説明

車両における車室照明構造

【課題】 不要になったシートベルトの引き出し部材の取付開口を有効に利用してコストダウンを図る。
【解決手段】 4シーター車両(図1(A)参照)のリヤシート13を除去し、リヤシート13の代わりに物入れ23を設置した2シーター車両(図1(B)参照)では、リヤシート13を除去したことでリヤシート用のシートベルト21が不要になり、車室内面に設けられたリヤシート用のシートベルト21の引き出し部材22も不要になる。よってシートベルト21の引き出し部材22の取付開口にリヤシート13の代わりに設けた物入れ23を照射するライト26を設けることで、その取付開口を目視不能に隠したり、ライト26用の取付開口を特別に設けたりする必要がなくなってコストダウンに寄与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースとなる車両のシートを除去し、前記シートの代わりに物入れを設置した車両における車室照明構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ワゴンタイプの自動車のラゲージフロアに設けた工具等の収納凹部を開閉自在なフロアボードで覆ったものにおいて、フロアボードの下面に収納凹部を照らす発光ダイオードを設け、フロアボードを引き上げる操作ハンドルに設けたタッチセンサに人体が接近あるいは接触したときに前記発光ダイオードを点灯させるものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−320422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スポーツカーのような車両では、運転席および助手席よりなるフロントシートに加えて、子供用あるいは荷物置き用として使用可能な比較的に狭いリヤシートを備えた4シーター車両をベースとし、そのリヤシートを除去して代わりに物入れを設置した2シーター車両に設計変更することがある。
【0005】
4シーター車両では、リヤシート用のシートベルトの引き出し部材が車室内面に設けられているが、リヤシートを除去するとシートベルトの引き出し部材も不要になるため、その引き出し部材の取付開口を内装材で覆う等の設計変更を施さないと車室の美観を損ねることになり、そのためにコストが増加する問題がある。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、不要になったシートベルトの引き出し部材の取付開口を有効に利用してコストダウンを図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、ベースとなる車両のシートを除去し、前記シートの代わりに物入れを設置した車両において、車室内面には前記シートに着座する乗員用のシートベルトの引き出し部材の取付開口が形成されており、前記取付開口に前記物入れを照射するライトを設けたことを特徴とする、車両における車室照明構造が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記ライトの周囲を囲む内装材の少なくとも一部は、前記ライトよりも車室側に突出することを特徴とする、車両における車室照明構造が提案される。
【0009】
尚、実施の形態のリヤシート13は本発明のシートに対応し、実施の形態の第1内装材16および第2内装材19は本発明の内装材に対応し、実施の形態の第1、第2保護部19a,19bは本発明の内装材の一部に対応し、実施の形態のアンビエントライト26は本発明のライトに対応する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、ベースとなる車両のシートを除去し、シートの代わりに物入れを設置した車両では、シートを除去したことで該シート用のシートベルトが不要になり、車室内面に設けられた該シート用のシートベルトの引き出し部材も不要になる。よってシートベルトの引き出し部材の取付開口に物入れを照射するライトを設けることで、その取付開口を目視不能に隠したり、ライト用の取付開口を特別に設けたりする必要がなくなってコストダウンに寄与することができる。
【0011】
また請求項2の構成によれば、ライトの周囲を囲む内装材の少なくとも一部をライトよりも車室側に突出させたので、乗員が車室後部に上半身を入れて物入れに物品を出し入れするような場合に、あるいは車両の衝突や転倒により乗員がシートを離れたような場合、乗員の頭部がライトに接触する前に内装材に接触させて衝撃吸収効果を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】4シーター車両および2シーター車両の車室後部の斜視図。
【図2】図1(B)の2部拡大図。
【図3】図2の3−3線端面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図3に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1(A)は、本実施の形態の車両のベースとなる4シーター車両の後部車室を示すものである。4シーター車両は、図示せぬフロントシートの後方に、シートクッション11およびシートバック12よりなるリヤシート13を備える。右側のドア開口14の後方の車室内面には、リヤクオータガラス15の周囲を覆う第1内装材16が設けられるとともに、その後方で荷室上壁17の上方を覆ってがリヤガラス18へと延びる第2内装材19が設けられる。
【0015】
