説明

車上モニタシステム

【課題】異なったホームの画像表示に伴う混乱が最小限に抑えられるようにしたホーム監視用の車上モニタシステムをローコストで提供すること。
【解決手段】テレビカメラ1により撮像したプラットホームの画像を送信装置2から車両Tに無線伝送し、画像モニタに表示する方式の車上モニタシステムにおいて、テレビカメラ1により予め以前に撮像しておいたプラットホームの画像を基準画像Vsとテレビカメラ1により現在撮像されてくるプラットホームの画像Vの相関をとり、相関の強さが予め設定してある閾値以上のとき動作信号ONを発生する画像比較部15を備え、動作信号ONが発生されたときだけ画像信号出力回路13から送信装置2に出力画像信号Vout が供給されるようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像によるプラットホームの監視を列車側でモニタするシステムに係り、特に複数のプラットホームが併設されている場合に好適な車上モニタシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
旅客輸送用鉄道システムにおいては、通常、旅客の乗車と降車にプラットホーム(以下、ホームと略記)を用いるのが一般的であり、従って、この場合、駅での安全性確保にはホームでの監視が有効であり、ほとんど不可欠である。
しかし、近年は運行コストの面で車両のワンマン化や駅員の削減が進み、この結果、監視のための人員の確保に限度が現われ、充分な安全性の維持が難しくなってしまう虞がある。
【0003】
そこで、従来から監視用のテレビカメラを用い、ホームを視野として撮像した画像を当該ホームに進入してくる列車に無線伝送し、当該列車の運転席などにある画像モニタに表示させ、ホームの安全確認が列車の車両側で行えるようにした車上モニタシステムが用いられるようになり、安全性の維持とコスト削減に寄与している(例えば特許文献1などを参照)。
なお、列車とは、通常、複数台の車両で編成されたものを指すが、ここでは列車と車両を特に使い分けすることなく、何れも同じものを表す用語として使用する。
【0004】
ところで、このような車上モニタシステムでは、通常、図2に示すように、ホームHの所望の場所に設置したテレビカメラ1を用い、ホームHを視野にした画像を撮像し、画像信号を地上にある送信装置2のアンテナからマイクロ波に乗せて車両Tに送信する。
このとき車両Tには、マイクロ波受信用のアンテナを備えた受信装置3が設けてあり、送信装置2から受信した画像を車両Tの運転席などにある画像モニタ(図示してない)に表示させる。
ここで、車両Tの走行方向を矢印Aとすると、ホームHの左側が前方の端部Fで右側は後方の端部Rになる。
【0005】
詳しく説明すると、この場合、まず、送信装置2を、ホームHから列車の走行方向に沿って数十mから数百m先に設置し、例えばコーリニアアンテナなど指向性に優れたアンテナを使用して電波ビームBを送信する。
従って、この電波ビームBは、車両TがホームHに或る程度まで接近したら受信装置3に確実に受信されることになる。
しかも、このとき列車が長い編成であったり、線路が、例えば一点鎖線Sで示すように、曲線になっていてホームが曲がっていた場合には、複数の位置から電波が送信されるように構成し、列車が走行移動中も必要な範囲で確実に列車に画像が伝送できるようにしている。
【0006】
そこで、いま、図示のように、テレビカメラ1がホームHの後方の端部Rにおいて、ホームHの前方の端部F方向が撮像視野となるように設置されていたとすると、この場合、車両Tの運転席などにある画像モニタには、ホームHの画像が、車両TがホームHに接近してから退出するまで、停車時も含めて連続的に表示されることになる。
図3は、このとき画像モニタに表示される画像、つまりモニタ画像を示したもので、ここでは乗降客などは省略してある。
【0007】
そして、まず、モニタ画像M1はホームHに車両Tが入ってくる前の画像、モニタ画像M2は車両TがホームHに進入してきたときの画像、モニタ画像M3はホームH1に車両Tが停車しているときの画像、そしてモニタ画像M4はホームHを発車した車両Tの最後部が前方の端部Fを通り過ぎたとき、つまり退出したときの画像である。なお、これらのモニタ画像M1〜M4は説明用であり、従って、このように一コマづつ飛び飛びに画像モニタに表示させるのではなく、動画として連続的に表示させるのが一般的である。
【0008】
従って、この車上モニタシステムによれば、車両Tの乗務員は、画像モニタをみているだけで、車上の運転席などに座ったまま車両TがホームHに進入してきて最後部の車両がホームHの前方から離れるまで、停車時も含め、ホームHの状況が一部始終にわたって居ながらに確認できることになり、この結果、列車の安全な運行に必要なホームの監視が少ない人員のもとで容易に遂行できることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−104189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来技術は、複数のホームが併設されている場合について配慮がされておらず、同じホームの画像が複数本の列車に表示された結果、ホームの安全性確保に必要な判断に混乱が生じてしまうという問題があった。
例えば、図4に示すように、第1のホームH1に第2のホームH2が併設されていた場合、送信装置2による電波ビームBは、第2のホームH2に進入した列車T2の受信装置4によっても受信が可能になってしまう。
【0011】
この場合、第2の列車T2の画像モニタにもホームの画像が表示されるが、しかし、このとき表示されるのは第1のホームH1の画像であり、従って、従来技術では、本来のホームH2の安全性確保に必要な判断に混乱が生じてしまうのである。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、異なったホームの画像表示に伴う混乱が最小限に抑えられるようにしたホーム監視用の車上モニタシステムをローコストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、プラットホームを撮像視野とするテレビカメラを備え、当該テレビカメラにより撮像したプラットホームの画像を車両に無線伝送し、当該車両の画像モニタに表示する方式の車上モニタシステムにおいて、前記テレビカメラにより予め以前に撮像しておいたプラットホームの画像を基準画像とし、この基準画像と前記テレビカメラにより現在撮像されてくるプラットホームの画像の相関をとり、相関の強さが予め設定してある閾値以上のとき動作信号を発生する制御手段を設け、前記動作信号が発生されたときだけ前記車両に対する無線伝送が行われるようにして達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ホームの画像を無線伝送する期間が当該ホームにおける列車の状況に応じで任意に制限でき、従って、ホームの画像が送信される期間を必要最小限にすることにより、異なったホームの画像表示に伴う混乱を最小限にとどめることができる。
このとき本発明においては、ホームと列車の状況を判断する検出手段が不要なので、構成が簡単で設置が容易になり、検出手段が不要な分、コストが少なくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る車上モニタシステムの一実施の形態を示すブロック構成図である。
【図2】従来技術による車上モニタシステムの一例を示すブロック構成図である。
【図3】モニタ画像の説明図である。
【図4】プラットホームが複数併設されている場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るプラットホーム監視用車上モニタシステムについて、図示の実施形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態で、これは、図2で説明した従来技術による車上モニタシステムに制御部10を設けた場合の一例であり、従って、制御部10以外の構成、すなわちホームHの所望の場所に設置したテレビカメラ1と、ホームHの前方から列車Tにマイクロ波電波ビームBを送信する送信装置2を備え、列車Tの受信装置3にホームHの画像を送信し、画像モニタに表示させるという構成については、従来技術の場合と概ね同じである。
【0016】
ここで、この制御部10には、入力回路11と画像生成回路12、画像信号出力回路13、メモリ回路14、それに画像比較部15が設けられている。
まず、入力回路11は、テレビカメラ1からカメラ信号Cin を取り込み、次に、画像生成回路12は、カメラ信号Cin から画像信号Vを生成し、画像信号出力回路13は、画像信号Vを入力して出力画像信号Vout に加工し、この出力画像信号Vout を、画像比較部15から動作信号ONが入力されているときだけ送信装置2に供給する。
そこで、送信装置2は、出力画像信号Vout が供給されたら、それをマイクロ波ビームBに乗せ、地上にある送信装置2のアンテナから車両Tに送信するのである。
【0017】
このときメモリ部14は、基準画像Psを記憶し保持する働きをする。
ここで、この基準画像Psとは、詳しくは後で説明するが、要するに、予めテレビカメラ1で撮像しておいた画像のことである。
そして、画像比較部15は、画像信号Vによる画像Pvを基準画像Psと比較し、比較結果に応じて動作信号ONを発生する働きをするもので、このため所望のソフトウエアが格納されているコンピュータを備え、当該ソフトウエアで決まるアルゴリズムに従って以下の処理を実行する。
まず、メモリ部14から基準画像Psを取り込み、次いで画像生成回路12から出力されている画像信号Vによる画像Pvと比較し、画像間での相関Sをとる。そして、この相関Sの強さが予め設定してある閾値Sth 以上になったら画像信号出力回路13に動作信号ONを供給するのである。
【0018】
従って、この実施形態においては、ホームHの画像は、送信装置2から連続して常時、送信されるのではなく、テレビカメラ1で撮像されている画像がメモリ部14に記憶してある基準画像Psに対してどのような状態になっているかに応じて送信されたり送信されなかったりすることになる。
そこで、この実施形態によれば、ホームHの画像が送信される期間を限定させることができ、この結果、異なったホームの画像が表示されたことによる混乱の発生が少なく抑えられるのであるが、以下、この点について、更に詳しく説明する。
【0019】
いま、メモリ部14に図3のモニタ画像M3を格納させておいたとする。
なお、このためには、以前に車両TがホームHに停車したときテレビカメラ1で撮像された画像をメモリ部14に記憶しておけばよい。
そうすると、この場合、画像比較部15では、このモニタ画像M3を基準画像Psとして画像信号Vによる画像Pvとの相関Sがとられることになるが、ここで、このモニタ画像M3は、上記した通り、ホームHに車両Tが停車しているときの画像であり、従って、このとき相関Sが最も強くなるのは、いま現在、車両TがホームHに停車しているときであり、従って、この場合、送信装置2からマイクロ波ビームBが送信されるのは、車両TがホームHに停車しているときだけとなる。
【0020】
そして、このときの車両Tの乗務員にとって安全確認のために必要なのは、車両TがホームH1に停車しているときのホームHでの画像であり、従って、マイクロ波ビームBの送信が、車両TがホームHに停車しているときだけに限られていても、安全確認には何の支障もない。
この結果、送信装置2からマイクロ波ビームBが送信されている時間は、常時送信されている場合に比較して大幅に短縮され、ここで、マイクロ波ビームBが送信されている時間が短縮されれば、その分、ホームH以外のホームにいる車両に、このホームHの画像が表示されてしまう虞は少なくなり、従って、この実施形態によれば、異なったホームの画像が表示されたことによる混乱の発生が少なく抑えられるのである。
【0021】
ところで、既に説明したように、複数のホームが併設されていた場合、例えば図4に示したように、第1のホームH1に第2のホームH2が併設されていた場合、送信装置2によるマイクロ波ビームBは、第1のホームH1に停車している列車T1で受信されるのは勿論であるが、第2のホームH2に進入した列車T2の受信装置4によっても受信が可能になってしまう。
但し、この図4の場合、第1のホームH1に列車T1が停車しているので、マイクロ波ビームBが遮られてしまうが、しかし、列車T1が出発した場合、列車T2はマイクロ波ビームBにまともに曝されてしまうので、やはり混乱の発生が避けられない。
【0022】
従って、この実施形態においては、異なったホームの画像が表示されたことによる混乱の発生が少なく抑えられることに変わりはなく、このとき、列車TがホームHに停車していることの検出がソフトウエアにより得られるので、別途、列車の停車を検出するための検出手段などは不要である。
しかも、このときに必要な画像の相関による画像の相似の程度を調べるためのソフトウエアは既に汎用されていて、必要なら簡単に入手できる。
従って、この実施形態によれば、コストの点でも従来技術に比して優位にあると言うことができ、この結果、ローコストの車上モニタシステムが容易に提供できる。
【0023】
ここで、車両の運転手による安全確認のための意識の集中には、或る程度の予測が必要であり、従って車上モニタシステムによるホームの画像表示が開始されるタイミングや終了されるタイミングがまちまちであると、意識の集中が開始されるタイミングもまちまちになり、ホームの安全確認に何らかの影響が考えられる。
このとき、従来技術では、上記したタイミングが、マイクロ波ビームBが車両Tにより受信できるようになったときと、受信できなくなってしまったときとにより決ってしまうが、この場合、線路やホームの状況、送信装置のアンテナの設置状況などによりタイミングが大きく左右されてしまう。
【0024】
従って、従来技術では、タイミングがまちまちになってしまうのがほとんど不可避である。
しかしながら、上記実施形態によれば、図1から明らかなように、車両Tの画像モニタにホームHの画像が表示されるタイミングが、相関Sの強さが予め設定してある閾値Sth 以上になったことで決まるため、ホームHに列車Tが停車しているときに限定され、常に同じタイミングにされるので、まちまちになってしまうことはなく、従って、この点でも、上記実施形態は、安全確保に大きく寄与することができる。
【0025】
