説明

超音波発生装置を用いた立体模様シートおよびフィルムの製造方法、および製造装置

【課題】押出成形法において高い精度でパターンロールのパターンを転写させることのできるパターンシート製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】本発明のパターンシート製造装置は、シート状溶融樹脂を吐出するTダイ13、パターンを転写するためのパターンロール14と押さえロール15と超音波ホーン16からなる成形機、成膜したパターンシートを搬送する複数のガイドロール17、そしてパターンシートを巻き取る巻取り機18からなる。
押さえロール15とパターンロール14で狭圧され固化した押出シートに超音波ホーン16から超音波振動を与え、パターンロール表面で押出シート表面に選択的溶融を生じさせると共に断続的押し込み力を作用させることで完全にパターンロール14のパターンを転写させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶テレビや照明等に用いるプラスチックシート、およびフィルムの表面に立体模様を付与するための製造方法、および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から液晶テレビの輝度向上を目的として表面にプリズム形状が付与されたシート、およびフィルム(以後、シート、およびフィルムを総称してシートと記載)(特許文献1)、またモワレ防止のためマイクロレンズ形状が付与されたパターンシート(特許文献2)が液晶テレビのバックライト部材として用いられてきた。
【0003】
一方、今後普及が進むと考えられている有機ELを用いた照明における光取出し効率の向上(特許文献3)のため、パターンが付与されたパターンシートの使用が検討されている。
【0004】
これらパターンシートを製造する方法としては、紫外線成形法、および押出成形法の2法が提案されている。
【0005】
紫外線成形法は紫外線硬化性樹脂をポリエチレンテレフタレートなどからなる基材に均一に塗布し、任意のパターンが与えられたパターンロールに抱かせながら紫外線を照射することでパターンロールのパターンを転写することができる。現在、プリズム、およびマイクロレンズ形状を有するパターンシートは主としてこの紫外線成形法で製造されている。
【0006】
この紫外線成形法で製造した場合、パターンロールのパターンを高い精度で転写することが可能だが(その転写率は99%〜100%)、その製造コストが高くなり、年率数10%で低下している液晶テレビのコストトレンドに追従することができない。
【0007】
紫外線成形法のコスト高になる理由としては、高価な紫外線硬化性樹脂を使用すること、ポリエチレンテレフタレートなどからなる基材を押出成形する工程と紫外線硬化性樹脂を塗布・硬化させパターンを転写する工程と工程数が多くなることなどが挙げられる。
【0008】
一方、押出成形法はペレット状の樹脂を押出機で混練、Tダイから吐出、そして互いに平行に配置されたパターンロールと押さえロール間に供給し、その狭圧力でパターンロールのパターンを転写させる方法である。
【0009】
押出成形法で製造した場合、押出成形されたシートはパターンシートとなっているため、紫外線成形法のように高価な材料の使用を避けることができ、また、工程数も押出成形の1工程であるため製造コストを低減することが可能となる。
【0010】
しかし、この押出成形法は低コストで製造することができるが、パターンロールからのパターンの転写に難があり(良くても90%程度)、プリズムに代表される鋭利な形状を高い精度で転写することは、難しいのが実情である。
【0011】
そのため、パターンシートを必要とする液晶テレビのバックライト部材、有機EL照明の光取出しシート部材へ参入を検討しているメーカーは押出成形法において高い転写率が得られる方法を開発している。
【0012】
この押出成形法で高い転写率が得られない理由としては、押出シートの流動性が原因している。Tダイから高温で押出された押出シートが押さえロールとプリズムなどの形状を有するパターンロールとで狭圧され、パターン形状が転写される過程で押出シートの熱はパターンロールに吸収され、瞬時にその流動性が低下する。
【0013】
そのため、高い狭圧力でパターン転写を試みても、その低い流動性のため高転写率は得られない。
【0014】
よって高い転写率を得るために押出シートの流動性を増すことが考えられ、その方法として押出シート、およびパターンロールの温度制御が検討されている。
【0015】
