説明

車上通信装置、無線接続方法、及びプログラム

【課題】鉄道沿線に点在する無線LAN地上通信装置と、列車の車上通信装置との通信に関し、動的に接続/切断を行うことで必要な通信相手との通信経路を確保することを課題とする。
【解決手段】地上通信装置テーブル201は、地上通信装置毎に、通信する路線上の通信区間を記憶し、接続確立モジュール203は、地上通信装置の通信区間に列車の現在位置が含まれる場合に、当該地上通信装置を接続対象と判定し、接続対象の地上通信装置に対して接続要求を送信する。接続解除モジュール204は、接続中の地上通信装置の通信区間に現在位置が含まれない場合に、当該地上通信装置との接続を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道沿線に点在する無線LAN地上通信装置と、列車の車上通信装置との通信に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の「移動体LAN装置、無線LAN接続設定方法」(特開2008−271063号公報)は、無線LANアクセスポイントの通信可能範囲内に入る以前に、移動体の無線LAN設定を完了させるものである。アクセスポイントの位置情報と設定情報を記憶しておき、現在位置情報から間も無くつながるアクセスポイントの設定を事前にすませておく。
【0003】
この技術では、複数のアクセスポイントが接続の候補となったときにはどこにつなぐかをユーザに選択させており、自動的に選択することはできない。また、アクセスポイントに素早く接続することが目的であり、つながっている無線を強制的に切断して別のアクセスポイントにつなぎかえることは対象としていない。
【0004】
特許文献2の「移動体通信における発信時選択方式および方法」(特開2001−203829号公報)は、移動体通信の現在位置と着信エリアとから料金テーブルを検索して最も安価な通信事業者のアクセスポイントを自動的に選択する方式である。
【0005】
この出願では、移動体端末が移動したときに接続するアクセスポイントを変えたり、複数のアクセスポイントに同時に接続することは対象としていない。
【0006】
多くの従来技術では、地上の無線LAN装置がバックボーンネットワークで接続されていることが前提であり、車上通信装置は地上通信装置(無線LANアクセスポイント等)のどれでもよいから接続できれば地上〜車上間の通信が可能であった。いわゆる「高速ハンドオーバー技術」などにより、通信の連続性の確保が行われてきた。この結果、車上通信装置に接続された車上のコンピュータは、地上バックボーンネットワークに接続した任意のコンピュータとの必要なタイミングでの通信が可能となった。
【0007】
一方、沿線にバックボーンを構成しない場合や構成する必要がない場合には、車上通信装置は特定の地上通信装置と必要なタイミングで接続する必要がある。例えば、沿線にある踏切や駅などがそれぞれ孤立した無線エリアを作っている場合である。この場合、列車は、踏切の一定距離手前(αメートル)まで来たらその踏切の地上通信装置と接続する必要がある。想定する通信トラフィックは、踏切に設置された監視カメラの画像の車上への転送、踏切動作状態の車上への伝送、車上から踏切の動作を制御するための制御情報の送信、などである。
【0008】
しかし踏切は多数存在するので、「電波が強い」などの電気的条件だけでは接続相手を決めることができない。また、踏切を通り過ぎた時点で速やかにその踏切との接続を解除して、次の踏切との通信のために接続の準備をしなければならない。速やかな切断は、余計な通信トラフィックを削除し、他の列車が踏切と行う通信をスムーズに行うためにも必要である。また接続/切断のタイミングは、進行方向によっても異なる(図15参照)。
【0009】
図15は、想定ケース1の概要を示す図である。1501と1502は、それぞれ踏切イと踏切ロの地上通信装置の無線到達範囲を示している。列車が踏切イから踏切ロの方向に通過する場合(1503〜1505)と、踏切ロから踏切イの方向に通過する場合(1506〜1508)では、接続のタイミングも、切断のタイミングも異なる。特に、1509に示した両方の地上通信装置の無線到達範囲が重複する部分では、進行方向によってどの地上通信装置と接続するかが異なる。
【0010】
