説明

超音波診断装置、画像処理装置、及び画像処理プログラム

【課題】診断の客観性を担保し、診断の精度を向上させることが可能な超音波診断装置を提供する。
【解決手段】モデル画像データ生成部8は、健常な被検者を超音波で撮影することで取得された時系列的に連続する複数の断層像データに基づいて、所望の診断部位を模した、時系列的に連続する複数のモデル画像データを生成する。表示制御部6は、診断対象となる被検者を超音波で撮影することで取得された時系列的に連続する複数の断層像データのうち、所定の時相で取得された断層像データに基づく断層像に、その時相で取得されたモデル画像の位置と大きさを一致させ、複数の断層像に複数のモデル画像を重ね、それらを同期させて表示部71に連続して表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体内に超音波を送信し、被検体内からの反射波を受信することにより被検体内の診断情報を得る超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、虚血性心疾患の診断においては、超音波診断装置を用いた心臓の負荷診断(ストレス・エコー法)という手法が行われている(例えば特許文献1)。ストレス・エコー法では、被検者の心臓に負荷を加えていない状態で撮影を行うことにより、通常状態における超音波画像データ(動画像データ)を取得し、さらに、所定の負荷を加えた状態で撮影を行うことにより、負荷状態における超音波画像データ(動画像データ)を取得する。そして、医師が、通常状態で取得された超音波画像(動画像)と、負荷状態で取得された超音波画像(動画像)を観察し、それぞれの状態における心臓左心室の心筋の伸縮運動を評価し、心筋の動きから心筋への血液の環流異常を推測する。
【0003】
血流の環流異常を評価する場合、例えば、アメリカ心エコー図学会(ASE:American Society of Echocardiography)の16分割法が採用されている。この16分割法は、心臓における動脈の枝分れに基づいて左心室の心筋を16の領域(セグメント)に分割し、各領域の動きを評価する方法である。
【0004】
また、ストレス・エコー法で心筋の動きを評価する場合、点数化(WMS:Wall Motion Scoring)という方法が採用されている。この点数化は、16分割法で心筋を16の領域に分割し、医師が超音波画像(動画像)上の各領域の動きを観察して各領域に点数を付けることで、各領域の動きを評価する方法である。例えば、所定の基準に従って1点を正常とし、5点を異常とした場合、医師が各領域の動きを観察して、各領域に1点〜5点の点数を付けることで各領域の動きを評価する。このように、ストレス・エコー法における点数化では、表示装置に表示されている超音波画像(動画像)を医師が目視によって観察することで、左心室の心筋の動きを評価している。
【0005】
また、心筋の点数化を行う場合、心臓を複数の異なる位置から撮影することで、複数の断面における超音波画像データ(動画像データ)を取得する。例えば、超音波プローブを、被検者の体表上の複数の異なる位置に当てて撮影を行うことにより、各位置における超音波画像データ(動画像データ)を取得する。そして、複数の断面における超音波画像(動画像)を表示装置の画面に同時に表示し、複数の異なる方向から心筋の動きを観察することで、心筋の点数化が行われている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−285066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ストレス・エコー法による心筋の動きの評価は、検査技師や医師などの観察者の目視に基づいて行われるため、評価は観察者の判断に依存し、主観的な評価となる。そのため、診断結果にばらづきが含まれてしまう問題がある。その評価のレベル差を是正する訓練などが行われているが、医療関係者間での横展開は困難であり、かつ、それをサポートすべき自動解析機能も技術的な課題を抱えている。
【0008】
この発明は上記の問題点を解決するものであり、診断の客観性を担保し、診断の精度を向上させることが可能な超音波診断装置、画像処理装置、及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、被検者を超音波で撮影することで予め取得された時系列的に連続する複数の第1超音波画像データのそれぞれに基づいて予め生成された、時間経過に伴って変動する所望の診断部位を模した時系列的に連続する複数のモデル画像データを記憶するモデル画像データ記憶手段と、診断対象となる被検者を超音波で撮影することで、時系列的に連続する複数の第2超音波画像データを取得する画像データ取得手段と、前記複数の第2超音波画像データに表される前記所望の診断部位と同一の診断部位に、前記モデル画像データに基づくモデル画像の位置と大きさを一致させる画像調整手段と、前記第2超音波画像データに基づく第2超音波画像に前記モデル画像データに基づくモデル画像を重ねて、時系列に沿って前記複数の第2超音波画像と前記複数のモデル画像を表示手段に表示させる画像再生手段と、を有することを特徴とする超音波診断装置である。
【0010】
請求項12に記載の発明は、被検者を超音波で撮影することで予め取得された時系列的に連続する複数の第1超音波画像データのそれぞれに基づいて予め生成された、時間経過に伴って変動する所望の診断部位を模した時系列的に連続する複数のモデル画像データを記憶するモデル画像データ記憶手段と、診断対象となる被検者を超音波で撮影することで取得された時系列的に連続する複数の第2超音波画像データを受けて、前記複数の第2超音波画像データに表される前記所望の診断部位と同一の診断部位に、前記モデル画像データに基づくモデル画像の位置と大きさを一致させる画像調整手段と、前記第2超音波画像データに基づく第2超音波画像に前記モデル画像データに基づくモデル画像を重ねて、時系列に沿って前記複数の第2超音波画像と前記複数のモデル画像を連続して表示手段に表示させる画像再生手段と、を有することを特徴とする画像処理装置である。
【0011】
