説明

車両のフード装置

【課題】車両の前突により跳ね上げられた物体がフード装置におけるフードとヒンジの回動部との結合部の上面側に落下して衝突し、結合部に衝撃力を与える場合において、衝撃力の反力により物体に生じようとする傷害値を、より効果的に低減できるようにする。
【解決手段】車両のフード装置は、アウタ、インナパネル22,23を有して車体開口17を閉じるフード18と、フード18を車体2に枢支するヒンジ19と、前後方向に長く延びその長手方向の各部断面がU字形状をなすヒンジリテーナ34と、互いに重ねられたフード18のインナパネル23の部分、ヒンジ19の回動部29、およびヒンジリテーナ34の底部35を互いに締結する前後方向で複数のボルト40とを備える。前後方向で各ボルト40同士の間における壁部36に上方に向かって開く切り欠き44を形成し、かつ、切り欠き44の近傍における壁部36の部分に縦向きのビード45を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に対しフードをヒンジにより枢支し、これらフードとヒンジの回動部との結合部を補強するヒンジリテーナを設けた車両のフード装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両のフード装置には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。
【0003】
上記公報のものによれば、車両のフード装置は、上方に向かって開くよう車体に形成された車体開口と、上下に重ねられ中空形状となるよう互いに結合されるアウタ、インナパネルを有して上記車体開口をその上方から開閉可能に閉じるフードと、このフードにおける車体の前後方向での一端部側が上方、下方回動可能となるようこのフードの他端部を車体に枢支するヒンジと、上記フードの内部空間に設けられて前後方向に長く延びその長手方向の各部断面がU字形状をなすヒンジリテーナと、互いに重ねられた上記フードの他端部におけるインナパネルの部分、上記ヒンジの回動部、および上記ヒンジリテーナの底部を互いに締結する前後方向で複数のボルトとを備え、上記ヒンジリテーナの壁部の上端縁部は上記各ボルトの上端部よりも高く位置させられている。そして、このヒンジリテーナにより、上記フードとヒンジの回動部との結合部が補強されて、上記ヒンジによる車体へのフードの枢支強度が向上させられている。
【0004】
ここで、上記フード装置を備えた車両の走行中に、この車両がその前方の何らかの物体に衝突(前突)し、この前突により跳ね上げられた物体が、上記フード装置におけるフードとヒンジの回動部との結合部の上面側に落下して大きい衝撃力で衝突したとする。
【0005】
上記の場合、物体の衝突時の衝撃力により、まず、上記結合部の上面側におけるフードのアウタパネルの部分が下方に向かって撓むよう変形する。ここで、このように下方に向かって変形したアウタパネルの変形部分を介し、仮に、上記物体が上記各ボルトの上端部に衝突したとする。この場合、これら各ボルトの上端部は上方に向かって突出する突起であることから、このような各ボルトの上端部に物体が衝突したとすると、この物体には大きい傷害値が生じがちとなる。
【0006】
しかし、前記したように、ヒンジリテーナの壁部の上端縁部は、上記各ボルトの上端部よりも高く位置させられている。このため、上記結合部の上面側に衝突した物体は、上記したアウタパネルの変形部分を介し各ボルトの上端部に衝突するに至るまでに、上記ヒンジリテーナの壁部の上端縁部に衝突し、これにより、物体に生じる傷害値が低減されると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−120762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記したように、ヒンジリテーナの壁部の上端縁部は上記各ボルトの上端縁部よりも高く位置させられている。このため、上記ヒンジリテーナの壁部の上下寸法が大きくなり、その分、このヒンジリテーナの強度と剛性とが過大になるおそれがある。そして、この場合には、前突時に物体が上記結合部の上面側に落下して衝突した場合、上記したヒンジリテーナにより結合部は塑性変形しないままに保持されがちとなり、その分、上記物体の衝突の衝撃力に基づくエネルギーの吸収が阻害される。この結果、上記物体の衝突時の衝撃力の反力により物体に生じようとする傷害値は、より十分には低減できないおそれがある。
【0009】
そこで、上記物体の傷害値を、より十分に低減させるため、上記フードとヒンジの回動部との結合部におけるフードの内部空間に、上記衝撃力により座屈して衝撃力を緩和する緩衝体を別途に設けることが考えられる。しかし、このように、別途に緩衝体を設けると、フード装置の質量が増加し、このフード装置の構成が複雑になると共に製造コストが高価になるおそれがあって好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車両の前突により跳ね上げられた物体がフード装置におけるフードとヒンジの回動部との結合部の上面側に落下して衝突し、上記結合部に衝撃力を与える場合において、この衝撃力の反力により物体に生じようとする傷害値を、より効果的に低減できるようにすることである。
【0011】
また、上記した傷害値の効果的な低減が、フード装置の質量の増加を防止しつつ、簡単な構成かつ安価な製造で達成できるようにすることである。
【0012】
請求項1の発明は、上方に向かって開くよう車体2に形成された車体開口17と、上下に重ねられ中空形状となるよう互いに結合されるアウタ、インナパネル22,23を有して上記車体開口17をその上方から開閉可能に閉じるフード18と、このフード18における車体2の前後方向での一端部側が上方、下方回動A,B可能となるようこのフード18の他端部を車体2に枢支するヒンジ19と、上記フード18の内部空間24に設けられて前後方向に長く延びその長手方向の各部断面がU字形状をなすヒンジリテーナ34と、互いに重ねられた上記フード18の他端部におけるインナパネル23の部分、上記ヒンジ19の回動部29、および上記ヒンジリテーナ34の底部35を互いに締結する前後方向で複数のボルト40とを備え、上記ヒンジリテーナ34の壁部36の上端縁部を上記各ボルト40の上端部よりも高く位置させた車両のフード装置において、
前後方向で上記各ボルト40同士の間における上記壁部36に上方に向かって開く切り欠き44を形成し、かつ、この切り欠き44の近傍における上記壁部36の部分に縦向きのビード45を形成したことを特徴とする車両のフード装置である。
【0013】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明による効果は、次の如くである。
【0015】
請求項1の発明は、上方に向かって開くよう車体に形成された車体開口と、上下に重ねられ中空形状となるよう互いに結合されるアウタ、インナパネルを有して上記車体開口をその上方から開閉可能に閉じるフードと、このフードにおける車体の前後方向での一端部側が上方、下方回動可能となるようこのフードの他端部を車体に枢支するヒンジと、上記フードの内部空間に設けられて前後方向に長く延びその長手方向の各部断面がU字形状をなすヒンジリテーナと、互いに重ねられた上記フードの他端部におけるインナパネルの部分、上記ヒンジの回動部、および上記ヒンジリテーナの底部を互いに締結する前後方向で複数のボルトとを備え、上記ヒンジリテーナの壁部の上端縁部を上記各ボルトの上端部よりも高く位置させた車両のフード装置において、
前後方向で上記各ボルト同士の間における上記壁部に上方に向かって開く切り欠きを形成し、かつ、この切り欠きの近傍における上記壁部の部分に縦向きのビードを形成している。
【0016】
このため、上記ヒンジリテーナの壁部では、上記切り欠きを形成した部分の剛性は小さくなる一方、ビードを形成した部分の剛性は大きくなることから、上記切り欠きとビードとを形成した各部分同士の剛性差が大きくなる。
【0017】
ここで、上記フード装置を備えた車両の走行中に、この車両がその前方の何らかの物体に衝突(前突)し、この前突により跳ね上げられた物体が、上記フード装置におけるフードとヒンジの回動部との結合部の上面側に落下して大きい衝撃力で衝突したとする。
【0018】
上記の場合、物体の衝突の初期から中期では、上記各ボルトの上端部よりも高く位置させられたヒンジリテーナの壁部において、上記ビードを形成した剛性の大きい部分が上記衝撃力を安定して支持し、もって、上記物体が上記各ボルトの上端部に衝突することが防止されて、物体に生じようとする傷害値が効果的に低減可能とされる。
【0019】
また、上記物体の衝突の後期では、前記したヒンジリテーナの壁部において上記切り欠きとビードとを形成した各部分同士の大きい剛性差により、このヒンジリテーナの壁部に形成された切り欠きの周りの部分に上記衝撃力に基づく応力集中が生じがちとなる。
【0020】
このため、物体の衝突時には、上記ヒンジリテーナは上記切り欠きを形成した部分を中心に円滑に屈曲するよう塑性変形して、上記衝撃力に基づくエネルギーが効果的に吸収される。よって、物体の衝突時には、上記したヒンジリテーナの円滑な塑性変形により、上記フードなどを介し車体側に与えられる衝撃力は効果的に緩和され、この結果、上記フード側から物体に与えられる反力が効果的に緩和されることから、この反力により物体に生じようとする傷害値は、より効果的に低減可能とされる。
【0021】
また、上記した傷害値の効果的な低減は、上記したヒンジリテーナの壁部に切り欠きを形成したことと、この切り欠きの近傍における上記壁部の部分にビードを形成したことにより達成されるのであって、例えば別途の緩衝体を設けることによりフード装置が大型化したり構成が複雑になったりすることを防止しつつ達成できる。よって、上記した傷害値の効果的な低減は、フード装置の質量の増加を防止しつつ、簡単な構成かつ安価な製造で達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図3の部分拡大断面図である。
【図2】車体前部の平面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視断面図である。
【図4】図2の部分拡大詳細図である。
【図5】図1のV−V線矢視断面図である。
【図6】フードの部分、ヒンジの回動部、およびヒンジリテーナの斜視展開図である。
【図7】図1に相当する図で作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の車両のフード装置に関し、車両の前突により跳ね上げられた物体がフード装置におけるフードとヒンジの回動部との結合部の上面側に落下して衝突し、上記結合部に衝撃力を与える場合において、この衝撃力の反力により物体に生じようとする傷害値を、より効果的に低減できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0024】
即ち、車両のフード装置は、上方に向かって開くよう車体に形成された車体開口と、上下に重ねられ中空形状となるよう互いに結合されるアウタ、インナパネルを有して上記車体開口をその上方から開閉可能に閉じるフードと、このフードにおける車体の前後方向での一端部側が上方、下方回動可能となるようこのフードの他端部を車体に枢支するヒンジと、上記フードの内部空間に設けられて前後方向に長く延びその長手方向の各部断面がU字形状をなすヒンジリテーナと、互いに重ねられた上記フードの他端部におけるインナパネルの部分、上記ヒンジの回動部、および上記ヒンジリテーナの底部を互いに締結する前後方向で複数のボルトとを備える。上記ヒンジリテーナの壁部の上端縁部が上記各ボルトの上端部よりも高く位置させられる。前後方向で上記各ボルト同士の間における上記壁部に上方に向かって開く切り欠きが形成され、かつ、この切り欠きの近傍における上記壁部の部分に縦向きのビードが形成される。
【実施例】
【0025】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0026】
図1〜6において、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。また、下記する左右とは、上記前方に向かっての車両1の車体2の幅方向をいうものとする。
【0027】
上記車体2の骨格部材を構成する車体フレーム3は、上記車体2の幅方向に延びてその各端部が不図示の左右フロントピラーの上下方向の中途部に両端支持されるフロントカウル4と、上記各フロントピラーの上下方向の中途部から前方に向かって突設されるエプロンメンバ5と、上記車体フレーム3の前端部を構成し、不図示のサイドメンバ等を介し上記各フロントピラーやエプロンメンバ5に強固に結合されるラジエータサポート6とを備えている。上記車体フレーム3の各構成部品はいずれも板金製である。
【0028】
上記車体2のボデーである車体本体9は、上記フロントカウル4をその上方から覆う樹脂製のカウルルーバー10と、上記左右フロントピラーの各上部およびフロントカウル4で囲まれたフロントウィンド開口11を閉じるフロントウィンドパネル12と、上記各エプロンメンバ5をその外側方から覆ってこれら各エプロンメンバ5側に支持される板金製の左右フロントフェンダパネル13と、上記ラジエータサポート6の前方近傍で車体2の幅方向に延び、上記サイドメンバやラジエータサポート6に支持されるフロントバンパ14とを備えている。上記カウルルーバー10は、その前端縁部が上記フロントカウル4の前端縁部の上面に支持され、後端縁部が上記ウィンドパネル12の前端縁部の上面に支持されている。
【0029】
上記フロントカウル4、左右エプロンメンバ5、およびラジエータサポート6で囲まれた空間がエンジンルーム15とされ、このエンジンルーム15をその上方から開閉可能に閉じるフード装置16が設けられている。
【0030】
以下、上記フード装置16につき詳しく説明する。
【0031】
上記フード装置16は、上記カウルルーバー10の前端縁部、左右各フェンダパネル13の上端縁部、およびバンパ14の上端縁部で囲まれ、上記エンジンルーム15を上方に向かって開くよう車体2の車体本体9に形成された車体開口17と、この車体開口17をその上方から開閉可能に閉じるフード18と、このフード18における車体2の前後方向での一端部側である前端部側が上方、下方回動A,B可能となるようこのフード18の他端部側である後端部を車体2の車体フレーム3のエプロンメンバ5に枢支する左右一対のヒンジ19と、上記車体開口17を閉じたフード18の前端部を上記車体開口17の前部開口縁部である上記ラジエータサポート6の上端部に解除可能にロックするフードロック装置20とを備えている。
【0032】
上記フード18は板金製で、上下に重ねられ中空形状となるよう互いに結合されるアウタ、インナパネル22,23を有し、これら両パネル22,23の間に上下に偏平な内部空間24が形成されている。
【0033】
上記ヒンジ19は板金製で、上記エプロンメンバ5の上面に締結具27により締結されて固着される固定部28と、この固定部28側から前方かつ車体2の幅方向での内方側に向かって延びる回動部29と、この回動部29の後端部を上記固定部28に枢支し、車体2の幅方向に延びる枢支軸心30回りに上記回動部29の前端部側を上方、下方回動A,B可能とする枢支軸31とを備えている。
【0034】
また、上記回動部29は、上記固定部28側から前方かつ車体2の幅方向での内方側に向かって延び、その後端部が上記枢支軸31により上記固定部28に枢支される回動アーム29aと、この回動アーム29aの前部の上端縁部に一体的に形成され、車体2の前後方向に長く延びかつ車体2の幅方向に延びて上記フード18の後端部におけるインナパネル23の下面に対面する結合片29bとを備えている。
【0035】
上記フード18の後端部における内部空間24に左右一対の板金製ヒンジリテーナ34が設けられる。これら各ヒンジリテーナ34は、上記フード18の後端部におけるインナパネル23の側部を介して上記各ヒンジ19の回動部29の結合片29bと対面する底部35と、この底部35の左右各端縁部からそれぞれ一体的に上方に向かって延びる左右壁部36,36と、これら各壁部36のそれぞれ上端縁部に一体的に形成される外向きフランジ37とを備えている。そして、上記左右各ヒンジリテーナ34は前後方向に長く延び、その長手方向の各部断面がU字形状、具体的には上記各外向きフランジ37を含めて倒立ハット形状をなしている。
【0036】
互いに重ねられた上記フード18の後端部におけるインナパネル23の側部、上記ヒンジ19の回動部29の結合片29b、およびヒンジリテーナ34の底部35を互いに締結する前後方向で複数(2本)のボルト40,40と、これら各ボルト40を螺合させるナット41とが設けられている。
【0037】
上記の場合、上記ヒンジリテーナ34の各壁部36の上端縁部および外向きフランジ37は、上記各ボルト40の上端部よりも高く位置させられている。これにより、ヒンジリテーナ34の強度と剛性とが高められ、このヒンジリテーナ34により、上記フード18とヒンジ19の回動部29との結合部が補強されて、上記ヒンジ19による車体2へのフード18の枢支強度が向上させられている。
【0038】
前後方向で上記各ボルト40,40同士の間における上記ヒンジリテーナ34の各壁部36および外向きフランジ37に、それぞれ上方に向かって開く切り欠き44が形成されている。また、この切り欠き44の前、後方の各近傍における上記各壁部36にそれぞれ縦向きのビード45が形成され、これら各ビード45は、上記切り欠き44の前、後方の各近傍における上記壁部36の各部分を補強している。
【0039】
このため、上記ヒンジリテーナ34の各壁部36では、上記切り欠き44を形成した部分の剛性は小さくなる一方、ビード45を形成した部分の剛性は大きくなることから、上記切り欠き44とビード45とを形成した各部分同士の剛性差が大きくなる。
【0040】
図7において、上記フード装置16を備えた車両1の走行中に、この車両1がその前方の何らかの物体48に衝突(前突)し、この前突により跳ね上げられた物体48が、上記フード装置16におけるフード18とヒンジ19の回動部29との結合部の上面側に落下して大きい衝撃力Fで衝突したとする。
【0041】
上記の場合、物体48の衝突の初期では、この物体48からの衝撃力Fにより、上記結合部の上面側におけるフード18のアウタパネル22の部分が下方に向かって屈曲するよう塑性変形し、かつ、上記衝撃力Fは上記アウタパネル22の変形部分を介し上記ヒンジリテーナ34の外向きフランジ37の上面に与えられ始める。
【0042】
また、上記物体48の衝突の中期では、上記各ボルト40の上端部よりも高く位置させられたヒンジリテーナ34の各外向きフランジ37および上記各壁部36において、上記各ビード45を形成した剛性の大きい各部分が、上記衝撃力Fを安定して支持し、もって、上記物体48が上記各ボルト40の上端部に衝突することが防止されて、物体48に生じようとする傷害値が効果的に低減可能とされる。
【0043】
また、上記物体48の衝突の後期では、前記したヒンジリテーナ34の壁部36において上記切り欠き44とビード45とを形成した各部分同士の大きい剛性差により、このヒンジリテーナ34の壁部36に形成された切り欠き44の周りの部分に上記衝撃力Fに基づく応力集中が生じがちとなる。
【0044】
このため、図7で示すように、物体48の衝突時には、上記ヒンジリテーナ34は上記切り欠き44を形成した部分を中心に円滑に屈曲するよう塑性変形して、上記衝撃力Fに基づくエネルギーが効果的に吸収される。よって、物体48の衝突時には、上記したヒンジリテーナ34の円滑な塑性変形により、上記フード18などを介し車体2側に与えられる衝撃力Fは効果的に緩和され、この結果、上記フード18側から物体48に与えられる反力が効果的に緩和されることから、この反力により物体48に生じようとする傷害値は、より効果的に低減可能とされる。
【0045】
また、上記した傷害値の効果的な低減は、上記したヒンジリテーナ34の壁部36に切り欠き44を形成したことと、この切り欠き44の近傍における上記壁部36の部分にビード45を形成したことにより達成されるのであって、例えば別途の緩衝体を設けることによりフード装置16が大型化したり構成が複雑になったりすることを防止しつつ達成できる。よって、上記した傷害値の効果的な低減は、フード装置16の質量の増加を防止しつつ、簡単な構成かつ安価な製造で達成できる。
【0046】
なお、図6中一点鎖線で示すように、上記ヒンジ19の回動部29における各ボルト40,40同士の間の部分、かつ、前後方向で上記切り欠き44と同じ位置にビードなどの脆弱部50を形成してもよい。
【0047】
上記のようにすれば、フード18のインナパネル23を介してのヒンジ19の回動部29とヒンジリテーナ34との結合部において、上記切り欠き44および脆弱部50と、ビード45とを形成した各部分同士の剛性差がより大きくなることから、物体48の衝突時には、上記ヒンジ19の回動部29とヒンジリテーナ34との結合部における切り欠き44および脆弱部50の周りの部分に上記衝撃力Fに基づく応力集中がより確実に生じがちとなる。このため、物体48の衝突時には、上記ヒンジ19の回動部29とヒンジリテーナ34との結合部は上記切り欠き44および脆弱部50を形成した部分を中心に、より円滑に屈曲するよう塑性変形して、上記衝撃力Fに基づくエネルギーが、より効果的に吸収される。
【0048】
なお、以上は図示の例によるが、上記フード18はトランクフードであってもよく、この場合、このトランクフードは、その後端部側が上方、下方回動A,B可能となるよう前端部がヒンジ19により車体2に枢支される。また、上記ヒンジリテーナ34の外向きフランジ37は無くてもよい。また、上記ボルト40は3本以上設けてもよく、この場合、ヒンジリテーナ34の各壁部36における各ボルト40同士の間にそれぞれ上記切り欠き44を形成してもよい。また、上記切り欠き44の前、後方のいずれか一方の近傍にのみビード45を形成してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 車両
2 車体
3 車体フレーム
9 車体本体
16 フード装置
17 車体開口
18 フード
19 ヒンジ
20 フードロック装置
22 アウタパネル
23 インナパネル
24 内部空間
27 締結具
28 固定部
29 回動部
29a 回動アーム
29b 結合片
30 枢支軸心
31 枢支軸
34 ヒンジリテーナ
35 底部
36 壁部
37 外向きフランジ
40 ボルト
41 ナット
44 切り欠き
45 ビード
48 物体
50 脆弱部
A 上方回動
B 下方回動
F 衝撃力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に向かって開くよう車体に形成された車体開口と、上下に重ねられ中空形状となるよう互いに結合されるアウタ、インナパネルを有して上記車体開口をその上方から開閉可能に閉じるフードと、このフードにおける車体の前後方向での一端部側が上方、下方回動可能となるようこのフードの他端部を車体に枢支するヒンジと、上記フードの内部空間に設けられて前後方向に長く延びその長手方向の各部断面がU字形状をなすヒンジリテーナと、互いに重ねられた上記フードの他端部におけるインナパネルの部分、上記ヒンジの回動部、および上記ヒンジリテーナの底部を互いに締結する前後方向で複数のボルトとを備え、上記ヒンジリテーナの壁部の上端縁部を上記各ボルトの上端部よりも高く位置させた車両のフード装置において、
前後方向で上記各ボルト同士の間における上記壁部に上方に向かって開く切り欠きを形成し、かつ、この切り欠きの近傍における上記壁部の部分に縦向きのビードを形成したことを特徴とする車両のフード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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