説明

超音波画像診断装置および超音波画像診断装置の制御プログラム

【課題】メカ4Dプローブを用いたメカニカルスキャンにおいて、電子スキャン方向の走査線密度と揺動方向の走査線密度とから評価される等方性が所望の値から乖離していることに起因する諸影響を低減させることが可能な超音波画像診断装置および超音波画像診断装置の制御プログラムである。
【解決手段】電子スキャン方向と異なる方向に機械的に揺動させることが可能な超音波プローブ2を備えた超音波画像診断装置1において、超音波プローブ2を用いたメカニカルスキャンにより超音波プローブの揺動方向における走査線密度および電子スキャン方向における走査線密度間の等しさの程度を示す等方性が所望の等方性となるようにスキャン条件を設定するスキャン方式計算部15と、スキャン方式計算部15により設定されたスキャン条件から超音波プローブ2の制御信号を生成するハードウェア制御方式計算部15とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波プローブに内蔵された圧電振動子から被検体内に超音波パルスを照射し、被検体内で生じた反射波を圧電振動子で受信して各種処理を行なうことにより被検体内の断層画像や血流情報等の生体情報を得る超音波画像診断装置および超音波画像診断装置の制御プログラムに係り、特にメカニカルスキャンにより3D(dimension)画像を表示させる際に3D画像の等方性を制御することが可能な超音波画像診断装置および超音波画像診断装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波画像診断装置は、超音波プローブに内蔵された圧電振動子から被検体内に超音波パルスを照射し、被検体内で生じた反射波を圧電振動子で受信して各種処理を行なうことにより被検体内の断層画像や血流情報等の生体情報を得る装置である。
【0003】
従来、この超音波画像診断装置により、メカニカルスキャンによる画像の3D表示が行われている。メカニカルスキャンによる画像の3D表示は、通常の2Dプローブを電子スキャン方向に対して垂直な方向に機械的に揺動させて画像データを収集することにより行われるものである。尚、電子スキャン方向に対して垂直な方向に揺動させることが可能な2Dプローブは、一般に、メカ4Dプローブと呼ばれる。
【0004】
一方、超音波プローブに関する従来の別の技術としては、患者情報に応じて適切なプローブを選択し、選択したプローブの映像セッティングを自動調整できるようにした超音波撮像システムが考案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−275204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
メカ4Dプローブによるメカニカルスキャンにおいては、電子スキャン方向のラスタ間の距離で定まる走査線密度とメカ4Dプローブの機械的な揺動方向の走査線密度とをより均一にすること、すなわち超音波プローブの揺動方向における走査線密度および電子スキャン方向における走査線密度間の等しさの程度を示す等方性を向上させることが非常に困難であるという問題がある。従って、メカ4Dプローブを用いたスキャンを行う場合、ピクセルの十分な等方性が確保できていないのが現状である。
【0006】
尚、等方性の指標としては、例えば電子スキャン方向の走査線密度と揺動方向の走査線密度との比を用いることができる。
【0007】
上述のようにメカ4Dプローブによるメカニカルスキャンにおいて、等方性の向上が困難である主な理由は、メカ4Dプローブの揺動が機械制御であり、メカ4Dプローブの機械制御を電子スキャンの制御よりも詳細な精度で行うことができないためである。このように、物理限界により十分に等方性が確保できない訳であるが、等方性が十分でないという事実やその程度をスキャン時にユーザが認識することが困難であるということも問題の1つである。加えて、事前に等方性の装置設定に対する依存性を把握するのも困難である。
【0008】
等方性が不十分であると、メカ4Dプローブの電子スキャン面と揺動面とで精度の異なる画像データが収集されることとなる。この結果、再構成して得られた3D画像を回転したり、プレーンカットした場合に、画質が著しく劣化した部分が出現して表示される場合がある。このような画質の劣化は計測精度に影響を及ぼすため、高精度で計測することが可能な断面と高精度で計測するこことが困難な断面が併存する結果となる。つまり、3D画像を回転またはプレーンカットした場合に、画質の悪い部分における計測値の信頼性が十分に得られないという問題がある。
