車両のピラー構造及びその製造方法。
【課題】 ピラーの強度を確保しつつ、側面衝突時におけるピラーの変形を制御することができる車両のピラー構造及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 センタピラー構造1においては、センタピラー10の強度が脆弱部17及び脆弱部18で局所的に低くなっている。そのため、車両が側面衝突を受けた際には、センタピラー10が脆弱部17及び脆弱部18で折れ曲がり、相手方車両が略水平に移動することになる。これにより、相手方車両の移動によってセンタピラー10に生じる曲げモーメントを抑制することができるため、センタピラー10の強度を確保しつつ、側面衝突時におけるセンタピラー10の変形を制御することが可能となる。
【解決手段】 センタピラー構造1においては、センタピラー10の強度が脆弱部17及び脆弱部18で局所的に低くなっている。そのため、車両が側面衝突を受けた際には、センタピラー10が脆弱部17及び脆弱部18で折れ曲がり、相手方車両が略水平に移動することになる。これにより、相手方車両の移動によってセンタピラー10に生じる曲げモーメントを抑制することができるため、センタピラー10の強度を確保しつつ、側面衝突時におけるセンタピラー10の変形を制御することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に適用されるピラー構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が側面衝突を受けた際にピラーが局所的に変形するのを防止するためのピラー構造として、特許文献1には、衝突荷重分布と同様の強度分布を有するようにピラーの補強部材に焼入れ処理を施したものが開示されている。
【特許文献1】特開平10−17933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような従来のピラー構造にあっては、ピラーの強度を確保しつつ、側面衝突時におけるピラーの変形を制御することが極めて困難である。
【0004】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ピラーの強度を確保しつつ、側面衝突時におけるピラーの変形を制御することができる車両のピラー構造及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両のピラー構造は、第1の脆弱部、及び第1の脆弱部よりも上方に位置する第2の脆弱部を有するピラーを備えることを特徴とする。
【0006】
このピラー構造によれば、車両が側面衝突を受けた際に、第1の脆弱部及び第2の脆弱部の少なくとも2箇所でピラーが折れ曲がるため、ピラーに生じる曲げモーメントを抑制することができる。従って、このピラー構造によれば、ピラーの強度を確保しつつ、側面衝突時におけるピラーの変形を制御することが可能となる。
【0007】
本発明に係る車両のピラー構造は、第1の脆弱部と第2の脆弱部との間においてピラーから車幅方向外側に突出する凸部を備えることが好ましい。この構成によれば、車両が側面衝突を受けた際に、第1の脆弱部と第2の脆弱部との間の部分に外力を集中させることができ、当該部分を好適に変形させることが可能となる。
【0008】
本発明に係る車両のピラー構造においては、第1の脆弱部の強度は、第2の脆弱部の強度よりも低いことが好ましい。この構成によれば、車両が側面衝突を受けた際に、第1の脆弱部と第2の脆弱部との間の部分を、鉛直方向と略平行となるように変形させることが可能となる。
【0009】
本発明に係る車両のピラー構造においては、第1の脆弱部は、車幅方向外側からピラーに作用すると想定される外力の作用部分に対して下方に位置し、第2の脆弱部は、作用部分に対して上方に位置することが好ましい。この構成によれば、車両が側面衝突を受けた際に、第1の脆弱部と第2の脆弱部との間の部分を好適に変形させることが可能となる。
【0010】
本発明に係る車両のピラー構造においては、ピラーは、外郭部材、及び外郭部材内に配置された補強部材を有し、第1の脆弱部及び第2の脆弱部は、補強部材において脆弱化された部分によって実現されていることが好ましい。この構成によれば、ピラーに第1の脆弱部及び第2の脆弱部を容易に且つ確実に設けることができる。
【0011】
本発明に係る車両のピラー構造においては、第1の脆弱部及び第2の脆弱部の少なくとも一方には、ドアビームの端部が対応するように配置されていることが好ましい。この構成によれば、車両が側面衝突を受けた際に、第1の脆弱部や第2の脆弱部でピラーを確実に折り曲げさせることができる。
【0012】
本発明に係る車両のピラー構造においては、ピラーは、車幅方向外側から第1の脆弱部と第2の脆弱部との間の部分に外力が作用した場合に、第1の脆弱部と第2の脆弱部との間の部分の変位が最も大きくなるように構成されていることが好ましい。この構成によれば、例えば第1の脆弱部に対応する部分でピラーが折れ曲がって当該部分が車両のキャビン側に突出するのを抑制することができる。
【0013】
本発明に係る車両のピラー構造においては、ピラーは、外郭部材、及び外郭部材内に配置された補強部材を有し、補強部材においては、ドアのロアヒンジが取り付けられる部分の上側部分及び下側部分が非焼入れ部とされ、上側部分及び下側部分を除く部分が焼入れ部とされており、第1の脆弱部及び第2の脆弱部は、非焼入れ部によって実現されていることが好ましい。この構成によれば、補強部材においてロアヒンジが取り付けられる部分の上側部分及び下側部分を非焼入れ部とすることで、ピラーに第1の脆弱部及び第2の脆弱部を容易に且つ確実に設けることができる。そして、車両が側面衝突を受けた際には、ロアヒンジが取り付けられる部分の上側部分及び下側部分で補強部材が折れ曲がるため、補強部材に生じる曲げモーメントを抑制することができる。
【0014】
本発明に係る車両のピラー構造は、補強部材に焼入れ処理を施す際に、加熱された補強部材において非焼入れ部に対応する部分に比べ、焼入れ部に対応する部分に冷却水を流通させて製造されていることが好ましい。この場合、補強部材において焼入れ部に対応する部分の焼入れ密度よりも非焼入れ部に対応する部分の焼入れ密度が低下するため、補強部材においてドアのロアヒンジが取り付けられる部分の上側部分及び下側部分を確実に非焼入れ部とすることができる。
【0015】
このとき、本発明に係る車両のピラー構造は、補強部材において非焼入れ部に対応する部分を凸状に形成し、ホットスタンプ用の金型と焼入れ部に対応する部分との隙間よりも、金型と非焼入れ部に対応する部分との隙間を狭くすることにより、非焼入れ部に対応する部分に比べ、焼入れ部に対応する部分に冷却水を流通させて製造されていてもよい。或いは、本発明に係る車両のピラー構造は、ホットスタンプ用の金型において焼入れ部に対応する部分に冷却水供給孔を設け、金型において焼入れ部と非焼入れ部との境界部に対応する部分に冷却水排出孔を設けることにより、非焼入れ部に対応する部分に比べ、焼入れ部に対応する部分に冷却水を流通させて製造されていてもよい。これらの場合、補強部材において非焼入れ部に対応する部分への冷却水の流通が抑制されるため、補強部材においてドアのロアヒンジが取り付けられる部分の上側部分及び下側部分を簡便に且つ確実に非焼入れ部とすることができる。
【0016】
また、本発明に係る車両のピラー構造の製造方法は、外郭部材、及び外郭部材内に配置された補強部材を有するピラーを備えるピラー構造の製造方法であって、補強部材に焼入れ処理を施す際に、加熱された補強部材において、ドアのロアヒンジが取り付けられる部分の上側部分及び下側部分に比べ、上側部分及び下側部分を除く部分に冷却水を流通させることにより、上側部分及び下側部分を非焼入れ部とし、上側部分及び下側部分を除く部分を焼入れ部として、第1の脆弱部、及び第1の脆弱部よりも上方に位置する第2の脆弱部をピラーに設けることを特徴とする。
【0017】
このピラー構造の製造方法によれば、上述した本発明に係る車両のピラー構造を容易に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ピラーの強度を確保しつつ、側面衝突時におけるピラーの変形を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
【0020】
図1は、本発明に係る車両のピラー構造の第1実施形態としてのセンタピラー構造の分解斜視図であり、図2は、図1に示されるセンタピラー構造の側面図である。図1及び図2に示されるように、センタピラー構造1は、自動車等の車両においてロッカからルーフサイドレールに延在するアウタパネル(外郭部材)15及びインナパネル(外郭部材)16、並びにそれらのパネル15,16によって形成される内部空間に配置されるアウタリインホースメント(補強部材)2及びヒンジリインホースメント13,14を有するセンタピラー10を備えている。
【0021】
アウタリインホースメント2は、レーザ溶接分割線3を介して高張力鋼板が継ぎ合わされて形成されており、その下端部はロッカに接続され、その上端部はルーフサイドレールに接続される。なお、レーザ溶接分割線3の下側の高張力鋼板の強度は、例えば板厚が薄くされるなどして、レーザ溶接分割線3の上側の高張力鋼板の強度よりも低くなっている。つまり、アウタリインホースメント2においては、レーザ溶接分割線3の上側の部分に比べ、レーザ溶接分割線3の下側の部分の脆弱性が増されている。
【0022】
アウタリインホースメント2には、外壁2aと1対の側壁2bとによって形成された1対の外側稜線2cを切り欠くようにビード(補強部材において脆弱化された部分)11,12が設けられている。ビード11は、レーザ溶接分割線3よりも下方に位置し、ビード12は、レーザ溶接分割線3よりも上方に位置している。これにより、センタピラー10は、ビード11によって実現された脆弱部(第1の脆弱部)17、及びビード12によって実現された脆弱部(第2の脆弱部)18を有することになる。
【0023】
アウタリインホースメント2においては、ビード11とビード12との間の部分にドアのロアヒンジ4が取り付けられ、ビード12の上側の部分にドアのアッパヒンジ5が取り付けられる。つまり、センタピラー構造1は、脆弱部17と脆弱部18との間においてセンタピラー10から車幅方向外側に突出する凸部としてロアヒンジ4を備えている。
【0024】
ヒンジリインホースメント13は、アウタリインホースメント2においてロアヒンジ4が取り付けられる部分に対応するようにアウタリインホースメント2の内側に配置されている。ヒンジリインホースメント14は、アウタリインホースメント2においてアッパヒンジ5が取り付けられる部分からアウタリインホースメント2の上端部に延在するようにアウタリインホースメント2の内側に配置されている。なお、ここでは、ロアヒンジ4が取り付けられる部分とビード12との間にレーザ溶接分割線3が位置しているが、ロアヒンジ4が取り付けられる部分とビード11との間にレーザ溶接分割線3が位置する場合もある。
【0025】
以上のように構成されたセンタピラー構造1においては、図3に示されるように、センタピラー10の強度が脆弱部17及び脆弱部18で局所的に低くなっている。そのため、車両が側面衝突を受けた際には、センタピラー10が脆弱部17及び脆弱部18で折れ曲がり、相手方車両が略水平に移動することになる。これにより、相手方車両の移動によってセンタピラー10に生じる曲げモーメントを抑制することができるため、センタピラー10の強度を確保しつつ、側面衝突時におけるセンタピラー10の変形を制御することが可能となる。
【0026】
また、ヒンジリインホースメント14の下端部を上側のビード12の近傍に位置させることで、図3に示されるように、その上下でセンタピラー10の強度を大きく変え、上側の脆弱部18の強度低下の局所性を顕著にすることができる。
【0027】
また、脆弱部17及び脆弱部18がアウタリインホースメント2のビード11及びビード12によって実現されているため、センタピラー10に脆弱部17及び脆弱部18を容易に且つ確実に設けることができる。
【0028】
なお、図3に示される強度分布では、脆弱部17及び脆弱部18で強度が最も低くなっているが、脆弱部17及び脆弱部18で強度が局所的に低くなっていれば、最も低くなっていなくてもよい。
【0029】
次に、脆弱部17と脆弱部18との間においてセンタピラー10から車幅方向外側に突出する凸部としてのロアヒンジ4の位置について説明する。
【0030】
表1に示されるように、ロアヒンジ4又は想定荷重入力領域(車幅方向外側からセンタピラー10に作用すると想定される外力の作用部分)は、地上高400mm〜500mmに位置することが好ましい。これは、一般的な自動車のバンパ高さに基づいている。或いは、ロアヒンジ4又は想定荷重入力領域を、自車両のバンパ高さの少なくとも一部又は全部を含む高さに位置させてもよい。
【表1】
【0031】
また、想定荷重入力領域は、設計時において、接触が想定される物体から荷重が作用する領域であり、例えばバンパ高さに対応する領域としてもよい。脆弱部17及び脆弱部18は、想定荷重入力領域の中心又は想定荷重入力領域全体を上下から挟むように位置することが好ましい。
【0032】
また、「上側の脆弱部18とロアヒンジ4との距離」と「下側の脆弱部17とロアヒンジ4との距離」との比は、1:1〜2:1であることが好ましい。当該比が1:1であれば、車両が側面衝突を受けた際に、脆弱部17と脆弱部18との間の部分を、鉛直方向と略平行となるように確実に変形させることができる。一方、当該比が2:1であれば、脆弱部17と脆弱部18との間の部分と鉛直方向との平行性をさほど損なうことなく、折れ点がセンタピラー10の中央部に近付くので、センタピラー10に生じる曲げモーメントをより一層低減することができる。
【0033】
次に、脆弱部17と脆弱部18との間においてセンタピラー10から車幅方向外側に突出する凸部としてのロアヒンジ4の作用及び効果について説明する。
【0034】
図4は、図2に示されるIV−IV線に沿っての断面図であり、図5は、図1に示されるセンタピラー構造の正面図である。図4及び図5に示されるように、ロアヒンジ4は、脆弱部17と脆弱部18との間においてセンタピラー10から車幅方向外側に突出している。そのため、相手方車両V等の物体が接触した初期の段階において、脆弱部17と脆弱部18との間の部分に荷重を集中し易くすることができ、当該部分を好適に変形させることが可能となる。
【0035】
なお、スライドドアや2ドアのセンタピラー等、ドアヒンジが設けられないピラーの場合には、ロアヒンジ4の替わりに、車幅方向外側に突出する凸部を設けることで、脆弱部17と脆弱部18との間の部分に荷重を集中し易くすることができる。
【0036】
また、アウタリインホースメント2の内側には、アウタリインホースメント2においてロアヒンジ4が取り付けられる部分に対応するようにヒンジリインホースメント13が配置されている。これにより、脆弱部17と脆弱部18との間の部分の強度を、脆弱部17及び脆弱部18の強度に対して相対的に高くすることができる。
【0037】
次に、脆弱部17の強度と脆弱部18の強度との相対関係について説明する。
【0038】
アウタリインホースメント2においては、例えばレーザ溶接分割線3の上下で高張力鋼板の板厚が変えられることにより、レーザ溶接分割線3の上側の部分に比べ、レーザ溶接分割線3の下側の部分の脆弱性が増されている。加えて、アウタリインホースメント2には、レーザ溶接分割線3よりも下方に位置するビード11、及びレーザ溶接分割線3よりも上方に位置するビード12が設けられている。ビード11,12は、車両が側面衝突を受けた際に、センタピラー10において折れ曲りの起点となる脆弱部17,18を実現している。
【0039】
ここで、下側の脆弱部17の強度は、上側の脆弱部18の強度よりも低いことが好ましい。下側の脆弱部17の強度が上側の脆弱部18の強度よりも低いと、図6に示されるように、相手方車両Vが側面衝突した初期の段階においては、下側の脆弱部17でセンタピラー10が折れ曲がり、その後、上側の脆弱部18でセンタピラー10が折れ曲がる。そのため、相手方車両Vは、略水平に移動することになり、脆弱部17と脆弱部18との間の部分は、鉛直方向と略平行となるように変形することになる。これにより、相手方車両Vの移動によってセンタピラー10に生じる曲げモーメントを抑制することができる。
【0040】
なお、下側の脆弱部17の強度よりも上側の脆弱部18の強度を低くしてもよいし、それらを同等にしてもよい。
【0041】
次に、脆弱部17に対応するように配置される荷重入力部材について説明する。
【0042】
図7は、荷重入力部材が適用されたセンタピラー構造の横断面図であり、図8は、荷重入力部材が適用されたセンタピラー構造の斜視図であり、図9は、荷重入力部材の斜視図である。図7及び図8に示されるように、荷重入力部材19は、車幅方向において下側の脆弱部17に対向するようにフロントドア31内に配置されている。荷重入力部材19は、図9に示されるように、例えば樹脂によりブロック状に形成され、軽量化のために肉抜きされている。荷重入力部材19の強度は、アウタリインホースメント2の強度よりも高く、且つロッカとアウタリインホースメントとの接合強度よりも低くなっている。
【0043】
このような構成によれば、相手方車両Vが側面衝突した初期の段階において、ロアヒンジ4に荷重が集中した後に、荷重入力部材19によって脆弱部17に対する局所的な荷重の入力が促進される。従って、例えば下側の脆弱部17の強度を上側の脆弱部18の強度と同等にしても、下側の脆弱部17でのセンタピラー10の折曲げに続いて、上側の脆弱部18でのセンタピラー10の折曲げを発生させることができる。これにより、相手方車両Vは、略水平に移動することになり、脆弱部17と脆弱部18との間の部分は、鉛直方向と略平行となるように変形することになる。従って、相手方車両Vの移動によってセンタピラー10に生じる曲げモーメントを抑制することができる。
【0044】
なお、荷重入力部材19は、脆弱部17及び脆弱部18の少なくとも一方に対応するように配置することができる。脆弱部17及び脆弱部18の両方に対応するように荷重入力部材19を配置する場合には、荷重入力部材19の強度を上側と下側とで異ならせて、脆弱部17及び脆弱部18のそれぞれに対する局所的な荷重の入力状態を制御することができる。また、荷重入力部材19をリアドア32内に配置してもよい。
【0045】
次に、ハーネス取付孔によって実現された脆弱部18について説明する。
【0046】
図10は、ハーネス取付孔によって実現された脆弱部が適用されたセンタピラー構造の側面図であり、図11は、ハーネス取付孔によって実現された脆弱部が適用されたセンタピラー構造の横断面図である。図10及び図11に示されるように、センタピラー10においてロアヒンジ4が取り付けられる部分とアッパヒンジ5が取り付けられる部分との間には、パワーウィンドウやドアロック等に関するワイヤ33を保持するハーネス34が取り付けられるハーネス取付孔35が設けられている。このように、ビード12の替わりに、ハーネス取付孔35によって上側の脆弱部18を実現してもよい。
【0047】
なお、センタピラー10においてロアヒンジ4が取り付けられる部分の下側にハーネス取付孔35を設け、ビード11の替わりに、ハーネス取付孔35によって下側の脆弱部17を実現してもよい。
【0048】
次に、各脆弱部17,18に対応するように配置された端部を有するドアビームについて説明する。
【0049】
図12は、脆弱部に対応するように配置された端部を有するドアビームが適用されたセンタピラー構造の側面図であり、図13は、脆弱部に対応するように配置された端部を有するドアビームが適用されたセンタピラー構造の横断面図である。図12及び図13に示されるように、フロントドアビーム36の後端部36aは、車幅方向において下側の脆弱部17に対向するようにフロントドア31内に配置されており、リアドアビーム37の前端部37aは、車幅方向において上側の脆弱部18に対向するようにリアドア32内に配置されている。各ドアビーム36,37は、車両が側面衝突を受けた際のエネルギ吸収補強部材である。
【0050】
このような構成によれば、相手方車両Vが側面衝突した初期の段階において、ロアヒンジ4に荷重が集中した後に、フロントドアビーム36の後端部36aによって下側の脆弱部17に対する局所的な荷重の入力が促進されると共に、リアドアビーム37の前端部37aによって上側の脆弱部18に対する局所的な荷重の入力が促進される。これにより、例えば相手方車両がセンタピラー10から前後にオフセットしてフロントドア31又はリアドア37中心に衝突しても、脆弱部17及び脆弱部18で確実にセンタピラー10を折り曲げさせることができる。
【0051】
なお、フロントドアビーム36の後端部36aを上側の脆弱部18に対応するように配置し、リアドアビーム37の前端部37aを下側の脆弱部17に対応するように配置してもよい。また、脆弱部17及び脆弱部18の少なくとも一方に、フロントドアビーム36の後端部36a又はリアドアビーム37の前端部37aを配置してもよい。また、下側の脆弱部17に対応するように配置されるフロントドアビーム36の後端部36a又はリアドアビーム37の前端部37aは、下側の脆弱部17と同等の高さか、下側の脆弱部17よりもやや上方の想定荷重入力領域に位置させることが好ましい。
【0052】
次に、車両が側面衝突を受けた際に、脆弱部17と脆弱部18との間の部分が鉛直方向と略平行となるように変形することによる効果について説明する。
【0053】
車両が側面衝突を受けた際に、脆弱部17と脆弱部18との間の部分が鉛直方向と略平行となるように変形すると、例えば下側の脆弱部17に対応する部分のみでセンタピラーが折れ曲がって、当該部分が車両のキャビン側に突出するのを抑制することができる。しかも、例えば下側の脆弱部17に対応する部分のみでセンタピラーが折れ曲がった場合に比べ、脆弱部17及び脆弱部18でセンタピラー10が折れ曲がって、脆弱部17と脆弱部18との間の部分が鉛直方向と略平行となるように変形した場合には、センタピラー10の変形部分の変位速度を抑えることができる。
【0054】
なお、センタピラー10は、車幅方向外側から脆弱部17と脆弱部18との間の部分に外力が作用した場合に、脆弱部17と脆弱部18との間の部分の変位が最も大きくなるように構成されていることが好ましい。また、センタピラー10は、図14に示されるように、脆弱部17と脆弱部18との間の部分が鉛直方向と略平行な接線を有する湾曲状に変形するように構成されていてもよい。
【0055】
次に、脆弱部17と脆弱部18との間の部分に対応するように配置される緩衝部材について説明する。
【0056】
図15は、緩衝部材が適用されたセンタピラー構造の横断面図である。図15に示されるように、センタピラー10の内側(キャビン側)には、ピラーガーニッシュ39が取り付けられている。緩衝部材38は、例えば発泡ウレタンからなり、車幅方向において脆弱部17と脆弱部18との間の部分に対向するようにピラーガーニッシュ39内に配置されている。これにより、車両が側面衝突を受けた際に、脆弱部17と脆弱部18との間の部分がキャビン側に変形しても、その衝撃を緩和することができる。
【0057】
なお、緩衝部材38は、脆弱部17と脆弱部18との間の部分に対応するようにセンタピラー10の内側に配置されていれば、シートの側面等に取り付けられていてもよい。
[第2実施形態]
【0058】
図16は、本発明に係る車両のピラー構造の第2実施形態としてのセンタピラー構造の斜視図であり、図17は、図16のセンタピラー構造の正面図である。図16及び図17に示されるように、センタピラー構造1は、アウタリインホースメント2を備えている。アウタリインホースメント2は、レーザ溶接分割線3を介して高張力鋼板が継ぎ合わされて形成されており、その上端部はルーフサイドレールに接続され、その下端部はロッカに接続される。
【0059】
アウタリインホースメント2においてドアのロアヒンジ4が取り付けられる部分とドアのアッパヒンジ5が取り付けられる部分との間には、外側に凸状の非焼入れ部6が設けられている。また、アウタリインホースメント2においてロアヒンジ4が取り付けられる部分とロッカに接続される部分との間には、外側に凸状の非焼入れ部7が設けられている。このように、アウタリインホースメント2においてロアヒンジ4が取り付けられる部分の上側部分及び下側部分が非焼入れ部6,7とされている一方で、アウタリインホースメント2において非焼入れ部6,7を除く部分が焼入れ部8とされている。これにより、センタピラー10においては、非焼入れ部7及び非焼入れ部6のそれぞれによって脆弱部17及び脆弱部18が実現されている。
【0060】
以上説明したように、センタピラー構造1によれば、アウタリインホースメント2においてロアヒンジ4が取り付けられる部分の上側部分及び下側部分を非焼入れ部6,7とすることで、側面衝突時における座屈点(曲折部)を容易に形成することができる。そして、車両が側面衝突を受けた際には、ロアヒンジ4が取り付けられる部分の上側部分及び下側部分でアウタリインホースメント2が折れ曲がるため、相手方車両の移動によってアウタリインホースメント2に生じる曲げモーメントを抑制することができる。従って、センタピラー構造1によれば、センタピラーの強度を確保しつつ、側面衝突時におけるセンタピラーの変形を制御することが可能となる。
【0061】
図18は、側面衝突時におけるアウタリインホースメントの変形状態を示す図である。図18(a)に、車両が側面衝突を受けた際に、ロアヒンジ4が取り付けられる部分の上側部分の1点が座屈点Bとなるアウタリインホースメント102を示し、図18(b)に、車両が側面衝突を受けた際に、ロアヒンジ4が取り付けられる部分の上側部分及び下側部分の2点が座屈点Bとなる上記アウタリインホースメント2を示す。なお、図18(b)に示されるアウタリインホースメント2においては、非焼入れ部6の強度よりも非焼入れ部7の強度が低くされている。
【0062】
図18(a)に示されるように、アウタリインホースメント102では、1点の座屈点Bの下側部分が変形によって傾き、傾いた下側部分に沿って相手方車両Vが移動するため、アウタリインホースメント102に生じる曲げモーメントが比較的大きくなる。一方、図18(b)に示されるように、アウタリインホースメント2では、2点の座屈点Bの間の部分が変形によってもさほど傾かないため、相手方車両Vの移動によってアウタリインホースメント2に生じる曲げモーメントが比較的小さくなる。
【0063】
図19は、図18(a)のアウタリインホースメントの曲げモーメント線図及びせん断力線図であり、図20は、図18(b)のアウタリインホースメントの曲げモーメント線図及びせん断力線図である。なお、図19及び図20において、MBは、座屈点Bの分担モーメントである。また、Fyは、アウタリインホースメントが発生する衝突反力であり、FyBは、Fyのうち曲げによって発生する反力である。
【0064】
図19及び図20に示されるように、アウタリインホースメント2においては、アウタリインホースメント102に比べ、センタピラー横方向への変形量が減少すると共に、非焼入れ部6がアウタリインホースメント2の中央付近に位置することによる塑性関節作用で分担モーメントMBが減少する。そして、アウタリインホースメント2において、側面衝突時における衝突反力Fyのうち、曲げによって発生する反力FyBが低下した分は、軸力の増加によって補われる。つまり、アウタリインホースメント102が比較的大きな曲げと比較的小さな軸力とによって側面衝突時における衝突反力を発生するのに対し、アウタリインホースメント2は、比較的小さな曲げと比較的大きな軸力とによって側面衝突時における衝突反力を発生する。
【0065】
以上により、図18(b)に示されるアウタリインホースメント2を備えるセンタピラー構造1においては、ベルトライン部のモーメント入力が減少するため、ベルトライン部における補強を削減することができ、センタピラーの軽量化及び低コスト化を図ることが可能となる。
【0066】
次に、本発明に係る車両のピラー構造の製造方法として、上述したセンタピラー構造1の製造方法について説明する。
【0067】
まず、図21に示されるように、アウタリインホースメント2となる高張力鋼板2aを準備し、ホットスタンプ用の上型(金型)21と下型(金型)22とで高張力鋼板2aを成形及び加熱する。このとき、上型21及び下型22と高張力鋼板2aとの隙間を適切に管理して、高張力鋼板2aにおいて焼入れ部8に対応する部分8aと上型21との隙間よりも、高張力鋼板2aにおいて非焼入れ部6,7に対応する部分6a,7aと上型21との隙間が狭くなるようにする。ここでは、非焼入れ部6,7に対応する部分6a,7aと上型21とを密着させる。
【0068】
続いて、上型21に設けられた冷却水供給孔21aから、焼入れ部8に対応する部分8aと上型21との隙間に冷却水を供給する。このとき、非焼入れ部6,7に対応する部分6a,7aと上型21とが密着しているため、図22に示されるように、非焼入れ部6,7に対応する部分6a,7aには冷却水が流通せず、焼入れ部8に対応する部分8aにのみ冷却水が流通することとなり、急冷却によって当該部分8aにのみ焼入れ処理が施される。そして、これにより形成されたアウタリインホースメント2を用いてセンタピラー構造1を製造する。
【0069】
以上説明したように、センタピラー構造1の製造方法においては、加熱された高張力鋼板2aにおいて非焼入れ部6,7に対応する部分6a,7aへの冷却水の流通が抑制されるため、焼入れ部8に対応する部分8aの焼入れ密度よりも非焼入れ部6,7に対応する部分6a,7aの焼入れ密度が低下する。これにより、アウタリインホースメント2においてロアヒンジ4が取り付けられる部分の上側部分及び下側部分を簡便に且つ確実に非焼入れ部6,7とすることができる。
[第3実施形態]
【0070】
図23は、本発明に係る車両のピラー構造の第3実施形態としてのセンタピラー構造の斜視図である。図23に示されるように、第3実施形態のセンタピラー構造1は、アウタリインホースメント2において非焼入れ部6,7が凸状に形成されていない点で、上述した第2実施形態のセンタピラー構造1と異なっている。
【0071】
このセンタピラー構造1は、次のように製造される。すなわち、図24及び図25に示されるように、アウタリインホースメント2となる高張力鋼板2aを準備し、ホットスタンプ用の上型(金型)21と下型(金型)22とで高張力鋼板2aを成形及び加熱する。続いて、上型21において焼入れ部8に対応する部分に設けられた冷却水供給孔21aから、焼入れ部8に対応する部分8aと上型21との隙間に冷却水を供給する。供給された冷却水は、上型21において焼入れ部8と非焼入れ部6,7との境界部に対応する部分に設けられた冷却水排出孔21bから外部に排出される。これにより、非焼入れ部6,7に対応する部分6a,7aには冷却水が流通せず、焼入れ部8に対応する部分8aにのみ冷却水が流通することとなり、急冷却によって当該部分8aにのみ焼入れ処理が施される。そして、これにより形成されたアウタリインホースメント2を用いてセンタピラー構造1を製造する。
【0072】
以上説明したように、センタピラー構造1の製造方法においては、加熱された高張力鋼板2aにおいて非焼入れ部6,7に対応する部分6a,7aへの冷却水の流通が抑制されるため、焼入れ部8に対応する部分8aの焼入れ密度よりも非焼入れ部6,7に対応する部分6a,7aの焼入れ密度が低下する。これにより、アウタリインホースメント2においてロアヒンジ4が取り付けられる部分の上側部分及び下側部分を簡便に且つ確実に非焼入れ部6,7とすることができる。
【0073】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0074】
例えば、図26及び図27に示されるように、非焼入れ部6,7に代えて、アウタリインホースメント2に切欠き状のビード11,12を設けても、側面衝突時における相手方車両の上昇によってアウタリインホースメント2に生じる曲げモーメントを抑制することができる。
【0075】
図26に示されるアウタリインホースメント2においては、1対の外側稜線部分のそれぞれにビード11,12が設けられている。このアウタリインホースメント2においては、ロアヒンジ4が取り付けられる部分の下側部分のビード11の数よりも上側部分のビード12の数が多くされており、その一方で、板厚や材質が変えられることで、レーザ溶接分割線3の下側部分の部材の強度よりも上側部分の部材の強度が高くされている。
【0076】
また、図27に示されるアウタリインホースメント2においては、1対の外側稜線部分に跨るようにビード12が設けられており、1対の外側稜線部分のそれぞれにビード11が設けられている。そして、アウタリインホースメント2の外側壁の内面に沿って延在するヒンジリインホースメント14の下端部がビード12の内側に回り込んでいる。このようなアウタリインホースメント2及びヒンジリインホースメント14によれば、図28に示されるように、車両が側面衝突を受けた際に、ロアヒンジ4が取り付けられる部分の上側部分でアウタリインホースメント2を確実に折り曲がらせつつ、ヒンジリインホースメント14との干渉によって、センタピラーの過変形を防止し、安定した変形モードを得ることができる。
【0077】
また、本発明に係る車両のピラー構造は、必ずしもセンタピラー構造に限定されず、ピラーが有する脆弱部の数も2つに限定されない。更に、脆弱部は、ピラーを構成する部材の形状の他、ピラーを構成する部材の材質変更や板厚調整、焼入れ具合や塑性効果等により実現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係る車両のピラー構造の第1実施形態としてのセンタピラー構造の分解斜視図である。
【図2】図1に示されるセンタピラー構造の側面図である。
【図3】図1に示されるセンタピラー構造のセンタピラーの強度分布を示す図である。
【図4】図2に示されるIV−IV線に沿っての断面図である。
【図5】図1に示されるセンタピラー構造の正面図である。
【図6】図1に示されるセンタピラー構造のセンタピラーの変形状態を示す図である。
【図7】荷重入力部材が適用されたセンタピラー構造の横断面図である。
【図8】荷重入力部材が適用されたセンタピラー構造の斜視図である。
【図9】荷重入力部材の斜視図である。
【図10】ハーネス取付孔によって実現された脆弱部が適用されたセンタピラー構造の側面図である。
【図11】ハーネス取付孔によって実現された脆弱部が適用されたセンタピラー構造の横断面図である。
【図12】脆弱部に対応するように配置された端部を有するドアビームが適用されたセンタピラー構造の側面図である。
【図13】脆弱部に対応するように配置された端部を有するドアビームが適用されたセンタピラー構造の横断面図である。
【図14】脆弱部間の部分が鉛直方向と略平行な接線を有する湾曲状に変形するように構成されたセンタピラーの変形状態を示す図である。
【図15】緩衝部材が適用されたセンタピラー構造の横断面図である。
【図16】本発明に係る車両のピラー構造の第2実施形態としてのセンタピラー構造の斜視図である。
【図17】図16のセンタピラー構造の正面図である。
【図18】側面衝突時におけるアウタリインホースメントの変形状態を示す図である。
【図19】図18(a)のアウタリインホースメントの曲げモーメント線図及びせん断力線図である。
【図20】図18(b)のアウタリインホースメントの曲げモーメント線図及びせん断力線図である。
【図21】図16のセンタピラー構造の製造工程を示す図である。
【図22】図16のセンタピラー構造の製造工程を示す図である。
【図23】本発明に係る車両のピラー構造の第3実施形態としてのセンタピラー構造の斜視図である。
【図24】図23のセンタピラー構造の製造工程を示す図である。
【図25】図23のセンタピラー構造の製造工程を示す図である。
【図26】本発明に係る車両のピラー構造の他の実施形態としてのセンタピラー構造の斜視図である。
【図27】本発明に係る車両のピラー構造の他の実施形態としてのセンタピラー構造の斜視図である。
【図28】側面衝突時における図27のアウタリインホースメントの変形状態を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1…センタピラー構造、2…アウタリインホースメント(補強部材)、4…ロアヒンジ(凸部)、6,7…非焼入れ部、8…焼入れ部、10…センタピラー、11,12…ビード(補強部材において脆弱化された部分)、15…アウタパネル(外郭部材)、16…インナパネル(外郭部材)、17…脆弱部(第1の脆弱部)、18…脆弱部(第2の脆弱部)、21…上型(金型)、21a…冷却水供給孔、21b…冷却水排出孔、22…下型(金型)、36…フロントドアビーム、36a…後端部、37…リアドアビーム、37a…前端部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に適用されるピラー構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が側面衝突を受けた際にピラーが局所的に変形するのを防止するためのピラー構造として、特許文献1には、衝突荷重分布と同様の強度分布を有するようにピラーの補強部材に焼入れ処理を施したものが開示されている。
【特許文献1】特開平10−17933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような従来のピラー構造にあっては、ピラーの強度を確保しつつ、側面衝突時におけるピラーの変形を制御することが極めて困難である。
【0004】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ピラーの強度を確保しつつ、側面衝突時におけるピラーの変形を制御することができる車両のピラー構造及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両のピラー構造は、第1の脆弱部、及び第1の脆弱部よりも上方に位置する第2の脆弱部を有するピラーを備えることを特徴とする。
【0006】
このピラー構造によれば、車両が側面衝突を受けた際に、第1の脆弱部及び第2の脆弱部の少なくとも2箇所でピラーが折れ曲がるため、ピラーに生じる曲げモーメントを抑制することができる。従って、このピラー構造によれば、ピラーの強度を確保しつつ、側面衝突時におけるピラーの変形を制御することが可能となる。
【0007】
本発明に係る車両のピラー構造は、第1の脆弱部と第2の脆弱部との間においてピラーから車幅方向外側に突出する凸部を備えることが好ましい。この構成によれば、車両が側面衝突を受けた際に、第1の脆弱部と第2の脆弱部との間の部分に外力を集中させることができ、当該部分を好適に変形させることが可能となる。
【0008】
本発明に係る車両のピラー構造においては、第1の脆弱部の強度は、第2の脆弱部の強度よりも低いことが好ましい。この構成によれば、車両が側面衝突を受けた際に、第1の脆弱部と第2の脆弱部との間の部分を、鉛直方向と略平行となるように変形させることが可能となる。
【0009】
本発明に係る車両のピラー構造においては、第1の脆弱部は、車幅方向外側からピラーに作用すると想定される外力の作用部分に対して下方に位置し、第2の脆弱部は、作用部分に対して上方に位置することが好ましい。この構成によれば、車両が側面衝突を受けた際に、第1の脆弱部と第2の脆弱部との間の部分を好適に変形させることが可能となる。
【0010】
本発明に係る車両のピラー構造においては、ピラーは、外郭部材、及び外郭部材内に配置された補強部材を有し、第1の脆弱部及び第2の脆弱部は、補強部材において脆弱化された部分によって実現されていることが好ましい。この構成によれば、ピラーに第1の脆弱部及び第2の脆弱部を容易に且つ確実に設けることができる。
【0011】
本発明に係る車両のピラー構造においては、第1の脆弱部及び第2の脆弱部の少なくとも一方には、ドアビームの端部が対応するように配置されていることが好ましい。この構成によれば、車両が側面衝突を受けた際に、第1の脆弱部や第2の脆弱部でピラーを確実に折り曲げさせることができる。
【0012】
本発明に係る車両のピラー構造においては、ピラーは、車幅方向外側から第1の脆弱部と第2の脆弱部との間の部分に外力が作用した場合に、第1の脆弱部と第2の脆弱部との間の部分の変位が最も大きくなるように構成されていることが好ましい。この構成によれば、例えば第1の脆弱部に対応する部分でピラーが折れ曲がって当該部分が車両のキャビン側に突出するのを抑制することができる。
【0013】
本発明に係る車両のピラー構造においては、ピラーは、外郭部材、及び外郭部材内に配置された補強部材を有し、補強部材においては、ドアのロアヒンジが取り付けられる部分の上側部分及び下側部分が非焼入れ部とされ、上側部分及び下側部分を除く部分が焼入れ部とされており、第1の脆弱部及び第2の脆弱部は、非焼入れ部によって実現されていることが好ましい。この構成によれば、補強部材においてロアヒンジが取り付けられる部分の上側部分及び下側部分を非焼入れ部とすることで、ピラーに第1の脆弱部及び第2の脆弱部を容易に且つ確実に設けることができる。そして、車両が側面衝突を受けた際には、ロアヒンジが取り付けられる部分の上側部分及び下側部分で補強部材が折れ曲がるため、補強部材に生じる曲げモーメントを抑制することができる。
【0014】
本発明に係る車両のピラー構造は、補強部材に焼入れ処理を施す際に、加熱された補強部材において非焼入れ部に対応する部分に比べ、焼入れ部に対応する部分に冷却水を流通させて製造されていることが好ましい。この場合、補強部材において焼入れ部に対応する部分の焼入れ密度よりも非焼入れ部に対応する部分の焼入れ密度が低下するため、補強部材においてドアのロアヒンジが取り付けられる部分の上側部分及び下側部分を確実に非焼入れ部とすることができる。
【0015】
このとき、本発明に係る車両のピラー構造は、補強部材において非焼入れ部に対応する部分を凸状に形成し、ホットスタンプ用の金型と焼入れ部に対応する部分との隙間よりも、金型と非焼入れ部に対応する部分との隙間を狭くすることにより、非焼入れ部に対応する部分に比べ、焼入れ部に対応する部分に冷却水を流通させて製造されていてもよい。或いは、本発明に係る車両のピラー構造は、ホットスタンプ用の金型において焼入れ部に対応する部分に冷却水供給孔を設け、金型において焼入れ部と非焼入れ部との境界部に対応する部分に冷却水排出孔を設けることにより、非焼入れ部に対応する部分に比べ、焼入れ部に対応する部分に冷却水を流通させて製造されていてもよい。これらの場合、補強部材において非焼入れ部に対応する部分への冷却水の流通が抑制されるため、補強部材においてドアのロアヒンジが取り付けられる部分の上側部分及び下側部分を簡便に且つ確実に非焼入れ部とすることができる。
【0016】
また、本発明に係る車両のピラー構造の製造方法は、外郭部材、及び外郭部材内に配置された補強部材を有するピラーを備えるピラー構造の製造方法であって、補強部材に焼入れ処理を施す際に、加熱された補強部材において、ドアのロアヒンジが取り付けられる部分の上側部分及び下側部分に比べ、上側部分及び下側部分を除く部分に冷却水を流通させることにより、上側部分及び下側部分を非焼入れ部とし、上側部分及び下側部分を除く部分を焼入れ部として、第1の脆弱部、及び第1の脆弱部よりも上方に位置する第2の脆弱部をピラーに設けることを特徴とする。
【0017】
このピラー構造の製造方法によれば、上述した本発明に係る車両のピラー構造を容易に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ピラーの強度を確保しつつ、側面衝突時におけるピラーの変形を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
【0020】
図1は、本発明に係る車両のピラー構造の第1実施形態としてのセンタピラー構造の分解斜視図であり、図2は、図1に示されるセンタピラー構造の側面図である。図1及び図2に示されるように、センタピラー構造1は、自動車等の車両においてロッカからルーフサイドレールに延在するアウタパネル(外郭部材)15及びインナパネル(外郭部材)16、並びにそれらのパネル15,16によって形成される内部空間に配置されるアウタリインホースメント(補強部材)2及びヒンジリインホースメント13,14を有するセンタピラー10を備えている。
【0021】
アウタリインホースメント2は、レーザ溶接分割線3を介して高張力鋼板が継ぎ合わされて形成されており、その下端部はロッカに接続され、その上端部はルーフサイドレールに接続される。なお、レーザ溶接分割線3の下側の高張力鋼板の強度は、例えば板厚が薄くされるなどして、レーザ溶接分割線3の上側の高張力鋼板の強度よりも低くなっている。つまり、アウタリインホースメント2においては、レーザ溶接分割線3の上側の部分に比べ、レーザ溶接分割線3の下側の部分の脆弱性が増されている。
【0022】
アウタリインホースメント2には、外壁2aと1対の側壁2bとによって形成された1対の外側稜線2cを切り欠くようにビード(補強部材において脆弱化された部分)11,12が設けられている。ビード11は、レーザ溶接分割線3よりも下方に位置し、ビード12は、レーザ溶接分割線3よりも上方に位置している。これにより、センタピラー10は、ビード11によって実現された脆弱部(第1の脆弱部)17、及びビード12によって実現された脆弱部(第2の脆弱部)18を有することになる。
【0023】
アウタリインホースメント2においては、ビード11とビード12との間の部分にドアのロアヒンジ4が取り付けられ、ビード12の上側の部分にドアのアッパヒンジ5が取り付けられる。つまり、センタピラー構造1は、脆弱部17と脆弱部18との間においてセンタピラー10から車幅方向外側に突出する凸部としてロアヒンジ4を備えている。
【0024】
ヒンジリインホースメント13は、アウタリインホースメント2においてロアヒンジ4が取り付けられる部分に対応するようにアウタリインホースメント2の内側に配置されている。ヒンジリインホースメント14は、アウタリインホースメント2においてアッパヒンジ5が取り付けられる部分からアウタリインホースメント2の上端部に延在するようにアウタリインホースメント2の内側に配置されている。なお、ここでは、ロアヒンジ4が取り付けられる部分とビード12との間にレーザ溶接分割線3が位置しているが、ロアヒンジ4が取り付けられる部分とビード11との間にレーザ溶接分割線3が位置する場合もある。
【0025】
以上のように構成されたセンタピラー構造1においては、図3に示されるように、センタピラー10の強度が脆弱部17及び脆弱部18で局所的に低くなっている。そのため、車両が側面衝突を受けた際には、センタピラー10が脆弱部17及び脆弱部18で折れ曲がり、相手方車両が略水平に移動することになる。これにより、相手方車両の移動によってセンタピラー10に生じる曲げモーメントを抑制することができるため、センタピラー10の強度を確保しつつ、側面衝突時におけるセンタピラー10の変形を制御することが可能となる。
【0026】
また、ヒンジリインホースメント14の下端部を上側のビード12の近傍に位置させることで、図3に示されるように、その上下でセンタピラー10の強度を大きく変え、上側の脆弱部18の強度低下の局所性を顕著にすることができる。
【0027】
また、脆弱部17及び脆弱部18がアウタリインホースメント2のビード11及びビード12によって実現されているため、センタピラー10に脆弱部17及び脆弱部18を容易に且つ確実に設けることができる。
【0028】
なお、図3に示される強度分布では、脆弱部17及び脆弱部18で強度が最も低くなっているが、脆弱部17及び脆弱部18で強度が局所的に低くなっていれば、最も低くなっていなくてもよい。
【0029】
次に、脆弱部17と脆弱部18との間においてセンタピラー10から車幅方向外側に突出する凸部としてのロアヒンジ4の位置について説明する。
【0030】
表1に示されるように、ロアヒンジ4又は想定荷重入力領域(車幅方向外側からセンタピラー10に作用すると想定される外力の作用部分)は、地上高400mm〜500mmに位置することが好ましい。これは、一般的な自動車のバンパ高さに基づいている。或いは、ロアヒンジ4又は想定荷重入力領域を、自車両のバンパ高さの少なくとも一部又は全部を含む高さに位置させてもよい。
【表1】
【0031】
また、想定荷重入力領域は、設計時において、接触が想定される物体から荷重が作用する領域であり、例えばバンパ高さに対応する領域としてもよい。脆弱部17及び脆弱部18は、想定荷重入力領域の中心又は想定荷重入力領域全体を上下から挟むように位置することが好ましい。
【0032】
また、「上側の脆弱部18とロアヒンジ4との距離」と「下側の脆弱部17とロアヒンジ4との距離」との比は、1:1〜2:1であることが好ましい。当該比が1:1であれば、車両が側面衝突を受けた際に、脆弱部17と脆弱部18との間の部分を、鉛直方向と略平行となるように確実に変形させることができる。一方、当該比が2:1であれば、脆弱部17と脆弱部18との間の部分と鉛直方向との平行性をさほど損なうことなく、折れ点がセンタピラー10の中央部に近付くので、センタピラー10に生じる曲げモーメントをより一層低減することができる。
【0033】
次に、脆弱部17と脆弱部18との間においてセンタピラー10から車幅方向外側に突出する凸部としてのロアヒンジ4の作用及び効果について説明する。
【0034】
図4は、図2に示されるIV−IV線に沿っての断面図であり、図5は、図1に示されるセンタピラー構造の正面図である。図4及び図5に示されるように、ロアヒンジ4は、脆弱部17と脆弱部18との間においてセンタピラー10から車幅方向外側に突出している。そのため、相手方車両V等の物体が接触した初期の段階において、脆弱部17と脆弱部18との間の部分に荷重を集中し易くすることができ、当該部分を好適に変形させることが可能となる。
【0035】
なお、スライドドアや2ドアのセンタピラー等、ドアヒンジが設けられないピラーの場合には、ロアヒンジ4の替わりに、車幅方向外側に突出する凸部を設けることで、脆弱部17と脆弱部18との間の部分に荷重を集中し易くすることができる。
【0036】
また、アウタリインホースメント2の内側には、アウタリインホースメント2においてロアヒンジ4が取り付けられる部分に対応するようにヒンジリインホースメント13が配置されている。これにより、脆弱部17と脆弱部18との間の部分の強度を、脆弱部17及び脆弱部18の強度に対して相対的に高くすることができる。
【0037】
次に、脆弱部17の強度と脆弱部18の強度との相対関係について説明する。
【0038】
アウタリインホースメント2においては、例えばレーザ溶接分割線3の上下で高張力鋼板の板厚が変えられることにより、レーザ溶接分割線3の上側の部分に比べ、レーザ溶接分割線3の下側の部分の脆弱性が増されている。加えて、アウタリインホースメント2には、レーザ溶接分割線3よりも下方に位置するビード11、及びレーザ溶接分割線3よりも上方に位置するビード12が設けられている。ビード11,12は、車両が側面衝突を受けた際に、センタピラー10において折れ曲りの起点となる脆弱部17,18を実現している。
【0039】
ここで、下側の脆弱部17の強度は、上側の脆弱部18の強度よりも低いことが好ましい。下側の脆弱部17の強度が上側の脆弱部18の強度よりも低いと、図6に示されるように、相手方車両Vが側面衝突した初期の段階においては、下側の脆弱部17でセンタピラー10が折れ曲がり、その後、上側の脆弱部18でセンタピラー10が折れ曲がる。そのため、相手方車両Vは、略水平に移動することになり、脆弱部17と脆弱部18との間の部分は、鉛直方向と略平行となるように変形することになる。これにより、相手方車両Vの移動によってセンタピラー10に生じる曲げモーメントを抑制することができる。
【0040】
なお、下側の脆弱部17の強度よりも上側の脆弱部18の強度を低くしてもよいし、それらを同等にしてもよい。
【0041】
次に、脆弱部17に対応するように配置される荷重入力部材について説明する。
【0042】
図7は、荷重入力部材が適用されたセンタピラー構造の横断面図であり、図8は、荷重入力部材が適用されたセンタピラー構造の斜視図であり、図9は、荷重入力部材の斜視図である。図7及び図8に示されるように、荷重入力部材19は、車幅方向において下側の脆弱部17に対向するようにフロントドア31内に配置されている。荷重入力部材19は、図9に示されるように、例えば樹脂によりブロック状に形成され、軽量化のために肉抜きされている。荷重入力部材19の強度は、アウタリインホースメント2の強度よりも高く、且つロッカとアウタリインホースメントとの接合強度よりも低くなっている。
【0043】
このような構成によれば、相手方車両Vが側面衝突した初期の段階において、ロアヒンジ4に荷重が集中した後に、荷重入力部材19によって脆弱部17に対する局所的な荷重の入力が促進される。従って、例えば下側の脆弱部17の強度を上側の脆弱部18の強度と同等にしても、下側の脆弱部17でのセンタピラー10の折曲げに続いて、上側の脆弱部18でのセンタピラー10の折曲げを発生させることができる。これにより、相手方車両Vは、略水平に移動することになり、脆弱部17と脆弱部18との間の部分は、鉛直方向と略平行となるように変形することになる。従って、相手方車両Vの移動によってセンタピラー10に生じる曲げモーメントを抑制することができる。
【0044】
なお、荷重入力部材19は、脆弱部17及び脆弱部18の少なくとも一方に対応するように配置することができる。脆弱部17及び脆弱部18の両方に対応するように荷重入力部材19を配置する場合には、荷重入力部材19の強度を上側と下側とで異ならせて、脆弱部17及び脆弱部18のそれぞれに対する局所的な荷重の入力状態を制御することができる。また、荷重入力部材19をリアドア32内に配置してもよい。
【0045】
次に、ハーネス取付孔によって実現された脆弱部18について説明する。
【0046】
図10は、ハーネス取付孔によって実現された脆弱部が適用されたセンタピラー構造の側面図であり、図11は、ハーネス取付孔によって実現された脆弱部が適用されたセンタピラー構造の横断面図である。図10及び図11に示されるように、センタピラー10においてロアヒンジ4が取り付けられる部分とアッパヒンジ5が取り付けられる部分との間には、パワーウィンドウやドアロック等に関するワイヤ33を保持するハーネス34が取り付けられるハーネス取付孔35が設けられている。このように、ビード12の替わりに、ハーネス取付孔35によって上側の脆弱部18を実現してもよい。
【0047】
なお、センタピラー10においてロアヒンジ4が取り付けられる部分の下側にハーネス取付孔35を設け、ビード11の替わりに、ハーネス取付孔35によって下側の脆弱部17を実現してもよい。
【0048】
次に、各脆弱部17,18に対応するように配置された端部を有するドアビームについて説明する。
【0049】
図12は、脆弱部に対応するように配置された端部を有するドアビームが適用されたセンタピラー構造の側面図であり、図13は、脆弱部に対応するように配置された端部を有するドアビームが適用されたセンタピラー構造の横断面図である。図12及び図13に示されるように、フロントドアビーム36の後端部36aは、車幅方向において下側の脆弱部17に対向するようにフロントドア31内に配置されており、リアドアビーム37の前端部37aは、車幅方向において上側の脆弱部18に対向するようにリアドア32内に配置されている。各ドアビーム36,37は、車両が側面衝突を受けた際のエネルギ吸収補強部材である。
【0050】
このような構成によれば、相手方車両Vが側面衝突した初期の段階において、ロアヒンジ4に荷重が集中した後に、フロントドアビーム36の後端部36aによって下側の脆弱部17に対する局所的な荷重の入力が促進されると共に、リアドアビーム37の前端部37aによって上側の脆弱部18に対する局所的な荷重の入力が促進される。これにより、例えば相手方車両がセンタピラー10から前後にオフセットしてフロントドア31又はリアドア37中心に衝突しても、脆弱部17及び脆弱部18で確実にセンタピラー10を折り曲げさせることができる。
【0051】
なお、フロントドアビーム36の後端部36aを上側の脆弱部18に対応するように配置し、リアドアビーム37の前端部37aを下側の脆弱部17に対応するように配置してもよい。また、脆弱部17及び脆弱部18の少なくとも一方に、フロントドアビーム36の後端部36a又はリアドアビーム37の前端部37aを配置してもよい。また、下側の脆弱部17に対応するように配置されるフロントドアビーム36の後端部36a又はリアドアビーム37の前端部37aは、下側の脆弱部17と同等の高さか、下側の脆弱部17よりもやや上方の想定荷重入力領域に位置させることが好ましい。
【0052】
次に、車両が側面衝突を受けた際に、脆弱部17と脆弱部18との間の部分が鉛直方向と略平行となるように変形することによる効果について説明する。
【0053】
車両が側面衝突を受けた際に、脆弱部17と脆弱部18との間の部分が鉛直方向と略平行となるように変形すると、例えば下側の脆弱部17に対応する部分のみでセンタピラーが折れ曲がって、当該部分が車両のキャビン側に突出するのを抑制することができる。しかも、例えば下側の脆弱部17に対応する部分のみでセンタピラーが折れ曲がった場合に比べ、脆弱部17及び脆弱部18でセンタピラー10が折れ曲がって、脆弱部17と脆弱部18との間の部分が鉛直方向と略平行となるように変形した場合には、センタピラー10の変形部分の変位速度を抑えることができる。
【0054】
なお、センタピラー10は、車幅方向外側から脆弱部17と脆弱部18との間の部分に外力が作用した場合に、脆弱部17と脆弱部18との間の部分の変位が最も大きくなるように構成されていることが好ましい。また、センタピラー10は、図14に示されるように、脆弱部17と脆弱部18との間の部分が鉛直方向と略平行な接線を有する湾曲状に変形するように構成されていてもよい。
【0055】
次に、脆弱部17と脆弱部18との間の部分に対応するように配置される緩衝部材について説明する。
【0056】
図15は、緩衝部材が適用されたセンタピラー構造の横断面図である。図15に示されるように、センタピラー10の内側(キャビン側)には、ピラーガーニッシュ39が取り付けられている。緩衝部材38は、例えば発泡ウレタンからなり、車幅方向において脆弱部17と脆弱部18との間の部分に対向するようにピラーガーニッシュ39内に配置されている。これにより、車両が側面衝突を受けた際に、脆弱部17と脆弱部18との間の部分がキャビン側に変形しても、その衝撃を緩和することができる。
【0057】
なお、緩衝部材38は、脆弱部17と脆弱部18との間の部分に対応するようにセンタピラー10の内側に配置されていれば、シートの側面等に取り付けられていてもよい。
[第2実施形態]
【0058】
図16は、本発明に係る車両のピラー構造の第2実施形態としてのセンタピラー構造の斜視図であり、図17は、図16のセンタピラー構造の正面図である。図16及び図17に示されるように、センタピラー構造1は、アウタリインホースメント2を備えている。アウタリインホースメント2は、レーザ溶接分割線3を介して高張力鋼板が継ぎ合わされて形成されており、その上端部はルーフサイドレールに接続され、その下端部はロッカに接続される。
【0059】
アウタリインホースメント2においてドアのロアヒンジ4が取り付けられる部分とドアのアッパヒンジ5が取り付けられる部分との間には、外側に凸状の非焼入れ部6が設けられている。また、アウタリインホースメント2においてロアヒンジ4が取り付けられる部分とロッカに接続される部分との間には、外側に凸状の非焼入れ部7が設けられている。このように、アウタリインホースメント2においてロアヒンジ4が取り付けられる部分の上側部分及び下側部分が非焼入れ部6,7とされている一方で、アウタリインホースメント2において非焼入れ部6,7を除く部分が焼入れ部8とされている。これにより、センタピラー10においては、非焼入れ部7及び非焼入れ部6のそれぞれによって脆弱部17及び脆弱部18が実現されている。
【0060】
以上説明したように、センタピラー構造1によれば、アウタリインホースメント2においてロアヒンジ4が取り付けられる部分の上側部分及び下側部分を非焼入れ部6,7とすることで、側面衝突時における座屈点(曲折部)を容易に形成することができる。そして、車両が側面衝突を受けた際には、ロアヒンジ4が取り付けられる部分の上側部分及び下側部分でアウタリインホースメント2が折れ曲がるため、相手方車両の移動によってアウタリインホースメント2に生じる曲げモーメントを抑制することができる。従って、センタピラー構造1によれば、センタピラーの強度を確保しつつ、側面衝突時におけるセンタピラーの変形を制御することが可能となる。
【0061】
図18は、側面衝突時におけるアウタリインホースメントの変形状態を示す図である。図18(a)に、車両が側面衝突を受けた際に、ロアヒンジ4が取り付けられる部分の上側部分の1点が座屈点Bとなるアウタリインホースメント102を示し、図18(b)に、車両が側面衝突を受けた際に、ロアヒンジ4が取り付けられる部分の上側部分及び下側部分の2点が座屈点Bとなる上記アウタリインホースメント2を示す。なお、図18(b)に示されるアウタリインホースメント2においては、非焼入れ部6の強度よりも非焼入れ部7の強度が低くされている。
【0062】
図18(a)に示されるように、アウタリインホースメント102では、1点の座屈点Bの下側部分が変形によって傾き、傾いた下側部分に沿って相手方車両Vが移動するため、アウタリインホースメント102に生じる曲げモーメントが比較的大きくなる。一方、図18(b)に示されるように、アウタリインホースメント2では、2点の座屈点Bの間の部分が変形によってもさほど傾かないため、相手方車両Vの移動によってアウタリインホースメント2に生じる曲げモーメントが比較的小さくなる。
【0063】
図19は、図18(a)のアウタリインホースメントの曲げモーメント線図及びせん断力線図であり、図20は、図18(b)のアウタリインホースメントの曲げモーメント線図及びせん断力線図である。なお、図19及び図20において、MBは、座屈点Bの分担モーメントである。また、Fyは、アウタリインホースメントが発生する衝突反力であり、FyBは、Fyのうち曲げによって発生する反力である。
【0064】
図19及び図20に示されるように、アウタリインホースメント2においては、アウタリインホースメント102に比べ、センタピラー横方向への変形量が減少すると共に、非焼入れ部6がアウタリインホースメント2の中央付近に位置することによる塑性関節作用で分担モーメントMBが減少する。そして、アウタリインホースメント2において、側面衝突時における衝突反力Fyのうち、曲げによって発生する反力FyBが低下した分は、軸力の増加によって補われる。つまり、アウタリインホースメント102が比較的大きな曲げと比較的小さな軸力とによって側面衝突時における衝突反力を発生するのに対し、アウタリインホースメント2は、比較的小さな曲げと比較的大きな軸力とによって側面衝突時における衝突反力を発生する。
【0065】
以上により、図18(b)に示されるアウタリインホースメント2を備えるセンタピラー構造1においては、ベルトライン部のモーメント入力が減少するため、ベルトライン部における補強を削減することができ、センタピラーの軽量化及び低コスト化を図ることが可能となる。
【0066】
次に、本発明に係る車両のピラー構造の製造方法として、上述したセンタピラー構造1の製造方法について説明する。
【0067】
まず、図21に示されるように、アウタリインホースメント2となる高張力鋼板2aを準備し、ホットスタンプ用の上型(金型)21と下型(金型)22とで高張力鋼板2aを成形及び加熱する。このとき、上型21及び下型22と高張力鋼板2aとの隙間を適切に管理して、高張力鋼板2aにおいて焼入れ部8に対応する部分8aと上型21との隙間よりも、高張力鋼板2aにおいて非焼入れ部6,7に対応する部分6a,7aと上型21との隙間が狭くなるようにする。ここでは、非焼入れ部6,7に対応する部分6a,7aと上型21とを密着させる。
【0068】
続いて、上型21に設けられた冷却水供給孔21aから、焼入れ部8に対応する部分8aと上型21との隙間に冷却水を供給する。このとき、非焼入れ部6,7に対応する部分6a,7aと上型21とが密着しているため、図22に示されるように、非焼入れ部6,7に対応する部分6a,7aには冷却水が流通せず、焼入れ部8に対応する部分8aにのみ冷却水が流通することとなり、急冷却によって当該部分8aにのみ焼入れ処理が施される。そして、これにより形成されたアウタリインホースメント2を用いてセンタピラー構造1を製造する。
【0069】
以上説明したように、センタピラー構造1の製造方法においては、加熱された高張力鋼板2aにおいて非焼入れ部6,7に対応する部分6a,7aへの冷却水の流通が抑制されるため、焼入れ部8に対応する部分8aの焼入れ密度よりも非焼入れ部6,7に対応する部分6a,7aの焼入れ密度が低下する。これにより、アウタリインホースメント2においてロアヒンジ4が取り付けられる部分の上側部分及び下側部分を簡便に且つ確実に非焼入れ部6,7とすることができる。
[第3実施形態]
【0070】
図23は、本発明に係る車両のピラー構造の第3実施形態としてのセンタピラー構造の斜視図である。図23に示されるように、第3実施形態のセンタピラー構造1は、アウタリインホースメント2において非焼入れ部6,7が凸状に形成されていない点で、上述した第2実施形態のセンタピラー構造1と異なっている。
【0071】
このセンタピラー構造1は、次のように製造される。すなわち、図24及び図25に示されるように、アウタリインホースメント2となる高張力鋼板2aを準備し、ホットスタンプ用の上型(金型)21と下型(金型)22とで高張力鋼板2aを成形及び加熱する。続いて、上型21において焼入れ部8に対応する部分に設けられた冷却水供給孔21aから、焼入れ部8に対応する部分8aと上型21との隙間に冷却水を供給する。供給された冷却水は、上型21において焼入れ部8と非焼入れ部6,7との境界部に対応する部分に設けられた冷却水排出孔21bから外部に排出される。これにより、非焼入れ部6,7に対応する部分6a,7aには冷却水が流通せず、焼入れ部8に対応する部分8aにのみ冷却水が流通することとなり、急冷却によって当該部分8aにのみ焼入れ処理が施される。そして、これにより形成されたアウタリインホースメント2を用いてセンタピラー構造1を製造する。
【0072】
以上説明したように、センタピラー構造1の製造方法においては、加熱された高張力鋼板2aにおいて非焼入れ部6,7に対応する部分6a,7aへの冷却水の流通が抑制されるため、焼入れ部8に対応する部分8aの焼入れ密度よりも非焼入れ部6,7に対応する部分6a,7aの焼入れ密度が低下する。これにより、アウタリインホースメント2においてロアヒンジ4が取り付けられる部分の上側部分及び下側部分を簡便に且つ確実に非焼入れ部6,7とすることができる。
【0073】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0074】
例えば、図26及び図27に示されるように、非焼入れ部6,7に代えて、アウタリインホースメント2に切欠き状のビード11,12を設けても、側面衝突時における相手方車両の上昇によってアウタリインホースメント2に生じる曲げモーメントを抑制することができる。
【0075】
図26に示されるアウタリインホースメント2においては、1対の外側稜線部分のそれぞれにビード11,12が設けられている。このアウタリインホースメント2においては、ロアヒンジ4が取り付けられる部分の下側部分のビード11の数よりも上側部分のビード12の数が多くされており、その一方で、板厚や材質が変えられることで、レーザ溶接分割線3の下側部分の部材の強度よりも上側部分の部材の強度が高くされている。
【0076】
また、図27に示されるアウタリインホースメント2においては、1対の外側稜線部分に跨るようにビード12が設けられており、1対の外側稜線部分のそれぞれにビード11が設けられている。そして、アウタリインホースメント2の外側壁の内面に沿って延在するヒンジリインホースメント14の下端部がビード12の内側に回り込んでいる。このようなアウタリインホースメント2及びヒンジリインホースメント14によれば、図28に示されるように、車両が側面衝突を受けた際に、ロアヒンジ4が取り付けられる部分の上側部分でアウタリインホースメント2を確実に折り曲がらせつつ、ヒンジリインホースメント14との干渉によって、センタピラーの過変形を防止し、安定した変形モードを得ることができる。
【0077】
また、本発明に係る車両のピラー構造は、必ずしもセンタピラー構造に限定されず、ピラーが有する脆弱部の数も2つに限定されない。更に、脆弱部は、ピラーを構成する部材の形状の他、ピラーを構成する部材の材質変更や板厚調整、焼入れ具合や塑性効果等により実現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係る車両のピラー構造の第1実施形態としてのセンタピラー構造の分解斜視図である。
【図2】図1に示されるセンタピラー構造の側面図である。
【図3】図1に示されるセンタピラー構造のセンタピラーの強度分布を示す図である。
【図4】図2に示されるIV−IV線に沿っての断面図である。
【図5】図1に示されるセンタピラー構造の正面図である。
【図6】図1に示されるセンタピラー構造のセンタピラーの変形状態を示す図である。
【図7】荷重入力部材が適用されたセンタピラー構造の横断面図である。
【図8】荷重入力部材が適用されたセンタピラー構造の斜視図である。
【図9】荷重入力部材の斜視図である。
【図10】ハーネス取付孔によって実現された脆弱部が適用されたセンタピラー構造の側面図である。
【図11】ハーネス取付孔によって実現された脆弱部が適用されたセンタピラー構造の横断面図である。
【図12】脆弱部に対応するように配置された端部を有するドアビームが適用されたセンタピラー構造の側面図である。
【図13】脆弱部に対応するように配置された端部を有するドアビームが適用されたセンタピラー構造の横断面図である。
【図14】脆弱部間の部分が鉛直方向と略平行な接線を有する湾曲状に変形するように構成されたセンタピラーの変形状態を示す図である。
【図15】緩衝部材が適用されたセンタピラー構造の横断面図である。
【図16】本発明に係る車両のピラー構造の第2実施形態としてのセンタピラー構造の斜視図である。
【図17】図16のセンタピラー構造の正面図である。
【図18】側面衝突時におけるアウタリインホースメントの変形状態を示す図である。
【図19】図18(a)のアウタリインホースメントの曲げモーメント線図及びせん断力線図である。
【図20】図18(b)のアウタリインホースメントの曲げモーメント線図及びせん断力線図である。
【図21】図16のセンタピラー構造の製造工程を示す図である。
