説明

踏切警報音発生装置

【課題】スピーカとの接続に係る正常状態と断線故障と短絡故障とを分けて検知する。
【解決手段】踏切条件Aに応じて踏切警報用主信号Bを生成する回路50と、主信号Bより小振幅・高周波数の検査用副信号Fを生成する回路40と、両信号B,Fを電力増幅してスピーカ駆動線に送出する回路12と、スピーカ駆動線に介挿された直列インピーダンス61と、スピーカ7,8と直列インピーダンス61との分割電圧から副信号検出信号Nを生成する電圧検出部70と、信号Nに基づいて正常状態と断線故障と短絡故障とを分けて判定する判定部80とを備える。直列インピーダンス61を駆動回路12と並列接続部11との間に置くことで、スピーカ7,8の片方故障も単一の故障検出回路で検知できる。デジタル移相回路43と多数決選定手段83とにより軌道回路からのノイズに耐える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道の踏切脇の警報機柱に取り付けられ斜め下の踏切道を向いているスピーカに対し屋外ケーブル等を介して接続されてスピーカに警報音を発生させる踏切警報音発生装置に関し、詳しくは、スピーカとの接続に係る異常状態を検出する故障検出機能の実現技術に関する。
【背景技術】
【0002】
故障検出機能を省いた基本的な従来の踏切警報音発生装置10は(例えば非特許文献1,2参照、図5(a)参照)、鉄道の踏切道に向けて設置された二個の外付けスピーカ7,8に接続されて警報音を発生させるために、外部から与えられる二値論理の踏切条件Aに応じて踏切警報用主信号Bを生成する音発信号生成回路15と、踏切警報用主信号Bを電力増幅してスピーカ7,8の駆動線に送出する駆動回路12と、個々に外付け接続しうる複数のスピーカ7,8を並列駆動すべくスピーカ7の駆動線とスピーカ8の駆動線とを装置内部で接続した並列接続部11とを具えている。踏切警報音発生装置10に外部負荷として接続されるスピーカ7,8の負荷インピーダンスは、16Ωの抵抗とされることが多いが、他の抵抗値の場合もある。
【0003】
音発信号生成回路15は、踏切条件Aのオン時に750Hzの発振信号f1を発生し踏切条件Aのオフ時に発振を停止する発振回路19aと、踏切条件Aのオン時に2Hz強の発振信号fmを発生し踏切条件Aのオフ時に発振を停止する発振回路19bと、踏切条件Aのオン時に700Hzの発振信号f2を発生し踏切条件Aのオフ時に発振を停止する発振回路19cと、発振信号f1を発振信号fmで振幅変調する振幅変調回路17と、発振信号f2を発振信号fmで振幅変調する振幅変調回路18と、両回路の17,18の出力信号を重ね合わせて踏切警報用主信号Bを生成する加算合成回路16とを具えていて、踏切条件Aがオンの時には踏切警報音を出させるため踏切警報用主信号Bに750Hzと700Hzの発振状態を交互に2Hz強で採らせ、踏切条件Aがオフの時には踏切警報音を出させないため踏切警報用主信号Bに一定値を採らせるようになっている。
【0004】
駆動回路12は、例えばパワーアンプからなる電力増幅器14と、直流絶縁やインピーダンス整合を担う出力トランス13とを具えている。そして、踏切警報用主信号Bが一定値を採っているときにはスピーカ7,8の駆動電圧が0Vになって警報音が発せられないが、踏切警報用主信号Bが発振状態を採っているときには、スピーカ7,8の駆動電圧が例えば振幅20Vp−pで正負に振れる正弦波形になって、踏切で馴染みの警報音がスピーカ7,8から発せられるようになっている。
【0005】
並列接続部11は、駆動回路12の出力トランス13の出力側に接続された一対の電線(スピーカ駆動線,スピーカの駆動線)がスピーカ7に向かう一対の駆動線とスピーカ8に向かう一対の駆動線とに分岐する箇所でもあり、スピーカ7,8が故障しても、故障したのが片方だけなら、故障していない他方には警報音を出させることができるものとなっている。
なお、踏切警報音発生装置に故障検出機能を付与する場合、従来は、スピーカ7,8の駆動線に電流トランスを付設してスピーカ駆動電流を検出するといったことが行われていたが、この手法ではスピーカ駆動時すなわち警報音発生時しか故障検出ができない。
【0006】
もっとも、一般用の警報音発生装置であれば、警報音発生時に限らず警報音非発生時も故障検出機能を働かせるようになったものがある。これは(図5(b)参照)、音発条件Cがオンのときには可聴周波数で発振し音発条件Cがオフのときには非可聴周波数で発振する周波数切替回路21と、その発振信号を増幅してスピーカ23の駆動線に送出する電力増幅器22と、スピーカ23の駆動線に付設されて電流を検出する電流トランス24と、その検出信号に増幅やレベル検出を施してスピーカ駆動電流の有無を判定する故障検出回路25とを具えている。この場合、警報音の発生/非発生が周波数の切り替えによって選択されるが、何れの時でも故障が無ければスピーカ23が駆動されるため、何時でも判定結果Dがスピーカ駆動電流の途絶を以て故障状態を示すこととなる。
【0007】
【非特許文献1】鉄道技術者のための電気概論 信号シリーズ「踏切保安装置」第4版、社団法人 日本鉄道電気協会、平成9年10月30日発行、p.21−22
【非特許文献2】吉村寛・吉越三郎著「信号」第17版、株式会社 交友社、平成3年7月20日発行、p.479−480
