説明

車両のフロアパネル構造

【課題】、簡単な構成でペダル操作性を効果的に向上できるようにする。
【解決手段】車室の底部を形成するフロアパネル9の上方に運転席シートが配設されるとともに、該運転席シートの前方にブーキペダル5等からなる操作ペダルが配設された車両において、上記操作ペダルを踏込操作する際にペダル操作足の踵部が載置されるフロアパネル9上の踵部載置領域には、前上がりに傾斜した傾斜フロア部15が設けられるとともに、その前方部には、該傾斜フロア部15に比較して前上がりの傾斜度合が小さく設定されることにより上記踵部の干渉を回避する水平面部16等からなる干渉回避部が設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の底部を形成するフロアパネルの上方に運転席シートが配設されるとともに、該運転席シートの前方に操作ペダルが配設された車両のフロアパネル構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1に示されるように、シート座面位置を調整するシート位置調整手段と、ペダルを操作する乗員の脚部が載置されるフロアパネル(可動フロア)の上下位置を調整するフロアパネル位置調整手段とを設け、かつ、これら両手段を操作する運転姿勢調整操作手段を設けることで、乗員の体格差に左右されることなく、適切な運転姿勢の設定と、前方視界の確保とが両立でき、またシートの前後方向への調整量が小さくても適正な運転姿勢が得られ、さらにフロア高さを調整することにより適切なペダル操作性を確保できるように構成された車両の運転姿勢調整装置が知られている。
【0003】
また、下記特許文献2に示されるように、運転席シートに着座した運転者のペダル操作足により踏込操作されるブレーキペダルとアクセルペダルとが車室前部に配設された自動車運転席のフロア構造において、上記ブレーキペダルおよびアクセルペダルの踏込ポイントよりも後方に位置するフロア部上に、上記ペダル操作足の踵部が載置される踵載置領域を設け、該踵載置領域の一部に、上面が他の領域よりも隆起した踵載置部を形成するとともに、上記ブレーキペダルの後方に位置する第1踵載置部の前後寸法を、上記アクセルペダルの後方に位置する第2踵載置部の前後寸法よりも短く設定することにより、簡単な構成で運転姿勢を容易かつ適正に調整して運転者が操作ペダルを適正に操作できるようにすることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−145405号公報
【特許文献2】特開2009−208638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された車両の運転姿勢調整装置では、例えばシート位置調整手段により、運転席シートに着座する運転者の身長に応じて運転席シートを前後移動させるとともに、これに対応してシートクッションの上下位置および傾斜角度を調整することができるため、運転席シートに着座した運転者の着座姿勢を安楽状態に維持しつつ、運転席シートの前方に配設されたアクセルペダルまたはブレーキペダル等からなる操作ペダルの踏込操作を適正に行うことが可能であり、かつ前方視界を適正に確保できるように運転者の着座姿勢を調整することが可能である。また、運転席シートに着座する運転者が身長の異なる者に乗り換わって、足の長さ及び足裏寸法等が変化すると、これに対応させるように上記フロアパネル位置調整手段により可動フロアの上下位置を調整することができるため、各運転者の踵部をフロアパネル上に載置した状態で、ペダル操作足の拇子球部を操作ペダルのペダル面部に対して適正に当接させることができるように、操作ペダルの踏込特性を調整できるという利点がある。
【0006】
しかし、上記のようにシート位置調整手段により運転席シートの前後位置と、シートクッションの上下位置および傾斜角度とを調整可能に構成するとともに、フロアパネル位置調整手段により可動フロアパネルの上下位置を調整可能に構成した場合には、該調整装置の構造が複雑で製造コストが高くなる等の問題がある。特に、上記可動フロアと、その下方に位置するフロアパネルとの間に形成された狭い間隙内に、上記フロアパネル位置調整手段を設置しなければならないため、その設置スペースを充分に確保することが困難である等の問題があった。また、上記フロアパネル位置調整手段により可動フロアパネルの上下位置を適正値に調整した場合においても、シート位置調整手段により運転席シートの位置および角度を調整することによる影響を受けて運転者のペダル操作性等が変化するため、上記運転席シートの位置および角度と可動フロアパネルの上下位置との全てを適正値に調整することは極めて困難であった。
【0007】
一方、上記特許文献2に開示された運転席のフロア構造では、運転席シートに着座した低身長者が、ペダル操作足の踵部を上記第1踵載置部上に載置した状態で、その足首角度および足裏面の傾斜角度を適正角度に維持しつつ、ペダル操作足の拇子球部をアクセルペダルの踏込ポイントに当接させることができるため、上記ペダル操作足の踵部がフロア面から離間した状態で、アクセルペダルの踏込操作が行われることに起因して微妙なペダル操作が不可能となるのを効果的に防止できるという利点がある。また、高身長者の場合には、上記第1踵載置部の後端部よりも後方側で、かつ第2踵載置部の側方側部に、ペダル操作足の踵部を位置させた状態で、上記アクセルペダルおよびブレーキペダルに対するペダル踏み換え操作等を行うことができるため、該踏み換え操作が上記第1,第2踵載置部により阻害されるという事態の発生を効果的に防止できる等の利点がある。
【0008】
しかし、上記のようにペダル操作足の踵部が載置される踵部載置領域の上面を一定角度で前上がりに傾斜させた場合には、運転者がその踵部を上記踵部載置領域上に載置した状態で上記ブレーキペダル等からなる操作ペダルを踏み込んで微妙に踏込量を調節する運転状態から、操作ペダルの踏込量を増大させる急ペダル操作状態に移行する際等に、ペダル操作足の踵部が前方に移動して上記傾斜面からなる踵部載置領域の上面に強く圧接される等により運転者が違和感を受け易く、ペダル操作性の面で改善の余地があった。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑み、簡単な構成でペダル操作性を効果的に向上させることができる車両のフロアパネル構造を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、車室の底部を形成するフロアパネルの上方に運転席シートが配設されるとともに、該運転席シートの前方に操作ペダルが配設された車両において、上記操作ペダルを踏込操作する際にペダル操作足の踵部が載置されるフロアパネル上の踵部載置領域には、前上がりに傾斜した傾斜フロア部が設けられるとともに、その前方部には、該傾斜フロア部に比較して前上がりの傾斜度合が小さく設定されることにより上記踵部の干渉を回避する干渉回避部が設けられたものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、上記請求項に係る車両のフロアパネル構造において、上記干渉回避部の上面が略水平な平坦面に形成されたものである。
【0012】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両のフロアパネル構造において、上記傾斜フロア部の操作ペダル寄り部分には、その運転者寄り部分に比較して急角度で前上がり状態に傾斜した急傾斜領域が設けられたものである。
【0013】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両のフロアパネル構造において、上記操作ペダルとして運転者によって踏込操作されるアクセルペダルとその側方に併設されたブレーキペダルとが設けられたものである。
【0014】
請求項5に係る発明は、上記請求項4に記載の車両のフロアパネル構造において、上記ブレーキペダルは、上部に設けられた枢支部と、該枢支部を支点に揺動可能に支持された踏込操作部とを備えたものである。
【0015】
請求項6に係る発明は、上記請求項4または5に記載の車両のフロアパネル構造において、上記アクセルペダルは、フロアパネルに固定されたペダル基部と、該ペダル基部に設けられた枢支部を支点に揺動可能に支持された踏込操作部とを備えたものである。
【0016】
請求項7に係る発明は、上記請求項1に記載の車両のフロアパネル構造において、上記干渉回避部の上面が前下がりの傾斜面に形成されたものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、アクセルペダルおよびブレーキペダル等からなる操作ペダルの踵部載置領域に前上がりに傾斜した傾斜フロア部を設けたため、足裏寸法の短い低身長者であっても、そのペダル操作足の踵部を上記傾斜フロア部上に載置することにより、該踵部を比較的上方に位置させた状態で、その足首角度および足裏面の傾斜角度を適正角度に維持しつつ、その拇子球部を例えば上記アクセルペダルおよびブレーキペダルの適正位置に当接させることにより、これを容易かつ正確に踏込操作できるという利点がある。また、上記傾斜フロア部の前方部に、該傾斜フロア部に比較して前上がりの傾斜度合を小さく設定してなる踵部の干渉回避部を設けたため、例えば運転者がペダル操作足の踵部を上記傾斜フロア部上に載置した状態で、ブレーキペダルの操作量を微調節する通常の制動状態から、該ブレーキペダルを急激に踏み込む急制動状態に移行する際等に、上記傾斜フロア部の上面に運転者の踵部が強く圧接されることによる違和感の発生を防止し、良好なペダル操作性を確保できるという利点がある。
【0018】
請求項2に係る発明では、上記干渉回避部の上面が略水平な平坦面に形成したため、簡単な構成で上記ブレーキペダルを急激に踏み込む急制動時等に、上記傾斜フロア部の上面に運転者の踵部が強く圧接されることによる違和感の発生を効果的に防止できるという利点がある。
【0019】
請求項3に係る発明では、上記傾斜フロア部の操作ペダル寄り部分に、その運転者寄り部分に比較して急角度で前上がり状態に傾斜した急傾斜領域を設けたため、足裏寸法の短い低身長者であっても、そのペダル操作足の踵部を上記傾斜フロア部の操作ペダル寄り部分上に載置することにより、該踵部を比較的上方に位置させた状態で、その足首角度および足裏面の傾斜角度を適正角度に維持しつつ、その拇子球部を例えば操作ペダルの適正位置に当接させることにより、これを容易かつ正確に踏込操作できる等の利点がある。
【0020】
請求項4に係る発明では、上記操作ペダルとして運転者によって踏込操作されるアクセルペダルとその側方に併設されたブレーキペダルとを設けたため、運転者がペダル操作足の踵部を上記傾斜フロア部上に載置した状態で、アクセルペダル上を操作する通常の運転状態から、ブレーキペダルを急激に踏み込む急制動状態に移行する際等に、上記傾斜フロア部の上面に運転者の踵部が強く圧接されることによる違和感の発生を防止し、良好なペダル操作性を確保できるという利点がある。
【0021】
請求項5に係る発明では、上端枢支部を支点に揺動可能に支持されたペダル本体を備えた所謂吊りペダルにより上記ブレーキペダルを構成するとともに、該ブレーキペダルを操作するペダル操作足の踵部が載置される踵載置領域に設けられた傾斜フロア部の前方部に、該傾斜フロア部に比較して前上がりの傾斜度合を小さく設定してなる踵部の干渉回避部を設けたため、運転席シートに着座した運転者の体格の如何に拘わらず、簡単な構成で上記ブレーキペダルを適正に踏込操作することができるとともに、例えば運転者がペダル操作足の踵部を上記傾斜フロア部上に載置した状態で、ブレーキペダルの操作量を微調節する通常の制動状態から、該ブレーキペダルを急激に踏み込む急制動状態に移行する際等に、上記傾斜フロア部の上面に運転者の踵部が強く圧接されることによる違和感の発生を防止し、良好なペダル操作性を確保できるという利点がある。
【0022】
請求項6に係る発明では、車室のフロアパネルの上方にペダル操作足の踵部を載置した状態で微妙なペダル操作を行うことが要求されるアクセルペダルを、フロアパネルに固定されたペダル基部と、該ペダル基部に設けられた枢支部を支点に揺動可能に支持されたペダル本体とを備えたオルガン式ペダルにより構成し、該オルガン式のアクセルペダルを操作する際にペダル操作足の踵部が載置されるフロアパネル上の踵部載置領域に設けられた傾斜フロア部の前方部に、該傾斜フロア部に比較して前上がりの傾斜度合を小さく設定してなる踵部の干渉回避部を設けたため、運転席シートに着座した運転者の体格の如何に拘わらず、簡単な構成で上記アクセルペダルを適正に踏込操作することができるとともに、例えば運転者がペダル操作足の踵部を上記傾斜フロア部上に載置した状態で、アクセルペダルの操作量を微調節する通常の運転状態から、該アクセルペダルの踏込量を急激に増大させる踏み増操作時等に、上記傾斜フロア部の上面に運転者の踵部が強く圧接されることによる違和感の発生を防止し、良好なペダル操作性を確保できるという利点がある。
【0023】
請求項7に係る発明では、上記干渉回避部の上面を前下がりの傾斜面に形成したため、運転者がアクセルペダルを操作する通常の運転状態から、ブレーキペダルを急激に踏み込む急制動状態に移行する際等に、運転者の踵部がフロア面に強く圧接されることによる違和感の発生を、より効果的に防止できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る車両のフロアパネル構造の第1実施形態を示す説明図である。
【図2】ペダルの配設構造を示す背面断面図である。
【図3】アクセルペダルの具体的構成を示す図2のIII−III線断面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】アクセルペダルの具体的構成を示す分解斜視図である。
【図6】フロアマットの取付構造を示す側面断面図である。
【図7】図2のVII−VII線断面図である。
【図8】シートの前後位置調整機構および傾斜角度調整機構の具体的構成を示す側面図である。
【図9】シートの前後位置調整機構および傾斜角度調整機構の具体的構成を示す斜視図である。
【図10】図8のX−X線断面図である。
【図11】傾斜角度調整機構の具体的構成を示す側面断面図である。
【図12】傾斜角度調整機構の具体的構成を示す平面断面図である。
【図13】シートクッションを車両の前方側に移動させた状態を示す側面図である。
【図14】平均身長者および低身長者の着座状態を示す側面図である。
【図15】平均身長者および低身長者の踵部載置状態を示す説明図である。
【図16】高身長者および平均身長者の着座状態を示す側面図である。
【図17】高身長者の踵部載置状態を示す説明図である。
【図18】本発明の比較例を示す図7相当図である。
【図19】本発明に係る車両のフロアパネル構造の第1実施形態の変形例を示す図17相当図である。
【図20】本発明に係る車両のフロアパネル構造の第2実施形態を示す斜視図である。
【図21】上記第2実施形態における図2相当図である。
【図22】低身長者の踵部に作用する荷重の変化状態を示すグラフである。
【図23】中身長者の踵部に作用する荷重の変化状態を示すグラフである。
【図24】高身長者の踵部に作用する荷重の変化状態を示すグラフである。
【図25】本発明に係る車両のフロアパネル構造の第3実施形態を示す図7相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜図7は、本発明に係る車両のフロアパネル構造の第1実施形態を示している。該車両の車室内には、その底部を形成するフロアパネル9の上方に運転席シート1が配設されるとともに、そのシートクッション1aをスライド変位させてその前後位置を調整する前後位置調整機構2と、上記シートクッション1aの傾斜角度を調整する傾斜角度調整機構3とが設けられている。上記車室の前部には、運転席シート1に着座した運転者により踏込操作されるアクセルペダル4とブレーキペダル5とクラッチペダル6とが配設されている。
【0026】
上記車両の車体には、エンジンルームと車室とを区画するダッシュパネル7と、該ダッシュパネル7の下端部から後下がりの傾斜状態で車体の後方側に延びるキックアップパネル8と、その後端部に連続して車体の後方側に延びる略平坦な車室のフロアパネル9とが設けられている。また、上記フロアパネル9の上面には、防振、遮音および断熱機能等を有するメルシート、フェルト材またはグラスウール等を主体としたクッション材10と、その上面を被覆するパイル地等からなる表層材11とを備えた従来周知のフロアカーペット12が敷設されている。
【0027】
上記運転席シート1の前方に配設されたアクセルペダル4およびブレーキペダル5からなる操作ペダルを踏込操作する際に、運転者の右足からなるペダル操作足の踵部が載置されるフロアパネル9上の踵部載置領域には、ヒールパッド材13が配設されるとともに、該ヒールパッド材13および上記フロアカーペット12の上面を覆うようにフロアマット14が敷設されている。
【0028】
上記ヒールパッド材13は、通常時に運転者が載置するペダル操作足の踵部を支持し得る程度の剛性と、衝突時にペダル操作足の踵部に作用する衝撃エネルギーを吸収し得る程度の弾性とを有する発泡ウレタンまたは合成ゴム材等からなり、その車幅寸法がアクセルペダル4側の踵載置領域からブレーキペダル5側の踵載置領域に至る範囲に設定されるとともに、上面が前上がりに傾斜した傾斜フロア部15を有している。該傾斜フロア部15は、その運転席寄り部分15aと操作ペダル寄り部分15bとに区画されている(図6参照)。また、上記傾斜フロア部15の前端部には上面が水平に形成された水平面部16が連設されている。
【0029】
そして、上記傾斜フロア部15の運転席寄り部分15a、つまり車両の後方側に位置する部分の傾斜角度α1は、例えば15°〜5°の範囲内に設定されている。また、上記傾斜フロア部15の操作ペダル寄り部分15b、つまり車両の前方側に位置する部分の傾斜角度α2は、上記運転席寄り部分15aの傾斜角度α1に比較して大きな値、例えば25°〜15°の範囲内に設定されている。さらに、上記傾斜フロア部15の運転席寄り部分15aと操作ペダル寄り部分15bとの間には、上面の傾斜角度が前方に至るにしたがって運転席寄り部分15aの傾斜角度α1に対応した値から操作ペダル寄り部分15bの傾斜角度α2に対応した値へと漸増する中間領域15cが設けられている。
【0030】
