説明

超高強度繊維補強モルタルの吹付け工法及びモルタル硬化体

【課題】現場養生のモルタル硬化体の圧縮強度が150N/mm以上、曲げ強度が20N/mm以上で、曲げ強度/圧縮強度比が1/9以上とする、吹付け工法を提供する。
【解決手段】特定の配合割合のセメント、シリカフューム、石炭ガス化フライアッシュおよび石膏からなる結合材と、前記結合材100質量部に対して細骨材50〜200質量部と、前記結合材と細骨材と水からなるモルタル1mに対して0.5〜3容量%の長さ5〜30mmの繊維類と、水とを練り混ぜて得られる超高強度繊維補強モルタルをポンプ圧送し、圧縮空気を用いて吹き付けて得られるモルタル硬化体の圧縮強度が150N/mm以上、曲げ強度が20N/mm以上で、曲げ強度/圧縮強度比が1/9以上である吹付け工法、及び超高強度繊維補強モルタル硬化体、である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、土木・建築業界で使用される、超高強度繊維補強モルタルの吹付け工法及びモルタル硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
モルタルやコンクリートは、基本的に圧縮強度に比較して曲げ強度が小さいのが課題であり、圧縮強度を高くしても曲げ強度はそれほど大きくならない。従来、曲げ強度を高めるためにはPC鋼材によりプレストレスを導入する方法や、膨張材によりケミカルプレストレスを導入する方法、金属繊維により補強する方法、及び鋼管に高強度なモルタルやコンクリートを充填した複合構造とする方法などが実施されている。
【0003】
金属繊維で補強した超高強度、高曲げを発現するセメント組成物やそれを用いたセメント系硬化体に関しては、例えば、セメント、平均粒径1.5μm未満のポゾラン物質、平均粒径1.5〜20μmの石英質粉末、骨材からなるセメント組成物と金属繊維を用いて圧縮強度1500kgf/cm(147N/mm)、曲げ強度150kgf/cm(14.7N/mm)以上のセメント系硬化体を得るものである(特許文献1参照)。
セメント、シリカフューム、石炭ガス化フライアッシュ、石膏、及び金属繊維を含有し、かつ、シリカフュームと石炭ガス化フライアッシュの割合が質量比で95〜50部:5〜50部である超高強度繊維補強セメント組成物や、このセメント組成物に細骨材を含有する超高強度繊維補強モルタル又はコンクリートに関するものも提案されている。(特許文献2参照)
引張強度等の機械的特性を改善することを目的とした材料としては,ビニロン短繊維を多量に配合してコンクリート又はモルタルを練り混ぜ,その短繊維を3次元ランダム配向させることで,引張強度および曲げ強度を向上させる材料も知られている(特許文献3〜8参照)。
【0004】
石炭ガス化フライアッシュとは、ガス化石炭を用いて発電する際の副産物として排出されるものであり、その球形粒子は、通常の微粉炭焚きのフライアッシュと比べると平均粒径が小さい。さらに、石炭ガス化フライアッシュの球形粒子表面は滑らかであるため、通常のフライアッシュよりボールベアリング作用が優れており、低水結合材比において高流動性の高強度モルタル又はコンクリート用として利用できることも既に提案されている(特許文献9参照)。
【0005】
石膏類は蒸気養生の有無にかかわり無く、高強度混和材として多用され、シリカフュームと組み合わせることによって、より高い強度や耐久性が得られる混和材として提案されている(特許文献10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−130508号公報
【特許文献2】特開2006−298679号公報
【特許文献3】特開2000−7395号公報
【特許文献4】特開2002−193653号公報
【特許文献5】特開2005−238605号公報
【特許文献6】特開2005−305682号公報
【特許文献7】特開2005−1965号公報
【特許文献8】特開2006−214080号公報
【特許文献9】特開2001−19527号公報