【0009】
本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、メカ4Dプローブを用いたメカニカルスキャンにおいて、電子スキャン方向の走査線密度と揺動方向の走査線密度とから評価される等方性が所望の値から乖離していることに起因する諸影響を低減させることが可能な超音波画像診断装置および超音波画像診断装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る超音波画像診断装置は、上述の目的を達成するために、請求項1に記載したように、電子スキャン方向と異なる方向に機械的に揺動させることが可能な超音波プローブを備えた超音波画像診断装置において、前記超音波プローブを用いたメカニカルスキャンにより前記超音波プローブの揺動方向における走査線密度および前記電子スキャン方向における走査線密度間の等しさの程度を示す等方性が所望の等方性となるようにスキャン条件を設定するスキャン方式計算部と、前記スキャン方式計算部により設定された前記スキャン条件から前記超音波プローブの制御信号を生成するハードウェア制御方式計算部とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係る超音波画像診断装置の制御プログラムは、上述の目的を達成するために、請求項6に記載したように、コンピュータを、電子スキャン方向と異なる方向に機械的に揺動させることが可能な超音波プローブを用いたメカニカルスキャンにより、前記超音波プローブの揺動方向における走査線密度および前記電子スキャン方向における走査線密度間の等しさの程度を示す等方性が所望の等方性となるようにスキャン条件を設定するスキャン方式計算部および前記スキャン方式計算部により設定された前記スキャン条件から前記超音波プローブの制御信号を生成するハードウェア制御方式計算部として機能させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る超音波画像診断装置および超音波画像診断装置の制御プログラムにおいては、メカ4Dプローブを用いたメカニカルスキャンにおいて、電子スキャン方向の走査線密度と揺動方向の走査線密度とから評価される等方性が所望の値から乖離していることに起因する諸影響を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る超音波画像診断装置および超音波画像診断装置の制御プログラムの実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明に係る超音波画像診断装置の実施の形態を示す構成図である。
【0015】
超音波画像診断装置1は、超音波プローブ2、メカプローブ制御回路3、送受信回路4、DSC(Digital Scan Converter)回路5、画像表示回路6、イメージメモリ7、シーケンサ(Sequencer)回路8、表示装置の一例としてのCRT(Cathode-Ray Tube)9、デバイスドライバ(Device Driver)10、コンピュータ11を備えている。
【0016】
コンピュータ11には、入力装置の一例としての操作パネル12、外部記憶装置13およびシステムメモリ14が接続される。また、コンピュータ11に制御プログラム等の各種プログラムが読み込まれることにより、コンピュータ11は、スキャン制御システム15、3次元画像構築部16およびGUI(Graphical User Interface)表示処理部17の他、臨床計測機能等の図示しない各種アプリケーション機能を備えたシステムとして機能する。
【0017】
そして、これら各構成要素のうち、メカプローブ制御回路3、送受信回路4、DSC回路5、画像表示回路6、デバイスドライバ10およびコンピュータ11は、バス18に接続されデータの送受信が行えるように構成されている。
【0018】
超音波プローブ2には、複数の超音波振動子を備え、電子スキャン方向に対して異なる方向(通常は垂直な方向)に揺動させることが可能な2Dプローブであるメカ4Dプローブが用いられる。超音波プローブ2は、メカプローブ制御回路3からの制御信号により機械制御され、送受信回路4から電気信号として受けた送信パルスを各超音波振動子から超音波パルスとして図示しない被検体に送信し、被検体内において生じた超音波反射信号を受信して受信データとして送受信回路4に与える機能を有する。
【0019】
