説明

路面の融雪設備

【課題】 排熱による融雪効率を実用に適する程度に高める。
【解決手段】 路面の下に蓄熱空間を設け、該蓄熱空間の下面に所定の深度をもって金属製の内部中空体を設け、蓄熱空間に、燃焼装置の排熱を供給する排熱供給管と、排熱を外気に放出する排熱放出管とを設ける。金属製の内部中空体が、夏期に地面下に蓄えられた自然の地熱を蓄熱空間に伝達する。このため、排熱供給管を介して蓄熱空間に排熱を供給すれば、蓄熱空間の内部温度は、外気温が低い場合や積雪がある場合でも大幅な温度低下をみせない。余剰の熱は、内部中空体を介して地面下に蓄えるので真冬でも地熱を有効に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車場や住宅敷地等の路面に積もった氷雪を融かす融雪設備に係り、とくに暖房装置や給湯装置等の燃焼装置の排熱を利用する融雪設備に関する。
【背景技術】
【0002】
降雪地では、従来から路面の雪を融かすための融雪設備(いわゆるロードヒーティングシステム)が用いられている。これらの設備は、路面下の熱源として、電気を利用した発熱体や、温水を利用したもの、あるいは各種の排熱を利用したものがある。
【0003】
このうち、排熱を利用した融雪装置としては、例えば、地面下に設けたガスパイプに燃焼排熱を送り込むものが知られている(特開2001−040607号)。
【0004】
排熱利用の路面融雪は、電気や高温水を用いた融雪設備に較べ、電気使用料金や灯油料金がかからずランニングコストが抑えられる利点がある。
【特許文献1】特開2001−040607号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の排熱利用の融雪設備は、電気利用や温水利用の融雪設備に較べて融雪効率が悪いという問題がある。
【0006】
これは、雪を融かすための熱交換によって、供給する排熱の温度がすぐに低下してしまい、継続的かつ即効性のある融雪が困難になるからである。例えば、前記特許文献1では、排熱の温度低下を防止するため二重管を用いて排熱を路面下に供給する。しかし、二重管を用いると排熱の温度低下を防げても、放出される熱量が絶対的に少ないため、融雪効率は他の手段に較べて格段に劣る。
【0007】
本発明の目的は、排熱による融雪効率を実際の運用に適する程度に確実に高める点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る路面の融雪設備は、路面の下に蓄熱空間を設け、該蓄熱空間の下面に所定の深度をもって金属製の内部中空体を設ける一方、当該蓄熱空間に、燃焼装置の排熱を供給する排熱供給管と、排熱を外気に放出する排熱放出管とを設ける(請求項1)。
【0009】
かかる構成によれば、金属製の内部中空体が、夏期に地面下に蓄えられた自然の地熱を蓄熱空間に伝達する。このため、排熱供給管を介して蓄熱空間に排熱を供給すれば、蓄熱空間の内部温度は、外気温が低い場合や積雪がある場合でも大幅な温度低下をみせない。
【0010】
その一方で、冬になっても外気温が高い場合や、陽光により路面温度が高まるような条件では、蓄熱空間に送り込んだ排熱によって、蓄熱空間の内部温度が高まる。余分な熱は金属製の内部中空体を介して地熱として蓄えることが出来るため、初冬〜厳冬期〜春先まで、地面下の温度を高く保つ。蓄えられた地熱は、金属製の内部中空体によって蓄熱空間の温度が低いときは均衡を保つように戻されるので、蓄熱空間の温度は極端に低下することはない。このため、厳冬期でも排熱だけの路面融雪が可能となる。
【0011】
請求項2は、蓄熱空間に排熱を送り込む排熱供給管を、内管と外管とからなる二重管とするものである。これにより、蓄熱空間に供給する排熱の温度低下を防止し、蓄熱空間内の温度を高く保つためである。排熱供給管が融雪を行うわけではないから、排熱供給管の断熱性を高めても問題は生じない。
【0012】
請求項3は、地熱を利用するための金属製の内部中空体の形状を、下方先端が鋭利な錐形とするものである。内部中空体は、所定の深度をもって配設し、地熱と蓄熱空間との温度差の均衡を保つように機能してくれればよいので、基本的にその形状は限定されないのであるが、工事のしやすさからいえば、杭打ち装置を用いて効率的に打ち込める形状とすることが望ましいからである。なお、内部中空体を金属製とするのは、熱伝導率の良好な点と、土圧による破損が少ない点を考慮したためである。温度保持やコストの点から云えば鉄を利用することが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る路面の融雪設備によれば、蓄熱空間の温度を、地熱と排熱とによって常に好ましい状態に維持でき、効率的な融雪が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明に係る路面の融雪設備を例示するものである。