【特許文献10】特許第2581803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来知られているシリカフュームや石炭ガス化フライアッシュ及び石膏、繊維類を特定の範囲で組み合わせることで、吹付け工法により、現場養生のモルタル硬化体の圧縮強度が150N/mm以上、曲げ強度が20N/mm以上で、曲げ強度/圧縮強度比が1/9以上とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(1)シリカフュームと石炭ガス化フライアッシュの配合割合がシリカフューム95〜50質量部に対し石炭ガス化フライアッシュ5〜50質量部であり、シリカフュームと石炭ガス化フライアッシュの合計量が結合材中5〜40質量%、石膏がセメント100質量部に対して無水物換算で0.5〜8質量部である、セメント、シリカフューム、石炭ガス化フライアッシュおよび石膏からなる結合材と、前記結合材100質量部に対して細骨材50〜200質量部と、前記結合材と細骨材と水からなるモルタル1mに対して0.5〜3容量%の長さ5〜30mmの繊維類と、水とを練り混ぜて得られる超高強度繊維補強モルタルをポンプ圧送し、圧縮空気を用いて吹き付けて得られるモルタル硬化体の圧縮強度が150N/mm以上、曲げ強度が20N/mm以上で、曲げ強度/圧縮強度比が1/9以上であることを特徴とする吹付け工法、(2)超高強度繊維補強モルタルをポンプ圧送し、途中で圧縮空気以外に硬化促進剤を合流混合して吹き付ける(1)の吹付け工法、(3)練り混ぜた前記超高強度繊維補強モルタルをJIS R 5201に準じて作製したモルタル硬化体の圧縮強度に対して、圧縮強度比が1.0を超える(1)または(2)の吹付け工法で得られる超高強度繊維補強モルタル硬化体、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の超高強度繊維補強モルタルの吹付け工法に依れば、吹付け施工に適した流動性(作業性)を持ち、現場養生のモルタル硬化体の圧縮強度が150N/mm以上、曲げ強度が20N/mm以上で、曲げ強度/圧縮強度比が1/9以上で、かつ、練り混ぜた前記超高強度繊維補強モルタルをJIS R 5201に準じて作製したモルタル硬化体の圧縮強度に対して、圧縮強度比が1.0を超える超高強度繊維補強モルタル硬化体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳しく説明する。
なお、本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。
【0011】
本発明で使用するセメントは、普通、早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩性、及び白色等の各種ポルトランドセメント、高炉スラグや通常のフライアッシュをポルトランドセメントに混合した混合セメント、エコセメント、超早強セメントや急硬セメント等である。また、これらのセメントの複数を任意量混合したセメントも使用できる。なお、エトリンガイトを生成させるのに適した普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、高炉スラグセメント等がより好ましい。
【0012】
本発明で使用するシリカフュームは、金属シリコンやフェロシリコン等のシリコンアロイを電気炉等で製造する際に副生する球形の超微粒子であり、主成分は非晶質SiOである。シリカフュームの添加により、セメント硬化体の圧縮強度は高くなるが、圧縮強度に対する曲げ強度の比率は無混和の場合よりも低下する場合もある。さらに、シリカフュームは球形の超微粒子であるので、高性能減水剤等と併用すると、セメント混練物に良好な流動性が得られる。
【0013】
本発明で使用する石炭ガス化フライアッシュ(Coal Gasification Fly Ash、以下CGFAと略す)は、上述したように、ガス化石炭を用いて発電する際の副産物として排出されるものであり、燃焼ガスと一緒にボイラーの煙道から廃棄され、集塵機で回収される最大粒子が5〜10μmの球形の微粒子である。また、通常の石炭焚きフライアッシュとは粒子径や粒子表面性状が異なると共にSiO含有量も高いという特徴がある。CGFAはシリカフュームと同様に粒径が球状であるので、高性能減水剤と併用すると流動性を高める効果を有するが、ポゾラン活性はシリカフュームより低いので強度増進効果は小さい。
【0014】
本発明では、シリカフューム95〜50部とCGFA5〜50部の割合で配合するのが好ましい。この特定割合で混合することによりセメント混練物の流動性やセメント硬化体の曲げ強度を相乗的に高めることが可能となる。
CGFAが5部未満では流動性や曲げ強度の改善効果は小さく、50部を超えると圧縮強度の低下を招くことになる。シリカフュームに対するCGFAの配合割合は、CGFAが増えるにつれて流動性も曲げ強度も改善効果が順次大きくなる。しかし、ピークの値を超えると、CGFA量が増えるにつれて、それらの改善効果が低下する。
したがって、シリカフュームとCGFAの配合割合のより好ましい範囲はシリカフューム90〜60部、CGFA10〜40部である。