メカプローブ制御回路3は、コンピュータ11からデバイスドライバ10およびバス18を介して受信した超音波プローブ2の制御信号を超音波プローブ2に与えることにより、超音波プローブ2の機械制御を行って超音波プローブ2を電子スキャン方向に垂直な方向に揺動させる機能と、超音波プローブ2から取得した超音波プローブ2の位置情報を送受信回路4に与える機能とを有する。このため、メカプローブ制御回路3により超音波プローブ2の揺動方向の走査線密度が決定される。
【0020】
送受信回路4は、コンピュータ11からデバイスドライバ10およびバス18を介して受信した制御信号に従って、メカプローブ制御回路3から受けた超音波プローブ2の位置情報を参照しつつ、所要の遅延時間を伴う送信パルスを超音波プローブ2に与えることにより、図示しない被検体に超音波を送信させる機能と、超音波プローブ2から受けた受信データに各種処理を施すことにより画像データを生成し、生成した画像データをDSC回路5に与える機能とを有する。尚、送信パルスの遅延時間等のスキャン条件設定により、超音波プローブ2による電子スキャン方向の走査線を決定することができる。スキャン条件は、コンピュータ11からデバイスドライバ10およびバス18を介して制御信号として送受信回路4に与えられる。
【0021】
DSC回路5は、コンピュータ11からデバイスドライバ10およびバス18を介して受信した制御信号に従って、送受信回路4から受けた画像データの座標変換処理および必要な補間処理を行う機能と、各種処理後における画像データを画像表示回路6およびコンピュータ11に与える機能を有する。尚、コンピュータ11には、DSC回路5からデバイスドライバ10およびバス18を介して画像データが与えられる。
【0022】
画像表示回路6は、DSC回路5から受けた画像データおよびコンピュータ11からバス18を介して受信した画像データを表示可能な画像信号に変換してCRT9に与えることにより、表示させる機能を有する。
【0023】
シーケンサ回路8は、送受信回路4、DSC回路5および画像表示回路6の同期をとる機能を備える。そして、シーケンサ回路8の作用により超音波プローブ2により受信された受信データからリアルタイムに画像を生成してCRT9に表示させることが可能となる。
【0024】
また、一般的には、送受信回路4において生成された画像データを必要に応じて一時的に記憶するイメージメモリ7が設けられる。
【0025】
コンピュータ11に設けられた操作パネル12からは、超音波画像診断装置1の駆動制御やアプリケーションの使用等の各種操作に必要な操作情報をコンピュータ11に入力することができる。さらに、コンピュータ11から出力される制御信号やデータは、デバイスドライバ10およびバス18を介してメカプローブ制御回路3、送受信回路4、DSC回路5、画像表示回路6に与えられ、操作パネル12の操作によりメカプローブ制御回路3、送受信回路4、DSC回路5、画像表示回路6を制御することができるように構成される。
【0026】
また、システムメモリ14は、コンピュータ11において取得された各種データを一時的に格納するメモリであり、特に、DSC回路5から受信した画像データを一時的に格納する画像メモリとして利用することができる。システムメモリ14と同様に、外部記憶装置13にもコンピュータ11において取得された画像データ等の各種データを記憶させて保存することができる。
【0027】
コンピュータ11のスキャン制御システム15は、デバイスドライバ10およびバス18を介してDSC回路5から画像データを取得して3次元画像構築部16に与える機能と、操作パネル12から受け取った指示に従って、所望の等方性を有する画像が得られるようなスキャン条件を計算し、得られたスキャン条件に合致する超音波プローブ2の制御信号を生成してメカプローブ制御回路3および送受信回路4に与える機能とを有する。すなわち、スキャン制御システム15は、超音波プローブ2を制御するメカプローブ制御回路3および送受信回路4に所要の制御信号を与えることにより画像の等方性を制御する機能を有する。
【0028】
また、スキャン制御システム15には、スキャン条件から定まる等方性情報をGUI表示処理部17に与える機能が備えられる。
【0029】
ここで、スキャン条件の計算方法および等方性の制御方法について説明する。そのために、まず座標系およびパラメータについて定義する。
【0030】
図2は、図1に示す超音波画像診断装置1において、超音波プローブ2による電子スキャンによって形成されるスキャン面と座標系の設定方法を説明する図である。
【0031】
