説明

超音波発振器及び超音波洗浄装置

【課題】水負荷の無い空焚き状態、振動素子の異常又は洗浄槽の異常のいずれかを検出することができる超音波発振器を提供する。
【解決手段】本発明に係る超音波発振器は、f1、f2及びf3の少なくとも一つの周波数の信号を発生させる信号源9と、前記信号源から発生させた前記信号を整合させる整合回路17と、整合回路によって整合された信号が入力される振動素子2と、振動素子に入力される信号の電圧値及び電流値を検出する検出回路10と、検出回路によって検出された電圧値及び電流値を用いて前記信号に対するインピーダンスが演算されるインピーダンス演算器11と、予め設定されているインピーダンスの異常検出用閾値とインピーダンス演算器によって演算された前記信号に対するインピーダンスを比較することによって洗浄槽又は振動素子の異常を判定する判定部13と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波発振器及び超音波洗浄装置等に係わり、特に、水負荷の無い空焚き状態、振動素子の異常又は洗浄槽の異常のいずれかを検出することができる超音波発振器及び超音波洗浄装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来から使用されている超音波振動子の異常検出装置をブロック図で示したものである。超音波振動子101a、101b、101c、101dを並列接続にして、発振回路102、電圧増幅回路103、電力増幅回路104、インピーダンス整合回路105等を備えた超音波駆動装置によって同時に駆動させるようにしている。
【0003】
ところで、超音波振動子にも、当然なこととして故障ということが考えられる。例えば、超音波振動子に過負荷を加えたときに、発熱による熱応力破壊(主にセラミックの割れ)、無負荷に近いときは励振過大によるボルトや金属ブロックの破壊、その他自然故障等が存在する。
【0004】
複数個の超音波振動子を並列的に同時使用していたときに、そのうちの例えば1個の超音波振動子が故障した場合であっても、そのまま使用を継続するわけにはいかない。使用を継続すると、所期の目的を達成することができないばかりか、過電流により他の故障を誘発する場合がないとはいえない。
【0005】
そこで、従来、図9に示すように、これら超音波振動子に高周波電力を供給する駆動配線の主配線106に流れる電流値を検出するためのセンサ(変流器)107を配置して、主配線106に流れる電流を検出し、比較回路108に送る。比較回路108には、全ての超音波振動子が正常に動作しているときに流れる電流値の合計を予め基準値として入力しておく。比較回路108では、センサ107からの電流値を示すアナログ信号と、基準値として入力されたアナログ値と比較して、その値の差をAD変換しCPU109に送る。CPU109では、入力された数値が予め設定されている範囲に入るか否かを判別し、範囲外であれば警報装置110に信号出力を行う。警報装置110では、CPU109からの信号を受けると、超音波振動子に異常が発生した旨の警報表示を行い、かつ超音波振動子を使用している装置全体を停止させるように指令したりする(例えば特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、図9に示す異常検出装置では、超音波振動子に与える電流が過電流になった場合のみに異常と判断し、超音波振動子を使用している装置全体を停止させることとしている。このため、過電流が流れることによって超音波振動子自体がすでに故障してしまっていることがあり、また、水負荷が無い状態で空焚きをしていても超音波振動子が故障するまで異常を検出できない場合がある。空焚きを行うと、超音波振動子が過振幅になり、その振動により超音波振動子が発熱して超音波振動子内で剥がれなどの故障が発生することがある。
【0007】
図10は、従来の超音波振動子駆動装置の構成を示すブロック図である。
位相差検出回路210は超音波振動子203の駆動電圧及び電流の位相差に基づいて発振回路204の発振周波数を制御する。|Z|極小値検出回路211は、超音波振動子203のインピーダンスに基づいて発振回路204の発振周波数を制御する。状態検出回路212は、負荷の異常をインピーダンスの大きさによって検出し、正常時には位相差検出回路210の制御を採用し、異常時には|Z|極小値検出回路211の制御を採用する。これにより、負荷の変動によって共振点追尾不能となった場合でも、インピーダンス極小値追尾型制御を行うことで、確実な共振点駆動を可能とする。また、アラーム発生回路213によって負荷の異常を告知する。また、本装置は、VCA205、AMP206、駆動及び検出回路207、設定信号発生部208、差動増幅回路209及び切換部214を備えている(例えば特許文献2参照)。