特定の比率のシリカフュームとCGFAは合計量で、セメント100部に対して5〜40部添加される。5部未満では流動性の向上及び圧縮強度や曲げ強度に対する強度増進効果が小さく、40部を超えて添加した場合、流動性の低下をもたらすと同時に添加率に応じた強度増進効果が期待できないので、性能的にも経済的にも好ましくない。より好ましい範囲は7〜30部である。
【0015】
さらに、本発明で使用する石膏は、二水石膏、半水石膏、可溶性無水石膏(III型)、及び不溶性無水石膏(II型)等の各種形態の石膏が使用されるが、より好ましくは無水石膏である。石膏は、水和初期には一旦カルシウムアルミネートの水和を抑えて流動性を高め、その後、水和反応によって針状結晶のエトリンガイトを生成する。このエトリンガイトはセメント硬化体中の空隙を充填して密実化を促し、高強度化を可能とする。
石膏は、セメント100部に対して無水物換算で0.5〜8部配合され、0.5部未満では流動性や強度を高める作用は小さく、8部を超えて配合してもそれ以上強度の増進効果が期待できない。好ましくは1〜5部である。
【0016】
本発明で使用される細骨材は、生コン工場で用いられている川砂や砕砂が最も入手し易いので好ましいが、特に限定はされない。より高い強度を得るために高硬度の焼成ボーキサイトや鉄鉱石、石英へん岩、その他の細骨材を使用することには制限は受けないものである。また、最大骨材寸法を小さくするなどの特殊な粒度構成にする必要もないが、目的と用途によっては、最大骨材寸法を制限しても良い。通常は、土木学会や建築学会で規定している粒度構成のもので十分である。
細骨材はセメントとシリカフュームとCGFAと石膏の合計(以下、単に結合材という)100部に対して、50〜300部配合する。50部未満ではセメント硬化体が脆性的な性状を示し、曲げ強度が小さくなる場合がある。また、300部を超えると、高性能減水剤を最大限に活用しても150N/mm以上の圧縮強度を得ることが困難となる。より好ましい範囲は、60〜150部である。
さらに、任意量の粗骨材を併用することも可能である。粗骨材の品質も細骨材と同様に特に限定されるものではなく、生コン工場で用いられているものなどを使用することが可能である。
【0017】
本発明で使用される硬化促進剤とは、練り混ぜて得られるモルタルやコンクリートの硬化を促進するもの、可塑性を付与するものであり、圧送途中で添加し吹付けることで、厚付けができる効果を付与する。硬化促進剤を添加しないと、1回の吹付け厚みは、20mm前後であるが、硬化促進剤を添加することで、300mm前後まで厚付けが可能となる。
硬化促進剤の種類としては、セメントの凝結を促進するもので、圧縮強度が150N/mm以上、曲げ強度が20N/mm以上を確保できれば、特に限定するものではない。例えば、市販されているカルシウムアルミネート系促進剤、カルシウムサルホアルミネート系促進剤、アルミン酸塩系促進剤、硫酸アルミニウム系促進剤、ケイ酸塩系促進剤などが挙げられる。
また、可塑性を付与するものとしては、アクリル酸エステル系の高分子化合物や粘土鉱物なども使用できる。硬化促進剤は粉状および液状いずれも使用可能である。
硬化促進剤の使用量は、セメント100部に対して0.1〜10部が好ましく、0.5〜6部がより好ましい。0.1部未満では、厚付け性が発揮できない場合があり、10部を超えると強度発現性を阻害する場合がある。
【0018】
本発明の超高強度繊維補強モルタルを製造する際に、結合材100部に対して、練り混ぜ水と高性能減水剤の合計量で15〜25部配合(以下、単に水比という)することが好ましい。ただし、この場合の高性能減水剤は固形分濃度に関係なく液体状態で市販されている減水剤を示す。粉末の状態で市販されている高性能減水剤を使用する場合は15〜25部の中には含めない。
練り混ぜ水が15部未満では、細骨材を少なくして高性能減水剤の減水率が最大となる質量を配合しても良好な流動性は得難く、25部を超えると目的とする高い強度は得られない。
本発明の超高強度繊維補強セメント組成物等に使用できる高性能減水剤には、単に高性能減水剤と称されるものや高性能AE減水剤と称されるものなどである。
高性能減水剤の種類や配合量は特に限定されるものではないが、いずれの種類の高性能減水剤でもセメント100部に対する使用量は多くても液体状態で5部であり、好ましくは4部である。5部を超える量を配合しても減水率を高めることができない場合が多い。粉末の場合は、多くても3部であり、好ましくは2部である。
【0019】