図2に示すように、2次元的に最大画角αmaxの範囲内において電子スキャン方向Aに一定の速度でスキャン角α単位で変化させて電子スキャンを行うことにより一定のラスタピッチPrで離れた走査線を含むでスキャン面Bが形成される。このとき被検体の深さ方向にY軸を、スキャン面Bに平行でY軸に垂直な方向にX軸をそれぞれ設定する。
【0032】
図3は、図1に示す超音波画像診断装置1において、超音波プローブ2を用いたメカニカルスキャンを行う場合のスキャン面を示す図である。
【0033】
超音波プローブ2には、メカ4Dプローブが用いられる。そして、図3に示すようにメカニカルスキャンによりXY平面上の電子スキャン方向Aに対して垂直な方向を揺動方向Cとして、一定の揺動ピッチPmで超音波プローブ2を揺動させることができる。換言すれば、揺動面上において、超音波プローブ2を2次元的に振角度β1単位で揺動させて揺動角度βだけ振ることができる。このため、電子スキャンにより形成される複数のスキャン面Bが、互いに一定の角度で隣接することとなる。このとき、超音波プローブ2の揺動方向CにZ軸を設定する。
【0034】
図3に示された幾何学的な関係から、超音波プローブ2にメカ4Dプローブを用いた場合には、超音波プローブ2の揺動面上におけるスキャン密度およびスキャン面上におけるスキャン密度は、揺動のための機械制御の精度、電子スキャンのラスタ密度並びにフレームレートに依存して変化することが分かる。
【0035】
図4は、図1に示す超音波画像診断装置1において、超音波プローブ2を揺動方向に往復させた場合おける往路の電子スキャン位置の遷移を示す図であり、図5は、図1に示す超音波画像診断装置1において、超音波プローブ2を揺動方向に往復させた場合おける復路の電子スキャン位置の遷移を示す図である。
【0036】
超音波プローブ2を揺動方向Cに往復させた場合に、視線方向を超音波の深さ方向に設定すると、往路の電子スキャン位置Dは図4のように、復路の電子スキャン位置Dは図5のようになる。すなわち、揺動方向Cを示すZ軸と電子スキャン方向Aは垂直となる。また、3D画像の再構成に用いる画像データの収集範囲において揺動が等速であれば、電子スキャン位置Dは揺動ピッチPmで均等に配置される。そして、電子スキャン位置Dは一様に揺動方向Cにシフトすることとなる。
【0037】
従って、超音波プローブ2の単位時間当たりのラスタピッチまたはスキャン角で示されるスキャン速度および単位時間当たりの揺動ピッチまたは振角度変化で示される揺動速度が分かれば、電子スキャン位置を把握することができる。そして、揺動面上におけるスキャン密度およびスキャン面上におけるスキャン密度を調整できれば等方性を制御することができる。
【0038】
従って、等方性を制御するためには、まず電子スキャン面におけるフレームレートを求めることが必要となる。電子スキャン面におけるフレームレートFRは、式(1)で表される。
[数1]
FR={(NR/ND)×(α/αmax/PRF)}(−1) ・・・(1)
但し、式(1)において、NRはラスタ本数(受信ビームの数)、NDは並列同時受信数、αはスキャン角、αmaxは最大画角、PRFは繰返し周波数(pulse repetition frequency)である。尚、並列同時受信数NDは、代表的なPSP(Para11el Signal Processing)の場合には2本となり、QSP(Quad Signal Processing)の場合には4本となる。
【0039】
さらに、超音波プローブ2(メカ4Dプローブ)を一方向に片道揺動させて3Dボリューム1つ分のデータを収集する場合のフレーム総枚数FRtotalは、電子スキャン面におけるフレームレートFRから式(2)のように求めることができる。
[数2]
FRtotal=FR×t1 ・・・(2)
但し、式(2)において、t1は、超音波プローブ2(メカ4Dプローブ)の片道の揺動時間である。
【0040】
次に揺動の細かさを表す揺動ピッチPmを式(3)により計算する。
[数3]
Pm=β1/FRtotal ・・・(3)
但し、式(3)において、β1は隣接する電子スキャン面のなす超音波プローブ2(メカ4Dプローブ)の揺角度である。
【0041】
従って、超音波の任意の深さにおいて、揺動ピッチが電子スキャンのラスタピッチと最も均一になるように並列同時受信数、揺動速度およびラスタ本数を決定すれば、等方性を制御して向上させることができる。換言すれば、超音波の任意の深さにおいて、揺動ピッチが電子スキャンのラスタピッチとの差分が所望の値以下または未満となるような並列同時受信数、揺動速度およびラスタ本数を求めるという最適化問題を解くことが必要になる。
