説明

車両のアルミ製サスペンションメンバ

【課題】排気管を通すための切欠きによる剛性の低下を抑えることができる車両のアルミ製サスペンションメンバを提供すること。
【解決手段】アルミニウム合金によって一体成形され、略水平な上壁4Aと、該上壁4Aの前端縁と後端縁からそれぞれ下方に延びる前壁4B及び後壁4Cによって下方が開放された断面形状を有し、前記前壁4Bの下端の一部に排気管15が通過するための切欠き16が形成された車両のアルミ製サスペンションメンバ4において、前記切欠き16を略半円形とし、前記前壁4Bから離間した前方に、前記切欠き17の周縁に沿う上下方向の補強リブ17を前記前壁4Bに略平行に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンルームの下方に配置されて左右のサスペンションアームを揺動可能に支持するためのアルミ製サスペンションメンバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンルームの下方に配置されるサスペンションメンバは、左右のサスペンションアームを上下に揺動可能に支持するとともに、エンジンルームの左右両側に車両前後方向に沿って配置された一対のエプロンサイドメンバを連結して車体の剛性を高めるための部材である。
【0003】
ところで、エンジンから車両後方へと延びる排気管がサスペンションメンバの下方を通過する場合、車両の最低地上高を確保するために、サスペンションメンバを上方へ屈曲させ、その屈曲部に排気管を通して両者の干渉を防ぐようにしている。
【0004】
ところが、上述のようにサスペンションメンバを上方へ屈曲させると、該サスペンションメンバの剛性が低下し、車体全体の剛性も低下して車両の走行安定性を向上させることができないという問題が発生する。このため、例えば特許文献1には、板金製のサスペンションメンバの左右両側端部間に補強部材を架設することによって、サスペンションメンバの剛性を高める提案がなされている。
【0005】
他方、軽量化や生産性向上等の目的のためにサスペンションメンバを軽量なアルミニウム合金で鋳造(ダイキャスト等)によって一体成形することも行われている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−215567号公報
【特許文献2】特許第3175523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1において提案されているようにサスペンションメンバの左右両側端部間に補強部材を架設する構成を採用すると、部品点数と組付工数が増加してコストアップを招くという問題がある。
【0008】
又、特許文献2に記載されているようなアルミ製サスペンションメンバにおいては、その本体部を閉断面構造とすることができないため、本体部の一部に排気管との干渉を避けるための切欠きを形成すると、この切欠きによって剛性が著しく低下するという問題がある。この問題を解決するためには、特許文献1に提案されているように補強部材を追加すれば良いが、アルミ製サスペンションメンバを使用する本来の目的は軽量化と生産性向上等であり、別部材である補強部材を追加することはその目的に反することになる。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、排気管を通すための切欠きによる剛性の低下を抑えることができる車両のアルミ製サスペンションメンバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、アルミニウム合金によって一体成形され、略水平な上壁と、該上壁の前端縁と後端縁からそれぞれ下方に延びる前壁及び後壁によって下方が開放された断面形状を有し、前記前壁の下端の一部に排気管が通過するための切欠きが形成された車両のアルミ製サスペンションメンバにおいて、
前記切欠きを略半円形とし、前記前壁から離間した前方に、前記切欠きの周縁に沿う上下方向の補強リブを前記前壁に略平行に形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記前壁から前記補強リブへと延びる延設部を形成し、前記補強リブを前記延設部の前端から上方に延びる上向きリブとして構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記前壁から前記補強リブへと延びる延設部を形成し、前記補強リブを前記延設部の前端から下方に延びる下向きリブとして構成したことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