そして、上記フロアカーペット12の裏打ちクッション材10の所定部分が切除されることにより形成された空隙部に上記ヒールパッド材13が設置されてフロアパネル9の上面に接着される等の手段で固定されるととともに、該ヒールパッド材13の上面を覆うように表層材11が設置され、さらにその上にフロアマット14が敷設されている。このようにして上記アクセルペダル4およびブレーキペダル5の後方に位置する踵載置領域には、上記ヒールパッド材13の傾斜フロア部15および水平面部16に対応した傾斜面部および水平面部が上記フロアマット14の上面に形成されている。
【0031】
また、上記傾斜フロア部15の前方側には、該傾斜フロア部15に比較して前上がりの傾斜度合が小さく設定された干渉回避部が形成されている。すなわち、当第1実施形態では、上記傾斜フロア部15の前方側に上面の傾斜角度が0°程度に設定された略水平な平坦面からなる水平面部16が形成されることにより、後述するように、ペダル操作時に運転者の踵部がフロア面に干渉することが回避されるように構成されている。
【0032】
上記アクセルペダル4は、図3、図4および図6に示すように、運転席シート1に着座した運転者の足元部に位置するフロアパネル9上に設置された支持軸17からなる枢支部を支点に下端部が回動可能に支持されるとともに、運転者の踏込操作に応じて前後に揺動変位するように立設されたペダル本体18と、該ペダル本体18を支持するペダル基部19と、上記ペダル本体18の揺動変位を検出して図外の制御部に検出信号を出力するペダル操作検出部20とを備えた所謂オルガン式の操作ペダルからなっている。
【0033】
上記ペダル本体18は、下端部に上記支持軸17が挿通される挿通部21が設けられた板状の成形体からなり、その上下方向の中間部分であって運転席シート1の前方に配設された上記フロアマット14上に踵部を載置したペダル操作足の拇子球部等が当接する踏込操作部には、側面視で運転席側(後方側)に膨出した例えば100mm〜200mm程度の曲率半径R1を有する湾曲面からなる凸面状部23が設けられている。
【0034】
上記凸面状部23の上端部には、該凸面状部23よりも曲率半径が大きく設定された平坦面状部24が連設されている。当第1実施形態では、上記平坦面状部24の曲率半径が無限大に設定されることにより、側面視で上記凸面状部23の上端部から斜め上方に向けて上記平坦面状部24が直線状に延びるように設置されている。また、上記ペダル本体18には、図2および図6等に示すように、上記ブレーキペダル5側に位置する凸面状部23の側辺部を正面視で下広がり形状に膨出させることにより、その車幅方向寸法を拡張した拡張部25が形成されている。
【0035】
ペダル本体18の裏面には、上記ペダル操作検出部20を構成する操作ロッド26が連結ピン27等を介して回動可能に枢支されている。そして、上記ペダル本体18は、その下端部がペダル基部19に設けられた枢支部の支持軸17により支持されるとともに、上方部が操作ロッド26に外嵌されたペダル支持ばね28を介してペダル基部19に支持されることにより、通常時(非操作時)には、例えば水平線に対する傾斜角度βが70°程度となった前上がりの傾斜状態に保持されている。
【0036】
上記ペダル基部19は、キックアップパネル8およびフロアパネル9に突設されたスタッドボルト29の挿通孔を有する取付部30が外周部に設けられた縦長の箱状体31と、該箱状体31の上面開口部を覆うように取り付けられる蓋体32とを有している。そして上記ヒールパッド材13の前部に箱状体31の後部を当接させた状態で、上記スタッドボルト29を箱状体31の取付部30に挿通させるとともに、その先端部に固定ナット(図示せず)を螺着することによりペダル基部19をフロアパネル9上に固定している。
【0037】
上記ペダル基部19の蓋体32は、箱状体31の周壁部に設けられたビス止め部に螺着されるビス(図示せず)の挿通孔33が外周部に形成され、かつ上記操作ロッド26の挿通孔34が上部中央に形成されるとともに、該挿通孔34の周縁部により上記ペダル支持ばね28の下端部が支持されるように構成されている。また、蓋体32の下端部には、上記支持軸17からなる枢支部の左右両端部を支持する支持部35が設けられている。なお、図3および図4において、符号36は、上記ペダル支持ばね28の上端部を支持するばね受け座金である。
【0038】
上記ペダル基部19の箱状体31内には、ペダル本体18の揺動操作に応じて駆動されるエンコーダ軸36が回転自在に支持されるとともに、該エンコーダ軸36の基端部には、その回動変位を検出するエンコーダ37が取り付けられている。また、上記エンコーダ軸36の中央部周面には、駆動アーム38が突設されるとともに、該駆動アーム38の先端部に設けられた連結部39に、上記操作ロッド26の基端に設けられた球状部40が圧入される等により回動可能に連結されている。
【0039】
また、上記ヒールパッド材13の前方部に設けられた水平面部16上にフロアマット14の前方部が載置されるとともに、上記アクセルペダル4およびブレーキペダル5の後方側に位置する上記傾斜フロア部15およびフロアカーペット12の上面が上記フロアマット14により覆われるようになっている。そして、図3に示すように、上記ペダル基部19の後端部にフロアマット14の前端面が当接することにより位置決めされた状態で、図6に示すように、フロアマット14の後端部が止着具41を介してフロアカーペット12の表層材等11に止着されている。なお、必要に応じて上記フロアマット14の前端部および側辺部を同様の方法で止着するように構成してもよい。
【0040】
上記構成において、フロアマット14により覆われた傾斜フロア部15上に運転者がそのペダル操作足、つまり右足の踵部を載置するとともに、その拇子球部を上記ペダル本体18の凸面状部23に当接させた状態で、該ペダル本体18を運転者が踏込操作すると、上記ペダル支持ばね28の付勢力に抗してペダル本体18が上記支持軸17からなる枢支部を支点に車両の前方側へ揺動変位するように駆動される。該ペダル本体18に入力された駆動力が上記操作ロッド26および駆動アーム38を介してエンコーダ軸36に伝達されることにより、該エンコーダ軸36が回動駆動されるとともに、その回転量が上記エンコーダ37により検出され、その検出信号がコネクタ42およびハーネス43を介して図外の制御部に出力されるようになっている。
【0041】
また、上記アクセルペダル4の左側方に配設されたブレーキペダル5およびその左側方に配設されたクラッチペダル6は、図2および図7に示すように、その上端部に設けられて上記ダッシュパネル7に設けられた枢支部44,45と、該上端枢支部44,45を支点としてそれぞれ揺動可能に支持されたペダル本体46,47とを有する所謂吊りペダルからなっている。
【0042】
そして、上記ブレーキペダル5を構成するペダル本体46の下端部に設けられた踏込操作部46a上に運転者の右足からなるペダル操作足の拇子球部が押し当てられた状態で踏み込みまれ、上端枢支部44を支点に上記ペダル本体46が揺動変位することにより、ブレーキ操作が行われ、また上記クラッチペダル6を構成するペダル本体47の下端部に設けられた踏込操作部47a上に運転者の左足からなるペダル操作足の拇子球部が押し当てられて踏み込みまれ、上端枢支部45を支点に上記ペダル本体47が揺動変位することにより、クラッチ操作が行われるよう構成されている。
【0043】
上記運転席シート1の設置部には、図8〜図10に示すように、シートクッション1aを前後移動可能に支持する左右一対のシートスライドロアレール51が配設されるとともに、該シートスライドロアレール51に沿ってシートスライドアッパレール52がスライド変位可能に支持されている。上記シートスライドロアレール51は、上面が開口したC型鋼等からなり、その前後両端部には、取付ブラケット53,54が溶接される等により一体に接合されている。そして、上記取付ブラケット53,54が、クロスメンバ50の上面等に締結ボルト等を介して固定されることにより、上記シートスライドロアレール51がやや前上がりに傾斜した状態でフロアパネル9上に設置されている。
【0044】
上記左右のシートスライドロアレール51内には、図10に示すように、ねじ軸からなる回転軸55が回転自在に設置されるとともに、両シートスライドアッパレール52の前端部間には、駆動モータ56により回転駆動される駆動軸57およびこれを回転可能に支持する支持部材58が車幅方向に延びるように設置されている。また、上記駆動軸57の左右両端部には、その駆動力を上記回転軸55に伝達するベベルギア機構またはウォームホイールギア機構等からなる動力伝達部59が設けられている。
【0045】
上記シートスライドロアレール51、シートスライドアッパレール52、回転軸55、駆動モータ56、駆動軸57および動力伝達部59と、シートスライドロアレール51の底部に固定されて上記回転軸55が螺合するナットブロック51aとにより、上記運転席シート1のシートクッション1aをシートスライドロアレール51に沿ってスライド変位させて運転席シート1の前後位置を調整する前後位置調整機構2が構成されている。
【0046】
例えば、図外の前後調整スイッチが前進方向に操作された場合等には、上記駆動モータ56を正転させる制御信号が出力され、該制御信号に応じて駆動モータ56が正回転することにより、上記シートクッション1aを前進させる方向の駆動力が上記駆動軸57、動力伝達部59および回転軸55に伝達される。該回転軸55は、上記シートスライドロアレール51の底部に固定されたナットブロック51aによって支持された状態で、上記動力伝達部59から入力された駆動力により回転駆動されて車両の前方側に螺進することにより、上記シートスライドアッパレール52とともに運転席シート1のシートクッション1aが車両の前方側に駆動される。
【0047】
一方、上記前後調整スイッチが後退方向に操作された場合には、上記駆動モータ56を逆回転させる制御信号が出力され、該制御信号に応じて駆動モータ56が逆転することにより、上記シートクッション1aを後退させる方向の駆動力が上記駆動軸57、動力伝達部59および回転軸55に伝達され、該回転軸55が逆転駆動されて車体の後方側に螺進することにより、上記シートスライドアッパレール52および運転席シート1のシートクッション1aが車体の後方側に駆動されるように構成されている。
【0048】
また、上記シートスライドロアレール51は、前上がりに傾斜した状態で車体フロア上に設置されているため、上記前後位置調整機構2によりシートスライドアッパレール52および運転席シート1のシートクッション1aを、上記シートスライドロアレール51に沿って車両の前方側に移動させると、これに連動してシートクッション1aが上方に押し上げられることになる。逆に、上記前後位置調整機構2によりシートスライドアッパレール52および運転席シート1のシートクッション1aを、上記シートスライドロアレール51に沿って車体の後方側に移動させると、これに連動してシートクッション1aが下降するようになっている。
【0049】
また、上記シートスライドアッパレール52には、運転席シート1のシートクッション1aの傾斜角度を変化させる傾斜角度調整機構3が設けられている。該傾斜角度調整機構3は、図8および図9に示すように、シートクッション1aの左右両側辺部に設けられたクッションフレーム61と、シートスライドアッパレール52の前部上面に設置されて上記クッションフレーム61の前端部を支持する前部ブラケット62および前部リンク63と、シートスライドアッパレール52の後部上面に設置されて上記クッションフレーム61の後方部を支持する後部ブラケット64および三角形状の後部リンク65と、左右の後部リンク65の後端部同士および上記両クッションフレーム61の後方下端部同士を連結する連結軸66と、シートスライドアッパレール52の中央部上面に設置されて上記後部リンク65に駆動力を伝達する中央リンク67およびこれを支持する中央ブラケット68と、上記中央リンク67の上部を上記後部リンク65の前端部に連結する連結リンク69と、下記駆動軸70、駆動レバー71および傾動駆動部72とを有している。
【0050】
上記中央リンク67は、その下端部が車幅方向に延びる駆動軸70に固定されるとともに、該駆動軸70を介して上記中央ブラケット68に回動自在に支持されている。上記駆動軸70には、該駆動軸70を回動変位させる駆動レバー71が固定されている。また、左右一対のシートスライドアッパレール52の一方(車幅方向の外方側)に設けられた上記中央ブラケット68には、駆動軸70に固定された上記駆動レバー71を駆動する傾動駆動部72が設けられている。
【0051】
上記傾動駆動部72は、図11および図12に示すように、前端部が連結ピン73を介して上記駆動レバー71の先端部(下端部)に連結されたねじ軸74と、該ねじ軸74を回転駆動する駆動モータ75およびギア機構76と、該ギア機構76の前面に固着されたガイドブラケット77とを有し、該ガイドブラケット77の基端部が支持ブラケット78を介して上記中央ブラケット68に支持されている。また、上記ギア機構76には、駆動モータ75の出力軸75aに固着されたウォームギア79と、該ウォームギア79により回転駆動されるウォームナット80とが配設され、該ウォームナット80には、上記ねじ軸74に螺合するねじ孔が形成されている。
【0052】
そして、上記駆動モータ75からウォームギア79を介して入力される駆動力により上記ウォームナット80が回転駆動されるのに応じ、該ウォームナット80に螺合した上記ねじ軸74が回転してねじ送りされるようになっている。該ねじ軸74がねじ送りされるのに応じ、その先端部に設けられた上記連結ピン73が、ガイドブラケット77に形成された支持溝81に沿って前後移動し、その駆動力が連結ピン73を介して上記駆動レバー71に伝達されることにより、該駆動レバー71が揺動変位して上記駆動軸70が回動駆動される。
【0053】
また、上記駆動軸70が回転駆動されるのに応じて上記中央リンク67が揺動変位するとともに、その駆動力が連結リンク69を介して上記後部リンク65に伝達され、該後部リンク65が揺動変位するとともに、これに対応して前部リンク63が揺動変位することにより、シートクッション1aの傾斜角度調節されるようになっている。すなわち、運転席シート1のシートクッション1aが車体の後方側に移動した後退位置では、図6に示すように、上記前部リンク63および中央リンク67が後傾した状態となるとともに、後部リンク65の後端部に設けられた連結軸66が下方に位置した状態となることにより、シートクッション1aの座面が大きく後傾した状態に保持されている。
【0054】
上記構成において、前後調整スイッチにより運転席シート1を車両の前方側に移動させる操作が行われた場合には、予め設定された駆動特性に基づき、上記傾斜角度調整機構3の駆動モータ75を正転駆動する制御信号が図外の制御手段から出力され、該駆動モータ75の正転駆動力が上記ギア機構76、ねじ軸74、連結ピン73、駆動レバー71および駆動軸70を介して中央リンク67に伝達され、該中央リンク67が、上記後傾状態から図12に示す起立状態に移行する。そして、上記中央リンク67が起立状態に移行するのに応じ、その駆動力が連結リンク69を介して後部リンク65に伝達され、該後部リンク65の前端部が車両の前方側に引っ張られることにより、後部リンク65の後端部に設けられた上記連結軸66が上昇するとともに、これに応じてシートクッション1aの後端部が押し上げられるように駆動される。
【0055】
また、上記後部リンク65の揺動変位に連動して前部リンク63が後傾状態から起立状態に移行するため、これに応じてシートクッション1aの前端部が押し上げられつつ前方に移動するように駆動され、該シートクッション1aが上記下方位置から図13に示す上方位置に変位する。さらに、上記シートクッション1aの前端部の上方移動量に比較して後端部の上方移動量が大きく設定されることにより、上記シートクッション1aの上方移動に応じてその座面の後傾角度が、次第に小さくなるように変化し、水平状態に近づくように構成されている。また、これに連動して上記シートバック1bの傾斜角度が変化し、鉛直状態に近付くように変位するようになっている。
【0056】
一方、前後調整スイッチにより運転席シート1を車体の後方側に移動させる操作が行われた場合には、予め設定された駆動特性に基づき、上記傾斜角度調整機構3の駆動モータ75を逆転駆動する制御信号が制御手段から出力され、該駆動モータ75の正転駆動力が上記ギア機構76、ねじ軸74、連結ピン73、駆動レバー71および駆動軸70を介して中央リンク67に伝達される。これにより上記シートクッション1aが上方位置から、図8に示す下方位置に変位し、該シートクッション1aの下方移動に応じてその座面の後傾角度が次第に大きくなるように変化するとともに、上記シートバック1bが大きく後傾した状態となるように構成されている。
【0057】
上記運転席シート1に着座する運転者が身長の異なる者に乗り換わると、その身長に略比例して運転者の座高、腕の長さおよび足の長さ等が変化するため、これに対応して運転席シート1に着座した運転者のアイポイントおよび操作ペダル等に対する操作性も変化する。したがって、新たに運転席シート1に着座した運転者は、その安楽姿勢を維持しつつ、ステアリングハンドル48を適正状態で把持するとともに、例えば上記ペダル本体18の凸面状部23等からなるアクセルペダル4の適正位置にペダル操作足の拇子球部を適正状態で当接させ、かつそのアイポイントを適正ラインLに一致させて前方視界を適正に確保できるように、上記前後位置調整機構2および傾斜角度調整機構3を作動させて運転席シート1の前後位置等を調整しようとする。
【0058】
上記運転席シート1には、身長が150cm以下の者から190cm以上の者まで様々な身長および体形を有する運転者が着座する可能性があるため、これらの者が上記運転席シート1に安楽姿勢で着座して適正に運転操作を行うことができるように構成する必要がある。例えば、運転席シート1に着座する機会が最も多い考えられる平均身長者Mの身長を174cmと設定し、該平均身長者Mの安楽姿勢を統計的に解析した結果、以下のようなデータが得られた。
【0059】
上記運転席シート1に着座した乗員の安楽姿勢とは、長期間に亘りその着座状態を安定して維持できるとともに、ハンドル操作およびペダル操作等に適した着座姿勢を意味している。具体的には、図14に示すように、ペダル操作足の足首角度θ1が85°〜95°程度、膝角度θ2が115°〜135°程度、腰骨部から肩部までの上半身と大腿部との折曲角度θ3が約95°である。また、上記平均身長者Mの場合には、水平線に対して太腿部がなす角度であるサイ角θ4の適正角度が、シートクッション1aの傾斜角度に約1.5°を加算した値であることが、人間工学的実験により確認されている。さらに、上記ステアリングハンドル48を適正に操作することができる肘角θ5は100°〜130°程度、脇角θ6は20°〜45°程度である。
【0060】
したがって、上記平均身長者Mが、例えば足首角度θ1を90°、膝角度θ2を125°、腰骨部から肩部までの上半身と大腿部との折曲角度θ3を95°に設定し、かつサイ角θ4を17°に設定して運転席シート1に着座した場合に、平均身長者MのアイポイントImを、例えば8°程度の角度で前下がりに傾斜する適正ラインLに一致させることができるように、上記シートクッション1aの前後基準位置、上下基準高さおよび基準傾斜角度が設定されている。
【0061】
上記のような平均身長者Mの基準着座状態では、その肘角θ5および脇角θ6が上記範囲内に設定されてステアリングハンドル48を適正に把持することができる。また、図15に示すように、ペダル操作足の踵部Kmを、上記傾斜フロア部15上の所定位置に載置し、かつ水平線に対する足裏面の傾斜角度θ7を例えば59.5°程度に設定した状態で、アクセルペダル4の適正位置、例えばペダル本体18に設けられた上記平坦面状部24に近接した凸面状部23の上方部等に拇子球部Bmを当接させることができる位置に上記アクセルペダル4が配設されている。
【0062】
なお、上記図14において、Hmは、運転席シート1に着座した平均身長者Mのヒップポイント(着座基準点)である。また、当実施形態では、図15の実線に示すように、平均身長者Mがペダル操作足の踵部Kmを載置する基準位置を、例えば傾斜フロア部15に設けられた上記中間領域15c、またはその後方側に設けられた運転席寄り部分15bの前方部分上に設定している。
【0063】
上記運転席シート1に着座する運転者が平均身長者Mから、図14の仮想線で示すように、女性ドライバー等からなる低身長者Sに乗り換わった場合、該低身長者Sは、上記ハンドル操作性およびペダル操作性を確保しつつ、そのアイポイントIsを適正ラインLに一致させることができるように、上記前後位置調整機構2および傾斜角度調整機構3を作動させて運転席シート1のシートクッション1aを前方に移動させるとともに、これに対応してシートクッション1aの設置高さを上昇させ、かつ水平線に対するシートクッション1aの傾斜角度を減少させる操作を行う。
【0064】
例えば、150cmの身長を有する低身長者Sが運転席シート1に着座した場合には、シートクッション1a上に位置するヒップポイントHsを、上記平均身長者M用の前後基準位置Hmから、例えば105mm程度前方に移動させるとともに、これに連動して上記ヒップポイントHsを25mm程度上方に移動させ、かつそのサイ角θ4を10.5°程度とするようにシートクッション1aの傾斜角度を変化させるように操作する。この結果、上記平均身長者Mに比較して腕の短い低身長者Sの上半身を前方に移動させて上記ステアリングハンドル48を適正状態で把持できるとともに、上記平均身長者Mに比較して座高の低い低身長者SのアイポイントIsを、車体の前部上方側に移動させることにより、適正ラインLに一致させることができる。
【0065】
また、上記シートクッション1aの前方移動および上方移動に応じて低身長者Sのペダル操作足が車体の前部上方に移動する傾向があるため、これに対応させて上記膝角度θ2を130°程度に増大させることにより、足首角度θ1を90°程度に維持しつつ、上記低身長者Sの右足からなるペダル操作足の拇子球部Bsをアクセルペダル4のペダル本体18に設けられた上記平坦面状部24に近接した凸面状部23の上方部等からなる適正位置に当接させることが可能となる。
【0066】
上記低身長者Sの踵部Ksから拇子球部Bsまでの距離(160mm程度)は、平均身長者Mの同距離(190mm程度)に比較して30mm程度短いため、上記低身長者Sの足裏傾斜角度θ7を、平均身長者と同角度(59.5°)に維持しつつ、ペダル操作足の拇子球部Bsをアクセルペダル4の上記適正位置に当接させようとすると、その踵部Ksが、平均身長者Mの踵部Kmよりも約26mm(=sin59.5°×30mm)だけ上方に位置することになる。このため、低身長者Sがペダル操作足の踵部Ksをフロアパネル9の上方に浮かせるようにしなければ、上記ペダル操作足の拇子球部Bsを、適正値である上記凸面状部23の上方部等に対して正確に当接させることができず、このようにペダル操作足の踵部Ksをフロアパネル9の上方に浮かせた場合には、該踵部Ksを支点とした微妙なペダル操作を適正に行うことが困難となる。
【0067】
しかし、上記傾斜フロア部15の中間領域15cよりも前方側に設けられた操作ペダル寄り部分15bの傾斜角度α2を、例えば20°に設定した場合には、図15の仮想線で示すように、低身長者Sが足裏面の傾斜角度θ7を例えば59.5°から67°程度に変化させるとともに、ペダル操作足の踵部Ksを上記傾斜フロア部15上の基準位置(平均身長者Mの踵部Kmの載置位置)よりも27mm程度前方に移動させることにより、上記踵部Ksを、後方の水平面部に比較して10mm程度上方に位置する傾斜フロア部15の操作ペダル寄り部分15b上に載置した状態で、その拇子球部Bsをアクセルペダル4に設けられた凸面状部23の上方部等からなる適正位置に当接させて、アクセル操作を行うことができる。
【0068】
なお、上記足裏面の傾斜角度θ7が59.5°から67°程度に変化するのに対応してペダル操作足の足首角度θ1が90°よりも小さくなる傾向があるが、上記足裏傾斜角度θ7の増大に応じ、低身長者Sは、その膝角度θ2を130°よりも大きくして膝を伸ばし気味状態とすることにより(図14の仮想線参照)、足首角度θ1が適正範囲を超えて小さくなること、例えば85°以下となることを防止することが可能である。
【0069】
一方、図16に示すように、例えば189cmの身長を有する高身長者Tが上記運転席シート1に着座した場合には、シートクッション1a上に位置するヒップポイントHtを、上記平均身長者M用の前後基準位置Hmから、例えば85mm程度後方に移動させるとともに、これに連動して上記ヒップポイントHsを20mm程度下方に移動させ、かつ上記サイ角θ4を20.0°程度とするようにシートクッション1aの傾斜角度を変化させるように操作する。これにより上記平均身長者Mに比較して腕の長い高身長者Tの上半身を後方に移動させて上記ステアリングハンドル48を適正状態で把持できるとともに、上記平均身長者Mに比較して座高の高い高身長者TのアイポイントItを、車体の後部下方側に移動させることにより、適正ラインLに一致させることができる。
【0070】
また、上記シートクッション1aの後方移動および下方移動に応じて高身長者Tのペダル操作足が車体の後部下方に移動する傾向があるため、これに対応させて上記膝角度θ2を120°程度に減少させることにより、高身長者Tは、その足首角度θ1を90°程度に維持しつつ、上記ペダル操作足の拇子球部Btを上記凸面状部23の上方部等からなるアクセルペダル4の適正位置に当接させることが可能となる。
【0071】
上記高身長者Tの踵部Ktから拇子球部Btまでの距離(206mm程度)は、平均身長者Mの同距離(190mm程度)に比較して16mm程度長いため、上記高身長者Tの足裏傾斜角度θ7を同角度(59.5°)に維持するとともに、その踵部Ktの載置位置を同位置に設定した場合には、アクセルペダル4の凸面状部23等に対する拇子球部Btの当接位置を、上記平均身長者Mよりも約14mm(=sin59.5°×16mm)だけ下方に変位させる必要がある。
【0072】
上記第1実施形態において、高身長者Tの足裏傾斜角度θ7を例えば59.5°から57°程度に変化させるとともに、図17に示すように、その踵部Ktを、上記傾斜フロア部15の後方部に設けられた運転席寄り部分15a、またはその後方側に設けられたフロアカーペット12の設置部からなる水平面部上に移動させるようにすれば、高身長者Tの拇子球部Btをアクセルペダル4の適正位置に当接させた状態で、適正に踏込操作することが可能である。なお、上記足裏面の傾斜角度θ7が59.5°から57°程度に変化するのに対応してペダル操作足の足首角度θ1が90°よりも大きくなる傾向があるが、上記足裏面の傾斜角度θ7の減少に対応して膝角度θ2を120°よりも小さくして膝を曲げ気味状態とすることにより(図16参照)、足首角度θ1が適正範囲を超えて大きくなること、例えば95°以上となることを防止することができる。
【0073】
上記のように車室の底部を形成するフロアパネル9の上方に運転席シート1が配設されるとともに、該運転席シート1の前方にアクセルペダル4およびブレーキペダル5等からなる操作ペダルが配設された車両において、上記操作ペダルを踏込操作する際にペダル操作足の踵部が載置されるフロアパネル9上の踵部載置領域には、前上がりに傾斜した傾斜フロア部15を設けるとともに、その前方部には、該傾斜フロア部15に比較して前上がりの傾斜度合を小さく設定することにより上記踵部の干渉するように構成した干渉回避部を設けたため、簡単な構成でペダル操作性を効果的に向上できるという利点がある。
【0074】
すなわち、上記第1実施形態では、アクセルペダル4およびブレーキペダル5の後方側に位置する踵部載置領域に、上面が前上がりに傾斜した傾斜フロア部15を形成したため、図15および図7の仮想線に示すように、平均身長者Mに比較して足裏寸法の短い低身長者Sであっても、そのペダル操作足の踵部Ksを上記第1傾斜フロア部15の前方部上に載置することにより、該踵部Ksを比較的上方に位置させた状態で、足首角度θ1および足裏面の傾斜角度θ7を適正角度に維持しつつ、その拇子球部Bsを例えばアクセルペダル4に設けられた平坦面状部24に近接した凸面状部23の上方部またはブレーキペダル5の踏込操作部46a等からなる適正位置に当接させることができる。
【0075】
したがって、上記低身長者Sがペダル操作足の踵部Ksをフロア面から離間した状態となることに起因して微妙なペダル操作が不可能となったり、上記足首角度θ1および足裏面の傾斜角度θ7が適正角度から大きくずれることに起因して操作ペダルの迅速な踏込操作が困難となったりすることなく、低身長者Sの踵部Ksを上記傾斜フロア部15上に載置した状態で、上記拇子球部Bsを適正位置に当接させることにより、アクセルペダル4およびブレーキペダル5の微妙なペダル操作をそれぞれ適正に行うことができるという利点がある。
【0076】
また、高身長者Tの場合は、例えば図16に示すように、そのペダル操作足の足裏傾斜角度θ7を減少させるとともに、膝角度θ2を小さくすれば、踵部Ktをそれ程下方に移動させることなく、ペダル操作足の拇子球部Btをアクセルペダル4等の適正位置に対して容易かつ適正に当接させることが可能である。したがって、上記高身長者Tが、図17等に示すように、傾斜フロア部15の後方部上、またはその後方側に設けられた水平面部上にペダル操作足の踵部Ktを載置するとともに、上記拇子球部Btを操作ペダルの適正位置に当接させた状態で、該操作ペダルの微妙な踏込操作を適正に行うことができる。
【0077】
そして、上記のように傾斜フロア部15の前方側に、上面が略水平な平坦面に形成された水平面部16からなる干渉回避部を設けたため、例えば運転者がペダル操作足の踵部を上記傾斜フロア部15上に載置した状態で、ブレーキペダル5の踏込量を微調節する緩制動状態から、ブレーキペダル5を急激に踏み込む急制動状態に移行する際等に、上記傾斜フロア部15の上面に運転者の踵部が強く圧接されることによる違和感の発生を簡単な構成で効果的に防止し、良好なペダル操作性を確保できるという利点がある。
【0078】
例えば、図18の実線で示すように、ブレーキペダル5を踏込操作する際にペダル操作足の踵部が載置されるフロアパネル9上の踵部載置領域からその前方部に至る範囲の全体に、前上がりに傾斜した傾斜フロア部15′を設けた場合には、運転者がペダル操作足の踵部を傾斜フロア部15′の上面から離間させた状態でブレーキペダル5を大きく踏み込む急制動操作を行う際に、該ブレーキペダル5の踏込量が所定値以上となった時点で上記傾斜フロア部15′の上面にペダル操作足の踵部が当接することにより、大きな抵抗が作用して運転者が違和感を受けるとともに、スムーズなペダル操作が困難になる等の問題がある。
【0079】
これに対して上記第1実施形態に示すように、傾斜フロア部15の前方側に、上面が略水平な平坦面に形成された水平面部16からなる干渉回避部を設けた構造とした場合には、該水平面部16から上記高身長者の踵部Ktを離間させた状態を維持しつつ、上記急制動操作を適正に行うことが可能である(図18の破線参照)。また、運転者が、アクセルペダル4の操作状態からブレーキペダル5を操作するブレーキ操作状態に一気に移行する操作ペダルの急な踏み換え操作時においても、運転者の踵部が上記傾斜フロア部15の上面に圧接されるのを防止して、上記ブレーキペダル5を適正に操作することができるという利点がある。
【0080】
また、上記第1実施形態では、図3および図7等に示すように、アクセルペダル4およびブレーキペダル5からなる操作ペダルを踏込操作する際に運転者の右足からなるペダル操作足の踵部が載置されるフロアパネル9上の踵部載置領域に、上面が前上がりに傾斜した傾斜フロア部15を設けるとともに、該傾斜フロア部15の操作ペダル寄り部分15bにおける傾斜角度α2を、運転席寄り部分15aの傾斜角度α1に比較して急角度に設定したため、運転席シート1に着座した運転者の体格に応じてその足裏寸法が変化した場合でも、簡単な構成で、より適正にペダル操作を行うことができるという利点がある。
【0081】
すなわち、上記第1実施形態では、傾斜フロア部15の運転席寄り部分15aにおける傾斜角度α1を15°〜5°の範囲内に設定するとともに、操作ペダル寄り部分15bの傾斜角度α2を25°〜15°の範囲内に設定したため、上記平均身長者Mに比較して足裏寸法の短い低身長者Sであっても、そのペダル操作足の踵部Ksを上記傾斜フロア部15の操作ペダル寄り部分15b上に載置することにより、該踵部Ksを比較的上方に位置させた状態で、足首角度θ1および足裏面の傾斜角度θ7を適正角度に維持しつつ、その拇子球部Bsを例えばアクセルペダル4に設けられた平坦面状部24に近接した凸面状部23の上方部等からなる適正位置に当接させることができる。したがって、上記低身長者Sがペダル操作足の踵部Ksを上記傾斜フロア部15の操作ペダル寄り部分15b上に載置した状態で、上記拇子球部Bsを適正位置に当接させることにより、アクセルペダル4等を容易かつ正確に踏込操作できるという利点がある。
【0082】
一方、高身長者Tの場合は、図16および図17に示すように、そのペダル操作足の足裏傾斜角度θ7を減少させるとともに、膝角度θ2を小さくすれば、踵部Ktをそれ程下方に移動させることなく、ペダル操作足の拇子球部Btをアクセルペダル4等の適正位置に対して容易かつ適正に当接させることが可能である。したがって、上記のように傾斜フロア部15の運転席寄り部分15aにおける傾斜角度α1を操作ペダル寄り部分15bの傾斜角度α2に比較して小さな値に設定し、上記高身長者Tがペダル操作足の踵部Ktを載置する領域を、運転席寄り部分15a上、またはその後方側に設けられた水平面部上に設定した場合においても、上記アクセルペダル4等の踏込操作性に悪影響が与えられることはない。
【0083】
上記傾斜フロア部15の操作ペダル寄り部分15bにおける傾斜角度α2を急角度に設定すると、該操作ペダル寄り部分15b上に載置された踵部がペダル操作時に滑り落ち易く、逆に上記傾斜角度α2が小さすぎると、上記低身長者Sがペダル操作足の踵部Ksがフロア面から離間した状態となるのを効果的に防止することができず、上記アクセルペダル4等の踏込操作性を向上させる効果が充分に得られないため、上記傾斜角度α2を25°〜15°の範囲内に設定することが望ましい。
【0084】
そして、上記のように高身長者Tがペダル操作足の踵部Ktを載置する部位を、上記傾斜フロア部15の運転席寄り部分15a上に設定した場合には、上記アクセルペダル4の踏込操作時にペダル本体18の揺動支点となる上記支持軸17の設置部から離れた位置に上記踵部Ktが載置されるため、上記アクセルペダル4の踏込操作量が大きくなるのに伴い、図17の仮想線で示すように、拇子球部Btが上記凸面状部23上の上方部等からなる適正位置よりも下方位置Bt′にずれる傾向がある。
【0085】
このため、上記高身長者Tは、その踵部Ktを前方へ移動させてその拇子球部Btを上記適正位置に当接させた状態に維持しようとするが、その際に上記踵部Ktの載置位置である傾斜フロア部15の運転席寄り部分15aにおける傾斜角度α1が大きいと、該運転席寄り部分15aの上面に運転者の踵部Ktが圧接されて大きな摺動抵抗が作用し、運転者が違和感を受ける虞がある。しかし、上記のように傾斜フロア部15の運転席寄り部分15aにおける傾斜角度α1を例えば15°〜5°程度の範囲内に設定し、上記運転席寄り部分15aの上面を操作ペダル寄り部分15bに比較して緩やかに傾斜させた場合には、上記踵部Ktに大きな摺動抵抗が作用することに起因した違和感の発生を効果的に防止できるという利点がある。
【0086】
また、上記傾斜フロア部15の運転席寄り部分15aにおける傾斜角度α1が急すぎると、高身長者Tの踵部Ktが上記ペダル操作時に前方に移動する際の摺動抵抗を低減する効果を充分に得ることができず、逆に上記運転席寄り部分15aにおける傾斜角度α1が小さすぎると、上記高身長者Tよりもやや足裏寸法が小さい中身長者Mがペダル操作を行う際にその踵部Kmがフロア面から離間した状態となって微妙なペダル操作に支障を生じる可能性があるため、上記運転席寄り部分15aの傾斜角度α1を15°〜5°の範囲内に設定することが望ましい。
【0087】
また、上記第1実施形態では、傾斜フロア部15の運転席寄り部分15aから操作ペダル寄り部分15bに移行するにしたがって傾斜角度が漸増する中間領域15cを設けた構造としたため、該中間領域15cに沿って中身長者Mがその踵部Kmを前後移動させてその踵部の載置高さを適正値に調節する際等に、該踵載置高さの調節動作を違和感なく行うことができる。すなわち、上記中間領域15cを設けることなく、緩角度の運転席寄り部分15aと急角度の操作ペダル寄り部分15bとを直接接続した場合には、該接続部において上面の傾斜角度が急変するため、中身長者Mがその踵部Kmを上記傾斜フロア部15の上面に沿って前後移動させて踵部の載置高さを調節する際に、上記接続部で引っかかりが生じることに起因して違和感を受けるが、上記のように緩角度の運転席寄り部分15aと急角度の操作ペダル寄り部分15bとの間に、角度が漸増する中間領域15cを設けることにより、上記違和感の発生を効果的に防止することができる。
【0088】
さらに、上記第1実施形態に示すように、側面視で運転席側(後方側)に膨出した例えば100mm〜200mm程度の曲率半径R1を有する湾曲面からなる凸面状部23を上記アクセルペダルに設けた構造とした場合には、上記アクセルペダル4の踏込操作に、上記凸面状部23に沿って靴裏面の当接位置を転がすようにして滑らか、かつ連続的に変化させることができる。したがって、ペダル操作足の踵部が上記アクセルペダル4のペダル本体18の下端部に設けられた支持軸17の設置部から離れていることに起因して、その拇子球部がアクセルペダル4の踏込操作に応じ、上記凸面状部23の上下方向にずれ動いたとしても、運転者が違和感を受けるのを効果的に防止することができる。
【0089】
なお、上記のように凸面状部23よりも曲率半径が大きく設定された平坦面状部、例えば曲率半径が無限大に設定されることにより側面視で斜め上方に向けて直線状に延びる平坦面状部24を、上記凸面状部23の上端部に連設してなる第1実施形態に代え、図19に示す変形例のように、アクセルペダル4を構成するペダル本体18の上方部分全体を所定の曲率半径R1を有する湾曲面からなる凸面状部23aとすることも可能である。しかし、当該構成によれば、足裏寸法が大きく、その足先部がペダル本体18の上方に離間した状態となる高身長者Tが、そのペダル操作足で上記アクセルペダル4を踏込操作する際に、その足先部および下方部分が上記ペダル本体18の上方部から大きく離間した状態となるため、該足裏面を側面視でペダル本体18に面当たりさせた状態で踏込操作することは不可能であり、ペダル操作時に運転者が不安感を覚える場合がある。
【0090】
これに対して上記第1実施形態に示すように凸面状部23の上端部に該凸面状部23よりも曲率半径が大きく設定された平坦面状部を設けた構造とした場合には、高身長者Tがその足裏面を、図17に示すように、ペダル本体18の凸面状部23および上記平坦面状部24の両方に当接させて面当たりさせた状態でペダルの踏込操作を行うことができるため、運転者は安心感をもって上記アクセルペダル4の踏込操作を行うことができる。
【0091】
なお、上記ブレーキペダル5を、アクセルペダル4と同様に、下端枢支部と、該下端枢支部を支点に揺動変位するペダル本体とを備えた所謂オルガン式ペダル構造とすることも可能であるが、図5に示すように、上端枢支部44を支点に揺動可能に支持されたペダル本体46を備えた所謂吊りペダル式のブレーキペダル5を配設した場合には、簡単な構成で、ブーキペダル5を安定して支持できるとともに、その操作性を良好状態に維持できる等の利点がある。
【0092】
しかし、上記吊りペダル式のブレーキペダル5では、その踏込操作量が大きくなると、ペダル操作足の拇子球部Bt等と、ペダル本体46の下端部に設けられた踏込操作部46aとの軌跡が大きく相違してその接触位置がずれ易い傾向がある。このため、例えば高身長者Tがペダル操作足の踵部Ktを上記傾斜フロア部15の運転席寄り部分15a上に載置した状態で、ブレーキペダル5の踏込量を微妙に変化させる緩ブレーキ操作状態から、ブレーキペダル5の踏込量を増大させる急制動状態に移行する際、つまりブレーキの踏み増し操作時に、ブレーキペダル5の踏込操作部46aが前方に移動するのに対応させてその踵部を前方に移動させようとする。
【0093】
この場合に、上記傾斜フロア部15の運転席より部分15aにおける上面の傾斜角度α2を、急角度で前上がりに傾斜した操作ペダルより部分15bと同程度に設定すると、運転者がペダル操作足の拇子球部を踏込操作部46aの適正位置に当接させた状態に維持しようとして踵部を前方に移動させる際に、スムーズな移動が阻害され易くなることが避けられない。これに対して上記第1実施形態のように上記傾斜フロア部15の運転席寄り部分15aにおける上面の傾斜角度α2を操作ペダルより部分15bよりも小さく設定した場合には、上記運転席寄り部分15aの上面に沿って運転者の踵部Ktをスムーズに摺動させることができるため、運転者が違和感を受けることなく、上記ブレーキペダル5の踏み増し操作を行うことができる。
【0094】
また、上記のように車室のフロアパネル9の上方にペダル操作足の踵部を載置した状態で微妙なペダル操作を行うことが要求されるアクセルペダル4を、フロアパネル9に固定されたペダル基部19と、該ペダル基部19に設けられた支持軸17からなる枢支部を支点に揺動可能に支持されたペダル本体18とを備えた所謂オルガン式ペダルにより構成するとともに、該オルガン式のアクセルペダル4を踏込操作する際にペダル操作足の踵部が載置されるフロアパネル9上の踵部載置領域に前上がりに傾斜した傾斜フロア部15を設けた場合には、運転席シート1に着座した運転者の体格の如何に拘わらず、簡単な構成で上記アクセルペダル4の微妙なペダル操作を適正に行うことができる利点がある。
【0095】
しかも、上記アクセルペダル4を踏込操作する際にペダル操作足の踵部が載置されるフロアパネル9上の踵部載置領域に設けられた傾斜フロア部15の前方側に、上面が略水平な平坦面に形成された水平面部16からなる干渉回避部を設けたため、例えば運転者がペダル操作足の踵部を上記傾斜フロア部15上に載置した状態で、ブレーキペダル5を踏み込んだブレーキ操作状態からアクセルペダル4の踏込操作状態に移行する際等に、上記傾斜フロア部15の上面に運転者の踵部が強く圧接されることによる違和感の発生を、簡単な構成で効果的に防止して、良好なペダル操作性を確保できるという利点がある。
【0096】
また、図3に示すように、ヒールパッド材13の前方部に設けられた水平面部16上にフロアマット14の前方部を載置するとともに、上記ペダル基部19の後端部からなる位置決め部にフロアマット14の前端面を当接させることにより位置決めした状態で、該フロアマット14をフロアパネル9に安定して固定した上記第1実施形態に代え、上記水平面部16を省略し、前上がりに傾斜した傾斜面部上に上記フロアマット14の前方部を載置した状態で、該フロアマット14をフロアカーペット12の表層材11等に止着するように構成することも考えられる。
【0097】
しかし、上記のように構成した場合には、フロアマット14の前方部が上記傾斜面部上から滑り落ちたり、離間したりし易いため、上記フロアマット14を安定して支持することが困難である。これに対して上記第1実施形態に示すように、水平面部16上にフロアマット14の前方部を載置するとともに、上記ペダル基部19の後端部からなる位置決め部にフロアマット14の前端面を当接させて位置決めすることにより、フロアマット14の前方部が上記水平面部16から離間する等の事態を生じることなく、該フロアマット14を安定して止着することができる。
【0098】
さらに、上記のようにアクセルペダル4を踏込操作する際にペダル操作足の踵部が載置されるフロアパネル9上の踵部載置領域に設けられた傾斜フロア部15の前方側に、上面が略水平な平坦面に形成された水平面部16からなる干渉回避部を設けた構造とした場合には、図15の仮想線で示すように、上記傾斜フロア部15の前方部上に載置された低身長者Sの踵部Ksと、アクセルペダル4のペダル本体18または該ペダル本体18を支持するペダル基部19との間に所定の間隙を設けることにより、上記低身長者S等がアクセルペダル4を踏込操作する際に、上記ペダル本体18またはペダル基部19の後端部にペダル操作足の踵部Ksが防止してペダル操作性を損なわれるのを効果的に防止できるという利点もある。
【0099】
なお、上記第1実施形態では、アクセルペダル4を踏込操作するペダル操作足の踵部が載置されるフロアパネル9上の踵部載置領域と、上記ブレーキダル5を踏込操作するペダル操作足の踵部が載置されるフロアパネル9上の踵部載置領域とに、それぞれ同一角度α1,α2で前上がりに傾斜した傾斜フロア部15を設けた例について説明したが、図20および図21に示す第2実施形態のように、ヒールパッド材13aにより構成されるアクセルペダル側領域に位置する傾斜フロア部82と、ブレーキペダル側領域に位置する傾斜フロア部83とでその傾斜角度を異なる値に設定してもよい。
【0100】
すなわち、上記第2実施形態では、アクセルペダル側領域に位置する傾斜フロア部82を、上記第1実施形態と同様に運転席寄り部分82aと操作ペダル寄り部分82bとに区画し、かつその前方側に上面が略水平な平坦面に形成された水平面部16aを形成している。そして、上記該運転席寄り部分(後方側部分)82aの傾斜角度α1を、例えば15°〜5°の範囲内に設定するとともに、上記操作ペダル寄り部分(前方側部分)82bの傾斜角度α2を、上記運転席寄り部分15aの傾斜角度α1に比較して大きな値、例えば25°〜15°の範囲内に設定している。
【0101】
一方、上記ブレーキペダル側領域に位置する傾斜フロア部83は、その全体の傾斜角度γを、アクセルペダル側領域の傾斜フロア部82における運転席寄り部分82aの傾斜角度α1と同一角の傾斜角度、つまり例えば15°〜5°の範囲内に設定し、かつ傾斜フロア部83の前方側に上面が略水平な平坦面に形成された水平面部16bを形成している。このようにしてブレーキペダル側領域に位置する傾斜フロア部83の傾斜角度γを、少なくとも上記アクセルペダル側領域における操作ペダル寄り部分82bの傾斜角度α2に比較して小さな値に設定している。
【0102】
また、上記ブレーキペダル側領域に位置する傾斜フロア部82と、アクセルペダル側領域に位置する傾斜フロア部83の運転席寄り部分83aと間には、上記傾斜角度α1,βの相違に起因して上面に高低差が形成されている。そして、上記ブレーキペダル側領域における傾斜フロア部83とアクセルペダル側領域における傾斜フロア部82を滑らかに連結する連結部84を、その操作ペダル寄り部分82bに形成している。
【0103】
上記のようにアクセルペダル4およびブレーキペダル5を操作する際に、運転者の右足からなるペダル操作足の踵部が載置されるフロアパネル9上の踵部載置領域に、前上がりに傾斜した傾斜フロア部82,83を設けるとともに、上記ブレーキペダル側領域における傾斜フロア部83の傾斜角度γを、アクセルペダル側領域の傾斜フロア部82に比較して小さな値に設定した場合には、運転者がその踵部を上記傾斜フロア部82上に載置した状態でアクセルペダル4を適正に踏込操作することができるとともに、該アクセルペダル4の操作状態からブレーキペダル5の操作状態に移行するペダルの踏み換え時にペダル操作足の踵部に大きな抵抗が生じることに起因した違和感の発生を効果的に防止できるという利点がある。
【0104】
すなわち、上記ブレーキペダル5側における踵載置領域の傾斜角度γを、平坦な0°に設定した場合と、10°の前上がりに傾斜させた場合と、20°の前上がりに傾斜させた場合とにおいて、160cm程度の身長を有する運転者、170cm程度の身長を有する運転者および180cm程度の身長を有する運転者が、それぞれアクセルペダル4の操作状態からブレーキペダルの操作状態に移行するシミュレーション解析を行い、その際にペダル操作足の踵部に生じる荷重、つまり操作抵抗を測定したところ、図22〜図24に示すようなデータが得られた。なお、該図23〜図25において、J1は、アクセルペダル4からペダル操作足を離した時点を示し、J2は、ブレーキペダル5の踏込を開始した時点を示している。
【0105】
上記データから160cm程度の身長を有する運転者の場合は、図22に示すように、いずれも踵部に大きな操作抵抗を生じることなく、ブレーキペダル5の操作状態に移行し得ることが確認された。これは、該運転者の場合には、比較的足裏寸法が短いため、上記ブレーキ操作時に踵部がフロア面に強く圧接される可能性が低いためであると考えられる。一方、170cm程度の身長を有する運転者および180cm程度の身長を有する運転者では、ブレーキペダル5側における踵載置領域の傾斜角度が20°に設定されている場合に、アクセルペダル4の操作状態からブレーキペダル5の操作状態に移行した時点J2で、図23(c)および図24(c)に示すように、踵部に大きな荷重が作用して運転者が違和感を受けることが確認された。
【0106】
これに対して、ブレーキペダル5側における踵載置領域の傾斜角度γが10°設定されている場合には、図23(b)および図24(b)に示すように、アクセルペダル4の操作状態からブレーキペダル5の操作状態に移行しても、踵部に大きな荷重が作用せず、違和感が生じないことが検証された。
【0107】
したがって、様々な体格を有する運転者がその踵部を上記傾斜フロア部82上に載置した状態でアクセルペダル4の適正な踏込操作を可能としつつ、該アクセルペダル4の操作状態からブレーキペダル5の操作状態に移行するペダルの踏み換えを行う際に、ペダル操作足の踵部に大きな抵抗が生じることに起因した違和感の発生を効果的に防止するためには、上記第2実施形態に示すように、上記ブレーキペダル側領域における傾斜フロア部83の傾斜角度γをアクセルペダル側領域の傾斜フロア部82に比較して小さな値に設定することが望ましい。
【0108】
さらに、図25に示す第3実施形態のように、ブレーキペダル5等からなる操作ペダルを踏込操作する際にペダル操作足の踵部が載置されるフロアパネル9上の踵部載置領域に設置された上記傾斜フロア部83等の前方部に、上面が前下がりの傾斜面に形成された干渉回避部85を設けた構造としもよい。このように上面が前下がりの傾斜面に形成された干渉回避部85を設けた場合には、運転者がアクセルペダル4を操作する通常の運転状態から、ブレーキペダル5を急激に踏み込む急制動状態に移行する際等に、運転者の踵部がフロア面に強く圧接されることによる違和感の発生を、より効果的に防止できるという利点がある。
【0109】
また、上記実施形態では、運転席シート1を前後移動させるとともに、該運転席シート1の前方移動に応じてそのシートクッション1aの後傾角度を低減する前後位置調整機構2および傾斜角度調整機構3等を設けたため、運転席シート1に着座する運転者が、その身長に応じて上記前後位置調整機構2および傾斜角度調整機構3等の駆動特性を適正に設定することにより、運転者の着座姿勢を維持しつつ、そのアイポイントを適正ラインLに一致させるとともに、優れたハンドル操作性およびペダル操作性が得られるように、運転席シート1の前後位置およびシートクッション1aの傾斜角度等を自動的に調整できるという利点がある。
【0110】
そして、上記運転席シート1の前後位置およびシートクッション1aの傾斜角度の調整動作に応じて運転席シート1に着座した運転者の着座位置等が変化した場合においても、運転者の足元部に位置するフロアパネル9上に上記傾斜フロア部15等を形成することにより、足裏寸法の短い低身長者Sがペダル操作足の踵部Ksを上記傾斜フロア部15等の上に載置した状態で、足首角度θ1および足裏面の傾斜角度θ7を、アクセルペダル4等の操作に適した角度に維持しつつ、上記低身長者Sの拇子球部Bsをアクセルペダル4の凸面状部23に当接させてペダル操作性を確保できる等の利点がある。
【0111】
なお、上記実施形態では、前後位置調整機構2および傾斜角度調整機構3等により、運転者のスイッチ操作に応じて自動的に運転席シート1を前後移動させるとともに、該運転席シート1の前方移動に応じてそのシートクッション1aの後傾角度を低減するように構成した例について説明したが、運転者の手動操作で運転席シート1の前後位置およびシートクッション1aの後傾角度を変化させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 運転席シート
4 アクセルペダル
5 ブレーキペダル
9 フロアパネル
15 傾斜フロア部
15a 運転席寄り部分
15b 操作ペダル寄り部分
15c 中間領域
16 水平面部(干渉回避部)
17 支持軸(枢支部)
18 ペダル本体
19 ペダル基部
44 上端枢支部
46 ペダル本体
85 干渉回避部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の底部を形成するフロアパネルの上方に運転席シートが配設されるとともに、該運転席シートの前方に操作ペダルが配設された車両において、上記操作ペダルを踏込操作する際にペダル操作足の踵部が載置されるフロアパネル上の踵部載置領域には、前上がりに傾斜した傾斜フロア部が設けられるとともに、その前方部には、該傾斜フロア部に比較して前上がりの傾斜度合が小さく設定されることにより上記踵部の干渉を回避する干渉回避部が設けられたことを特徴とする車両のフロアパネル構造。
【請求項2】
上記干渉回避部の上面が略水平な平坦面に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両のフロアパネル構造。
【請求項3】
上記傾斜フロア部の操作ペダル寄り部分には、その運転者寄り部分に比較して急角度で前上がり状態に傾斜した急傾斜領域が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両のフロアパネル構造。
【請求項4】
上記操作ペダルとして運転者によって踏込操作されるアクセルペダルとその側方に併設されたブレーキペダルとが設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両のフロアパネル構造。
【請求項5】
上記ブレーキペダルは、上部に設けられた枢支部と、該枢支部を支点に揺動可能に支持された踏込操作部とを備えたことを特徴とする請求項4に記載の車両のフロアパネル構造。
【請求項6】
上記アクセルペダルは、フロアパネルに固定されたペダル基部と、該ペダル基部に設けられた枢支部を支点に揺動可能に支持された踏込操作部とを備えたことを特徴とする請求項4または5に記載の車両のフロアパネル構造。
【請求項7】
上記干渉回避部の上面が前下がりの傾斜面に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両のフロアパネル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−201510(P2011−201510A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73276(P2010−73276)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】