【0008】
しかしながら、図10に示す超音波振動子駆動装置では、超音波振動子に共振周波数(1周波)を与え、超音波振動子に流れる電流及び電圧を検出し、インピーダンスの大きさに基づいて負荷の異常を判断し、異常時には|Z|極小値検出回路211の制御を採用するため、装置を動作させ続ける構成となっている。つまり、超音波振動子が破壊されるまで動作し続けることになる。従って、超音波振動子が完全に破壊される前に超音波振動子の故障を検出することはできない。
【0009】
【特許文献1】特許2983513号公報(0003〜0006段落、図2)
【特許文献2】特開2001−212514号公報(要約書、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように従来の装置では、水負荷が無い状態で超音波振動を与える空焚きを早期に検出することができない。また、超音波振動子が完全に故障する前に、超音波振動子の異常を検出することができない。
【0011】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、水負荷の無い空焚き状態、振動素子の異常又は洗浄槽の異常のいずれかを検出することができる超音波発振器及び超音波洗浄装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る超音波発振器は、洗浄槽又は振動素子の異常を検出する異常検出機構を備えた超音波発振器であって、
第1次共振周波数f1、第2次共振周波数f2及び第3次共振周波数f3の少なくとも一つの周波数の信号を発生させる信号源と、
前記信号源から発生させた前記信号を整合させる整合回路と、
前記整合回路によって整合された信号が入力される振動素子と、
前記振動素子に入力される前記信号の電圧値及び電流値を検出する検出回路と、
前記検出回路によって検出された前記電圧値及び前記電流値を用いて前記信号に対するインピーダンスが演算されるインピーダンス演算器と、
予め設定されているインピーダンスの異常検出用閾値と前記インピーダンス演算器によって演算された前記信号に対するインピーダンスを比較することによって前記洗浄槽又は前記振動素子の異常を判定する判定部と、
を具備することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る超音波発振器において、前記判定部によって前記洗浄槽又は前記振動素子の異常が判定された場合に前記振動素子の動作を停止させる機構をさらに具備することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る超音波発振器において、前記第1次共振周波数f1及び前記第3次共振周波数f3それぞれは、前記振動素子の厚み方向に共振する周波数であり、前記第2次共振周波数f2は、前記圧電素子の主面と平行方向に共振する周波数であることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る超音波発振器において、前記検出回路は、前記信号の電圧値及び電流値を検出する際、前記信号に対するインピーダンスが最大又は最小となるタイミングで電圧値及び電流値を検出することが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る超音波発振器において、前記検出回路は、前記信号の電圧値及び電流値を検出する際、前記電圧値及び電流値の両者の位相差が0もしくは0に近付いたタイミングで電圧値及び電流値を検出することが好ましい。
【0017】
本発明に係る超音波洗浄装置は、前述したいずれかの超音波発振器と、
前記振動素子が接着され、洗浄液が入れられる洗浄槽と、
を具備することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る超音波洗浄装置は、前述したいずれかの超音波発振器と、
前記振動素子が接着された筐体と、
前記筐体内に伝播液が供給される供給配管と、
前記供給配管によって前記筐体内に供給された前記伝播液に前記振動素子から超音波振動が与えられ、この超音波振動が与えられた前記伝播液が前記筐体の外部に吐出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、水負荷の無い空焚き状態、振動素子の異常又は洗浄槽の異常のいずれかを検出することができる超音波発振器及び超音波洗浄装置等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1(A)は、本発明の実施形態による超音波洗浄装置の構成の一例を示す概略図であり、図1(B)は、本発明の実施形態による超音波洗浄装置の構成の他の例を示す概略図である。