記前壁から前記補強リブへと延びる延設部を形成し、前記補強リブを前記延設部の前端から上方と下方にそれぞれ延びる上向きリブと下向きリブで構成し、該補強リブと前記前壁及び前記延設部によって前記切欠きの周縁の断面形状をH形としたことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記切欠きを車幅方向一端側に偏位した位置に形成するとともに、前記補強リブを前記切欠きが偏位した側の端部まで形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、アルミ製サスペンションメンバの前壁に形成された切欠きを略半円形としたため、該切欠き部の周縁における応力集中を防ぐことができる。又、切欠きの周縁に沿う上下方向の補強リブを前壁に略平行に形成したため、この補強リブによって切欠きの周縁の剛性が高められ、排気管を通すための切欠きをアルミ製サスペンションメンバに形成したことによる剛性の低下を抑えることができ、車両の走行安定性の向上を図ることができる。又、サスペンションメンバの切欠きは排気管の上方に設けられるために排気管からの熱を受けるが、補強リブによって放熱面積が増えるために切欠きの周縁の過熱が抑えられる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、アルミ製サスペンションメンバの前壁から補強リブへと延びる延設部によって切欠き部の剛性が高められる。又、上向きリブは排気管とは逆方向に延びるため、その大きさを比較的大きく設定して切欠きの周縁の剛性を効果的に高めることができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、アルミ製サスペンションメンバの延設部の前端から下方に延びる下向きリブの成形が容易化するとともに、成形型の構成を簡易化することができる。又、延設部を前壁の下端より若干上に配置し、前壁の下端部と下向きリブによって溝形状を形成することができ、この溝形状によって切欠きの周縁の剛性を一層効果的に高めることができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、切欠きの周縁の剛性向上を図るために必要な上向きリブと下向きリブの高さを低く抑えることができ、当該サスペンションメンバの成形型が簡略化して成形が容易化する。そして、上向きリブと下向きリブの高さを低く抑えても、これらの上向きリブと下向きリブによって切欠きの周縁の剛性を高めることができる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、補強リブを車幅方向において切欠きが偏位した側の端部、つまり当該サスペンションメンバの車体への取付部の近傍となる剛性の高い端部まで形成したため、切欠きの周縁の剛性が一層効果的に高められる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車両の車体前部構造を示す側面図である。
【図2】車両のサスペンション系の構成を示す分解斜視図である。
【図3】サスペンションメンバの平面図である。
【図4】サスペンションメンバの底面図である。
【図5】サスペンションメンバの正面図である。
【図6】図5のA−A線断面図である。
【図7】サスペンションメンバの左側面図である。
【図8】サスペンションアーム取付構造を示す分解斜視図である。
【図9】サスペンションアームの組付要領を示す取付部を斜め下方から見た斜視図である。
【図10】サスペンションアーム取付構造を示す部分側断面図である。
【図11】本発明の別実施形態を示す図6と同様の図である。
【図12】本発明の別実施形態を示す図6と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は車両の車体前部構造を示す側面図、図2は同車両のサスペンション系の構成を示す分解斜視図、図3はサスペンションメンバの平面図、図4は同サスペンションメンバの底面図、図5は同サスペンションメンバの正面図、図6は図5のA−A線断面図、図7は同サスペンションメンバの左側面図、図8は本発明に係るサスペンションアーム取付構造を示す分解斜視図、図9はサスペンションアームの組付要領を示す取付部を斜め下方から見た斜視図、図10はサスペンションアームの取付構造を示す部分側断面図である。
【0023】
