説明

超高速光電子顕微鏡のための方法およびシステム

【課題】ナノスケールの高分解能画像を得る。
【解決手段】1以上の試料を特徴付けるための超高速システム(および方法)である。特徴付けられる試料を有するステージ組立部を含む。持続時間が1ピコ秒未満の光パルスを放射することができるレーザー源を有する。レーザー源に接続されたカソードを有し、特定の実施例において、カソードは1ピコ秒未満の電子パルスを放射することができる。ステージ上の試料に電子パルスの焦点を合わせられる電子レンズ組立部を有する。試料を通過する電子を捕らえる検出部を有する。検出部はプロセッサを有し、試料の構造を代表する試料を通過する電子に関連付けられた信号(たとえば、データ信号)を供給する。プロセッサは、試料の構造に関連付けられた情報を出力するために、試料を通過する関連付けられたデータ信号を処理し、出力デバイスに出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2004年4月2日に出願され、“超高速高電子顕微鏡”と題された米国仮出願番号60/559,234の米国仮出願と、2004年6月7日に出願され、“空間および時間における3次元構造力学の域を超えた回折、結晶学、顕微鏡法”と題された米国仮出願番号60/577,902の米国仮出願とに共通に割り当てられた利益を主張する。これらは参照としてここに組み込まれる。
【0002】
[政府支援の研究開発下でなされた発明の権利に関する声明]
ここに記載された研究は、部分的に、NSFグラント(grant)CHE−0117850によりサポートされている。米国政府は、それゆえ、本発明の一部の権利を持つかもしれない。
【0003】
本発明は、一般に、物体の画像化に関する。特に、本発明は、透過型電子顕微鏡システムにおいて、おおよそ1から10000個の電子を含み、好ましくはおおよそ10から100個の電子を含む粒子の1個以上のパルスを用いて、1以上の物体を画像化する方法およびシステムを提供する。さらには、本発明は、画像化されているいくつかの(certain)物体の1以上の空間的特徴に関連付けられた1以上の一時的な要素についての情報を認識するための方法およびシステムを提供する。単に一例として、本発明は特定の化学的物体、物理的物体、生物学的物体を画像化するのに適用される。しかし、本発明は、たとえば、生物学の他の領域、化学(たとえば、有機化学、物理化学、生物化学)、医学(たとえば、医療機器、診断、分析、治療)、物理科学、電子工学、半導体素子や材料(たとえば、シリコン、ゲルマニウム、III/V族半導体、II/VI族半導体)、化学薬品(たとえば、工業用化学薬品)、石油化学品(たとえば、ガス、オイル)、これらの任意の組み合わせ、その他、別の用途にも適用できる。本発明は、オリゴマー、ペプチド、核酸、オリゴ糖、リン脂質、ポリマー、たんぱく質、ドラッグコンジナープリパレーション(a drug congener preparation)、その他の種および/または実体(entities)のような特定の化合物および/または分子の処理やスクリーニングを含む用途に適用してもよい。さらに、本発明は回折、分光学、その他の領域等に適用してもよい。さらにまた、本発明は、実施例次第によって、材料、フィルム、化合物、および/または他の種の形成/分解をモニターすることに適用してもよい。
【背景技術】
【0004】
20世紀は、顕微鏡を用いて分子の世界を垣間見るという我々の能力において、特定の重要な発展の目撃者であり、その結果、我々はそれらの静的な振る舞いに対する比類なき洞察力を与えられた。たとえば、電子顕微鏡、特に透過型電子顕微鏡(TEM)は、2〜3(a few)オングストロームの空間分解能を持つ高分子の静的構造を直接画像化する手段を提供する。これらの従来の電子顕微鏡システムは、たとえば、生体高分子結晶を画像化するのに採用された。これらの画像化の発達にかかわらず、構造的進化の動的な面、機能を理解するのに望ましい洞察力は、現在では、利用できる静的な画像から得ることはできない。従来の電子顕微鏡学に時間的な(temporal)分解能が欠如しているためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
化学的、特に生物学的な変化が様々なありうるコンフォーメーション(conformation)とともに複雑で一時的な構造を含む場合、しばしば3次元的(3D)の分子構造の性質に注意をしなければならないが、変化の最中にはそれぞれ異なった時間に注意を払わなければならない。ほとんどの生物学的に重要なプロセスでは、構造的な変化は可逆である。すなわち自称の開始および関連する応答においては、繰り返されうる非破壊的な反応が起こるということである。不幸なことに、従来の顕微鏡学の技術では限界が存在する。たとえば、従来の電子顕微鏡は一般に、望ましい時間の分解能とともに生物学的な長さのスケール(ナノメートルからマイクロメートル)の空間分解能を持った画像を作ることができない。従来の技術におけるこれらまたは他の制限は、本明細書中に記載され、以下にさらに記載される。
【0006】
それゆえ、物理学的、化学的、生物学的、その他試料(samples)を原子的な規模で画像化する、向上した方法が技術的に必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、物体の映像化に関する技術が提供される。特に、本発明は、透過型電子顕微鏡システムにおいて、おおよそ1から10000個の電子を含み、好ましくはおおよそ10から100個の電子を含む粒子の1個以上のパルスを用いて、1以上の物体を画像化する方法およびシステムを提供する。さらには、本発明は、画像化されているいくつかの物体の1以上の空間的特徴に関連付けられた1以上の一時的な要素についての情報を認識するための方法およびシステムを提供する。単に一例として、本発明は特定の化学的物体、物理的物体、生物学的物体を画像化するのに適用される。しかし、本発明は、たとえば、生物学の他の領域、化学(たとえば、有機化学、物理化学、生物化学)、医学(たとえば、医療機器、診断、分析、治療)、物理科学、電子工学、半導体素子や材料(たとえば、シリコン、ゲルマニウム、III/V族半導体、II/VI族半導体)、化学薬品(たとえば、工業用化学薬品)、石油化学品(たとえば、ガス、オイル)、これらの任意の組み合わせ、その他、別の用途にも適用できる。本発明は、オリゴマー、ペプチド、核酸、オリゴ糖、リン脂質、ポリマー、たんぱく質、ドラッグコンジナープリパレーション、その他の種および/または実体のような特定の化合物および/または分子の処理やスクリーニングを含む用途に適用してもよい。さらに、本発明は回折、分光学、その他の領域等に適用してもよい。さらにまた、本発明は、実施例次第によって、材料、フィルム、化合物、および/または他の種の形成/分解をモニターすることに適用してもよい。
【0008】
いくつかの実施例によれば、細胞レベル下のレベルにおいて、本発明はペプチドまたは化学的化合物(薬品)と酵素の活性点との相互作用に適用してもよく、ペプチドまたは小さな分子とたんぱく質表面との任意の可逆な相互作用に適用してもよい。本発明はたんぱく質または酵素と標的の核酸とを束縛する核酸の相互作用に適用してもよい。たとえば、特定のDNA配列への転写因子の束縛、または酵素とDNAとの相互作用、DNA表面に沿っての束縛と走査、またはDNAへの挿入、に適用してもよい。本発明は核酸−核酸の相互作用に適用してもよい。たとえば、特定の実施例にしたがって、リボザイムとRNAとの相互作用に適用してもよい。
【0009】
いくつかの実施例によれば、細胞レベルにおいて、本発明は化合物、たんぱく質、ウイルスまたは細胞と膜との相互作用であって、化合物、たんぱく質、ウイルスまたは細胞が膜に触れると膜を通過するような相互作用にも適用してもよい。これらまたは他の適用については以下に詳細に記載する。
【0010】
特定の実施例において、本発明では、たとえば、生物学的、化学的、物理学的な1以上の試料を画像化するためのシステムを提供する。本システムではステージ組立部(stage assembly)を有し、ステージ組立部は画像化される試料を含む。好ましくは、本システムは持続時間が1ピコ秒(“ps”)より短い光(optical)パルスを放射することができるレーザー源を有する。本システムはレーザー源と連結されているカソードを有する。好ましい実施例において、カソードは、持続時間が1ピコ秒より短い電子パルスを放射することができ、他の持続時間のパルスも放射できる。電子レンズ組立部(An electron lens assembly)はステージ上に配置された試料に電子パルスの焦点を合わせるために適合される。検出部は試料を通過した1以上の電子を捕らえるために適合される。試料を通過した1以上の電子は、試料の画像を代表するものである。検出部は、試料の画像を代表し試料を通過した1以上の電子に関連付けられた信号(たとえば、データ信号)を提供する。本システムは検出部と連結されているプロセッサを有する。好ましい実施例において、プロセッサは試料によって代表される画像に関連付けられた情報を出力するための、試料を通過した1以上の電子に関連付けられたデータ信号を処理するために適合される。出力デバイスはプロセッサに連結される。出力デバイスは試料によって代表される画像に関連付けられた情報を出力するために適合される。
【0011】
代替の特定の実施例において、本発明は、レーザー源、カソード、電子レンズ組立部から構成される透過型電子顕微鏡の操作方法を提供する。本方法は列車のように繋がった光パルスを形成することを含む。それぞれの光パルスは持続時間が1ピコ秒未満の半値全幅(Full Width Half Maximum、“FWHM”)パルス長によって特徴付けられる。本方法は、ステージ組立部上に配置される画像化のための試料と、列車のように繋がった光パルスがカソードに衝突することによって発生する列車のように繋がった電子パルスを生成することとを含む。列車のように繋がった電子パルスは、列車のように繋がった光パルスと関連付けられる。それぞれの列車のように繋がった電子パルスは、1ピコ秒未満のFWHMパルス長によって特徴付けられる。本方法は、列車のように繋がった電子パルスの一部を、試料の画像と関連付けられた情報を引き出すための検出装置(sensing device)を用いることで捕らえる。本方法は試料の画像に関連付けられた情報を処理する。
【0012】
さらにもうひとつの代替の特定の実施例において、本発明は時間分解された画像を得ることができる透過型電子顕微鏡(TEM)システムを提供する。本システムは光子パルスを生産するレーザーと、光子パルスを電子発生光子パルスと開始(initiation)光子パルスとに分けるために適合されたビームスプリッタ(beam splitter)とを有する。カソードは電子発生光子パルスによって活性化されることに反応した電子パルスを生成するために適合される。光学遅延ステージ(optical delay stage)は開始光子パルスと電子パルスとの間の時間遅延を導入するために適合される。本システムは開始光子パルスおよび電子パルスにより照射された試料を有する。本システムは、電子パルスによって試料が照射されることに反応して試料の画像を生成する電子検出器を有する。代わりに、電子検出器は、他の実施例において、電子パルスによって試料が照射されることに反応して資料の他の情報を生成する。
【0013】
さらに、本発明では電子ビームパルスを用いて、1以上の試料から画像を形成する方法を提供する。本方法は画像化される試料の特徴(feature)を提供することを含む。その特徴は、特定の実施例にしたがって、約100ナノメートルまたはそれ未満のサイズを有する。本方法は、ステージ組立部に試料を置くことと、真空環境においてステージ組立部に試料を維持することとを含む。本方法は、試料の特徴の方向に1以上の電子パルスを導くことを含む。好ましくは、特定の実施例によれば、1以上の電子パルスは、それぞれ、他の個数の電子を有することができるにもかかわらず、約10から約1000個の電子を有する。本方法は、検出装置を用いて、1以上の電子パルスの一部をとらえる。1以上の電子パルスの一部は、試料の特徴の画像と関連付けられている。本方法は、試料の特徴の画像と関連付けられた1以上の電子パルスの一部に関連付けられている情報を検出装置から処理デバイスに転送することを含む。本方法は、少なくとも試料の特徴の画像に関連付けられた1以上の電子パルスの一部に関連付けられている情報を用いて、試料の特徴に関連付けられた視覚映像を出力する。
【0014】
さらなる実施例において、本発明では電子顕微鏡を用いて時間分解された画像を得る方法を提供する。本方法は画像化される試料の特徴を提供することを含む。本方法は試料をステージ組立部に置くことと、真空環境中にステージ組立部上の試料を維持することとを含む。本方法は試料の特徴の方向に1以上の電子パルスを導くことを含む。好ましい実施例において、1以上の電子パルスは、それぞれ約1個から約1000個の電子を有する。本方法は、時間の最初の部分の間に、検出装置を用いて、1以上の電子パルスの最初の部分を捕らえることを含む。1以上の電子パルスの部分は、時間の最初の部分の間の試料の特徴の最初の画像に関連付けられている。本方法は、時間の最初の部分の試料の特徴の最初の画像に関連付けられた1以上の電子パルスの最初の部分に関連付けられた最初の情報を、検出装置から処理デバイスに転送することを含む。本方法は、時間の第2の部分の間に、検出装置を用いて、1以上の電子パルスの第2の部分を捕らえる。その1以上の電子パルスの部分は、時間の第2の部分の間の試料の特徴の第2の画像に関連付けられる。本方法は、時間の第2の部分の間の試料の特徴の第2の画像に関連付けられた1以上の電子パルスの第2の部分に関連付けられる第2の情報を転送することを含む。好ましい実施例において、最初の画像は第2の画像と異なった特徴を有してもよい。
【0015】
また別の特別な実施例において、本発明は1以上の試料を特徴付けるためのシステムを提供する。本システムはステージ組立部を有し、ステージ組立部は特徴付けられる試料を有する。本システムは持続時間が1ピコ秒未満の光パルスを放射することができるレーザー源を有する。本システムはレーザー源に連結されたカソードを有する。特有の実施例において、カソードは持続時間が1ピコ秒未満の電子パルスを放射することができる。本システムはステージ上に配置された試料に電子パルスの焦点を合わせるために適合された電子レンズ組立部を有する。本システムは、試料を通過する1以上の電子を捕らえるために適合された検出部を有する。試料を通過する1以上の電子は試料の構造を代表する。本システムは検出部に連結されたプロセッサを有する。プロセッサは試料の構造に関連付けられた情報を出力するために、試料を通過する1以上の電子に関連付けられたデータ信号を処理するために合わせられる。本システムはプロセッサに連結された出力デバイスを有する。出力デバイスは試料の構造に関連付けられた情報を出力するために適合される。
【0016】
さらに、本発明は、電子ビームパルスを用いて1以上の試料から情報を得るための方法を提供する。その方法は電磁波放射線(electromagnetic radiation)のそれぞれのパルス、たとえばレーザーパルス、に由来する。本方法は画像化される試料の特徴を提供することを含む。本方法は真空環境に維持されたステージ組立部上に試料を置くことを含む。本方法は試料の特徴の方向に1以上の電子パルスを導くことを含む。特定の実施例において、1以上の電子パルスはそれぞれ、用途に応じて、約1個から約1000個の電子、または10個から100個の電子を有する。本方法は、検出装置を用いて1以上の電子パルスの一部を捕らえることを含む。1以上の電子パルスの一部は、試料の特徴の特徴づけ(たとえば、画像、回折特性)に関連づけられる。本方法は、試料の特徴の特徴づけに関連づけられた1以上の電子パルスの一部に関連付けられる情報を検出装置から処理デバイスに転送することを含む。任意に、本方法は処理デバイスを用いて情報を処理することを含む。本方法は、少なくとも試料の特徴の画像に関連付けられた1以上の電子パルスの一部に関連付けられる情報を用いて、試料の特徴に関連付けられた少なくとも1以上の指標を出力する。
【0017】
本発明の代替の特別の実施例において、電子顕微鏡を用いて時間分解された画像を得る方法が提供される。本方法は画像化される試料の特徴を供給することを含み、その特徴はサイズを有し、また、ステージ組立部上に試料を置く。本方法は真空環境中にステージ組立部上の試料を維持することと、試料の特徴に向けて最初の電子パルス列を導くこととをも含み、最初の電子パルス列は1ピコ秒未満の平均時間のパルス幅を有する。さらに、本方法は、時間の最初の部分の間に検出装置を用いて最初の電子パルス列の最初の部分を捕らえることを含み、最初の電子パルス列の部分は、時間の最初の部分の間の試料の特徴の最初の画像に関連付けられ、また、時間の最初の部分の間の試料の特徴の最初の画像に関連付けられた最初の電子パルス列の最初の部分に関連付けられる最初の情報を検出装置から処理デバイスに転送する。本方法は、さらに、試料の特徴の方向に第2の電子パルス列を導くことを含む。第2の電子パルス列は、1ピコ秒未満の平均時間パルス幅を有し、時間の第2の部分の間に検出装置を用いて第2の電子パルス列の第2の部分を捕らえる。第2の電子パルス列の部分は、時間の第2の部分の間の試料の特徴の第2の画像と関連付けられる。さらに、本方法は、時間の第2の部分の間の試料の特徴の第2の画像に関連付けられた第2の電子パルス列の第2の部分に関連付けられる第2の情報を検出装置から処理デバイスに転送することを含む。
【0018】
さらにもう一つの代替の特別な本発明の実施例において、試料の時間分解された特徴づけを実行する方法が提供される。本方法は光子パルスを提供することと、ビームスプリッタに光子パルスを電子発生光子パルスと開始光子パルスとに分解するように適合させることとを含む。本発明のこの観点に係る特別の実施例において、光子パルスは列車のように繋がった超高速光子パルス上にある。本方法は、カソードを電子発生光子パルスによって活性化されたことに反応して電子パルスを発生するように適合させることと、光遅延ステージを開始光子パルスと電子パルスとの間の時間遅延を取り込むように適合させることとを含む。本方法は、さらに、開始光子パルスと電子パルスとによって照射された試料を提供することと、電子検出器が電子パルスによる試料への照射に反応して試料の画像を生成するように適合させることとを含む。
【0019】