【0021】
図1(A)に示す超音波洗浄装置は、被洗浄物(図示せず)を洗浄する洗浄液4で満たされた洗浄槽3を有しており、この洗浄槽3には接着剤(図示せず)によって振動素子2が貼り付けられている。振動素子2は信号伝送路5によって超音波発振器1に接続されている。超音波発振器1によって発振された超音波信号は信号伝送路5を通って振動素子2に与えられ、それにより振動素子2から超音波振動が洗浄槽3内の洗浄液4に加えられるようになっている。
【0022】
図1(B)に示す超音波洗浄装置は超音波発振器1を有しており、この超音波発振器1は信号伝送路5によって振動素子2に接続されている。振動素子2は筐体6に接着剤(図示せず)によって貼り付けられている。筐体6には液供給配管7が接続されており、この液供給配管7によって筐体6内に伝播液8が供給されるようになっている。超音波発振器1によって発振された超音波信号は信号伝送路5を通って振動素子2に与えられ、それにより振動素子2から超音波振動が筐体6内の伝播液に加えられ、この超音波振動が加えられた伝播液8は筐体6の下方に吐出される。この吐出された伝播液8によって被洗浄物(図示せず)を洗浄するための洗浄液(図示せず)に超音波振動が与えられるようになっている。
【0023】
図2は、図1(A),(B)に示す超音波発振器1の詳細を説明するための構成図である。
【0024】
超音波発振器1は電源18を有しており、この電源18は遮断機構(スイッチ)15aを介して増幅器16に電気的に接続されており、増幅器16は遮断機構(スイッチ)15bを介して信号源9に電気的に接続されている。遮断機構15a,15bは発信器1を停止する機構である。信号源9は第1次共振周波数f1、第2次共振周波数f2及び第3次共振周波数f3それぞれの信号を出力できるものである。
【0025】
また、増幅器16は整合回路17に電気的に接続されており、整合回路17は電圧・電流検出回路10に電気的に接続されている。電圧・電流検出回路10は信号伝送路5によって複数の振動素子2に電気的に接続されている。振動素子2はPZTなどの振動子が用いられる。
【0026】
電圧・電流検出回路10はインピーダンスを計算するインピーダンス演算器11に電気的に接続されており、インピーダンス演算器11はFFTやBPF(バンドパスフィルタ)などで周波数別に計算されるようになっている。インピーダンス演算器11は判定部13に電気的に接続されており、判定部13はメモリ又は外部入力部12に電気的に接続されている。また、判定部13は、信号源9及び遮断機構(スイッチ)15a,15bそれぞれに制御信号14を入力するようになっている。
【0027】
判定部13は、空焚きを行っているのか、振動素子2に破損(壊れ)が発生しているのか、洗浄槽3の底板の石英板がエロージョンなどによる経年劣化により薄くなっているのか、洗浄槽に欠けや割れが発生しているのか、などの故障を判定するものである。また、遮断機構15a,15bは、判定部13によって前記故障が判定された場合に発信器1を停止させるものである。
【0028】
次に、図2に示す超音波発振器1の動作について説明する。
第1次共振周波数f1、第2次共振周波数f2及び第3次共振周波数f3の少なくとも一つの周波数の信号が信号源9によって発生され、電源18によって電力が増幅器16に入力され、前記信号源9から発生させた信号が増幅器16によって増幅され、その増幅された信号が整合回路17に入力され、この整合回路17によって整合された信号が信号伝送路5を通して複数の振動素子2に入力される。
【0029】
前記振動素子2に入力される信号の電圧値v(t)及び電流値i(t)は電圧・電流検出回路10によって検出される。この際、電圧値v(t)及び電流値i(t)の両者の位相差が0もしくは0に近付いたタイミングで電圧値v(t)及び電流値i(t)を検出することが好ましく、或いは、前記信号に対するインピーダンスが最大又は最小となるタイミングで電圧値v(t)及び電流値i(t)を検出することが好ましい。そして、検出された電圧値v(t)及び電流値i(t)のデータがインピーダンス演算器11に送られる。インピーダンス演算器11において、前記電圧値v(t)及び電流値i(t)を用いてf1、f2及びf3それぞれの信号に対するインピーダンス|Z|(f)が計算され、このインピーダンス|Z|(f)のデータが判定部13に入力される。
【0030】