【0042】
尚、超音波の深さは、Bモードの送信フォーカスの位置に応じて定まるが、Bモードの送信フォーカスの位置をパラメータとする他、特定の送信フォーカスの位置を複数設定し、設定した送信フォーカスの位置について最適化問題の解を求めるようにしてもよい。
【0043】
そこで、スキャン制御システム15には、等方性の制御に必要な、最適化問題の解を求めるための最適化処理を行う機能および最適化問題により得られた解を保存する機能の一方または双方が設けられる。
【0044】
図6は図1に示す超音波画像診断装置1におけるスキャン制御システム15の詳細機能を示す機能ブロック図である。
【0045】
スキャン制御システム15は、ユーザ入力受信部20、画像ジオメトリ計算部21、スキャン方式計算部22、等方性制御アルゴリズム格納部23、データテーブル24、ハードウェア制御方式計算部25、画像データ転送部26を備えている。
【0046】
等方性制御アルゴリズム格納部23には、等方性が所望の等方性となるように並列同時受信数、揺動速度およびラスタ本数を求める最適化問題を解くための計算アルゴリズムを記述したソフトウェアが予め格納される。
【0047】
データテーブル24には、最適化問題の解、すなわち、等方性が所望の等方性となるような並列同時受信数、揺動速度およびラスタ本数が超音波の深さに関連付けて保存される。この最適化問題の解は予め別途求めてデータテーブル24に保存しても良いし、等方性制御アルゴリズム格納部23に格納された計算アルゴリズムに従って過去に求められたものをデータテーブル24に保存するようにしても良い。
【0048】
ユーザ入力受信部20は、操作パネル12から等方性を所望の値に設定する旨の指示とともに3D画像の撮影領域や超音波の深さ等の撮影条件の指示を受けた場合に、操作パネル12から取得した3D画像の撮影条件を画像ジオメトリ計算部21に与える機能を有する。
【0049】
画像ジオメトリ計算部21は、ユーザ入力受信部20から撮影領域等の撮影条件を受けて、座標変換等の必要な幾何学的な処理を行うことにより、撮影すべき画像の幾何学的な形状情報を求める機能と、得られた画像の幾何学的な形状情報をスキャン方式計算部22に与える機能とを有する。
【0050】
スキャン方式計算部22は、画像ジオメトリ計算部21から受けた形状情報の画像を所望の等方性で撮影するためのスキャン条件を計算する機能を有する。そのために、スキャン方式計算部22は、等方性制御アルゴリズム格納部23からスキャン条件として並列同時受信数、揺動速度およびラスタ本数を求めるための計算アルゴリズムを読み込んで実行することにより並列同時受信数、揺動速度およびラスタ本数を求めることができるように構成される。また、計算アルゴリズムの実行機能に加えてデータテーブル24を検索し、超音波の深さに対応するまたは近似するスキャン条件を取得する機能が備えられる。
【0051】
つまり、スキャン方式計算部22は、等方性制御アルゴリズム格納部23から読み込んだ計算アルゴリズムを実行することにより、またはデータテーブル24を参照することにより、所望の等方性となるような超音波の深さに対応するスキャン条件を求める機能を備えている。そして、スキャン方式計算部22には、スキャン条件の計算の際に用いた等方性の指標を示す等方性情報をGUI表示処理部17に与える一方、得られたスキャン条件をハードウェア制御方式計算部25に与える機能が備えられる。
【0052】
尚、並列同時受信数、揺動速度およびラスタ本数の一部の値を特定の値に固定し、並列同時受信数、揺動速度およびラスタ本数の少なくとも1つを最適化処理によりスキャン条件として求めるようにしてもよい。
【0053】
また、必ずしも揺動ピッチと電子スキャン面におけるラスタピッチとがより等しくなるように、つまり揺動方向における走査線密度と前記電子スキャン方向における走査線密度とがより等しくなるように等方性を設定する必要はなく、故意に揺動ピッチと電子スキャン面におけるラスタピッチとが異なるように等方性を設定し、重視する一方側のスキャン密度を他方側のスキャン密度より向上させて、重視する側の走査線密度が他方側の走査線密度よりも大きくなるようにしてもよい。例えば、2Dスキャンを行う場合に、電子スキャン面におけるスキャン密度が向上されるように等方性を設定することができる。
【0054】
ハードウェア制御方式計算部25は、スキャン方式計算部22から受けたスキャン条件に従ってスキャンが実行されるように制御信号を生成し、デバイスドライバ10を介してメカプローブ制御回路3および送受信回路4に与える機能を有する。