押出シートの温度制御の1つとして、Tダイリップ温度をリップ以外の温度より高くすることで押出シートの表面部分のみを高温にし、高い流動性を与えている。
【0016】
特許文献4では、Tダイリップにニクロム線等の電熱線を使用しバンドヒーター等を埋設することで押出シート表面を高温にし、高い流動性を与えている。その結果、Tダイリップを加熱しない場合に比べ、高い転写率が得られたと報告している。
【0017】
さらに、押出シートの他の温度制御としてエアーギャップ間で押出シートに赤外線を照射することで高い流動性を与える方法も提案されている。ここで述べるエアーギャップとはTダイリップからパターンロールと押さえロールで狭圧される間の距離のことである。
【0018】
特許文献5では、押出シートに赤外線を照射しない場合に比べ、高い賦形率が得られたと報告している。
【0019】
一方、パターンロールの温度制御とはパターンロールの表面温度を押出シートと狭圧する前に内部温度より高くすることである。この表面だけ高温に加熱されたパターンロールが押出シートと狭圧された際、押出シート表面を高温に保ち、高い流動性を与えることができる。
【0020】
特許文献6では、赤外線を照射することで短時間にパターンロール表面を加熱し、押出シート表面に高い流動性を与えている。その結果、パターンロールを赤外線照射で加熱しない場合に比べ、高い転写率が得られたと報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特許第3607759号
【特許文献2】特開2006−301582
【特許文献3】特開2008−230114
【特許文献4】特開平10−676
【特許文献5】特開2008−179036
【特許文献6】特開2006−315295
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかし、特許文献4で提案されているTダイリップにニクロム線等の電熱線を使用し押出シート表面部分のみを高温にし、高い流動性を与える場合、Tダイの内部構造が複雑になり装置費用が高くなる。また、押出シートの表面温度を高温にしたとしてもエアーギャップ間で冷却され、パターンロールと押さえロールで狭圧される前に押出シートの流動性が低下してしまい大きな効果は期待できない。
【0023】
さらに、特許文献5で提案されているエアーギャップ間で押出シートに赤外線を照射し高い流動性を与える場合、その照射範囲が問題となる。
【0024】
通常、高い転写率を得ようとすると可能な限りエアーギャップ間を短くするため、Tダイとパターンロールが接近し、赤外線を照射する範囲が限られてくる。その限られた範囲で赤外線を照射しても押出シートを高温にし、流動性を劇的に高めるには至らない。
仮に広範囲に照射できるようにエアーギャップを長くすればそれだけ押出シートがエアーギャップ間で冷却され、赤外線照射の効果が得られ難くなる。
【0025】
一方、特許文献6で提案されているパターンロールに赤外線を照射し表面温度を高め、押出シートと狭圧することで押出シート表面を高温に保ち、高い流動性を与える場合、その表面温度が問題となる。
【0026】
パターンロールの表面温度を目的の温度に高め押出シートを高温にし、高い流動性を与えても、パターンロールに熱がこもり、パターンロールと押出シートが剥離するまでにパターンロールの温度が押出シートを構成している熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下に下がらない。その結果、押出シートに転写した形状が剥離と同時に崩れてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1記載の発明は、押出成形機のTダイでシートを吐出する工程と、前記Tダイから吐出されたシートを、押さえロールとパターンロールとで狭圧することにより、前記パターンロールのパターンを転写し、パターンシートに成形するパターンシート成形工程と、前記成形されたパターンシートを搬送し巻取る工程を有するパターンシートの製造方法であって、前記パターンシート成形工程において、前記押さえロールと前記パターンロールとで前記シートを狭圧した後、前記パターンロールの回転方向に一定長前記パターンロールで前記シートを抱込むようにし、前記シートが前記押さえロールと前記パターンロールとで狭圧される狭圧位置から前記シートが前記パターンロールから剥離する剥離位置までの間に前記シートに超音波を印加するパターンシート製造方法である。
【0028】
また、請求項2記載の発明は、前記シートに前記超音波を印加することで前記シートに選択的溶融を生じさせると共に断続的押し込み力を作用させ高転写率のパターンシートに加工する請求項1記載のパターンシート製造方法である。