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようにスピーカから警報音を発生させる主信号に加えてスピーカを駆動しても警報音として認識されない検査用副信号も用いて常に故障検出機能を発揮できるようになった故障検出回路(24+25)を、上述した従来の踏切警報音発生装置10に付加することにより、踏切警報音発生装置にあってもスピーカとの接続に係る正常状態と故障状態との判別を常時行うことができるようになると期待される。
しかしながら、踏切警報音発生装置では、警報音を出している時間割合より警報音を出さない時間割合の方が遙かに大きいため、常に同等の電力でスピーカを駆動し続けた場合、電力消費量が過大になってしまう。
【0009】
しかも、スピーカ駆動電流の有無に基づく検出方式では、スピーカとの接続に係る故障状態のうち断線故障は検出できるが短絡故障を検出することができない。これに対し、検出物理量を電流から電圧に変更することも考えられるが、スピーカ駆動電圧の有無に基づく検出方式では、スピーカの接続に係る故障状態のうち断線故障は検出できても短絡故障を検出することができない。このため、従来技術を踏襲した検査信号生成回路や故障検出回路を一つずつ付設するだけでは、スピーカとの接続に係る正常状態と断線故障と短絡故障とを的確に分けて検知することができない。
そこで、スピーカとの接続に係る正常状態と断線故障と短絡故障とを分けて検知しうるよう検査用副信号の生成態様や検出態様に工夫を凝らすことが第1技術課題となる。
【0010】
また、踏切警報音発生装置10は二個のスピーカ7,8を並列駆動するようになっていることから、故障検出回路の電流トランス24をスピーカ駆動線(スピーカの駆動線)のうち駆動回路12と並列接続部11との間の部分11aに付設した場合(図5(c)参照)、スピーカ7,8の片方だけの断線では、スピーカ駆動電流が流れるので、故障が見逃されてしまう。このため、スピーカ7,8の断線故障を片方だけでも検知できるようにするには、並列接続部11からスピーカ7に至るスピーカ駆動線11bに対して一つの故障検出回路を付設するとともに、並列接続部11からスピーカ8に至るスピーカ駆動線11cに対してもう一つの故障検出回路を付設することが必要であり、コストが嵩む。
そこで、複数スピーカの何れか一つの断線故障でも故障状態を一つの故障検出回路にて確実に検知しうるよう更に工夫を重ねることが第2技術課題となる。
【0011】
さらに、踏切警報音発生装置は鉄道の軌道に添えて屋外に設置されることから、検査用副信号に非可聴周波数を採用するには周囲環境に不所望な電波を放出しないよう電波遮蔽を十分に行う必要があるので、コストが嵩む。これを回避するには、検査用副信号の振幅を小さくするとともに、検査用副信号の周波数を可聴周波数と非可聴周波数との境界域の例えば10kHz程度まで下げるのが、望ましい。
しかしながら、その周波数の辺りは、鉄道の軌道回路に列車検知信号を流す列車検知装置にも、使用されることが多い。このため、鉄道の軌道回路などからの外来ノイズが強いと、スピーカとの接続に係る状態検知能力が不所望なまで低下してしまう。
そこで、検査用副信号の周波数を可聴限界の辺りまで下げても軌道回路からのノイズに負けることなく故障状態を的確に検知しうるよう改良することが第3技術課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の踏切警報音発生装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、鉄道の踏切道に向けて設置されたスピーカに接続されて警報音を発生させる踏切警報音発生装置において、踏切条件に応じて踏切警報用主信号を生成する音発信号生成回路と、前記踏切警報用主信号より振幅が小さく周波数が高い検査用副信号を生成する検査信号生成回路と、前記踏切警報用主信号と前記検査用副信号とを電力増幅して前記スピーカの駆動線に送出する駆動回路と、単一のインピーダンス素子または複数のインピーダンス素子を含む受動回路からなり前記スピーカの駆動線に直列接続態様で介挿されている直列インピーダンスと、前記スピーカと前記直列インピーダンスとで分割された前記検査用副信号に係る電圧から副信号検出信号を生成する電圧検出部と、前記副信号検出信号に基づいて前記スピーカとの接続に係る正常状態と断線故障と短絡故障とを分けて判定する判定部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の踏切警報音発生装置は(解決手段2)、上記解決手段1の踏切警報音発生装置であって、前記判定部が、前記スピーカの接続状態に関して、正常状態と断線故障と短絡故障とを分けて判定するのに加え、正常状態と断線故障との中間状態である高抵抗化異常と、正常状態と短絡故障との中間状態である低抵抗化異常も、分けて判定するようになっていることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明の踏切警報音発生装置は(解決手段3)、上記解決手段2の踏切警報音発生装置であって、前記スピーカを複数接続可能であり、その並列接続部が内部に設けられており、前記直列インピーダンスが前記駆動回路と前記並列接続部との間における前記スピーカの駆動線に介挿されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の踏切警報音発生装置は(解決手段4)、上記解決手段1〜3の踏切警報音発生装置であって、前記直列インピーダンスと前記スピーカとのインピーダンス合計値より総インピーダンス値の大きい受動回路からなり前記スピーカと前記直列インピーダンスとによる前記検査用副信号に係る電圧の分割に対応した比率で前記検査用副信号に係る電圧を分割する電圧分割回路(第2電圧分割回路)が、前記直列インピーダンスと前記スピーカとの直列回路に対して並列になる接続態様で設けられており、前記電圧検出部が、双方の分割電圧の差に基づいて前記副信号検出信号を生成するようになっていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の踏切警報音発生装置は(解決手段5)、上記解決手段1〜4の踏切警報音発生装置であって、前記検査信号生成回路が、前記検査用副信号の位相を一定周期で一定量ずつ移すようになっており、前記判定部が、前記検査用副信号の移相の一巡以上の時間に亘って判定結果を蓄積しておき、そのうち最も多数のものを最終的な判定結果に採用するようになっていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の踏切警報音発生装置は(解決手段6)、上記解決手段1〜4の踏切警報音発生装置であって、前記検査信号生成回路が、前記検査用副信号の位相を一定周期で一定量ずつ移すようになっており、前記判定部が、前記検査用副信号の移相の一巡以上の時間に亘って判定結果を蓄積しておき、そのうち過半数を占めるものを最終的な判定結果に採用するようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
このような本発明の踏切警報音発生装置にあっては(解決手段1)、鉄道の踏切道に向けて設置されたスピーカに接続されると音発信号生成回路と駆動回路とによって踏切条件に応じて警報音が発せられるとともに、スピーカとの接続に係る故障検知が、検査信号生成回路と直列インピーダンスと電圧検出部と判定部とを有する故障検出回路によって行われる。しかも、踏切警報用主信号より振幅が小さく周波数が高い検査用副信号が踏切警報用主信号に重なるようにしたことにより、消費電力の増加が抑制され、信号が簡便に弁別され、何時でも故障検出が行われる。
【0019】
また、直列インピーダンスをスピーカと直列になる態様でスピーカ駆動線(スピーカの駆動線)に介挿接続したうえで、その分割電圧から検査用副信号対応の副信号検出信号を得るようにしたことにより、副信号検出信号が、二値論理的でなくアナログ信号的になって、スピーカとの接続に係る断線故障と短絡故障とで異なる値を採るうえ、正常状態では両故障状態の値を例えばインピーダンス比で分割した中間値を採るので、この副信号検出信号の値の区分けにてスピーカとの接続に係る各状態が的確に判別される。
したがって、この発明によれば、スピーカとの接続に係る正常状態と断線故障と短絡故障とを分けて検知することができ、その結果、第1技術課題が解決される。
【0020】
また、本発明の踏切警報音発生装置にあっては(解決手段2)、副信号検出信号がアナログ化して区分可能になったことを積極的に利用して、正常状態と断線故障や短絡故障との中間状態もそれぞれ異常状態として判別するようにしたことにより、スピーカとの接続に係る正常状態と高抵抗化異常と断線故障と低抵抗化異常と短絡故障とを分けて検知することができ、その結果、第1技術課題の解決が高度になされる。
【0021】
さらに、本発明の踏切警報音発生装置にあっては(解決手段3)、直列インピーダンスをスピーカ駆動線のうち駆動回路と並列接続部との間のところに介挿接続したことにより、副信号検出信号がアナログ化して区分可能になっていることと相まって、複数スピーカ同時の断線故障はもちろん何れか一つのスピーカの断線故障でも、副信号検出信号の値が正常状態の区分範囲から外れる。
したがって、この発明によれば、複数スピーカの何れか一つの断線故障でも故障状態を一つの故障検出回路にて確実に検知することができ、その結果、第1技術課題に加えて第2技術課題も解決される。
【0022】
また、本発明の踏切警報音発生装置にあっては(解決手段4)、直列インピーダンスとスピーカとからなる第1電圧分割回路に加え、それに対応した分割比を持った第2電圧分割回路も並列に設けて、双方の分割電圧の差に基づいて副信号検出信号が生成されるようにしたことにより、故障の程度が副信号検出信号の振幅の大きさに反映されるとともに、故障の内容が断線側なのか短絡側なのかが、検査用副信号の位相と副信号検出信号の位相とが同相なのか反転位相なのかに、反映される。そのため、副信号検出信号の振幅の大小やレベルをみることで正常か故障か更には故障の程度まで分かり、副信号検出信号の位相の正逆をみることで断線故障か短絡故障かが分かる。なお、第2電圧分割回路はインピーダンスが大きいので、消費電力の不所望な増加は回避される。
したがって、この発明によれば、スピーカとの接続に係る正常状態と断線故障と短絡故障とを分かり易く分けて検知することができ、第1技術課題の解決が明瞭になされる。
【0023】
また、本発明の踏切警報音発生装置にあっては(解決手段5)、検査用副信号の位相が一定周期で一定量ずつ移り変わるとともに、その移相の一巡以上の時間に亘って(即ち移相の合計量が360゜以上になる時間範囲について)判定結果が蓄積され、多数決によって最終的な判定結果が出される。
検査用副信号の周波数に周波数の近いノイズが鉄道の軌道回路などからスピーカ駆動線に乗って検査用副信号が乱されるような動作環境においては、検査用副信号と外来ノイズとの位相のずれ具合によって撹乱が無視できたり出来なかったりするが、無視できる割合の方が半分を超える状況にとどまっていれば、上記のような移相を検査用副信号に導入することにより、多頻度の正しい判定と小頻度の誤判定とが入り混じって発生する。
【0024】
これは、長時間連続するバーストモードノイズとして発現することの多い鉄道の軌道回路などからの外来ノイズが、対処困難な又は対処に大規模な冗長回路を要するバーストモードノイズでなく、比較的対処容易なランダムモードノイズかそれに近い形で発現するようになったことを示している。
そのため、上記の多数決の導入により、少ない頻度でしか発生しない誤判定は最終結果として出されることなく無視され、正しい判定結果だけが最終結果として出される。
したがって、この発明によれば、検査用副信号の周波数を可聴限界の辺りまで下げても軌道回路からのノイズに負けることなく故障状態を的確に検知することができ、その結果、第1技術課題に加えて第3技術課題も解決される。
【0025】
また、本発明の踏切警報音発生装置にあっては(解決手段6)、上記解決手段の多数決を過半数の選出に改めたことにより、判別区分が多数であっても誤判定が回避されるので、判定結果の信頼性が向上する。
したがって、この発明によれば、検査用副信号の周波数を可聴限界の辺りまで下げても軌道回路からのノイズに負けることなく故障状態をより的確に検知することができ、その結果、第1技術課題が解決されるのに加えて、第3技術課題が高度に解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
このような本発明の踏切警報音発生装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜2により説明する。
図1〜3に示した実施例1は、上述した解決手段1〜5(出願当初の請求項1〜5)を具現化したものであり、図4に示した実施例2は、上述した解決手段1〜3,6(出願当初の請求項1〜3,6)を具現化したものである。
なお、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、また、それらについて背景技術の欄で述べたことは以下の各実施例についても共通するので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【実施例1】
【0027】
本発明の踏切警報音発生装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、踏切警報音発生装置30の回路構造を示すブロック図である。
【0028】
この踏切警報音発生装置30は、従来の踏切警報音発生装置10にスピーカ故障検出機能を付与したものであり、既述した並列接続部11と駆動回路12が踏切警報音発生装置10からそのまま引き継がれるとともに、音発信号生成回路15が一部改造を伴って踏切警報音発生装置10から引き継がれて音発信号生成回路50になっており、さらに、本発明を具現化した故障検出回路として、加算合成回路31と故障通知回路32と検査信号生成回路40と直列インピーダンス61(第1電圧分割回路60)と電圧分割回路62(第2電圧分割回路)と電圧検出部70と判定部80が追加されている。
【0029】
検査信号生成回路40は、周波数の高い発振回路41と、その発振信号を分周して基本発振信号Eを生成する分周回路42と、基本発振信号Eから検査用副信号Fを生成するデジタル移相回路43とを具えている。基本発振信号Eは、デューティ比が50%の矩形波であり、周波数が10kHz程度の一定周波数である。この周波数は、踏切警報用主信号Bの周波数750Hzより桁違いに高くて、普通の人にとっては聞き取り難い。検査用副信号Fは、デューティ比や周波数をそのまま基本発振信号Eから引き継いでいるが、位相が一定でなく、0.5秒〜2秒程度の一定周期で、90゜や72゜といった一定量ずつ、毎回進み方向へ又は毎回遅れ方向へ、位相が移り変わるものとなっている。また、検査用副信号Fに応じてスピーカ7,8から発せられる音がほとんど聞き取れないほど小さくなるよう、検査用副信号Fの振幅は、0.5Vp−p程度であり、既述した発用主信号Bの振幅20Vp−pより桁違いに小さいものとなっている。
【0030】
音発信号生成回路50は、発振回路19aに代わる分周回路51が検査用副信号Fを分周することで発振信号f1を生成し、発振回路19bに代わる分周回路52及び開閉スイッチ54が検査用副信号Fを分周するとともにその分周信号の送出を踏切条件Aに応じて行うことで発振信号fmを生成し、発振回路19cに代わる分周回路53が検査用副信号Fを分周することで発振信号f2を生成するようになった点で、音発信号生成回路15と相違し、回路規模も小さくなっているが、踏切警報用主信号Bを生成する点と、踏切条件Aがオンの時には踏切警報音を出させるため踏切警報用主信号Bに750Hzと700Hzの発振状態を交互に2Hz強で採らせる点と、踏切条件Aがオフの時には踏切警報音を出させないため踏切警報用主信号Bに一定値を採らせる点は、音発信号生成回路15と同じである。
【0031】
加算合成回路31は、踏切警報用主信号Bと検査用副信号Fとを加算合成することにより、大振幅か小振幅かは別として常に交流成分の含まれる合成信号Hを生成するものとなっている。
また、この加算合成回路31の追加導入に応じて、駆動回路12は、踏切警報用主信号Bをそのまま入力するのでなく、加算合成回路31の合成信号Hを入力することで、踏切警報用主信号Bと検査用副信号Fとを電力増幅してスピーカ7,8の駆動線に送出するものとなっている。
【0032】