【0055】
画像データ転送部26は、DSC回路5からバス18およびデバイスドライバ10を介して画像データを取得して3次元画像構築部16に与える機能を有する。
【0056】
3次元画像構築部16は、スキャン制御システム15の画像データ転送部26から受けた画像データを元データとして画像再構成処理を実行することにより、所望の3D画像データを再構成する機能と、得られた3D画像データをGUI表示処理部17に与える機能とを有する。また、必要に応じて得られた3D画像データを外部記憶装置13やシステムメモリ14に書き込んで保存し、あるいは外部記憶装置13やシステムメモリ14から所望の3D画像データを読み込んで取得できるように構成される。
【0057】
GUI表示処理部17は、3次元画像構築部16から受けた3D画像データに、スキャン制御システム15のスキャン方式計算部22から受けた等方性情報をCRT9に表示させるための情報を付加し、バス18を介して画像表示回路6に送信することにより、CRT9に3D画像とともに等方性情報を表示させる機能を有する。
【0058】
次に超音波画像診断装置1の動作および作用について説明する。
【0059】
図7は、図1に示す超音波画像診断装置1によりメカニカルスキャンを行って3D画像を表示させる際の流れを示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0060】
まずステップS1において、操作パネル12から等方性を所望の値に設定する旨の指示とともに3D画像の撮影領域や超音波の深さ等の撮影条件の指示がユーザ入力受信部20に与えられる。例えば、CRT9やタッチパネルスクリーンに等方性の指標値の入力フィールドや等方性制御の実行を指示するためのスイッチがコンピュータグラフィックスによりGUI表示され、所定の撮影条件が指定されればユーザは操作パネル12の1switchの操作により等方性を最適化したスキャンの実行を指示することができる。
【0061】
次に、ステップS2において、ユーザ入力受信部20から3D画像の撮影条件が画像ジオメトリ計算部21に与えられ、画像ジオメトリ計算部21は、座標変換等の必要な幾何学的な処理を行うことにより、撮影すべき画像の幾何学的な形状情報を求める。そして、得られた画像の幾何学的な形状情報はスキャン方式計算部22に与えられる。
【0062】
次に、ステップS3において、スキャン方式計算部22は、等方性制御アルゴリズム格納部23から計算アルゴリズムを読み込んで画像の幾何学的な形状情報を用いて実行することにより、またはデータテーブル24を参照することにより、所望の等方性となるような超音波の深さに対応するスキャン条件を求める。この結果、望ましい並列同時受信数、揺動速度およびラスタ本数を得ることができる。
【0063】
また、ステップS4において、スキャン方式計算部22は、スキャン条件を求める際に用いられた等方性を表示するための等方性情報を作成する。
【0064】
図8は、図1に示す超音波画像診断装置1のスキャン制御システム15において作成される等方性情報の作成方法の一例を示す図である。
【0065】
図8に示すように例えば、等方性を長方形により模式図として表現し、揺動ピッチPmを一方の辺の長さ、ラスタピッチPrを他方の辺の長さとして定量的に等方性を表すような等方性情報を作成することができる。ただし、単に揺動ピッチとラスタピッチの割合(Pm:Pr)としたり、模式図とせずに揺動ピッチとラスタピッチの距離情報のみとして等方性情報を作成してもよい。
【0066】
また、最適化計算により解が得られなかった場合には、所望の等方性が得られないため、十分な等方性が得られるか否かの2値情報として等方性情報を作成してもよい。この他、3D画像を計測する場合の精度が把握できるように揺動ピッチとラスタピッチの比がPm:Pr=1:1の場合に誤差0%とし、揺動ピッチとラスタピッチの比の値に応じた誤差の値を等方性情報として作成することもできる。
【0067】
次に、ステップS5において、ハードウェア制御方式計算部25は、スキャン方式計算部22から受けたスキャン条件に従ってスキャンが実行されるように制御信号を生成する。
【0068】
次に、ステップS6において、ハードウェア制御方式計算部25からデバイスドライバ10を介してメカプローブ制御回路3および送受信回路4に制御信号が与えられ、スキャン制御システム15において設定されたスキャン条件に従ってスキャンが実行される。
【0069】