更に、踏切は接近して設置されていることもあるため、複数の車上通信装置が必要になる場合がある。そこで、どの車上通信装置をどのタイミングで、どの地上通信装置との接続に使うのかスケジューリングする必要がある(図16参照)。
【0011】
図16は、想定ケース2を概要示す図である。1601、1602、1603、及び1604は、それぞれ踏切イ、踏切ロ、踏切ハ、及び踏切ニの地上通信装置の無線到達範囲を示している。また、1605、1606、1607、及び1608は、それぞれ踏切イ、踏切ロ、踏切ハ、及び踏切ニの地上通信装置との接続区間を示している。そして、これらの接続区間は前後の接続区間と重複しているために、単独の通信手段のみでは、連続的な接続状態は実現できない。また、複数の通信手段を有する場合にも、適切なスケジューリングが必要となる。
【0012】
従来技術では、上述のいずれの使用環境にも対応できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−271063号公報
【特許文献2】特開2001−203829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本願発明では、列車の位置、進行方向や地上通信装置の位置データ等をもとにして、動的に接続/切断を行うことで必要な通信相手との通信経路を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る車上通信装置は、
交通機関の路線に沿って設置された複数の地上通信装置と無線により接続可能な、移動体に搭載された車上通信装置であって、以下の要素を有することを特徴とする
(1)地上通信装置毎に、通信する路線上の区間を記憶する地上通信装置テーブル
(2)地上通信装置の通信区間に移動体の現在位置が含まれる場合に、当該地上通信装置を接続対象と判定し、接続対象の地上通信装置に対して接続要求を送信する接続確立モジュール
(3)接続中の地上通信装置の通信区間に移動体の現在位置が含まれない場合に、当該地上通信装置との接続を解除する接続解除モジュール。
【0016】
また、
前記地上通信装置テーブルは、地上通信装置毎に、移動体の路線に対する進行方向を対応付けて記憶し、
前記接続確立モジュールは、当該移動体の現在の進行方向が、地上通信装置に対応付けて記憶している通信区間と一致し、かつ地上通信装置の通信区間に移動体の現在位置が含まれる場合に、当該地上通信装置を接続対象と判定することを特徴とする。
【0017】
また、
前記車上通信装置は、複数の無線手段を有し、
前記地上通信装置テーブルは、更に地上通信装置の無線通信条件を記憶し、
前記接続確立モジュールは、接続対象である地上通信装置の無線通信条件に適合する無線手段を選択して、選択した無線手段を用いて当該通信条件に従って接続要求を送信することを特徴とする。
【0018】
また、
前記車上通信装置は、更に無線手段毎に動作状態を取得するデバイス監視モジュールを有し、
前記接続確立モジュールは、更に動作状態が動作中であることを条件に無線手段を選択することを特徴とする。
【0019】
また、
前記接続確立モジュールは、更に接続状態が未接続であることを条件に無線手段を選択することを特徴とする。
【0020】
また、
前記車上通信装置の無線手段は、無線LANデバイスであることを特徴とする。
【0021】
また、
前記路線は、鉄道であって、前記移動体は、列車であることを特徴とする。
【0022】
本願発明に係る無線接続方法は、
交通機関の路線に沿って設置された複数の地上通信装置と無線により接続可能な、移動体に搭載された車上通信装置であって、地上通信装置毎に、通信する路線上の区間を記憶する地上通信装置テーブルを有する車上通信装置による無線接続方法であって、以下の要素を有することを特徴とする
(1)地上通信装置の通信区間に移動体の現在位置が含まれる場合に、当該地上通信装置を接続対象と判定し、接続対象の地上通信装置に対して接続要求を送信する接続確立工程
(2)接続中の地上通信装置の通信区間に移動体の現在位置が含まれない場合に、当該地上通信装置との接続を解除する接続解除工程。
【0023】
また、
前記車上通信装置は、複数の無線手段を備え、
前記無線接続方法は、更に無線手段毎に動作状態を取得するデバイス監視工程を有し、
前記接続確立工程は、更に動作状態が動作中であることを条件に無線手段を選択することを特徴とする。