直列インピーダンス61は、スピーカ7,8と併せて第1電圧分割回路60を成すものであり、並列接続のスピーカ7,8と直列に接続されている。直列インピーダンス61は、駆動回路12と並列接続部11との間におけるスピーカ駆動線11aに直列接続態様で介挿されていれば、単一のインピーダンス素子を含む受動回路からなるものでも良く、複数のインピーダンス素子を含む受動回路からなるものでも良い。直列インピーダンス61の消費電力を抑制する観点からは直列インピーダンス61のインピーダンス値が小さいのが望ましいが、電圧分割に基づく故障検出の能力を高める観点からは、直列インピーダンス61のインピーダンス値をスピーカ7,8並列接続回路のインピーダンス値と同程度まで大きくするのが望ましい。この例では、スピーカ7,8並列接続回路のインピーダンスが16Ωであるとして、16Ωの抵抗器が直列インピーダンス61に採用されている。
【0033】
電圧分割回路62は、第1電圧分割回路60に対して並列になる接続態様で設けられた第2電圧分割回路であり、電圧分割回路60が上述したように直列インピーダンス61とスピーカ7,8並列接続回路との直列回路であるのに対し、電圧分割回路62は、直列インピーダンス61とスピーカ7,8並列接続回路とのインピーダンス合計値より総インピーダンス値の大きい受動回路からなり、スピーカ7,8並列接続回路と直列インピーダンス61とによる検査用副信号Fに係る電圧の分割に対応した比率で検査用副信号Fに係る電圧を分割するようになっている。例えば電圧分割回路62を1kΩの高抵抗インピーダンス63とXΩの高抵抗インピーダンス64との直列回路で具体化した場合、高抵抗インピーダンス64のインピーダンス値Xは、1kΩ(抵抗63):XkΩ(抵抗64)=16Ω(直列インピーダンス61):16Ω(スピーカ7,8)より、1kΩにされる。
【0034】
電圧検出部70は、電圧分割回路60の分割電圧から、即ち直列インピーダンス61とスピーカ7,8並列接続回路とで分割された検査用副信号Fに係る電圧から、副信号検出信号Nを生成するものであるが、この実施例では、電圧分割回路60の分割電圧だけでなく電圧分割回路62の分割電圧も用いる。すなわち高抵抗インピーダンス63と高抵抗インピーダンス64とで分割された検査用副信号Fに係る電圧も用いて、電圧分割回路60の分割電圧と電圧分割回路62の分割電圧との差に基づいて副信号検出信号Nを生成するようになっている。
【0035】
詳述すると、電圧検出部70は、信号トランス71と信号増幅器72とパルス乗算回路73とレベル検出回路74とを具えている。
そのうち、信号トランス71は、直列インピーダンス61とスピーカ7,8並列接続回路の接続点電圧と、高抵抗インピーダンス63と高抵抗インピーダンス64の接続点電圧とから、両者の差電圧を求めるものであり、絶縁機能や位相整合機能に加えて、検査用副信号Fの周波数成分を踏切警報用主信号Bから分離抽出することで検査用副信号Fに係る電圧を検出するバンドパスフィルタ機能(周波数弁別機能)も発揮するようになっている。
【0036】
また、信号増幅器72は、差電圧を増幅して、正負に振れる交流の副信号検出信号Lを生成するものであり、パルス乗算回路73は、副信号検出信号Lと検査用副信号Fとを時々刻々掛け合わせることにより、半波の副信号検出信号Mを生成するものであり、この副信号検出信号Mは、スピーカ7,8並列接続回路のインピーダンスが適正であれば振幅が零か微小になるが、スピーカ7,8並列接続回路のインピーダンスが適正範囲を外れると、その度合いに応じて振幅が増大するとともに、スピーカ7,8並列接続回路のインピーダンス増減に応じて正負いずれかの半波波形を採る。さらに、レベル検出回路74は、例えば反転増幅形の積分回路で具体化されるローパスフィルタからなり、半波の副信号検出信号Mから符号付きレベル信号の副信号検出信号Nを生成するようになっている。
【0037】
判定部80は、副信号検出信号Nに基づいてスピーカ7,8との接続に係る正常状態と断線故障と短絡故障とを分けて判定するのに加え、正常状態と断線故障との中間状態である高抵抗化異常と、正常状態と短絡故障との中間状態である低抵抗化異常も、分けて判定するものであり、そのために、区分手段81と蓄積手段82と選定手段83とを具えている。区分手段81は、コンパレータで具体化しても良く、マイクロプロセッサのプログラムで具体化しても良く、要するに、副信号検出信号Nの値が“0”かその近傍であれば正常状態と判定し、副信号検出信号Nの絶対値が最大値かその近傍であれば正負に応じて断線故障か短絡故障と判定し、副信号検出信号Nの値が正常状態と断線故障との中間なら高抵抗化異常と判定し、副信号検出信号Nの値が正常状態と短絡故障との中間なら低抵抗化異常と判定するようになっている。但し、それは一次判定であり最終判定ではない。
【0038】
蓄積手段82は、例えばメモリに割り付けられたLIFOキューやリングバッファであり、区分手段81から一次判定結果を一定周期で取り込んで蓄積するものであり、デジタル移相回路43による検査用副信号Fの移相の一巡以上に及ぶ一定時間に亘って一次判定結果を蓄積しておくようになっている。
選定手段83は、マイクロプロセッサのプログラムで具体化するのが簡便であり、一定周期で、蓄積手段82の保持している一次判定結果の総てを検索し、そのうち最も多数のものを最終的な判定結果Pに採用するようになっている。判定結果Pは、断線故障と高抵抗化異常と正常状態と低抵抗化異常と短絡故障とのうち何れか一つを示すものである。
【0039】
故障通知回路32は、判定結果Pを外部に通知するものであり、鉄道信号の分野ではリレーで具体化される。そのリレーの接点出力にてLEDの故障表示器などが駆動されるようになっている。