すなわち、メカプローブ制御回路3および送受信回路4によりメカ4Dプローブである超音波プローブ2が機械的かつ電子的に制御され、スキャン制御システム15において設定された並列同時受信数、揺動速度およびラスタ本数でのメカニカルスキャンが実行される。
【0070】
次に、ステップS7において、スキャンにより収集されたデータから3D画像が再構成される。すなわち、超音波プローブ2において受信された受信データは、送受信回路4に与えられ、送受信回路4において画像データが生成される。画像データは、DSC回路5において座標変換処理および必要な補間処理の対象とされ、各種処理後における画像データは、バス18およびデバイスドライバ10を介して画像データ転送部26に取得される。画像データは画像データ転送部26から3次元画像構築部16に与えられ、3次元画像構築部16において3D画像データが再構成される。
【0071】
また、作成された3D画像データは、適宜外部記憶装置13やシステムメモリ14に保存される。
【0072】
次に、ステップS8において、再構成された3D画像および等方性情報がGUI表示処理部17に与えられて表示処理された後、バス18を介して画像表示回路6に送信される。画像表示回路6は、GUI表示処理部17から取得した3D画像および等方性情報を画像信号に変換してCRT9に与える。この結果、CRT9には3D画像とともに等方性情報が表示される。
【0073】
図9は、図1に示す超音波画像診断装置1のCRT9に表示される等方性情報の表示例を示す図である。
【0074】
例えば、図9に示すように等方性情報P1が揺動ピッチPmおよびラスタピッチPrをそれぞれ1辺の長さとする直方体として模式的にCRT9に表示される。この際、計測誤差として数値により%表示を付加することもできる。
【0075】
図10は、図9に示す等方性情報のCRT9の画面上における配置例を示す図である。
【0076】
図10に示すように等方性情報P1は、3D画像P2とともに表示される。CRT9に表示された3D画像P2に対しては、コンピュータ11に備えられる各種アプリケーションの利用により回転や切断といった画像処理を行い、距離、面積、体積等のデータを計測することができる。この際、回転や切断といった画像処理が施される度に、画像データ転送部26により3D画像データをコンピュータ11に取り込み、GUI表示処理部17において等方性情報P1を更新させれば、等方性情報P1として図9に示すような模式図を用いる場合に、3D画像の回転や切断に追従させて等方性情報P1も回転または切断できる。
【0077】
これによりユーザはスキャン中、スキャン後に直感的にどの面におけるデータがどの精度で収集されたかを認識することができる。従って、計測精度の誤差がユーザにより誤認識される恐れを低減することができる。
【0078】
そして、このような等方性の制御や等方性情報の表示は、2D画像や3D画像のリアルタイム表示あるいはフリーズ後における静止画表示のいずれにおいても行うことができる。
【0079】
つまり以上のような超音波画像診断装置1は、所望の等方性が得られるようなスキャン条件として、超音波プローブ2の並列同時受信数、揺動速度およびラスタ本数を設定する機能を設けることにより、等方性の制御を行うことができるようにしたものである。
【0080】
このため、超音波画像診断装置1によれば、3D画像の等方性を最適に調整することができるため、高精度な3D画像を得ることができる。このため、特に、スキャン後に3D画像を回転または切断した場合に画質劣化が判明し、再度スキャンを行うというような事態を回避することができる。
【0081】
さらに、スキャン後のみならずスキャン中においてもリアルタイムにどの面に対してどのような精度(スキャン密度)でスキャンしているかを可視化することができる。このため、どの程度の等方性の3D画像が得られるのかを容易にユーザに認識させることができる。
【0082】
また、電子スキャン方向および揺動方向のいずれのスキャン密度の向上が重要であるのかによって、適切なスキャン条件を容易に設定することができる。
【0083】
さらに、等方性の指標は計測精度に関する指標としても利用できるため、十分な計測精度が得られるように、予め計測したい場所に超音波プローブ2を移動させてフォーカスして3D画像を生成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係る超音波画像診断装置の実施の形態を示す構成図。
【図2】図1に示す超音波画像診断装置において、超音波プローブによる電子スキャンによって形成されるスキャン面と座標系の設定方法を説明する図。