また、本発明による別の代替の実施例において、分光(spectroscopy)システムが提供される。本システムは、光子パルス列を生成するレーザーと、光子パルス列を電子生成光子パルス列と分光光子パルス列とに分けるために適合されたビームスプリッタと、分光光子パルス列の波長を開始時の波長に調整するために適合された非線形光学素子(optical element)と、を含む。本システムは、電子生成光子パルス列により活性化されることに反応して電子パルス列を生成するために適合されたカソードと、分光光子パルス列と電子パルス列との間の時間遅延を生成するために適合された光遅延ステージと、をも含む。さらに、本システムは分光光子パルス列と電子パルス列とによって照射された試料と、電子パルス列により試料が照射されたことに反応して試料の画像を生成する電子検出器と、を含む。
【0020】
さらに、本発明の実施例は、電子顕微鏡組立部(electron microscope assembly)を用いて1以上の物体の特徴の時間特性を決定する方法を提供する。本方法は1以上の特徴を含む試料を提供することを含む。試料はステージ組立部上に配置され、1以上の電子パルスを発生する。1以上の電子パルスは持続時間が1ピコ秒未満のFWHMパルス長を有する。本方法は検出の1周期に関連付けられた時間周期の間に試料の1以上の特徴の方向に1以上の電子パルスを導くことと、試料の1以上の特徴の特性に関連付けられた情報を引き出すために検出装置を用いて1以上の電子パルスの一部を捕らえることと、をも含む。本方法は、さらに、試料の1以上の特徴の時間的特性(たとえば、時間に関して変わるか、または変わらないかもしれない特徴)を識別するための情報を少なくとも処理することを含む。
【0021】
多くの利益が従来技術を超えて本発明を経由して得られる。たとえば、現在の技術では、特定の実施例にしたがって、空間と時間との両方の面から説明された試料の構造力学で、材料や生物学的構造を画像化する技術やシステムを提供する。さらに、本発明では、いくつかの実施例において、実装が容易なコンピュータコードを含む従来の電子技術を用いてもよい方法やシステムを提供する。本発明はまた、他の実施例において、生体物質に適合する温度で試料の画像を捕らえるために操作可能な方法やシステムを提供する。実施例に依存して、いくつかの方法やシステムは回折、画像化、結晶学、分光学、その他の技術に適用してもよい。いくつかの実施例において、本発明は、生物学的および/または化学的物体の小さな特徴を、回避しない方法で、すなわちしばしば低エネルギーであって、過大な熱エネルギーにしばしば繊細である物体に熱ダメージを引き起こさない方法で、画像化するための方法やシステムを提供する。いくつかの実施例において、本方法やシステムは特性において“断熱”である過程を含む。実施例に依存して、1以上のこれらの利益が得られるかもしれない。これらおよび他の利益は本明細書中でさらに記載され、さらに特に以下に記載される。
【0022】
本発明のさまざまな更なる目的、特徴、有利性は、詳細な記載および以下の随伴する図面の参照により、より十分に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】本発明の一実施例に係る超高速光電子顕微鏡システムの単純化された図である。
【図1B】本発明の一実施例に係る超高速光電子顕微鏡システムの単純化された透視図である。
【図1C】本発明の一実施例に係る超高速高電子顕微鏡システムを制御するコンピュータシステムの単純化された図である。
【図1D】本発明の一実施例に係る超高速光電子顕微鏡システムを制御するコンピュータハードウェアの単純化されたブロック図である。
【図2】本発明の一実施例に係る一連の図である。
【図3】本発明の一実施例に係る電子パルスを用いて得られた画像である。
【図4】本発明の一実施例に係る操作の回折モードを用いて得られた画像である。
【図5】本発明の一実施例を用いて得られた生物学的試料の画像である。
【図6】本発明に係る方法の使用を図解した単純化されたタイミング図である。
【図7】本発明の一実施例に係る画像化方法の単純化されたフロー図である。
【図8】本発明の一実施例に係る代替の画像化方法の単純化されたフロー図である。
【図9A】本発明の一実施例に係るさらに代替の画像化方法の単純化されたフロー図である。
【図9B】本発明の一実施例に係るパルス列を図解する単純化されたタイミング図である。
【図9C】本発明の一実施例に係る画像集を図解する単純化されたフローチャートである。
【図10】本発明の一実施例に係るさらに代替の画像化方法の単純化されたフロー図である。
【図11】本発明の一実施例に係る実験的結果の単純化された図である。
【図12】本発明の一実施例に係る実験的結果の単純化された図である。
【図13】本発明の一実施例に係る実験的結果の単純化された図である。
【図14】本発明の一実施例に係る実験的結果の単純化された図である。
【図15】本発明の一実施例に係る実験的結果の単純化された図である。
【図16】本発明の代替の一実施例に係る実験方法の単純化された図である。
【図17】本発明の代替の実施例に係る実験結果の単純化された図である。
【図18】本発明の代替の実施例に係る実験結果の単純化された図である。
【図19】本発明の代替の実施例に係る実験結果の単純化された図である。
【図20】本発明の特定の実施例に係る実験結果の単純化された図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明によれば、物体の画像化に関する技術が提供される。特に、本発明は、透過型電子顕微鏡システムにおいて、おおよそ1から10000個の電子を含み、好ましくはおおよそ10から100個の電子を含む粒子の1個以上のパルスを用いて、1以上の物体を画像化する方法およびシステムを提供する。さらには、本発明は、画像化されているいくつかの物体の1以上の空間的特徴に関連付けられた1以上の一時的な要素についての情報を認識するための方法およびシステムを提供する。単に一例として、本発明は特定の化学的物体、物理的物体、生物学的物体を画像化するのに適用される。しかし、本発明は、たとえば、生物学の他の領域、化学(たとえば、有機化学、物理化学、生物化学)、医学(たとえば、医療機器、診断、分析、治療)、物理科学、電子工学、半導体素子や材料(たとえば、シリコン、ゲルマニウム、III/V族半導体、II/VI族半導体)、化学薬品(たとえば、工業用化学薬品)、石油化学品(たとえば、ガス、オイル)、これらの任意の組み合わせ、その他、別の用途にも適用できる。本発明は、オリゴマー、ペプチド、核酸、オリゴ糖、リン脂質、ポリマー、たんぱく質、ドラッグコンジナープリパレーション、その他の種および/または実体のような特定の化合物および/または分子の処理やスクリーニングを含む用途に適用してもよい。さらに、本発明は回折、分光学、その他の領域等に適用してもよい。さらにまた、本発明は、実施例次第によって、材料、フィルム、化合物、および/または他の種の形成/分解をモニターすることに適用してもよい。本発明の実施例の詳細は、明細書中、さらに特に以下に見つけることができる。さまざまな実施例の詳細を議論する前に、我々はいくつかの情報を提供する。その情報は、我々が知ったものおよび/または発見したものであり、以下の実施例の記載に適用してもよい。
【0025】
20世紀の変わり目のX線に始まり、回折技術が原子の分解能で3次元の平衡構造を決定することを可能にした。システムにおいて、2分子(NaCl)からDNA、たんぱく質、ウイルスのような複雑な集合体までに及ぶ。力学に関しては、時間の分解能が、似たように、基本的な原子の規模での動きに達した。20年前のフェムト秒の時間分解能の到来と共に、非平衡分子システムの力学を実時間で研究することが可能になった:ごく小さなもの(NaI)から非常に大きいもの(DNA、たんぱく質、それらの集合体)までである。以下に説明する。
【0026】
化学結合の時間の振る舞いと同様に静的な構造をも捕らえるこの能力に身を固めて、世界中の研究者を今刺激する望みは、実時間で、反応中のすべての個別の原始の座標を細かい点まで取り決めること、たとえば、分子が選択された構造を形作ることを明らかにするとき、またはたんぱく質が細胞表面上にドッキングするときに取り決めることである。これらの過渡の構造は、化学的または生物学的分子(molecules)の機能への重要な洞察力を提供する。機能が親密に内在する構造動力学と関連付けられているように、分子の静的な構造を知ることは、しばしば、特に生物学の世界においては、どのように分子が機能するのかを解明する方向への最初の一歩に過ぎない。それゆえ、原子規模での平衡とはかけ離れた構造の実時間の“構造力学”をあきらかにすることは、複雑な化学的および生物学的システムの基本メカニズムを理解するために不可欠である。
【0027】
フェムト秒の分解能で時間分解された実験が、紫外部から赤外部および遠赤外部までの範囲のプローブ(probe)波長で過去になされた。この時間規模では、空間(波束)の局部的な構造を凍結させることができ、それらの進化を時間内に見ることができる−それゆえ化学および生物学において、遷移状態を経由して結合変化の初期の過程が明らかになるのである。
【0028】
いくつかの進歩が、光の遷移の周波数と時間的な進化とを関連づけるための多次元分光学においてなされ、したがって異なった緩和過程において構造的な変化を精査するのである。しかし、複雑な分子構造に関して、所定時間でのすべての原子の位置は、もしプローブがすべての原子の干渉を“見る”ことができるときにのみ得られることができる。X線または電子を用いた回折方法は、非常に高い空間分解能をもってすべての核間の座標を明らかにする唯一の可能性を持っており、それゆえ原子のレベルの詳細をもって超高速時間規模の構造変化の全体像を提供する。
【0029】
電子またはX線パルスを用いた回折技術は、原理上、いくつかの時間変化する分子構造を得るのに用いられることができる。これらのパルスは、しばしば、原子の動きを凍結させるのに十分な程度に短くなければならないが、識別できる回折パターンを提供するのに十分な程度に明るくなければならない。X線の場合、光子は分子試料の中で電子により散乱され、それゆえ開設強度は直接電子濃度に依存する。なぜならば、ほとんどの電子は原子に集中しており、特に重い原子において、これらの電子濃度は核の位置を示す。超高速パルスX線源は、第三世代のシンクロトロン放射と、レーザー励起プラズマ源と、ガス内および固体表面上における高次高調波の生成と、自由電子レーザーとを含む。シンクロトロン源からの高中性子束X線パルスが比較的長い一方で(数十ピコ秒、ストレージリング内の電子束の持続時間により決定される)、他の生成の仕組みによる下位のピコ秒(sub-picosecond)X線パルスは、かなり低い流束に悩まされる。その結果、超高速X線回折研究は、主に、内在的な長距離秩序が干渉パターンの信号対雑音比を高める個体試料に焦点を置いていた。拡張X線吸収微細構造(EXAFS)やX線吸収端構造(XANES)分光法のようなX線吸収分光法(XAS)技術は、局部的な構造情報をナノ秒の時間規模および溶液中で、または超高速時間規模およびガス中または液体中で得るのに使われた。
【0030】
電子回折は多くの利益を提供する。たとえば、電子散乱の横断面はX線散乱のものよりも約6桁大きい。さらに、実験は、“卓上用の”規模でなされ、超高速(フェムト秒またはピコ秒)レーザー源を用いて実装することができる。電子は、X線よりも、有用な弾性散乱事象あたりの見本へのダメージが少ない。電子は、物体との強い相互作用から生起する侵入深さが短いため、ガスや表面や(薄い)結晶の過渡の構造を明らかにすることができる。電子は顕微鏡学において、画像を得るために焦点をあてることができる。以下により十分に記載されるように、電子パルスの正確なタイミングの列を用いることで、ときどきフレーム参照(frame referencing)として参照することで、過渡の構造が変化するのを“隔離する”ことができる。実施例に依存するが、他の利益も存在することができる。
【0031】
本発明の実施例は、無放射遷移における構造を含む時間的にかつ空間的に分解された過渡の構造や、不協奏的な(non-concerted)有機反応における構造や、不協奏的な有機金属構造や、カルベン中間体の構造や、動的な偽回転(pseudorotary)構造や、複雑なエネルギー地形上の不平衡構造および立体配座構造や、互変異性反応の水素結合構造に対する方法やシステムを提供する。単に一例に過ぎないが、ピリジンの反応は、原子価構造を形作ると信じられてきたが、この反応はジラジカル中間体の形成とともに環の開放に伴う反応の進路を有することを示した。
【0032】
光顕微鏡学は、たとえば緑色蛍光たんぱく質のような蛍光プローブを用いて、体外で、または細胞の中でおきている出来事を視覚化する手段を提供した。しかし光による方法は、原理的に、フェムト秒規模の時間分解能を提供することができるが、到達可能な空間分解能が、顕微鏡で用いられる光の波長のオーダーによる分解能まで、典型的には200ナノメートルまでに制限される。光顕微鏡学を用いることで、その他の制限もまた存在するかもしれない。
【0033】
2〜3オングストロームの分解能で高分子の静的構造を直接画像化することは、大きな成功をもって、生物学的高分子結晶を含む多くの従来の電子顕微鏡学システムに採用された。しかし、構造変化の力学、これは我々が機能を理解するには絶対不可欠なものであるが、これは時間分解能なしには得ることができない。ストロボを使った方法論の発展により、電子プローブの時間的特徴のみによって制限される時間規模によって、構造的な力学の探査が可能になった。この時間規模の分離は、より長時間において構造的な分解に通例導くエネルギー散逸を制限する。重要なことには、下位のピコ秒の時間規模において、原子の動きは無視してよい。本発明のいくつかの実施例において、三次元の(3D)空間的な構造は、たとえば構造的な力学への洞察力を提供する時間(4D)の関数として画像化される。
【0034】
本発明の実施例を用いることで、試料が首尾一貫して準備され、フェムト秒からピコ秒の時間分解能から得られる情報に制限されることにおける時間−エネルギーの不確定性原理に関する問題が解決される。さらに、任意の力学プロセスに関して、時間の関数としての変化は連続的であり、またいくつかの全体的な事象がより長時間において起こり、ときどき“関連のある時間規模”として参照されるが、これらの事象は早い時期に起きる変化により引き起こされる。第一の事象は地形および力学の任意の完全な記載の不可欠な部分である。それゆえ“関連のある”生物学的事象が超高速時間領域をはるかに超えてのみ起こるという概念は、不完全な絵を与え、また化学反応の早期の概念などの場合において誤解を立証するかもしれない。
【0035】
本発明のいくつかの実施例において、“超高速”という用語はここkに記載されるシステムのさまざまの構成要素を特徴付けるために使われる。当業者は、超高速という用語は持続時間が1ピコ(“ps”)秒より短い光子または電子のいずれかを含むパルスを参照するということを十分理解する。パルス幅の測定は一般にパルスの半値全幅(FWHM)で行われる。一般に、本発明の実施例において100フェムト秒のオーダーの幅を持つパルスが用いられているが、超高速という用語を定義する1ピコ秒の閾値より下であれば十分である。もちろん、他の変形や、改良や、代替もまたありうる。現在の方法およびシステムのいくつかの詳細は本明細書の中で見つけることができ、さらには特に以下で見つけることができる。
【0036】
図1Aは本発明の一実施例に係る超高速光電子顕微鏡システムの単純化された図である。この図は単に例であり、この中の請求項の範囲を過度に制限するべきではない。当業者は多くの変形や、改良や、代替を認識するであろう。図1に示すように、フェムト秒レーザー110はポッケルセル112を通して導かれており、ポッケルセル112は制御可能なシャッターとして振舞う。グラン偏向子114はいくつかの実施例で光パス115によって伝播するレーザーの力を選択するために用いられる。ビームスプリッタ(図示せず)はいくつかのレーザー光をシステムのさまざまな部分に供給するために用いられる。図1Aに図示されているシステムは画像化の用途に関して記載されているが、これは本発明によって一般的に要求はされない。当業者は本発明の実施例が画像化、回折、結晶学、および関連分野のためのシステムおよび方法を提供することを十分に理解するであろう。特に以下で議論される実験的な結果は、本発明の実施例を用いることで多様な用途に利用できるための洞察力を生む。
【0037】
フェムト秒レーザー源110は一般に所定のパルス幅の光パルスの一列を生成することができる。そのようなレーザーシステムの一例はダイオードで引いて(diode-pumped)モードロックされたチタン・サファイア(Ti:Sapphire)レーザー発振器であって、800ナノメートルで動作し、100フェムト秒のパルスを生成し、繰り返し数が80MHzで平均の力が1ワットであり、結果としてパルス間の1周期が12.5ナノ秒になる。ある実施例において、レーザーパルスのスペクトルバンド幅はFWHMで2.35ナノメートルである。このようなレーザーの一例は、カリフォルニア州マウンテンビューのSpectra-Physics Lasersで調達できるMai Tai One Box Femtosecond Ti:Sapphire Laserである。代替の実施例において、異なった波長であり、異なったパルス幅を持ち、異なった繰り返し数の光パルスを生成する他のレーザー源が用いられる。当業者は多くの変形、改良、代替を理解できるであろう。
【0038】
フェムト秒レーザー110の出力の最初の部分は、第二高調波発生(SHG)デバイス116、たとえばホウ酸バリウム(BaB)結晶に接続される。ホウ酸バリウム結晶は典型的にBBO結晶として参照され、また、さまざまな倍加(doubling)結晶製造者から利用可能である。SHGデバイスの周波数は光パルスの一列を倍加して、400ナノメートルの一列であって、100フェムト秒のパルスを80MHzの繰り返し数で生成する。SHGデバイスは一般的に入力パルスの周波数を倍加する一方でパルス幅を保存する非線形結晶を利用する。いくつかの実施例において、SHGは周波数を3倍にするデバイスであって、その結果紫外波長の光パルスを生成する。もちろん、所望の出力の光パルスに関する波長は特別な用途に依存するであろう。SHGデバイスによって生成された倍加された光パルスは、電子生成パス118に沿って伝播する。
【0039】
CWダイオードレーザー120は、ビームスプリッタ122を用いることで周波数が倍加された光パルスと連結している。CWダイオードレーザーによって生成され、今SHGデバイスによって生成された光パルスと同一線上にある光は、基準杭(alignment marker)ビームとして働き、また、電子生成パス中の光パルス列の一を追跡するのに用いられる。同一線上のレーザービームは入口窓132を通してチャンバー130に入る。図1Aに図示されている実施例において、入口窓は400ナノメートルにおいて高い透明性を有し、機械的強度を提供する十分な厚みを有する材料から作られる。たとえば、反射防止コーティング、たとえばMgFまたはサファイア、を施された6mmの厚さを持つBK−7ガラスはさまざまな実施例で用いられる。当業者は多くの変形、改良、代替があることを理解するであろう。