請求項13に記載の発明は、コンピュータに、被検者を超音波で撮影することで予め取得された時系列的に連続する複数の第1超音波画像データのそれぞれに基づいて予め生成された、時間経過に伴って変動する所望の診断部位を模した時系列的に連続する複数のモデル画像データを受けて、さらに、診断対象となる被検者を超音波で撮影することで取得された時系列的に連続する複数の第2超音波画像データを受けて、前記複数の第2超音波画像データに表される前記所望の診断部位と同一の診断部位に、前記モデル画像データに基づくモデル画像の位置と大きさを一致させる画像調整機能と、前記第2超音波画像データに基づく第2超音波画像に前記モデル画像データに基づくモデル画像を重ねて、時系列に沿って前記複数の第2超音波画像と前記複数のモデル画像を連続して表示手段に表示させる画像再生機能と、を実行させることを特徴とする画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によると、診断対象となる被検者を撮影することで取得された所望の診断部位の超音波画像に、その所望の診断部位を模したモデル画像を重畳させて表示し、時系列に沿って複数の超音波画像と複数のモデル画像を表示することで、超音波画像とモデル画像の動きの差異を観察することができる。このように、モデル画像を基準として、診断対象となる被検者の超音波画像の動きを客観的に評価できるため、診断の客観性が担保され、診断の精度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(構成)
この発明の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。まず、この実施形態に係る超音波診断装置の構成について図1を参照して説明する。図1は、この発明の実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【0014】
超音波プローブ2は、複数の超音波振動子が所定方向(走査方向)に1列に配列された1次元超音波プローブ、又は、複数の超音波振動子がマトリックス(格子)状に配置された2次元超音波プローブからなり、被検体に対して超音波を送信し、被検体からの反射波をエコー信号として受信する。
【0015】
送受信部3は送信部と受信部とを備え、制御部9の制御の下、超音波プローブ2に電気信号を供給して超音波を発生させるとともに、超音波プローブ2が受信したエコー信号を受信する。送受信部3から出力されるデータは画像生成4に出力される。
【0016】
送信部の具体的な構成について説明すると、送信部は、図示しないクロック発生回路、送信遅延回路、及びパルサ回路を備えている。クロック発生回路は、超音波信号の送信タイミングや送信周波数を決めるクロック信号を発生する回路である。送信遅延回路は、超音波の送信時に遅延を掛けて送信フォーカスを実施する回路である。パルサ回路は、各超音波振動子に対応した個別経路(チャンネル)の数分のパルサを内蔵し、遅延が掛けられた送信タイミングで駆動パルスを発生し、超音波プローブ2の各超音波振動子に供給するようになっている。
【0017】
また、送受信部3内の受信部は、図示しないプリアンプ回路、A/D変換回路、及び受信遅延・加算回路を備えている。プリアンプ回路は、超音波プローブ2の各超音波振動子から出力されるエコー信号を受信チャンネルごとに増幅する。A/D変換回路は、増幅されたエコー信号をA/D変換する。受信遅延・加算回路は、A/D変換後のエコー信号に対して受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、加算する。その加算により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。なお、この送受信部3によって加算処理された信号を「RFデータ(または、生データ)」と称する。
【0018】
送受信部3から出力されるRFデータは、画像生成部4に出力される。画像生成部4は、Bモード処理部やCFM処理部などの信号処理部とDSCを含んで構成され、送受信部3から出力されたRFデータに基づいて断層像データなどの超音波画像データを生成する。
【0019】
例えば、Bモード処理部はエコーの振幅情報の映像化を行い、エコー信号から超音波ラスタデータを生成する。具体的には、RFデータに対してバンドパスフィルタ処理を行い、その後、出力信号の包絡線を検波し、検波されたデータに対して対数変換による圧縮処理を施す。
【0020】
DSC(Digital Scan Converter:デジタルスキャンコンバータ)は、直交座標系で表される画像を得るために、超音波ラスタデータを直交座標で表される画像データに変換する(スキャンコンバージョン処理)。例えば、DSCは、Bモード超音波ラスタデータに基づいて2次元情報としての断層像データを生成する。
【0021】
画像生成部4によって生成された断層像データは画像記憶部5に記憶される。そして、その断層像データは、表示制御部6を介して表示部71に出力され、表示部71にその断層像データに基づく断層像が表示される。
【0022】
そして、時間的に連続して撮影することで、画像生成部4は、時系列的に連続する複数の断層像データを生成し、それらを動画像データとして画像記憶部5に記憶する。
【0023】
さらに、この実施形態では、心電計によって被検者の心電信号(ECG信号)を取得する。このECG信号は制御部9に出力され、制御部9は、そのECG信号を断層像データに付帯させて画像記憶部5に記憶させる。
【0024】
また、画像生成部4は、制御部9の制御の下、様々な画像処理を行なうようにしてもよい。例えば、画像生成部4は、複数の断層像データに基づいてボリュームデータを生成し、そのボリュームデータに対してボリュームレンダリングやMPR処理(Multi Plannar Reconstruction)などの画像処理を施すことで、3次元画像データや任意断面のMPR画像データなどの画像データを生成してもよい。
【0025】
なお、超音波プローブ2、送受信部3、画像生成部4、及び制御手段9がこの発明の「画像データ取得手段」の1例に相当する。
【0026】
モデル画像データ生成部8は、画像抽出部81、モデル化部82、標準偏差算出部83、及びモデル画像データ記憶部84を備えて構成されている。モデル画像データ生成部8は、画像記憶部5に記憶されている断層像データを読み込み、その断層像データから所望の診断部位を表す画像データを抽出して、その抽出した画像データを模式化することで、診断部位の模式的な画像を表すモデル画像データ(2次元画像データ)を生成する。
【0027】
画像抽出部81は、画像記憶部5に記憶されている断層像データを読み込んで、その断層像データから予め設定された診断部位を表す画像データを抽出する。例えば、心臓の心筋が診断部位として設定されている場合、画像抽出部81は、心臓を表す断層像データを画像記憶部5から読み込み、その断層像データから心筋を表す画像データを抽出する。この画像抽出部81による画像抽出処理には、公知の方法を用いることができる。
【0028】
また、時間列的に連続する複数の断層像データからなる動画像データが画像記憶部5に記憶されている場合、画像抽出部81は、画像記憶部5から動画像データを読み込み、その動画像データを構成する各フレームの断層像データのそれぞれから、予め設定された診断部位(例えば心筋)を表す画像データを抽出する。
【0029】
モデル化部82は、画像抽出部81によって抽出された画像データに基づいて、診断部位の形状を表す模式的な画像データ(モデル画像データ)を生成する。例えば、モデル化部82は、抽出された画像データに表されている診断部位の輪郭をとって、その輪郭を表す画像データをモデル画像データとして生成する。動画像データを構成する各フレームの超音波画像データのそれぞれから診断部位を表す画像データが抽出されている場合、モデル化部82は、各フレームのモデル画像データを生成する。このように、モデル化部82は、時系列的に連続する複数のモデル画像データ(動画像データ)を生成することで、動画像としてのモデル画像データを生成する。
【0030】
モデル化部82によって生成されたモデル画像データは、モデル画像データ記憶部84に記憶される。断層像データにはECG信号が付帯されているため、モデル化部82によって生成されたモデル画像データにも、そのECG信号が付帯されてモデル画像データ記憶部84に記憶される。
【0031】
例えば、画像抽出部81にて、心臓の断層像データから心筋を表す画像データが抽出されている場合、モデル化部82は、その心筋の輪郭をとって、その輪郭を表す画像データをモデル画像データ(心筋の形状を模した画像データ)として生成する。
【0032】
標準偏差算出部83は、モデル化部82にて生成されたモデル画像データを受けて、そのモデル画像データの所定位置における長さを求める。例えば、モデル化部82にて心筋のモデル画像データが生成された場合、標準偏差算出部83は、その心筋のモデル画像データにおいて予め設定された位置における心筋の幅を求める。そして、標準偏差算出部83は、複数の異なる被検者を対象として取得された複数のモデル画像データのそれぞれから、予め設定された位置における心筋の幅を求め、複数の心筋の幅の標準偏差を求める。
【0033】
例えば、標準偏差算出部83は、時系列的に連続する複数のモデル画像データ(動画像データ)のうち、拡張末期におけるモデル画像データを対象として、予め設定された位置における心筋の幅を求める。モデル画像データにはECG信号が付帯されており、R波が検出された時相に取得された断層像データは、心臓の拡張末期に取得されたものであるため、標準偏差算出部83は、R波が検出された時相に取得された断層像データに基づくモデル画像データを対象として、予め設定された位置における心筋の幅を求める。そして、標準偏差算出部83は、複数の異なる被検者を対象として生成された複数のモデル画像データについて、心筋の幅を求め、複数の心筋の幅の標準偏差を求める。
【0034】
表示制御部6は、画像読み込み部61、画像再生部62、及び画像調整部63を備えて構成され、画像記憶部5に記憶されている断層像データを読み込み、その断層像データに基づく断層像を表示部71に表示させる。例えば、表示制御部6は、時系列的に連続する複数の断層像データに基づく断層像を連続して表示部71に表示させる。これにより、断層像は動画像として観察者に認識されることになる。さらに、表示制御部6は、モデルデータ記憶部84からモデル画像データを読み込んで、断層像にそのモデル画像データに基づくモデル画像を重畳して表示部71に表示させる。
【0035】
画像読み込み部61は、操作者によって指定された断層像データを画像記憶部5から読み込み、さらに、モデルデータ記憶部83に記憶されているモデル画像データを読み込む。断層像データが動画像データとして画像記憶部5に記憶されている場合、画像読み込み部61は、動画像データを構成する時系列的に連続する複数の断層像データを画像記憶部5から読み込む。また、モデル画像データが動画像データとしてモデル画像データ記憶部84に記憶されている場合、画像読み込み部61は、動画像を構成する時系列的に連続する複数のモデル画像データを画像記憶部5から読み込む。
【0036】
画像再生部62は、画像読み込み部61によって読み込まれた断層像データに基づく断層像を表示部71に表示させる。画像読み込み部61によって時系列的に連続する複数の断層像データが読み込まれた場合、画像再生部62は、それら複数の断層像データを連続して表示部71に表示させることで、表示部71に動画像を表示させることができる。このように、画像再生部62は、ある時点で取得された断層像(静止画像)を表示部71に表示させたり、時系列的に連続する複数の断層像を連続して表示部71に表示させたりすることができる。
【0037】
さらに、画像再生部62は、画像読み込み部61によって読み込まれたモデル画像データに基づくモデル画像を断層像に重畳して表示部71に表示させる。画像読み込み部61によって時系列的に連続する複数の断層像データと、時系列的に連続する複数のモデル画像データが読み込まれた場合、画像再生部62は、それら複数のモデル画像データに基づく複数のモデル画像を複数の断層像に重畳し、連続して表示部71に表示させることで、表示部71に断層像とモデル画像の動画像を表示させることができる。
【0038】
また、画像再生部62は、モデル画像を半透明にして断層像に重畳して表示部71に表示させる。これにより、断層像が透過されて表示部71に表示され、断層像とモデル画像との対比が容易になる。
【0039】
画像調整部63は、画像読み込み部61から断層像データとモデル画像データを受けて、断層像上に設定された診断部位の輪郭と、モデル画像が表す輪郭の位置と大きさが一致するように、表示部71におけるモデル画像が表す輪郭の表示位置と大きさを変える。
【0040】
ここで、心臓の心筋を診断部位として観察する場合における、画像再生部62と画像調整部63による処理内容について説明する。断層像データにはECG信号が付帯されているため、画像再生部62は、画像読み込み部61によって読み込まれた時系列的に連続する複数の断層像データから、そのECG信号に基づいて、予め設定された時相に取得された断層像データに基づく断層像を表示部71に表示させる。
【0041】
例えば、R波が検出された時相に取得された断層像データは、心臓の拡張末期に取得されたものであるため、画像再生部62は、R波が検出された時相に取得された断層像データに基づく断層像を表示部71に表示させることで、拡張末期の断層像が表示部71に表示させられる。
【0042】
ここで、表示部71に表示される断層像の1例について図2を参照して説明する。図2は、断層像を示す画面の図である。図2(a)に示すように、画像再生部62は、拡張末期の断層像100を表示部71に表示させる。
【0043】
図2(a)に示すように、画像再生部62が、拡張末期の断層像100を表示部71に表示させている状況で、操作者が入力部72を用いて、断層像100上の所定の特徴点を指定する。この特徴点は、断層像の診断部位とモデル画像の位置と大きさを合わせる際の基準となる点である。心臓の心筋を観察する場合、特徴点の1例として、図2(a)に示すように、操作者は入力部72を用いて、僧帽弁弁輪部部分102、103と、心尖側の内膜部101の3点を指定する。
【0044】
画像調整部63は、操作者によって指定された3つの特徴点101、102、103の座標情報をユーザインタフェース7から受けると、3つの特徴点101、102、103で形成される輪郭にモデル画像が表す輪郭の位置と大きさが一致するように、モデル画像が表す輪郭の位置と大きさを変える。
【0045】
モデル画像データにはECG信号が付帯されているため、画像調整部63は、画像読み込み部61によって読み込まれた時系列的に連続する複数のモデル画像データのうち、そのECG信号に基づいて、予め設定された時相におけるモデル画像が表す輪郭の表示位置と大きさを変える。
【0046】
例えば、R波が検出された時相におけるモデル画像は、拡張末期の心筋の形状を表すモデル画像であるため、画像調整部63は、R波が検出された時相におけるモデル画像が表す輪郭の位置と大きさを変更して、3つの特徴点101、102、103で形成される輪郭にモデル画像が表す輪郭の位置と大きさを一致させる。
【0047】
画像調整部63によってモデル画像が表す輪郭の位置と大きさが調整させられると、画像再生部62は、拡張末期の時相からスタートして、時系列的に連続する複数の断層像を連続して表示部71に表示させることで、動画像として表示させ、さらに、拡張末期の時相からスタートして、時系列的に連続する複数のモデル画像を連続して表示部71に表示させることで、動画像として表示させる。これにより、心臓の動画像が表示され、その心臓の動画像に重畳して心筋の模式的な動画像が表示されることになる。
【0048】
以上のように、拡張末期の断層像とモデル画像を用いて両画像の位置と大きさを合わせ、さらに、その拡張末期の時相からスタートして、両画像を連続表示させることで、両動画像が同期して表示部71に表示させられることになる。
【0049】
また、画像再生部62は、断層像データに付帯されたECG信号の周期(1心拍の長さ)に合わせて、複数のモデル画像の表示速度を変えてもよい。これにより、ECG信号の周期(1心拍の長さ)が、断層像とモデル画像とで異なっていても、断層像とモデル画像を同期させて表示部71に表示させることができる。
【0050】
以上のように、この実施形態に係る超音波診断装置1によると、診断対象となる被検者の断層像の動きと、健常な被検者のモデル画像の動きを比較して観察することができる。このように、モデル画像を基準として、診断対象となる被検者の断層像の動きを客観的に評価できるため、診断の客観性が担保され、診断の精度を向上させることが可能となる。
【0051】
例えば、健常な被検者の心臓の断層像データに基づいて心筋のモデル画像データを生成し、診察対象となる被検者から取得された心臓の断層像と、その心筋のモデル画像とを重畳させて表示部71に表示する。これにより、観察者は、断層像に表された心筋の動きと、モデル画像の動きの異なる部分を観察することで、診察対象となる被検者の心筋の動きを客観的に評価することができる。このように断層像とモデル画像を比較することで、診断の客観性が得られ、診断の精度を向上させることが可能となり、診断効率を向上させることが可能となる。
【0052】
ユーザインタフェース(UI)7は、表示部71と入力部72を備えている。表示部71はCRTや液晶ディスプレイなどのモニタで構成され、表示制御部6からのビデオ信号に基づいて、画面上に断層像、3次元画像又は血流情報など超音波画像を表示させ、さらに、モデル画像を表示する。
【0053】
入力部72は、操作者からの各種指示、関心領域(ROI)の設定指示、画質条件の設定指示、又は画像処理条件の設定指示などの各種指示の入力を受け付ける。この入力部72は、ジョイスティックやトラックボールなどのポインティングデバイス、スイッチ、各種ボタン、キーボード又はTCS(Touch Command Screen)などで構成されている。
【0054】
制御部9は、超音波診断装置1の各部に接続され、超音波診断装置1の動作を制御する。この制御部9は、図示しないCPUと、ROMやRAMなどの記憶装置を備えて構成されている。記憶装置には、超音波診断装置1の各部の動作を制御するための制御プログラムが記憶されている。そして、CPUが、記憶装置からその制御プログラムを読み込んで実行することで、超音波診断装置1の動作を制御する。
【0055】
また、表示制御部6は、図示しないCPUと、ROM、RAM、HDDなどの記憶装置を備えて構成されている。記憶装置には、画像読み込み部61の機能を実現するための画像読み込みプログラム、画像再生部62の機能を実現するための画像再生プログラム、及び画像調整部63の機能を実現するための画像調整プログラムが記憶されている。CPUが、記憶装置から画像読み込みプログラムを読み込んで実行することで、画像読み込み部61の動作を実行する。また、CPUが、記憶装置から画像再生プログラムを読み込んで実行することで、画像再生部62の動作を実行する。さらに、CPUが、記憶装置から画像調整プログラムを読み込んで実行することで、画像調整部63の動作を実行する。
【0056】
また、モデル画像データ生成部8は、図示しないCPUと、ROM、RAM、HDDなどの記憶装置を備えて構成されている。記憶装置には、画像抽出部81の機能を実現するための画像抽出プログラム、モデル化部82の機能を実現するためのモデル化プログラム、及び、標準偏差算出部83の機能を実現するための標準偏差算出プログラムが記憶されている。CPUが、記憶装置から画像抽出プログラムを読み込んで実行することで、画像抽出部81の動作を実行する。また、CPUが、記憶装置からモデル化プログラムを読み込んで実行することで、モデル化部82の動作を実行する。さらに、CPUが、記憶装置から標準偏差算出プログラムを読み込んで実行することで、標準偏差算出部83の動作を実行する。
【0057】
なお、モデル画像データ生成機能を実現する画像抽出プログラムとモデル化プログラム、及び画像調整機能を実現する画像調整プログラムが、この発明の画像処理プログラムの1例を構成する。
【0058】
なお、この実施形態に係る超音波診断装置1は、モデル画像データ生成部8を備えていなくてもよい。例えば、モデル画像データ生成部8を情報処理装置として、超音波診断装置1の外部に設置してもよい。
【0059】
また、この発明の別の形態として、表示制御部6、ユーザインタフェース7、及びモデル画像データ生成部8を備えた画像処理装置としてもよい。この場合、画像処理装置は、健常な被検者を超音波診断装置で撮影することで取得された時系列的に連続する複数の断層像データを受けて、所望の診断部位を模した時系列的に連続する複数のモデル画像データを生成する。そして、画像処理装置は、診断対象となる被検者を超音波診断装置で撮影することで取得された時系列的に連続する複数の超音波画像データに表される所望の診断部位に、モデル画像データに基づくモデル画像の位置と大きさを一致させる。そして、画像処理装置は、複数の超音波画像データに基づく複数の超音波画像に、複数のモデル画像データに基づく複数のモデル画像を重ね、複数の超音波画像と複数のモデル画像を同期させて、連続してユーザインタフェース7に表示する。このように、画像処理装置とした場合であっても、上述した超音波診断装置1と同じ効果を奏することが可能となる。
【0060】
(動作)
次に、この発明の実施形態に係る超音波診断装置1による一連の動作について、図2から図4を参照して説明する。図3は、モデル画像データを生成するための動作を示すフローチャートである。図4は、断層像にモデル画像を重畳して表示するための動作を示すフローチャートである。ここでは、心臓の心筋を診断部位として、心筋の動きを評価する場合について説明する。
【0061】
<モデル画像データの生成>
まず、図3のフローチャートを参照しながら、モデル画像データを生成するための動作について説明する。
【0062】
(ステップS01)
まず、モデル画像データを作成するために、健常な被検者の心臓を撮影する。超音波プローブ2を健常な被検者に当接した状態で、送受信部3は、超音波プローブ2によって健常な被検者の心臓に対して超音波を送信し、被検者からの反射波を受信する。そして、画像生成部4は送受信部3からの出力に基づいて、健常な被検者の心臓の断層像データを生成する。そして、時間的に連続して撮影することで、画像生成部4は、時系列的に連続する複数の断層像データを生成し、それらを動画像データとして画像記憶部5に記憶する。なお、健常な被検者を撮影することで取得された断層像データが、この発明の「第1超音波画像データ」に相当する。
【0063】
また、心臓の撮影とともに、心電計によって健常な被検者のECG信号を取得する。制御部9は、超音波の送受信によって得られた動画像データにそのECG信号を付帯させて画像記憶部5に記憶させる。
【0064】
(ステップS02)
画像抽出部81は、画像記憶部5に記憶されている動画像データを読み込み、その動画像データの各フレームにおける断層像データから、診断部位である心筋を表す画像データを抽出する。つまり、画像抽出部81は、時系列的に連続する複数の断層像データのそれぞれから、心筋を表す画像データを抽出する。
【0065】
(ステップS03)
モデル化部82は、画像抽出部81によって抽出された画像データが表す心筋の輪郭をとって、その輪郭を表す画像データをモデル画像データ(心筋の形状を模した画像データ)として生成する。このとき、モデル化部82は、時系列的に連続する複数の画像データのそれぞれについて、モデル画像データを生成する。これにより、時系列的に連続する複数のモデル画像データが生成されることになる。これら複数のモデル画像データは、ECG信号が付帯されてモデル画像データ記憶部84に記憶される。
【0066】
そして、以上のステップS01からS03の処理を、複数の異なる健常な被検者に対して行うことで、モデル画像データ生成部8は、複数の異なる健常な被検者における時系列的に連続する複数のモデル画像データを生成し、モデル画像データ記憶部84に記憶する。
【0067】
(ステップS04)
標準偏差算出部83は、モデル化部82にて生成された心筋のモデル画像データにおいて、予め設定された位置における心筋の幅を求める。例えば、標準偏差算出部83は、モデル画像データに付帯されているECG信号に基づいて、R波が検出された時相におけるモデル画像データ(拡張末期におけるモデル画像データ)を対象として、予め設定された位置における心筋の幅を求める。そして、標準偏差算出部83は、複数の異なる被検者を対象として生成された複数のモデル画像データについて、拡張末期におけるモデル画像の心筋の幅を求める。
【0068】
(ステップS05)
標準偏差算出部83は、ステップS04にて求められた複数の心筋の幅の標準偏差を求める。
【0069】
<断層像とモデル画像との重畳表示>
次に、図4を参照しながら、断層像にモデル画像を重畳して表示するための動作について説明する。
【0070】
(ステップS10)
例えば、ストレス・エコー法の診断手順に従って、診察対象となる被検者の心臓を撮影する。超音波プローブ2を健常な被検者に当接した状態で、送受信部3は、超音波プローブ2によって被検者の心臓に対して超音波を送信し、被検者からの反射波を受信する。画像生成部4は送受信部3からの出力に基づいて、被検者の心臓の断層像データを生成する。そして、時間的に連続して撮影することで、画像生成部4は、時系列的に連続する複数の断層像データを生成し、それらを動画像データとして画像記憶部5に記憶する。なお、診断対象となる被検者を撮影することで取得された断層像データが、この発明の「第2超音波画像データ」に相当する。
【0071】
また、撮影とともに、心電計によって診断対象となる被検者のECG信号を取得する。制御部9は、動画像データにECG信号を付帯させて画像記憶部5に記憶させる。
【0072】
(ステップS11)
ステップS10にて取得された動画像データのうち、診断に用いる動画像データを、操作者が選択する。例えば、複数取得した動画像データのうち、心臓左心室の描画が良好な動画像を、操作者が選択する。画像読み込み部61は、操作者によって選択された動画像データを画像記憶部5から読み込み、画像再生部62は、その動画像データのうち、所望の時相に取得された断層像データに基づく断層像を表示部71に表示させる。例えば、図2(a)に示すように、画像再生部62は、R波が検出された時相に取得された断層像データに基づく断層像100(拡張末期の断層像)を表示部71に表示させる。
【0073】
(ステップS12)
操作者は、表示部71に表示されている断層像を観察し、入力部72を用いて特徴点を指定する。例えば、図2(a)に示すように、操作者は入力部72を用いて、断層像100に表された、僧帽弁弁輪部部分102、103と、心尖側の内膜部101の3点を指定する。
【0074】
(ステップS13)
画像読み込み部61は、モデル画像データ記憶部84から、モデル画像データ(動画像データ)を読み込む。例えば、画像読み込み部61は、心筋の幅が平均である(心筋の幅の正規分布の中心にある)モデル画像データ(動画像データ)を読み込む。
【0075】
(ステップS14)
モデル画像データにはECG信号が付帯されているため、画像調整部63は、画像読み込み部61によって読み込まれた時系列的に連続する複数のモデル画像データのうち、そのECG信号に基づいて、R波が検出された時相におけるモデル画像(拡張末期のモデル画像)が表す輪郭の位置と大きさを変更して、3つの特徴点101、102、103で形成される輪郭にモデル画像が表す輪郭の位置と大きさを合わせる。
【0076】
(ステップS15)
画像再生部62は、図2(b)に示すように、モデル画像110を半透明にして、断層像100に重畳して表示部71に表示させる。
【0077】
(ステップS16)
そして、画像再生部62は、拡張末期の時相からスタートして、時系列的に連続する複数の断層像を連続して表示部71に表示させ、さらに、拡張末期の時相からスタートして、時系列的に連続する複数のモデル画像を連続して表示部71に表示させる。これにより、断層像とモデル画像が同期して表示部71に表示されることになる。
【0078】
観察者は、心臓の断層像(動画像)の動きと、心筋のモデル画像(動画像)の動きの異なる部分を観察することで、診察対象となる被検者の心筋の動きを評価することができる。これにより、診断の客観性が得られ、診断の精度を向上させることが可能となる。例えば、断層像とモデル画像を比較することにより、被検者の心筋の動きが、モデル画像に対してどの程度ずれているかを認識することができ、心筋の動きの異常個所と異常の程度を認識することが可能となる。診断部位が心筋の場合、特に、心筋の厚さの変化に注目し、その厚さの変化の違いを認識することで、客観的な診断を行うことができる。
【0079】
例えば、図2(c)に示すように、モデル画像120と、断層像100に表されている心筋の形状が異なる場合は、その形状の差異から、異常の発見が容易になる。
【0080】
(変形例1)
次に、変形例1に係る超音波診断装置について、図5及び図6を参照して説明する。図5は、変形例に係る超音波診断装置による一連の動作を示すフローチャートである。図6は、断層像を示す画面の図である。
【0081】
(ステップS20)
上記実施形態のステップS10と同様に、ストレス・エコー法の診断手順に従って、診断対象となる被検者の心臓を撮影する。時間的に連続して撮影することで、画像生成部4は、時系列的に連続する複数の断層像データを生成し、それらを動画像データとして画像記憶部5に記憶する。また、撮影とともに、心電計によって診断対象となる被検者のECG信号を取得し、制御部9は、動画像データにECG信号を付帯させて画像記憶部5に記憶させる。
【0082】
(ステップS21)
そして、ステップS21にて取得された動画像データのうち、診断に用いる動画像データを、操作者が選択する。画像読み込み部61は、操作者によって選択された動画像データを画像記憶部5から読み込み、画像再生部62は、図2(a)に示すように、その動画像データのうち、拡張末期の断層像データに基づく断層像を表示部71に表示させる。
【0083】
(ステップS22)
操作者は、表示部71に表示されている断層像を観察し、入力部72を用いて、図2(a)に示すように、断層像100に表された、僧帽弁弁輪部部分102、103と、心尖側の内膜部101の3点を指定する。
【0084】
(ステップS23)
画像読み込み部61は、モデル画像データ記憶部84から、モデル画像データ(動画像データ)を読み込む。ここでは、画像読み込み部61は、心筋の幅が平均である(心筋の幅の正規分布の中心にある)モデル画像データ(動画像データ)、心筋の幅が平均から−1SDずれたモデル画像データ(動画像データ)、及び、心筋の幅が平均から1SDずれたモデル画像データ(動画像データ)を読み込む。
【0085】
(ステップS24)
モデル画像データにはECG信号が付帯されているため、画像調整部63は、画像読み込み部61によって読み込まれた時系列的に連続する複数のモデル画像データのうち、そのECG信号に基づいて、R波が検出された時相におけるモデル画像(拡張末期のモデル画像)が表す輪郭の位置と大きさを変更して、3つの特徴点101、102、103で形成される輪郭にモデル画像が表す輪郭の位置と大きさを合わせる。
【0086】
(ステップS25)
そして、画像再生部62は、図6に示すように、心筋の幅が平均であるモデル画像200を半透明にして、断層像100に重畳して表示部71に表示させる。さらに、画像再生部62は、1SDのモデル画像の輪郭201(図6中、一点鎖線で表示)と、−1SDのモデル画像の輪郭202(図6中、破線)を表示部71に表示させる。
【0087】
(ステップS26)
そして、画像再生部62は、拡張末期の時相からスタートして、時系列的に連続する複数の断層像を連続して表示部71に表示させ、さらに、拡張末期の時相からスタートして、時系列的に連続する複数のモデル画像を連続して表示部71に表示させる。これにより、断層像とモデル画像が同期して表示部71に表示されることになる。
【0088】
この変形例1によると、上記実施形態と同様に、診断の客観性が得られ、診断の精度を向上させることが可能となる。さらに、この変形例1では、心筋の幅が、平均からのずれが−1SDのモデル画像と1SDのモデル画像を同時に表示することで、健常な被検者の個々のばらつきを考慮に入れた診断が可能となる。
【0089】
また、平均からのずれを±1SDから±2SDに変えて、平均からのずれが±2SDのモデル画像を断層像に重畳して表示部71に表示してもよい。
【0090】
(変形例2)
次に、変形例2に係る超音波診断装置について、図7を参照して説明する。図7は、変形例2に係る超音波診断装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【0091】
(ステップS30)
上記実施形態のステップS10と同様に、ストレス・エコー法の診断手順に従って、診断対象となる被検者の心臓を撮影する。時間的に連続して撮影することで、画像生成部4は、時系列的に連続する複数の断層像データを生成し、それらを動画像データとして画像記憶部5に記憶する。また、撮影とともに、心電計によって診断対象となる被検者のECG信号を取得し、制御部9は、動画像データにECG信号を付帯させて画像記憶部5に記憶させる。
【0092】
(ステップS31)
そして、ステップS31にて取得された動画像データのうち、診断に用いる動画像データを、操作者が選択する。画像読み込み部61は、操作者によって選択された動画像データを画像記憶部5から読み込み、画像再生部62は、図2(a)に示すように、その動画像データのうち、拡張末期の断層像データに基づく断層像を表示部71に表示させる。
【0093】