【0024】
本願発明に係るプログラムは、
交通機関の路線に沿って設置された複数の地上通信装置と無線により接続可能な、移動体に搭載された車上通信装置であって、地上通信装置毎に、通信する路線上の区間を記憶する地上通信装置テーブルを有する車上通信装置となるコンピュータに、以下の手順を実行させることを特徴とする。
(1)地上通信装置の通信区間に移動体の現在位置が含まれる場合に、当該地上通信装置を接続対象と判定し、接続対象の地上通信装置に対して接続要求を送信する接続確立手順
(2)接続中の地上通信装置の通信区間に移動体の現在位置が含まれない場合に、当該地上通信装置との接続を解除する接続解除手順。
【0025】
また、
前記車上通信装置は、複数の無線手段を備え、
前記プログラムは、更に無線手段毎に動作状態を取得するデバイス監視手順を実行させ、
前記接続確立手順は、更に動作状態が動作中であることを条件に無線手段を選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
適切な無線通信回線を必要な区間だけで確実に構成することができ、無用な通信トラフィックを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】車上通信装置のハードウエア構成を示す図である。
【図2】車上通信装置のソフトウエアのモジュール構成を示す図である。
【図3】地上通信装置テーブルの例を示す図である。
【図4】地上通信装置の構成を示す図である。
【図5】車上無線手段テーブルの例を示す図である。
【図6】接続確立処理に係るデータフローを示す図である。
【図7】接続確立処理フローを示す図である。
【図8】接続対象判定処理フローを示す図である。
【図9】接続要求処理フローを示す図である。
【図10】接続中テーブル更新処理フローを示す図である。
【図11】接続解除処理に係るデータフローを示す図である。
【図12】接続解除処理フローを示す図である。
【図13】未接続テーブル更新処理フローを示す図である。
【図14】デバイス監視処理フローを示す図である。
【図15】想定ケース1の概要を示す図である。
【図16】想定ケース2を概要示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明において、列車に搭載された車上通信装置は、列車の制御信号やモニタ装置から列車の位置情報、進行方向を取得し、予め記録してある地上通信装置テーブル(地上通信装置との通信を行う始点及び終点、使用可能な無線通信手段、無線条件など)と、車上無線手段テーブル(無線装置の使用する無線通信手段、接続中の場合は、接続している地上通信装置など)とを参照して、接続する地上通信装置を決定し、接続及び切断を行う。
【0029】
まず図15に基づいて、動作概要について説明する。図中の右方向に進行する場合、列車が踏切イに接近すると、車上通信装置は踏切イの地上通信装置と接続し(1503)、踏切イを通過するとすぐに踏切イの地上通信装置との接続を切断し、新たに踏切ロの地上通信装置と接続する(1504)。そして、踏切ロを通過すると踏切ロの地上通信装置との接続を切断する(1505)。逆に左方向に進行する場合、列車が踏切ロに接近すると、車上通信装置は踏切ロの地上通信装置と接続し(1506)、踏切ロを通過するとすぐに踏切ロの地上通信装置との接続を切断し、新たに踏切イの地上通信装置と接続する(1507)。そして、踏切イを通過すると踏切イの地上通信装置との接続を切断する(1508)。
【0030】
次に図16に基づいて、動作概要について説明する。車上通信装置は、2つの無線手段(無線LANデバイス)を有している。そして、列車が踏切イに接近すると、車上通信装置は第一の無線手段を用いて踏切イの地上通信装置と接続し(1605)、更に踏切ロに接近すると、車上通信装置は第二の無線手段を用いて踏切ロの地上通信装置と接続する(1606)。そして、踏切イを通過すると第一の無線手段の接続を切断する。次に踏切ハに接近すると、車上通信装置は第一の無線手段を用いて踏切ハの地上通信装置と接続し(1607)、踏切ロを通過すると第二の無線手段の接続を切断する。このように、2つの無線手段を切り換えながら、複数の接近する地上通信装置と連続的に接続状態を確保する。図中1605と1607が、第一の無線手段による接続範囲であり、1606と1608が、第二の無線手段による接続範囲である。
