説明

車両のトレイ構造

【課題】 乗用車等の車両において、インストルメントパネルにトレイを備え、トレイにミラーを備える場合、トレイ及びミラーの操作性を良いものにする。
【解決手段】 上面に凹部3aを備えたトレイ3をインストルメントパネルに備え、トレイ3の下部の車体左右方向の軸芯P1周りに、ミラー4を姿勢変更自在に支持する。ミラー4をトレイ3の下部に沿った格納姿勢B1に操作した状態において、ミラー4と一緒にトレイ3を、インストルメントパネルから引き出した引き出し姿勢A1、及びインストルメントパネル1に押し込んだ押し込み姿勢A2に、スライド操作自在に構成する。トレイ3の引き出し姿勢A1において、ミラー4をトレイ3の下部の車体左右方向の軸芯P1周りに姿勢変更自在に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車等の車両において、インストルメントパネルに備えられるトレイの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の車両においては、例えば特許文献1に開示されているような構造を備えたものがある。
特許文献1では、インストルメントパネルに備えられるグローブボックス (特許文献1の第1図及び第2図の2)において、ヒンジ部(特許文献1の第1図及び第2図の5)を介して、蓋(特許文献1の第1図及び第2図の3)が開閉自在に支持されており、グローブボックスの蓋の内面に凹部(特許文献1の第1図及び第2図の7)が形成されて、グローブボックスの蓋の凹部を小物置きとして使用することができる(グローブボックスの蓋部をトレイとして使用することができる) (特許文献1の第1図参照)。
グローブボックスの蓋において、ヒンジ部(特許文献1の第1図及び第2図の8)を介して、グローブボックスインナー扉(特許文献1の第1図及び第2図の9)が開閉自在に支持されており、グローブボックスインナー扉の内面にミラー(特許文献1の第1図及び第2図の10)が取り付けられている。
【0003】
これによって、グローブボックスインナー扉をグローブボックスの蓋の凹部に入り込むように閉じ操作しておくことにより (特許文献1の第3図の(ロ)参照)、グローブボックスの蓋の開閉操作を行うことができる(特許文献1の第3図の(イ)(ロ)参照)。グローブボックスの蓋を開き操作した状態で、グローブボックスインナー扉を開き操作することにより、グローブボックスの蓋をトレイとして使用することができるのであり、グローブボックスインナー扉のミラーを使用することができる(特許文献1の第1図及び第3図の(ハ)参照)。
【0004】
【特許文献1】実開昭59−133343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、グローブボックスインナー扉をグローブボックスの蓋の凹部に入り込むように閉じ操作した状態で、グローブボックスの蓋の開閉操作を行うので、グローブボックスの蓋を開き操作しただけでは、グローブボックスの蓋をトレイとして使用することができない(グローブボックスインナー扉がグローブボックスの蓋の凹部に入り込むように閉じ操作されていることによる)(特許文献1の第3図の(ロ)参照)。
これによりグローブボックスの蓋をトレイとして使用する為には、この後にグローブボックスインナー扉を開き操作する必要があるので(特許文献1の第3図の(ハ)参照)、トレイの使用時の操作性と言う面で改善の余地がある。
【0006】
前述のように、グローブボックスの蓋を開き操作し、グローブボックスインナー扉を開き操作して、グローブボックスの蓋をトレイとして使用する場合、グローブボックスインナー扉が開き操作されて下方後方に延びた状態となっているので (特許文献1の第2図及び第3図(ハ)参照)。グローブボックスの蓋をトレイとして使用する際に、グローブボックスインナー扉が邪魔になる可能性がある。
【0007】
本発明は、乗用車等の車両において、インストルメントパネルにトレイを備え、トレイにミラーを備える場合、トレイ及びミラーの操作性を良いものにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、車両のトレイ構造において次のように構成することにある。