【0040】
一部はチャンバー130の外側に供給され、一部はチャンバー130の内側に供給される光システムは、光パルスがカソード140に影響をあたえるように、周波数が倍加された光パルス列を電子生成パス134に沿ってチャンバー130の内側へと導く。図で示されるように、光システムは鏡144を有し、鏡144はチャンバー130の内側での反射鏡の役目をする。本発明の実施例において、磨かれた金属の鏡はチャンバー130の内側で用いられる、なぜならば電子照射はいくつかの光学鏡に用いられる鏡のコーティングにダメージを与えるかもしれないからである。特定の実施例において、鏡144は鏡の表面を作るため旋削されたひし形(diamond)であるアルミニウム基板から作られる。いくつかの実施例において、アルミニウムの鏡はコーティングされていない。他の実施例において、白金から作られた鏡のような他の金属鏡が鏡144として用いられる。
【0041】
ある実施例において、カソード上の相互作用の領域は直径300マイクロメートルである平面であるように選択された。さらに、図示された実施例において、周波数が倍加された光パルスはカソードの表面で所定のビームの腰(beam waist)を持つビームを供給するよう形を取られた。特定の実施例において、ビームの腰は約50マイクロメートルであった。代替の実施例において、ビームの腰は30マイクロメートルから200マイクロメートルまでの幅を持った。もちろん、特別な次元は特別の用途に依存するであろう。特定の実施例において、周波数を倍加された光パルス列はコンピュータ制御の鏡を用いることでチャンバーの内部へ導かれた。
【0042】
特定の実施例において、光パルス列は、レーザーによるカソードの照射が光電子効果を経由して電子パルスを生成することに終わった場所である、表面が照らされた(front-illuminated)光電陰極の方向へ導かれる。カソードの仕事関数を超えるエネルギーを持った光でカソードを照射することは、光電子の放出へと導く。すなわち、好ましい実施例にしたがって、カソードの仕事関数を超える電磁気エネルギーのパルスは、電子パルスを放出させる、ということである。一般に、カソードは1000Kの温度に維持されるが、約1500Kの熱放射の閾値を下回れば十分である。しかし、これは本発明では要求されていない。代替の実施例において、カソードは室温に維持される。いくつかの実施例において、カソードは所定のパルス幅の電子パルスを生成するように適合されられる。放出後の電子の軌道は、TEMのレンズのデザイン、すなわちコンデンサー、対象、プロジェクターのレンズに従う。実施例に依存して、他の設定もまたあるかもしれない。
【0043】
図に示された実施例において、カソードはMVM(Mini-Vogel mount)単結晶六ホウ化ランタン(LaB)カソードで、円錐台に形取られ、頂点の平面が300マイクロメートルで錐の角度が90度であるもので、これはオレゴン州マクミンビルのApplied Physics Technologies, Inc.から調達できる。しばしば知られていることだが、LaBカソードは世紀には電子顕微鏡の伝達およびスキャニングに使われる。LaBカソードの量子効率は約10−3であり、これらのカソードは10−13秒のオーダーの時間的パルス幅を有する電子パルスを生成することができる。いくつかの実施例において、カソードによって生成される電子パルスの明るさ(brightness)は10A/cm/radのオーダーであり、電子パルスのエネルギーの広がりは0.1eVのオーダーである。他の実施例において、レーザーパルスのパルスエネルギーは1パルスに対し500pJに抑えられており、結果として約1電子/パルスとなる。
【0044】
一般に、TEMを用いて得られる画像の質は、試料を通過する電子の数に比例する。すなわち、試料を通過する電子の数が増えると、画質が向上するということである。いくつかのQスイッチレーザーのようないくつかのパルスレーザーはパルス総数を減らして、パルスあたりの最大出力をより高くするよう特徴付けられた少ない数のパルスを生成する。それゆえ、いくつかのレーザー増幅器は繰り返し数を1kHzとなるよう制御し、パルスごとに約1μJから約2mJの幅をもったエネルギーを持つパルスを生成する。しかし、そのような高い最大出力のレーザーが光電子効果を用いて電子パルスを生成するのに用いられるとき、なかんずく(among other issues)、電子パルスの空間的な広がりおよび時間的な広がり両方は、逆に、生成される電子パルスまたはパケットのパルス幅に影響を及ぼす。本発明のいくつかの実施例において、レーザーはより高い繰り返し数、たとえば、80MHzで、低出力のパルスを出力するよう動作される。この動作モードでは、パルスあたり低出力を用いることにより利用可能となる利益が提供され、以下に記載される。さらに、この高い繰り返し数により、十分な数の電子が高い質の画像を得ることを利用可能にする。
【0045】
本発明のいくつかの実施例において、レーザー出力は光電陰極にダメージを与えることを妨げるよう、パルスあたり500pJ未満のレベルに維持される。利益として、フォトエミッタ(photoemitter)の堅牢さが高まる。さらに、これらの力のレベルのレーザーパルスは、カソードから試料までの飛行時間の間の電子パルス幅の空間電荷(space-charge)の広がりを防ぎ、それゆえ所望のフェムト秒の時間分解能が保存されるのである。さらに、本発明のいくつかの実施例により供給されるパルスあたりの低い電子総数は、電子パルス内の空間電荷反発力の効果を減らす。それゆえシステムの焦点合わせの特性が高まるのである。当業者が理解できるであろうように、フェムト秒レーザーが提供する80MHzまでの高い繰り返し数と一体になっている、パルスあたりの低い電子総数は、一般に画像化の用途で用いられるように、上限が1電子/Åである総量(total dose)を提供する。
【0046】
代替の実施例において、適切な波長の超高速光パルスに反応して超高速電子パルスを供給することができる他の適切なカソードが用いられる。本発明の実施例において、カソードはSHGデバイスにより供給される光パルスの波長と相関のある仕事関数を供給するように選択される。放射の波長は、よく知られた関係であるλ(μm)≒1.24÷ν(eV)、ここでλはミクロン単位で表された波長であり、νはeV単位で表されたエネルギーであるが、この関係により光子のエネルギーに関連づけられる。本発明の一実施例において、たとえば、2.7eVの仕事関数を有するLaBカソードは、400ナノメートルの波長(ν=3.1eV)を持つ光パルスに適応される。図示されたように、カソードは、たとえば、透過型電子顕微鏡(TEM)のハウジングのような、真空チャンバー130に入れられる。一般にチャンバー130の真空は1×10−6torr未満のレベルで維持される。代替の実施例において、真空レベルは約1×10−6torrから約1×10−10torrまでで変動する。特別な真空レベルは異なった用途の機能であろう。
【0047】
本発明の実施例において、光パルスの短い期間は、かなりの量の蓄えられたエネルギーがカソードの空間格子へ転送される前に、光電子の放出を導く。一般的に、金属に蓄えられたエネルギーの熱化のための特性時間は2〜3ピコ秒を下回る。それゆえ、本発明の実施例を用いることで、カソードを加熱しないことが起こる。
【0048】
カソード140によって生産された電子は、アノード142を過ぎて加速され、電子レンズ組立部146によって平行にされ、かつ焦点を合わせられ、試料150の方向に電子画像化パス148に沿って導かれる。電子レンズ組立部は、当業者が理解できるであろうように、一般に、多数の電磁レンズ、絞り、および他の構成要素を含む。本発明の実施例に適した電子レンズ組立部はしばしばTEMで用いられる。電子画像化パス148に沿って伝播する電子パルスは、本発明の実施例において、所定の次元の電子ビームを供給するコントローラ(図示せず、しかし下記のいくつかの図を参照してより詳細に記載される)によって制御され、電子ビームは超高速電子パルス列を構成する。
【0049】
電子顕微鏡における電子波長(λdeBroglie)と加速電圧(U)との関係は、λdeBroglie=h/(2meU)1/2という関係で表される。ここでhはプランク定数であり、mは電子の質量であり、eは電気素量である。一例として、120kVにおける電子パルスのド・ブロイ波長は0.0335Åに対応し、ド・ブロイ波長は他の用途に依存して変わりうる。電子パケットのバンド幅またはエネルギーの広がりは、光電子処理および電子パケットまたはパルスを生成するために使われた光パルスのバンド幅の関数(function)である。
【0050】
試料または見本150を通過する電子は電子レンズ組立部152によって検出器154の上に焦点が合わせられる。図1Aには2つの電子レンズ組立部146および152が図示されているが、本発明はこの配置に制限されず、また他のレンズ組立部またはレンズ組立部の設定をもつことができる。代替の実施例において、追加の電磁石、絞り、他の構成要素、その他は、電子ビームの焦点を試料との相互作用の先にまたは後に、または両方に、合わせるために利用される。
【0051】
試料を通過する電子の検出は、これは一電子の検出を含むが、ひとつの特別な実施例において、特に少量の適用(applications)に適し、デジタルCCDカメラと連結されている超高感度のリン光体(phosphor)シンチレーター検出器154を通して達成される。特別の実施例において、CCDカメラはカリフォルニア州プレザントンのGatan, Inc.により製造されたUltraScanTM 1000 UHSカメラであった。UltraScanTM 1000 CCDカメラは4メガピクセル(2048×2048)のカメラであり、ピクセルの大きさは14μm×14μmであり、16ビットのデジタル化を行い、読み出しスピードは4メガピクセル/秒である。図示された実施例において、デジタルCCDカメラは顕微鏡の下に軸上に(on-axis)、チャンバーの位置よりは下に取り付けられる。ノイズや絵に対する悪い副作用(artifacts)を軽減するために、いくつかの実施例において、CCDカメラのチップはペルチェ冷却器を用いて約−25℃に電気的に冷やされる。CCDカメラからの画像は、同様にGatan, Inc.から利用可能なTecnaiTMユーザインタフェースに埋め込まれたDigitalMicrographTMソフトウェアで得られた。もちろん、CCDカメラや、冷却器や、コンピュータソフトウェアにおいてはさまざまな他の変形例が可能である。
【0052】
図1BはTEMが試料の画像化のために使われる熱電子放射源のほかに、画像化のために使われる電子パルス列を供給するように改造された、本発明の一実施例を図示したものである。単に一例に過ぎないが、FEI TecnaiTM 12 TWINは、オレゴン州ヒルズボロのFEI Companyから調達することができるが、これは本発明の実施例にしたがって変形することができうる。TecnaiTM 12 TWINはオールインワンの120kV(λdeBroglie=0.0335Å)の高解像度のTEMであり、室温および液体窒素の温度両方で2Dおよび3Dの画像化ができるよう最適化されたものである。本発明の実施例は、自動化ソフトウェア、検出器、データ転送テクノロジー、断層撮影といった商用のTEMにより提供される機能を利用する。
【0053】
特に、本発明のいくつかの実施例において、5軸のモーターで動く精密ゴニオメーターが、コンピュータ断層(CT)画像システムの部分として画像の自動化された取得とつながった自動化見本傾き(automated specimen tilt)を提供するコンピュータソフトウェアと共に使われる。これらの実施例において、一連の2D画像はいろいろな見本の位置から捕らえられ、また、見本の再構築された3D画像を生成するコンピュータソフトウェアを用いることによって連結される。いくつかの実施例において、CTソフトウェアは他のTEMソフトウェアと結合され、また、他の実施例において、CTソフトウェアはオフライン状態で提供される。当業者は多くの変形、改良、代替を理解するであろう。
【0054】
低電子(low-electron)容量(content)の電子パルスが試料を画像化するのに用いられるいくつかの実施例において、照射ダメージは試料を通過する電子パルス内の電子の通過に制限される。いくつかの電子が試料を通過するかもしれない限りは、他の厚さでも動くであろうが、典型的には、試料は100ナノメートルのオーダーの厚さである。それゆえ、これらの低電子容量の電子パルスの画像に関する照射ダメージの影響はこの通過時間の間に起きるダメージに限定される。通過時間よりも長い時間規模で起きる放射線誘発の構造的ダメージは集められた画像に影響しないであろう、というのはこれらのダメージの事象は構造的情報が集められた後に起きるであろうからである。
【0055】
これまで記載された器具を用いることで、本発明の実施例は、空間的および時間的に、原子スケールの空間分解能が1ナノメートルのオーダーであり、時間分解能が100フェムト秒のオーダーである、材料や生物学的見本の画像化システムおよび方法を提供する。これらの時間スケールにおいて、エネルギーのランダム化は制限され、原子はほとんど定位置に凍結される(frozen)。それゆえ本発明にしたがった方法は、空間および時間において、原子的規模での時間分解された構造力学の研究へのドアを開く。本発明の一実施例にしたがった現在のコンピュータシステムの詳細は、以下の記載にしたがって説明されるかもしれない。
【0056】
図1Cは、本発明の一実施例にしたがった図1Aおよび図1Bのシステムを監視するコンピュータシステム210の単純化された図である。この図は単に一例に過ぎず、ここの請求項の範囲を過度に制限するべきではない。当業者は多くの改良、代替、変形を理解するであろう。示されたように、コンピュータシステム210はディスプレイデバイス220、ディスプレイスクリーン230、キャビネット240、キーボード250、マウス270を含む。マウス270とキーボード250とは“ユーザ入力デバイス”を代表するものである。マウス270はグラフィカルユーザインタフェースデバイス上のボタンの選択のためのボタン280を含む。ユーザ入力デバイスの他の例は、タッチスクリーン、ライトペン、トラックボール、データグローブ、マイク等である。
【0057】
本システムは本発明の実施のためのシステムのひとつの型に過ぎず、単に代表的なものである。当業者にとって、多くのシステムの型や設定が本発明と連結して利用に適することはすぐに明らかであろう。好ましい一実施例において、コンピュータシステム210はPentiumTMクラスのコンピュータであって、マイクロソフトのWindowsTM NTまたはXPが動作するものを含む。しかし、本システムは、本発明の範囲から離れることなしに、当業者によって、オープンソースシステムやアーキテクチャのような他のオペレーティングシステムにも容易に適合される。上述のように、マウス270はボタン280のような1以上のボタンを有することができる。キャビネット240は、ディスクドライブ、プロセッサ、ストレージデバイスやその他のようなおなじみのコンピュータ部品を収納する。ストレージデバイスは、ディスクドライブ、磁気テープ、半導体メモリ、バブルメモリ他を含むが、これらに制限されない。キャビネット240は、コンピュータシステムを、さらに以下に記載される外部デバイス、外部ストレージ、他のコンピュータ、他の周辺機器をコンピュータシステム210に接続するための入力/出力(I/O)インタフェースカードのような追加のハードウェアを含むことができる。
【0058】
図1Dは本発明の一実施例にしたがった図1Cのコンピュータシステムのハードウェア要素のより詳細な図である。この図は単に一例に過ぎず、ここの請求項の範囲を過度に制限するべきではない。当業者は多くの改良、代替、変形を理解するであろう。示されたように、基本のサブシステムがコンピュータシステム210内に含まれる。特定の実施例において、サブシステムはシステムバス275を経由して相互接続される。プリンタ274、キーボード278、固定ディスク279、ディスプレイアダプタ282に接続されているモニタ276、その他のようなさらなるサブシステムが示される。周辺機器や入力/出力(I/O)デバイスは、I/Oコントローラ271と接続しているが、シリアルポート277のような技術的に知られた任意の数の手段によってコンピュータシステムに接続されることができる。たとえば、シリアルポート277はコンピュータシステムをモデム281に接続するために用いることができ、モデム281は、相互に、インターネットのような広域ネットワークや、マウス入力デバイスや、スキャナに接続する。システムバスを経由した相互接続によって、セントラルプロセッサ273はそれぞれのサブシステムと通信することができ、また、サブシステム同士の情報交換と同様にシステムメモリ272または固定ディスク279から命令を実行することを制御することができる。他のサブシステム又は相互接続の装置は、当業者が容易に実現することができる。システムメモリおよび固定ディスクはコンピュータプログラムの記憶のための実体のあるメディアの例であり、他の型の実体のあるメディアは、フロッピーディスク(登録商標)、リムーバブルハードディスク、CD−ROMやバーコードのような光記憶メディア、フラッシュメモリや読み出し専用メモリ(ROM)のような半導体メモリ、バッテリバックアップメモリを含む。
【0059】
特定のハードウェアの特徴の点から上記の事項は示されたが、多くの変形や代替や改良が存在することができることは理解されるであろう。たとえば、任意のハードウェアの特徴は、さらにまとめることができ、また、分離さえすることもできる。特徴は、部分的に、ソフトウェアまたはハードウェアとソフトウェアとの組み合わせを通して実装することもできる。ハードウェアとソフトウェアとは、用途に依存して、さらに集積されることもでき、集積を少なくすることもできる。ハードウェア要素および/またはソフトウェア要素の組み合わせを用いることで実行されるかもしれないが、本発明の機能性の更なる詳細を、図にしたがって以下に概略を述べることができる。
【0060】
図2Aから図2Dは本発明の一実施例を用いて得られた一連の画像である。システムパフォーマンスを特徴付けるため、較正見本が上述のシステムに置かれ、多様な方法論を用いて画像化された。図2に図示された実施例において、見本は2160ライン/mmの格子縞(waffle-pattern)回折格子のレプリカであった。見本の線の間は0.462μmであった。この格子縞は2500倍の拡大率で最初に見えるようになる。
