接装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の超音波溶接装置であって、
前記第1ガイド受面は、前記一対の超音波溶接部材の溶接面と交わっており、前記傾斜ガイド部又は前記傾斜ガイド辺部は、前記第1ガイド受面と前記一対の超音波溶接部材の溶接面が交わる部分を始点として、前記第1ガイド受面から徐々に離間するように傾斜する形状に形成されている、超音波溶接装置。
【請求項4】
一対の超音波溶接部材間で、複数の電線の導体同士を加圧しつつそれらを超音波溶接する超音波溶接装置に用いられる超音波溶接用矯正部材であって、
前記一対の超音波溶接部材による加圧方向に対して斜めに傾斜する傾斜ガイド部を備えた、超音波溶接用矯正部材。
【請求項5】
電線の導体同士を超音波溶接する超音波溶接方法であって、
(a)一対の超音波溶接部材間に、それらによる加圧方向に対して傾斜する方向に、複数の電線の導体を配設する工程と、
(b)前記工程(a)の後、前記各導体を一対の超音波溶接部材間に寄せて前記加圧方向に沿って並べる工程と、
(c)前記工程(b)の後、前記一対の超音波溶接部材間で前記各導体を加圧しつつそれらを超音波溶接する工程と、
を備えた超音波溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−15354(P2006−15354A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193078(P2004−193078)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】