【図22】図16のセンタピラー構造の製造工程を示す図である。
【図23】本発明に係る車両のピラー構造の第3実施形態としてのセンタピラー構造の斜視図である。
【図24】図23のセンタピラー構造の製造工程を示す図である。
【図25】図23のセンタピラー構造の製造工程を示す図である。
【図26】本発明に係る車両のピラー構造の他の実施形態としてのセンタピラー構造の斜視図である。
【図27】本発明に係る車両のピラー構造の他の実施形態としてのセンタピラー構造の斜視図である。
【図28】側面衝突時における図27のアウタリインホースメントの変形状態を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1…センタピラー構造、2…アウタリインホースメント(補強部材)、4…ロアヒンジ(凸部)、6,7…非焼入れ部、8…焼入れ部、10…センタピラー、11,12…ビード(補強部材において脆弱化された部分)、15…アウタパネル(外郭部材)、16…インナパネル(外郭部材)、17…脆弱部(第1の脆弱部)、18…脆弱部(第2の脆弱部)、21…上型(金型)、21a…冷却水供給孔、21b…冷却水排出孔、22…下型(金型)、36…フロントドアビーム、36a…後端部、37…リアドアビーム、37a…前端部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の脆弱部、及び前記第1の脆弱部よりも上方に位置する第2の脆弱部を有するピラーを備えることを特徴とする車両のピラー構造。
【請求項2】
前記第1の脆弱部と前記第2の脆弱部との間において前記ピラーから車幅方向外側に突出する凸部を備えることを特徴とする請求項1記載の車両のピラー構造。
【請求項3】
前記第1の脆弱部の強度は、前記第2の脆弱部の強度よりも低いことを特徴とする請求項1又は2記載の車両のピラー構造。
【請求項4】
前記第1の脆弱部は、車幅方向外側から前記ピラーに作用すると想定される外力の作用部分に対して下方に位置し、前記第2の脆弱部は、前記作用部分に対して上方に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の車両のピラー構造。
【請求項5】
前記ピラーは、外郭部材、及び前記外郭部材内に配置された補強部材を有し、
前記第1の脆弱部及び前記第2の脆弱部は、前記補強部材において脆弱化された部分によって実現されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の車両のピラー構造。
【請求項6】
前記第1の脆弱部及び前記第2の脆弱部の少なくとも一方には、ドアビームの端部が対応するように配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の車両のピラー構造。
【請求項7】
前記ピラーは、車幅方向外側から前記第1の脆弱部と前記第2の脆弱部との間の部分に外力が作用した場合に、前記第1の脆弱部と前記第2の脆弱部との間の部分の変位が最も大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の車両のピラー構造。
【請求項8】
前記ピラーは、外郭部材、及び前記外郭部材内に配置された補強部材を有し、
前記補強部材においては、ドアのロアヒンジが取り付けられる部分の上側部分及び下側部分が非焼入れ部とされ、前記上側部分及び前記下側部分を除く部分が焼入れ部とされており、
前記第1の脆弱部及び前記第2の脆弱部は、前記非焼入れ部によって実現されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の車両のピラー構造。
【請求項9】
前記補強部材に焼入れ処理を施す際に、加熱された前記補強部材において前記非焼入れ部に対応する部分に比べ、前記焼入れ部に対応する部分に冷却水を流通させて製造されたことを特徴とする請求項8記載の車両のピラー構造。
【請求項10】
前記補強部材において前記非焼入れ部に対応する部分を凸状に形成し、ホットスタンプ用の金型と前記焼入れ部に対応する部分との隙間よりも、前記金型と前記非焼入れ部に対応する部分との隙間を狭くすることにより、前記非焼入れ部に対応する部分に比べ、前記焼入れ部に対応する部分に前記冷却水を流通させて製造されたことを特徴とする請求項9記載の車両のピラー構造。
【請求項11】
ホットスタンプ用の金型において前記焼入れ部に対応する部分に冷却水供給孔を設け、前記金型において前記焼入れ部と前記非焼入れ部との境界部に対応する部分に冷却水排出孔を設けることにより、前記非焼入れ部に対応する部分に比べ、前記焼入れ部に対応する部分に前記冷却水を流通させて製造されたことを特徴とする請求項9記載の車両のピラー構造。
【請求項12】
外郭部材、及び前記外郭部材内に配置された補強部材を有するピラーを備えるピラー構造の製造方法であって、
前記補強部材に焼入れ処理を施す際に、加熱された前記補強部材において、ドアのロアヒンジが取り付けられる部分の上側部分及び下側部分に比べ、前記上側部分及び前記下側部分を除く部分に冷却水を流通させることにより、前記上側部分及び前記下側部分を非焼入れ部とし、前記上側部分及び前記下側部分を除く部分を焼入れ部として、第1の脆弱部、及び前記第1の脆弱部よりも上方に位置する第2の脆弱部を前記ピラーに設けることを特徴とする車両のピラー構造の製造方法。
【請求項1】
第1の脆弱部、及び前記第1の脆弱部よりも上方に位置する第2の脆弱部を有するピラーを備えることを特徴とする車両のピラー構造。
【請求項2】
前記第1の脆弱部と前記第2の脆弱部との間において前記ピラーから車幅方向外側に突出する凸部を備えることを特徴とする請求項1記載の車両のピラー構造。
【請求項3】
前記第1の脆弱部の強度は、前記第2の脆弱部の強度よりも低いことを特徴とする請求項1又は2記載の車両のピラー構造。
【請求項4】
前記第1の脆弱部は、車幅方向外側から前記ピラーに作用すると想定される外力の作用部分に対して下方に位置し、前記第2の脆弱部は、前記作用部分に対して上方に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の車両のピラー構造。
【請求項5】
前記ピラーは、外郭部材、及び前記外郭部材内に配置された補強部材を有し、
前記第1の脆弱部及び前記第2の脆弱部は、前記補強部材において脆弱化された部分によって実現されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の車両のピラー構造。
【請求項6】
前記第1の脆弱部及び前記第2の脆弱部の少なくとも一方には、ドアビームの端部が対応するように配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の車両のピラー構造。
【請求項7】
前記ピラーは、車幅方向外側から前記第1の脆弱部と前記第2の脆弱部との間の部分に外力が作用した場合に、前記第1の脆弱部と前記第2の脆弱部との間の部分の変位が最も大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の車両のピラー構造。
【請求項8】
前記ピラーは、外郭部材、及び前記外郭部材内に配置された補強部材を有し、
前記補強部材においては、ドアのロアヒンジが取り付けられる部分の上側部分及び下側部分が非焼入れ部とされ、前記上側部分及び前記下側部分を除く部分が焼入れ部とされており、
前記第1の脆弱部及び前記第2の脆弱部は、前記非焼入れ部によって実現されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の車両のピラー構造。
【請求項9】
前記補強部材に焼入れ処理を施す際に、加熱された前記補強部材において前記非焼入れ部に対応する部分に比べ、前記焼入れ部に対応する部分に冷却水を流通させて製造されたことを特徴とする請求項8記載の車両のピラー構造。
【請求項10】
前記補強部材において前記非焼入れ部に対応する部分を凸状に形成し、ホットスタンプ用の金型と前記焼入れ部に対応する部分との隙間よりも、前記金型と前記非焼入れ部に対応する部分との隙間を狭くすることにより、前記非焼入れ部に対応する部分に比べ、前記焼入れ部に対応する部分に前記冷却水を流通させて製造されたことを特徴とする請求項9記載の車両のピラー構造。
【請求項11】
ホットスタンプ用の金型において前記焼入れ部に対応する部分に冷却水供給孔を設け、前記金型において前記焼入れ部と前記非焼入れ部との境界部に対応する部分に冷却水排出孔を設けることにより、前記非焼入れ部に対応する部分に比べ、前記焼入れ部に対応する部分に前記冷却水を流通させて製造されたことを特徴とする請求項9記載の車両のピラー構造。
【請求項12】
外郭部材、及び前記外郭部材内に配置された補強部材を有するピラーを備えるピラー構造の製造方法であって、
前記補強部材に焼入れ処理を施す際に、加熱された前記補強部材において、ドアのロアヒンジが取り付けられる部分の上側部分及び下側部分に比べ、前記上側部分及び前記下側部分を除く部分に冷却水を流通させることにより、前記上側部分及び前記下側部分を非焼入れ部とし、前記上側部分及び前記下側部分を除く部分を焼入れ部として、第1の脆弱部、及び前記第1の脆弱部よりも上方に位置する第2の脆弱部を前記ピラーに設けることを特徴とする車両のピラー構造の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図26】
【図27】
【図28】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図26】
【図27】
【図28】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2010−18254(P2010−18254A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183100(P2008−183100)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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