高性能減水剤とは、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤、芳香族アミノスルホン酸塩系高性能減水剤、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能減水剤、および、ポリカルボン酸塩系減水剤などのいずれかを主成分とするものであり、これらの一種又は二種以上が使用されるものである。ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤には、メチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、及びアントラセンスルホン酸ホルマリン縮合物などがあり、減水率が大きくて空気連行性がなく、凝結遅延性も小さい特徴を有する反面、フローやスランプ保持性が小さいという課題を有する。
市販品としては、電気化学工業(株)社商品名「FT−500」とそのシリーズ、花王(株)社商品名「マイティー100(粉末)」や「マイティー150」とそのシリーズ、第一工業製薬(株)社商品名「セルフロー155」、竹本油脂(株)社商品名「ポールファインMF」等、及び(株)フローリック社商品名「フローリックPS」とそのシリーズなどが代表的である。芳香族アミノスルホン酸塩系高性能減水剤としては、(株)フローリック社商品名「フローリックVP200」とそのシリーズがあり、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能減水剤には、グレースケミカルズ社商品名「ダーレックスFT−3S」、昭和電工建材(株)社商品名「モルマスターF−10(粉末)」や「モルマスターF−20(粉末)」が挙げられる。
高性能AE減水剤は、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤、芳香族アミノスルホン酸塩系高性能減水剤、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系の改良型もあるが、一般的にはポリカルボン酸塩系減水剤を意味する場合がある。ポリカルボン酸塩系減水剤は不飽和カルボン酸モノマーを成分として含む共重合体又はその塩であり、例えばポリアルキレングリコールモノアクリル酸エステル、ポリアルキレングリコールモノメタクリル酸エステル、無水マレイン酸及びスチレンの共重合体やアクリル酸やメタクリル酸塩の共重合体及びこれらの単量体と共重合可能な単量体から導かれた共重合体などが主流であり、高性能減水剤系よりも少ない添加量で減水率が大きい。一般に、空気連行性を有し、凝結硬化の遅延性も大きい反面、フローやスランプ保持性が良好であるという特徴を有する。
市販品としては、(株)エヌエムビー社商品名「レオビルドSP8N,8HU」シリーズ、フローリック(株)社商品名「フローリックSF500S」シリーズ、竹本油脂(株)社商品名「チュポールHP8」、「チュポールHP11」シリーズ、グレースケミカルズ(株)社商品名「ダーレックススーパー100」、「ダーレックススーパー200」、「ダーレックススーパー300」、「ダーレックススーパ1000」シリーズ、花王(株)社商品名「マイティー3000」、「マイティー21WH」、「マイティー21WH」シリーズ、その他が市販されている。
【0020】
本発明の超高強度繊維補強モルタルに使用される繊維類は長さが5〜30mmで、直径が0.05〜1mmの繊維類であり、モルタル1m当たり0.5〜3容積%配合される。長さが30mmを超えるとモルタルの流動性が低下し、その結果として曲げ強度の向上が大きくない。また、5mm未満では細骨材の最大寸法より短くなるため、曲げ応力作用時の繊維補強効果が小さくなり、曲げ強度が低下する。好ましくは8〜20mmである。
繊維類の種類としては、ビニロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、鋼繊維等が挙げられる。強度の点で、ビニロン繊維、アラミド繊維、炭素繊維、金属繊維の使用が好ましい。
繊維類の直径は0.01mm未満では繊維そのものの強度が弱くなるので曲げ強度は向上し難い場合があり、1mmを超えると配合量を多くしても繊維類のモルタル中の単位体積あたりの本数が少なくなるので曲げ強度は向上しなくなる。
繊維類の配合量はモルタル1m中に0.5〜3容積%であり、0.5容積%未満では曲げ強度を向上させる効果は小さく、3容積%を超えて配合しても曲げ強度の配合率に応じた増加は大きくない。好ましくは0.7〜2.5容積%である。
【0021】
本発明の超高強度繊維補強モルタルの練り混ぜ方法は、通常行われている練混ぜ方法で良い。なお、強制練り混ぜ型ミキサを使用する場合、繊維を添加するタイミングは、モルタルに流動性がでてきた時点でミキサに投入して、再度練り混ぜするのが好ましい。また、繊維類は予めドライのモルタルに分散混合させた状態のものを使用してもよい。
【0022】