図1に示すように、車両前部のエンジンルームSには左右一対のエプロンサイドメンバ1(図1には一方のみ図示)が車両前後方向(図1の左右方向)に沿って配設されており、これらのエプロンサイドメンバ1の下方には左右一対のエプロンロアメンバ2(図1には一方のみ図示)が車両前後方向に沿って配設されている。そして、左右一対のエプロンロアメンバ2の前端には、車幅方向(図1の紙面垂直方向)に配されたラジエータサポートロアメンバ3が架設されており、同エプロンロアメンバ2の後端にはエンジンルームSの下部に配置されたサスペンションメンバ4が連結されている。
【0024】
上記各エプロンサイドメンバ1は、前後の第1及び第2水平部1A,1Bと両水平部1A,1Bを連結する斜めの傾斜部1Cとで構成されており、その前端には変形することによって衝撃を吸収するクラッシュボックス5が取り付けられている。そして、左右の各クラッシュボックス5の前端には、車幅方向に沿う上下一対のパイプ材6を有するアッパバンパメンバ7が連結されており、該アッパバンパメンバ7の車両前方にはバンパフェイシア8が配設されている。
【0025】
又、左右一対の前記クラッシュボックス5の車幅方向内面には垂直に延びるランプサポートブレース9がそれぞれ取り付けられており、両ランプサポートブレース9の前端には、車幅方向に沿う上下一対のパイプ材10を有するロアバンパメンバ11が連結されており、該ロアバンパメンバ11の車両前方にはバンパフェイシア12が配設されている。ここで、バンパフェイシア8とバンパフェイシア12はラジエータ用の空気取入口を間に配置して一体に形成されている。
【0026】
次に、前記サスペンションメンバ4の構成を図2〜図7に基づいて以下に説明する。
【0027】
サスペンションメンバ4は、アルミニウム合金による鋳造(ダイキャスト等)によって一体成形される部材であって、略水平な上壁4Aと、該上壁4Aの前端縁と後端縁からそれぞれ略垂直下方に延びる前壁4B及び後壁4Cによって下方が開放された断面形状を有している。ここで、図2及び図5に示すように、サスペンションメンバ4の前壁4Bの中央にはトルクロッド13(図2参照)が貫通するための矩形の貫通孔14が形成され、図5に示すように、前壁4Bの車幅方向中央から右側に偏位した位置には、不図示のエンジンから車両後方へと延びる排気管15が通過するための半円状の切欠き16が形成されている。
【0028】
ここで、前壁4Bから離間した前方には、図6に示すように、前記切欠き16の周縁に沿って配置され、上下方向に立設された補強リブ17が前壁4Bに略平行に形成されている。具体的には、前壁4Bから補強リブ17へと延びる円弧曲面状の延設部4aが前壁4Bの下端よりも若干上方で切欠き16の周縁に沿って形成され、前記補強リブ17は、前記延設部4aの前端から上方と下方にそれぞれ延びる上向きリブ17aと下向きリブ17bで構成されている。そして、このように上向きリブ17aと下向きリブ17bとで構成された補強リブ17と前壁4B及び延設部4aによって切欠き16の周縁の断面形状がH形とされている。
【0029】
又、前述のように(図5参照)、切欠き16はサスペンションメンバ4の前壁4Bの車幅方向中央から右側に偏位した位置に形成されているが、前記補強リブ17は、切欠き16が偏位した側である右側(図5においては左側)の端部(支柱4bの近傍となる剛性の高い端部)まで形成されている。詳細には、右側(図5においては左側)の端部は、剛性の比較的高い後述するサスペンションアーム30の前側取付部にまで達している。より詳細には、サスペンションアーム30の前側取付部のボス4gに右側の端部は接続されている。そして、反対側である左側は、トルクロッド13が貫通する貫通孔14の左右両側に配置されたネジ孔が形成されて比較的剛性の高いボスに部分にまで形成されている。尚、このネジ孔には、トルクロッド13の後端部の大径ブッシュをサスペンシュンメンバ4へ取り付ける連結プレートの前端が締め付け固定される。
【0030】
他方、アルミ製サスペンションメンバ4の上壁4Aの左右両端前側には車体取付部を構成する支柱4bがそれぞれ立設されており、図3及び図4に示すように、各支柱4bの上端部には円孔状のボルト挿通孔18がそれぞれ上下方向に貫設されている。又、サスペンションメンバ4の上壁4Aの左右両端の後端角部には同じく車体取付部を構成する取付座4c(図3参照)が形成されており、図3及び図4に示すように、各取付座4cには円孔状のボルト挿通孔19がそれぞれ上下方向に貫設されている。
【0031】
而して、サスペンションメンバ4は、左右の前記支柱4bに形成されたボルト挿通孔18に下方から挿通するボルト20(図2参照)を図1に示す左右一対の各エプロンサイドメンバ1の第1水平部1Aの後端下面に締め付けるとともに、前記取付座4cに形成されたボルト挿通孔19に下方から挿通するボルト21(図2参照)を図1に示すように左右一対の各エプロンサイドメンバ1の斜面部1Cの後端に締め付けることによって、左右のエプロンサイドメンバ1に取り付けられる。
