説明

超音波診断装置

【課題】診断目的に応じて適切な周波数帯域を有する振動子アレイの交換が可能でありながら小型化および操作性の向上を図ることができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波プローブ1は、バックユニット2に無線接続されたミドルユニット4と、コネクタ5を介してミドルユニット4に着脱可能に接続されたフロントユニット3を有し、フロントユニット3に、特定の周波数帯域を有する振動子アレイ6と、振動子アレイ6の周波数帯域に対応した周波数帯域のプリアンプ8と、振動子アレイ6の駆動電圧に対応した駆動電圧を出力する送信駆動部9が搭載されている。フロントユニット3、ミドルユニット4およびバックユニット2は、それぞれユニット内の各部を制御する専用のCPU10、CPU15およびCPU20を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波診断装置に係り、特に、超音波プローブの振動子アレイを交換可能な超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、振動子アレイを内蔵した超音波プローブと、この超音波プローブに接続された装置本体とを有しており、超音波プローブから被検体に向けて超音波を送信し、被検体からの超音波エコーを超音波プローブで受信して、その受信信号を装置本体で電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
近年、ベッドサイドや救急医療現場等に搬送して使用することができるポータブル型の超音波診断装置が開発され、さらに超音波プローブと装置本体とを無線接続して操作性を向上させようとするものが考案されている。このような超音波診断装置では、利便性を追求すべく装置の小型化が要求される。
【0004】
また、超音波診断装置は、被検体の種々の診断目的に使用されるが、診断目的に応じて適切な周波数帯域が異なる場合が多い。このため、互いに異なる周波数帯域を有する複数の超音波プローブを用意し、診断目的により選択された超音波プローブを装置本体に接続することが考えられるが、一般に超音波プローブは高価なものであるので、予め複数の超音波プローブを用意するのは、費用負担が大きくなる。そこで、超音波プローブ内で振動子アレイを着脱可能とし、診断目的に合わせて適切な周波数帯域を有する振動子アレイを交換して使用することが望まれている。
【0005】
例えば、特許文献1には、超音波プローブを、振動子アレイを含む振動子ヘッドと、振動子ヘッドからの信号を処理してビーム整形を行うビーム整形モジュールとから構成し、振動子ヘッドをビーム整形モジュールに対して取り外し可能にした超音波診断システムが開示されている。
また、特許文献2には、超音波プローブを、振動子アレイと、振動子アレイを保持するハウジング部とから構成し、振動子アレイをハウジング部に着脱可能にした超音波診断装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−190159号公報
【特許文献2】特開2009−60992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の装置に記載の超音波プローブでは、振動子アレイを含む振動子ヘッドがビーム整形モジュールから着脱可能となっているので、診断目的に応じて適切な周波数帯域を有する振動子アレイを使用することが可能となる。しかしながら、互いに異なる周波数帯域を有する複数の振動子アレイに対応するために、例えば2〜20MHz程度の広帯域の増幅器と、複数の振動子アレイのうち最大の駆動電圧を有する振動子アレイに合わせて高い駆動電圧のパルサをビーム整形モジュールに搭載する必要が生じ、装置が大型化するという問題がある。
同様に、特許文献2の装置に記載の超音波プローブにおいても、診断目的に応じて適切な周波数帯域を有する振動子アレイの使用が可能であるが、広帯域の増幅器と高い駆動電圧のパルサをハウジング部に搭載する必要があり、装置が大型化してしまう。
【0008】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、診断目的に応じて適切な周波数帯域を有する振動子アレイの交換が可能でありながら小型化および操作性の向上を図ることができる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る超音波診断装置は、超音波プローブとバックユニットとが無線により接続され、超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した超音波プローブの振動子アレイから出力された受信信号に基づいてバックユニットが超音波画像を生成する超音波診断装置であって、超音波プローブは、バックユニットに無線接続されるミドルユニットと、ミドルユニットに着脱可能に接続され且つ振動子アレイを有するフロントユニットとを備え、フロントユニットは、振動子アレイに駆動信号を供給して超音波ビームを送信させる送信駆動部と、振動子アレイから出力された受信信号を増幅するプリアンプとを有するものである。