【0029】
また、請求項3記載の発明は、前記超音波は、前記狭圧位置に前記パターンロールの1/8円周長を加えた位置から前記剥離位置の間の箇所で印加する請求項1記載のパターンシート製造方法である。
【0030】
また、請求項4記載の発明は、前記超音波は、超音波ホーンをホーン幅方向が前記パターンロール軸方向に平行になるように前記シートに向けて設置することで印加する請求項1記載のパターンシート製造方法である。
【0031】
また、請求項5記載の発明は、押出成形機のTダイでシートを吐出する工程と、前記Tダイから吐出されたシートを、押さえロールと金属ロールで前記Tダイから吐出されたシートを狭圧し、フラットシートに成形する工程と、前記成形されたフラットシートをパターンロールで前記パターンロールの回転方向に一定長抱込むことで、前記パターンロールのパターンを転写しパターンシートに成形するパターンシート成形工程と、前記成形されたパターンシートを搬送し巻取る工程を有するパターンシートの製造方法であって、前記パターンシート成形工程において、前記パターンロールに抱込ませている前記シートに超音波を印加するパターンシート製造方法である。
【0032】
また、請求項6記載の発明は、前記シートに前記超音波を印加することで前記シートに選択的溶融を生じさせると共に断続的押し込み力を作用させ高転写率のパターンシートに加工する請求項5記載のパターンシート製造方法である。
【0033】
また、請求項7記載の発明は、前記超音波は、前記フラットシートが前記パターンロールに抱込まれ始めてから、前記パターンロールから剥離するまでの間の中間で印加する請求項5記載のパターンシート製造方法である。
【0034】
また、請求項8記載の発明は、前記超音波は、超音波ホーンをホーン幅方向が前記パターンロール軸方向に平行になるように前記シートに向けて設置することで印加する請求項5記載のパターンシートである。
【0035】
また、請求項9記載の発明は、押出成形機のTダイでシートを吐出する工程と、前記Tダイから吐出されたシートを、押さえロールと第1のパターンロールとで狭圧することにより、前記シートの一方の面に前記第1のパターンロールのパターンを転写して成形する第1のパターンシート成形工程と、前記成形されたパターンシートを第2のパターンロールで前記第2のパターンロール回転方向に一定長抱込むことで、前記シートの他方の面に前記第2のパターンロールのパターンを転写して成形する第2のパターンシート成形工程と、前記成形されたパターンシートを搬送し巻取る工程を有するパターンシートの製造方法であって、前記第1のパターンシート成形工程において、前記押さえロールと前記第1のパターンロールとで前記シートを狭圧した後、前記第1のパターンロールの回転方向に一定長前記第1のパターンロールで前記シートを抱込むようにし、前記シートが前記押さえロールと前記第1のパターンロールとで狭圧される狭圧位置から前記シートが前記第1のパターンロールから剥離する剥離位置までの間に前記シートに超音波を印加し、前記第2のパターンシート成形工程において、前記第2のパターンロールに抱込ませている前記シートに超音波を印加するパターンシート製造方法である。
【0036】
また、請求項10記載の発明は、請求項1乃至9のいずれかのパターンシート製造方法で製造したパターンシートであって、前記パターンシートは無偏光特性を特徴とするパターンシートである。
【0037】
また、請求項11記載の発明は、シートを吐出する押出成形機のTダイと、前記Tダイから吐出されたシートにパターンを転写するために、押さえロールと共に前記シートを狭圧し、その後に前記シートを一定長抱込むパターンロールと、前記押さえロールと前記パターンロールとで前記シートを狭圧する狭圧位置から前記シートが前記パターンロールから剥離する剥離位置までの間に前記シートに超音波を印加する超音波ホーンと、前記成形されたパターンシートを搬送する搬送ロールと、前記パターンシートを巻取る巻取りロールとを有するパターンシート製造装置である。
【0038】
また、請求項12記載の発明は、シートを吐出する押出成形機のTダイと、前記Tダイから吐出されたシートを両面から狭圧し、フラットシートに成形する押さえロールと金属ロールと、前記成形されたフラットシートにパターンを転写するために前記フラットシートを回転方向に一定長抱込むパターンロールと、前記パターンロールに抱込ませている前記シートに超音波を印加する超音波ホーンと、前記成形されたパターンシートを搬送する搬送ロールと、前記パターンシートを巻取る巻取りロールとを有するパターンシート製造装置である。
【発明の効果】