上面に凹部を備えたトレイを、インストルメントパネルに備える。トレイの下部の車体左右方向の軸芯周りに、ミラーを姿勢変更自在に支持する。ミラーをトレイの下部に沿った格納姿勢に操作した状態において、ミラーと一緒にトレイを、インストルメントパネルから引き出した引き出し姿勢、及びインストルメントパネルに押し込んだ押し込み姿勢にスライド操作自在に構成する。トレイの引き出し姿勢において、ミラーをトレイの下部の車体左右方向の軸芯周りに姿勢変更自在に構成する。
【0009】
(作用)
本発明の第1特徴によると、上面に凹部を備えたトレイにおいて、トレイの下部にミラーを支持している。
これにより、ミラーをトレイの下部に沿った格納姿勢に操作した状態において、トレイ及びミラーを引き出し姿勢にスライド操作すると、トレイの凹部がそのまま露出するので(トレイの凹部にミラーが入り込んでいないので)、ミラーを格納姿勢から操作しなくても、トレイの凹部を小物置きやドリンクホルダとして使用することができる。
【0010】
本発明の第1特徴によると、前述のようにトレイの凹部を小物置きやドリンクホルダとして使用する場合、ミラーを格納姿勢に残しておくことができるので、トレイからミラーが下方後方に延びた状態とはならず、トレイの凹部を小物置きやドリンクホルダとして使用する際に、ミラーが邪魔になるようなことがない。
【0011】
本発明の第1特徴によると、トレイ及びミラーを引き出し姿勢にスライド操作した後、トレイの下部の車体左右方向の軸芯周りに、ミラーを格納姿勢から姿勢変更して、ミラーの姿勢を適切に設定することにより、ミラーを支障なく使用することができる。
【0012】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、乗用車等の車両において、インストルメントパネルにトレイを備え、トレイにミラーを備える場合、トレイ及びミラーを引き出し姿勢にスライド操作すると、ミラーを格納姿勢から操作しなくても、トレイの凹部を小物置きやドリンクホルダとして使用することができる点、並びに、トレイの凹部を小物置きやドリンクホルダとして使用する際に、トレイからミラーが下方後方に延びた状態とはならず、ミラーが邪魔になるようなことがない点により、トレイの操作性を良いものにすることができた。
【0013】
本発明の第1特徴によると、トレイ及びミラーを引き出し姿勢にスライド操作した後、ミラーを格納姿勢から姿勢変更して、ミラーの姿勢を適切に設定することにより、ミラーを支障なく使用することができて、ミラーの操作性を良いものにすることができた。
【0014】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の車両のトレイ構造において次のように構成することにある。
トレイの引き出し姿勢において、ミラーをトレイの下部の車体上下方向の軸芯周りに姿勢変更自在に構成する。
【0015】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、トレイ及びミラーを引き出し姿勢にスライド操作した状態において、ミラーをトレイの下部の車体左右方向の軸芯周りに姿勢変更することができるのに加えて、ミラーをトレイの下部の車体上下方向の軸芯周りに姿勢変更することができる。これにより、ミラーの姿勢変更の自由度が大きくなり、ミラーを適切な姿勢に設定し易くなる。
【0016】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、ミラーの姿勢変更の自由度が大きくなり、ミラーを適切な姿勢に設定し易くなって、ミラーの操作性を良いものにすることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は車両の一例である乗用車のインストルメントパネル1を示しており、インストルメントパネル1のセンタークラスタ2の部分に、トレイ3が備えられている。インストルメントパネル1の内部に備えられたスライド機構 (図示せず)により、トレイ3はインストルメントパネル1から引き出した引き出し姿勢A1 (図3(b)参照)、及びインストルメントパネル1に押し込んだ押し込み姿勢A2 (図3(a)参照)に、スライド操作自在に構成されている。
【0018】
図3(a)に示す押し込み姿勢A2のトレイ3において、トレイ3を少し押し込むと、内部のロック機構 (図示せず)が解除されて、トレイ3が少し飛び出るので、飛び出たトレイ3を手で持って、図3(b)に示す引き出し姿勢A1に引き出す(スライド操作する)。図3(b)に示す引き出し姿勢A1のトレイ3において、トレイ3を図3(a)に示す押し込み姿勢A2に押し込むと(スライド操作すると)、前述のロック機構が作動してトレイ3が押し込み姿勢A2に保持される。
