説明

車両における音響装置

【課題】専用のスピーカを必要としない車両における音響装置を提供する。
【解決手段】車体フレームF、エンジンE、または車載部品を覆うカバー部材を備えた車両の音響装置において、カバー部材のうち、乗員の前方に配置したスクリーン60に超磁歪アクチュエータ90を直接固定し、スクリーン60を振動させることによりスクリーン60から音を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー部材を備えた車両における音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員の前方のメータパネル周辺に略円筒形状のスピーカを配置し、乗員等が音楽等を聴取できるようにした車両がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−168686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記構成において、スピーカは広い表面積を要するため、車両前部にスピーカのための広い設置スペースが必要になっていた。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、専用のスピーカを必要としない車両における音響装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、車体フレーム、エンジンまたは車載部品を覆うカバー部材を備えた車両の音響装置において、前記カバー部材のうち乗員の前方に配置したカバー部材に、当該カバー部材の取付け部から離れた位置に振動子を直接固定し、前記カバー部材を振動させることにより前記カバー部材から音を発生させることを特徴とする。
この構成によれば、乗員の前方に設けられたカバー部材に直接固定した振動子でカバー部材を振動させて音を発生させるため、車両が元々備えるカバー部材を利用して、従来用いられていたスピーカを設けることなく、音を出力できる。
また、乗員の前方側に設けられたカバー部材が音を発生させるため、車両の前方側及び乗員側に音を向けることができ、カバー部材が発生させた音の聴取性を車両の前方側及び乗員側において向上できる。
【0005】
また、上記構成において、前記カバー部材が防風機能を有するスクリーンまたはレッグシールドであっても良い。
この構成によれば、防風のために設けられた比較的大きな面積を有するスクリーンまたはレッグシールドを振動させて音を発生させるため、振動子の振動が微振動であっても大きな音を発生させるこができる。
また、前記カバー部材が樹脂製の外装部品であっても良い。
この場合、樹脂製のカバーは軽量であるため、振動子の振動に対して追従性が良く、振動子の振動が微振動であっても良好な音を発生させることができる。
【0006】
さらに、前記振動子が前記取付け部から所定の間隔だけ離れた位置に配置されても良い。
この場合、振動子が、振動しにくい取付け部から離れて配置されるため、カバー部材を効果的に振動させることができ、良好な音を出力できる。
さらにまた、前記カバー部材が板状であり、前記振動子が板状カバー部材に垂直に取り付けられても良い。
この場合、振動子の振動が板状のカバー部材に垂直に伝わるため、振動子の振動を効率良くカバー部材に伝達できる。
【0007】
また、前記カバー部材が、当該カバー部材の取付け部から離れた位置にねじ部を備え、前記振動子が前記ねじ部に螺合されても良い。
この場合、振動子をカバー部材に直接螺合させて簡単に固定でき、また、ねじ部がカバー部材の取付け部から離れた位置にあるので、振動子の振動をダイレクトにカバー部材に伝達でき、カバー部材を効率良く振動させることができる。
また、前記振動子が超磁歪アクチュエータであっても良い。
この場合、超磁歪アクチュエータによってカバー部材を振動させることができる。
【0008】
さらに、前記振動子が前記車両の走行ハンドル近傍のカバー部材に、当該カバー部材の取付け部から離れて視界の妨げとならない位置に取り付けられても良い。
この場合、振動子が乗員の視界を妨げない位置に設けられているため、振動子が乗員の運転の邪魔にならない。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る音響装置では、車両のカバー部材に直接固定した振動子でカバー部材を振動させて音を発生させるため、従来用いられていた専用のスピーカを設けることなく、音を出力できる。また、乗員の前方側のカバー部材が音を発生させるため、車両の前方側及び乗員側に音を向けることができ、カバー部材が発生させた音の聴取性を車両の前方側及び乗員側において向上できる。
【0010】
また、比較的大きな面積を有するスクリーンまたはレッグシールドを振動させて音を発生させるため、振動子の振動が微振動であっても大きな音を発生できる。
また、振動子の振動に対して追従性が良い軽量な樹脂製のカバーを振動させるため、振動子の振動が微振動であっても良好な音を出力できる。
振動子が、振動しにくい取付け部から離れて配置されるため、カバー部材を効果的に振動させることができ、良好な音を出力できる。
【0011】
また、振動子の振動が板状のカバー部材に垂直に伝わるため、振動子の振動を効率良くカバー部材に伝達できる。
振動子をカバー部材に直接螺合させて簡単に固定でき、振動子の振動をダイレクトにカバー部材に伝達できるため、カバー部材を効率良く振動させることができる。
さらに、超磁歪アクチュエータによってカバー部材を振動させることができる。
さらにまた、振動子が乗員の視界を妨げない位置に設けられているため、振動子が運転の邪魔にならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施の形態に係るスクータ型車両について図面を参照して説明する。なお、以下の説明で、上下、前後、左右の方向は、乗員から見た方向をいう。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るスクータ型車両の左側面図である。
【0013】
図1において、自動二輪車であるスクータ型車両1の車体フレームFは、前輪WFを軸支するフロントフォーク25ならびに該フロントフォーク25に連結される操向ハンドル26を操向可能に支承するヘッドパイプ27を前端に備えている。後輪WRは、車体フレームFの前後方向中間部で上下揺動可能に支承されるユニットスイングエンジンUEの後端に支持されている。ユニットスイングエンジンUEよりも前方側の車体フレームFには、側面視で上下に長く形成された燃料タンク28と、燃料タンク28よりも後方に配置されるラジエータ29とが搭載される。
また車体フレームFには、ユニットスイングエンジンUEを上方から覆うようにして収納ボックス30が取り付けられており、この収納ボックス30上に、前部シート32および後部シート33を有してタンデム型に構成される乗員用シート31が配置される。さらに車体フレームF、ユニットスイングエンジンUEの前部、燃料タンク28、ラジエータ29および収納ボックス30を覆う車体カバー34が車体フレームFに取り付けられている。車体カバー34は樹脂製の外装部品である。
【0014】
車体フレームFは、上記ヘッドパイプ27と、ヘッドパイプ27に連設されて後ろ下がりに延びる左右一対の上ダウンフレーム37と、上ダウンフレーム37よりも下方でヘッドパイプ27に連設されて後ろ下がりに延びる傾斜部38aの後端に水平部38bが一体に連設されて成るとともに、上ダウンフレーム37の後端部に後端が溶接される左右一対の下ダウンフレーム38とを備えている。
また、車体フレームFは、左右の上ダウンフレーム37の中間部から後ろ上がりに延びる左右一対のシートレール39と、上ダウンフレーム37の後部とシートレール39の後部間とを連結する左右一対のリアフレーム40と、上ダウンフレーム37、下ダウンフレーム38およびリアフレーム40の外側方に配置されて前後に延びる左右一対のサポートフレーム41とを備えている。
【0015】
左右のサポートフレーム41は、車体カバー34がその左右に備えるステップフロア159を下方から支持するものであり、両サポートフレーム41の前端は下ダウンフレーム38における傾斜部38aの下部に結合され、また両サポートフレーム41の後端はリアフレーム40の中間部に結合される。
【0016】
車体カバー34は、ヘッドパイプ27の前部および前輪WFの上部を覆うフロントカバー156と、フロントカバー156の左右両側に接合される左右一対のフロントサイドカバー157と、前部シート32に座乗した乗員の脚部前方を覆って防風機能を有すとともにヘッドパイプ27を後方側から覆うようにして左右のフロントサイドカバー157に接合されるレッグシールド158と、レッグシールド158の上部に位置し、同じくヘッドパイプ27を後方側から覆うようにして左右のフロントサイドカバー157に接合されるインナーカバー158aと、レッグシールド158に連なって後方に延びるとともにその下端部でステップフロア159を形成する左右一対のフロアセンターカバー160とを備えている。
【0017】
また、車体カバー34は、ステップフロア159の外縁から下方にそれぞれ垂下される左右一対のフロアサイドカバー161と、上記ステップフロア159の後部に設けられる左右一対のパッセンジャーステップ162と、乗員用シート31の左右の下方に配置されるとともにフロアサイドカバー161に連設されて後方に延びる左右一対のボディサイドカバー163と、ボディサイドカバー163の後ろ側下部に連設される左右一対のリヤロアカバー164と、収納ボックス30の後部膨出部121およびグラブレール118の後部間に配置されるリヤアッパーカバー165と、左右一対のテールライトユニット123間に配置されるとともに収納ボックス30の後部膨出部121を後方から覆うようにしてリヤアッパーカバー165に連なるリヤセンターカバー166とを備えている。
後輪WRを後方から覆うリヤフェンダ181には、ライセンスプレート182、リフレクタ183およびライセンスライト184が取り付けられている。このリヤフェンダ181は、左右一対のテールライトユニット123、車体カバー34の一部を構成するカバー部材であるリヤアッパーカバー165およびリヤセンターカバー166とともに収納ボックス30の後部膨出部121に取り付けられている。
【0018】
前輪WFを上方から覆うフロントフェンダ175はフロントフォーク25に支持され、操向ハンドル26には、左右一対のバックミラー176と、各灯器等を操作するためのスイッチケース178等が取り付けられている。フロントカバー156の前部両側と、左右一対のフロントサイドカバー157の前部との間にはヘッドライト171が配置され、ヘッドライト171の下方で両フロントサイドカバー157の前部にはウインカ172が配置されている。フロントカバー156、両フロントサイドカバー157およびレッグシールド158の上部には、メータ類を配置するためのメータパネル173が接合され、メータパネル173の前部には上方に隆起するようにしてメータバイザ173aが一体に設けられている。また、メータバイザ173aの前方には、乗員側へ流れる走行風を低減させるスクリーン60が配置されている。
【0019】
ユニットスイングエンジンUEは、シリンダ軸線をほぼ水平とした水冷式のエンジンEと、該エンジンEの出力を、伝達ベルトおよびプーリによって無段階に変速して後輪WRに伝達するベルト式の無段変速機Mとで構成され、該無段変速機Mは、変速用のアクチュエータとしての電動モータ42の作動に応じてクランクシャフト側の可動プーリを駆動して変速比を無段階に変化させる。無段変速機Mの変速機ケース43は、エンジンEにおけるクランクケース44の左側にエンジンEから張り出すようにして連設され、後輪WRの左側まで延設されている。また、両上ダウンフレーム37の後端すなわち下端にはブラケット65が取り付けられ、両ブラケット65にメインスタンド66が回動可能に支持されている。
【0020】
図2は、操向ハンドル26を含む操舵部の斜視図である。
図2において、50はハンドルポストを示し、ハンドルポスト50は、図1に示すように、ヘッドパイプ27に支持されたステアリングステム51の上端に取り付けられている。ハンドルポスト50の上面には、図2に示すように、一対のホルダ52を介して操向ハンドル26が取り付けられ、操向ハンドル26には、上述したバックミラー176、スイッチケース178の他に、ブレーキマスタシリンダ53、ブレーキレバー54等が取り付けられている。
【0021】
操向ハンドル26の前方には、前部にメータバイザ173aを一体に備えたメータパネル173が設けられ、メータパネル173には、車両に関する速度やエンジン回転数等の情報を表示するためのメータ55が設けられている。
メータ55には、図中左から順に、燃料タンクの燃料量計55a、速度計55b、デジタル表示時計55c、エンジン回転数計55d、水温計55e等の車両に関する各種の表示手段が設けられている。
【0022】
図1に示すように、車両前部の車体カバー34の内部においてメータ55の下方には、音楽等の再生に用いられる音響機器80が設けられている。
また、図2に示すように、ハンドル操舵部周辺には、音響機器80の操作に用いられる音響操作部70が設けられている。音響操作部70は、ヘッドパイプ27を境に後方に位置し、乗員の近い側に配置されている。
【0023】
音響操作部70はパネル本体72を備え、パネル本体72の表面の中央には、音響再生情報等を表示する横長形状の表示部74が設けられ、さらに、表示部74と略平行に複数の操作部71が略横一列に配置されている。これら操作部71は、図中左から順に、外部音声入力操作部(AUX)71a、AMラジオ操作部71b、FMラジオ操作部71c(以上、音源切換用操作部。)、ラジオ選局または選曲を行うためのマイナスチューナー71d、音量調整に関するボリューム操作部71e、ラジオ選局または選曲を行うためのプラスチューナー71f、交通情報受信用操作部71g、消音用電子ボリューム操作部71h、そして、音響操作を行うための低音高音バランス調整用操作部71i等である。また、表示部74の横には電源操作部71jが配置される。これら71a〜71jの操作部を操作することで、音響機器80を自在に操作できる。
【0024】
図1に示すように、スクリーン60の下部であってメータバイザ173aに隠れた位置には、超磁歪アクチュエータ90(振動子)が取り付けられ、この超磁歪アクチュエータ90は、音響機器80が出力する駆動信号によって駆動されて振動される。スクータ型車両1では、音響機器80の駆動信号によって超磁歪アクチュエータ90を振動させ、超磁歪アクチュエータ90の振動によりスクリーン60を振動させることでスクリーン60から音を発生させ、音楽等を再生可能にしている。つまり、スクリーン60に超磁歪アクチュエータ90を取り付けることによって、スピーカのように任意の音を出力可能な音響装置68が構成されている。
【0025】
図3は、音響機器80を含む周辺の構成の機能ブロック図である。
音響機器80は、音響操作部70からの指示に基づき音響機器80を制御する音声出力制御部80aと、音楽情報等を格納したSDメモリカードやラジオ等から取り込まれた音声データを音声出力制御部80aに出力する音源部80bと、アンプを備え音声出力制御部80aにより生成された音声信号を、駆動信号として超磁歪アクチュエータ90に出力する駆動部80cとを有している。音声出力制御部80a及び駆動部80cは、車両に搭載されたバッテリ45に接続されて電力が供給される。
【0026】
また、音響機器80は、ボリューム操作部71eの操作に連動して音量を変化させるパワーアンプや、アンテナ線を介して車体後部のアンテナ(図示略)に接続されたAM、FMラジオの受信機等を収納している。さらに、音響機器80は、携帯型オーディオプレーヤ(図示略)やSDカード(図示略)を接続するための外部音声入力端子等を備え、この外部音声入力端子にSDメモリカード等を接続することで、SDメモリカード等に記憶された任意の音楽をスクリーン60を介して再生できる。
【0027】
図4に示すように、スクリーン60は板状のカバー部材であり、その中央部60aが車両前方側に突出するように湾曲した曲面形状に形成され、左右の縁部60bは後方に向けて滑らかにカーブしている。また、スクリーン60は、上方に行くに従って幅狭となるように形成され、その上端がバックミラー176の上端よりも高く伸びた比較的大型のスクリーンである。車両前方からの走行風は、スクリーン60により整流されて車両の外側に向けて後方に流れるため、スクリーン60の後方に着座する乗員に走行風が直接当たりにくくなっている。また、スクリーン60は透明な樹脂材料により構成されている。
【0028】
スクリーン60の下部における左右の縁部60bには、取付け部60cがそれぞれ2箇所に形成され、取付け部60cにはボルト49が挿通され、ボルト49はスクリーン60をフロントカバー156に固定している。取付け部60cは、スクリーン60を貫通する丸孔であり、4箇所に形成されている。
フロントカバー156の上部には、スクリーン60の取付け部60cの各々に対応した位置に、ボルト49が螺合するねじ部156aが設けられている。ボルト49は、ワッシャ49aを介して固定される。
【0029】
また、スクリーン60の裏面側の下部、すなわち、スクリーン60における乗員側の面の下部には、超磁歪アクチュエータ90が固定されている。
詳細には、超磁歪アクチュエータ90は、中央部60aの下部において、スクリーン60の取付け部60cから離れた位置に、取付け部60cよりもわずかに高い位置に取り付けられている。図1に示すように、超磁歪アクチュエータ90が固定された位置は、メータバイザ173aの上端より低い位置である。
乗員用シート31に着座した乗員が前方を見た場合、超磁歪アクチュエータ90はスクリーン60の下部に位置するとともに、メータバイザ173aよりも車両前方側に隠れているため、乗員の視界に入らない位置にある。このように、超磁歪アクチュエータ90が乗員の視界を妨げない位置にあるため、超磁歪アクチュエータ90が運転の邪魔にならないという利点がある。
【0030】
スクリーン60は、図5に示すように、中央部60aの板厚が肉薄に形成され、左右の縁部60bの板厚が中央部60aよりも肉厚に形成されている。超磁歪アクチュエータ90は、中央部60aに取り付けられており、スクリーン60がフロントカバー156に取り付けられた状態においてスクリーン60がボルト49を介して固定される左右の取付け部60cの各々から所定の間隔だけ離れた位置に設けられている。超磁歪アクチュエータ90が取付け部60cから離れて設けられているため、取付け部60cの近くに超磁歪アクチュエータ90が取り付られた場合と比較して、超磁歪アクチュエータ90の振動によってより大きくスクリーン60を振動させることができる。
さらに、超磁歪アクチュエータ90が取り付けられた中央部60aは肉薄に形成されており剛性が比較的低いため、超磁歪アクチュエータ90によって振動させられ易く、スクリーン60を大きく振動させることができる。
【0031】
図6は、超磁歪アクチュエータ90の取付け状態を示す断面図である。
超磁歪アクチュエータ90は、超磁歪素子材料を円柱または角柱型に成形した超磁歪素子91を筒状のケース92の内部に収容し、磁界を発生させる磁界コイル93を超磁歪素子91の周囲に巻き回し、さらに、永久磁石等の磁性体94をケース92の内部において超磁歪素子91の周囲に配置して構成されている。
超磁歪素子91の軸方向の上端部91aには、超磁歪素子91の軸方向に延びてケース92の外側へ突出する雄ねじ部91cが設けられている。また、磁界コイル93には音響機器80に接続されるリード線95が接続され、音響機器80から磁界コイル93に電流を流して磁界を生じさせることが可能な構成となっている。
【0032】
磁歪素子とは、コイルや磁石等による外部からの磁界に応じて素子寸法が変化する性質(いわゆるジュール効果)を有する磁性体であり、一般に超磁歪素子とは、上記磁性体のうち、磁界に応じて寸法変化を生じる際の応答時間がnsec(ナノ秒)〜μsec(マイクロ秒)と短時間であり、寸法変化量が100〜1000ppm或いはそれ以上に達し、大きな寸法変化を生じるものを指す。超磁歪素子91は、1500〜2000ppm程度の寸法変化量が得られる素子である。