(ステップS32)
表示制御部6は、拡張末期の断層像データから、パターンマッチングによって、僧帽弁弁輪部部分と心尖側の内膜部を検出する。このとき、表示制御部6は、僧帽弁弁輪部部分の2箇所をパターンマッチングによって検出し、その2箇所から心尖側の内膜部の位置を推定してもよい。
【0094】
(ステップS33)
そして、表示制御部6は、ステップS32にて検出した僧帽弁弁輪部部分と心尖側の内膜部を、モデル画像との位置合わせの基準となる特徴点として設定する。これにより、図2(a)に示すように、3つの特徴点101、102、103が設定されたことになる。
【0095】
(ステップS34)
画像読み込み部61は、モデル画像データ記憶部84から、モデル画像データ(動画像データ)を読み込む。ここでは、画像読み込み部61は、心筋の幅が平均である(心筋の幅の正規分布の中心にある)モデル画像データ(動画像データ)を読み込む。
【0096】
(ステップS35)
モデル画像データにはECG信号が付帯されているため、画像調整部63は、画像読み込み部61によって読み込まれた時系列的に連続する複数のモデル画像データのうち、そのECG信号に基づいて、R波が検出された時相におけるモデル画像(拡張末期のモデル画像)が表す輪郭の位置と大きさを変更して、3つの特徴点101、102、103で形成される輪郭にモデル画像が表す輪郭の位置と大きさを合わせる。
【0097】
(ステップS36)
画像再生部62は、図2(b)に示すように、モデル画像110を半透明にして、断層像100に重畳して表示部71に表示させる。
【0098】
(ステップS37)
そして、画像再生部62は、拡張末期の時相からスタートして、時系列的に連続する複数の断層像を連続して表示部71に表示させ、さらに、拡張末期の時相からスタートして、時系列的に連続する複数のモデル画像を連続して表示部71に表示させる。これにより、断層像とモデル画像が同期して表示部71に表示されることになる。
【0099】
この変形例2によると、上記実施形態と同様に、診断の客観性が得られ、診断の精度を向上させることが可能となる。
【0100】
また、上記実施形態及び変形例では、2次元画像としての断層像に2次元画像としてのモデル画像を重ねて表示したが、3次元画像を対象としてもよい。この場合、画像調整部63は、画像生成部4によって生成されたボリュームデータにおいて、予め設定された断面又は操作者によって指定された断面の断層像に表される診断部位の輪郭に、健常な被検者から得られたモデル画像が表す輪郭の位置と大きさを一致させる。例えば、画像調整部63は、長軸の2断面で断層像に表される診断部位の輪郭と、モデル画像に表される輪郭の位置と大きさを一致させる。このように、3次元画像を対象とした場合であっても、2次元画像の断層像と同様に、3次元画像とモデル画像との動きの差異を認識することができるため、診断の客観性が得られ、診断の精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】この発明の実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】断層像を示す画面の図である。
【図3】モデル画像データを生成するための動作を示すフローチャートである。
【図4】超音波画像にモデル画像を重畳させて表示するための動作を示すフローチャートである。
【図5】変形例に係る超音波診断装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【図6】断層像を示す画面の図である。
【図7】この発明の実施形態に係る超音波診断装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
1 超音波診断装置
2 超音波プローブ
3 送受信部
4 画像生成部
5 画像記憶部
6 表示制御部
7 ユーザインタフェース
8 モデル画像データ生成部
9 制御部
61 画像読み込み部
62 画像再生部
63 画像調整部
71 表示部
72 入力部
81 画像抽出部
82 モデル化部
83 標準偏差算出部
84 モデル画像データ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者を超音波で撮影することで予め取得された時系列的に連続する複数の第1超音波画像データのそれぞれに基づいて予め生成された、時間経過に伴って変動する所望の診断部位を模した時系列的に連続する複数のモデル画像データを記憶するモデル画像データ記憶手段と、
診断対象となる被検者を超音波で撮影することで、時系列的に連続する複数の第2超音波画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記複数の第2超音波画像データに表される前記所望の診断部位と同一の診断部位に、前記モデル画像データに基づくモデル画像の位置と大きさを一致させる画像調整手段と、
前記第2超音波画像データに基づく第2超音波画像に前記モデル画像データに基づくモデル画像を重ねて、時系列に沿って前記複数の第2超音波画像と前記複数のモデル画像を表示手段に表示させる画像再生手段と、
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
モデル画像データ生成手段を更に有し、
前記画像データ取得手段は、前記被検者を超音波で撮影することで、前記時系列的に連続する複数の第1超音波画像データを予め取得し、さらに、前記診断対象となる被検者を超音波で撮影することで、前記時系列的に連続する複数の第2超音波画像データを取得し、
前記モデル画像データ生成手段は、前記複数の第1超音波画像データのそれぞれに基づいて、前記時系列的に連続する複数のモデル画像データを生成して前記モデル画像データ記憶手段に記憶することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記画像データ取得手段は、健常な被検者のECG信号を受けつつ、前記健常な被検者の心臓を超音波で撮影することで、前記健常な被検者のECG信号を付帯させて前記時系列的に連続する複数の第1超音波画像データを予め取得し、さらに、前記診断対象となる被検者のECG信号を受けつつ、前記診断対象となる被検者の心臓を超音波で撮影することで、前記診断対象となる被検者のECG信号を付帯させて前記時系列的に連続する複数の第2超音波画像データを取得し、
前記画像調整手段は、前記複数の第2超音波画像データのうち、所定の時相に取得された第2超音波画像データに表される前記診断部位と同一の診断部位に、前記所定の時相に取得された第1超音波画像データから生成されたモデル画像データに基づくモデル画像の位置と大きさを一致させ、