【0061】
図2Aは電子銃からの熱電子放出を経由して放出された電子を用いて得られた画像である。当業者にとって知られていることだが、TEMで使われていた従来の電子銃はカソードから離れて加速され、試料に向けて導かれるビームに焦点が合わされた電子の流れを生成する熱電子放出を利用する。図2Aにおいて、カソードとアノードとの間の電圧は120kVであって、画像化システムの拡大率は4400倍であった。スケールマーカー(scale marker)は0.5μmを示し、これはほぼ隣接する線の間の距離0.463μmと同じである。
【0062】
図2Bは図2Aの画像を生成するために使われたのと同じカソードから光電効果を経由して放出された電子を用いて得られた画像である。上述したように、本発明の実施例を用いて、格子パルスの一列はカソード上に導かれ、画像化パスを沿って異動する電子パルスの一列を生成する。顕微鏡を同じ120kVの電圧で操作することで、電子パルスの流れは試料を通過する電子パルスの一部を伴う見本と出会い、図2Bに示す画像となる。それゆえ、本発明の実施例にしたがった方法とシステムとを用いることで、静的な見本の画像を得ることが可能になる。
【0063】
較正目的のため、背景“画像”がカソードをオフにし(すなわち、熱電子放出はない)、フェムト秒のパルスがチャンバー130に入る前にブロックされることで得られた。これらの“画像”は、読み出しノイズから構成される不透明な背景からなり、図2Bに示される画像は光電子効果の結果であること、および熱電子放出プロセスによる電子の生成は無視してよいことを示すことを示すものであった。カソードのレーザー加熱による、および/またはカソードの抵抗過熱の結果としての熱電子が生成されることがありうるが、較正測定はこれらの可能性を消した。
【0064】
図2Cおよび図2Dは、それぞれ、熱電子放出源および電子パルスを用いて得られた画像である。スケールマーカー292は100nmの距離を示し、隣接する線の間の約1/5である。測定間の見本の移動が画像から観察される。
【0065】
図3は本発明の一実施例にしたがって電子パルスを用いて得られた画像である。示された物体はポーラスカーボングリッド(porous carbon grid)上の黒鉛化炭素である。示された画像の拡大率は110000倍であり、スケールバー310は20nmである。較正“画像”はチャンバーに入る前にフェムト秒パルスをブロックすることで得られた。その結果、読み出しノイズから較正される不透明な背景となった。
【0066】
図4Aから図4Cは本発明の一実施例にしたがって回折動作モードを用いて得られた画像である。図に示される画像を得るために、中間レンズ(図1Aでは図示せず)が対物レンズの後焦点面をその物体として選択するように調整された。回折パターンは、120kVで、多結晶アルミニウムおよび単結晶金の試料のために熱電子放出および電子パルスモードの両方において集められた。図4Aは多結晶アルミニウムの試料からの熱電子放出を用いることで得られた5nm−1のスケール410の回折パターンである。図4Bは、同じ多結晶アルミニウム上の超高速電子パルスの一列を用いて取得される同じスケールの解説パターンを示す。似た回折パターンが、熱電子放出を用いることで(図4C)、および単結晶金の試料を用いた超高速電子パルスの一列を用いることで(図4D)集められた。示された回折パターンは、実施例に依存して、原子面間隔および対称を提供するためにインデックスをつけられるかもしれない。
【0067】
当業者は、本発明の実施例が画像化の用途に制限されるのではなく、回折や結晶学の用途をも含むかもしれないことを理解するであろう。以下のいくつかの図を参照して記載されるように、光学的に開始された(initiated)回折実験は本発明の実施例によって提供されるが、この特別な用途に制限されることはない。それゆえ、本発明の実施例は電子パルスを用いた画像化および回折実験を取り込むことが理解されるであろう。さらに、試料が光学的に開始されたまたは分光学的に活性化した画像化および回折実験も本発明の実施例に取り込まれる。もちろん、他の変形、改良、代替が存在することができる。
【0068】
図5は本発明の一実施例を用いて得られた生物学的試料の画像である。図5において、樹脂に埋め込まれてはっきりと着色された(positively-stained)(酢酸ウラニル)生物学的細胞、特にラットの腸は、図1Aに示されるシステムを用いることで画像化された。従来のはっきりした(positive)染色方法を用いて、この実施例のための試料の準備がなされたが、これは本発明では要求されない。図5Aは熱電子放出を用いて生成された電子ビームを用いて得られた。図5Bは超高速電子パルスの一列を用いて得られた。図5Bに示された画像は、ほんの数秒で得られたもので、パルスあたり約1電子の停電使用量のフェムト秒電子パルスが用いられたが、熱電子放出源を用いたのでは利用できない時間分解された画像を提供する。
【0069】
本発明の実施例にしたがって超高速電子顕微鏡(UEM)により提供された超高速時間分解能は独自の結果を有する。図5Bに示された画像のために、エネルギーのランダムかは制限されている、というのは、本発明の実施例により提供されたストロボを使った方法により原子はほとんど定着して凍結されているからである。それゆえ、無傷の生物学的試料の研究が本発明の実施例により可能になる。ここに記載された方法およびシステムを用いることで、超高速型(regime)の時間分解能で高分子の構造、組立、力学を研究するための低温電子顕微鏡(ミリ秒のオーダーの分解能によって特徴付けられるが、分解能はそのときの凍結/溶解速度により変化する)を用いることで得られる結果を拡張することができる。それぞれの超高速パルスの電子数が少ないことは、確立された冷凍固定(cryofixation)の方法とともに、前に議論した電子照射からのダメージを制限することに巨大な進歩を提供する。
【0070】
生物学的構造回復が12.5nsよりも長い試料のために、カリフォルニア州サンタクララのCoherent, Inc.から調達できるPulse-Picker 9200のようなパルスピッカー(pulse pickers)が、そのような回復に適した速度で列からパルスを選択するために用いられてもよい。さらに、図2、図4Aから図4D、図5に示したように、本発明の実施例は、いくつかの従来のTEM動作モードを用いた、またはUEMモードの画像または回折パターンのいずれかを二者択一的に得るための方法およびシステムを提供する。それゆえ、最小限のシステム改良および訓練により、本発明の実施例は多くの利益を提供する。
【0071】
図1Aの光パス115をもう一度参照すると、レーザー110により生成された光パルスの第2の部分が光学パラメータ式発振器(OPO)160に接続される。OPO160は、単一の短い波長の光子から2つの長い波長の格子をパラメトリック発振(parametric generation)することで、約1.1μmから約2.25μmまでの赤外部の調節可能なフェムト秒パルスを提供する。さらに、OPOにより生成された赤外部のパルスの周波数の倍加により、スペクトルの可視領域へのアクセスへと拡張される。いくつかの実施例において、OPOは、超高速チタン・サファイアレーザーの汎用性を、その出力をスペクトルの可視領域および赤外領域に拡張することによって高める。本発明のいくつかの実施例において、OPO160は分光用途のための光子ビームを調節するために用いられる。たとえば、いくつかの分光学的用途において、たとえば試料内の化学反応を開始するために使われるポンプ光に関連する周波数は、ポンプ光と試料との間の相互反応を最大化するために選択される。それゆえ、この特別な用途において、OPOはパス164内の光子ビームの周波数を望みどおりに調節するために用いられる。本発明の実施例を通して利用できる分光学的用途は化学反応に限定されず、吸光光度法、電子エネルギー損失分光法(EELS)、およびその他の用途を含むかもしれない。
【0072】
光遅延ステージ162はチェンジイニシエイティング(change-initiating)パス164の中に、パス164に沿って伝播する光パルスの光学的パスにおける所定の遅延を導入するために供給される。当業者は図1Aに図示されるように光遅延ステージを導入し制御する技術について理解するであろう。いくつかの実施例において、光遅延ステージ162はチェンジイニシエイティングパス164内の光パルスと電子画像化パス148内の電子パルスとが時間的かつ空間的に同時に試料150に到達するように適合された“ゼロ時間”を決定するために用いられる。他の実施例において、光遅延はポジディブ(電子パルスに関する選択された時間期間より光パルスが遅れている)またはネガティブ(電子パルスに関する選択された時間期間より光パルスが進んでいる)のいずれか一方を導入することを選択することができる。当業者は多くの変形、改良、代替を理解するであろう。光学的に遅延したパルスは窓166を通してチャンバー130に入り、鏡168で反射され、試料150に向けて導かれる。いくつかの実施例において、同軸照明器(coaxial illuminator)172と、試料150の表面から引き下がって散乱される光を用いて試料をモニタリングするためのCCDカメラ174と、を含む画像化システム170が供給される。当業者に理解されるであろうことだが、多くの変形、改良、代替が画像化システム170に利用できる。いくつかの実施例において、窓166と鏡168とは、窓132と鏡144と同一であるが、これは本発明では要求されない。
【0073】
上述の議論において、光パス164内の光遅延ステージについて記載されたが、これは本発明では要求されない。実施例によるが、光遅延ステージはチェンジインデューシング(change-inducing)パス164内の光ビームに関して電子ビームの生成を遅延させる電子生成パス118とまとめてもよい。上述の通り、電子生成パスの遅延はポジティブであってもネガティブであってもよい。というのは、ステージは一般的にネガティブな遅延のときは一端に、ポジティブな遅延のときは他の一端に、ゼロ時間の遅延のときステージの中間部分にあるように設定されるからである。
【0074】
試料中の変化を初期化するためのチェンジインデューシングパス164内の光パルスを利用する本発明の実施例において、反応のための時間座標は、一般に、光開始パルスと電子パルスとの間の相対的時間遅延を参照する点に基づいて確立される。この参照点は共通してゼロ時刻(t)として参照され、ゼロ時刻は両方のパルスが同時に試料を交差する時刻である。ゼロ時刻を決定するひとつのアプローチは、光子および電子ビームのパスを注意して測定することに基づく。この技術は、典型的に、ゼロ時刻の窓(window)を100ps以内に狭めることができる。
【0075】
本発明のいくつかの実施例において利用される別のアプローチは、“レンズ効果”(lensing effect)を経由してゼロ時刻を決定する実際の回折実験の交差したビーム(crossed-beam)の幾何学を用いることである。たとえば、CFIの解離反応の研究の間、我々は励起レーザーの存在するときに回折していない電子ビーム像において劇的な変化を観察した。ビームスポットはひとつの軸に沿って強まり、全体の幅において、対応するかすかな増加を伴った。この効果は励起レーザーと分子ビームとが共に存在するときに起きた。強まったストリップ(strip)はレーザー軸に平行であって、励起レーザー入口レンズ(entrance lens)の垂直の傾きを調整することによってビームスポット内で高速化(be shifted up)または低速化(down)することができた。レーザーの焦点を外すとストライプ(stripe)の強度が減少した。我々はこの現象を光イオン化誘導(photoionization-induced)レンジング(lensing)として参照する。この効果はプラズマレンジング(plasma lensing)に類似しており、プラズマレンジングはプラズマ場を通過することによって粒子加速器内の高エネルギーの荷電ビームが焦点を合わせられる技術である。
【0076】
さらにもうひとつの本発明の実施例において、その場(in-situ)同期方法は共鳴したプラズモンロスに対応する領域で調整されたエネルギーフィルタと共に用いられる。なぜならば、電子−電子散乱定数は、2〜3フェムト秒のオーダーであり、プラズモンピークの位置は、実験的な同期の自然のマーカー(natural marker)であるからである。特に、エネルギーロススペクトルにおけるピークの位置は、プラズモン周波数に対応し、また、試料中の自由キャリアに比例する。プラズモン共鳴はエネルギーロススペクトルにおいて最強の特徴であり、ゼロロスピークよりも2〜3%高い強度を有する。これと同じ技術を用いて、電子パルス幅の測定が得られることができる。
【0077】
本発明の実施例のある用途の一例は、ジハロエタン(dihaloethanes)の協奏的でない(non-concerted)脱離反応の画像化である。図6は、本発明にしたがって方法の利用を例示した単純化されたタイミング図である。図6は、反応物質、過渡期の中間体および生成物の構造を単離するための異なった電子パルスシーケンスを用いた本発明の方法を例示したものである。例示されているように、研究された特定の反応は、反応物質から2つの要素原子を消去し、生成物を生じさせるものである。
【0078】
反応物質、たとえばジヨードエタンは、図6Aにおいて、時刻−tおよびtにおいて例示されている。時刻−tにおいて例示されているように、電子パルス610は光開始パルス620の前に試料に到着する時刻を決められた。図1Aに図示されている遅延ステージを利用することで、開始パルスと電子パルスとの間の遅延は変更され、それによって画像がさまざまな反応時間において収集されることができる。時刻tにおいて、光開始パルス620およびプローブパルス612はジヨードエタンを含む試料に同時に影響を及ぼす。図6に図示された実施例において、開始パルスは光パルスであって、ジヨードエタンの協奏しない消去反応を開始する。もちろん、OPO160の利用は光開始パルスの調整を要求どおりに提供し、たとえば、化学反応、分光分析、その他を提供する。
【0079】
図6Bは光開始パルスが試料に影響を及ぼしてから後の時刻であるtにおける消去反応のスナップショットである。時刻tにおいて、図示されているように、ジヨードエタンは第1のヨウ素原子を消去する。時間が進行すると共に、図6Cで図示されているように時刻tにおいて第2のヨウ素原子が消去される。CI中間体の分子構造は、フレーム参照(frame referencing)、回折差分(diffraction-difference)カーブΔsM(t; 5ps; s)から決定された。橋架けのCI構造および古典的なCI構造が回折データから考えられた。古典的な構造の理論カーブは実験的なデータを非常によく再現するが、理論的な橋架け構造により提供されるフィットは非常に劣るものである。それゆえ、我々は、CIラジカル中間体の構造は、事実、本来古典的なものであって、すなわち、ヨウ素原子は2つの炭素の橋架けをしていないと結論付けた。
【0080】
さらに、我々は、CI中間体のC−IおよびC−Cの距離が、それぞれ、反応物質における距離より長いおよびより短く、一方でラジカル部位(−CF’)におけるC−F’の核間距離が−CFI部位の核間距離よりも短いことを決定した。この結果は、遷移時のCIの構造の結果から、増加したC−Cおよび減少したC−I結合オーダーを解明した。さらに、∠CCF’および∠F’CF’の角度は対応する反応物質の角度よりも大きくなる(それぞれ〜9°および〜12°)。これはCI中間体のラジカル中央部(center)が次に起こる最初のヨウ素原子の損失を緩和することを示唆する。我々は、この反応で報告された構造および力学が、そのような反応の分野における立体化学の保持(retention)を記載するのに重要であると信じる。さらに、我々は、これが遷移におけるそのような複雑な構造を解明した最初の例であると信じる。
【0081】
図6Aから図6Cにおいて、時間規模はスケールに描かれていないが、単に時間規模は一連の時間分解測定を例示するために提供されるものである。ジハロエタンの協奏的でない消去反応において、時間tは約250fsであり、時間tは26±7psである。もちろん、他の変形、改良、代替が存在することができる。本発明の実施例にしたがっていくつかの方法は、本明細書内に記載され、特により以下で記載される。
【0082】
本発明の一実施例にしたがった、物体を画像化する方法は以下のように概略されてもよい:
1. レーザー源と、カソードと、電子レンズ組立部とから構成される透過型電子顕微鏡を用意する
2. 光パルスの一列を形成する。光パルスのそれぞれは全幅半値(“FWHM”)パルス長で持続期間が100fs未満となるよう特徴付けられる
3. ステージ組立部上に配置された画像化のための試料(たとえば、化学的、生物学的、物理学的)を用意する
4. 光パルスの関連する列をカソードに影響させることで電子パルスの一列を生成する。それぞれの電子パルスはFWHMパルス長で期間が1ps未満であるように特徴付けられる
5. 少なくとも電子レンズ組立部を用いて、試料に向けて電子パルス列を導く
6. 検出装置を用いて電子パルス列の一部を捕らえる
7. 試料の画像に関連する情報を引き出す
8. 試料の画像に関連する情報を処理する
9. 少なくとも処理された情報を用いて、試料の画像の視覚表示を出力する
10.要望どおりの他のステップを実行する
【0083】
上述のステップの手順は本発明の一実施例にしたがった方法を提供する。示されたように、本方法は特定の実施例にしたがった短い所定の持続期間を有する1以上の電子パルスを用いて1以上の試料の特徴を画像化する方法を含むステップの組み合わせを用いる。他の多くの方法やシステムもまた含まれる。もちろん、ここに記載された請求項の範囲から外れることなく、ステップが追加され、1以上のステップが削除され、また異なったシーケンスで1以上のステップが提供される他の変形例もまた提供される。さらに、コンピュータコードやソフトウェア内のコード、ファームウェア、ハードウェア、これらの任意の組み合わせを用いることによってさまざまな方法が実装されることができる。実施例に依存して、他の変形、改良、代替が存在することができる。本方法のさらなる詳細は本明細書内に、さらに特に以下に見つけることができる。
【0084】
図7は本発明の一実施例にしたがった画像化方法の単純化されたフロー図700である。この図は単に一例に過ぎず、ここに記載された請求項の範囲を過度に狭める物であるべきではない。当業者は多くの変形、改良、代替を理解するであろう。
【0085】