【図3】図1に示す超音波画像診断装置において、超音波プローブを用いたメカニカルスキャンを行う場合のスキャン面を示す図。
【図4】図1に示す超音波画像診断装置において、超音波プローブを揺動方向に往復させた場合おける往路の電子スキャン位置の遷移を示す図。
【図5】図1に示す超音波画像診断装置において、超音波プローブを揺動方向に往復させた場合おける復路の電子スキャン位置の遷移を示す図。
【図6】図1に示す超音波画像診断装置におけるスキャン制御システムの詳細機能を示す機能ブロック図。
【図7】図1に示す超音波画像診断装置によりメカニカルスキャンを行って3D画像を表示させる際の流れを示すフローチャート。
【図8】図1に示す超音波画像診断装置のスキャン制御システムにおいて作成される等方性情報の作成方法の一例を示す図。
【図9】図1に示す超音波画像診断装置のCRTに表示される等方性情報の表示例を示す図。
【図10】図9に示す等方性情報のCRT9の画面上における配置例を示す図。
【符号の説明】
【0085】
1 超音波画像診断装置
2 超音波プローブ
3 メカプローブ制御回路
4 送受信回路
5 DSC回路
6 画像表示回路
7 イメージメモリ
8 シーケンサ回路
9 CRT
10 デバイスドライバ
11 コンピュータ
12 操作パネル
13 外部記憶装置
14 システムメモリ
15 スキャン制御システム
16 3次元画像構築部
17 GUI表示処理部
18 バス
20 ユーザ入力受信部
21 画像ジオメトリ計算部
22 スキャン方式計算部
23 等方性制御アルゴリズム格納部
24 データテーブル
25 ハードウェア制御方式計算部
26 画像データ転送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子スキャン方向と異なる方向に機械的に揺動させることが可能な超音波プローブを備えた超音波画像診断装置において、
前記超音波プローブを用いたメカニカルスキャンにより前記超音波プローブの揺動方向における走査線密度および前記電子スキャン方向における走査線密度間の等しさの程度を示す等方性が所望の等方性となるようにスキャン条件を設定するスキャン方式計算部と、
前記スキャン方式計算部により設定された前記スキャン条件から前記超音波プローブの制御信号を生成するハードウェア制御方式計算部と、
を備えたことを特徴とする超音波画像診断装置。
【請求項2】
前記スキャン方式計算部は、前記揺動方向における走査線密度と前記電子スキャン方向における走査線密度とが互いにより等しくなるように前記スキャン条件を設定するように構成されることを特徴とする請求項1記載の超音波画像診断装置。
【請求項3】
前記スキャン方式計算部は、前記揺動方向における走査線密度と前記電子スキャン方向における走査線密度のうち重視する一方側の走査線密度が他方側の走査線密度よりも大きくなるように前記スキャン条件を設定するように構成されることを特徴とする請求項1記載の超音波画像診断装置。
【請求項4】
前記スキャン方式計算部は、前記等方性を前記表示装置に示すための等方性情報を作成して表示装置に与えることにより、前記等方性情報を表示させるように構成されることを特徴とする請求項1記載の超音波画像診断装置。
【請求項5】
前記スキャン方式計算部は、前記超音波プローブによる並列同時受信数、前記超音波プローブの揺動速度および前記超音波プローブによるラスタ本数の少なくとも1つを最適化処理により前記スキャン条件として設定するように構成されることを特徴とする請求項1記載の超音波画像診断装置。
【請求項6】
コンピュータを、
電子スキャン方向と異なる方向に機械的に揺動させることが可能な超音波プローブを用いたメカニカルスキャンにより、前記超音波プローブの揺動方向における走査線密度および前記電子スキャン方向における走査線密度間の等しさの程度を示す等方性が所望の等方性となるようにスキャン条件を設定するスキャン方式計算部および、
前記スキャン方式計算部により設定された前記スキャン条件から前記超音波プローブの制御信号を生成するハードウェア制御方式計算部、
として機能させることを特徴とする超音波画像診断装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−204621(P2006−204621A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21898(P2005−21898)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】