本発明では、高炉スラグ微粉末、高炉徐冷スラグ微粉末、膨張材、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、保水剤、顔料、高分子エマルジョン、ハイドロタルサイト等のアニオン交換体や各種添加剤、石灰石微粉末等からなる群のうちの1種又は2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することが可能である。
【0023】
本発明の吹付け工法は、特に限定されるものではなく、通常行われている設備が使用できる。例えば、練り混ぜたモルタルを圧送するポンプとしては、ピストンポンプ、スクイズポンプ、スネークポンプ等が使用できる。
圧送するためのホースは通常は2MPa以上の耐圧ホースを使用する。圧送距離は、特に限定するものではないが、ポンプの能力やホース径にもよるが、ホース内のロスや、閉塞時のトラブルを考慮すると50m程度が最大である。
吹付けノズルは、特に限定するものではなく、通常市販されているものが使用できる。硬化促進剤を併用する場合も通常市販されているものが使用できる。硬化促進剤を合流する場合は、液体であれば圧送ポンプを使用して圧送されてくるモルタルと合流させるが、ポンプの種類は特に限定するものではなく、スクイズポンプやプランジャーポンプが使用できる。加圧しながら圧送できることからプランジャーポンプの使用が好ましい。粉体の硬化促進剤を使用する場合は、粉体を空気搬送できる添加システムを使用すればよい。例えば、電気化学工業社製 粉体空気輸送装置「ナトムクリート」のようなシステムが挙げられる。硬化促進剤の添加方法としては、液体の場合、直接圧送されてくるモルタルに液を圧送し混合してもよく、モルタルに混合する手前で圧縮空気と合流させミスト状としたものを混合してもよい。粉体の場合は空気搬送方式であるため圧縮空気と粉体の硬化促進剤が混合される。
吹付け施工に使用する圧縮空気は、コンプレッサーの空気圧力が0.4MPa以上が好ましい。0.4MPaより小さいと、吹き付けたモルタルの圧縮強度比が1.0を下回る場合がある。吹付けに使用する圧縮空気の空気流量は、モルタルの吐出量によって変える必要がある。変えるときは、コンプレッサーの種類を変えたり、圧縮空気が圧送されてくるモルタルと合流する手前にバルブを設け、流量を調整することが可能である。概ね、時間あたりの吐出するモルタル容量(m/hr)に対して40倍以上の空気流量(m/hr)が好ましい。40倍を下回ると吹き付けたモルタルの圧縮強度比が1.0を下回る場合がある。
【0024】
本発明の超高強度繊維モルタルの養生方法は限定されるものではなく、場所打ちでは通常の養生方法、製品工場では蒸気養生、オートクレーブ養生、及び温水養生等が可能である。
【0025】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明するが、これらに限られるものではない。
【実施例】
【0026】
実施例で使用する材料と試験項目とその方法を以下にまとめて示す。
【0027】
(使用材料)
セメント:電気化学工業(株)社製、普通ポルトランドセメント、密度3.16g/cm
細骨材:新潟県姫川産川砂、5mm以下、密度2.62g/cm
SF:シリカフューム、エルケム社製、密度2.44g/cm
CGFA:オランダ産石炭ガス化フライアッシュ、密度2.44g/cc
石膏:不溶性無水石膏、天然産、密度2.82g/cm
高性能減水剤:ポリカルボン酸塩系減水剤、グレースケミカルズ(株)社製「スーパー1000N」
繊維A:直径0.2mm、長さ15mmの鋼製、引張強度2000N/mm、密度7.80g/cm
繊維B:直径0.2mm、長さ12mmのビニロン繊維、引張強度1600N/mm、密度1.3g/cm
繊維C:直径0.012mm、長さ12mmのアラミド繊維、引張強度3500N/mm、密度1.39g/cm
繊維D:直径0.05mm、長さ12mmの炭素繊維、引張強度4000N/mm、密度1.8g/cm
【0028】
(試験方法)
モルタルの練り混ぜとフローの測定:JIS R 5201に準じた。フローは、抜き上げたときの静置フロー値(mm)とした。
圧送性:練り混ぜたモルタルをスクイズポンプで内径40mmの耐圧ホースで20mモルタルを吐出量0.5m/hrで圧送したとき、圧送圧力が2.5MPaを超えた場合は圧送負荷が大きいと判断し、それより小さければ圧送負荷が小さいと判断した。
モルタル強度の測定方法:曲げ強度および圧縮強度はJIS R 5201に準じて測定した。モルタルは直接4×4×16cmの三連型枠に吹付けて成型した。養生方法は、成形した超高強度繊維モルタル供試体は直ちに20℃恒温室内で型枠上面をビニールシートにより封緘養生後、翌日脱型し、20℃で水中養生し所定材齢で強度測定試験を実施した。