【0019】
図2及び図4(a)に示すように、トレイ3は上部に凹部3aを備えた四角の箱状に構成されており、トレイ3の下部に右及び左の横壁部3b、前壁部3cが備えられ、右及び左の横壁部3b、前壁部3cによって囲まれた上下幅の小さい凹部3d(車体後方(図2の紙面左方)は開放)が、トレイ3の下部に備えられている。
【0020】
図2,3(c),4(a)に示すように、四角の平板状のミラー4が備えられ、ミラー4を支持する支持部材5が備えられている。支持部材5の右及び左のボス部5aにミラー4の支持軸4aが挿入されて、支持部材5の横軸芯P1(トレイの下部の車体左右方向の軸芯に相当)周りにミラー4が回転自在に支持されており、支持部材5の右及び左のボス部5aとミラー4の支持軸4aとの間の摩擦力により、支持部材5に対してミラー4を横軸芯P1周りの任意の姿勢に保持することができる。
【0021】
図2,3(c),4(a)に示すように、トレイ3の凹部3dにおいて、車体後方側部分(図4(a)の紙面左側部分)に、車体前方 (図4(a)の紙面右方)に突出する平板状の支持部3eが備えられて、支持部材5の中央部に備えられた支持軸5bが、トレイ3の支持部3eの縦軸芯P2 (トレイの下部の車体上下方向の軸芯に相当)周りに回転自在に支持されており、支持部材5の支持軸5bとトレイ3の凹部3dとの間の摩擦力によって、支持部材5(ミラー4)を縦軸芯P2周りの任意の姿勢に保持することができる。
【0022】
図2,3(a),4(a)に示す状態は、ミラー4をトレイ3の下部に沿った格納姿勢B1に操作した状態で、ミラー4の鏡面4bが車体下方に向いた状態である。この状態において、トレイ3(ミラー4)を押し込み姿勢A2にスライド操作した状態である。押し込み姿勢A2のトレイ3(ミラー4)において、トレイ3(ミラー4)の車体後方側面(図3(a)及び図4(a)の紙面左側面)と、インストルメントパネル1(センタークラスタ2)の外面とは略面一の状態となる。
【0023】
図3(b)に示すように、前述のようにしてトレイ3(ミラー4)を引き出し姿勢A1にスライド操作すると、トレイ3の凹部3aがそのまま露出するので、ミラー4を格納姿勢B1から操作しなくても、トレイ3の凹部3aを小物置きやドリンクホルダとして使用することができる。
【0024】
この場合、図3(b)に示すように、ミラー4を格納姿勢B1に残しておくことができるので(ミラー4を格納姿勢B1に残しておいても、トレイ3の凹部3aを小物置きやドリンクホルダとして使用することができるので)、トレイ3からミラー4が下方後方に延びた状態とはならず、トレイ3の凹部3aを小物置きやドリンクホルダとして使用する際に、ミラー4が邪魔になるようなことがない。
【0025】
図3(c)及び図4(b)に示すように、トレイ3(ミラー4)を引き出し姿勢A1にスライド操作した後、支持部材5(トレイ3)の横軸芯P1周りに、ミラー4を格納姿勢B1から姿勢変更することにより、ミラー4の鏡面4bが車体上方 (図3(c)及び図4(b)の紙面上方)を向く。次に図3(c)に示すように、トレイ3の縦軸芯P2周りにミラー4(支持部材5)を姿勢変更することにより、ミラー4を適切な姿勢に設定することができる。
【0026】
トレイ3を引き出し姿勢A1から押し込み姿勢A2にスライド操作する場合、図3(c)から図3(b)に示すように、ミラー4を格納姿勢B1に操作した後、前述及び図3(a)に示すように、トレイ3(ミラー4)を押し込み姿勢A2に押し込むと(スライド操作すると)、前述のロック機構が作動してトレイ3(ミラー4)が押し込み姿勢A2に保持される。
【0027】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]のトレイ3に代えて、図5に示すように、トレイ3の右及び左の横壁部3b、前壁部3cを廃止し、ミラー4の車体左右方向の幅をトレイ3の車体左右方向の幅と略同じになるように構成してもよい。
【0028】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]の支持部材5に代えて、図6及び図7に示すように、支持部材5の右及び左のボス部5aに亘って後壁部5cを備えてもよい。このように構成すると、押し込み姿勢A2のトレイ3(ミラー4)において (図3(a)及び図4(a)参照)、ミラー4 (格納姿勢B1)の端辺部 (図6の紙面左側部)が支持部材5の後壁部5cによって隠される状態となる。