【0039】
本発明によると、超音波ホーンを押出成形機に設置し、超音波をシートに印加することで、高い精度でパターンロールのパターンを転写させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る超音波発生装置を成形機第2ロール斜面に備え付けた概略図である。
【図2】超音波印加により得られたパターンシートの概略図である。
【図3】本発明に係る超音波発生装置を成形機第3ロール上面に備え付けた概略図である。
【図4】本発明に係る広幅ホーンの概略図である。
【図5】本発明に係る狭幅ホーンを並列させた概略図である。
【図6】本発明に係るホーン先端形状が凹状の場合の概略図である。
【図7】本発明の超音波発生装置を使用した場合と金属ロールの場合のパターン転写率の比較図表である。
【図8】本発明の超音波発生装置を押出シート両面に使用した場合のパターン転写率の図表である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0042】
図1に示すように、パターンロールと超音波ホーンを備えた押出成形装置は、原料ホッパー11から供給された熱可塑性樹脂原料を加熱混練する押出機12、シート状溶融樹脂を吐出するTダイ13、パターンを転写するためのパターンロール14と押さえロール15と超音波ホーン16からなる成形機、成膜したパターンシートを搬送する複数のガイドロール17、そしてパターンシートを巻き取る巻取り機18からなる。
ここで超音波ホーンとは振動することで超音波を発生させる振動子である。
【0043】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、光学シートの製造に適した樹脂が選ばれる。このためには、透明な樹脂であること、および、例えば組み込まれた液晶表示装置の使用時の信頼性を高めるために、耐熱性や耐湿性が実用的に差し支えない程度に備えていることが求められる。このような熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、メタクリルスチレン(MS)、アクリロニトリルスチレン(AS)、環状ポリオレフィンが好適である。
【0044】
押さえロール15とパターンロール14で狭圧され固化した押出シートに超音波ホーン16から超音波振動を与え、パターンロール表面で押出シート表面に選択的溶融を生じさせると共に断続的押し込み力を作用させることで完全にパターンロール14のパターンを転写させる。
【0045】
ここで、溶融は前記押さえロール15とパターンロール14で狭圧され固化した押出シートが超音波ホーン16とパターンロール14で狭圧され、超音波振動が与えられた箇所で起こる。この溶融は超音波振動による摩擦熱が押出シートとパターンロール14の界面でのみ発生するため「選択的」溶融となる。
【0046】
また、押し込みは前記超音波ホーン16により押出シートに選択的溶融と圧力が加えられるために起こる。断続的となるのはこの押し込みが超音波の周波数に依存するためである。例えば、周波数20kHzの超音波を利用すれば、超音波ホーンは毎秒2万回も振動し押出シート表面に選択的溶融が起こる。さらに超音波ホーンの振動毎に圧力も加えられるため断続的な押し込みとなる。
【0047】
押出シートに超音波振動を与え、パターン転写を行うとパターン形状へ押出シートが断続的に押し込まれる。そのため、得られたパターンシートには押さえロール15とパターンロール14で狭圧され転写されたパターン部と超音波印加で転写されたパターン部で違いが見られる。
【0048】
超音波印加により転写されたパターン部は断続的に押し込まれるため、パターン内部に樹木の年輪模様、またパターン表面には階段模様が確認できる(図2)。
このような模様のため、得られたシートに光を照射すると透過して得られる光は無偏光となっている。
また、超音波印加により得られたパターンシートが無偏光特性を有するかを調べる簡易な方法としては偏光シートを用いる。パターンシートと偏光シートを重ね、どちらか一方を360℃回転させ、透過光があれば無偏光特性を有することが確認できる。
【0049】
この超音波ホーンはパターンロールを有する成形機の第2(図1)、あるいは第3ロール(図3)に設置されている。超音波振動による摩擦熱を押出シートを介して押出シートとパターンロールの界面で発生させ、かつ超音波ホーンからの圧力を吸収せず押出シートをパターンロールに十分押し込むために押出シートが固化している必要がある。そのため、第2ロールに超音波ホーンを設置する場合、押出シートが固化した押さえロールとパターンロールの狭圧部以降に設置することが好ましい。
