説明

車両のサイドドア構造

【課題】 サイドドアに車両前方からの衝撃が加わった場合にも円滑なサイドドアの開放性能を確保する。
【解決手段】 車両前方からの衝撃を受けたサイドドア1の後端が衝突するピラー前側面4aの中間部412よりも車両外方に位置するピラー前側面4aの外側部413を車両外方へ向いて傾斜する面取り形状として、上記外側部413を、衝撃により後方へ変位したサイドドア1後端の開放軌跡外に位置させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のサイドドア構造に関し、特に、サイドドアの開放性能を確保するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図4にはバン型車両のボデーの概略側面を示す。図4において、サイドドア1は前縁の上下位置に設けたヒンジ部材13に支持されてドア後縁を車両内外方向へ回動開閉できるようになっている。サイドドア1の後端部内にはラッチ機構3が内設され、一方、これに対向するピラー4の前縁にはストライカ5が突設されて、ドア閉鎖時にはラッチ機構3がストライカ5と係合することによりサイドドア1の閉鎖状態が保持されるようになっている。サイドドア1内には上下の中間位置に前後方向へ横断してインパクトビーム2が設けられて、車両側方から衝撃が加わった場合に、サイドドア1が車両内方に向けて変形するのを防止している。
【0003】
これをさらに詳細に説明すると、図5に示すように、サイドドア1はアウタパネル11とインナパネル12によって中空構造となっており、ドア1内にはインパクトビーム2が車両前後方向へ配設されている。ピラー4は、サイドドア1の後端面1aと内側面1bに沿って屈曲成形されたアウタパネル41と、これの前縁に接合されたインナパネル42とで上下方向へ延びる中空構造となっており、ピラー4の空間内にはアウタパネル41に沿ってリーンホースメント(R/F)パネル43が配設されて、その前縁がアウタパネル41とインナパネル42の前縁間に接合されている。ここで、ピラー4の前側面4aは内側部411、中間部412および外側部413が、サイドドア1の後端面1aに対して略平行な連続する平面状になっている。
【0004】
なお、特許文献1には、ピラーの前側面に対向するサイドドアの後端面を車体内側に向けることによってサイドドアの開放性能を確保するようにした構造が示されている。
【特許文献1】特開2001−310629
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の構造において、車両前方からの衝撃を受けてサイドドア1が後方のピラー4に向けて変位しこれに衝突すると、図6に示すように、インパクトビーム2で押されたピラー前側面4aの中間部412が凹状に変形し、ピラー前側面4aの外側部413が相対的に大きく前方へ進出する。このため、図6の矢印方向へサイドドア1を開放しようとすると、上記外側部413がドア後端面1aの開放軌跡内に位置してサイドドア1の円滑な開放が妨げられるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、サイドドアに車両前方からの衝撃が加わった場合にも円滑なサイドドアの開放性能を確保できる車両のサイドドア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、車両前方からの衝撃を受けたサイドドア(1)の後端が衝突するピラー前側面(4a)の一の部分(412)よりも車両外方に位置するピラー前側面(4a)の他の部分(413)を車両外方へ向いて傾斜する面取り形状として、上記他の部分(413)を、衝撃により後方へ変位したサイドドア(1)後端の開放軌跡の外に位置させるようにした。
【0008】
本発明において、車両前方からの衝撃を受けてサイドドアが後方のピラーへ向けて変位し、ピラー前側面の一の部分に衝突すると、当該一の部分は凹状に変形するが、これよりも車両外方に位置するピラー前側面の他の部分は面取り形状となっているため、変形後も変位したサイドドア後端の開放軌跡外に位置させられる。これにより、サイドドアの円滑な開放が保証される。
【0009】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明の車両のサイドドア構造によれば、サイドドアに車両前方からの衝撃が加わった場合にも円滑なサイドドアの開放性能を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1には閉鎖状態における車両サイドドア1の後端部の断面図を示し、従来例を示す図5に対応するものである。図1において、サイドドア1はアウタパネル11とインナパネル12によって中空構造となっており、ドア1内にはインパクトビーム2が車両前後方向へ配設されている。ピラー4は、サイドドア1の後端面1aと内側面1bに沿って屈曲成形されたアウタパネル41と、これの前縁に接合されたインナパネル42とで上下方向へ延びる中空構造となっており、ピラー4の空間内にはアウタパネル41に沿ってリーンホースメント(R/F)パネル43が配設されて、その前縁がアウタパネル41とインナパネル42の前縁間に接合されている。R/Fパネル43の内側面にはアウタパネル441とインナパネル442を衝合して閉断面構造としたバルクヘッド44が接合されている。
【0012】
ここで、ピラー前側面4aの中間部412よりも車両外側に位置する外側部413において、アウタパネル41、R/Fパネル43、およびバルクヘッド44のアウタパネル441は、図2に示すように車両外側へ向く傾斜面を形成するように屈曲させられて、面取り形状となっている。
【0013】
このようなサイドドア構造において、車両前方からの衝撃を受けて図3に示すようにインパクトビーム2を内設したサイドドア1が後方のピラー4へ向けて変位し、これに衝突すると、インパクトビーム2で押されたピラー前側面4aの中間部412は凹状に変形するが、面取り形状となったピラー前側面4aの外側部413は上記中間部412よりも前方へ大きく進出することはない。したがって、上記外側部413はドア後端面1aの開放軌跡外に位置させられて、サイドドア1の円滑な開放が保証される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示す、閉鎖状態のサイドドアの後端部付近の水平断面図である。
【図2】ピラー前側部を車両外方から見た斜視図である。
【図3】衝撃で変位したサイドドアの後端部付近の水平断面図である。
【図4】従来例を示すバン型車両のボデーの概略側面図である。
【図5】閉鎖状態のサイドドアの後端部付近の水平断面図で、図4のV−V線に沿った断面図である。
【図6】衝撃で変位したサイドドアの後端部付近の水平断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1...サイドドア、2...インパクトビーム、4...ピラー、4a...ピラー前側面、412...中間部、413...外側部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方からの衝撃を受けたサイドドアの後端が衝突するピラー前側面の一の部分よりも車両外方に位置する前記ピラー前側面の他の部分を車両外方へ向いて傾斜する面取り形状として、前記他の部分を、衝撃により後方へ変位した前記サイドドア後端の開放軌跡の外に位置させるようにしたことを特徴とする車両のサイドドア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−56339(P2006−56339A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239086(P2004−239086)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】