【0032】
ところで、サスペンションメンバ4の上部には図2に示すスタビライザ22とステアリングギヤボックス23が取り付けられるが、サスペンションメンバ4の上壁4Aの左右には、図2及び図3に示すように、スタビライザ22を取り付けるための取付座4dが形成され、これらの車両前方の左右にはステアリングギヤボックス23を取り付けるための取付座4e,4fが形成されている。そして、各取付座4dには各2つのネジ孔24が形成され、取付座4eには2つのネジ孔25、各取付座4fには各1つのネジ孔25がそれぞれ形成されている。
【0033】
而して、図2に示すように、スタビライザ22は、押え部材26に挿通する各2本のボルト27をサスペンションメンバ4の上壁4Aに形成された取付座4dのネジ孔24にねじ込むことによって左右2箇所がサスペンションメンバ4の上壁4Aに車幅方向に沿って取り付けられる。又、ステアリングギヤボックス23は、2本のボルト28をサスペンションメンバ4の取付座4eのネジ孔25にねじ込むとともに、各2本のボルト29をサスペンションメンバ4の上壁4Aに形成された取付座4fのネジ孔25にねじ込むことによって左右2箇所がサスペンションメンバ4の上壁4Aの上面に車幅方向に沿って取り付けられる。
【0034】
又、図2、図8及び図9に示すように、サスペンションメンバ4の左右両端には平面視Y字状を成す左右一対のサスペンションアーム30(図には一方のみ図示)の内端部の前後が上下に揺動可能に取り付けられる。尚、左右の各サスペンションアーム30の外側端部は、ボールジョイント31を介して不図示の前輪ナックルに回動可能に枢着されており、各前輪ナックルには左右の不図示の各前輪がそれぞれ回転可能に支持されるとともに、前記ステアリングギヤボックス23から左右に延びるタイロッド32の端部がボールジョイント33を介して連結されている。
【0035】
ここで、サスペンションアーム30の取付構造について説明する。
【0036】
サスペンションメンバ4の左右両端部の各前方部分には、図4、図7〜図10に示すように、前後2つのボス4gが一体に形成されており、各ボス4gの下面は平坦な下向きの取付面4g−1を構成している。そして、各ボス4gにはネジ孔34がそれぞれ上下方向に貫設されている。そして、図10に示すように、サスペンションメンバ4の左右両端の各前方部分に前後に形成された取付面4g−1の間には凹部35が形成されており、該凹部35には、取付面4g−1に対して垂直方向に延びるリブ4hが一方のボス4gに接近した状態で立設されている。リブ4hは、その先端が後述するブッシュ38の外筒38Bよりもブッシュ38の軸38Aに接近する高さに立設され、ブッシュ38が取り付けられた状態でリブ4hの先端は、外筒38Bの側方(ブッシュ38の軸方向の側方)に配置される。ここで、図4及び図7に示すように、サスペンションメンバ4の左右の取付面4g−1は、当該サスペンションメンバ4の車体への取付部である左右の前記支柱4bの近傍に形成されている。詳細には、後側に形成されたボス4gは、前記支柱4bの直下に形成されており、ボス4gに形成されたネジ孔34は、その上側開口を前記支柱4b内に配置している。
【0037】
又、図7〜図9に示すように、サスペンションメンバ4の左右両端の各後方部には偏平な矩形筒状の取付部4Dがそれぞれ形成されており、図8に示すように、各取付部4Dの底面には円孔状のボルト挿通孔36が形成され、上面には円柱状のボス4iが一体に立設されている。そして、各ボス4iにはネジ孔37が上下方向に貫設されている。
【0038】
他方、図8に示すように、左右の各サスペンションアーム30(図8には一方のみ図示)の車幅方向内端部の前側には車両前後方向に開口する円筒状のボス30aが一体に形成されており、このボス30aにはブッシュ38が車両前後方向に圧入されている。ここで、ブッシュ38は、図10に示すように、サスペンションメンバ4に固定される軸38A及び外筒38Bと、これらの軸38Aと外筒38Bの間に充填されたゴム等の弾性部材38Cとで構成されており、軸38Aの外筒38Bから突出する両端部には平坦な締付固定部38aが形成されている。そして、軸38Aの各締付固定部38aには円孔状のボルト挿通孔39がそれぞれ貫設されている。
【0039】
又、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の後側には円孔状の嵌合孔4jが形成されており、この嵌合孔4jにはブッシュ40が上下方向に圧入されている。尚、ブッシュ40は、図示しないが、内外二重筒状の内筒と外筒の間にゴム等の弾性部材を充填して構成されている。