判定部13には、メモリ又は外部入力部12によって、前述した故障が発生しているか否かを判定するためのインピーダンスの異常検出用閾値が予め入力され設定されており、この異常検出用閾値とインピーダンス演算器11によって演算されたインピーダンスを比較する。そして、閾値内であれば前述した故障が発生していないと判定され、閾値外であれば前述した故障が発生していると判定される。前記故障が発生していると判定されると、判定部13から制御信号14が遮断機構15a,15b及び信号源9に入力され、信号源9及び電源18それぞれの増幅器16への接続が遮断され、発信器1の動作及び振動素子2の振動が停止される。
【0031】
次に、判定部13において前記故障が発生しているか否かを判定する具体例について図3〜図6を参照しつつ説明する。
【0032】
図3〜図6それぞれは、材質が同一の圧電素子(振動素子)に第1次共振周波数f1、第2次共振周波数f2及び第3次共振周波数f3それぞれの信号を入力したときのインピーダンス|Z|を示す図である。ここでのf1、f3は、板状の圧電素子の厚みによってインピーダンスが決定される周波数であり、言い換えると、板状の圧電素子の厚み方向に共振する周波数である。f2は、板状の圧電素子の平面外形寸法によってインピーダンスが決定される周波数であり、言い換えると、板状の圧電素子の主面(平面)と平行方向(例えば主面の形状(平面形状)の縦方向及び横方向)に共振する周波数である。
【0033】
図3及び図4に示す参照符号19は、洗浄槽に洗浄液としての水が入れられていない状態、即ち、水負荷の無い空焚きの状態で、f1、f2及びf3を入力したときのインピーダンスを示すものである。また、図4に示す参照符号20は、洗浄槽に洗浄液としての水が入れられている状態、即ち、水負荷のある状態で、f1、f2及びf3を入力したときのインピーダンスを示すものである。
【0034】
図4に示すように、水負荷のある状態と無い状態ではf1、f3のインピーダンスや周波数が変化し、f2のインピーダンスや周波数は変化しないことが分かる。
【0035】
図5は、図4に示すf1部分を拡大した図である。
図5に示すように、空焚き状態の(|Z|a−|Z|b)と水負荷のある状態の(|Z|a'−|Z|b')とを比較することにより、空焚き状態であるか否かを判定することが可能となる。つまり、予め判定部13に水負荷のある状態の(|Z|a'−|Z|b')を異常検出用閾値として設定しておき、この異常検出用閾値を外れているか否かを判定部13で判断することによって空焚き状態であるか否かを判定することができる。
【0036】
図6に示す参照符号19は、水負荷の無い空焚きの状態で且つ異常が発生していない振動素子にf1、f2及びf3を入力したときのインピーダンスを示すものである。また、参照符号21は、水負荷の無い空焚きの状態で且つ異常が発生した振動素子(例えば、洗浄槽との接着剥がれや振動素子の破損など)又は異常が発生した洗浄槽(例えば、洗浄槽の底板が薄くなっていたり、振動板に異常があったり、洗浄槽に欠けや割れが発生するなど)に接着された振動素子に、f1、f2及びf3を入力したときのインピーダンスを示すものである。
【0037】
図6に示すように、異常が発生していない振動素子と異常が発生した振動素子などではf1、f3のインピーダンスや周波数だけでなくf2のインピーダンスや周波数も変化することが分かる。従って、図6に示す参照符号19のインピーダンスを予め判定部13に異常検出用閾値として設定しておき、この異常検出用閾値を外れているか否かを判定部13で判断することによって、振動素子2に破損が発生しているのか、洗浄槽の底板の石英板が薄くなっているのか、洗浄槽に欠けや割れが発生しているのか、などの故障を判定することが可能となる。
【0038】
例えば、洗浄槽の底板である石英板の厚さの許容範囲が2.9〜3.1mmである場合、この許容範囲内に相当するインピーダンスの異常検出用閾値を予め判定部13に設定しておき、この異常検出用閾値を外れているか否かを判定部13で判断することによって石英板の厚さが薄くなっているのかを判断することができる。また、前記異常検出用閾値からどの程度外れそうなのかを検出することによって洗浄槽の交換時期を検出することも可能となる。
【0039】
また、インピーダンスが異常検出用閾値からどの程度外れているかによって、洗浄槽や振動素子毎のばらつきによる振動むらの管理が可能になり、この管理を行うことによって被洗浄物の洗浄品質を安定させることができる。
【0040】
また、インピーダンスが異常検出用閾値からどの程度外れているかによって、振動素子の劣化を判定することが可能となり、また、インピーダンスの異常検出用閾値からどの程度外れそうなのかを検出することによって振動素子の交換時期を検出することも可能となる。
【0041】
また、図2に示す信号伝送路5から複数の振動素子2に接続されているケーブルのうちの一部のケーブルが断線している場合もインピーダンスの異常検出用閾値から判定することが可能である。
【0042】
