説明

車両のフロア構造

【課題】フロアパネルの振動騒音を低減する。
【解決手段】フロアパネル1に形成されたサービスホール11がホールカバー10によって覆われる。ホールカバー10に、フロアパネル1の振動騒音を低減するためのウエイト13が溶接等によって取付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のフロアパネルにあっては、例えば特許文献1に示すように、フロアパネル下方に配置された燃料タンクにアクセスするためのサービスホールが形成されて、このサービスホールをホールカバーによって施蓋するようにしたものがある。
【特許文献1】特開平6−87470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、フロアパネルは、かなり大きな面積を有するため、振動を発生し易いものとなる。すなわち、エンジンの振動や走行中の路面からの振動を受けて振動され易く、このフロアパネルの振動が騒音として乗員に不快感を与えることになる。
【0004】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、フロアパネルの振動騒音を低減できるようにした車両のフロア構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
フロアパネルに形成されたサービスホールがホールカバーによって覆われてなる車両のフロア構造において、
前記ホールカバーに、フロアパネルの振動騒音を低減するためのウエイトが取付けられている、
ようにしてある。上記解決手法によれば、フロアパネルの振動をウエイトを利用して低減して、フロアパネルの振動に起因する騒音を低減することができる。また、ウエイトは、小物部品とされて後付けされるホールカバーに取付けるようにしてあるので、ウエイトのフロアパネルへの取付けを容易に行う上でも好ましいものとなる。
【0006】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記ウエイトが、前記ホールカバーに溶接されている、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、ウエイトの取付けを簡単かつ安価に行う上で好ましいものとなる。
【0007】
ホールカバーが、弾性部材を介して前記フロアパネルに取付けられて、該弾性部材と前記ウエイトによって振動騒音低減のためのダイナミックダンパが構成されている、ようにしてある(請求項3対応)。この場合、ウエイトをダイナミックダンパとして機能させて、効果的にフロアパネルの振動騒音を低減することができる。
【0008】
前記ホールカバーが、前記フロアパネルに取付けられている第1締結用部材に対して第2締結用部材を締結することによって該フロアパネルに固定され、
前記第1締結部材が、前記ホールカバーと前記フロアパネルとの間に介在された樹脂部を備えて、該樹脂部が前記弾性部材とされている、
ようにしてある(請求項4対応)。この場合、第1締結用部材を、ダイナミックダンパを構成するための弾性部材として兼用させることができる。
【0009】
前記弾性部材が、前記ホールカバーと前記フロアパネルとの間に介在されて前記サービスホールの周囲をシールするシール部材とされている、ようにしてある(請求項5対応)。この場合、シール部材を、ダイナミックダンパを構成するための弾性部材として兼用させることができる。
【0010】
前記ホールカバーが車幅方向中央部に設けられ、
前記ウエイトは、その車幅方向外端部がそれぞれ車幅方向中央部に比して低くなるように形成されている、
ようにしてある(請求項6対応)。この場合、リアシートにおける左右のシートクッションをウエイトに邪魔されることなく十分に厚くすることが可能になり、リアシートの座り心地をよくする上で好ましいものとなる。また、ホールカバーおよびウエイトを、リアシートによって車室内から目視できないように隠しておくことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ホールカバーにウエイトを取付けるという簡単な構造によって、フロアパネルの振動騒音を低減することができる。また、ウエイトは、小物部品とされて後付けされるホールカバーに取付けるようにしてあるので、ウエイトのフロアパネルへの取付けを容易に行う上でも好ましいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1において、1はフロアパネルであり、後輪(図示略)の前端部付近において上下方向に斜めに伸びる段差部1aを有する。フロアパネル1は、段差部1aよりも前方部分となる前フロア部1Aが、乗員用シートが配置される車室用パネルを構成する。また、段差部1aよりも後方部分となる後フロア部1Bが、荷室用パネル部を構成する。なお、上記前フロア部1Aの車幅方向端部は左右一対のサイドシル2に接合され、また後フロア部1Bの下面には、サイドシル2に連なる左右一対のリアサイドフレーム(図示略)が接合されている。
【0013】
前フロア部1Aの後部(つまり段差部1aの直前方位置)には、図示を略すリアシートが配置される。そして、このリアシートの下方部分において、ホールカバー10が位置されている。すなわち、前フロア部1Aには、リアシートの車幅方向中央部下方において、図2に示すようにサービスホール11が形成されており、このサービスホール11が、図4に示すホールカバー10によって覆われるようになっている。ホールカバー10は、その周辺部が平板状とされる一方、その他の部分は上方に向けて膨出された皿形状とされている。なお、サービスホール11は、実施形態では、その下方に配置された図示を略す燃料タンク(の燃料ポンプや燃料センサ等)の保守、点検用とされている。
【0014】
図1,図3、図5に示すように、ホールカバー10の上面には、例えば鉄系部材によって構成されたウエイト13が取付けられている。実施形態では、ウエイト13は、ホールカバー10に対して溶接によって一体化されており、この溶接部分が、図3,図5において符合αで示される。なお、溶接に代えて、ボルト固定等、適宜の手法によってウエイト13をホールカバー10に一体化することができる。なお、ウエイト13は、ホールカバー10の前端部に位置されて、ホールカバー10の車幅方向長さとほぼ同じ長さとされている。
【0015】
次に、ホールカバー10の前フロア部1Aに対する取付けについて説明する。まず、図2、図6に示すように、前フロア部1Aには、サービスホール11の周囲4箇所において、第1締結用部材21が一体的に取付けられている。この第1締結用部材21は、実施形態では硬質合成樹脂によって形成されて、上方に開口するねじ孔21aと、前フロア部1Aの上面に位置されるフランジ部21bとを有する。
【0016】
ホールカバー10の外周縁部には、図4に示すように、上記第1締結用部材21の配設位置に対応させて、取付孔10aが形成されている。この取付孔10aを第1締結用部材21に整合させた状態で、第2締結用部材(実施形態ではねじ部材)22を取付孔10aを貫通させつつねじ孔21aに螺合させることによって、ホールカバー10の前フロア部1Aに対する固定が行われる(図3,図6参照)。また、ホールカバー10は、図2に示すようにサービスホール11の全周囲を取り巻くように配置されたシール部材14を介して、前フロア部1Aに取付けられるようになっている。すなわち、第2締結用部材22を第1締結用部材21に締結した図6の状態では、シール部材14は、前フロア部1Aとホールカバー10との間で挟持されて、サービスホール11を通しての車室内外の連通が遮断される。
【0017】
ウエイト13と、第1締結用部材21のフランジ部21bとによって、ダイナミックダンパが構成される。すなわち、フランジ部21bがダイナミックダンパ用の弾性部材として機能されて、フロアパネル1の振動騒音が低減される。なお、ダイナミックダンパによる振動低減周波数域は、フロアパネル1の振動騒音周波数のうち特に減衰させることが要求される周波数域に合致するように、ウエイト13の重量やフランジ部21bの硬さあるいは厚さ等が調整される。なお、シール部材14は、実施形態では十分に軟質のものとされて、ダイナミックダンパ用の弾性部材としては機能しないようになっている。ただし、シール部材14を硬質のものとすることにより、ダイナミックダンパ用の弾性部材として機能させることもできる(この場合は、第1締結用部材21に対して、ダイナミックダンパ用の弾性部材の機能を付与しないように設定することができる)。なお、ウエイト13を設けるのみでも(ダイナミックダンパを構成しない場合でも)、フロアパネル1の振動騒音低減を図ることが可能である。
【0018】
ホールカバー10(つまりサービスホール11)およびウエイト13の上方には、リアシートが位置されることになる。このリアシートにおける左右のシートクッションの座り心地確保のために、図6に示すように、ウエイト13は、その車幅方向外端部がそれぞれ車幅方向中央部に比して低くされた段下げ形状に設定されている。この段下げにより、リアシートにおける左右のシートクッションの厚さを十分に確保することが可能となって、リアシートの座り心地が十分に確保されることになる。
【0019】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能である。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。
【図2】サービスホールを示す要部斜視図。
【図3】ウエイトが取付けられたホールカバーでサービスホールを覆った状態を示す斜視図。
【図4】ウエイトを取外した状態でのホールカバーの斜視図。
【図5】図3X5−X5線相当断面図。
【図6】図3X6−X6線相当断面図。
【符号の説明】
【0021】
1:フロアパネル
1a:段差部
1A:前フロア部
1B:後フロア部
10:ホールカバー
10a:取付孔
11:サービスホール
13」ウエイト
14:シール部材
21:第1締結用部材
21a:ねじ孔
21b:フランジ部(樹脂部)
α:溶接部分


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルに形成されたサービスホールがホールカバーによって覆われてなる車両のフロア構造において、
前記ホールカバーに、フロアパネルの振動騒音を低減するためのウエイトが取付けられている、
ことを特徴とする車両のフロア構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記ウエイトが、前記ホールカバーに溶接されている、ことを特徴とする車両のフロア構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
ホールカバーが、弾性部材を介して前記フロアパネルに取付けられて、該弾性部材と前記ウエイトによって振動騒音低減のためのダイナミックダンパが構成されている、ことを特徴とする車両のフロア構造。
【請求項4】
請求項3において、
前記ホールカバーが、前記フロアパネルに取付けられている第1締結用部材に対して第2締結用部材を締結することによって該フロアパネルに固定され、
前記第1締結部材が、前記ホールカバーと前記フロアパネルとの間に介在された樹脂部を備えて、該樹脂部が前記弾性部材とされている、
ことを特徴とする車両のフロア構造。
【請求項5】
請求項3において、
前記弾性部材が、前記ホールカバーと前記フロアパネルとの間に介在されて前記サービスホールの周囲をシールするシール部材とされている、ことを特徴とする車両のフロア構造。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記ホールカバーが、リアシートの下方でかつ車幅方向中央部に設けられ、
前記ウエイトは、その車幅方向外端部がそれぞれ車幅方向中央部に比して低くなるように形成されている、
ことを特徴とする車両のフロア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−137526(P2009−137526A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318283(P2007−318283)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】