説明

身体支持具

【課題】 使用者の体格や体型及び疲労等に応じて、骨盤を支持する位置の調整を行うことができ、長時間の使用が可能な身体支持具を提供する。
【解決手段】 身体支持具1は、着座時に使用者の骨盤を支持する弾性体3と、弾性体3の一方に設けられる第1支持体4と、弾性体3の他方に設けられる第2支持体5とを備え、弾性体3は、第1支持体4及び第2支持体5との間に配設され、弾性変形し、骨盤側に突出する突出部3aを有し、使用する際に、第1支持体4又は第2支持体5のいずれかの端部4a、5aの一方が下端、他方が上端となり、突出部3aの中心から第1支持体4の端部4aまでの距離Y1と、第2支持体5の端部5aまでの距離Y2とが異なる構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席と使用者との間に配置され、使用者の骨盤を支持する身体支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている従来の身体支持具(身体サポート具)は、柔軟性を有する弾性体(クッション体)を、硬化樹脂を含浸させたシート状の被覆体で被覆し、身体の一部分に当接させその部分に合致した形状に硬化させて使用する身体支持具であって、弾性体に貫通孔8a若しくは貫通状態の切欠部を形成又は弾性体の形状を設定して、弾性体の厚み方向に弾性体のない部分が生じるように構成して、身体の部分に当接してその部分に合致した形状に硬化させる際、身体当接側の被覆体と、身体当接側の被覆体と対向する反対側の被覆体とが、弾性体のない部分を介して接触し、硬化によって接着するような構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3590331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の身体支持具は、弾性体を被覆する硬化樹脂を含浸させたシート状の被覆体によって、使用者の体格又は体型にあった着座形状に成形することができる。しかしながら、身体支持具は、硬化された被覆体によって覆われているため、身体への支持力が高められるが、長距離ドライブの際、使用者は体の姿勢を変えることができずに同じ姿勢を強いられるおそれがある。また、同じ姿勢を保つことによる疲労を緩和させる場合、使用者は、車両の座席から身体支持具を外し、座席に直接背をつける必要があり、運転時に身体支持具を使い続けることができない。
【0005】
そこで、本発明は、使用者の体格や体型及び疲労度等に応じて、骨盤を支持する位置の調整を行うことができ、長時間の使用が可能な身体支持具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために講じた手段は、身体支持具が、着座時に使用者の骨盤を支持する弾性体と、弾性体の一方に設けられる第1支持体と、弾性体の他方に設けられる第2支持体とを備え、弾性体は、第1支持体及び第2支持体との間に配設され、弾性変形し、骨盤側に突出する突出部を有し、使用する際に、第1支持体又は第2支持体のいずれかの端部の一方が下端、他方が上端となり、突出部の中心から第1支持体の端部までの距離と、第2支持体の端部までの距離とが異なる構成とする。
【0007】
また、突出部は、内部に設けられたエラストマー樹脂の樹脂弾性部材によって突出しているとよい。
【0008】
また、突出部は、樹脂弾性部材の一部を収容する収容部を有する第1ウレタン生地と、樹脂弾性部材を被覆する第2ウレタン生地とで樹脂弾性部材を支持することで突出するとよい。
【0009】
また、弾性体は、複数の樹脂弾性部材を設けることで複数の突出部を形成するとよい。
【0010】
また、身体支持具は、第1支持体及び第2支持体が配設される方向と直交する方向に、少なくとも弾性体を挟み込むように設けられた第3支持体を有するとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、身体支持具は、弾性体に設けられた弾性変形する突出部が、使用者の骨盤を押すことで姿勢を正すように使用者へ促すことができるため、未使用時の姿勢の崩れによる特定の部分に力が加わることを抑制することができる。さらに、突出部は、使用者に対して骨盤を押していると認識させることができるため、使用者が骨盤を伸ばす(姿勢を正す)ことへの意識を高めることができる。また、身体支持具は、突出部の中心から第1支持体側の端部までの距離と、突出部の中心から第2支持体側の端部までの距離とが異なっているため、使用者の体格や体型による骨盤の位置ずれに関して、第1支持体及び第2支持体を使用する向きによって調整が可能となる。例えば、身体支持具は、長時間の使用中に使用者の姿勢が崩れても、上記の方法によって骨盤を支持できる別の位置へ調整が可能となり、従来技術と比べ、運転時にも常に使用することができる。したがって、本発明の身体支持具は、使用者の体格や体型及び疲労度等に応じて、骨盤を支持する位置の調整を行うことができ、長時間の使用が可能となる。
【0012】
また、突出部がエラストマー樹脂の樹脂弾性部材で形成されているため、温度変化(使用場所の温度や使用者から伝達される熱等)による硬さの変化が他の弾性体と比較して少ないため、長時間の使用でも使用者に与える押圧感覚を一定に保つことができる。
【0013】
また、突出部は、樹脂弾性部材の一部を第1ウレタン生地の収容部へ収容し、他の部分を第2ウレタン生地で被覆することで、ウレタン生地の形状変形の容易さによって弾性部材の形状に対して密着性を高めることができるため、保持力が高められ樹脂弾性部材の位置ずれを抑制することが可能である。さらに、身体支持具は、使用者と樹脂弾性部材との間に配置されたウレタン生地の形状変形の容易さを利用することで、身体の形に合った状態で使用することが可能となる。
【0014】
また、弾性体は、複数の突出部を有していることで、突出部が使用者の骨盤を指圧するような感覚を与えるため、使用者が骨盤を伸ばす(姿勢を正す)ことへの意識を高めることができ、長時間の使用で使用者へ与える不快感を抑制することができる。
また、身体支持具は、第3支持体を設けることにより使用者の横腹部分を支持することができるため、使用者の姿勢が崩れた際(特に身体支持具が横ずれをした場合)に弾性体の突出部を適した位置(骨盤の位置)に調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係わる身体支持具の座席での使用状態を示す説明図である。
【図2】図1に示す身体支持具の正面図である。
【図3】図2に示す身体支持具のA−A断面の断面図である。
【図4】図2に示す身体支持具のB−B断面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係わる身体支持具1の構成について図1から図2を参照にして説明する。図1は、本発明に係わる身体支持具1の座席2での使用状態を示す説明図であり、図2は、図1に示す身体支持具1の正面図を示している。
【0017】
図1より、身体支持具1は、座席2と使用者の間に配置された状態で使用される。身体支持具1は、使用者の骨盤の上方を押すように身体支持具1の突出部3aが当接し、骨盤を支持している。
【0018】
図2より身体支持具1は、使用者の骨盤と当接する突出部3aを有する弾性体3と、図1に示す使用状態において弾性体3を介して配設された第1支持体4及び第2支持体5と、弾性体3を水平方向で挟み込むように設けられる第3支持体6とを備えており、それぞれを縫製する縫製部7によって、弾性体3及び各支持体4、5、6が区画されている。弾性体3には、内部の樹脂弾性部材3b(弾性部材)によって形成される複数の突出部3aを有しており、突出部3a間には所定距離X1が設けられている。本実施形態では、2つの突出部3aが水平方向に所定距離X1(突出部3aの中心間の距離は約130mm)を保持して並設されている。また、図2に示す突出部3a間の中心O(突出部3aが一つの場合は、突出部3aの中心)から図1に示すように使用する際に、上端又は下端となる第1支持体4の端部4aまでの距離Y1と、図1に示すように使用する際に、下端又は上端となる第2支持体5の端部5aまでの距離Y2とでは、第1支持体4の端部4aまでの距離Y1のほうが第2支持体5の端部5aまでの距離Y2が異なる構造(本実施形態ではY1>Y2である)となっている。上記した上端及び下端となる端部4a、4bは、座席と当接する部分又は、突出部3a間の中心Oから距離Y1、Y2が最長となる部分を示している。例えば、第1支持体4の端部4aまでの距離Y1が約220mmに対して、第2支持体5の端部5aまでの距離Y2は約180mmとなっている。これにより、身体支持具1は、第1支持体4を下方になるように使用する場合と、第2支持体5を下方になるように使用する場合とでは、骨盤を支持する弾性体3の位置が異なる。このため、身体支持具1は、図1に示すような突出部3aが骨盤を押す位置を第1支持体4の端部4aまでの距離Y1及び第2支持体5の端部5aまでの距離Y2の違いを利用して使用者の体格や体型又は疲労度に応じて調整することができる。また、第3支持体6は、図1に示す使用状態での使用者の横腹部分を両側から支持することが可能であるため、弾性体3の横方向(水平方向)の位置調整をすることができる。
【0019】
次に、本発明に係わる身体支持具1の内部の構成について図3から図4を参照にして説明する。図3は、図2に示す身体支持具1のA−A断面の断面図を示し、図4は、図2に示す身体支持具1のB−B断面の断面図を示している。
【0020】
図3より、弾性体3の突出部3aは、内部に円筒状の樹脂弾性部材3b(直径50mm、高さ42.5mm)を有し、この樹脂弾性部材3bの一部が第1ウレタン生地8に設けられた孔8a(収容部)に収容され、他の部分が第2ウレタン生地9によって被覆されることで支持(挟持)されて突出している。第1ウレタン生地8及び第2ウレタン生地9は、図示しない接着剤によって接着されている。樹脂弾性部材3bは、エラストマー樹脂で形成されており、温度変化による硬さの変化が少なく、粘性がある。また、第1ウレタン生地8の孔8aの底となる底部10aは、第1ウレタン生地8にフェルト生地10が設けられている。樹脂弾性部材3bは、第1ウレタン生地8及び第2ウレタン生地9によって挟持されることで保持される。このとき、樹脂弾性部材3bは、樹脂弾性部材3bの粘性と、ウレタンの形状変形の容易さによって、図1の鉛直方向の下側に力が加わっても孔8aからの脱落が防止される。さらに、身体支持具1が第1ウレタン生地8、第2ウレタン生地9、フェルト生地10、及びこれらを覆う布地11a、11bが樹脂弾性部材3bを鉛直方向に挟み込むように縫製部7によって縫製されていることで、樹脂弾性部材3bは、第1ウレタン生地8及び第2ウレタン生地9によって支持される力が増すため、骨盤を押す位置を保持する力も増すことができる。この縫製部7により、身体支持具1は、弾性体3と、第1支持体4及び第2支持体5を区画されている。また、突出部3aは、身体支持具1を覆う布地のフェルト生地10側の裏布地11bから第2ウレタン生地9側の表布地11aまでの高さX2が約50mmとなっている。この突出部3aの高さX2は、身体支持具1を長時間使用しても使用者に不快感を与えることなく、支持していることを実感できる高さであると発明者の実施した感応評価を基に定めている。また、身体支持具1の周辺端部は、テープ等の保持部材12により第1ウレタン生地8、第2ウレタン生地9、フェルト生地10、及び布地11a、11bを束ねられると共に補強されている。上記のウレタン生地8、9は、形状変形が容易であるため、使用者へのフィット感を増すことができ、長時間の使用の際にも使用者の不快感や疲労を抑制することができる。
【0021】
図4より、弾性体3の突出部3aは、水平方向に2つの樹脂弾性部材3bを有し、この樹脂弾性部材3bが図3と同様に2つのウレタン生地8、9によって被覆されている。この2つの樹脂弾性部材3bは、所定間隔を保って配置されている。また、身体支持具1が第1ウレタン生地8、第2ウレタン生地9、フェルト生地10、及びこれらを覆う布地が樹脂弾性部材3bを水平方向に挟み込むように縫製され、さらに2つの樹脂弾性部材3bの間も縫製されている。この縫製部7により、身体支持具1は、弾性体3と、第3支持体6とを区画されている。また、身体支持具1の弾性体3は、縫製することで、樹脂弾性部材3bを支持する力が高められると同時に突出部3aが強調されるために、使用者に対して骨盤を押していると認識させることができるため、使用者が骨盤を伸ばす(姿勢を正す)ことへの意識を高めることができる。樹脂弾性部材3b(突出部3a)の中心間の距離X1は、約130mm程度設けられている。この樹脂弾性部材3bの中心間の距離X1は、HQL(社団法人人間生活工学研究センター)の統計を基に成人の腰の幅の平均値が一番小さい値(20代女性)の約2分の1の距離になるように設定することで、弾性体3の突出部3aが骨盤に当接するのに十分な距離を有している。また、使用者が、身体支持具1を使用した際に、身体支持具1の弾性体3の突出部3aが使用者の腰と当接すると、第3支持体6は、縫製部7を支点として折り曲げられるため、使用者の横腹部分を支持することが可能となる。これにより、身体支持具1は、使用者の姿勢が崩れた際に、第3支持体6によって弾性体3の突出部3aを水平方向の適した位置(骨盤の位置)に調整することが可能となる。
【0022】
本実施形態の使用する用途は、図1に示されているように長距離の運転を行う際に、座席と使用者との間に設けられ、使用者の骨盤を弾性体3の突出部3aによって押すように使用する。身体支持具1は、同じ姿勢を長時間保持する際の疲労の緩和を促し、使用者の体格や体型及び疲労度等に応じて、骨盤を支持する位置の調整が可能となる。また、身体支持具1は、第1支持体4及び第2支持体5の向きによって骨盤に対して弾性体3の位置調整が可能であるため、使用者が長時間の車両運転で姿勢が崩れる等しても、座席2から取り外すことなく、最適な位置で骨盤を支持することが可能となり、従来技術と比べ、運転時にも常に使用することができる。また、身体支持具1は、樹脂弾性部材3bを用いることで、身体からの熱や車内空間の温度変化等の熱変化による硬さの変化が少ないため、長時間の使用や季節を問わず、使用者に与える押圧感覚を一定に保つことができる。
【0023】
なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、以下に示す態様に変更してもよい。
【0024】
・身体支持具1は、使用者の骨盤の上方を押すように身体支持具1の突出部3aが当接しているがこれに限定されるものではない。使用者は、身体支持具1の突出部3aを骨盤の下方又は中央部を押すように配置してもよい。身体支持具1は、第1支持体4及び第2支持体5の図1に示す鉛直方向の端部4a、5aが突出部3aの中心Oからの距離Y1、Y2が異なるため、使用者の体格や体型だけではなく、使用者の好みに合わせて、第1支持体4及び第2支持体5の上下の位置を調整してもよい。
【0025】
・身体支持具1は、2つの樹脂弾性部材3bによって2つの突出部3aを設けているが、3つ以上の突出部3aや樹脂弾性部材3bの形状によって1つの突出部3aを形成してもよい。ただし、身体支持具1は、水平方向に関して、両端となる突出部3a間又は突出部3aの幅方向が少なくとも突出部3aが骨盤に当接するように設けられる必要がある。
【0026】
・身体支持具1は、弾性体3、第1支持体4、第2支持体5、第3支持体6とが、それぞれ縫製部7によって区画されているが、弾性体3、第1支持体4及び第2支持体5を縫製することなく一体として設けてもよい。この際、身体支持具1は、弾性体3の骨盤を押す突出部3aの中心から一方の端部までの距離Y1と他方の端部までの距離Y2とが異なることで、使用者の体格や体型又は疲労度に応じて調整することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 身体支持具
3 弾性体
3a 突出部
3b 樹脂弾性部材
4 第1支持体
4a 第1支持体側の端部
5 第2支持体
5a 第2支持体側の端部
O 突出部の中心
Y1 突出部の中心から第1支持体の端部までの距離
Y2 突出部の中心から第2支持体の端部までの距離


【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座時に使用者の骨盤を支持する弾性体と、
前記弾性体の一方に設けられる第1支持体と、
前記弾性体の他方に設けられる第2支持体とを備え、
前記弾性体は、前記第1支持体及び前記第2支持体との間に配設され、弾性変形し、骨盤側に突出する突出部を有し、
使用する際に、前記第1支持体又は前記第2支持体のいずれかの端部の一方が下端、他方が上端となり、前記突出部の中心から前記第1支持体の前記端部までの距離と、前記第2支持体の前記端部までの距離とが異なる
身体支持具。
【請求項2】
前記突出部は、内部に設けられたエラストマー樹脂の樹脂弾性部材によって突出している
請求項1に記載の身体支持具。
【請求項3】
前記突出部は、前記樹脂弾性部材の一部を収容する収容部を有する第1ウレタン生地と、前記樹脂弾性部材を被覆する第2ウレタン生地とによって、前記樹脂弾性部材を支持することで突出する
請求項2に記載の身体支持具。
【請求項4】
前記弾性体は、複数の前記樹脂弾性部材を設けることで複数の前記突出部を形成する
請求項2又は請求項3に記載の身体支持具。
【請求項5】
前記身体支持具は、前記第1支持体及び前記第2支持体が配設される方向と直交する方向に、少なくとも前記弾性体を挟み込むように設けられた第3支持体を有する
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の身体支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−223211(P2012−223211A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90530(P2011−90530)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】