次に、図2に示す電圧・電流検出回路10によって電圧値v(t)及び電流値i(t)を検出するタイミングについて、図7及び図8を参照しつつ説明する。
【0043】
図7及び図8それぞれは、材質が同一の圧電素子(振動素子)に第1次共振周波数f1、第2次共振周波数f2及び第3次共振周波数f3それぞれの信号を入力したときのインピーダンス|Z|及び位相差θを示す図である。図8は、図7に示すf1部分を拡大した図である。即ち、図7は周波数の広帯域が示されており、図8は周波数の狭帯域(f1周辺)が示されている。
【0044】
図7及び図8に示す参照符号19は、水負荷の無い空焚きの状態で、f1、f2及びf3を入力したときのインピーダンスを示すものである。参照符号22は、水負荷の無い空焚きの状態で、f1、f2及びf3を入力したときの電圧値v(t)と電流値i(t)の位相差θを示すものである。
【0045】
位相差θは下記式で表される。
v(t)=Vm×sin(ωt+ξ)
i(t)=Im×sin(ωt+ψ)
のときの位相差θ
θ=(ξ−ψ)
ただし、Vmは最大電圧であり、Imは最大電流であり、ξは電圧の進み位相であり、ψは電流の進み位相であり、ωは角速度であり、tは時間である。
【0046】
図8に示す振動子の実際の振動周波である機械共振周波数fs、fpを検出することが困難な場合に、電圧・電流検出回路10によって信号の電圧値v(t)と電流値i(t)を検出する際、前記信号に対するインピーダンスが最大又は最小となるタイミングで電圧値v(t)と電流値i(t)を検出することが好ましい。つまり、電圧・電流検出回路10によって電圧値v(t)と電流値i(t)を検出し、信号に対するインピーダンスが最大となる周波数fn又は信号に対するインピーダンスが最小となる周波数fmを検出することが好ましい。
【0047】
また、図8に示す振動子の実際の振動周波である機械共振周波数fs、fpを検出することが困難な場合に、電圧・電流検出回路10によって信号の電圧値v(t)と電流値i(t)を検出する際、前記電圧値v(t)と電流値i(t)の両者の位相差が0もしくは0に近付いたタイミングで電圧値v(t)と電流値i(t)を検出することが好ましい。つまり、電圧・電流検出回路10によって電圧値v(t)と電流値i(t)を検出し、両者の位相差θが0もしくは0に近付いた周波数を検出することが好ましい。この位相差θが0もしくは0に近付いた周波数は、位相差θが−90°から+90°の間に存在する周波数である。
【0048】
また、図8に示す振動子の実際の振動周波である機械共振周波数fs、fpを検出することが困難な場合に、電圧・電流検出回路10によって信号の電圧値v(t)と電流値i(t)を検出する際、前記電圧値v(t)と電流値i(t)の両者の位相差が最大又は最小となるタイミングで電圧値v(t)と電流値i(t)を検出することが好ましい。つまり、電圧・電流検出回路10によって電圧値v(t)と電流値i(t)を検出し、両者の位相差θが最大となる周波数fa又は位相差θが最小となる周波数frを検出することが好ましい。
【0049】
なお、fs(機械的直列共振周波数)、fp(機械的並列共振周波数)、fn(最大インピーダンスの周波数)、fm(最小インピーダンスの周波数)、fa(位相差θが最大となる周波数)、fr(位相差θが最小となる周波数)の関係は下記式で表される。
fm<fs<fr
fa<fp<fn
【0050】
上記実施形態によれば、判定部13によって前述した故障が発生していると判定されると、判定部13から制御信号14が遮断機構15a,15b及び信号源9に入力され、発信器1の動作及び振動素子2の振動を停止することができる。従って、水負荷が無い状態で超音波振動を与える空焚きを早期に検出することができ、また、振動素子2が完全に故障する前に、振動素子の異常を早期に検出することができ、また、洗浄槽3の欠陥などを早期に検出することができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】(A)は本発明の実施形態による超音波洗浄装置の構成の一例を示す概略図であり、(B)は本発明の実施形態による超音波洗浄装置の構成の他の例を示す概略図である。
【図2】図1(A),(B)に示す超音波発振器1の詳細を説明するための構成図である。
【図3】水負荷の無い空焚き状態で圧電素子にf1、f2及びf3それぞれの信号を入力したときのインピーダンス|Z|を示す図である。
【図4】水負荷のある状態及び水負荷の無い状態それぞれで圧電素子にf1、f2及びf3それぞれの信号を入力したときのインピーダンス|Z|を示す図である。
【図5】図4に示すf1部分を拡大した図である。
【図6】水負荷の無い空焚き状態で圧電素子にf1、f2及びf3それぞれの信号を入力したときのインピーダンス|Z|を示す図である。
【図7】水負荷の無い空焚き状態で圧電素子にf1、f2及びf3それぞれの信号を入力したときのインピーダンス|Z|及び位相差θを示す図である。
【図8】図7に示すf1部分を拡大した図である。
【図9】従来から使用されている超音波振動子の異常検出装置を示すブロック図である。
【図10】従来の超音波振動子駆動装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0053】
1…超音波発振器
2…振動素子
3…洗浄槽
4…洗浄液
5…信号伝送路
6…筐体
7…液供給配管
8…伝播液
9…信号源
10…電流・電圧検出回路
11…インピーダンス演算器
12…メモリ又は外部入力部
13…判定部
14…制御信号
15a,15b…遮断機構(スイッチ)
16…増幅器
17…整合回路
18…電源
19…水負荷の無い空焚きの状態でf1、f2及びf3を入力したときのインピーダンス
20…水負荷のある状態で、f1、f2及びf3を入力したときのインピーダンス
21…水負荷の無い空焚きの状態で且つ異常が発生した振動素子又は異常が発生した洗浄槽に接着された振動素子に、f1、f2及びf3を入力したときのインピーダンス
22…水負荷の無い空焚きの状態でf1、f2及びf3を入力したときの位相差θ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄槽又は振動素子の異常を検出する異常検出機構を備えた超音波発振器であって、
第1次共振周波数f1、第2次共振周波数f2及び第3次共振周波数f3の少なくとも一つの周波数の信号を発生させる信号源と、
前記信号源から発生させた前記信号を整合させる整合回路と、
前記整合回路によって整合された信号が入力される振動素子と、
前記振動素子に入力される前記信号の電圧値及び電流値を検出する検出回路と、
前記検出回路によって検出された前記電圧値及び前記電流値を用いて前記信号に対するインピーダンスが演算されるインピーダンス演算器と、
予め設定されているインピーダンスの異常検出用閾値と前記インピーダンス演算器によって演算された前記信号に対するインピーダンスを比較することによって前記洗浄槽又は前記振動素子の異常を判定する判定部と、
を具備することを特徴とする超音波発振器。
【請求項2】
請求項1において、前記判定部によって前記洗浄槽又は前記振動素子の異常が判定された場合に前記振動素子の動作を停止させる機構をさらに具備することを特徴とする超音波発振器。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記第1次共振周波数f1及び前記第3次共振周波数f3それぞれは、前記振動素子の厚み方向に共振する周波数であり、前記第2次共振周波数f2は、前記圧電素子の主面と平行方向に共振する周波数であることを特徴とする超音波発振器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、前記検出回路は、前記信号の電圧値及び電流値を検出する際、前記信号に対するインピーダンスが最大又は最小となるタイミングで電圧値及び電流値を検出することを特徴とする超音波発振器。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項において、前記検出回路は、前記信号の電圧値及び電流値を検出する際、前記電圧値及び電流値の両者の位相差が0もしくは0に近付いたタイミングで電圧値及び電流値を検出することを特徴とする超音波発振器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の超音波発振器と、
前記振動素子が接着され、洗浄液が入れられる洗浄槽と、
を具備することを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の超音波発振器と、
前記振動素子が接着された筐体と、
前記筐体内に伝播液が供給される供給配管と、
前記供給配管によって前記筐体内に供給された前記伝播液に前記振動素子から超音波振動が与えられ、この超音波振動が与えられた前記伝播液が前記筐体の外部に吐出されることを特徴とする超音波洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−172847(P2010−172847A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19830(P2009−19830)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000124959)株式会社カイジョー (83)
【Fターム(参考)】