なお、高抵抗インピーダンス63,64は、固定抵抗の例を図1に示したが、一方または双方が可変抵抗であっても良く、ロータリスイッチで切り替えられる抵抗回路であっても良い。その場合、内部定数の変更が簡便化されるので、例えばスピーカ7,8の負荷抵抗が16Ωから8Ωや32Ωになったときでも容易に適合させることができる。
【0040】
この実施例1の踏切警報音発生装置について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図2は、踏切警報音発生装置30の故障検出動作の説明図であり、(a)が対比用の電圧分割回路62、(b)がスピーカ側の電圧分割回路60、(c)が正常時の信号波形例、(d)がスピーカ短絡時の信号波形例、(e)がスピーカ断線時の信号波形例、(f)がスピーカ接続不良時の信号波形例、(g)がスピーカ混触時の信号波形例である。また、図3は、(a)〜(c)いずれも検査用副信号Fと外来ノイズのベクトル図であり、(a)と(b)が検査用副信号Fを90゜ずつ移相した場合、(c)が検査用副信号Fを72゜ずつ移相した場合を示している。
【0041】
踏切警報音発生装置30の使い方や基本の踏切警報音発生動作を述べると、これは従来の踏切警報音発生装置10と同じと言える。すなわち、スピーカ7,8が鉄道の踏切脇の警報機柱に取り付けられ斜め下の踏切道を向いているが、そのスピーカ7,8と踏切警報音発生装置30とが屋外ケーブル等で接続されると、踏切警報音発生装置30がスピーカ7,8を並列駆動する態勢が整い、音発信号生成回路50によって踏切条件Aに応じた踏切警報用主信号Bが生成され、その踏切警報用主信号Bが駆動回路12によってパワー増幅され、それによってスピーカ7,8が駆動される。
【0042】
そして、踏切条件Aがオンになると、750Hzと700Hzとが交互に2Hz強で替わる踏切警報音がスピーカ7,8から出され、踏切条件Aがオフになると、静かになる。なお、踏切警報用主信号Bに検査用副信号Fが重畳しているが、検査用副信号Fの振幅が踏切警報用主信号Bのそれに比べて桁違いに小さいことや、検査用副信号Fの周波数が聞き取り難い音域に属しているので、踏切警報音発生時はもちろん踏切警報音非発生時も装置検査用副信号Fの存在が踏切警報音発生という基本機能を損なうことはない。また、直列接続態様での直列インピーダンス61の介挿によってスピーカ7,8の出力が不足する場合は電力増幅器14の強化や出力トランス13での昇圧などで簡便に補償することができるので、直列インピーダンス61の介挿も踏切警報音発生の機能を損なうものでない。
【0043】
次に、故障検出回路の動作について述べるが、簡明化のため、検査用副信号Fの移相と多数決の判定とを後回しにするとともに、出力トランス13や信号トランス71による位相変化および電圧検出部70では不感の踏切警報用主信号Bを無視して説明する。具体的には、1kΩの高抵抗インピーダンス63と1kΩの高抵抗インピーダンス64との接続点電圧Jがそのまま信号増幅器72の正転入力にされ(図2(a)参照)、16Ωの直列インピーダンス61と16Ωのスピーカ7,8並列接続回路の接続点電圧Kがそのまま信号増幅器72の反転入力にされるものとしたうえで(図2(b)参照)、検査用副信号Fの位相が固定されている波形部分を参照しながら説明する(図2(c)〜(g)参照)。
【0044】
そうすると、スピーカ7,8が16Ωになっている正常状態では(図2(c)参照)、電圧分割回路62の接続点電圧Jも電圧分割回路60の接続点電圧Kも検査信号生成回路40の検査用副信号Fと位相が同じで振幅が半分の矩形波状になり、両者J,Kから信号増幅器72によって生成される交流の副信号検出信号Lは両者J,Kの差電圧なのでグリッジノイズを無視すると値が常に“0”になり、それと検査用副信号Fとをパルス乗算回路73で掛け合わせた半波の副信号検出信号Mも値が常に“0”になり、そのレベルをレベル検出回路74で検出した符号付きレベル信号の副信号検出信号Nも値が“0”になるので、それを区分する判定部80によって正常状態と判定される。
【0045】
また、スピーカ7,8並列接続回路の抵抗が0Ωになった短絡状態では(図2(d)参照)、接続点電圧Jは検査用副信号Fと同相で振幅半分の矩形波状になるが、接続点電圧Kは値が常に“0”になり、両者J,Kの差電圧である交流の副信号検出信号Lは検査用副信号Fと同相で振幅半分の矩形波状になり、それと検査用副信号Fとを掛け合わせた半波の副信号検出信号Mも検査用副信号Fと同相で振幅半分の矩形波状になり、そのレベルを検出した符号付きレベル信号の副信号検出信号Nは、この例ではレベル検出回路74が反転式なので符号が負になり、絶対値が大きくなるので、それを区分する判定部80によって短絡状態と判定される。なお、副信号検出信号Nの符号はレベル検出回路74が反転形でなく非反転形の場合は正負が逆になる。
【0046】
さらに、スピーカ7,8並列接続回路の抵抗が無限大になった断線状態では(図2(e)参照)、接続点電圧Jは検査用副信号Fと同相で振幅半分の矩形波状になるが、接続点電圧Kは検査用副信号Fと同相で振幅も等しい矩形波状になり、交流の副信号検出信号Lは検査用副信号Fと逆相(反転位相)で振幅半分の矩形波状になり、半波の副信号検出信号Mも検査用副信号Fと逆相で振幅半分の矩形波状になり、符号付きレベル信号の副信号検出信号Nは符号が正になり絶対値が大きくなるので、短絡状態と判定される。
【0047】
また、スピーカ7,8の接続不良や部分断線などによってスピーカ7,8並列接続回路の抵抗が増して例えば32Ωになった高抵抗化異常状態では(図2(f)参照)、接続点電圧Jは検査用副信号Fと同相で振幅半分の矩形波状になるが、接続点電圧Kは検査用副信号Fと同相で振幅が半分より幾らか大きい矩形波状になり、交流の副信号検出信号Lは検査用副信号Fと位相が逆で振幅が半分より幾らか小さい小振幅の矩形波状になり、半波の副信号検出信号Mも検査用副信号Fと逆相で小振幅の矩形波状になり、符号付きレベル信号の副信号検出信号Nは符号が正になり絶対値が中途半端な大きさになるので、高抵抗化異常と判定される。
【0048】
また、スピーカ7,8の絶縁不良や混触などによってスピーカ7,8並列接続回路の抵抗が減って例えば8Ωになった低抵抗化異常状態では(図2(g)参照)、接続点電圧Jは検査用副信号Fと同相で振幅半分の矩形波状になるが、接続点電圧Kは検査用副信号Fと同相で振幅が半分より幾らか小さい矩形波状になり、交流の副信号検出信号Lは検査用副信号Fと同相で小振幅の矩形波状になり、半波の副信号検出信号Mも検査用副信号Fと同相で小振幅の矩形波状になり、符号付きレベル信号の副信号検出信号Nは符号が負になり絶対値が中途半端な大きさになるので、低抵抗化異常と判定される。
こうして、随時、スピーカ7,8との接続に係る断線故障と高抵抗化異常と正常状態と低抵抗化異常と短絡故障とが分けて判定され、一次判定結果が得られる。
【0049】
さらに、検査用副信号Fの移相と多数決の判定とについて述べる。軌道回路からスピーカ接続ケーブル等に飛来するノイズは、バーストモードのものが多く、スピーカ駆動線における検査用副信号Fの成分と周波数が同じか近くて位相が逆になっているものが、検査用副信号Fの成分を打ち消して、副信号検出を不能にするため、特に問題になるが(図3(a)参照、散点を付した部分がノイズに負けて副信号検出を検出できない範囲)、そのようなノイズがあっても踏切警報音発生装置30にあっては検査用副信号Fの成分を検出して的確な判定を下すことができる。
【0050】
すなわち(図3(a)参照)、検査用副信号Fはデジタル移相回路43によって例えば0.5秒の一定周期で間欠的に90゜ずつ位相が進められるので、例えば位相0゜の近辺ではノイズに負けて適正な副信号検出信号L〜Nが得られなかったとしても、他の多数の位相90゜,180゜,270゜のところでは、ノイズに負けることなく適正な副信号検出信号L〜Nが得られ、それらに対する区分手段81の一次判定結果が検査用副信号Fの移相の一巡以上に及ぶ一定時間に亘って蓄積手段82に蓄積され、さらに、選定手段83によって、蓄積中の一次判定結果の総てが一定周期で検索されて、そのうち最も多数のものが最終的な判定結果Pに採用され故障通知回路32に送出される。
【0051】
この場合、移相の一巡以上に及んで蓄積された一次判定結果では、位相0゜時の不適切なものが約1/4を占め、他の位相の時の適切なものが約3/4を占めるので、多数決で選出された最終的な判定結果Pは、ノイズの影響を排除した適切なものとなる。
こうして、随時、スピーカ7,8との接続に係る断線故障と高抵抗化異常と正常状態と低抵抗化異常と短絡故障とが分けて判定され、適切な判定結果Pが得られる。
なお、複数の位相に悪影響が及ぶほどノイズが強くて、90゜単位での移相では多数決が有効にならないときでも(図3(b)散点範囲参照)、72゜単位での移相では多数決が有効になることがあり(図3(c)参照)、一般に、360゜の偶数分割単位での移相より、360゜を奇数で分割した位相単位で移相した方が有利と言える。
【実施例2】
【0052】
本発明の踏切警報音発生装置の実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図4は要部回路のブロック図である。
この踏切警報音発生装置が上述した実施例1のものと相違するのは、音発信号生成回路50を音源LSI56で具現化した点と(図4(a)参照)、判定部80において多数決の選定手段83に代えて過半数選出の選定手段84を導入した点である。
【0053】
音源LSI56は、周波数の高い基本発振信号Eやその原信号をクロックとして動作することで、踏切条件Aに応じた踏切警報用主信号Bを生成するものであり、内蔵メモリや外付けメモリから音源データを次々に読み出してオーディオ信号を復元し、それを踏切警報用主信号Bとして出力するようになっている。音源データは、決まり切った踏切警報音で足りるのであれば予め固定のメモリに記憶させておけば良く、場所や時期などによって踏切警報音を変えるのであれば、メモリ交換やデータ書換の機能も付加しておくと良い。
【0054】
選定手段84は、選定手段83と同様に蓄積手段82の一次判定結果の総てを一定周期で検索して判定結果Pを出すものであるが、その際、多数決の選定手段83と異なり、蓄積手段82に保持されている一次判定結果のうち過半数を占めるものを最終的な判定結果Pに採用するようになっており、過半数を占めるものが無いときには判定不能通知Qを出すようになっている。これにより、確度の高い判定が行えたときにはそれに基づいて的確な判定結果が出される一方、確度の低い判定しか行えないときには、無理に判定結果を出すのでなく、判定が不能であることが通知されることから、判別区分が多数であっても誤判定が適切に回避されるので、判定結果の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例1について、踏切警報音発生装置の回路構造を示すブロック図である。
【図2】動作説明図であり、(a)が対比用の電圧分割回路、(b)がスピーカ側の電圧分割回路、(c)が正常時の信号波形例、(d)がスピーカ短絡時の信号波形例、(e)がスピーカ断線時の信号波形例、(f)がスピーカ接続不良時の信号波形例、(g)がスピーカ混触時の信号波形例である。
【図3】(a)〜(C)いずれも検査用副信号と外来ノイズのベクトル図であり、(a)と(b)が検査用副信号を90゜ずつ移相した場合、(c)が検査用副信号を72゜ずつ移相した場合を示している。
【図4】本発明の実施例2について、踏切警報音発生装置の要部の回路構造を示すブロック図である。
【図5】(a)が従来の踏切警報音発生装置の回路構造を示すブロック図、(b)が従来の一般的な故障検出機能付き警報音発生装置の回路構造を示すブロック図、(c)が従来の踏切警報音発生装置に故障検出を一つ付加した要部回路のブロック図、(d)が従来の踏切警報音発生装置に故障検出を二つ付加した要部回路のブロック図である。
【符号の説明】
【0056】
7,8…スピーカ、
10…踏切警報音発生装置、
11…並列接続部、12…駆動回路、
13…出力トランス、14…電力増幅器、
15…音発信号生成回路、16…加算合成回路、
17,18…振幅変調回路、19a〜19c…発振回路、
20…警報音発生装置、
21…周波数切替回路、22…電力増幅器、
23…スピーカ、24…電流トランス、25…故障検出回路、
30…踏切警報音発生装置、
31…加算合成回路、32…故障通知回路、
40…検査信号生成回路、41…発振回路、
42…分周回路、43…デジタル移相回路、
50…音発信号生成回路、51,52,53…分周回路、
54…開閉スイッチ、56…音源LSI、
60…電圧分割回路、61…直列インピーダンス、
62…電圧分割回路、63,64…高抵抗インピーダンス、
70…電圧検出部、
71…信号トランス、72…信号増幅器(Amp.)、
73…パルス乗算回路、74…レベル検出回路、
80…判定部、81…区分手段、82…蓄積手段、
83…選定手段(多数決)、84…選定手段(過半数)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道の踏切道に向けて設置されたスピーカに接続されて警報音を発生させる踏切警報音発生装置において、踏切条件に応じて踏切警報用主信号を生成する音発信号生成回路と、前記踏切警報用主信号より振幅が小さく周波数が高い検査用副信号を生成する検査信号生成回路と、前記踏切警報用主信号と前記検査用副信号とを電力増幅して前記スピーカの駆動線に送出する駆動回路と、単一のインピーダンス素子または複数のインピーダンス素子を含む受動回路からなり前記スピーカの駆動線に直列接続態様で介挿されている直列インピーダンスと、前記スピーカと前記直列インピーダンスとで分割された前記検査用副信号に係る電圧から副信号検出信号を生成する電圧検出部と、前記副信号検出信号に基づいて前記スピーカとの接続に係る正常状態と断線故障と短絡故障とを分けて判定する判定部とを備えたことを特徴とする踏切警報音発生装置。
【請求項2】
前記判定部が、前記スピーカの接続状態に関して、正常状態と断線故障と短絡故障とを分けて判定するのに加え、正常状態と断線故障との中間状態である高抵抗化異常と、正常状態と短絡故障との中間状態である低抵抗化異常も、分けて判定するようになっていることを特徴とする請求項1記載の踏切警報音発生装置。
【請求項3】
前記スピーカを複数接続可能であり、その並列接続部が内部に設けられており、前記直列インピーダンスが前記駆動回路と前記並列接続部との間における前記スピーカの駆動線に介挿されていることを特徴とする請求項2記載の踏切警報音発生装置。
【請求項4】
前記直列インピーダンスと前記スピーカとのインピーダンス合計値より総インピーダンス値の大きい受動回路からなり前記スピーカと前記直列インピーダンスとによる前記検査用副信号に係る電圧の分割に対応した比率で前記検査用副信号に係る電圧を分割する電圧分割回路が、前記直列インピーダンスと前記スピーカとの直列回路に対して並列になる接続態様で設けられており、前記電圧検出部が、双方の分割電圧の差に基づいて前記副信号検出信号を生成するようになっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載された踏切警報音発生装置。
【請求項5】
前記検査信号生成回路が、前記検査用副信号の位相を一定周期で一定量ずつ移すようになっており、前記判定部が、前記検査用副信号の移相の一巡以上の時間に亘って判定結果を蓄積しておき、そのうち最も多数のものを最終的な判定結果に採用するようになっていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載された踏切警報音発生装置。
【請求項6】
前記検査信号生成回路が、前記検査用副信号の位相を一定周期で一定量ずつ移すようになっており、前記判定部が、前記検査用副信号の移相の一巡以上の時間に亘って判定結果を蓄積しておき、そのうち過半数を占めるものを最終的な判定結果に採用するようになっていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載された踏切警報音発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−89666(P2010−89666A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262419(P2008−262419)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000207470)大同信号株式会社 (83)
【Fターム(参考)】