【実施例1】
【0031】
図1は、車上通信装置のハードウエア構成を示す図である。車上通信装置は、CPU101、メモリ102、HDD103、無線LANデバイス104a〜104c、位置情報受信部105、進行方向受信部106を有している。CPU101は、演算装置の例であり、メモリ102とHDD103は、記憶装置の例である。プログラムは、通常HDD103に記憶されており、メモリ102にロードされた状態で、順次CPU101に読み込まれ処理を行う。無線LANデバイス104は、無線LAN通信に用いる。これにより、地上通信装置の無縁LANアクセスポイントとの通信を制御する。位置情報受信部105は、現在位置を取得するように構成され、進行方向受信部106は、列車の進行方向を取得するように構成されている。
【0032】
図2は、車上通信装置のソフトウエアのモジュール構成を示す図である。車上通信装置は、地上通信装置テーブル201、車上無線手段テーブル202、接続確立モジュール203、接続解除モジュール204、デバイス監視モジュール205、及び無線LANデバイスドライバ206a〜206cを有している。地上通信装置テーブル201は、地上通信装置に係る情報を管理し、車上無線手段テーブル202は、車上通信装置が備える無線手段に係る情報を管理する。無線LANデバイスドライバ206は、無線LANデバイスのドライバである。接続確立モジュール203は、地上通信装置テーブル201と車上無線手段テーブル202に基づいて無線LANデバイスドライバ206を用いて地上通信装置との通信状態を確立させるように動作し、接続解除モジュール204は、地上通信装置テーブル201と車上無線手段テーブル202に基づいて無線LANデバイスドライバ206を用いて地上通信装置との通信状態を解除させるように動作する。デバイス監視モジュール205は、無線LANデバイスドライバ206を介して無線LANデバイス104の状態を取得し、車上無線手段テーブル202を更新するように動作する。この例では、接続確立モジュール203、接続解除モジュール204、及びデバイス監視モジュール205は、同時並列的に動作する。但し、順次これらを繰り返し動作させることもできる。
【0033】
図3は、地上通信装置テーブルの例を示す図である。地上通信装置テーブル201は、地上通信装置毎にレコードを設け、地上通信装置の名称、進行方向、通信区間(上り側端点、下り側端点)、無線方式、SSID(Service Set Identifier)、認証/セキュリティ情報、チャネル、及び接続状態の項目を対応付けて記憶するように構成されている。また、踏切ハのように、地上通信装置が複数の無線手段(無線LANアクセスポイント)を有する場合には、無線手段毎に無線方式、SSID(Service Set Identifier)、認証/セキュリティ情報、チャネル、及び接続状態を対応付けて記憶する。SSIDは、無線LANにおけるアクセスポイントの識別子の例である。進行方向は、列車の進行方向であり、「上り」あるいは「下り」である。通信区間は、通信する範囲のことであり、路線上の位置である上り側端点と下り側端点により特定される。路線上の位置は、路線上の基準点からの距離で表されている。接続状態は、接続している「接続中」と、接続してない「未接続」を区別する。
【0034】
図4は、地上通信装置の構成を示す図である。地上通信装置は、無線LANアクセスポイント401x、無線LANアクセスポイント401y、スイッチングハブ402、及び踏切制御装置403を有している。この例では、2つの無線LANアクセスポイント401を有する例を示しているが、3つ以上のこともある。また、単数の場合もある。
【0035】
図5は、車上無線手段テーブルの例を示す図である。無線手段(無線LANデバイス)毎にレコードを設け、無線手段の名称、無線方式、動作状態、接続状態、及び接続相手の項目を対応付けて記憶するように構成されている。動作状態は、動作している「動作中」と、動作してない「停止中」を区別する。接続状態は、接続している「接続中」と、接続してない「未接続」を区別する。接続相手は、接続している場合における接続先の地上通信装置の名称(地上通信装置識別情報の例)、接続していない場合は、相手無のコードを区別する。
【0036】
続いて、各動作を順に説明する。まず接続確立モジュール203の動作について説明する。 図6は、接続確立処理に係るデータフローを示す図である。接続確立モジュール203は、地上通信装置テーブル201と車上無線手段テーブル202から接続対象を判定するための情報、及び接続を要求するための情報を取得し、接続した場合には地上通信装置テーブル201と車上無線手段テーブル202の接続状態や接続相手を更新する。また、位置情報受信部105から位置情報を取得し、進行方向受信部106から進行方向を取得する。更に、無線LANデバイスドライバ206を介して接続を要求する。
【0037】
図7は、接続確立処理フローを示す図である。まず、接続対象地上通信装置判定処理(S701)で、接続対象となる地上通信装置を判定する。この処理については、図8を用いて後述する。そして、接続対象が有る場合には、その地上通信装置それぞれについて、必要に応じて接続要求を行なう処理(S703〜S707)を繰り返す(S702)。
【0038】
接続対象である地上通信装置の無線手段に関する情報を地上通信装置テーブル201より取得し、複数の無線手段を存在する場合には、その無線手段それぞれについて以下の処理を繰り返す(S703)。当該無線手段の接続状態が「接続中」である場合には、当該地上通信装置に対する処理を終える。一方当該無線手段の接続状態が「未接続」である場合には、当該無線手段に対する接続要求を行う(S705)。この処理については、図9を用いて後述する。その結果、接続に成功した場合には、当該地上通信装置に対する処理を終える。一方、接続に失敗した場合には、他の無線手段による処理を繰り返す。そして、いずれの無縁手段によっても接続に失敗した時点で(S707)、当該地上通信装置に対する処理を終える。そして、接続対象である地上通信装置のすべてについて処理した時点で(S708)、S701に戻る。このようにして列車の運行中、接続確立処理を継続して動作する。
【0039】
図8は、接続対象判定処理(S701)のフローを示す図である。まず、位置情報を取得し(S801)、進行方向を特定する(S802)。そして、地上通信装置テーブル201の地上通信装置毎に以下の処理を繰り返す(S803)。特定した進行方向が、地上通信装置テーブル201で地上通信装置に対応付けられている進行方向と一致し(S804)、更に取得した位置情報が通信装置テーブル201で地上通信装置に対応付けられている通信区間に含まれる場合に(S805)、当該地上通信装置を接続する地上通信装置と判定する(S806)。進行方向が一致しない場合、及び位置情報が通信区間に含まれない場合は、接続対象としない。そして、すべての地上通信装置について処理した時点で終了する(S807)。
【0040】
図9は、接続要求処理(S705)のフローを示す図である。車上無線手段テーブル202の無線手段毎に以下の処理を繰り返す(S901)。車上通信装置の当該無線手段の無線方式が地上通信装置の無線手段の無線方式と一致し(S902)、車上通信装置の当該無線手段の動作状態が動作中であり(S903)、車上通信装置の当該無線手段の接続状態が未接続である場合に(S904)、無線LANデバイスドライバ206を介してSSID、認証情報、チャネル等を無線LANデバイスに設定して、通信を開始させる(S905)。無線LANデバイスは、SSIDで特定される無線LANアクセスポイントに、指定のチャネルでアクセスする。そして、セキュリティ情報を含む接続要求コマンドを送信する。認証結果が成功の場合に(S906)、接続中テーブル更新処理(S908)で地上通信装置テーブル201と車上無線手段テーブル202を更新し、終了ステータスを成功として終了する(S909)。一方、車上通信装置の当該無線手段の無線方式が地上通信装置の無線手段の無線方式と一致しない場合(S902)、車上通信装置の当該無線手段の動作状態が停止中の場合(S903)、及び車上通信装置の当該無線手段の接続状態が接続中である場合には(S904)、車上通信装置の他の無線手段について処理を繰り返す(S907)。すべての無線手段について処理して、いずれにおいても接続成功に至らない場合には、終了ステータスを失敗として終了する(S910)。
【0041】
図10は、接続中テーブル更新処理(S908)のフローを示す図である。車上無線手段テーブルの当該無線手段に対応する接続状態を「接続中」に更新し(S1001)、車上無線手段テーブルの当該無線手段に対応する接続相手に当該地上通信装置を書き込む(S1002)。更に、地上通信装置テーブルの当該無線手段に対応する接続状態を「接続中」に更新する(S1003)。
【0042】
続いて、接続解除モジュール204の動作について説明する。図11は、接続解除処理に係るデータフローを示す図である。接続解除モジュール204は、地上通信装置テーブル201と車上無線手段テーブル202から接続を解除する対象を判定するための情報を取得し、接続を解除した場合には地上通信装置テーブル201と車上無線手段テーブル202の接続状態や接続相手を更新する。また、位置情報受信部105から位置情報を取得し、無線LANデバイスドライバ206を介して接続の解除を指示する。
【0043】
図12は、接続解除処理フローを示す図である。車上無線手段テーブル202の各無線手段について以下の処理を繰り返す(S1201)。無線手段の動作状態が動作中であり(S1202)、無線手段の接続状態が接続中であり(S1203)、現在位置が無線手段の通信区間外である場合に、接続を切断する。現在位置が無線手段の通信区間外であるか判断するために、無線手段の接続相手から地上通信装置の名称を読み取り(S1204)、地上通信装置テーブル201から当該地上通信装置に対応する通信区間を読み取る(S1205)。また、位置情報受信部105から位置情報を取得し(S1206)、位置情報が通信区間に含まれるか判定する(S1207)。そして、接続を切断すると判断した場合には、無線LANデバイスドライバ206を介して無線LANデバイス104に通信を終了させる(S1208)。これにより、無線LANデバイス104は、地上通信装置に対して接続解除コマンドを送信する。そして、未接続テーブル更新処理(S1209)により地上通信装置テーブル201と車上無線手段テーブル202を更新する。一方、無線手段の動作状態が停止中である場合(S1202)、無線手段の接続状態が未接続である場合(S1203)、及び現在位置が無線手段の通信区間外でない場合には接続解除の処理を行わない。これらの処理を、すべての無線手段について行った時点で終了する(S1210)。
【0044】
図13は、未接続テーブル更新処理(S1209)のフローを示す図である。車上無線手段テーブル202の当該無線手段に対応する接続状態を「未接続」に更新し(S1301)、車上無線手段テーブル202の当該無線手段に対応する接続相手に相手無コードを書き込む(S1302)。更に、地上通信装置テーブル201の当該無線手段に対応する接続状態を「未接続」に更新する(S1303)。
【0045】
最後にデバイス監視モジュール205の処理について説明する。図14は、デバイス監視処理フローを示す図である。車上無線手段テーブルの無線手段毎に以下の処理を繰り返す(S1401)。無線LANデバイスドライバ206を介して無線LANデバイス104から動作状態を取得し(S1402)、車上無線手段テーブル202の当該無線手段を取得した動作状態に更新する(S1403)。そして、すべての無線手段について処理すると(S1404)、所定時間待機した後(S1405)、上述の処理を繰り返す。
【0046】
車上通信装置及び地上通信装置は、コンピュータであり、各要素はプログラムにより処理を実行することができる。また、プログラムを記憶媒体に記憶させ、記憶媒体からコンピュータに読み取られるようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
上述の例では、鉄道に適用する場合について説明したが、路線バスやモノレール等他の移動体に係る交通システムにも適用できる。
【符号の説明】
【0048】
101 CPU
102 メモリ
103 HDD
104a〜104c 無線LANデバイス
105 位置情報受信部
106 進行方向受信部
201 地上通信装置テーブル
202 車上無線手段テーブル
203 接続確立モジュール
204 接続解除モジュール
205 デバイス監視モジュール
206a〜206c 無線LANデバイスドライバ
401x、401y 無線LANアクセスポイント
402 スイッチングハブ
403 踏切制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通機関の路線に沿って設置された複数の地上通信装置と無線により接続可能な、移動体に搭載された車上通信装置であって、以下の要素を有することを特徴とする車上通信装置