この融雪設備は、燃焼装置、例えば室内の暖房装置である灯油ストーブ2の排熱(燃焼排気)を利用する。灯油ストーブ2は、ファンを備えるいわゆるFF式の灯油燃焼ストーブを用いることが出来る。3は家屋の外壁、4は室内の床である。
【0015】
灯油ストーブ2には排熱供給管10の一端を接続してあり、この排熱供給管10を介して灯油ストーブ2の排熱を蓄熱空間20へ送り込むようにしてある。
【0016】
また蓄熱空間20に送った排熱は、排熱解放管50を介して外気に誘導排出するようにしてある。排熱を強制的に外気に誘導できるよう、排熱解放管50の適宜箇所にはファン装置52を設けておくことが望ましい。このファン装置52は小型のものでよいが、風量(モータ駆動量)が段階的に設定できる構成とすることが望ましい。例えば、灯油ストーブ2から排出される排熱量に応じて排気量を段階的に切り替える等である。
【0017】
排熱供給管10は、例えば、灯油ストーブ2の背面に接続させた横方向の水平パイプ11と、この水平パイプ11の適宜箇所から下方に排熱を導く縦管14と、この縦管14の下端に接続させた横管17とによって構成し、横管17の他端部を蓄熱空間20の内部に導いて開放してある。
【0018】
水平パイプ11は、FF式の灯油ストーブ2に従来から用いられている排気用の通常の管材を用いて良く、その端部には排気排出用の開口12があって構わない。この開口12があっても、横管17に導かれる排熱の温度は影響を受けない。また、万一、排熱解放管50が子供の悪戯などによって目詰まりしたり、ファン装置52が故障したりした場合でも、水平パイプ11の端部(または適宜箇所)に開口12があることで、排熱の停滞や滞留に伴う事故を防止できる。
【0019】
水平パイプ11は、家屋の外壁3を貫通させる必要があるため外径を自由に設定することは難しいが、縦管14と横管17は外径の制限を受けない。このため、縦管14と横管17は、排熱の温度低下を最大限に防止するために二重管の構造とすることが望ましい。また、縦管14と横管17は、排熱の温度低下を防ぎつつ蓄熱空間20に高温の排熱を供給するものであるから、この部分を二重管としたうえで、外管の表面を発泡スチロール等の樹脂系の断熱材で被覆しておくことがより望ましい。
【0020】
縦管14の上部は風雨に晒されるし、縦管14の下部と横管17は地面に埋設され、厳しい寒暖差の環境にある。従って、縦管14と横管17は、難錆金属、例えばステンレス鋼材やメッキ仕様の鋼材を使用することが望ましい。また、排熱は、二重管の内管だけに通しても良いが、内管と外管の隙間が大きい場合もあるので、両者を区別せず内管と外管の隙間にも排熱を通して構わない。灯油ストーブ2の排熱を蓄熱空間20に良好に送り込むため、内管または外管の内径は、少なくとも10cm程度に設定することが望ましい。
【0021】
蓄熱空間20は、一定の深さ、例えば45〜60cmの深さに地面を掘り下げて形成する。図2にも示すように、外周には布基礎28を設け、熱が表層の地面に逃げるのを防止する。
【0022】
蓄熱空間20の底面には、金属、例えば鉄製の中空杭21を複数打ち込み、切込砕石22を配置する。なお軟弱地盤の場合はスラブコンクリートを底面に打ってもよい。
【0023】
中空杭21は、孔や開口をもたない密閉型のものを用いることが望ましい。内部にゴミや泥が詰まるのを防止するためである。
【0024】
中空杭21は、その上部をやや残して、下部を地面下に打ち込む。上部を蓄熱空間20に露出させることにより、蓄熱空間20と地面下の地熱との熱交換が良好になるからである。
【0025】
露出させる部分の上下寸法は、例えば20cm程度とする。中空杭21の上下寸法は、打ち込み易さを考慮して80〜100cm程度とすることが望ましい。このため地面に打ち込む部分の上下寸法は、切込砕石22の部分を含めて約60〜80cmとなる。この程度の深度に設定しておけば、蓄熱空間20と地熱との熱交換の良好なバランスを保つことが出来る。
【0026】
蓄熱空間20の上面は、適宜の天板、例えばコンクリート板24を配して路面とする。このコンクリート板24等の天板を下方から支持するため、蓄熱空間20の底面にはH鋼(縦置きと横置きを組み合わせたいわゆるH鋼束)25、26を設ける。符号27は、縦置きのH鋼25を配置する台座である。複数配置する縦置きのH鋼25の上部に掛け渡す横置きのH鋼26も、複数設けておくことが望ましい(図2参照)。
【0027】