【0033】
磁界コイル93によって超磁歪素子91の周囲に磁界が印加されると、超磁歪素子91は寸法変化を生じ、この磁界の変化に応じて超磁歪素子91はその軸方向に伸縮し、超磁歪アクチュエータ90が振動する。すなわち、リード線95を介して音響機器80の駆動信号が磁界コイル93に入力されると、駆動信号に応じて超磁歪アクチュエータ90が振動し、スクリーン60が振動させられるため、音響機器80の駆動信号に応じた音をスクリーン60から出力することができる。
【0034】
上記構成の超磁歪アクチュエータ90は、スクリーン60の中央部60aの裏面側に設けられた固定部60dに取り付けられている。
固定部60dは、中央部60aに立設された左右の側壁60eと、左右の側壁60eのそれぞれの先端の間に掛け渡された平面部60fとを有している。平面部60fは中央部60aの面に対して略平行な面に形成され、平面部60fの中央には、超磁歪アクチュエータ90の雄ねじ部91cが挿通される取付け孔60gが穿設されている。超磁歪アクチュエータ90は、雄ねじ部91cが螺合する雌ねじ部67aを有するクリップナット67を介して固定部60dに直接固定される。
【0035】
クリップナット67は、板材をU字状に2つに折り返して互いに対向するように形成された上板67bと下板67cとに、上板67bと下板67cとを同軸で貫通する孔67dを穿設し、上板67bの孔67dの縁に形成されたダボ部67eに雌ねじ部67aを形成して構成されている。クリップナット67は、平面部60fを上板67bと下板67cとで挟み込んで固定部60dに取り付けられ、雌ねじ部67aがスクリーン60と平面部60fとの間に位置している。孔67dは取付け孔60gに重なっている。
【0036】
そして、超磁歪アクチュエータ90は、雄ねじ部91cが孔67d及び取付け孔60gに挿通されて雌ねじ部67aに螺合することで固定部60dに直接固定されている。このように、超磁歪アクチュエータ90がスクリーン60に直接固定されているため、超磁歪アクチュエータ90を簡単にスクリーン60に固定できる。さらに、超磁歪アクチュエータ90が直接固定されており、超磁歪アクチュエータ90の振動をダイレクトにスクリーン60に伝達できるため、効率良くスクリーン60を振動させることができる。さらにまた、超磁歪アクチュエータ90は中央部60aの面に対して略平行な平面部60fに取り付けられており、スクリーン60に対して超磁歪素子91の軸が略直角に取り付けられているため、超磁歪アクチュエータ90の軸方向の振動を効率良くスクリーン60に伝達することができる。
【0037】
このように、音響装置68は、超磁歪アクチュエータ90の微振動によってスクリーン60を大きく振動させることができるため、スクリーン60に超磁歪アクチュエータ90を取り付ける構成によって大きな音を出すことができる。また、超磁歪アクチュエータ90は、左右の取付け部60cの各々から略均等に離れた中央部60aに設けられており、スクリーン60の全体を均一に振動させ易いため、良好な音を発生させることができる。
ここで、上記所定の間隔は、超磁歪アクチュエータ90が、取付け部60cから十分に離れたスクリーン60における剛性が比較的低い位置に設けられるように設定され、かつ、乗員の視界に入らない位置となる間隔であることが望ましい。
【0038】
スクリーン60は、放物面状に形成されているとも言え、乗員の前方に位置する放物面が乗員の側を向いているため、スクリーン60の振動により出力された音を乗員の側に向けることができ、乗員側の位置における音楽等の聴取性を向上できる。さらに、スクリーン60の表面側は車両前方に向いているため、車両前方側にもスクリーン60によって出力される音を向けることができ、車両前方側における音楽等の聴取性を向上できる。また、例えば、走行音が小さい低速走行時等において、車両前方側に向けて音を発生させ、周囲に車両の存在を認識させることができる。
【0039】
以上説明したように、本発明を適用した第1の実施の形態によれば、乗員の前方側に設けられたスクリーン60に直接固定した超磁歪アクチュエータ90でスクリーン60を振動させて音を発生させるため、スクータ型車両1が元々備えるスクリーン60を利用して、従来用いられていたスピーカを設けることなく、音を出力できる。これにより、車両の音響装置において、コンパクトな構成で音を出力することができる。さらに、スピーカを設けない分だけスペースを確保でき、設計の自由度が向上する。
また、乗員の前方側に設けられたスクリーン60が音を発生させるため、車両の前方側及び乗員側に音を向けることができ、スクリーン60が発生させた音の聴取性を車両の前方側及び乗員側において向上できる。
【0040】
また、防風のために設けられた比較的大きな面積を有するスクリーン60を振動させて音を発生させるため、超磁歪アクチュエータ90の振動が微振動であっても大きな音を発生させるこができる。
また、超磁歪アクチュエータ90の振動に対して追従性が良い軽量な樹脂製のスクリーン60を振動させて音を出力させるため、超磁歪アクチュエータ90の振動が微振動であっても良好な音を発生させることができる。
【0041】
さらに、超磁歪アクチュエータ90が、ボルト49により固定されて振動しにくい取付け部60cから所定の間隔だけ離れて取り付けられているため、スクリーン60を効果的に振動させることができ、良好な音を出力できる。
さらにまた、超磁歪アクチュエータ90の振動が板状のスクリーン60に垂直に伝わるため、超磁歪アクチュエータ90の振動を効率良くスクリーン60に伝達できる。
【0042】
また、超磁歪アクチュエータ90をクリップナット67を介してスクリーン60に直接螺合させて簡単に固定でき、さらに、超磁歪アクチュエータ90の振動をダイレクトにスクリーン60に伝達できるため、スクリーン60を効率良く振動させることができる。
また、超磁歪アクチュエータ90が乗員の視界を妨げない位置に設けられているため、超磁歪アクチュエータ90が運転の邪魔にならない。さらに、スクリーン60の全体から音が出力されるとともに、従来のスピーカがなくとも音が出力されるため、乗員に斬新な印象を与えることができる。
【0043】
なお、上記第1の実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記第1実施の形態に限定されない。
上記第1の実施の形態では、超磁歪アクチュエータ90によってスクリーン60を振動させるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ピエゾ素子アクチュエータやマグネット式アクチュエータを用いても良い。
また、上記第1の実施の形態では、車両はスクータ型車両であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、車両はロードスポーツ車両やデュアルパーパス車両等の自動二輪車、或いは、三輪又は四輪を越える車輪数の車両であっても良い。また、上記第1の実施の形態では、超磁歪アクチュエータ90はスクリーン60に取り付けられるものとして説明したが、これに限らず、例えば、乗員の前方側に位置するレッグシールド158に取り付けても良い。さらに、超磁歪アクチュエータ90を乗員の前方に位置するエンジンを覆うカバー部材に設け、このカバー部材から音を出力させても良い。また、その他の細部構成についても任意に変更可能であることは勿論である。
【0044】
[第2の実施の形態]
以下、図7乃至図9を参照して、本発明を適用した第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
第2の実施の形態では、超磁歪アクチュエータ90を、鞍乗型電動車両200の車両前部のインナーカバー221(カバー部材)に取り付けて音響装置268を構成している。
【0045】
図7は、本発明の第2の実施の形態の鞍乗型電動車両の左側面図である。
鞍乗型電動車両200は、バッテリ駆動式の電気自動二輪車(Electric Vehicle)である。鞍乗型電動車両200の車体フレームFは、ヘッドパイプ205をその前端に備え、ヘッドパイプ205は、前輪WFを支持するフロントフォーク202を操行自在に支持している。フロントフォーク202の上部には、操行ハンドル203が固定されている。また、車体フレームFは、センターフレーム206と、リアフレーム207と、シートレール208とを備えている。これらのフレーム206、207、208は、車体幅方向において左右対称に一対にそれぞれ構成されている。
【0046】
センターフレーム206は、上述したヘッドパイプ205に連設されて車体後方斜め下側に延びた後、屈曲して略水平に車体後方へ延在している。
また、リアフレーム207は、センターフレーム206の後端から車体後方斜め上側に向けて延在している。シートレール208は、リアフレーム207の上側に取り付けられ、乗員シート242を支持している。
【0047】
前輪WFと後輪WRとの間において後方へ延びるセンターフレーム206には、バッテリボックス219が設けられ、バッテリボックス219にはバッテリ209が収容されている。このバッテリボックス219が配置された部分は、乗員シート242に着座した乗員の脚部が納まる足載せ空間Sの下側の部分であり、バッテリボックス219の上側は、乗員が足を載せることができるステップフロア210で覆われている。
【0048】
後輪WRを揺動可能に支持するスイングアーム213は、リアフレーム207にその前端部が取り付けられている。スイングアーム213の後部とリアフレーム207の後部との間にはリアサスペンション214が連結されている。スイングアーム213の下部には、メインスタンド245が設けられている。
スイングアーム213は中空に形成され、後輪WRを駆動する動力発生モータ216、及び動力発生モータ216を制御するPDU(Power Drive Unit)218等が収容されている。動力発生モータ216及びPDU218は、図示しない配線を介してバッテリ209から電力を供給される。
【0049】
車両前部には、ヘッドパイプ205を車両前方側から覆う板状のフロントカバー220と、ヘッドパイプ205及びセンターフレーム206の上部を車両後方側から覆う略箱状のインナーカバー221(カバー部材)とが設けられている。インナーカバー221は、ヘッドパイプ205の上部からセンターフレーム206の中間部までを覆う比較的大きなカバー部材であり、樹脂材料により一体に構成されている。また、インナーカバー221は足載せ空間Sの前方に位置し、正面視で乗員の脚部に重なっており、レッグシールドとしても機能している。さらに、フロントカバー220の前方には車両前方を照らすヘッドライト241がステーを介して取り付けられている。さらに、インナーカバー221の上部には音響操作部70が設けられ、インナーカバー221の内側には音響機器80が設けられている。
【0050】
図8は、インナーカバー221をヘッドパイプ205の側から見た斜視図である。
インナーカバー221は、図8に示すように、車両に取り付けられた状態において乗員側に対向する平板部221aと、平板部221aの左右端にそれぞれ立設された側壁部221bと、ヘッドパイプ205の上部を覆う上面部221cと、上面部221cに対向する下面部221dとを有している。側壁部221bは、ヘッドパイプ205及びセンターフレーム206の側面を覆っている。また、上面部221cにはヘッドパイプ205が通る開口221eが形成され、下面部221dにはセンターフレーム206が通る開口221fが形成されている。
【0051】
左右の側壁部221bの各々には、インナーカバー221をヘッドパイプ205に固定するボルト222が挿通される取付け部223が2箇所に形成されている。詳細には、インナーカバー221は、ヘッドパイプ205に設けられたステー(図示略)に形成されたねじ部(図示略)にボルト222が螺合されて取り付けられる。
取付け部223は左右の側壁部221bの車両前方側の前縁部221gの近傍において、側壁部221bの上部及び下部にそれぞれ形成され、計4箇所に設けられている。また、上部及び下部の取付け部223は、それぞれ対向する側壁部221bに形成された取付け部223と略同一の高さに形成されている。
前縁部221gは、ヘッドパイプ205の前方に設けられるフロントカバー220の外縁に合わさって取り付けられる合せ部である。
【0052】
上記平板部221aには、超磁歪アクチュエータ90が取り付けられている。超磁歪アクチュエータ90は、側壁部221bの上部の取付け部223よりわずかに下方において、取付け部223から所定の距離だけ離れた、平板部221aの幅方向の中央部221hに取り付けられている。この所定の間隔は、超磁歪アクチュエータ90が、取付け部223から十分に離れたインナーカバー221における剛性が比較的低い位置に設けられるように設定される。
【0053】
図9は、超磁歪アクチュエータ90の取付け状態をインナーカバー221の上方から見た図である。インナーカバー221は、その内側において中央部221hに、上記第1の形態で説明した固定部60dを有している。
超磁歪アクチュエータ90は、取付け部223から離れた位置において、取付け孔60gに挿通された雄ねじ部91cをナット267により締めこむことにより、インナーカバー221に直接固定され、簡単に取り付けることができる。超磁歪アクチュエータ90が直接固定されているため、超磁歪アクチュエータ90の振動をダイレクトにインナーカバー221に伝達できるため、効率良くインナーカバー221を振動させることができる。
また、超磁歪アクチュエータ90は平面部60fを介してインナーカバー221に対し略直角に取り付けられているため、超磁歪アクチュエータ90の軸方向の振動を効率良くインナーカバー221に伝達することができる。
【0054】
インナーカバー221は略箱状に形成された比較的大型なカバー部材であり、インナーカバー221を振動させて音を出力させた場合に大きな音を出すことができ、音を出力させるために超磁歪アクチュエータ90を取り付ける部材として好適である。取付け部223及び上記合せ部は、固定される部分であるため、比較的振動しにくい部分である。一方、平板部221aは、固定された部分から離れて設けられた面積の大きな板部であり、剛性が比較的低く撓み易いため、超磁歪アクチュエータ90によって振動させやすい。このため、超磁歪アクチュエータ90によってインナーカバー221を効果的に振動させることができる。また、中央部221hは平板部221a上において特に撓み易い位置であり、超磁歪アクチュエータ90によって振動させやすいため、インナーカバー221を振動させて良好な音を出力できる。
【0055】
超磁歪アクチュエータ90は、インナーカバー221を振動させやすい位置に設けられているため、インナーカバー221から良好に音を出力できる。また、乗員の前方において乗員に対向して設けられたインナーカバー221から乗員側に向けて音を出力できるため、乗員が音楽等を聴取し易い。
超磁歪アクチュエータ90は、インナーカバー221の内側に取り付けられており、車両の外側から見えない位置にある。これにより、車両の外観性に影響を与えることなく超磁歪アクチュエータ90を配設できる。
【0056】
鞍乗型電動車両200は、エンジン音や排気音が発生しないため走行音や停車している際の音が小さく、鞍乗型電動車両200の周辺において鞍乗型電動車両200の存在が認識されにくい可能性がある。本第2の実施の形態では、インナーカバー221から音を出力できるため、従来のスピーカ等を設けることなく音を出力し、電動車両の存在を周囲に認識させることができる。
【0057】
なお、上記第2の実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記第2実施の形態に限定されない。
上記第2の実施の形態では、インナーカバー221は樹脂材料により構成されるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、インナーカバー221をアルミニウム等の金属により構成しても良い。
【0058】
[第3の実施の形態]
以下、図10、図11を参照して、本発明を適用した第3の実施の形態について説明する。この第3の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
第3の実施の形態では、超磁歪アクチュエータ90を、自動二輪車両300の車両前部のタンクカバー350(カバー部材)に取り付けて音響装置368を構成している。
【0059】
図10は、本発明の第3の実施の形態の自動二輪車両300の右側面図である。
前輪WF及び後輪WRの間には、エンジン303が配置され、車体フレーム304に支持されている。
車体フレーム304は、フロントフォーク305を介して前輪WFを支持するヘッドパイプ320、ヘッドパイプ320からエンジン303上方を後方へ向かって延在するメインパイプ321、エンジン303の後方に上下方向へ配設されるセンターパイプ322、ヘッドパイプ320からエンジン303前方を下方へ向かって延出するダウンパイプ323、エンジン303の下方に前後方向へ配設されるロアーパイプ324を備え、これらを連続させたループ状をなし、この内側にエンジン303を支持する。
【0060】
フロントフォーク305の上部には前輪WFを操行自在とするハンドル308が設けられている。メインパイプ321とセンターパイプ322の接続部近傍からはシートレール(図示略)が後方へ略水平に延在する。車体フレーム304の後端には、後輪WRを揺動自在に支持するスイングアーム312が連結されている。
また、エンジン303の上方には、燃料タンク330(車載部品)がメインパイプ321に支持されて設けられている。
【0061】
車両前部には、ヘッドパイプ320と、メインパイプ321及びダウンパイプ323の上部とを覆いエンジン303の上部まで延在するフロントカウル307が取り付けられている。フロントカウル307の前端にはヘッドライト307aが設けられている。フロントカウル307は燃料タンク330の上方に位置する部分が分割して構成され、この部分には、燃料タンク330の上部を覆うタンクカバー350(カバー部材)が取り付けられている。フロントカウル307の上部においてハンドル308の近傍には音響操作部70が設けられ、フロントカウル307の内側には音響機器80が設けられている。乗員が跨るシート310は、フロントカウル307の後端の下部に連続するように配置されている。ダウンパイプ323の下部においてエンジン303の側方には、シート310に跨った乗員が足を置くステップ318が設けられている。
【0062】
図11は、タンクカバー350を燃料タンク330の側から見た平面図である。
タンクカバー350は、車両前後方向に延在する板状の部材であり、樹脂材料によって一体に形成されている。タンクカバー350は前部に幅広の幅広部350aを有し、その後部のシート310の側に、先細りに形成された幅狭部350bを有している。タンクカバー350の前後方向の中間部には、燃料タンク330の給油口に臨む開閉口351が設けられ、この開閉口351は開閉自在である。また、図10に示すように、側面視では、タンクカバー350は曲面形状に形成されている。
【0063】
タンクカバー350は、車両の外側面とは反対側、すなわち、裏面側に、タンクカバー350を車両に取り付けるための複数の取付け部350c、350dを有している。取付け部350cは、タンクカバー350の外縁部350eに沿って計10箇所に間隔をあけて設けられている。取付け部350dは幅広部350aの中央部350fに幅方向に並んで2箇所に設けられている。また、取付け部350c、350dは、フロントカウル307若しくは車体フレーム304に取り付けられる。
【0064】
本構成の超磁歪アクチュエータ90は、タンクカバー350の裏面側において、幅広部350aの2箇所に取り付けられている。
詳細には、超磁歪アクチュエータ90は、外縁部350eと中央部350fとの間の中間部に設けられており、超磁歪アクチュエータ90の周囲に位置する複数の取付け部350c、350dから所定の間隔をあけた位置にある。この所定の間隔は、超磁歪アクチュエータ90が、取付け部350c、350dから十分に離れたタンクカバー350における剛性が比較的低い位置に設けられるように設定される。このため、超磁歪アクチュエータ90によってタンクカバー350を効果的に振動させることができる。
また、超磁歪アクチュエータ90は、車両の前後方向の中心線を基準に左右対称となる位置に設けられているため、タンクカバー350に複数の超磁歪アクチュエータ90を設けた場合においても、バランス良くタンクカバー350を振動させることができ、良好な音を出力できる。また、タンクカバー350は、シート310に着座した乗員の前方の近傍に位置し、乗員の側を向いているため、タンクカバー350から出力された音が乗員の側に届き易く、乗員が音を聴取し易い。
【0065】
[第4の実施の形態]
以下、図12乃至図15を参照して、本発明を適用した第4の実施の形態について説明する。この第4の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
第4の実施の形態では、超磁歪アクチュエータ90を、スクータ型車両400の車両前部のフロントカバー421(カバー部材)に取り付けて音響装置468を構成している。
【0066】
図12は、本発明の第4の実施の形態のスクータ型車両400の左側面図である。
スクータ型車両400の車体フレームFは、前輪WFを支持するフロントフォーク402を操行自在に支持するヘッドパイプ404と、ヘッドパイプ404に連接されて下方に延びた後、後方に延在するメインフレーム405と、メインフレーム405に連結されるリアフレーム407とを備えている。メインフレーム405は、ヘッドパイプ404から下方に延びるダウンチューブ405aと、ダウンチューブ405aの下端で屈曲して車体後方へ延びるロアフレーム405bとを備えている。
【0067】
フロントフォーク402の上部には、操行ハンドル403が固定されている。後輪WRをその後端で支持するユニットスイングエンジンUEは、メインフレーム405の後部で上下に揺動可能なように支持されている。また、ユニットスイングエンジンUEの上方には、乗員用が着座するシート406が設けられている。さらに、車体フレームFには、車体フレームFを覆う合成樹脂製の車体カバー420が取り付けられている。
【0068】
ユニットスイングエンジンUEは、水冷式のエンジンEと、エンジンEの出力を伝達ベルト410及びプーリ(図示略)によって無段階に変速して後輪WRに伝達するベルト式の無段変速機Mとを一体に備えて構成されている。ユニットスイングエンジンUEの左側面は、ケースカバー435によって覆われており、ケースカバー435を取り外すと伝達ベルト410及び上記プーリが露出する。
また、ユニットスイングエンジンUEの後部と、リアフレーム407の後部との間には、リヤクッションユニット411が設けられている。
【0069】
車体カバー420は、ヘッドパイプ404の前側においてスクータ型車両400の前面を覆うフロントカバー421と、フロントカバー421の裏面側に連結され、ヘッドパイプ404及びダウンチューブ405aを後側から覆うレッグシールド423と、シート406に着座した乗員が足を乗せるフロアステップ424と、フロアステップ424の下方を覆うアンダカバー425と、シート406の下方を覆うボディカバー426とを備えている。また、操行ハンドル403の上部には、ヘッドライト427を備えたアッパカバー428が取り付けられている。また、アッパカバー428の上部には音響操作部70が設けられ、フロントカバー421の内側には音響機器80が設けられている。
【0070】
図13は、フロントカバー421をヘッドパイプ404の側から見た斜視図である。
フロントカバー421は正面視では略二等辺三角形状に形成された板状のカバー部材であり、最も鋭角な下部421aが車両の下方を向いて取り付けられる。下部421aと反対側の上部421bの中央には、車両の外側に一段突出した凸部421cが形成されている。また、フロントカバー421は、樹脂材料によって一体に形成されている。
【0071】
フロントカバー421におけるヘッドパイプ404側の面、すなわち、フロントカバー421の裏面側には、超磁歪アクチュエータ90が取り付けられている。
【0072】
また、上記フロントカバー421の裏面側には、複数の取付け部421dが形成され、取付け部421dには、フロントカバー421を車両に固定するボルト429が挿通される。さらに、上記フロントカバー421の裏面には、複数の爪部421eが形成され、複数の爪部421eによって、フロントカバー421をレッグシールド423と連結している。上記フロントカバー421の外縁部421fは、レッグシールド423との合わせ面と合わさる部分である。
【0073】
爪部421eは、上部421bの左右端にそれぞれ1箇所と、下部421aの端において2箇所に設けられている。また、取付け部421dは、フロントカバー421の幅方向の中央において、上部421bの爪部421eと超磁歪アクチュエータ90との間の中間部の1箇所に設けられている。さらに、取付け部421dは、下部421aの爪部421eと超磁歪アクチュエータ90との間の中間部において幅方向に並んで2箇所に設けられている。このように、超磁歪アクチュエータ90は、合わせ面と合わさる外縁部421f、爪部421e及び取付け部421dから離れた振動し易い位置に設けられているため、フロントカバー421を効果的に振動させて良好な音を出力することができる。また、車両の前面を向くフロントカバー421に超磁歪アクチュエータ90を設けたため、車両の前方に向けて音を出力でき、特に前方にいる第3者等にスクータ型車両400の存在を知らせることができる。
【0074】
図14は、超磁歪アクチュエータ90の取付け状態を示す。
フロントカバー421の裏面にはボス436aが形成され、ボス436aには雌ねじ部436(ねじ部)が形成されている。この雌ねじ部436には、超磁歪アクチュエータ90の雄ねじ部91cが螺合し、これにより超磁歪アクチュエータ90が直接フロントカバー421に取り付けられている。
このため、超磁歪アクチュエータ90を簡単に取り付けできる。また、超磁歪アクチュエータ90はフロントカバー421の取付け面に対し、振動の軸方向が垂直に取り付けられているため、フロントカバー421を効果的に振動させることができる。さらに、超磁歪アクチュエータ90は、フロントカバー421の外側から見えない位置に設けられるため、車両の外観性に影響を与えることなく配設できる。
フロントカバー421は、比較的大きな板状の樹脂部材であり、剛性が比較的低く撓み易いため、超磁歪アクチュエータ90を取り付けて音を発生させるには好適の部材である。さらに、超磁歪アクチュエータ90が中心部421gに取り付けられているため、効果的にフロントカバー421を振動させることができる。
【0075】
なお、上記第4の実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記第4実施の形態に限定されない。
上記第4の実施の形態では、超磁歪アクチュエータ90はフロントカバー421の内側に取り付けられるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、アッパカバー428の内側に取り付けられても良い。
【0076】
図15は参考例である。
図15はケースカバー435をユニットスイングエンジンUEの内側から見た斜視図である。ケースカバー435は、車両の側面側を向く平板部435aと、平板部435aの縁部に立設されてユニットスイングエンジンUEと合わさる壁部435bとを有している。ケースカバー435は、壁部435bに形成された孔部435cを通る複数のボルト(図示略)によってユニットスイングエンジンUEに固定される。ここで、ケースカバー435はアルミ合金により構成されている。
【0077】
平板部435aの中央部には、超磁歪アクチュエータ90が取り付けられている。詳細には、図14に示すように、ケースカバー435に、超磁歪アクチュエータ90の雄ねじ部91cが螺合する雌ねじ部436(ねじ部)が形成されている。
そして、超磁歪アクチュエータ90は、雄ねじ部91cが雌ねじ部436に螺合することで、直接ケースカバー435に取り付けられる。このため、超磁歪アクチュエータ90を簡単に取り付けできる。また、超磁歪アクチュエータ90はケースカバー435の取り付け面に対し、振動の軸方向が垂直に取り付けられているため、ケースカバー435を効果的に振動させることができる。さらに、超磁歪アクチュエータ90はケースカバー435の内側の外側から見えない位置に設けられているため、車両の外観性に影響を与えることなく超磁歪アクチュエータ90を配設できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るスクータ型車両の左側面図である。
【図2】操向ハンドルを含む操舵部の斜視図である。
【図3】音響機器を含む周辺の構成の機能ブロック図である。
【図4】スクリーンの斜視図である。
【図5】スクリーンの断面図である。
【図6】超磁歪アクチュエータの取り付け状態を示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態の鞍乗型電動車両の左側面図である。
【図8】インナーカバーをヘッドパイプの側から見た斜視図である。
【図9】超磁歪アクチュエータの取り付け状態をインナーカバーの上方から見た図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態の自動二輪車両の右側面図である。
【図11】タンクカバーを燃料タンクの側から見た平面図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態のスクータ型車両の左側面図である。
【図13】フロントカバーをヘッドパイプの側から見た斜視図である。
【図14】フロントカバーにおける超磁歪アクチュエータの取付け部を示す断面図である。
【図15】ケースカバーをユニットスイングエンジンの内側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0079】
1 スクータ型車両
26 操向ハンドル
27 ヘッドパイプ
31 乗員用シート
34 車体カバー
60 スクリーン(カバー部材)
60c 取付け部
68 音響装置
90 超磁歪アクチュエータ(振動子)
221 インナーカバー(カバー部材)
223 取付け部
268 音響装置
350 タンクカバー(カバー部材)
350c、350d 取付け部
368 音響装置
421 フロントカバー(カバー部材)
421d 取付け部
436 雌ねじ部(ねじ部)
468 音響装置
F 車体フレーム
E エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム、エンジンまたは車載部品を覆うカバー部材を備えた車両の音響装置において、
前記カバー部材のうち乗員の前方に配置したカバー部材に、当該カバー部材の取付け部から離れた位置に振動子を直接固定し、前記カバー部材を振動させることにより前記カバー部材から音を発生させること、
を特徴とする車両における音響装置。
【請求項2】
前記カバー部材が防風機能を有するスクリーンまたはレッグシールドであること、
を特徴とする請求項1に記載の車両における音響装置。
【請求項3】
前記カバー部材が樹脂製の外装部品であること、
を特徴とする請求項1または2記載の車両における音響装置。
【請求項4】
前記振動子が前記取付け部から所定の間隔だけ離れた位置に配置されたこと、
を特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両における音響装置。
【請求項5】
前記カバー部材が板状であり、
前記振動子が板状カバー部材に垂直に取り付けられること、
を特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両における音響装置。
【請求項6】
前記カバー部材が当該カバー部材の取付け部から離れた位置にねじ部を備え、
前記振動子が前記ねじ部に螺合されること、
を特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両における音響装置。
【請求項7】
前記振動子が超磁歪アクチュエータであること、
を特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の車両における音響装置。
【請求項8】
前記振動子が前記車両の走行ハンドル近傍のカバー部材に、当該カバー部材の取付け部から離れて視界の妨げとならない位置に取り付けられること、
を特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の車両における音響装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−126007(P2010−126007A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303249(P2008−303249)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】