第1内装材16および第2内装材19の接続部(境界部)に、シートベルト装置のリトラクタ20(図3参照)から延びるシートベルト21の引き出し部材22が設けられており、この引き出し部材22から車室内に引き出されたシートベルト21の先端はフロアに固定した図示せぬアンカーに結合される。シートベルト21の引き出し部材22は、合成樹脂で楕円形状に形成されており、第1内装材16および第2内装材19の接続部に跨がって形成された取付開口H(図2および図3参照)に固定される。
【0016】
尚、シートベルト装置は図1に示す車室右側だけでなく、車室左側にも同一構造のものが左右対称に設けられている。
【0017】
図1(B)は、上述した4シーター車両を2シーター車両に設計変更したものを示しており、4シーター車両のリヤシート13の代わりに物入れ23が設けられる。シートクッション11があった位置に置かれた物入れ23は物品を収納する左右一対の凹部23a,23aを備えており、その上面開口は開閉可能な蓋24により覆われる。またリヤシート13のシートバック12があった位置には、荷室との間を仕切るリヤバルクヘッド25が配置される。
【0018】
さて、2シーター車両の場合にはリヤシート13を備えていないため、リヤシート13用のシートベルト装置が不要になり、シートベルト21の引き出し部材22も不要になるが、その引き出し部材22をそのまま残して置くと車室の外観を損ねることになる。しかしながら、引き出し部材22を削除しようとすると、第1内装材16および第2内装材19を新たに設計変更する必要があり、コストアップの要因となる問題がある。
【0019】
そこで本実施の形態では、図1(B)および図2に示すように、シートベルト21の引き出し部材22の取付開口Hをそのまま利用し、その取付開口Hにアンビエントライト26を取り付けることにより、4シータ車両および2シータ車両で第1内装材16および第2内装材19を共用化してコストダウンを図っている。
【0020】
アンビエントライト26は、楕円形状の取付部材27と、その中央に固定されたランプケース28と、ランプケース28の内部に収納された図示せぬランプとを備えており、点灯状態で物入れ23を上方から照らすことで、夜間等の暗いときに物入れ23に物品を出し入れする際の利便性を高めることができる。
【0021】
アンビエントライト26の取付部材27の外形形状は、シートベルト1の引き出し部材22の外形形状と基本的に同一であるため、引き出し部材22の既存の取付開口Hに同じ取り付け方で取り付けることができる(図3参照)。よって、前記取付開口Hが形成される第1内装材16および第2内装材19を新たに設計することなくそのまま流用することが可能となり、第1内装材16および第2内装材19の美観を確保しながらコストダウンを達成することができる。
【0022】
また乗員が車外から後部車室に上半身を入れて物入れ23に物品を出し入れするとき、あるいは車両の衝突や転倒により乗員がフロントシートを離れたとき、その頭部がアンビエントライト26に接触する可能性がある。しかしながら、乗員の頭部が前方から後方に向かってアンビエントライト26に接近した場合、図3に示すように、アンビエントライト26の下方の第2内装材19の第1保護部19aがアンビエントライト26のランプケース28の先端部28aよりも距離aだけ前方に突出しているため、乗員の頭部が硬質のアンビエントライト26に接触するのを第2内装材19により阻止することができる。
【0023】
また乗員の頭部が車室の内側から外側に向かってアンビエントライト26に接近した場合、図2に示すように、アンビエントライト26の側方の第2内装材19の第2保護部19bがアンビエントライト26のランプケース28の側壁部28bよりも距離bだけ車幅方向内側に突出しているため、乗員の頭部が硬質のアンビエントライト26に接触するのを第2内装材19により阻止することができる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0025】
例えば、実施の形態で4シーター車両をベース車両としているが、本発明は乗車定員数に関わらず、2列シートの車両をベース車両とし、その2列目のシートを除去して物入れを設置する場合に適用することができ、また3列シートの車両をベース車両とし、その3列目のシートを除去して物入れを設置する場合に適用することができる。
【0026】
また実施の形態ではアンビエントライト26の近傍の内装材が第1内装材16および第2内装材19に分割されているが、内装材の分割のしかたは任意である。
【符号の説明】
【0027】
13 リヤシート(シート)
16 第1内装材(内装材)
19 第2内装材(内装材)
19a 第1保護部(内装材の一部)
19b 第2保護部(内装材の一部)
21 シートベルト
22 引き出し部材
23 物入れ
26 アンビエントライト(ライト)
H 取付開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースとなる車両のシート(13)を除去し、前記シート(13)の代わりに物入れ(23)を設置した車両において、
車室内面には前記シート(13)に着座する乗員用のシートベルト(21)の引き出し部材(22)の取付開口(H)が形成されており、前記取付開口(H)に前記物入れ(23)を照射するライト(26)を設けたことを特徴とする、車両における車室照明構造。
【請求項2】
前記ライト(26)の周囲を囲む内装材(16,19)の少なくとも一部(19a,19b)は、前記ライト(26)よりも車室側に突出することを特徴とする、請求項1に記載の車両における車室照明構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−79397(P2011−79397A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232591(P2009−232591)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】