ところで、以上に説明した実施形態では、メモリ部14に図3のモニタ画像M3を記憶させ、モニタ画像M3を基準画像Psとして画像信号Vによる画像Pvとの相関Sがとられるようにし、この結果、車両TがホームH1に停車しているときだけホームHの画像が車両Tの画像モニタに表示されるようにしている。
しかし、これとは別に、他のモニタ画像を基準画像Psとしてもよい。
【0026】
例えば、図3のモニタ画像M2とモニタ画像M4を夫々メモリ部14に記憶させるのである。
そして、まず、モニタ画像M2を基準画像Psとしたときの相関Sをとり、それが閾値Sth 以上になったら画像信号出力回路13に動作信号ONを供給し、ONにしたままにする。そして、この後、モニタ画像M4を基準画像Psとしたときの相関Sが閾値Sth 以上になったら画像信号出力回路13に対する動作信号ONの供給を停止させるのである。
【0027】
この場合、ホームHの画像が車両Tの画像モニタに表示されるのは、車両TがホームHに進入してきたときからホームHを発車し、車両Tの最後部が前方の端部Fを通り過ぎたときまでの期間となる。
しかも、このときも、相関Sの強さが予め設定してある閾値Sth 以上になったことでタイミングが決まるため、タイミングがまちまちになってしまうことはない。
【0028】
ここで、上記実施形態における相関Sの閾値Sth について説明する。
テレビカメラ1でホームHと車両Tを撮像した場合、常にモニタ画像M1〜M4と同じ画像が得られるとは限らない。何故なら、撮像条件は天候や時刻などに左右され、ホームを通る車両も全て同じ外観を呈するとは限らないからである。
従って、基準画像Psとテレビカメラ1で撮像した画像とを単純に比較しても、実際には、ホームと、このホームにおける車両の関係を求めることはできない。
【0029】
そこで、基準画像Psとテレビカメラ1で撮像した画像とを単純に比較するのではなく、これら画像間での相関Sをとり、相関Sの強さから、どの程度、類似しているのかをみて、或る程度、類似していたら同じ画像であると判断するのである。
ここで詳しい説明は省くが、この相関Sはソフトウエアにより数値として算出できる。そこで、この相関Sに所定の閾値Sth を設定し、相関Sが閾値Sth 以上になったら、比較されている画像は、所望の程度まで類似しているものとしているのであり、従って、予め試行錯誤などにより所望の値を求めて閾値Sth とすることになる。
【0030】
従って、上記実施形態によれば、ホームHの画像を送信する期間が当該ホームにおける列車Tの状況に応じで任意に制限でき、従って、ホームHの画像が送信される期間を必要最小限にすることにより、異なったホームの画像表示に伴う混乱を最小限にとどめることができ、安全運転の維持に大いに寄与することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 テレビカメラ
2 送信装置(マイクロ波送信用のコーリニアアンテナを含む)
3 受信装置
10 制御部
11 入力回路
(テレビカメラ1からカメラ信号Cin を取り込む回路)
12 画像生成回路
(カメラ信号Cin から画像信号Vを生成する回路)
13 画像信号出力回路
(画像信号Vを出力画像信号Vout に加工する回路)
14 メモリ部
(基準画像Psを記憶するメモリ)
15 画像比較部
(画像信号Vによる画像と基準画像Psを比較する回路)
A 矢印(車両Tの走行方向を表す矢印)
B マイクロ波ビーム
F ホームの前方の端部
R ホームの後方の端部
S 線路
H ホーム(プラットホーム)
H1 第1のホーム(第1のプラットホーム)
H2 第2のホーム(第2のプラットホーム)
T 車両(列車)
T1 第1の車両(第1の列車)
T2 第2の車両(第2の列車)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームを撮像視野とするテレビカメラを備え、当該テレビカメラにより撮像したプラットホームの画像を車両に無線伝送し、当該車両の画像モニタに表示する方式の車上モニタシステムにおいて、
前記テレビカメラにより予め以前に撮像しておいたプラットホームの画像を基準画像とし、この基準画像と前記テレビカメラにより現在撮像されてくるプラットホームの画像の相関をとり、相関の強さが予め設定してある閾値以上のとき動作信号を発生する制御手段を設け、
前記動作信号が発生されたときだけ前記車両に対する無線伝送が行われるように構成したことを特徴とする車上モニタシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−86754(P2012−86754A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236729(P2010−236729)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】