【0050】
また、成形機第2ロールに設置する場合は押出シートが保有する熱、また加熱されたパターンロールの熱を最大限利用できるよう狭圧部にパターンロールの1/8円周長を加えた位置からシートがパターンロールから剥離するまでの間に設置することが好ましい。
【0051】
なお、狭圧部にパターンロールの1/8円周長を加えた位置以降とするのは、超音波ホーンが押さえロールとパターンロールの狭圧部に近い場合(1/8円周長未満)、超音波印加による振動が狭圧部に影響し、押出シートの幅方向に平行な段々状のスジが発生することがあるからである。
【0052】
第3ロールにパターンロールと超音波ホーンを設置する場合は、超音波印加前に押出シートが冷却されすぎないよう、第2ロールは通常より高温にすることが好ましい。そうすることで、パターン転写を十分に行うことができる。
【0053】
超音波ホーンの材質はチタン合金、アルミ合金、スチール等の金属であり、好ましくは表面にクロムメッキ処理を施していることを特徴とする。好ましくはチタン合金を使用し、さらにクロムメッキ処理を施すとよい。このホーンに強度特性に劣る金属を使用し、またはクロムメッキ処理を施さない場合、ホーンの耐傷性、耐摩耗性より、長期間使用することができない。
【0054】
パターンロール14としては表面が金属、セラミック、樹脂等に限定されないが、耐熱性、耐擦性、パターン加工特性を考慮し、金属が好ましい。
【0055】
超音波ホーン16はホーン幅方向がパターンロールの軸方向に平行となるようにする。非平行の場合、シート全面にパターンを転写することができないからである。
【0056】
また、超音波ホーン16はホーン幅150mmを越える場合、ホーン内側をくりぬき空洞を持たせることが好ましい。そうすることで、ホーン幅方向の超音波印加に均整度を得ることができる(図4)。また、ホーンに空洞を持たない場合は狭幅のホーンを複数並列し、均整度を得ることも可能である(図5)。
【0057】
超音波ホーン表面は鏡面であることを特徴とする。ホーン表面に凹凸等がある場合、超音波の印加にともないホーン表面の凹凸が押出シートに転写され、またキズの原因となる。
【0058】
超音波ホーン16の長さは10mm以上200mm以下であることを特徴とする。ホーン長さが10mm以上200mm以下であれば、押出シートに十分な超音波を印加することができる。一方、ホーン長さが10mm未満の場合、ホーンの強度が低下し長期間の使用が難しい。またホーン長さが200mmより長い場合、ホーンの製造、および取り扱いが難しくなる。
【0059】
超音波ホーン先端形状は凹状(図6)、平面であり、好ましくは備え付けるパターンロールの曲率に沿って凹状であることを特徴とする。ホーン先端形状を凹状にすることでホーンから発生する超音波を全て押出シートに印加することができる。先端形状を平面にした場合、ホーン長さが長くても印加される超音波は限定されてしまう。
【0060】
超音波の周波数は20〜200kHzであり、好ましくは35〜100kHzであることを特徴とする。超音波の周波数を35〜100kHzにすることでパターンロール14の形状を転写するのに必要なエネルギーが得られる。周波数が20kHz未満だと印加箇所でキズが発生する場合があり、また200kHzより大きいと形状を転写するのに必要なエネルギーが得られない。
【0061】
超音波ホーンの振幅は5〜200μmであり、好ましくは20〜100μmであることを特徴とする。振幅を20〜100μmにすることでパターンロール14の形状を転写するのに必要なエネルギーを得ることができる。振幅が20μm未満、また200μmより大きいとパターンロール14の形状を転写するのに必要なエネルギーが得られない。
【0062】
パターンロール14の温度は5℃以上200℃以下であり、好ましくは80℃以上150℃以下であることを特徴とする。パターンロール14の温度を80℃以上150℃以下にすることでパターンロール14の形状を十分転写できる。また、パターンロール温度が80℃未満だと転写が不十分であり、150℃より高いと押出シートがパターンロール14から剥離した後、形状が崩れる。
【0063】
パターンロール14のパターン形状は特に限定されず、プリズム、レンチキュラー、マイクロレンズ、ピラミッド等、用途に応じて決定することができる。
【0064】
また本発明で製造したパターンシートの立体模様シート、およびフィルムは液晶テレビ、照明等の光学部材として用いられることを特徴とする。
【実施例1】
【0065】
耐熱透明性高機能樹脂のポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)、型番「L―1250Z」)を140℃、250Torrで24時間除湿乾燥した後、単軸押出機(口径32、L/D=24)にTダイ(有効幅330mm)を取付け、シート状に押出した。Tダイよりシート厚250μmになるように吐出した。本発明に係る超音波ホーンは日本エマソン(株)製を使用し、周波数35kHz、振幅75μmとした。また、超音波ホーンは成形機の第1ロール(押さえロール15)と第2ロール(パターンロール14)に取り付けたパターンロールの狭圧部から120mm後方に設置した。ホーンは材質チタン合金、クロムメッキ処理を施した鏡面のものを使用し、幅250mm、長さ15mm、そしてパターンロールに対する面を凹状とした。ホーンは2箇所の空洞を有するものを使用した。第1ロールは直径160mm、幅400mmのゴムロールを使用した。パターンロール14は直径300mm、幅400mmの金属ロールに横断面形状が頂角90°、ピッチ100μm、高さ50μmの二等辺三角形を平行に多数連接させたパターンを金属ロール上に380mm配した。溶融樹脂をパターンロール(温度100〜140℃)と超音波ホーンで5.6kgf/cm2で狭圧し、パターンシートを成形した。第3ロールの温度は30〜50℃とし、運転ラインの速度は1.5m/分で運転した。また、単軸押出機のスクリュー回転数を調整することでシート厚み50μm、1.0mmになるように吐出し、同条件でパターンを転写したがシートには限定しない。
【0066】
(比較例1)
超音波ホーンを使用しない以外は実施例1と同様の条件でパターンシートを成形した。
【0067】
(比較例2)
第1、および第2ロール(パターンロール14)の温度をポリカーボネート樹脂のガラス転移温度以上の180℃に設定した以外は実施例1と同様の条件でパターンシートを成形した。
【0068】
(比較例3)
超音波ホーンを第2ロール(パターンロール14)下面以降で押出シートがパターンロール14から剥離する30mm前方に設置した以外は実施例1と同様の条件でパターンシートを成形した。
【実施例2】
【0069】
超音波ホーンを成形機の第1ロール(押さえロール15)と第2ロール(パターンロール14)に取り付けたパターンロールの狭圧部から120mm後方に設置し、また、成形機第3ロールにも取り付けたパターンロール14に対しシート抱込みから剥離の中間に設置することで押出シート両面にパターンを転写させた。第3ロールのパターンロール温度を100℃とした以外は実施例1と同様の条件とした。
【0070】
上記パターンシートについて、下記項目の評価を行い、その結果を図7、8に示した。
また、超音波印加により得たパターンシートを液晶テレビに使用することは有効であった。
【0071】
なお、パターンシートの中央付近について、パターン深さを測定し、それをパターンロールのパターン深さで除した数値に100を乗じたものの値をパターン転写率とした。
【産業上の利用可能性】
【0072】
超音波ホーンを押出成形機に設置することで、高い精度でパターンロールのパターンを転写させることが可能である。
【符号の説明】
【0073】
11 ホッパー
12 押出機
13 Tダイ
14 パターンロール
15 押さえロール
16 超音波ホーン
17 ガイドロール
18 巻取り機
21 押さえロールとパターンロールにより狭圧されることで転写した部分
22 超音波印加により転写された部分
31 ホーン空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形機のTダイでシートを吐出する工程と、
前記Tダイから吐出されたシートを、押さえロールとパターンロールとで狭圧することにより、前記パターンロールのパターンを転写し、パターンシートに成形するパターンシート成形工程と、
前記成形されたパターンシートを搬送し巻取る工程を有するパターンシートの製造方法であって、
前記パターンシート成形工程において、前記押さえロールと前記パターンロールとで前記シートを狭圧した後、前記パターンロールの回転方向に一定長前記パターンロールで前記シートを抱込むようにし、
前記シートが前記押さえロールと前記パターンロールとで狭圧される狭圧位置から前記シートが前記パターンロールから剥離する剥離位置までの間に前記シートに超音波を印加する、
パターンシート製造方法。
【請求項2】
前記シートに前記超音波を印加することで前記シートに選択的溶融を生じさせると共に断続的押し込み力を作用させ高転写率のパターンシートに加工する請求項1記載のパターンシート製造方法。
【請求項3】
前記超音波は、前記狭圧位置に前記パターンロールの1/8円周長を加えた位置から前記剥離位置の間の箇所で印加する請求項1記載のパターンシート製造方法。
【請求項4】
前記超音波は、超音波ホーンをホーン幅方向が前記パターンロール軸方向に平行になるように前記シートに向けて設置することで印加する請求項1記載のパターンシート製造方法。
【請求項5】
押出成形機のTダイでシートを吐出する工程と、
前記Tダイから吐出されたシートを、押さえロールと金属ロールで前記Tダイから吐出されたシートを狭圧し、フラットシートに成形する工程と、
前記成形されたフラットシートをパターンロールで前記パターンロールの回転方向に一定長抱込むことで、前記パターンロールのパターンを転写しパターンシートに成形するパターンシート成形工程と、
前記成形されたパターンシートを搬送し巻取る工程を有するパターンシートの製造方法であって、
前記パターンシート成形工程において、前記パターンロールに抱込ませている前記シートに超音波を印加する、
パターンシート製造方法。
【請求項6】
前記シートに前記超音波を印加することで前記シートに選択的溶融を生じさせると共に断続的押し込み力を作用させ高転写率のパターンシートに加工する請求項5記載のパターンシート製造方法。
【請求項7】
前記超音波は、前記フラットシートが前記パターンロールに抱込まれ始めてから、前記パターンロールから剥離するまでの間の中間で印加する請求項5記載のパターンシート製造方法。
【請求項8】
前記超音波は、超音波ホーンをホーン幅方向が前記パターンロール軸方向に平行になるように前記シートに向けて設置することで印加する請求項5記載のパターンシート製造方法。
【請求項9】
押出成形機のTダイでシートを吐出する工程と、
前記Tダイから吐出されたシートを、押さえロールと第1のパターンロールとで狭圧することにより、前記シートの一方の面に前記第1のパターンロールのパターンを転写して成形する第1のパターンシート成形工程と、
前記成形されたパターンシートを第2のパターンロールで前記第2のパターンロール回転方向に一定長抱込むことで、前記シートの他方の面に前記第2のパターンロールのパターンを転写して成形する第2のパターンシート成形工程と、
前記成形されたパターンシートを搬送し巻取る工程を有するパターンシートの製造方法であって、
前記第1のパターンシート成形工程において、前記押さえロールと前記第1のパターンロールとで前記シートを狭圧した後、前記第1のパターンロールの回転方向に一定長前記第1のパターンロールで前記シートを抱込むようにし、
前記シートが前記押さえロールと前記第1のパターンロールとで狭圧される狭圧位置から前記シートが前記第1のパターンロールから剥離する剥離位置までの間に前記シートに超音波を印加し、
前記第2のパターンシート成形工程において、前記第2のパターンロールに抱込ませている前記シートに超音波を印加する、
パターンシート製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかのパターンシート製造方法で製造したパターンシートであって、前記パターンシートは無偏光特性を特徴とするパターンシート。
【請求項11】
シートを吐出する押出成形機のTダイと、
前記Tダイから吐出されたシートにパターンを転写するために、押さえロールと共に前記シートを狭圧し、その後に前記シートを一定長抱込むパターンロールと、
前記押さえロールと前記パターンロールとで前記シートを狭圧する狭圧位置から前記シートが前記パターンロールから剥離する剥離位置までの間に前記シートに超音波を印加する超音波ホーンと、
前記成形されたパターンシートを搬送する搬送ロールと、
前記パターンシートを巻取る巻取りロールと、
を有するパターンシート製造装置。
【請求項12】
シートを吐出する押出成形機のTダイと、
前記Tダイから吐出されたシートを両面から狭圧し、フラットシートに成形する押さえロールと金属ロールと、
前記成形されたフラットシートにパターンを転写するために前記フラットシートを回転方向に一定長抱込むパターンロールと、
前記パターンロールに抱込ませている前記シートに超音波を印加する超音波ホーンと、
前記成形されたパターンシートを搬送する搬送ロールと、
前記パターンシートを巻取る巻取りロールと、
を有するパターンシート製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−62972(P2011−62972A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217082(P2009−217082)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】