磨耗量:JIS K 7204の準拠して行った。磨耗試験用の試験体はφ10×1cm。養生方法は強度試験と同じ。磨耗条件は、荷重1000g、回転数1000rpm。
【0029】
「実施例1」
セメント、シリカフューム、石炭ガス化フライアッシュおよび石膏からなる結合材100部に対して、細骨材100部、水(減水剤を結合材に対して1.5部を含む)19部、結合材と細骨材と水からなるモルタル1mに対して繊維Aの配合率を0.8容積%として、結合材の中のシリカフューム(SF)と石炭ガス化フライアッシュ(CGFA)の合計に対するそれぞれの配合割合(%)とそれらの合計量の結合材中の配合割合(%)、石膏の結合材中の配合割合(%)を任意に変えて超高強度繊維モルタルをダマカットミキサーで5分間練り混ぜ、スクイズポンプで内径40mmの耐圧ホースで20mモルタルを吐出量0.5m/hrで圧送した。ノズル出口手前で、空気圧0.7MPa、空気流量0.6m/minの圧縮空気を導入して吹付けてモルタル供試体を作製し、圧縮強度と曲げ強度を測定した。結果を表1に示す。なお、練り混ぜたモルタルを吹付けないで型枠に詰めて成型して作製したモルタル供試体についても測定した。
【0030】
【表1】

【0031】
「実施例2」
実施例1の実験No.1-16の配合のモルタルを圧送し、吹付けノズル手前で圧縮空気と、硬化促進剤をセメント100部に対して表2に示すように混合した。結果を表2に示す。
【0032】
(使用材料)
硬化促進剤A:硫酸アルミニウム系液体硬化促進剤、主成分:硫酸アルミニウム、固形分22%
硬化促進剤B:カルシウムサルホアルミネート系粉体硬化促進剤、商品名:ナトミックT−10
硬化促進剤C:ケイ塩系液体硬化促進剤、ケイ酸リチウム水溶液、固形分20%
硬化促進剤D:アクリル酸エステル共重合体系エマルジョン液体硬化促進剤、固形分5%
【0033】
(試験方法)
厚付け性:吹付け面コンクリート製の垂直面とし、ノズルと吹付け面の距離を30cmとして直角に固定して吹付けを実施した。吹き付けたモルタルが剥がれ落ちるまでの厚みを測定した。
【0034】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の超高強度繊維補強モルタルの吹付け工法に依れば、吹付け施工に適した流動性(作業性)を持ち、現場養生のモルタル硬化体の圧縮強度が150N/mm以上、曲げ強度が20N/mm以上で、曲げ強度/圧縮強度比が1/9以上で、かつ、練り混ぜた前記超高強度繊維補強モルタルをJIS R 5201に準じて作製したモルタル硬化体の圧縮強度に対して、圧縮強度比が1.0を超える超高強度繊維補強モルタル硬化体が得られるので、橋梁用構造部材、橋梁用付属物、地下構造部材、ダム構造部材、海洋構造部材、建築構造部材、建築建材、土木建築資材や耐磨耗が要求される水利構造部材等に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカフュームと石炭ガス化フライアッシュの配合割合がシリカフューム95〜50質量部に対し石炭ガス化フライアッシュ5〜50質量部であり、シリカフュームと石炭ガス化フライアッシュの合計量が結合材中5〜40質量%、石膏がセメント100質量部に対して無水物換算で0.5〜8質量部である、セメント、シリカフューム、石炭ガス化フライアッシュおよび石膏からなる結合材と、前記結合材100質量部に対して細骨材50〜200質量部と、前記結合材と細骨材と水からなるモルタル1mに対して0.5〜3容量%の長さ5〜30mmの繊維類と、水とを練り混ぜて得られる超高強度繊維補強モルタルをポンプ圧送し、圧縮空気を用いて吹き付けて得られるモルタル硬化体の圧縮強度が150N/mm以上、曲げ強度が20N/mm以上で、曲げ強度/圧縮強度比が1/9以上であることを特徴とする吹付け工法。
【請求項2】
超高強度繊維補強モルタルをポンプ圧送し、途中で圧縮空気以外に硬化促進剤を合流混合して吹き付けることを特徴とする請求項1記載の吹付け工法。
【請求項3】
練り混ぜた前記超高強度繊維補強モルタルをJIS R 5201に準じて作製したモルタル硬化体の圧縮強度に対して、圧縮強度比が1.0を超える請求項1または請求項2記載の吹付け工法で得られる超高強度繊維補強モルタル硬化体。

【公開番号】特開2010−180106(P2010−180106A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25902(P2009−25902)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】