上述の方法は特定のソフトウェアおよび/またはハードウェアの特徴に関して例示されたが、多くの変形、代替、改良が存在することができることは理解されるだろう。たとえば、任意のハードウェアの特徴はさらにまとめることができ、分離することさえできる。本特徴は、部分的にソフトウェアまたはハードウェアとソフトウェアとの協働によって実装することもできる。用途に依存して、ハードウェアとソフトウェアとは、さらに集積することもでき、より少なく集積することもできる。もちろん、当業者は、他の改良、変形、代替を理解するだろう。
【0086】
本発明の代替の実施例に従った物体を画像化する方法は以下のように概略してもよい:
1. 画像化される試料の特徴(たとえば、100ナノメートル以下)を用意する
2. ステージ組立部の上に試料を置く
3. ステージ組立部上の試料を真空環境に維持する
4. 試料の特徴に向けて1以上の電子パルス(たとえば、パルスあたり1から約1000個の電子)を導く
5. 検出装置を用いて、試料の特徴と関連付けられる1以上の電子パルスの一部を捕らえる
6. 試料の特徴の画像に関連する1以上の電子パルスの部分に関連する情報を、検出装置から処理デバイスに転送する
7. 処理デバイスが1以上の電子パルスの部分に関連する情報を受け取る
8. 1以上の電子パルスの部分に関連する情報を処理する
9. 試料の特徴の画像に関連する1以上の電子パルスの一部に関連付けられた情報を少なくとも用いて、試料の特徴に関連付けられた視覚画像を出力する
10.要望どおりの他のステップを実行する
【0087】
上述のステップの手順は本発明の一実施例にしたがった方法を提供する。示されたように、本方法は、特徴に向けられた1以上の電子パルスと、特定の実施例にしたがった検出装置により捉えられた電子の一部と、を用いて試料の特徴の画像を捕らえる方法を含むステップの組み合わせを用いている。多くの他の方法やシステムもまた含まれる。もちろん、ステップが追加され、1以上のステップが削除され、または1以上のステップが異なったシーケンスで提供される他の代替も、ここに記載された請求項の範囲から外れることなく提供される。さらに、コンピュータコードやソフトウェア内のコード、ファームウェア、ハードウェア、これらの組み合わせを用いて、さまざまな方法を実装することができる。実施例に依存して、他の変形、改良、代替が存在することができる。本方法のさらなる詳細は本明細書内に、より特に以下に見つけることができる。
【0088】
図8は本発明の一実施例にしたがった代替の画像化方法の単純化されたフロー図800である。この図は単に一例に過ぎず、ここに記載された請求項の範囲を過度に制限するべきではない。当業者は多くの変形、改良、代替を理解するであろう。
【0089】
上述の方法は特定のソフトウェアおよび/またはハードウェアの特徴に関して例示されたものであるが、多くの変形、代替、改良が存在することができることは理解されるだろう。たとえば、任意のハードウェアの特徴はさらにまとめることができ、分離することさえできる。本特徴は、部分的に、ソフトウェアまたはハードウェアとソフトウェアとの協働によって実装することができる。用途に依存して、ハードウェアおよびソフトウェアはさらに集積することもでき、より少なく集積することもできる。もちろん、当業者は多くの変形、改良、代替を理解するであろう。
【0090】
さらなる実施例において、本発明は、電子顕微鏡を用いて時間分解された画像を得る方法を提供する。そのような方法は以下のように概略してもよい:
1. 時間的特性のために画像化する試料の特徴を用意する
2. 電子顕微鏡のステージ組立部上に試料を置く
3. ステート組立部上の試料を真空環境におく
4. 10個から1000個の電子をそれぞれ有する1以上の第1の電子パルスを、試料の特徴に向けて導く
5. 時間の第1の部分の間に検出装置を用いて1以上の第1の電子パルスの第1の部分を捕らえる。その部分は時間の第1の部分の間の試料の特徴の第1の画像に関連する
6. 時間の第1の部分の間の試料の特徴の第1の画像に関連する1以上の第1の電子パルスの第1の部分に関連する第1の情報を、検出装置から処理デバイスへ転送する
7. 10個から1000個の電子をそれぞれ有する1以上の第2の電子パルスを、試料の特徴に向けて導く
8. 時間の第2の部分の間に検出装置を用いて1以上の第2の電子パルスの第2の部分を捕らえる。その部分は時間の第2の部分の間の試料の特徴の第2の画像に関連する
9. 時間の第2の部分の間の試料の特徴の第2の画像に関連する1以上の第2の電子パルスの第2の部分に関連する第2の情報を、検出装置から処理デバイスへ転送する
10.第1の情報を、処理デバイスを用いて処理する
11.第2の情報を、処理デバイスを用いて処理する
12.時間の第1の部分の特徴に関連する第1の視覚画像を出力する
13.時間の第2の部分の特徴に関連する第2の視覚画像を出力する
14.要望どおりの他のステップを実行する
【0091】
上述のステップの手順は本発明の一実施例にしたがった方法を提供する。示されたように、本方法は、特定の実施例にしたがって、異なった時間ドメインの多数の特徴の画像を捕らえる方法を含むステップの組み合わせを用いている。特定の実施例にしたがって、1以上の超高速電子パルスの組み合わせは、試料の特徴の時間的変化を決定するように導く。もちろん、ステップが追加され、1以上のステップが削除され、または1以上のステップが異なったシーケンスで提供される他の代替も、ここに記載された請求項の範囲から外れることなく提供される。さらに、コンピュータコードやソフトウェア内のコード、ファームウェア、ハードウェア、これらの組み合わせを用いて、さまざまな方法を実装することができる。実施例によって、他の変形、改良、代替が存在することができる。本方法のさらなる詳細は本明細書内に、より特に以下に見つけることができる。
【0092】
図9Aは、本発明の一実施例にしたがった、さらに代替の画像化方法の単純化されたフロー図である。この図は単に一例に過ぎず、ここに記載された請求項の範囲を過度に制限するべきではない。当業者は多くの変形、改良、代替を理解するであろう。
【0093】
上述の方法は特定のソフトウェアおよび/またはハードウェアの特徴に関して例示されたものであるが、多くの変形、代替、改良が存在することができることは理解されるだろう。たとえば、任意のハードウェアの特徴はさらにまとめることができ、分離することさえできる。本特徴は、部分的に、ソフトウェアまたはハードウェアとソフトウェアとの協働によって実装することができる。用途に依存して、ハードウェアおよびソフトウェアはさらに集積することもでき、より少なく集積することもできる。もちろん、当業者は多くの変形、改良、代替を理解するであろう。
【0094】
さらに代替の特別な実施例において、電子ビームパルスを用いて1以上の試料から情報を捕らえるための方法は、簡潔に以下のように記載される。
1. 画像化される試料の特徴を用意する
2. 試料をステージ組立部上に置く
3. ステージ組立部上の試料を真空環境におく
4. 電磁波放射線の1以上のパルスを用いてカソードに照射する
5. それぞれが約10個から約1000個の電子を有する1以上の電子パルスを、電磁波放射線に由来する試料の特徴に向けて導く
6. 検出装置を用いて、試料の特徴の特徴づけに関連する、1以上の電子パルスの一部を捕らえる
7. 試料の特徴の特徴づけに関連する、1以上の電子パルスの部分に関連づけられる情報を、検出装置から処理デバイスに転送する
8. 情報を処理する
9. 試料の特徴の画像に関連する1以上の電子パルスの一部に関連付けられた情報を少なくとも用いて、試料の特徴に関連する1以上の指標を出力する
10.要望どおりの他のステップを実行する
【0095】
上述のステップの手順は本発明の一実施例にしたがった方法を提供する。示されたように、本方法は、CCDアレイのような検出装置を用い、1以上の電子パルスを用いて試料の特徴の性質を識別する方法を含むステップの組み合わせを用いる。実施例に依存して、本方法は画像化、回折、および他の分析技術のために用いることができる。多くの他の方法やシステムもまた含まれる。もちろん、ステップが追加され、1以上のステップが削除され、または1以上のステップが異なったシーケンスで提供される他の代替も、ここに記載された請求項の範囲から外れることなく提供される。さらに、コンピュータコードやソフトウェア内のコード、ファームウェア、ハードウェア、これらの組み合わせを用いて、さまざまな方法を実装することができる。実施例に依存して、他の変形、改良、代替が存在することができる。本方法のさらなる詳細は本明細書内に、より特に以下に見つけることができる。
【0096】
本発明のいくつかの実施例において、電子顕微鏡の組立部(assembly)を用いて物体の1以降の特徴の時間的特性を決定する方法が提供される。単に一例に過ぎないが、試料は複数の状態の間の遷移期間においていろいろなときに画像化されてもよい。図9Bは本発明の一実施例にしたがったパルス列を図示する単純化されたタイミング図である。期間920の間、多数の電子パルス922がパルス列として供給される。特別な実施例において、それぞれのパルスの時間幅は100fsであり、隣接するパルスの間の遅延は12.5nsである。さらに、それぞれのパルスは基準時間を基準とし、たとえば分かれて提供された開始パルスが試料に到着した時間を基準とする。一実施例において、センサー(sensing elements)、たとえばCCDカメラは、パルス列の電子と試料との相互作用の結果としての画像を得るために、期間920の間作動している。一例として、たんぱく質の変性は本発明の一実施例にしたがったシステムを用いることにより画像化される。展開プロセス(unfolding process)はポンプ光パルスにより作動している。上述したように、ポンプと電子パルスとの間のタイミングは、展開プロセス中に一時に画像の集合を提供するために選択される。一例として、一実施例において、パルス922は、ポンプパルスより100ps遅れている。隣接するパルス間の時間の間、たとえば、12.5nsの間、たんぱく質は定常状態条件に戻る。期間920の間の次のポンプパルスにより開始されるときに、展開プロセスは繰り返され、追加の電子パルスは同じ遅延時間の後に試料と相互作用する。期間920が秒のオーダーである実施例において、同じ遅延時間を有する数百万もの電子パルスが試料と相互作用し、最初の画像の集合になる。いくつかの実施例において、期間920は数秒オーダーである。当業者は多くの変形、改良、代替があることを理解するだろう。
【0097】
第2の期間930が図9Bに図示される。別の実施例において、開始パルスとパルス932との間の遅延時間は第2の遅延時間であり、たとえば、200psである。図9Bに図示された実施例において、上述のプロセスは繰り返され、展開プロセスの間の第2の時間、たとえば200psで、展開プロセスの画像を得る。図示されたように、追加の期間940がいくつかの実施例において供給され、試料の組み合わさった(in the combination)一連の時間分解画像を生産する。いくつかの、実施例においてn個の追加の期間がある。nは所定の数字である。
【0098】
図9Cは本発明の一実施例にしたがった画像の集合を例示した単純化されたフローチャートである。ステップ950において、試料の一部の画像が、状態1において試料と共に得られる。ステップ955において、試料の一部のさらなる画像が、状態2において試料と共に得られる。ステップ960において、試料の一部のn回追加された画像が、n回追加した状態において試料と共に得られる。本発明にしたがった方法とシステムを用いることで、画像を得るにおいて使われる超高速電子パルスは低電子容量によって特徴付けられる。これらの電子パルスは時間および空間の両方においてパルスが広がることを減少し、低電子フルエンス(fluences)を提供する。これは生物学的試料の画像化の間のダメージを最小化するのに利益のあることである。本発明の実施例において、期間のそれぞれに含まれるパルス数は所定の数である。一般に、パルス数の選択は、画像化に好ましい電子の数、試料へのダメージ、画像を集めるのに要求される時間、その他のバランスをとる。
【0099】
図10は本発明の一実施例にしたがったさらなる代替の画像化方法の単純化されたフロー図1000である。この図は単に一例に過ぎず、ここに記載された請求項の範囲を過度に狭めるものであるべきではない。当業者は多くの変形、改良、代替を理解するだろう。
【0100】
上述の方法は特定のソフトウェアおよび/またはハードウェアの特徴に関して例示されたものであるが、多くの変形、代替、改良が存在することができることは理解されるだろう。たとえば、任意のハードウェアの特徴はさらにまとめることができ、分離することさえできる。本特徴は、部分的に、ソフトウェアまたはハードウェアとソフトウェアとの協働によって実装することができる。用途に依存して、ハードウェアおよびソフトウェアはさらに集積することもでき、より少なく集積することもできる。もちろん、当業者は多くの変形、改良、代替を理解するであろう。
【0101】
特別の実施例に関していくつかの図が記載されているが、当業者は多くの変形、代替、改良を理解するであろう。もちろん、ここに記載された請求項の範囲から離れることなしに多くの変形がありうる。
【0102】
本発明の原理および動作を証明するために、我々は本発明の実施例のいくつかの用途のために実験を行った。本発明は、上述の現在の超高速電子顕微鏡システムを用いた。すなわち、特定の実施例にしたがって、超高速システムは、1以上の超高速電子パルスを生成するための1以上の超高速光パルスのようなさまざまなパラメータを含む。これらのパラメータは使われているが、他の多くの変形、改良、代替がありうる。
【0103】
特定の例において、我々は海面の分子集合をナノメートル規模で研究した。これは、現在の方法およびシステムを用い、化学的および生物学的現象に対して重要である。水に関して、非結晶質から結晶質まで、水素結合の方向(directional)分子構造およびありうる異なった構造は、我々の発見まで、メゾスコピックスケールにおける界面の結合した(collective)集合をより理解の少ないものとしている。構造的に、基質上の水の性質は、界面での方向性(orientation)の力と、正味の(net)電荷密度により決定され、基質の親水性または疎水性の性質を規定する。しかし、整列した構造から乱雑な構造への変形およびそれらの共存は、決定的に、局所的かつ遠距離での原子の動きのタイムスケールに依存する。それゆえ、これらの構造の性質およびそれらの平衡のタイムスケールを解明することが望ましい。
【0104】
本発明の一実施例を用いてなされた実験において、我々は界面の水の構造の直接的な決定を原子スケールの分解能で、超高速の赤外部(IR)のレーザーによって開始される温度上昇(temperature jump)を受けた力学および回折を用いて行った。図11に示されるように、界面の水は親水性の表面(シリコン、塩素終端)上で制御された超高真空(UHV)環境において形成される。本発明の実施例によって提供される原子スケールの空間、時間およびエネルギー分解能によって、非平衡の構造の進化がモニターされ、それらの整列したまたは乱雑な性質が作られ、そして長距離の結合の破損および新しい構造の形式の時間スケールが決定された。以下で議論するように、我々は構造化されたまたは整列した界面の水をブラッグ回折から、および層を成した結晶質の構造をデバイシェラー環から確認した。温度上昇後の界面の水および層を成した氷の時間的進化はサブモノレイヤー(submonolayer)感度(sensitivity)によって研究された。我々はこれらの結果を、水素終端シリコンまたは銀基質のような疎水性の表面上から得られる結果と比較した。
【0105】
図11は親水性のインタフェースにおける水の構造を示したものである。図示されているように、Si(111)基質上の塩素終端は水の二重層を正しい位置に置く(orient)親水性の層を形作る。水の最下部の層における酸素原子間の最密のパッキング(packing)距離(4.43Å)は、塩素層の最上部と格子間位置との間の距離(4.50Å)に似ており、シリコン基質に関する特定の二重層の方向(orientations)(±30°)となる。この整列したスタッキング(stacking)は失見当(disorientation)が起こるまでの3から4の二重層まで続き、結果として結晶島(crystallite islands)となり、層状の構造を形成する。図示されたように、原子の大きさはファンデルワールス半径を超えない(not to scale for)。
【0106】
内部反射や非線形(たとえば、第二高調波発生および和周波発生(SFG))光学方法のような分光学的技術は、表面分子の変化に敏感である。たとえば、Pt(111)表面上の氷膜の極整列(polar ordering)の存在は、30のモノレイヤーの減衰長を持つことによって示され、CO/Pt(111)表面上のDO氷結晶からの移り変わりのSFG反応は脱着のない融解および再結晶化の存在を示した。ここに、構造は超高速時間分解能を有する回折を用いることで決定され、0.01Åの空間的分解能を提供した。我々は、選択的水素結合ネットワークの核間距離、たとえばOH…OおよびO…Oの距離はそれぞれ2.75Åおよび4.5Åであるが、その核間距離に関する変化をモニターすることができる。超高速表面再構築およびサブナノ秒(subnanosecond)の融解に関する今までの研究とは異なり、我々は表面上の超分子の構造力学を精査することができ、基質の回折から界面の水の回折をきれいに分離することを観察することができる。
【0107】
本発明の実施例を用いて、水は、親水性のインタフェースを作るための塩素原子で終端している単結晶のSi(111)表面上に準備された。その結晶はゴリオメーター上に0.005°の角度の精密さをもって、超高真空(UHV)環境内に取り付けられた。結晶は100Kの温度または他の適切な温度に冷却することができる。表面上の層の準備は、一般に、反射型高エネルギー電子回折による層の成長をその場でモニターするのと同様に、低エネルギーの電子回折およびオージエ分光法による基質の特徴づけを要求する。我々の場合は、電子束(〜1pA/mm)は比較的小さく、そのため分子層へのダメージおよび荷電は減少された。フェムト秒レーザー(典型的に〜1mJ、800nm、1kHzの繰り返し割合で120フェムト秒)により生成された光パルスは、30°の角度で散乱チャンバーに導かれ、温度上昇を開始するために基質上に焦点を合わせられた。
【0108】
より弱いビームが光子パルスビームから分離され、特定の実施例において周波数が3倍にされ(〜10nJ、266nmにおいて)、光電子効果を経由して電子パルスを生成するための修正可能な時間遅延の後に、後ろが照らされた(back-illuminated)銀の光カソード上に焦点を合わせられた。この実施例における電子パルスは、30keVにおいてド・ブロイ波長λ=0.07Åを有する。一連の偏向器および絞りが、事象(incident)のためのθ<1°の表面、これは典型的にナノメートルスケールの表面の集合(assemblies)に関して高い感度を得るのに適しているが、これに向けて導かれるように用いられた。電子パルスの到達は、単一の電子を検出することができる低ノイズの画像が増幅した(image-intensified)電荷結合素子(CCD)カメラの集合で記録される一連の画像を定義するために制御された。
【0109】
我々は最初に、水に含ませる(dosing with water)前に、Si基質の回折を特徴付けた。結晶を回転させることによって、我々はθに関するロッキングカーブ(rocking curves)と回折パターンの依存性を得た。これらの回折パターンは、基質により定義されるエワルド球と逆格子との間の交差を代表する。それゆえ、運動量移動座標(s)は、s=4π/λ・sin(θ/2)で定義され、θは散乱角であるが、事象角θにおける任意の与えられた回折画像を緻密に設定することができ、その場のゼロ時間(zero-of-time)もまた基質表面の温度上昇を用いることで決定された。界面の氷が110Kの表面上で形成されるように、回折画像は基質のブラッグ点から、水の特徴である新しい点および輪への移り変わりを示した。基質の温度上昇の後に、水の構造の進化を別に画像化するために、我々は電子パルスの異なったシーケンスを用いた。この回折の違いによる方法によって、唯一の遷移構造の孤立が含まれる(involved)ことができる。なぜならば、参照時間(tref)は開始パルスの到着の前または後に選択することができ、または、変化の間の異なった回数を選択することもできるからである。
【0110】
図12は超短電子パルスを用いているが、開始レーザーパルスを用いずに得られた回折画像を示す(負の時間においてtrefと同じである)。冷たい(110K)シリコン基質上の水の蒸着を通して、整列した氷のその場の成長の過程が示されている。基質上の水の吸着が、シリコンの111ブラッグ点の消失(たとえば、図12A参照)や、非結晶質の氷の回折環とともに結晶質の氷の111ブラッグ点の構成(たとえば、図12B参照)から見られる。アニーリングは、点の明るさの上昇や、環がシャープになることに示されるように、長距離の結晶質の構造の形成を促進する(たとえば、図12CおよびDを参照)。その構造は、環や点や縞において、回折がほとんど変化がないように、安定する(たとえば、図12EおよびFを参照)。図12Gおよび12Iは、実験的に観察される回折と、ナノメートルの厚さを持つ基質で配向(orientated)立方体(Ic)および六方(Ih)構造からの点のシミュレーションと、を示したものである。図12Jは、s空間において放射状に平均化されたときの実験的回折環が、1次元の回折強度カーブを作り出すことを示したものである。図12KおよびLは、ブラッグ反射と確認されるピークとともに、理論的回折強度カーブを示したものである。アニーリングにおける異なった順序付け(orderings)の明確な区別および点(環ではない)の早期の出現は、整列した界面の水によって層がなされている晶子とともに、異種の層が表面上にあることを示唆する。さらに、回折点はシャープであり、これは界面の水が明確な配向を有することを示す;対照的に、回折環は円状であり、これは完全にランダムに配向した晶子と一致することを示す。
【0111】
図示されたように、回折パターンは環、点、縞からなる。基質の回折の消失と、アニーリング後の氷のモノレイヤー(monolayers)としての表面の水の回折の出現とは、明白である。観察されたブラッグ点は、水分子が長距離のオーダーで基質によって配向することを示す。環は逆格子空間(s空間)における点と一致し、またこれらの環は晶子の構造の出現を示す:すなわち整列した水の島であるが配向においては乱雑である。環は、非結晶質である晶子を定義するのに十分にシャープである。温度の関数としての界面の水の構造的進化は平衡近傍の状況において較正された(温度上昇(temperature ramp)、〜2°/分)。我々はナノメートルスケールにおいて初期に堆積した(deposited)非結晶の氷の結晶化は、140K近くから始まり、長距離のオーダーの最高の度(highest degree)で〜150Kで飽和に達することを発見した。水の層の昇華は157±1Kにおいて起きる。ブラッグ点および環から、我々は、これらの回折画像と、氷の格子の対照性により予測される回折画像とを比較することによって、構造を決定することができる。
【0112】
sに対してプロットされるときの回折環の強度は、対応するブラッグ反射のピークを与える。立方体および六方構造の理論的な回折パターンは図2KおよびLに示される。これらのプロットは、3次元の(3D)晶子(各方向において5nmの次元のセル)の位相(phases)を加算することにより、またすべての配向を平均化することにより得られた。図12Jに図示されたピークは立方体の氷の111、220、311等の面からの反射によく一致し(たとえば、図12Kを参照)、これは支配的な構造である(比較のために、六方の氷の回折(たとえば、図12Lを参照)を参照)。図12Jにおけるsの値から、我々は、それぞれ、面間の距離を、(111)面においては3.80±0.23Å、(220)面においては2.27±0.15Å、(311)面においては1.93±0.07Åと決定した。これは立方体の構造の粉末回折の結果と一致する。不確かさは観察された回折ピークの幅により支配される。
【0113】
表面配向の(surface-oriented)水は明確な結晶質の構造であり(すなわち、エピタキシャルに基質から成長した)、この構造はシャープなブラッグ点に関与している。我々は、図12Hに図示するように、長距離のオーダーの界面の水(10nm幅ごとに10nm、1.5nm厚の層)の位相を加算することにより、理論的にブラッグ点の位置と相対的強度とを再生産した。親水性の基質において、我々は、水の底の層の酸素原子間の最密の距離(4.5Å)は、塩素層の最上部(on-top)と格子間位置との間の距離(4.43Å)と似ていることを発見した。これは、表面上の水の二重層の長距離のパッキングを可能にし、基質層に関する一意の30°の回転へと導く。それゆえ、水の2次元の(2D)表面単位格子は、図示されたように超格子として記載されることができる。この配置は、基質のブラッグ点の対称および位置と、水の対称および位置と、に由来した。氷のブラッグ点の検査により、主のブラッグピーク(すなわち、111)のサテライト(satellites)内の2つのドメイン(domains)を確認する;ひとつのセットは022、111、311により形成される;もうひとつのセットは202、111、131により形成される(図12Hを参照)。水は、おそらく、3つの塩素原子とオーバーラップするsp混成軌道を伴う格子間位置における酸素を通して、または塩素原子の頂上に座る水素を通して、基質と2つの位置で相互作用する。
【0114】
回折結果から、我々は水が親水性の表面上において主に立方体として構築され(立方体配向(Ic)および六方配向(Ih)の理論と、図示された実験との比較を参照)、Pt(111)基質上において見られる構造(六方)とは異なることを証明した。我々の111部ラッグ点の位置の理論的モデリングは、層間の空間を3.66±0.26Åとした。これは環から得られた値(3.80±0.23Å)と全く一致する。ブラッグ点の明らかな明るさおよび幅は干渉(interferences)のサイズの固有の反射であり、それらから我々はナノメートルスケールの厚さを得た。この厚さもまた理論と一致するものである。
【0115】
図13は本発明の位置実施例を用いて行われた実験において集められたデータを示すものである。図13AおよびBにおいて、負の時間(−30ps)および正の時間(100ps)における回折差分画像が図示されている。trefは、図13CからHにおいて−70psである。いくつかの遅延時間における((C)−30ps、(D)10ps、(E)20ps、(F)100ps、(G)530ps、(H)1130ps)放射状に平均化された回折差分強度カーブは、基質エネルギーフルエンスが22mJ/cmである層化した晶子の構造的力学を示す。明確なs値における減少(負の差分)および増加(正の差分)に注意されたい。図13Iは、111ブラッグ点の回折差分画像を示す。垂直軸は逆格子空間におけるsであり、水平軸は方位角の(azimuthal)散乱角である。
【0116】
システムの力学のために、図13に示されているように、我々は基質の温度上昇後の時間の関数として回折を追跡した。trefが負の時間(−70ps)であるとき、−30psにおける画像(図13Aの−70psの場合を参照)は、期待通り、回折差分強度を示さない。図13Bおよび13Iに示されるような正の時間において、ブラッグ点と環との両方が出現するが、しかし目立った構造的変化を伴う(環と点との変位に注意されたい)。異なったパネルは、“古い”構造の消失と“新しい”構造の出現との明確な表示を伴う進化を表示する。しかし、振る舞いは、“位相の移り変わり”の振る舞いと外見が似ている:短時間において(10ps(図13D)および20ps(図13E))、我々は古い構造の現象を観測した。一方で、中間の時間では(図13Fおよび13G)、乱雑な水と結晶のような水との共存の領域が現れた。長時間において(図13H)、システムは元の構造に戻ったが、結合距離においていくつかの違いが現れた。分離した冷凍冷却の実験において、我々は基質の温度を熱力学平衡状況近傍(near-thermodynamic)に上げる(ramping)ことによって変化させ、ちょうど昇華温度(157K)の下としたこと、また、氷の構造が、長時間において再構築された後に得られたそれらに一致することを我々が発見したことには注意すべきである。表面(環)から離れる晶子のこの振る舞いは、表面上の(点)構造化された水晶のような水の振る舞いとは対照的である。図13Iは同じ傾向を示す一つの点の進化を時間と共に示す−減少と再構築−しかし力学は非常に異なる。
【0117】
図14は、111反射領域において、ゲートのある回折の時間的進化を示したものである。図14に示されるように、いくつかのエネルギーフルエンス(fluences)における早期の時間(≦100ps)の111回折点および環の減少が示される。図14Bにおいて、新たな111回折点および環が、早期の時間においても示される。ゼロ時間の明らかな遅延は、独立に3psの誤差を含んで決定されることに注意されたい。長時間における対応する変化は、図14Cおよび14Dに示される。
【0118】
異なった温度において変化の割合を検査すること、これは基質のヒーティングパルス(heating pulse)のフルエンスの変化により制御されるが、この検査することによって、我々は、図14に示すように、111反射領域における通門(gating)は、古いピークの減少(図14Aおよび14Cを参照)と、対応する新しいピークの増加(図14Bおよび14Dを参照)とを示す。この振る舞いは、古い結合の破損(融解による)および新たな構造の形成を映し出すものである。層の晶子の融解は、基質の表面でのレーザー励起から5ps以内に起きる。対照的に、同じデータから、111ブラッグ点上で通門された(gated)画像は、同じエネルギーフルエンス(22mJ/cm)において界面の水の遅延時間36±3psを有した。なぜならば水は800nmにおいて光を直接吸収せず、層の晶子の比較的速い反応は、この超短タイムスケールにおいて非拡散振動カップリング(vibrational couplings)による加熱の高効率を示す;もし拡散であれば、層の氷は界面の氷の後に融けるべきである。フルエンスが増加すると、遅延は界面の水において減少して、しかし時間は37±5psにおいて類似を維持する減少は一定である。その結果は、親水性の基質の長距離のオーダーおよび双極子配向力によって引き起こされる構造化された水の高エネルギー(摩擦)バリアの存在を示唆する。
【0119】
これらの観測は、基質の最高温において(フルエンス、42mJ/cm)、界面の水は長距離のオーダーを失い続けることと、最大の変化が届いたときにかぎり、図14Aおよび14Bに図示された再構築が始まるであろうこととを示す。しかし、最大の変化の近傍で、新しい構造は、共存の領域において形成を始め、それは再構築の後に続く(図14Cおよび14D参照)。長時間の再構築において、エネルギーの散逸(冷却)は、再配分および熱拡散を通して起こる。この型において、熱拡散方程式の解から、我々は表面の温度が1nsで〜150Kと見積もる;最大変化の温度は〜370Kである。構造変化の全体のタイムスケールの間、熱脱離は重要でないことがわかった。なぜならば、図14に示されるように、すべてのフルエンスにおいて負の時間における基準の不変性から、我々は回折環および点がほとんどもとの強度に回復することを観測したからである。効果的な脱離の欠如は、CO/Pt表面上の氷においても見られるが、ほとんど平衡状態における脱離の温度と、平衡からは遠く離れた状態の脱離の温度との差を反映する。古い構造の現象および新しい構造の生成のための高いフルエンスにおける(42mJ/cm)安定期の領域の出現は、古い構造と新しい構造との共存同様に、再構築における集団モード(collective modes)の関与を示唆し、位相の移り変わりと類似する。
【0120】
図15はIcの動径分布関数(RDF)が核間距離密度とともに示されていることを示すものである。ダイアモンド四面体単位(unit)における2.75Å(OH…O)および4.5Å(O…O)での局所的距離はデータの比較のためにマークされる(図15BからE)。実験的な差分RDFカーブは対応する差分強度カーブから正弦変換を行うことで得られた(図13参照)。距離密度の変化は3つの正の時間において明白である一方、負の時間においては変化が観測されなかった。パネルの灰白のカーブはIcカーブであり、比較のために測定されスーパーインポーズされたものである。RDFにおける変化は明白に古い構造の減少および新しい構造の形成を示すが、ここでは関与した結合を確認する。図15Fにおいて、対応する構造変化は、図示するように、−5、+10、および+1130psである。
【0121】
超分子システムにおいて、ここで議論するように、単位セル内の局所的構造は、長距離のオーダーに付け加えられるが、実空間への回折カーブを反転する(フーリエ変換)ことによって実験することができる。図15AからEはそのような得られた動径分布関数[f(r)]は核間距離の密度を明らかにすることを図示したものである。立方体の氷において、2番目に近いO…Oの距離(4.50Å)はダイアモンド四面体の水素結合OH…Oの距離(2.75Å)と関連がある。これらの2つの距離の密度の時間的変化は、それゆえ、水素結合ネットワークの再構築の局所的分子レベルにおける力学を提供する。負の時間において(−5ps、図15B参照)、期待されたように、密度の変化は観測されなかった。10psにおいて(図15C)、OH…Oピークの変化は重要ではないが、O…Oピークの減少が観測される。この減少は、10psでネットワークの破裂(非結晶質へ)を示す。150psの遅延において(図15D)、重要であるが移動した減少が、新たな距離の出現と共存する。最長の遅延、1130psにおいて(図15E)、回折差分における減少で立証されたように、もとの立方体のような構造が回復するが、拡散の割合が遅いこと(nsからμs)により新たな構造はいまだわずかに“熱い”。このような構造において、我々は面間の距離を4.22±0.37Å(111プレーン)、2.42±0.20Å(220プレーン)、1.97±0.05Å(311プレーン)と決定した。局所的な分子の変化の構造的な図は、図15Fにおいて描かれる。
【0122】
親水性の表面の基質上の界面の水は特徴的な構造および力学を持ち、疎水性の表面上の水の層と比較される。界面の層の長時間の破損のタイムスケール(37ps)は、バルク液体の水における水素結合の破壊のタイムスケールよりも長い規模のオーダーであり、回折からの局所的なOH…OおよびO…O結合距離は直接的に変化に関与する。これらの結果は集合体の水の構造におけるエネルギーの流れのタイムスケールは、個々の分子の脱着のためのエネルギーの局所化のタイムスケールよりもより短いことを示唆する。最大の過渡の温度は370Kである;平衡脱着の温度は157Kである。さらに、長時間のオーダーを含む再構築の時間は非結晶化、これはOH…Oの相関関係よりも前にO…Oの相関関係を失うプロセスであるが、その時間よりも長い。たぶん、水素結合ネットワークを失うタイムスケール(37ps)は親水性のたんぱく質表面のそばの界面の水について報告されたタイムスケール(20から50ps)と似ていて、バルク水のタイムスケール(700fs−1.5ps)とは全く異なることは偶然ではない。別の実験において、我々は、水素終端の基質や銀でコーティングされた基質のような疎水性の表面をも研究した。そして、界面のオーダリング(ordering)は前者の(110)配向の周りの分布(distribution)へと変化することと、後者の基質にはならない(is absent for)こととを発見した。
【0123】
それゆえ本発明の実施例を用いることで、ナノメートル規模の超分子の構造を、非結晶質および晶子の固体の構造とともに、先例のない分解能および感度で、研究することが可能になる。これは、本発明の実施例を用いることで、さまざまな用途に利用できること、特に原子規模の分解能でインタフェースおよび表面の精査のために利用できることを実証するものである。もちろん、これらの結果は単に例であり、ここに記載された請求項の範囲を過度に制限するべきではない。当業者は多くの変形、改良、代替を理解できるであろう。
【0124】
別の実験において、我々は本発明にしたがった方法およびシステムの可能性を、衝撃のフェムト秒レーザー励起を伴う晶子の固体(GaAs)の表面構造力学の直接的な決定のために実演した。ブラッグ回折(移動、幅、および強度)の変化から、我々は、回折データの直接反転により、原子の圧縮と拡張とが−0.01Åから+0.02Åの規模においてそれぞれおこるということと、一時的な温度が7psの間にその最大値(1565K)に達するということと、に附随する議論において示す。構造変化の開始は温度の上昇より遅れ、非平衡の構造の進化を実演する。これらの構造的力学の結果は非熱的フェムト秒光精査の結果と比較され、また、誘電関数のフルエンスの依存性からくる温度反応との一致は印象的である。連結した超高速の時間分解能および原子規模の空間分解能を伴う表面(モノレイヤー)の構造力学の直接観察の成功は、本発明の実施例の多くの新たな用途を約束する。
【0125】