【0040】
而して、各サスペンションアーム30は以下の要領によってサスペンションメンバ4に上下に揺動可能に取り付けられる。
【0041】
即ち、図8及び図9に示すように、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の前側に形成されたボス30aとこれに圧入されたブッシュ38をサスペンションメンバ4の前後2つの取付面4g−1間に形成された凹部35に嵌め込み(詳細には、ブッシュ38の外筒38Bを一方のボス4gとリブ4hの間に配置する)、ブッシュ38の軸38Aの両端に形成された平坦な締付固定部38aをサスペンションメンバ4の前後の取付面4g−1に下方から押し当て、該締付固定部38aに形成されたボルト挿通孔39に下方から挿通するボルト41をサスペンションメンバ4の取付面4g−1に形成されたネジ孔34にねじ込むことによって、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の前側がブッシュ38の軸38Aを中心として上下に揺動可能に取り付けられる。
【0042】
又、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の後側に形成された嵌合孔4jに圧入されたブッシュ40をサスペンションメンバ4に形成された矩形筒状の取付部4Dの内部に挿入し、取付部4Dの底面に形成されたボルト挿通孔36に下方から挿通するボルト42をブッシュ40の内筒に通し、このボルト42の先端をサスペンションメンバ4の取付部4Dの上面に立設されたボス4iのネジ孔37にねじ込むことによって、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の後側がブッシュ40の弾性部材の弾性変形によって上下に揺動可能に取り付けられる。
【0043】
以上において、本実施の形態では、サスペンションメンバ4の下方を通過するように排気管15が配置され、排気管15が通過するための切欠き16をアルミ製サスペンションメンバ4の前壁4Bに形成し、その形状を略半円形としたため、該切欠き16の周縁における応力集中を防ぐことができる。
【0044】
又、切欠き16の周縁に沿う上下方向の補強リブ17を前壁4Bに略平行に形成したため、この補強リブ17及び前壁4Bから補強リブ17へと延びる延設部4aによって切欠き16の周縁の剛性が高められ、排気管15を通すための切欠き16をアルミ製サスペンションメンバ4に形成することによる剛性の低下を抑えることができ、車両の走行安定性の向上を図ることができる。そして、本実施の形態では、補強リブ17を車幅方向において切欠き16が偏位した右側の端部、つまり当該サスペンションメンバ4の車体への取付部である支柱4bの近傍となる剛性の高い端部まで形成したため、切欠き16の周縁の剛性が一層効果的に高められる。
【0045】
特に、本実施の形態では、サスペンションメンバ4の前壁4Bから補強リブ17へと延びる円弧曲面状の延設部4aが前壁の下端よりも若干上方に形成され、補強リブ17は、延設部4aの前端から上方と下方にそれぞれ延びる上向きリブ17aと下向きリブ17bで構成され、この補強リブ17と前壁4B及び延設部4aによって切欠き16の周縁の断面形状がH形とされているため、切欠き16の周縁の剛性向上を図るために必要な上向きリブ17aと下向きリブ17bの高さを低く抑えることができ、当該サスペンションメンバ4の成形型が簡略化して成形が容易化する。そして、上向きリブ17aと下向きリブ17bの高さを低く抑えても、これらの上向きリブ17aと下向きリブ17bによって切欠き16の周縁の剛性を高めることができる。
【0046】
又、サスペンションメンバ4の切欠き16は排気管15の上方に設けられるために排気管15からの熱を受けるが、補強リブ17によって放熱面積が増えるために切欠き16の周縁の過熱が抑えられる。
【0047】
ところで、以上の実施の形態では、サスペンションメンバ4に前壁4Bから補強リブ17へと延びる延設部4aを形成し、この延設部4aの前端から上方と下方にそれぞれ延びる上向きリブ17aと下向きリブ17bによって補強リブ17を構成したが、図11に示すように、補強リブ17を延設部3aの前端から上方に延びる上向きリブ17aによって構成しても良い。このような構成によれば、上向きリブ17aは排気管15とは逆方向に延びるため、その大きさを比較的大きく設定して切欠き16の周縁の剛性を効果的に高めることができる。
【0048】
或いは、図12に示すように、補強リブ17を延設部4aの前端から下方に延びる下向きリブ17bによって構成しても良く、このような構成によれば、延設部4aの前端から下方に延びる下向きリブ17bの成形が容易化するとともに、成形型の構成を簡易化することができる。又、延設部4aを前壁4Bの下端より若干上に配置し、前壁4Bの下端部と下向きリブ17bによって溝形状を形成することができ、この溝形状によって切欠き16の周縁の剛性を一層効果的に高めることができる。
【0049】
更に、ブッシュ38の軸38Aに形成された締付固定部38aをサスペンションメンバ4の取付面4g−1に下方から締付固定することによってサスペンションアーム4を作業性良く組み付けることができるため、その組付性が高められる。
【0050】
又、本実施の形態では、サスペンションメンバ4の取付面4g−1を当該サスペンションメンバ4の剛性の高い車体への取付部である支柱4bの近傍に形成したため、サスペンションアーム30の取付剛性が更に高められる。
【0051】
更に、本実施の形態では、サスペンションメンバ4の左右両端の前方に形成された前後2つの取付面4g−1間の凹部35に、取付面4g−1に対して垂直方向に延びるリブ4hを立設したため、該リブ4hにブッシュ38の外筒38Bの端面が当接して該外筒38Bの軸方向の動きが規制される。このようにリブ4hがブッシュ38の外筒38Bの動きを規制するストッパとして機能するため、簡単な構成でブッシュ38の可動範囲を規制してサスペンションアーム30の動きを所望の性能とすることができる。又、アルミ製サスペンションメンバ4の成形時に成形型によって凹部35とリブ4hを同時に簡単に形成することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 エプロンサイドメンバ
4 アルミ製サスペンションメンバ
4A サスペンションメンバの上壁
4B サスペンションメンバの前壁
4C サスペンションメンバの後壁
4a サスペンションメンバの延設部
4b サスペンションメンバの支柱(取付部)
4g サスペンションメンバのボス
4g−1 サスペンションメンバの取付面
4h サスペンションメンバのリブ
15 排気管
16 切欠き
17 補強リブ
17a 上向きリブ
17b 下向きリブ
30 サスペンションアーム
35 サスペンションメンバの凹部
38 ブッシュ
38A ブッシュの軸
38B ブッシュの外筒
38C ブッシュの弾性部材
38a ブッシュの締付固定部
S エンジンルーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金によって一体成形され、略水平な上壁と、該上壁の前端縁と後端縁からそれぞれ下方に延びる前壁及び後壁によって下方が開放された断面形状を有し、前記前壁の下端の一部に排気管が通過するための切欠きが形成された車両のアルミ製サスペンションメンバにおいて、
前記切欠きを略半円形とし、前記前壁から離間した前方に、前記切欠きの周縁に沿う上下方向の補強リブを前記前壁に略平行に形成したことを特徴とする車両のアルミ製サスペンションメンバ。
【請求項2】
前記前壁から前記補強リブへと延びる延設部を形成し、前記補強リブを前記延設部の前端から上方に延びる上向きリブとして構成したことを特徴とする請求項1記載の車両のアルミ製サスペンションメンバ。
【請求項3】
前記前壁から前記補強リブへと延びる延設部を形成し、前記補強リブを前記延設部の前端から下方に延びる下向きリブとして構成したことを特徴とする請求項1記載の車両のアルミ製サスペンションメンバ。
【請求項4】
前記前壁から前記補強リブへと延びる延設部を形成し、前記補強リブを前記延設部の前端から上方と下方にそれぞれ延びる上向きリブと下向きリブで構成し、該補強リブと前記前壁及び前記延設部によって前記切欠きの周縁の断面形状をH形としたことを特徴とする請求項1記載の車両のアルミ製サスペンションメンバ。
【請求項5】
前記切欠きを車幅方向一端側に偏位した位置に形成するとともに、前記補強リブを前記切欠きが偏位した側の端部まで形成したことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の車両のアルミ製サスペンションメンバ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−81882(P2012−81882A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230196(P2010−230196)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】