(1)地上通信装置毎に、通信する路線上の区間を記憶する地上通信装置テーブル
(2)地上通信装置の通信区間に移動体の現在位置が含まれる場合に、当該地上通信装置を接続対象と判定し、接続対象の地上通信装置に対して接続要求を送信する接続確立モジュール
(3)接続中の地上通信装置の通信区間に移動体の現在位置が含まれない場合に、当該地上通信装置との接続を解除する接続解除モジュール。
【請求項2】
前記地上通信装置テーブルは、地上通信装置毎に、移動体の路線に対する進行方向を対応付けて記憶し、
前記接続確立モジュールは、当該移動体の現在の進行方向が、地上通信装置に対応付けて記憶している通信区間と一致し、かつ地上通信装置の通信区間に移動体の現在位置が含まれる場合に、当該地上通信装置を接続対象と判定することを特徴とする請求項1記載の車上通信装置。
【請求項3】
前記車上通信装置は、複数の無線手段を有し、
前記地上通信装置テーブルは、更に地上通信装置の無線通信条件を記憶し、
前記接続確立モジュールは、接続対象である地上通信装置の無線通信条件に適合する無線手段を選択して、選択した無線手段を用いて当該通信条件に従って接続要求を送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の車上通信装置。
【請求項4】
前記車上通信装置は、更に無線手段毎に動作状態を取得するデバイス監視モジュールを有し、
前記接続確立モジュールは、更に動作状態が動作中であることを条件に無線手段を選択することを特徴とする請求項3記載の車上通信装置。
【請求項5】
前記接続確立モジュールは、更に接続状態が未接続であることを条件に無線手段を選択することを特徴とする請求項4記載の車上通信装置。
【請求項6】
前記車上通信装置の無線手段は、無線LANデバイスであることを特徴とする請求項4又は5に記載の車上通信装置。
【請求項7】
前記路線は、鉄道であって、前記移動体は、列車であることを特徴とする請求項1乃至6記載の車上通信装置。
【請求項8】
交通機関の路線に沿って設置された複数の地上通信装置と無線により接続可能な、移動体に搭載された車上通信装置であって、地上通信装置毎に、通信する路線上の区間を記憶する地上通信装置テーブルを有する車上通信装置による無線接続方法であって、以下の要素を有することを特徴とする無線接続方法
(1)地上通信装置の通信区間に移動体の現在位置が含まれる場合に、当該地上通信装置を接続対象と判定し、接続対象の地上通信装置に対して接続要求を送信する接続確立工程
(2)接続中の地上通信装置の通信区間に移動体の現在位置が含まれない場合に、当該地上通信装置との接続を解除する接続解除工程。
【請求項9】
前記車上通信装置は、複数の無線手段を備え、
前記無線接続方法は、更に無線手段毎に動作状態を取得するデバイス監視工程を有し、
前記接続確立工程は、更に動作状態が動作中であることを条件に無線手段を選択することを特徴とする請求項8記載の無線接続方法。
【請求項10】
交通機関の路線に沿って設置された複数の地上通信装置と無線により接続可能な、移動体に搭載された車上通信装置であって、地上通信装置毎に、通信する路線上の区間を記憶する地上通信装置テーブルを有する車上通信装置となるコンピュータに、以下の手順を実行させるためのプログラム
(1)地上通信装置の通信区間に移動体の現在位置が含まれる場合に、当該地上通信装置を接続対象と判定し、接続対象の地上通信装置に対して接続要求を送信する接続確立手順
(2)接続中の地上通信装置の通信区間に移動体の現在位置が含まれない場合に、当該地上通信装置との接続を解除する接続解除手順。
【請求項11】
前記車上通信装置は、複数の無線手段を備え、
前記プログラムは、更に無線手段毎に動作状態を取得するデバイス監視手順を実行させ、
前記接続確立手順は、更に動作状態が動作中であることを条件に無線手段を選択することを特徴とする請求項10記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−226670(P2010−226670A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74596(P2009−74596)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】