GaAsは表面の研究のための本発明の実施例のこの可能性を実証するための理想的なシステムである。特にその晶子および半導体の特性は十分に数量的(well-quantified)であるからである。これは、キャリアの特性の精査から対称的な電子的不規則化または変化まで多様に変化する広範囲での超高速光実験を許すものである。これらの光研究のほかさらに、最近のGaAs上の超高速X線実験はフェムト秒レーザー励起に附随するバルク格子力学を明らかにした。しかし、これらの超高速X線実験はX線の結晶への侵入、典型的には数μmであるが、その侵入が大きいために表面を精査することができなかった。一方、表面を2〜3ナノメートルの規模で精査した光技術は、原子規模での分解能で構造を直接的に決定することができなかったが、誘電関数の反応と格子不規則化とに関する貴重な情報を与えた。超高速時間分解能と結合したその電子の大きな散乱横断面は、リアルタイムでの表面の構造の力学のアドレシング(addressing)におけるこのギャップの橋掛けを許すものである。
【0126】
以下に記載される実験は、たとえば図1に示すシステムを用いて行われた。超高真空(典型的に、10−10torr)下において、低エネルギー電子回折およびオージエ分光法による表面の特徴づけに伴い、試料は、レーザーパルスの励起のビームおよび電子パルスのプローブが空間上で交差する散乱位置に運ばれ、修正可能な時間遅延Δt(ゼロ時間はその場で使われている上記の方法により決められた)を伴った。本発明のいくつかの実施例において、チャンバーはスパッタリングおよびクリーニングツールを含む。我々は、半絶縁性のGaAs(111)結晶をそれぞれのGa原子の上にあるCl原子を伴う塩素のモノレイヤーによって終端し、ほかのGaのダングリングボンド(dangling bond)を飽和させた。その表面は実験中ずっとその整合性を維持した。これは以下によく記載される回折パターン(対称、点の輪郭(profiles)、および強度)が不変の質を保つということにより証明されたものである。並進(in translation)3自由度と2回転軸とを有するゴニオメーターに置かれた結晶は、空間内に、回転において0.01°の精密さおよび並進において10μmの精密さをもって配置された。実験は室温で行われた。
【0127】
図16は本発明の実施例と塩素終端のGaAs(111)結晶の構造とを図示した概念図である。Ti:Sapphireフェムト秒増幅器(120fs、800nm、2mJ、1kHz)の出力は266nmのビームを生産するために周波数が3倍化された(400μJ、<300fs、1kHz)。このUVビームはt=0において開始(initial)ヒーティングパルスを供給するために散乱チャンバーへ運ばれた。このビームのごく小さい一部分は、同期して、電子パルスを生成するための後ろが照らされたAg光カソード上に導かれた。これらの電子パルスは、加速および焦点合わせの後、結晶まで導かれたが、そこではそれらが空間および時間(遅延Δt)において、ヒーティングパルス(heating pulse)とオーバーラップしていた。電子パルスは500fsの短さで作られたが、このすれすれの入射において、空間範囲はこの分解能を数十psまで減少させる。しかし、得られた感度のおかげで(フレームあたり20)、我々は実験的な時間の相互相関を7psまで落とすことができた;コンボリューション(convolution)とともに、またここで報告された信号のレベルにおいて、我々は容易に1−2psの反応を得た。これはマスキングの技術により、基質の空間の範囲を400μmまで減少させることで可能になったものであり、結果として経過時間4psを得た。5軸の高精密ゴリオメーター上に載せられた試料は、電子ビームが選択された入射角(θ<5°)で、<112>方向の方位角に沿って衝突するように置かれた。図において、L0とL1とは0次および1次のラウエゾーン(Laue zones)を参照する。結果としての回折パターンは、画像化CCDカメラシステムにより非近接場で記録された。図16のはめ込みにおいては、2層の空間が3.26Åで結晶の構造が示されている。
【0128】
t=0におけるフェムト秒レーザー加熱は力学を開始させた。それは次に30keVの超短電子パケットにより精査された(λdeBroglie≒0.07Å)。電子は小さい入射角(θi≒1°)で表面に衝突した。また、このすれすれの入射において、反射高エネルギー電子回折法は唯一適応し、また、時間分解能が ≒100psである加熱の研究のために用いられた。電子パルスは修正されたWilliamson-Mourou streak cameraの配置によって生成された。この実験のために用いられたシステムにおいて、我々は期間が ≒500psの短さのパルスを得た。しかし、実験のグレージング幾何(grazing geometry)のためのシステムでは、時間の相互相関は7psであった。電子パルスの到着を制御することによって(図16のΔt)、我々は構造をヒーティングパルスの前または後に構造を精査することができる。構造変化は、リアルタイムにおいて、単一の電子の検知が可能なCCD(電荷結合素子)画像化組立部により記録されながら、ブラッグ反射とロッキングカーブ(rocking curves)のモニター後に続いた。回折の3つの特徴は時間の関数として随伴した:ブラッグピークの移動、幅、強度である。
【0129】
図17(AおよびB)は時間分解なしで超短電子パルスにより得られた結晶(111)の表面の静的な回折画像を示したものである。図17Aにおいて(参照文字a)、強い(0,0)の同相の反射を示す回折画像が、ラウエゾーン内の縞と点と共に図示されている。図17B(参照文字b)は、(0,0)−(111)工紙面の実験的なロッキングカーブを示したものである。当業者であれば、周期性は、ブラッグ反射の明確な識別を許すことと、層間の間隔を与えることと、を理解するであろう。
【0130】
図17(AおよびB)は、非常に強い(0,0)および他のブラッグ反射を表示する典型的な静的回折画像を提供する。図17Aは回折パターンを示し、その回折パターンのために、入射角は0次のラウエゾーンにおける回折縞と同様に高位の回折ピークを表すために調整された。これら、又は同様のデータは、低い角度での縞間での角度分離の直接反転、もしくは、より高いラウエゾーンにおけるブラッグスポットによって、分散位置(170±1)からカメラの正確な距離を定める。この反転は直接的である、なぜならば格子ロッド(rods)は逆格子空間において、エワルド球の半径2πλ−1=90Å−1との交点に沿った面内の逆距離3.14Å−1によって分離されるからである。(0,0)ブラッグ点の検出に門をつける(gating)ことと、入射角の関数としての回折位置に従うこととによって、我々は実験的なロッキングカーブを得た。そのロッキングカーブは、(111)方向(n=1、2、…)に沿ったGaAs格子の周期性を与える。これは図17Bにおいて見られ、入射角はいくつかの度に多様化していた。0.60°±0.02°のθにおける実験的な周期性は、格子二層空間の3.26Åから得られる0.61°の期待値に量的に一致する。
【0131】
図18はt=0におけるレーザーヒーティング励起に伴うブラッグ反射の中央位置、強度および幅の時間依存を示す。図18Aにおいて、時間およびフルエンスの関数としてのブラッグ点の中央位置がプロットされている。右側の垂直軸は角状変位を与え、左側は格子面間隔における対応する変化を示し、(111)表面のプレーンに対し垂直である。収縮は早い時刻におき(Δd<0)、格子拡大(Δd>0)に続いて起きる。図18の差込図は長時間における進化を示す。図18Bにおいて、ブラッグ点(温度)の集積された強度と、格子面間隔における変化と、2mJ cm−2で得られたデータセットによる格子面間隔における変化との比較が図示されている。右軸は、対数スケールを用いて、ブラッグ点の時間依存の集積された強度(I)を、負の遅延におけるその対応物(Io)に対する割合で与え、それから温度スケールが得られる。格子拡張はまた、左軸のそのスケールにおいても、破線で描写されるブラッグ点の拡大と共に示される。温度上昇と格子拡大との間のその明白な遅延は、以下に示す2つの矢印(arrows)によって言及される。
【0132】
図16において図式的に描写された時間分解の実験において、t=0における励起パルスは、最初の温度および構造変化を定義する。図18において、我々は時間の関数としてのn=2(0,0)ブラッグ点の中央位置と強度とを追跡する。我々は、図18Bに示される幅もモニターする。図18Aはピーク中央位置の変化を提供し、それは(111)方向における格子面間隔の変化を緻密に計画するものである。実験的に決められた266nmでのダメージ閾値4.5mJ cm−2の9%および45%のフルエンスにおける結果が示されている。ブラッグ点の角状変位(Δθ)は、直接的に格子間距離における変化(Δd111)を与え、その変化はΔd111=−Δθ・d111・{2sin(θ/2)}−1(θは総散乱角である)の関係から与えられる。より大きい角またはより小さい角(Δθ>0またはΔθ<0)に対する変位は、それゆえ、格子の収縮または拡大の形跡である。
【0133】
図18Aに示された結果より、結晶の最上部の表面層は、t=0における励起に伴ってすぐに収縮する。この最初の収縮の振幅は、2つのフルエンスにより与えられるが、完全なフルエンスの依存は図19に示される。最初の収縮(−0.015Å)の後に、システムは最大振幅(+0.025Å)へと拡張し、それは強くフルエンスに依存する:フルエンスが大きくなると、拡張もより広くなる。そのデータはまた、開始時間と拡張の速度(≒ms−1)とが強くフルエンスに依存することを示す:拡張はより高いフルエンスにおいてより早く、より速く起きる。その最大拡張に達した後、システムは下の格子面間隔に向かってより長い時間スケール、50psを超えるスケールでまた収縮するが、少なくとも数ナノ秒の間限界のあるより小さな拡張が存続する。観測は、また、いろいろなレーザーフルエンスにおいて800nmのフェムト秒励起でなされたが、振る舞いは類似している。つまり、拡大および最初の格子間間隔に向かっての次の戻りを伴う最初の収縮である。この形式上の類似性は、266nmの実験と比較して、観測された構造力学は、光電子放出による表面の充電には支配されないことを示す。なぜならば、800nmおよび/または低フルエンスにおける励起は類似した振る舞いに終わるからである。
【0134】
図19は実験によって実証された構造的力学のフルエンスの依存性を図示したものである。図19Aにおいて、指示されたフルエンスにおけるデータのセットの実験的な追跡が図示されている。図19Bにおいて、最大変化における振幅が励起フルエンスの関数として示されている。時間依存は差込図に示されている(1:0.04、2:0.2、3:1、4:3mJ cm−2)。特に、時間分解能は図18におけるものよりも低い。なぜならば、これらのフルエンス依存の測定は最低限の可能なフルエンスの範囲を調べるためにマスキングなしで行われたからである。
【0135】
その一時的な温度は、時間と共に回折集積の(diffraction-integrated)強度の変化において顕著である。これはダメージ閾値の45%における励起であって、時間の関数としてのブラッグ点の集積された強度の進化をプロットした図18Bにおいて提供される。バルクのGaAsの一覧の(tabulated)デバイワラー因子を用い、表面の2次元性を考慮することによって、我々は1563±83Kへの最初の温度上昇を得た。システムは2〜300ピコ秒の時間スケールにおいて冷却し、1ns後に≒510Kに達した。最初の温度上昇は7psの上昇時間(デコンボリューション(deconvolution)の前の10ps)を有し、誘電関数のフェムト秒光研究からの結果と完全に一致する。さらに、上記に報告された最大温度は、対応するフルエンスにおいてこれらの光研究から外挿した値(1300−1500K)に近い。図18Aに示されたより低いフルエンスの型(0.4mJ cm−2)から、我々は、1ns後に320±5Kにおける減衰の水平化を伴う420±18Kへの温度上昇を見出す。この場合もまた、上昇時間と最大温度は光研究と一致する。
【0136】
格子拡張の進化と、温度の進化とは、図18Bにおいて、幅と共に並列している。明白に、格子の拡張よりも温度の進化のほうが先に起こり、また、我々は温度上昇と構造拡張との間に15psの遅延があることを測定した。構造拡張におけるこの遅れは、衝動的な最初の温度に伴う提案された遅延した格子の変化の直接の証拠を提供する。我々は、1565±83Kへの温度上昇は、融点である1513Kに類似する(または超えさえする)一方で、励起フルエンスはダメージ閾値の半分でしかないことを言及する。しかし、図18Bから明らかなように、ピーク温度は長い時間持続せず、システムはその結晶質の構造を失わない。
【0137】
遅れた構造変化は、その0.025Åの最大拡張に、≒1000Kの温度で到達する(図18B参照)。このナノメートルスケールでの格子拡張はバルクGaAsの拡張と今比較されてもよい。バルク結晶の線形拡張係数(coefficient)から、1000Kの温度は0.013Åの線形格子拡張と対応しえ、また、この値は2の因子によって、我々の実験的な値である0.025±0.001Åとは異なる。より長い時間において( ≒1ns)、格調の変化が平均化するとき、510Kの温度は線形拡張の0.0038Åと対応し、また、我々の実験的な値は0.0032ű0.0005Åである(図18B参照)。間隔の差異におけるこの一時的な減少は、バルク型の振る舞いに対する表面変化を示している。X線研究におけるひずみ伝播のモデリングから、0.0082Åの表面のひずみ増幅はGaAsのものと推察された。我々の測定はより大きな変形を示す(3の因子によって)。
【0138】
入射角が小さいことから、精査電子は非常に小さい侵入深さを有し(θ≒1°で30keVの電子において2〜3Å)、それゆえ結晶の非常に上部の表面層のみを精査する;我々の実験の幾何において、励起パルス(入射角は30°)は垂直な侵入深さをnmスケールでまた持つ(266nmにおいて3.5nm)。これらの光子および電子の小さいまたは同等の侵入深さは、これらの表面層の局地的な構造力学をモニタリングするための唯一の状況である。X線の実験において、ヒーティングパルスは典型的に0.3μmの吸収長を有し、また、精査X線パルスはミクロンスケールの侵入深さを有する。そのようなスケールは一般的にバルク中の、またはミクロンのオーダーの長さを超えたひずみ伝播の考察を要求する。明白に、原子の表面の動きの直接精査は、表面の最初の力学の理解への洞察と、異なった温度におけるバルク伝播への接続(フルエンス)に対する洞察を提供する。構造変化に関するフルエンスの影響は、図19Aにおいて緻密に計画され、また、時間依存のブラッグ反射に随伴する実験的な追跡の代表的な例は、図19Bに示される。
【0139】
さらなる実験がシリコン上で、塩素化の影響を排除するために、また、アプローチと適用の範囲との一般性をテストするために、行われた。塩素化されたおよび塩素化されていないシリコン(111)表面は、同じ実験条件(励起波長およびフルエンス)にしたがった。GaAsのそれに対する類似した振る舞いが見つかった−一方では水素終端のシリコンでは拡大に先立つ注目すべき表面収縮を示さず、塩素化された表面では拡大に先立つ急速な収縮を示した。図18における信号の全体位相は、マスクにおけるオーバーラップに依存し、また、t=0における光フォノン生成が観察された散乱に貢献することが可能である。拡大に対応する位相が、不明確に確立することと、異なったフルエンスにおける温度および構造力学の時間的進化により確認されることと、は注意すべきである。しかし、塩素を伴う観察は、干渉性の音響のフォノン生成に先立つ最初期におけるポテンシャルドリブンの(potential-driven)変化に一致する。
【0140】
これらの実験に基づいて、ありうるメカニズムが提案される。本発明の実施例はこの提案されるメカニズムに限定されない。一般の構造的力学の絵は構造変化の観察および動きのタイムスケールから出現し(図18B参照)、またシリコン表面上の観察から出現する、と議論することができる。非熱的型において、最初のフェムト秒の一時的励起は、電子正孔の組を作るが、これはポテンシャルをゆがめ、また、実験的に上述で検証したように、構造変化は超短タイムスケールにおいて、格子(フォノン)における重要な動きに先立つこの変形により起こる。固体のこの高度に非平衡の状態は、エネルギー散逸および再配分に随伴され、それらは完全に長時間における格子の拡大および再構築へと導く。これを考慮して、表面原子の拡張のみが期待できるが、ここに報告された研究において観察された収縮および拡大とは反対である。しかし、塩素臭短の表面では、大きな電子陰性度が電荷分布を塩素に向けて移動させる(イオンのポテンシャル)。下にある層との次のクーロン力の相互作用は、早期の超高速な収縮の立ち上がりにおいて観察されたように(図18A参照)、原子間の層を収縮し、また、このタイムスケールにおいて、力学はポテンシャルの変化によって動かされる。シリコンの場合においてなされた観察と、収縮において支持するこの提案されたメカニズムと共に、我々は、GaAs上の原子的塩素吸着は、電子アクセプタであることが分かったことを言及する。
【0141】
収縮に続いて、拡張が類似したタイムスケールにおいて進行する。2〜3psのうちに起こるオージエプロセスを通して(密度が≒1021 cm−3)、キャリア密度は減少するが、全体の電子エネルギーは変化しない。電子−フォノン結合を伴うクーロン力のポテンシャルの落ち込みは、今、システムを反対の動きから拡張に向けて動かす(図18A参照)。格子の拡張は、典型的に、表面層の温度を定義するために7psを要求し、また、これは密度の外形(profile)の上昇において明白である(図18B参照);この立ち上がりの後においてのみ、我々は電子−フォノン結合を通して得られた温度を定義することができるのである。構造変化(拡張)は温度上昇を随伴するが、15psの明らかな遅延の後、その最大限の+0.025オングストロームの拡張にさらに長い時間で達する。この(111)方向における熱拡張はおそらく格子振動の非調和性によるものである。特に、ブラッグ点の幅は、構造的格子拡張のピークの前にその最大限に達する。格子力学は、最初は、非調和性が有効なときに続いて起こる等方的拡大に随伴される干渉性の集団のフォノンによって動かされる。この新生の格子拡張は、一般に、継続する収縮を最初に乗り越えるべきである(図18A参照)。我々のデータから、我々は、温度がその最大限の半分まで上昇した後の ≒5psの拡張の開始と、最初の収縮を乗り越えるための ≒10psの追加の遅延と、を得た。構造力学のこの絵は、図19で実証されたように低いフルエンスにおいて堅牢である、ことは言及すべきである。しかし、低いフルエンスの型において、最初の温度は減少し、電子−フォノン結合が支配し、拡散プロセスはより長い時間において顕著になる。