前記画像再生手段は、前記第2超音波画像に前記モデル画像を重ねて、前記所定の時相から開始して、時系列に沿って前記複数の第2超音波画像と前記複数のモデル画像を同期させて前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記モデル画像データ生成手段は、前記複数の第1超音波画像データのそれぞれから、前記所望の診断部位として心筋を表す画像データを抽出し、前記抽出された心筋の画像データのそれぞれに基づいて、心筋を模した時系列的に連続する複数のモデル画像データを生成し、
前記画像調整手段は、前記所定の時相に取得された第2超音波画像データに表される心筋の画像に、前記心筋を模したモデル画像データに基づくモデル画像の位置と大きさを一致させることを特徴とする請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記画像再生手段は、前記所定の時相に取得された第2超音波画像データに基づく第2超音波画像を前記表示手段に表示させ、
前記画像調整手段は、前記表示手段に表示されているその第2超音波画像上で操作者によって指定された範囲を前記所望の診断部位と同一の診断部位として受け付けて、その範囲に、前記所定の時相のモデル画像の位置と大きさを一致させることを特徴とする請求項3又は請求項4のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記所定の時相に取得された第2超音波画像データから前記所望の診断部位と同一の診断部位を検出する手段を更に有し、
前記画像調整手段は、前記検出された範囲に、前記所定の時相のモデル画像の位置と大きさを一致させることを特徴とする請求項3又は請求項4のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記画像データ取得手段は、複数の異なる健常者の心臓を超音波で撮影することで、前記複数の異なる健常者ごとに、前記時系列的に連続する複数の第1超音波画像データを予め取得し、
前記モデル画像データ生成手段は、前記複数の異なる健常者ごとに、前記時系列的に連続する複数のモデル画像データを生成し、
前記画像調整手段は、前記所定の時相におけるモデル画像の所定位置における長さが、前記複数の異なる健常者のモデル画像のなかで平均となるモデル画像の位置と大きさを、前記所定の時相に取得された第2超音波画像データに表される前記所望の診断部位に一致させ、
前記画像再生手段は、前記第2超音波画像に前記平均となるモデル画像を重ねて、時系列に沿って前記複数の第2超音波画像と前記複数のモデル画像を同期させて前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項3から請求項6のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記画像再生手段は、前記第2超音波画像に、前記平均となるモデル画像を重ねるとともに、前記所定位置の長さが平均から所定値ずれたモデル画像を前記第2超音波画像に重ねて、時系列に沿って前記複数の第2超音波画像と前記複数のモデル画像を同期させて前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記画像再生手段は、前記診断対象となる被検者の心臓の心周期に従って、前記複数の第2超音波画像と前記複数のモデル画像とを同期させて前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項3から請求項8のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記画像生成手段は、前記診断対象となる被検者の心臓の動きを収縮期又は拡張期に分けて、前記収縮期又は前記拡張期における前記複数の第2超音波画像と前記複数のモデル画像とを同期させて前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項3から請求項8のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記画像再生手段は、前記モデル画像に前記第2超音波画像を透過させて前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項12】
被検者を超音波で撮影することで予め取得された時系列的に連続する複数の第1超音波画像データのそれぞれに基づいて予め生成された、時間経過に伴って変動する所望の診断部位を模した時系列的に連続する複数のモデル画像データを記憶するモデル画像データ記憶手段と、
診断対象となる被検者を超音波で撮影することで取得された時系列的に連続する複数の第2超音波画像データを受けて、前記複数の第2超音波画像データに表される前記所望の診断部位と同一の診断部位に、前記モデル画像データに基づくモデル画像の位置と大きさを一致させる画像調整手段と、
前記第2超音波画像データに基づく第2超音波画像に前記モデル画像データに基づくモデル画像を重ねて、時系列に沿って前記複数の第2超音波画像と前記複数のモデル画像を連続して表示手段に表示させる画像再生手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項13】
コンピュータに、
被検者を超音波で撮影することで予め取得された時系列的に連続する複数の第1超音波画像データのそれぞれに基づいて予め生成された、時間経過に伴って変動する所望の診断部位を模した時系列的に連続する複数のモデル画像データを受けて、さらに、診断対象となる被検者を超音波で撮影することで取得された時系列的に連続する複数の第2超音波画像データを受けて、前記複数の第2超音波画像データに表される前記所望の診断部位と同一の診断部位に、前記モデル画像データに基づくモデル画像の位置と大きさを一致させる画像調整機能と、
前記第2超音波画像データに基づく第2超音波画像に前記モデル画像データに基づくモデル画像を重ねて、時系列に沿って前記複数の第2超音波画像と前記複数のモデル画像を連続して表示手段に表示させる画像再生機能と、
を実行させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図2】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−104695(P2008−104695A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291016(P2006−291016)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】