【0010】
好ましくは、フロントユニットおよびミドルユニットは、それぞれ専用のCPUを有し、フロントユニットのプリアンプで増幅された受信信号を伝送する受信信号線と双方のCPU間で信号を伝送する通信線を含むコネクタを介して互いに着脱可能に接続される。
フロントユニットは、振動子アレイに接続されたマルチプレクサを有していてもよい。
また、振動子アレイが、送信専用の送信振動子アレイと受信専用の受信振動子アレイとを含むように構成することもできる。あるいは、振動子アレイが、送受信兼用の兼用振動子アレイと高調波成分受信用の高調波振動子アレイとを含むように構成してもよい。
【0011】
なお、ミドルユニットは、フロントユニットのプリアンプで増幅された受信信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、A/Dコンバータで変換されたデジタル信号をベースバンド帯域に周波数変調する受信信号処理部と、受信信号処理部で周波数変調された信号をシリアル化するパラレル/シリアル変換部とを有することが好ましい。
また、ミドルユニットは、超音波診断装置への入力操作を行うための操作部および情報表示を行うための表示部のうち少なくとも一方を有することもできる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、超音波プローブを、バックユニットに無線接続されるミドルユニットと、ミドルユニットに着脱可能に接続されたフロントユニットとから構成し、フロントユニットが振動子アレイと送信駆動部とプリアンプを有するので、フロントユニットを選択することにより、診断目的に応じて適切な周波数帯域を有する振動子アレイの交換と共に送信駆動部およびプリアンプの交換が可能であり、小型化および操作性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1の動作を示すフローチャートである。
【図3】実施の形態1における検査モードを示すフローチャートである。
【図4】実施の形態2で用いられたフロントユニットの構成を示すブロック図である。
【図5】実施の形態3で用いられたフロントユニットの構成を示すブロック図である。
【図6】実施の形態3の変形例で用いられたフロントユニットの構成を示すブロック図である。
【図7】実施の形態4で用いられたフロントユニットの構成を示すブロック図である。
【図8】実施の形態4の変形例で用いられたフロントユニットの構成を示すブロック図である。
【図9】実施の形態5で用いられたミドルユニットの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示す。超音波診断装置は、超音波プローブ1と、この超音波プローブ1と無線通信により接続されたバックユニット2とを備えている。
【0015】
超音波プローブ1は、フロントユニット3とミドルユニット4を有しており、フロントユニット3はコネクタ5を介してミドルユニット4に着脱可能に接続されている。
フロントユニット3は、複数の超音波トランスデューサからなる1次元または2次元の振動子アレイ6を有し、この振動子アレイ6に送受信切替スイッチ7を介してプリアンプ8と送信駆動部9とが互いに並列に接続され、さらに送信駆動部9にCPU(中央処理装置)10が接続されている。
【0016】
ミドルユニット4は、コネクタ5を介してフロントユニット3のプリアンプ8に接続されるA/Dコンバータ(アナログ−デジタル変換回路)11を有し、A/Dコンバータ11に、受信信号処理部12が接続され、さらに受信信号処理部12にパラレル/シリアル変換部13を介して無線通信部14が接続されている。また、受信信号処理部12とパラレル/シリアル変換部13にCPU15が接続され、このCPU15がコネクタ5を介してフロントユニット3のCPU10に接続されている。
【0017】
振動子アレイ6を構成する複数のトランスデューサは、それぞれ送信駆動部9から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に被検体からの超音波エコーを受信して受信信号を出力する。各トランスデューサは、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子等からなる圧電体の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
そのような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0018】
送受信切替スイッチ7は、CPU10の制御の下で、振動子アレイ6をプリアンプ8と送信駆動部9のいずれかに選択的に接続する。
プリアンプ8は、振動子アレイ6の各チャンネルのトランスデューサから出力される受信信号を増幅する。
送信駆動部9は、例えば、複数のパルサを含んでおり、CPU10によって選択された送信遅延パターンに基づいて、振動子アレイ6から送信される超音波が被検体内の組織のエリアをカバーする幅広の超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号の遅延量を調節して振動子アレイ6の複数のトランスデューサに供給する。
CPU10は、コネクタ5を介して接続されたミドルユニット4のCPU15から伝送される各種の制御信号に基づいて、送信駆動部9の制御を行う。
【0019】
なお、振動子アレイ6は、特定の周波数帯域と特定の駆動電圧を有しており、プリアンプ8としては、振動子アレイ6の周波数帯域に対応した周波数帯域のものが使用され、送信駆動部9としては、振動子アレイ6の駆動電圧に対応した駆動電圧を出力するものが使用されている。
【0020】
A/Dコンバータ11は、プリアンプ8で増幅された受信信号をデジタル化する。
受信信号処理部12は、CPU15の制御の下で、A/Dコンバータ11でデジタル化された受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成し、複素ベースバンド信号をサンプリングすることにより、組織のエリアの情報を含むサンプルデータを生成して、サンプルデータをパラレル/シリアル変換部13に供給する。受信信号処理部12は、複素ベースバンド信号をサンプリングして得られるデータに高能率符号化のためのデータ圧縮処理を施すことによりサンプルデータを生成してもよい。
パラレル/シリアル変換部13は、複数チャンネルの受信信号処理部12によって生成されたパラレルのサンプルデータを、シリアルのサンプルデータに変換する。
【0021】
無線通信部14は、シリアルのサンプルデータに基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、伝送信号をアンテナに供給してアンテナから電波を送信することにより、シリアルのサンプルデータを送信する。変調方式としては、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)等が用いられる。
無線通信部14は、バックユニット2との間で無線通信を行うことにより、サンプルデータをバックユニット2に送信すると共に、バックユニット2から各種の制御信号を受信して、受信された制御信号をCPU15に出力する。
CPU15は、バックユニット2から受信した制御信号に基づき、送信駆動部9の制御を行うべくフロントユニット3のCPU10に信号を伝送すると共に設定された送信電波強度でサンプルデータの送信が行われるように無線通信部14を制御する。
【0022】
コネクタ5は、フロントユニット3とミドルユニット4を着脱可能に接続するもので、フロントユニット3のプリアンプ8で増幅された受信信号をミドルユニット4のA/Dコンバータ11へ伝送する受信信号線と、フロントユニット3のCPU10とミドルユニット4のCPU15との間で信号を伝送する通信線を含んでいる。
なお、超音波プローブ1には、図示しないバッテリが内蔵され、このバッテリから超音波プローブ1内のフロントユニット3およびミドルユニット4の各回路に電源供給が行われる。
図1に示した超音波プローブ1のフロントユニット3は、セクタスキャン方式に対応したものである。
【0023】
一方、バックユニット2は、無線通信部16を有し、この無線通信部16にシリアル/パラレル変換部17を介して画像形成部18が接続され、さらに画像形成部18に表示部19が接続されている。また、無線通信部16、シリアル/パラレル変換部17および画像形成部18にCPU20が接続されている。さらに、CPU20には、オペレータが入力操作を行うための操作部21が接続されている。
【0024】
無線通信部16は、超音波プローブ1との間で無線通信を行うことにより、各種の制御信号を超音波プローブ1に送信する。また、無線通信部16は、アンテナによって受信される信号を復調することにより、シリアルのサンプルデータを出力する。
シリアル/パラレル変換部17は、無線通信部16から出力されるシリアルのサンプルデータを、パラレルのサンプルデータに変換する。
【0025】
画像形成部18は、サンプルデータに受信フォーカス処理を施して、超音波診断画像を表す画像信号を生成する。画像形成部18は、整相加算部と画像処理部とを含んでいる。
整相加算部は、CPU20において設定された受信方向に応じて、予め記憶されている複数の受信遅延パターンの中から1つの受信遅延パターンを選択し、選択された受信遅延パターンに基づいて、サンプルデータによって表される複数の複素ベースバンド信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれたベースバンド信号(音線信号)が生成される。
【0026】
画像処理部は、整相加算部によって生成される音線信号に基づいて、例えば、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。画像処理部は、STC(sensitivity time control)部と、DSC(digital scan converter:デジタル・スキャン・コンバータ)とを含んでいる。STC部は、音線信号に対して、超音波の反射位置の深度に応じて、距離による減衰の補正を施す。DSCは、STC部によって補正された音線信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)し、階調処理等の必要な画像処理を施すことにより画像信号を生成する。
【0027】
表示部19は、画像形成部18によって生成される画像信号に基づいて超音波診断画像を表示するもので、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでいる。
CPU20は、オペレータにより操作部21から入力された指示に基づき、設定された送信電波強度で各種の制御信号の送信が行われるように無線通信部16を制御すると共に、画像形成部18により画像信号を生成して表示部19に超音波診断画像を表示させる。
【0028】
この実施の形態1においては、超音波プローブ1のフロントユニット3がコネクタ5を介してミドルユニット4に着脱可能に接続されている。そこで、それぞれ異なる周波数帯域を有する振動子アレイ6と、この振動子アレイ6に対応したプリアンプ8および送信駆動部9とを含む複数のフロントユニット3を用意しておけば、診断目的に応じて適切な周波数帯域を有する振動子アレイ6を含むフロントユニット3を選択してミドルユニット4に接続することができる。
【0029】
図2のフローチャートを参照して、実施の形態1の動作について説明する。
まず、ステップS1の検査情報入力モードで、バックユニット2の操作部21から、患者情報および検査オーダーを含む検査情報が入力されると、バックユニット2のCPU20は、入力された患者情報に基づいて適切な、あるいは、使用可能な周波数帯域を有する振動子アレイ6が搭載されたフロントユニット3を選択する。
【0030】
続くステップS2において、バックユニット2のCPU20が無線通信によりミドルユニット4のCPU15に問い合わせ、さらにミドルユニット4のCPU15がフロントユニット3のCPU10に確認することで、バックユニット2のCPU20は、ステップS1で選択されたフロントユニット3がミドルユニット4に装着されたか否かを認識する。
【0031】
選択されたフロントユニット3がミドルユニット4に装着されていることが認識されると、バックユニット2のCPU20は、ステップS3で、オペレータによる検査開始の指示を待ち、検査開始の指示が入力されると、ステップS4に進んで検査モードを実行した後、ステップS5で、オペレータによる検査終了の指示を待つ。検査を終了する旨の指示が入力されると、そのまま一連の検査処理を終了し、一方、検査を終了しないで続行する旨の指示が入力されると、ステップS1に戻って、再び検査情報の入力を受け付ける。
【0032】
なお、ステップS4の検査モードにおいては、例えば、図3に示されるように、Bモード、CFモード、PWモード、Mモード等の予め設定された複数の検査モードのうちのいずれか1つ、あるいは2つ以上のモードを選択して実行することができる。すなわち、バックユニット2のCPU20は、ステップS1で入力された検査情報によりいずれの検査モードが指定されたかを確認し、ステップS11で、Bモードが指定されたことを確認すると、ステップS12に進んでBモードの検査を実施し、ステップS13で、CFモードが指定されたことを確認すると、ステップS14に進んでCFモードの検査を実施し、ステップS15で、PWモードが指定されたことを確認すると、ステップS16に進んでPWモードの検査を実施し、ステップS17で、Mモードが指定されたことを確認すると、ステップS18に進んでMモードの検査を実施する。そして、ステップS19で、今回の検査情報に基づく検査の終了を確認したところで、図2のステップS5へ進む。
【0033】
各モードの検査は、次のようにして実施される。
すなわち、まず、バックユニット2のCPU20から無線通信部16を介して動作制御命令が超音波プローブ1に送信される。この動作制御命令は、ミドルユニット4の無線通信部14で受信されてCPU15へ送られ、CPU15からコネクタ5を介してフロントユニット3のCPU10へ振動子アレイ6を駆動する旨の命令が出力される。
【0034】
この命令を受けたフロントユニット3のCPU10により送信駆動部9が振動子アレイ6に接続されるように送受信切替スイッチ7が作動され、送信駆動部9から供給される駆動信号に従って振動子アレイ6を構成する複数のトランスデューサから超音波が送信される。その後、CPU10により今度はプリアンプ8が振動子アレイ6に接続されるように送受信切替スイッチ7が作動され、被検体からの超音波エコーを受信した振動子アレイ6の各トランスデューサから出力された受信信号がプリアンプ8で増幅され、コネクタ5を介してミドルユニット4へ伝送される。
【0035】
ミドルユニット4へ伝送された受信信号は、A/Dコンバータ11でデジタル化された後、受信信号処理部12に供給されてサンプルデータが生成される。サンプルデータは、パラレル/シリアル変換部13でシリアル化された後に無線通信部14からバックユニット2へ無線伝送される。
バックユニット2の無線通信部16で受信されたサンプルデータは、シリアル/パラレル変換部17でパラレルのデータに変換され、画像形成部18でそれぞれの検査モードに対応した画像信号が生成され、この画像信号に基づいて表示部19に超音波診断画像が表示される。
【0036】
上述したように、ミドルユニット4に着脱可能に接続されるフロントユニット3には、特定の周波数帯域を有する振動子アレイ6だけでなく、この振動子アレイ6の周波数帯域に対応した周波数帯域を有するプリアンプ8と、振動子アレイ6の駆動電圧に対応した駆動電圧を出力する送信駆動部9も搭載されている。このため、従来のように、互いに異なる周波数帯域を有する複数の振動子アレイに対応するような、例えば2〜20MHz程度の広帯域のプリアンプと、複数の振動子アレイのうち最大の駆動電圧を有する振動子アレイに合わせて高い駆動電圧の送信駆動部を使用する、というオーバースペックなシステム構成を採用する必要がなく、小型で操作性に優れた超音波診断装置を実現することが可能となる。
【0037】
また、上記の実施の形態1では、フロントユニット3とミドルユニット4にそれぞれ専用のCPU10およびCPU15を搭載し、フロントユニット3内の各部をCPU10により制御すると共にミドルユニット4内の各部をCPU15により制御するようにしたので、フロントユニット3とミドルユニット4とを接続する制御信号線の数が低減され、これらユニットを小型のコネクタ5で着脱可能に接続することができる。
【0038】
実施の形態2
上記の実施の形態1で用いられた超音波プローブ1のフロントユニット3は、セクタスキャン方式に対応していたが、これに限るものではなく、例えば、リニアスキャン方式およびコンベックススキャン方式に対応させることもできる。
図4に、実施の形態2で用いられたフロントユニット31の構成を示す。このフロントユニット31は、図1に示した実施の形態1におけるフロントユニット3において、振動子アレイ6と送受信切替スイッチ7との間にマルチプレクサ32を接続したものであり、リニアスキャン方式およびコンベックススキャン方式に対応したフロントユニットである。
【0039】
CPU10の制御の下、振動子アレイ6を構成する複数のトランスデューサのうち一部のトランスデューサが順次選択され、選択されたトランスデューサによって超音波の送受信が行われる。これにより、リニアスキャン方式またはコンベックススキャン方式による超音波診断画像の取得が可能となる。
図1に示したようなセクタスキャン方式対応のフロントユニット3と、この実施の形態2におけるリニアスキャン方式およびコンベックススキャン方式対応のフロントユニット31の双方を事前に用意し、スキャン方式によっていずれかのフロントユニットを選択し、ミドルユニット4に接続して使用することもできる。
【0040】
実施の形態3
図5に、実施の形態3に係る超音波診断装置で用いられるフロントユニット41の構成を示す。このフロントユニット41は、図1に示した実施の形態1におけるフロントユニット3において、送受信切替スイッチ7を省略し、振動子アレイ6の代わりに、受信専用の受信振動子アレイ42をプリアンプ8に接続すると共に送信専用の送信振動子アレイ43を送信駆動部9に接続したものである。
なお、このフロントユニット41は、セクタスキャン方式に対応している。
【0041】
このように、受信専用の受信振動子アレイ42と送信専用の送信振動子アレイ43を備えているので、超音波送信時のクロストークが未然に回避され、より正確な超音波診断を行うことが可能となる。
【0042】
図5に示したフロントユニット41は、セクタスキャン方式に対応していたが、これに限るものではなく、図6に示されるフロントユニット51のように、受信振動子アレイ42とプリアンプ8との間にマルチプレクサ52を接続すると共に送信振動子アレイ43と送信駆動部9との間にマルチプレクサ53を接続することで、リニアスキャン方式およびコンベックススキャン方式に対応したフロントユニットを構成することができる。
【0043】
実施の形態4
図7に、実施の形態4に係る超音波診断装置で用いられるフロントユニット61の構成を示す。このフロントユニット61は、図1に示した実施の形態1におけるフロントユニット3において、送受信兼用の振動子アレイ6の他に、さらに高調波成分受信用振動子アレイ62をプリアンプ8に接続したものである。
なお、このフロントユニット61は、セクタスキャン方式に対応している。
【0044】
高調波成分受信用振動子アレイ62は、特に、高調波成分に適応した周波数帯域を有する振動子アレイである。このような高調波成分受信用振動子アレイ62を備えることにより、基本的な周波数帯域の超音波エコーを送受信兼用の振動子アレイ6で受信する一方、高調波成分を高調波成分受信用振動子アレイ62で受信することができ、より正確な超音波診断を行うことが可能となる。
【0045】
図7に示したフロントユニット61は、セクタスキャン方式に対応していたが、これに限るものではなく、図8に示されるフロントユニット71のように、送受信兼用の振動子アレイ6と送受信切替スイッチ7との間にマルチプレクサ72を接続すると共に高調波成分受信用振動子アレイ62とプリアンプ8との間にマルチプレクサ73を接続することで、リニアスキャン方式およびコンベックススキャン方式に対応したフロントユニットを構成することができる。
【0046】
実施の形態5
図9に、実施の形態5に係る超音波診断装置で用いられるミドルユニット81の構成を示す。このミドルユニット81は、図1に示した実施の形態1におけるミドルユニット4において、CPU15に超音波診断装置への入力操作を行うための操作部82と、情報表示を行うための表示部83をそれぞれ接続したものである。
【0047】
このように、超音波プローブ1のミドルユニット81に操作部82を搭載することにより、バックユニット2に無線接続された超音波プローブ1から各種の情報を入力して、超音波診断装置の操作を行わせることが可能となる。
また、超音波プローブ1のミドルユニット81に表示部83を搭載することにより、コネクタ5を介してミドルユニット81に接続されたフロントユニットの名称、種類等の情報を超音波プローブ1側で表示することができ、操作性および利便性が向上する。
なお、この実施の形態5では、ミドルユニット81に操作部82と表示部83の双方を搭載したが、操作部82および表示部83のうち一方のみをミドルユニット81のCPU15に接続してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 超音波プローブ、2 バックユニット、3,31,41,51,61,71 フロントユニット、4,81 ミドルユニット、5 コネクタ、6 振動子アレイ、7 送受信切替スイッチ、8 プリアンプ、9 送信駆動部、10,15,20 CPU、11 A/Dコンバータ、12 受信信号処理部、13 パラレル/シリアル変換部、14,16 無線通信部、17 シリアル/パラレル変換部、18 画像形成部、19,83 表示部、21,82 操作部、32,52,53,72,73 マルチプレクサ、42 受信振動子アレイ、43 送信振動子アレイ、62 高調波成分受信用振動子アレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブとバックユニットとが無線により接続され、前記超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した前記超音波プローブの振動子アレイから出力された受信信号に基づいて前記バックユニットが超音波画像を生成する超音波診断装置であって、
前記超音波プローブは、前記バックユニットに無線接続されるミドルユニットと、前記ミドルユニットに着脱可能に接続され且つ前記振動子アレイを有するフロントユニットとを備え、
前記フロントユニットは、前記振動子アレイに駆動信号を供給して超音波ビームを送信させる送信駆動部と、前記振動子アレイから出力された受信信号を増幅するプリアンプとを有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記フロントユニットおよび前記ミドルユニットは、それぞれ専用のCPUを有し、前記フロントユニットの前記プリアンプで増幅された受信信号を伝送する受信信号線と双方の前記CPU間で信号を伝送する通信線を含むコネクタを介して互いに着脱可能に接続される請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記フロントユニットは、前記振動子アレイに接続されたマルチプレクサを有する請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記振動子アレイは、送信専用の送信振動子アレイと受信専用の受信振動子アレイとを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記振動子アレイは、送受信兼用の兼用振動子アレイと高調波成分受信用の高調波振動子アレイとを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記ミドルユニットは、前記フロントユニットの前記プリアンプで増幅された受信信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、前記A/Dコンバータで変換されたデジタル信号をベースバンド帯域に周波数変調する受信信号処理部と、前記受信信号処理部で周波数変調された信号をシリアル化するパラレル/シリアル変換部とを有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記ミドルユニットは、前記超音波診断装置への入力操作を行うための操作部および情報表示を行うための表示部のうち少なくとも一方を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−55355(P2012−55355A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198566(P2010−198566)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】