【0142】
元の構造への回復はΔd111の+0.025Åから+0.003Åへの減少により観測されるが、この再構築はより長いタイムスケールで起きる(図18参照)。我々は、拡散プロセスが典型的に50psを超えて始まる、というのはこの時間までΔd111は増加を続けるからである−拡散による表面の冷却はΔd111の減少へと繋がるからである、ということを言及する。それゆえ、拡張された値であるΔd111=0.025Åにおける構造は、振動的に集合モードの非平衡状態にあり、それはエネルギーの再配置および拡散により、より長い時間で冷却する。GaAsの知られた熱特性(熱容量および熱伝導率)を用いた熱拡散の理論的な計算は、図18Bで示される水平化のポイントからの温度の振る舞いとよい一致を提供する。
【0143】
それゆえ、この実験は、時間、長さ、および感度のスケールでの超高速電子結晶学の新次元が、理想的に表面およびインタフェースの原子スケールの構造力学に適していることを実証する。これが達成されるひとつの理由は、直接的に、−拡散の周期性と、時間による変化とから−原子空間(ブラッグピーク位置)、移り変わりの温度(ブラッグの集積された強度)、および干渉性の格子振動の関与(ブラッグピークの幅)を直接的に決定できる可能性によるものである。非平衡の表面構造のタイムスケール、およびより長い時間の再構成は、表面減少の理解およびバルク材料の伝播にとって望ましい。我々は、今、本発明の実施例が、表面科学およびナノメートルスケールの材料のこの一般的な領域における多くの用途の発展と、高分子の構造とを提供することを信じる。
【0144】
本発明の一実施例によるシステムを用いた別の実験において、原子スケールでの空間分解能で、バルクおよび表面の構造の時間的進化が研究された。単に一例に過ぎないが、一実験で、吸着質を持つシリコン結晶と吸着質を持たないシリコン結晶とが研究された。図20は凝縮相、たとえば結晶および固体−液体相の移り変わりであるが、の研究の間に得られた結果を図示したものである。図20Aにおいて、Si結晶からの回折が図示されている。図20Bにおいて、ブラッグ点を参照付ける回折フレームが示されている。図20Cは、非結晶質から液体への移り変わりを参照付ける回折フレームを図示したものである。
【0145】
基底状態に対し、図20で図示される回折差分を参照付けることは、負の時間での基底状態パターンから正の時間での観測される変化である、開始パルスによって起こされた構造における変化を示す。構造的変化は、ロッキングカーブの同相のブラッグピークの時間でのシフトにおいて明白である一方、振動振幅における増加は広がり(broadening)において反映される。変化は、最大限のシフトおよびそれからの元の構造の座標への衰退として起きる。ブラッグ点に門をつける(gating)ことによって、我々は時間と共に変化を追うことができる。これらの結果は“瞬間の”構造変化(2ps 変化のステップ;総計10ps)を示す;ダメージングフルエンスの50%のレベルにおける0.04Aまで上げることによる格子の2.35ÅのSi−Si結合の一様な拡張である。これは、高度に日平行な構造からSi−Si距離である2.35Åの最終基底状態への格子緩和に随伴される。再構築の多数の時定数は実区間での拡張および振動温度を記載する。
【0146】
表面構造(および水素または塩素と共に)に関するさらなる研究は、目立った結果を生み出した。異相の状態における縞に門を付けることで、本発明の実施例は表面の構造的干渉およびそれらの時間に伴う進化を直接的に解明することを可能にする。特に、2つの点は時間内に、および異なって変化するが、位相の一貫性(coherence)を維持する。それゆえ、我々は、表面構造の空間的、時間的、および位相の一貫性の変化を表示することができ、また、空間のパターンは凝縮物質の回折(運動学的な)理論の枠組みの中で記載することができる。構造における変化はSi原子の表面の振幅変化において明白である。バルク変位の結果(0.04Å)と異なって、表面の原子の拡張は規模(magnitude)のオーダーでより大きい(0.4Å)。表面構造の冷却はバルクのタイムスケールとは異なるタイムスケールで起きる。我々は、また、格子の温度が十分に高く大きな振幅の乱雑さを生じさせるときの相転移に関与する構造的変化を研究した。赤外のフェムト秒パルスと共に非結晶質の構造の超短温度上昇が開始されることは、新たな回折環のパターンを作る。我々はそのパターンを基底状態の画像に対する参照付けによって時間の関数として追跡した(図20参照)。構造的変化は液体状態への相転移である。
【0147】
本発明の実施例による方法を用いたさらに別の実験において、
【0148】
ここに記載された例および実施例は、例示の目的のためのみである。さまざまな修正やその明らかな変化は、当業者に対して示唆されるであろうし、また、本出願の精神内および本出願および追加された請求項の範囲内に含まれるものである。追加された請求項で示されたものを除き、本発明は制限されることを意図していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間分解された画像を得ることができる透過型電子顕微鏡システムであって、
光子パルスを生産するレーザーと、
前記光子パルスを電子生成光子パルスと開始光子パルスとに分けるように適合されたビームスプリッタと、
前記電子生成光子パルスによって活性化されたことに応答して電子パルスを生産するように適合されたカソードと、
前記開始光子パルスと前記電子パルスとの間の時間遅延を導入するために適合された光遅延ステージと、
前記開始光子パルスおよび前記電子パルスによって照射された試料と、
前記電子パルスにより前記試料が照射されたことに反応して、前記試料の画像を生産する電子検出器と、
から構成される透過型電子顕微鏡システム。
【請求項2】
前記レーザーは光子パルス列を生産する、
ことを特徴とする請求項1に記載の透過型電子顕微鏡システム。
【請求項3】
前記レーザー源は、半値全幅で500fs未満の光子パルス列を供給するモードロックレーザー発振器を備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の透過型電子顕微鏡システム。
【請求項4】
前記半値全幅が100fs未満である、
ことを特徴とする請求項3に記載の透過型電子顕微鏡システム。
【請求項5】
前記電子パルスは約1個から約1000個の電子を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の透過型電子顕微鏡システム。
【請求項6】
前記カソードはLaBを含む結晶から構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の透過型電子顕微鏡システム。
【請求項7】
前記電子検出器はデジタル電荷結合素子カメラを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の透過型電子顕微鏡システム。
【請求項8】
前記試料は生物学的試料、化学的試料、物理学的試料、および電子的試料から選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載の透過型電子顕微鏡システム。
【請求項9】
前記試料は真空に維持される、
ことを特徴とする請求項1に記載の透過型電子顕微鏡システム。
【請求項10】
電子顕微鏡を用いて時間分解された画像を得る方法であって、
画像化される試料の、サイズを有する特徴部を供給することと、
前記試料をステージ装置上に載せることと、
前記ステージ装置上の前記試料を真空状態に維持することと、
1以上の第1の電子パルスを前記試料の前記特徴部に向けて導くことと、
時間の第1の部分の間に前記試料の前記特徴部の第1の画像に関連付けられる前記1以上の第1の電子パルスの第1の部分を、検出装置を用いて前記時間の第1の部分の間に捕らえることと、
前記時間の第1の部分の間の前記試料の前記特徴部の前記第1の画像に関連付けられる前記1以上の第1の電子パルスの前記第1の部分の第1の情報を、前記検出装置から処理デバイスに転送することと、
約1個から約1000個の電子をそれぞれが有する1以上の第2の電子パルスを、前記試料の前記特徴部に向けて導くことと、
時間の第2の部分の間に前記試料の前記特徴部の第2の画像に関連付けられる前記1以上の第2の電子パルスの第2の部分を、検出装置を用いて前記時間の第2の部分の間に捕らえることと、
前記時間の第2の部分の間の前記試料の前記特徴部の前記第2の画像に関連付けられる前記1以上の第2の電子パルスの前記第2の部分の第2の情報を、前記検出装置から処理デバイスに転送することと、
から構成されることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記1以上の電子パルスはそれぞれが約10個から約100個の電子を有する、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記サイズは100ナノメートル未満である、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の画像は、前記第2の画像と比べ1以上の異なった特徴部を有する、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記時間の第1の部分の間であって前記時間の第2の部分の間ではないときに、電磁放射の1以上のパルスを用いて、前記試料の前記特徴部に照射することをさらに備える、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記時間の第2の部分の間であって前記時間の第1の部分の間ではないときに、電磁放射の1以上のパルスを用いて、前記試料の前記特徴部に照射することをさらに備える、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記電磁放射はレーザー源に由来する、
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記電磁放射はレーザー源に由来する、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記時間の第1の部分は1秒から10秒であって、前記時間の第2の部分は1秒から10秒である、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項19】
電子ビームパルスを用いて1以上の試料から画像を形成する方法であって、
画像化される試料の、約100ナノメートルまたはそれ未満のサイズを有する特徴部を供給することと、
前記試料をステージ装置上に載せることと、
前記ステージ装置上の前記試料を真空状態に維持することと、
それぞれが約10個から約1000個の電子を有する1以上の電子パルスを前記試料の前記特徴部に向けて導くことと、
前記試料の前記特徴部の画像に関連付けられる前記1以上の電子パルスの部分を、検出装置を用いて捕らえることと、
前記試料の前記特徴部の前記画像に関連付けられる前記1以上の電子パルスの前記部分の情報を、前記検出装置から処理デバイスに転送することと、
前記試料の前記特徴部の前記画像に関連付けられる前記1以上の電子パルスの前記部分の前記情報を少なくとも用いて、前記試料の前記特徴部に関連付けられる視覚画像を出力することと、
から構成されることを特徴とする方法。
【請求項20】
前記1以上の電子パルスは、半値全幅で500fs未満の光子パルス列を供給するモードロックレーザー発振器を備えるレーザー源から供給される光子パルス列に由来する、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記1以上の電子パルスは、LaBを含む結晶から構成されるカソードから供給される、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記検知装置は、デジタル電荷結合素子から構成される、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記真空環境は、約1×10−6torrから約1×10−10torrの範囲に広がる、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記試料を約77Kから約300Kの範囲の温度で維持することをさらに備える、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項25】
それぞれの前記電子パルスは約1個から約100個の電子を有する、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項26】
それぞれの前記電子パルスは約1個から約1000個の電子を有する、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記試料は生物学的試料、化学的試料、物理学的試料、半導体試料、絶縁体試料、および導体試料から選択される、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記導くことは、少なくとも電子レンズ装置を用いて提供される、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記電子パルス列の前記一部は前記試料の一部を通過する、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項30】
電子ビームパルスを用いて1以上の試料から情報を捕らえるための方法であって、
画像化される試料の、サイズを有する特徴部を供給することと、
前記試料をステージ装置上に載せることと、
前記ステージ装置上の前記試料を真空状態に維持することと、
それぞれが約1個から約1000個の電子を有する1以上の電子パルスを前記試料の前記特徴部に向けて導くことと、
前記試料の前記特徴部の特性に関連付けられる前記1以上の電子パルスの部分を、検出装置を用いて捕らえることと、
前記試料の前記特徴部の前記特性に関連付けられる前記1以上の電子パルスの前記部分の情報を、前記検出装置から処理デバイスに転送することと、
前記試料の前記特徴部の前記画像に関連付けられる前記1以上の電子パルスの前記部分の前記情報を少なくとも用いて、前記試料の前記特徴部に関連付けられる1以上の指標を出力することと、
から構成されることを特徴とする方法。
【請求項31】
試料の時間分解された特徴づけを行う方法であって、
光子パルスを供給することと、
前記光子パルスを電子生成光子パルスと開始光子パルスとに分けるように適合されたビームスプリッタを供給することと、
前記電子生成光子パルスによって活性化されたことに応答して電子パルスを生産するように適合されたカソードを供給することと、
前記開始光子パルスと前記電子パルスとの間の時間遅延を導入するために適合された光遅延ステージを供給することと、
前記開始光子パルスおよび前記電子パルスによって照射された試料を供給することと、
前記電子パルスにより前記試料が照射されたことに反応して、前記試料の画像を生産する電子検出器を供給することと、
から構成されることを特徴とする方法。
【請求項32】
前記光子パルスは光子パルス列のうちのひとつである、
ことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記光子パルス列は、パルスの時間幅の平均が500fs未満である、
ことを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記電子パルスは約1個から約1000個の電子を含む、
ことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記カソードはLaBを含む結晶から構成される、
ことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記電子検出器はデジタル電荷結合素子カメラを備える、
ことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記試料は真空に維持される、
ことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項38】
分光システムであって、
光子パルス列を生産するレーザーと、
前記光子パルス列を電子生成光子パルス列と分光光子パルス列とに分けるように適合されたビームスプリッタと、
前記分光光子パルス列の波長を開始波長に調整するよう適合された非線形光学素子と、
前記電子生成光子パルス列によって活性化されたことに応答して電子パルス列を生産するように適合されたカソードと、
前記分光光子パルス列と前記電子パルス列との間の時間遅延を導入するために適合された光遅延ステージと、
前記分光光子パルス列および前記電子パルス列によって照射された試料と、
前記電子パルス列により前記試料が照射されたことに反応して、前記試料の画像を生産する電子検出器と、
から構成されることを特徴とするシステム。
【請求項39】
前記非線形光学素子は光学パラメータ式発振器である、
ことを特徴とする請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
前記光子パルス列および前記電子パルス列は、パルスごとに1ps未満の平均パルス幅を有する、
ことを特徴とする請求項38に記載のシステム。
【請求項41】
前記電子パルス列はパルスごとに約1個から約1000個の電子を含む、
ことを特徴とする請求項38に記載のシステム。

【図1A】
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【図1C】
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【図1D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−108657(P2011−108657A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10306(P2011−10306)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【分割の表示】特願2007−506297(P2007−506297)の分割
【原出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(305053547)カリフォルニア インスティテュート オブ テクノロジー (18)
【Fターム(参考)】