説明

超音波診断装置

【課題】迅速に動く組織や臓器の動画像をリアルタイムで好適に表示できると共に、低消費電力化を達成することが可能な超音波診断装置を提供する。
【解決手段】この超音波診断装置は、複数の駆動信号に従って被検体に向けて超音波を送信すると共に、被検体から伝播した超音波エコーを受信することにより複数の受信信号を出力する複数の超音波トランスデューサを含む超音波探触子と、複数の駆動信号を超音波探触子に供給すると共に、超音波探触子から出力される複数の受信信号を処理することにより、超音波画像を表す画像信号を生成する画像生成手段と、インパルス駆動方式のディスプレイを含み、画像生成手段によって生成される画像信号に基づいて超音波画像を表示する表示部とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を送受信することにより生体内の臓器等の撮像を行って、診断のために用いられる超音波画像を生成する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、被検体の内部を観察して診断を行うために、様々な撮像技術が開発されている。特に、超音波を送受信することによって被検体の内部情報を取得する超音波撮像は、リアルタイムで画像観察を行うことができる上に、X線写真やRI(radio isotope)シンチレーションカメラ等の他の医用画像技術と異なり、放射線による被曝がない。そのため、超音波撮像は、安全性の高い撮像技術として、産科領域における胎児診断の他、婦人科系、循環器系、消化器系等を含む幅広い領域において利用されている。
【0003】
一般に、超音波診断装置においては、超音波の送受信機能を有する複数の超音波トランスデューサを含む超音波探触子(プローブ)が用いられる。このような超音波探触子を用いて、複数の超音波を合波することにより形成される超音波ビームによって被検体を走査し、被検体内部において反射された超音波エコーを受信して受信フォーカス処理を行うことにより、超音波エコーの強度に基づいて、被検体内に存在する構造物(例えば、内臓や病変組織等)に関する画像情報が得られ、超音波画像が表示部に表示される。
【0004】
ところで、近年、超音波診断装置においては、迅速に動く組織や臓器の動画像をリアルタイムで好適に表示できる性能が求められている。また、ポータブル型の超音波診断装置においては、バッテリー駆動が行われるので、低消費電力化が求められている。
【0005】
関連する技術として、特許文献1には、迅速に動く組織や臓器を好適に表示するのに適した応答時間を有する画像ディスプレイを有する超音波画像装置が開示されている。この超音波画像装置は、装置本体、前記装置本体に連結する超音波スキャンヘッド、及び、前記装置本体に連結する有機発光ダイオードディスプレイを有する。このディスプレイは、好適な応答時間、コントラスト比、及び、視角で超音波画像を表示することができる表示画面を有する。
【0006】
また、特許文献2には、構造の大型化・複雑化を抑制しつつ、動画ぼやけ等に起因する画質劣化を抑制することが可能な表示装置が開示されている。この表示装置は、ドレイン線とゲート線がマトリクス状に形成された表示素子アレイと、画像に応じた階調電圧を前記表示素子へ供給するドレインドライバと、前記階調電圧を供給するための前記表示素子のラインを走査するゲートドライバと、前記画像の1フレーム期間分の画像データにブランキングデータを挿入するデータ制御回路と、任意の前記表示素子に前記1フレーム期間内に前記画像データと前記ブランキングデータとが表示されるように、前記表示素子のラインを走査するためのクロックを生成するタイミング制御回路とを備えている。
【特許文献1】特表2005−512649号公報(第3−4頁、図1)
【特許文献2】特開2003−66918号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、迅速に動く組織や臓器の動画像をリアルタイムで好適に表示できると共に、低消費電力化を達成することが可能な超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る超音波診断装置は、複数の駆動信号に従って被検体に向けて超音波を送信すると共に、被検体から伝播した超音波エコーを受信することにより複数の受信信号を出力する複数の超音波トランスデューサを含む超音波探触子と、複数の駆動信号を超音波探触子に供給すると共に、超音波探触子から出力される複数の受信信号を処理することにより、超音波画像を表す画像信号を生成する画像生成手段と、インパルス駆動方式のディスプレイを含み、画像生成手段によって生成される画像信号に基づいて超音波画像を表示する表示部とを具備する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インパルス駆動方式のディスプレイを用いることにより、迅速に動く組織や臓器の動画像をリアルタイムで好適に表示できると共に、低消費電力化を達成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。この超音波診断装置は、超音波探触子10と、走査制御部11と、送信遅延パターン記憶部12と、送信制御部13と、駆動信号発生部14と、受信信号処理部21と、受信遅延パターン記憶部22と、受信制御部23と、メモリ24と、Bモード画像信号生成部25と、表示部30と、操作卓41と、制御部42と、格納部43とを有している。ここで、走査制御部11〜Bモード画像信号生成部25は、画像生成手段を構成している。
【0011】
超音波探触子10は、リニアスキャン方式、コンベックススキャン方式、セクタスキャン方式等の体外式プローブでも良いし、電子ラジアルスキャン方式、メカニカルラジアルスキャン方式等の超音波内視鏡用プローブでも良い。超音波探触子10は、1次元又は2次元のトランスデューサアレイを構成する複数の超音波トランスデューサ10aを備えている。それらの超音波トランスデューサ10aは、印加される駆動信号に基づいて超音波を送信すると共に、伝搬する超音波エコーを受信して受信信号を出力する。
【0012】
各超音波トランスデューサは、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb(lead) zirconate titanate)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン:polyvinylidene difluoride)に代表される高分子圧電素子等の圧電性を有する材料(圧電体)の両端に電極を形成した振動子によって構成される。そのような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮する。この伸縮により、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生し、それらの超音波の合成によって超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することによって伸縮し、電気信号を発生する。それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0013】
走査制御部11は、超音波ビームの送信方向及び超音波エコーの受信方向を順次設定する。超音波ビームによる被検体の走査は、電子的に行われても良いし、メカニカルに行われても良い。送信遅延パターン記憶部12は、超音波ビームを形成する際に用いられる複数の送信遅延パターンを記憶している。送信制御部13は、走査制御部11において設定された送信方向に応じて、送信遅延パターン記憶部12に記憶されている複数の遅延パターンの中から1つのパターンを選択し、そのパターンに基づいて、複数の超音波トランスデューサ10aの駆動信号にそれぞれ与えられる遅延時間を設定する。あるいは、送信制御部13は、複数の超音波トランスデューサ10aから一度に送信される超音波が被検体の撮像領域全体に届くように遅延時間を設定しても良い。
【0014】
駆動信号発生部14は、例えば、複数の超音波トランスデューサ10aに対応する複数のパルサによって構成されている。駆動信号発生部14は、送信制御部13によって設定された遅延時間に従って、複数の超音波トランスデューサ10aから送信される超音波が超音波ビームを形成するように複数の駆動信号を超音波探触子10に供給し、又は、複数の超音波トランスデューサ10aから一度に送信される超音波が被検体の撮像領域全体に届くように複数の駆動信号を超音波探触子10に供給する。
【0015】
受信信号処理部21は、複数の超音波トランスデューサ10aに対応して、複数の増幅器(プリアンプ)21aと、複数のA/D変換器21bとを含んでいる。超音波トランスデューサ10aから出力される受信信号は、増幅器21aにおいて増幅され、増幅器21aから出力されるアナログの受信信号は、A/D変換器21bによってディジタルの受信信号に変換される。A/D変換器21bは、ディジタルの受信信号を、受信制御部23に出力する。
【0016】
受信遅延パターン記憶部22は、複数の超音波トランスデューサ10aから出力される複数の受信信号に対して受信フォーカス処理を行う際に用いられる複数の受信遅延パターンを記憶している。受信制御部23は、走査制御部11において設定された受信方向に基づいて、受信遅延パターン記憶部22に記憶されている複数の受信遅延パターンの中から1つを選択し、その受信遅延パターンに基づいて、複数の受信信号に遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線信号が生成される。さらに、受信制御部23は、生成された音線信号に対して包絡線検波処理を施す。
【0017】
受信制御部23によって生成される音線信号は、メモリ24に供給されると共に、Bモード画像信号生成部25に供給される。Bモード画像信号生成部25は、STC(sensitivity time control)部25aと、DSC(digital scan converter:ディジタル・スキャン・コンバータ)25bとを含んでおり、受信制御部23から供給される音線信号に基づいて、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。また、フリーズモードにおいては、メモリ24に格納されている音線信号に基づいて、Bモード画像信号が生成される。
【0018】
STC部25aは、受信制御部23又はメモリ24から供給される音線信号に対して、超音波の反射位置の深度に応じて、距離による減衰の補正を施す。DSC25bは、STC部25aによって補正された音線信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)し、階調処理等の必要な画像処理を施すことにより、Bモード画像信号を生成する。
【0019】
表示部30は、インパルス駆動方式のディスプレイを含んでおり、Bモード画像信号生成部25によって生成されるBモード画像信号に基づいて超音波画像を表示する。さらに、上記ディスプレイにおいて、1フィールド期間中におけるブランキング期間の長さが可変であることが望ましい。
【0020】
制御部42は、操作卓41を用いたオペレータの操作に従って、走査制御部11、メモリ24、Bモード画像信号生成部25,表示部30等を制御する。本実施形態においては、走査制御部11、送信制御部13、受信制御部23、Bモード画像信号生成部25、及び、制御部42が、CPUとソフトウェア(プログラム)によって構成されるが、これらをディジタル回路やアナログ回路で構成しても良い。上記のソフトウェア(プログラム)は、格納部43に格納される。格納部43における記録媒体としては、内蔵のハードディスクの他に、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROM、又は、DVD−ROM等を用いることができる。
【0021】
次に、表示部30において用いられるディスプレイの例として、アクティブマトリクス方式の有機ELディスプレイについて、図2〜図5を参照しながら詳しく説明する。
図2は、有機ELディスプレイの構造を模式的に示す断面図である。ガラス等の透明基板31上には、不純物の侵入を防止するための絶縁膜32を介して、複数の配線電極33a及び33b、複数のTFT(薄膜トランジスタ)34a−34c、保持容量等が形成されている。さらに、配線等を覆うように層間絶縁膜及び平坦化膜を含む絶縁膜35が形成され、その上に画素毎に透明電極36及び有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子37が形成され、さらにその上に共通電極38が形成されている。有機EL素子37は、正孔輸送層、発光層、及び、電子輸送層を含んでいる。透明電極36は、有機EL素子37の陽極として機能し、共通電極38は、有機EL素子37の陰極として機能する。共通電極38の上方には、封止ガラス39が設けられている。
【0022】
図3は、本発明の第1の実施形態において用いられる表示部の構成例を示す図である。表示部は、有機ELディスプレイ300と、有機ELディスプレイ300の1フィールド期間中におけるブランキング期間と映像表示期間との比率を調整するブランキング期間調整回路310とを含んでいる。
【0023】
有機ELディスプレイ300は、各列のドレイン線Yjを駆動するドレイン線駆動回路301と、各行(ライン)のゲート線Xiを駆動する走査ライン用ゲート線駆動回路302と、各行の制御信号供給線XiCを駆動する映像表示期間制御用ゲート線駆動回路303と、共通電極とを含んでいる。各列の電流供給線YjIには、所定の電源電圧が印加される。また、有機ELディスプレイ300は、各々の画素において、トランジスタ(TFT)T1〜T3と、保持容量C0と、等価的にダイオードで表される有機EL素子とを含んでいる。
【0024】
ドレイン線駆動回路301は、Bモード画像信号生成部25から供給されるBモード画像信号に基づいて、各列の画像信号(アナログ電圧)をそれぞれの列のドレイン線Yjに供給する。走査ライン用ゲート線駆動回路302は、各行のゲート線Xiに供給されるゲート電圧を所定のタイミングでハイレベルに活性化する。トランジスタT1は、ゲート線Xiを介して供給されるゲート電圧に従ってオン状態となったときに、ドレイン線Yjを介して供給される画像信号を保持容量C0に保持させる。
【0025】
ブランキング期間調整回路310は、ブランキング期間と映像表示期間との比率を規定する信号を映像表示期間制御用ゲート線駆動回路303に出力する。映像表示期間制御用ゲート線駆動回路303は、ブランキング期間調整回路310から出力される信号に従って、各行の映像表示期間においてハイレベルに活性化されブランキング期間においてローレベルに非活性化される制御信号を生成し、それらの制御信号をそれぞれの行の制御信号供給線XiCに供給する。トランジスタT2は、映像表示期間制御用ゲート線駆動回路303によって生成される制御信号に従って、トランジスタT3のドレインを電流供給線YjIに電気的に接続する。トランジスタT3は、ドレインが電流供給線YjIに電気的に接続されているときに、保持容量C0に保持された画像信号に従って、ソースから有機EL素子に電流を供給する。
【0026】
図4は、図3に示す表示部の動作を説明するためのタイミングチャートである。図4においては、画像表示の1フレーム期間(フレームレートが60Hzである場合に、約16.7ms)における各部の電圧及び有機EL素子の輝度が示されている。なお、インターレース方式においては、複数のフィールドによって1フレームが構成されるので、図4に示す1フレーム期間を1フィールド期間に読み替えるものとする。ノンインターレース方式においては、1フレーム期間と1フィールド期間とは等価である。
【0027】
ドレイン線Yjに供給される画像信号の電圧は、最大値(MAX)と最小値(MIN)との間で変化する。あるタイミングにおいて、ゲート線Xiを介して供給されるゲート電圧がハイレベルに活性化されると、トランジスタT1がオン状態となって、ドレイン線Yjを介して供給される画像信号の電圧が保持容量C0に保持される。
【0028】
制御信号がハイレベルに活性化されている期間(映像表示期間)においては、トランジスタT2がオン状態となって、トランジスタT3のドレインが電流供給線YjIに電気的に接続される。これにより、保持容量C0に保持されている画像信号の電圧に従って、トランジスタT3が有機EL素子に電流を流し、有機EL素子が発光する。有機EL素子の輝度は、有機EL素子に流れる電流に比例し、輝度最大値(MAX)と輝度最小値(MIN)との間で変化する。
【0029】
制御信号がローレベルに非活性化されている期間(ブランキング期間)においては、トランジスタT2がオフ状態となって、トランジスタT3のドレインが電流供給線YjIから電気的に切り離される。これにより、トランジスタT3が有機EL素子に電流を流さなくなるので、有機EL素子の発光が停止する。
【0030】
このように、本実施形態によれば、映像表示期間制御用ゲート線駆動回路303によって生成される制御信号に従ってトランジスタT2をオン/オフさせることにより、有機EL素子が発光する期間を調節することができる。
【0031】
図5は、ホールド型のディスプレイとインパルス駆動方式のディスプレイとにおける発光状態を比較して示す図である。図5においては、縦方向に隣接する3つの画素P1〜P3における発光状態が示されている。図5の(a)の上段は、ホールド型のディスプレイにおける発光状態を示しており、3つの画素P1〜P3における発光状態は、1フレーム期間において一定である。その結果、人間の目には、過去のフレームの一部における発光状態と現在のフレームにおける発光状態とが積分されて、図5の(a)の下段に示すように、画素P2において残像が発生する。
【0032】
一方、図5の(b)の上段は、インパルス駆動方式のディスプレイにおける発光状態を示しており、3つの画素P1〜P3における発光期間は、1フレーム期間内の所定の期間に限定されている。その結果、過去のフレームの一部における発光状態と現在のフレームにおける発光状態とが積分されても、図5の(b)の下段に示すように、画素P2における残像を低減することができる。従って、迅速に動く組織や臓器の動画像をリアルタイムで好適に表示することが可能となる。
【0033】
また、各画素における消費電力は、有機EL素子に流れる電流と電源電圧との積によって決定されるので、ブランキング期間を長くすることにより、低消費電力化を達成することができる。その場合には、ディスプレイの輝度が低下するが、超音波診断装置のディスプレイは、通常のディスプレイと比較すると、暗い室内において使用されることが多いので、ディスプレイの輝度はそれほど求められない。
【0034】
以上において、ブランキング期間が短すぎると、動画性能の向上が得られない。しかしながら、ブランキング期間を長くするには上限がある。ブランキング期間を長くする一方、有機EL素子の電流密度を上げることにより所望の輝度を得ることも考えられるが、有機EL素子の電流密度をあまり上げると寿命が短くなってしまう。従って、1フレーム期間(又は、1フィールド期間)におけるブランキング期間の比率は、10%〜70%が適しており、50%〜70%であればさらに好ましい。
【0035】
本実施形態においては、オペレータが、ディスプレイの画面上に表示されたボタン(アイコン)を操作し、又は、図1に示す操作卓41に設けられているレバーやダイアルを操作することにより、図3に示すブランキング期間調整回路310が、ディスプレイの1フィールド期間中におけるブランキング期間と映像表示期間との比率を調整する。
【0036】
あるいは、図1に示す制御部42が、ディスプレイの1フィールド期間中におけるブランキング期間と映像表示期間との比率を自動的に調整するようにブランキング期間調整回路310を制御しても良い。例えば、制御部42は、プリセットにおいて設定されている検査部位に応じて、ブランキング期間と映像表示期間との比率を調整する。
【0037】
超音波診断装置を用いた検査においては、特に胎児の心臓等のように高速に動く部位を観察する場合と、肝臓等のように比較的動かない部位を観察する場合とがある。インパルス駆動において、ブランキング期間をあまり長くすると、高速動画像の表示性能が向上する反面、画面のちらつき(フリッカー)が目立つという欠点があるので、高速に動く部位を観察する場合にはブランキング期間を長くし、比較的動かない部位を観察する場合にはブランキング期間を短くするように、制御部42がブランキング期間調整回路310を制御する。
【0038】
このように、超音波診断装置が、プリセットにおいて設定されている検査部位に応じて自動的にブランキング期間を調節する機能を有することにより、それぞれの検査部位に好適な動画像を提供することができる。なお、フリーズモードにおいて静止画を観察する場合には、ブランキング期間を短くするように、制御部42がブランキング期間調整回路310を制御する。
【0039】
また、超音波診断装置を用いた検査においては、高速に動く部位を観察する場合には、画像生成手段によって生成される画像信号のフレームレートを高くするのが一般的である。そこで、画像生成手段によって生成される画像信号のフレームレートに応じて、ディスプレイの1フィールド期間中におけるブランキング期間と映像表示期間との比率を調整するように、制御部42がブランキング期間調整回路310を制御しても良い。
【0040】
さらに、超音波診断装置を省エネルギーモードに設定することが可能な場合には、制御部42が、超音波診断装置が省エネルギーモードに設定されているか否かを判定し、判定結果に従って、ディスプレイの1フィールド期間中におけるブランキング期間と映像表示期間との比率を調整するように、ブランキング期間調整回路310を制御しても良い。具体的には、超音波診断装置が省エネルギーモードに設定されている場合には、ブランキング期間を長くし、超音波診断装置が省エネルギーモードに設定されていない場合には、ブランキング期間を短くするように、制御部42がブランキング期間調整回路310を制御する。
【0041】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。第2の実施形態においては、図1に示す第1の実施形態に係る超音波診断装置に対して電源電圧測定回路50が追加されている。その他の点に関しては、第1の実施形態と同様である。
【0042】
ポータブル型の超音波診断装置においては、内蔵バッテリーを用いたバッテリー駆動と、コンセントを用いた外部電源駆動との2通りの駆動方法に対応可能となっている。外部電源駆動の場合には、電源回路の外部電源入力端子に外部電源が接続される。そこで、電源電圧測定回路50が、外部電源入力端子における電源電圧を測定する。また、制御部42が、電源電圧測定回路50によって測定された電源電圧に基づいてバッテリー駆動か外部電源駆動かを判定し、判定結果に応じてディスプレイの1フィールド期間中におけるブランキング期間と映像表示期間との比率を調整するようにブランキング期間調整回路310を制御する。具体的には、バッテリー駆動の場合にはブランキング期間を長くし、外部電源駆動の場合にはブランキング期間を短くするように、制御部42がブランキング期間調整回路310を制御する。
【0043】
さらに、制御部42は、判定結果に応じて表示画面の明るさ(輝度)を変化させるようにしても良い。具体的には、バッテリー駆動の場合には表示画面の輝度を低下させ、外部電源駆動の場合には表示画面の輝度を上昇させるように、制御部42が表示部30を制御する。
【0044】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図7は、本発明の第3の実施形態において用いられる表示部の構成例を示す図である。表示部30aにおいては、図1に示す表示部30に対してフォトダイオード320が追加されている。その他の点に関しては、第1の実施形態と同様である。
【0045】
超音波診断装置は、暗い室内から明るい屋外(救急時)まで、幅広い環境で使用される医療機器である。そこで、ディスプレイの周囲における明るさを検知する明るさ検知手段としてフォトダイオード320を設け、ブランキング期間調整回路310が、フォトダイオード320の検知結果に応じて、ディスプレイの1フィールド期間中におけるブランキング期間と映像表示期間との比率を調整する。具体的には、ブランキング期間調整回路310が、ディスプレイの周囲における明るさが明るいときには、ブランキング期間を短くして輝度を高くし、ディスプレイの周囲における明るさが暗いときには、ブランキング期間を長くして輝度を低くする。
【0046】
フォトダイオード320は、超音波診断装置の表示部30等の筐体に取り付けても良いし、図2に示す有機ELディスプレイの透明基板31上に絶縁膜35を介して形成し、電源立ち上げ時において有機ELディスプレイが発光していないときに周囲の明るさを検知しても良い。TFTはポリシリコン等を用いて形成されるので、同一の工程において、可視光を検知するフォトダイオード320を形成することが可能である。
【0047】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図8は、本発明の第4の実施形態において用いられる表示部の構成例を示す図である。表示部30bにおいては、図1に示す表示部30に対して輝度情報調整回路330及び輝度/ブランキング期間調整回路340が追加されている。その他の点に関しては、第1の実施形態と同様である。
【0048】
輝度情報調整回路330は、Bモード画像信号生成部25(図1)によって生成される画像信号の輝度を調節して、輝度が調節された画像信号をドレイン線駆動回路301に供給する。輝度/ブランキング期間調整回路340は、画像信号の輝度とブランキング期間の比率との最適化を図るために、輝度情報調整回路330及びブランキング期間調整回路310を制御する。
【0049】
例えば、輝度/ブランキング期間調整回路340は、ブランキング期間調整回路310によって調整されるブランキング期間と映像表示期間との比率に応じて、ドレイン線Yjに供給される画像信号のレベルを変化させるように輝度情報調整回路330を制御する。具体的には、輝度/ブランキング期間調整回路340は、ブランキング期間調整回路310においてブランキング期間の比率が増加されたときに、画像信号の輝度を上昇させるように輝度情報調整回路330を制御する。これにより、ブランキング期間が変化しても、表示画像の明るさの変化を抑圧することができる。
【0050】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
図9は、本発明の第5の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。第5の実施形態においては、図1に示す第1の実施形態に係る超音波診断装置に対してフレームレート変換部26が追加されている。その他の点に関しては、第1の実施形態と同様である。
【0051】
フレームレート変換部26は、超音波画像を表す画像信号にブランキング画像(好ましくは、黒レベル)を表す画像信号を挿入することにより、Bモード画像信号生成部25によって生成される画像信号よりも高いフレームレートを有する画像信号を生成する。例えば、図10に示すように、フレームレート変換部26は、フレームレートが60Hzの超音波画像のフレーム間にブランキング画像のフレームを挿入することにより、フレームレートが120Hzの動画像を生成して、表示部30に動画像表示を行わせることができる。この場合に、Bモード画像信号生成部25によって生成される画像信号の映像表示期間の比率が100%であるとすると、フレームレート変換部26によって生成される画像信号の映像表示期間の比率は50%となる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、超音波を送受信することにより生体内の臓器等の撮像を行って、診断のために用いられる超音波画像を生成する超音波診断装置において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】有機ELディスプレイの構造を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態において用いられる表示部の構成例を示す図である。
【図4】図3に示す表示部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】ホールド型のディスプレイとインパルス駆動方式のディスプレイとにおける発光状態を比較して示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第3の実施形態において用いられる表示部の構成例を示す図である。
【図8】本発明の第4の実施形態において用いられる表示部の構成例を示す図である。
【図9】本発明の第5の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第5の実施形態に係る超音波診断装置の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0054】
10 超音波探触子
10a 超音波トランスデューサ
11 走査制御部
12 送信遅延パターン記憶部
13 送信制御部
14 駆動信号発生部
21 受信信号処理部
21a 増幅器
21b A/D変換器
22 受信遅延パターン記憶部
23 受信制御部
24 メモリ
25 Bモード画像信号生成部
25a STC部
25b DSC
26 フレームレート変換部
30 表示部
31 透明基板
32 絶縁膜
33a、33b 配線電極
34a−34c TFT(薄膜トランジスタ)
35 絶縁膜
36 透明電極
37 有機EL素子
38 共通電極
39 封止ガラス
41 操作卓
42 制御部
43 格納部
50 電源電圧測定回路
300 有機ELディスプレイ
301 ドレイン線駆動回路
302 走査ライン用ゲート線駆動回路
303 映像表示期間制御用ゲート線駆動回路
310 ブランキング期間調整回路
320 フォトダイオード
330 輝度情報調整回路
340 輝度/ブランキング期間調整回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の駆動信号に従って被検体に向けて超音波を送信すると共に、被検体から伝播した超音波エコーを受信することにより複数の受信信号を出力する複数の超音波トランスデューサを含む超音波探触子と、
複数の駆動信号を前記超音波探触子に供給すると共に、前記超音波探触子から出力される複数の受信信号を処理することにより、超音波画像を表す画像信号を生成する画像生成手段と、
インパルス駆動方式のディスプレイを含み、前記画像生成手段によって生成される画像信号に基づいて超音波画像を表示する表示部と、
を具備する超音波診断装置。
【請求項2】
前記表示部が、1フィールド期間中におけるブランキング期間の長さが可変なディスプレイを含む、請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記表示部が、前記ディスプレイの1フィールド期間中におけるブランキング期間と映像表示期間との比率を調整する調整手段を含む、請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記表示部が、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイを含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記ディスプレイが、各ラインの映像表示期間において活性化される制御信号を生成する映像表示期間制御回路と、各画素に配置された有機EL素子、第1〜第3の薄膜トランジスタ、及び、保持容量とを含み、
前記第1の薄膜トランジスタが、ゲート線を介して供給されるゲート電圧に従って、ドレイン線を介して供給される画像信号を前記保持容量に保持させ、
前記第2の薄膜トランジスタが、前記映像表示期間制御回路によって生成される制御信号に従って、前記第3の薄膜トランジスタのドレインを電流供給線に電気的に接続し、
前記第3の薄膜トランジスタが、ドレインが前記電流供給線に電気的に接続されているときに、前記保持容量に保持された画像信号に従って、ソースから前記有機EL素子に電流を供給する、請求項4記載の超音波診断装置。
【請求項6】
超音波画像を表す画像信号にブランキング画像を表す画像信号を挿入することにより、前記画像生成手段によって生成される画像信号よりも高いフレームレートを有する画像信号を生成するフレームレート変換手段をさらに具備する、請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項7】
設定されている検査部位に応じて、前記ディスプレイの1フィールド期間中におけるブランキング期間と映像表示期間との比率を調整するように前記調整手段を制御する制御手段をさらに具備する、請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記画像生成手段によって生成される画像信号のフレームレートに応じて、前記ディスプレイの1フィールド期間中におけるブランキング期間と映像表示期間との比率を調整するように前記調整手段を制御する制御手段をさらに具備する、請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記超音波診断装置が省エネルギーモードに設定されているか否かを判定し、判定結果に従って、前記ディスプレイの1フィールド期間中におけるブランキング期間と映像表示期間との比率を調整するように前記調整手段を制御する制御手段をさらに具備する、請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項10】
外部電源入力端子における電源電圧を測定する電源電圧測定回路と、
前記電源電圧測定回路によって測定された電源電圧に基づいてバッテリー駆動か外部電源駆動かを判定し、判定結果に応じて、前記ディスプレイの1フィールド期間中におけるブランキング期間と映像表示期間との比率を調整するように前記調整手段を制御する制御手段と、
をさらに具備する、請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記表示部が、前記ディスプレイの周囲における明るさを検知する明るさ検知手段をさらに含み、
前記調整手段が、前記明るさ検知手段の検知結果に応じて、前記ディスプレイの1フィールド期間中におけるブランキング期間と映像表示期間との比率を調整する、請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記表示部が、前記調整手段によって調整されるブランキング期間と映像表示期間との比率に応じて、前記ドレイン線に供給される画像信号のレベルを変化させる第2の調整手段をさらに含む、請求項3記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−46343(P2010−46343A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214137(P2008−214137)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】