従って、かかる構成によれば、金属製の中空杭21が、地熱を蓄熱空間20に伝達するので、灯油ストーブ2の排熱によって蓄熱空間20の温度は常時高温(例えば20〜30℃)を保つことが出来る。20〜30℃の温度があれば、コンクリート板24の上の雪は速やかに融ける。
【0028】
路面(コンクリート板24)の雪が融けた後も、灯油ストーブ2からの排熱が送り込まれるが、融雪に関係しない余剰の熱は中空杭21によって地面下に蓄えられる。この地熱は必要に応じて中空杭21により蓄熱空間20に与えられるので、中空杭21を介した地熱の援助により、蓄熱空間20の温度は極端な低下をみせず、排熱の供給による速やかな融雪を可能とする。
【0029】
また本実施形態では、排熱供給管10を二重構造とするので、排熱の温度低下は少なく、灯油ストーブ2の排熱を最大限に利用することが出来る。
【0030】
なお、本発明に係る融雪設備は、このような実施形態のものに限定されない。例えば、燃焼装置は、灯油ストーブ2に限らず、給湯装置、ボイラ装置など、住宅、マンション、店舗、病院等において利用される各種の燃焼装置を利用することが出来る。
【0031】
金属製の内部中空体は鉄製の中空杭21である必要はない。中空杭21を用いれば、打ち込み作業が容易なので工事の効率はよい。しかし、先端が非鋭利な内部中空体(例えば角柱)であっても下端部が地面に深く達していれば、埋設等の手段によって配置することも可能であり、中空杭21と同様の作用を営む。中空杭21その他の内部中空体は、8〜15cm程度の外径のものを使用することが望ましい。内部の空間容積が大きすぎても速やかな熱伝達が難しいので、外径が20cmを越えるものを使用するよりは、外径8〜15cm程度のものを多数本設ける方が効果的である。
【0032】
蓄熱空間20の上面に配する天板は、コンクリート板24に限らず、例えば鋼板を利用できる。鋼板を利用した場合は、その上にアスファルト舗装を施すことが出来、路面の見栄えをより向上させることが可能である。
【0033】
排熱解放管50は、高温の排熱を通すものではないから樹脂管(例えばいわゆる塩ビ管)を用いて構わない。
【0034】
図3に示すように、蓄熱空間20の内部には、補助熱装置、例えば小型のバーナ装置70を設けても良い。72は、バーナ装置70を配するためのコンクリート製の補助熱室である。すでに述べたように、灯油ストーブ2その他の燃焼装置から排熱の供給を受ける限り、このようなバーナ装置70は本来不要である。しかしながら、旅行や故障によって燃焼装置が数日間運転されない場合に、蓄熱空間20の温度を極端に低下させることは好ましくない。そこで、補助的に小型のバーナ装置70等の補助熱装置を用いて蓄熱空間の温度が低くなったときに、蓄熱空間20の内部温度を例えば15℃程度に保つようにしておくことが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態に係る融雪設備を例示する側面断面図である。
【図2】実施形態に係る融雪設備を例示する平面図である。
【図3】図2の融雪設備に小型バーナを追加した場合を例示する図である。
【符号の説明】
【0036】
2 灯油ストーブ(燃焼装置)
3 家屋の外壁
4 室内の床
10 排熱供給管
11 水平パイプ
12 開口
14 縦管
17 横管
20 蓄熱空間
21 中空杭(内部中空体)
22 切込砕石
24 コンクリート板
25、26 H鋼
27 台座
28 布基礎
50 排熱解放管
52 ファン装置
70 バーナ装置
72 補助熱室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面の下に蓄熱空間を設け、
該蓄熱空間の下面に所定の深度をもって金属製の内部中空体を設ける一方、
当該蓄熱空間に、燃焼装置の排熱を供給する排熱供給管と、排熱を外気に放出する排熱放出管とを設けてなる路面の融雪設備。
【請求項2】
蓄熱空間に燃焼装置の排熱を供給する排熱供給管は、内管と外管とからなる二重管であることを特徴とする請求項1記載の路面の融雪設備。
【請求項3】
金属製の内部中空体は、下方先端が鋭利な錐形であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の路面の融雪設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−177490(P2007−177490A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376388(P2005−376388)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(500152887)日本アーク開発株式会社 (16)
【Fターム(参考)】