【0029】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態][発明の実施の第2別形態]のトレイ3、ミラー4及び支持部材5に代えて、図8(a)(b)に示すように構成してもよい。
図8(a)に示すように、トレイ3の支持部3eを車体後方 (図8(a)の紙面右方)に延ばし、トレイ3の支持部3eに車体前後方向 (図8(a)の紙面左右方向)に沿った長孔3fを形成して、支持部材5の支持軸5bをトレイ3の長孔3fに沿って移動自在及び縦軸芯P2周りに回転自在に支持する。これにより、押し込み姿勢A2のトレイ3(ミラー4)において、ミラー4の鏡面4bが車体上方 (図8(a)紙面上方)のに向いた状態となる。
【0030】
図8(b)に示すように、トレイ3(ミラー4)を引き出し姿勢A1にスライド操作した後に、支持部材5を車体後方 (図8(b)の紙面左方)にスライド操作して、支持部材5(トレイ3)の横軸芯P1周りに、ミラー4を格納姿勢B1から姿勢変更することにより、ミラー4の鏡面4bが車体後方上方を向く。次にトレイ3の縦軸芯P2周りにミラー4(支持部材5)を姿勢変更することにより、ミラー4を適切な姿勢に設定することができる。
【0031】
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第3別形態]において、トレイ3(ミラー4)をインストルメントパネル1のセンタークラスタ2以外の部分(例えば助手席の車体前方の部分)に備えてもよく、トレイ3(ミラー4)を電動モータ (図示せず)により、引き出し姿勢A1及び押し込み姿勢A2にスライド操作するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】インストルメントパネル及びトレイ(押し込み姿勢)の付近の正面図
【図2】トレイ、ミラー及び支持部材の分解斜視図
【図3】(a)ミラーを格納姿勢に操作した状態で、トレイを押し込み姿勢にスライド操作した状態を示す斜視図、(b)ミラーを格納姿勢に操作した状態で、トレイを引き出し姿勢にスライド操作した状態を示す斜視図、(c)トレイを引き出し姿勢にスライド操作した後、ミラーを格納姿勢から姿勢変更した状態を示す斜視図
【図4】(a)ミラーを格納姿勢に操作した状態で、トレイを押し込み姿勢にスライド操作した状態を示す縦断側面図、(b)トレイを引き出し姿勢にスライド操作した後、ミラーを格納姿勢から姿勢変更した状態を示す縦断側面図
【図5】発明の実施の第1別形態において、トレイ、ミラー及び支持部材の斜視図
【図6】発明の実施の第2別形態において、トレイ、ミラー及び支持部材の縦断側面図
【図7】発明の実施の第2別形態において、支持部材の斜視図
【図8】発明の実施の第3別形態において、(a)ミラーを格納姿勢に操作した状態で、トレイを押し込み姿勢にスライド操作した状態を示す縦断側面図、(b)トレイを引き出し姿勢にスライド操作した後、ミラーを格納姿勢から姿勢変更した状態を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0033】
1 インストルメントパネル
3 トレイ
3a トレイの凹部
4 ミラー
A1 引き出し姿勢
A2 押し込み姿勢
B1 格納姿勢
P1 トレイの下部の車体左右方向の軸芯
P2 トレイの下部の車体上下方向の軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に凹部を備えたトレイを、インストルメントパネルに備え、
前記トレイの下部の車体左右方向の軸芯周りに、ミラーを姿勢変更自在に支持して、
前記ミラーをトレイの下部に沿った格納姿勢に操作した状態において、前記ミラーと一緒にトレイを、前記インストルメントパネルから引き出した引き出し姿勢、及び前記インストルメントパネルに押し込んだ押し込み姿勢に、スライド操作自在に構成し、
前記トレイの引き出し姿勢において、前記ミラーをトレイの下部の車体左右方向の軸芯周りに姿勢変更自在に構成してある車両のトレイ構造。
【請求項2】
前記トレイの引き出し姿勢において、前記ミラーをトレイの下部の車体上下方向の軸芯周りに姿勢変更自在に構成してある請求項1に記載の車両のトレイ構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate