説明

車両のフード跳ね上げ装置

【課題】フード跳ね上げ後に容易に復帰可能であり、且つアクチュエータの力を効率よく使用できるものとし、アクチュエータの小型化やコストの低減を実現することのできる車両のフード跳ね上げ装置を提供すること。
【解決手段】歩行者衝突時、アクチュエータ(30)のロッド(34)が押し上げられ、当該ロッドがリンケージ(70)の他端と接触し当該リンケージを回動させることで、当該リンケージの係合凹部(74)とフードブラケット(50)の係合爪部(56)との係合を解除し、その後ロッドがフードブラケットと接触してフロントフード(18)の後部を跳ね上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフード跳ね上げ装置に係り、詳しくは歩行者との衝突時に車両のフードを持ち上げることでエンジンルーム内の空間を確保し歩行者への衝撃を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、歩行者(被衝突物)との衝突を想定し車両前部のフードに衝撃吸収機構を備え、歩行者の安全面を考慮した車両が開発されている。
例えば、歩行者との衝突時にフードの後側を持ち上げることでエンジンルーム内の空間を確保し、歩行者が当該フードと衝突した際にエンジン等の固い部品に当たらないようにする技術がある。
【0003】
具体的には、フードの車両後側の両端部分において、一端が車体側に支持され他端がフード側に支持されたリンク部材を設け、当該リンク部材を第1阻止部及び第2阻止部によりフードの開閉と連動するよう固定し、歩行者衝突時にはアクチュエータを作動させ第2阻止部を破損させながらフードの後部を強制的に跳ね上げる構成が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、同じく一端が車体側、他端がフード側に支持されたリンク部材を設け、当該リンク部材に形成されたフック部を車体側に係止することで通常時はリンク部材を車体側に固定し、歩行者衝突時にはアクチュエータを作動させてリンク部材に設けられたハンガを押圧することで当該ハンガと連結されているフック部を変形させ係止を解除するとともに、アクチュエータが当該ハンガからリンク部材を介してフードを跳ね上げる構成が開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−59799号公報
【特許文献2】特許2004−249795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2に開示された技術では、歩行者衝突時に第2阻止部を破損させてフードを跳ね上げたり、フック部を変形させて車体側との係止を解除する構成であるため、例えば誤作動等によりフードが跳ね上げられた場合に容易に復帰させることができないという問題がある。
また、特許文献1における第2阻止部のように、通常時においては簡単にリンク部材の固定が解除されないようにしなければならないのに対し、歩行者衝突時には確実に破損されなければならず、非常に精度の高い成形を必要とするため、コストの増加を招くおそれがある。また、歩行者衝突時に確実に第2阻止部を破損させるには十分な力を発生させることのできるアクチュエータが必要となり、アクチュエータの大型化や更なるコストの増加を招くおそれがある。
【0006】
特許文献2においては、アクチュエータがハンガを介してフック部材の変形を行うとともに、リンク部材の中間位置に設けられた当該ハンガを介してフードの跳ね上げを行うため、比較的大きな力を必要とし、当該アクチュエータの大型化やコストの増加を招くおそれがある。
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、フード跳ね上げ後に容易に復帰可能であり、且つアクチュエータの力を効率よく使用できるものとし、アクチュエータの小型化やコストの低減を実現することのできる車両のフード跳ね上げ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1の車両のフード跳ね上げ装置では、車両の前部に設けられたフード跳ね上げ装置であって、フード後部に位置し、一端が該フード側に、他端が車体側にそれぞれ回動自在に支持され、該一端または該他端のいずれか一方が該フードの開閉におけるヒンジ機構をなす連結部材と、一方が前記連結部材に設けられ、他方が前記フード側または前記車体側に設けられ、該一方及び他方のいずれか一方が可動式に構成されてなり、互いに係合することで前記連結部材を前記フード側または前記車体側に固定する一対の係合部材と、前記車両と被衝突物との衝突を検出可能な衝突検出手段と、該衝突検出手段により前記車両と被衝突物との衝突が検出された際、作動部が、前記可動式の係合部材と接触して前記一対の係合部材の係合を解除した後、連続して前記フードの後部と接触し該フードを跳ね上げるよう作動するアクチュエータとを備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項2の車両のフード跳ね上げ装置では、請求項1において、前記一対の係合部材のうち可動式の係合部材は前記連結部材に設けられており、他方の係合部材は前記車体または前記フードに設けられることを特徴としている。
請求項3の車両のフード跳ね上げ装置では、請求項1において、前記一対の係合部材のうち可動式の係合部材は前記車体側に設けられており、他方の係合部材は前記連結部材に設けられることを特徴としている。
【0009】
請求項4の車両のフード跳ね上げ装置では、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記可動式の係合部材は、一端が前記他方の係合部材と係合可能に形成されているとともに、他端が前記アクチュエータの作動部と接触するよう形成され、該一端と該他端との間の所定の位置で回動自在に支持されたシーソー型形状をなしており、前記アクチュエータの作動部が該他端と接触し回動することで該一端における係合が解除されることを特徴としている。
【0010】
請求項5の車両のフード跳ね上げ装置では、請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記フードには、前記アクチュエータの作動部が直接接触するとともに前記連結部材の一端を回動自在に支持するヒンジ部を有するフードブラケットが設けられており、前記車体には、前記連結部材の他端を回動自在に支持するヒンジ部を有するベースブラケットが設けられており、前記他方の係合部材は、該フードブラケットまたは該ベースブラケットに一体に形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項6の車両のフード跳ね上げ装置では、請求項1乃至5のいずれかにおいて、前記一対の係合部材は、一方の係合部材が少なくとも他方の係合部材を上下方向から挟みこむようにして係合することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
上記手段を用いる本発明の請求項1及び2の車両のフード跳ね上げ装置によれば、歩行者(被衝突物)との衝突が検出されたときにはアクチュエータが作動し、当該アクチュエータの作動部が連結部材を固定している可動式の係合部材と接触することで当該係合を解除して連結部材の固定を解除し、その後に当該アクチュエータの作動部が連続してフードと接触し跳ね上げることで、エンジンルーム内に空間を確保し、歩行者の衝撃を緩和させる。
【0013】
このように当該請求項1及び2に係る車両のフード跳ね上げ装置では、衝突時に作動するアクチュエータの作動部が係合部材と接触して連結部材の固定を解除しているが、当該係合部材は可動式であることからアクチュエータは非常に小さな力で係合を解除することができる。
また、当該アクチュエータの作動部は、別の部材等を介さず直接フードと接触してフードを跳ね上げることから、アクチュエータは余計な力を必要としない。
【0014】
さらに、連結部材を固定する係合部材の一方が可動式であることで、たとえ誤作動等により当該係合が解除されフードが持ち上がった場合でも、容易に係合状態を復帰させることができる。
以上のことから当該請求項1及び2に係る車両のフード跳ね上げ装置では、容易に復帰可能であり、且つアクチュエータの力を効率よく使用することができ、アクチュエータの小型化やコストの低減を実現することができる。
【0015】
請求項3の車両のフード跳ね上げ装置によれば、可動式の係合部材が車体側に設けられることで、当該可動式である係合部材の動きを安定させることができ、アクチュエータによる当該係合部材の係合の解除をより確実なものにすることができる。
請求項4の車両のフード跳ね上げ装置によれば、可動式の係合部材をシーソー型形状とすることで、簡単な構成で係合解除の際の力をより小さくすることができる。
【0016】
請求項5の車両のフード跳ね上げ装置によれば、ベースブラケット及びフードブラケットが連結部材を支持するとともに、いずれか一方のブラケットに係合部材が一体に形成されていることから構成を簡易なものにすることができる上、部品点数を削減させコストを低減させることができる。
また、アクチュエータの作動部が接触する部位をフードブラケットとすることでフードの強度を確保することができる。
【0017】
請求項6の車両のフード跳ね上げ装置によれば、一対の係合部材は、一方の係合部材が他方の係合部材を上下方向から挟みこむように係合することで、車両が振動した場合等でも確実に係合状態を維持することができ、さらに振動による騒音の抑制ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
まず、実施例1について説明する。
図1を参照すると、本発明に係るフード跳ね上げ装置を備えた車両の概略構成図が示されている。
図1に示すように、車両1の車体前部にはエンジンルーム2が形成されている。
【0019】
また、当該車両1の車体前部の両側面にはそれぞれフロントフェンダ4、6が配設されている。
また、当該車両1の車体前端部分には、車幅方向両端に一対のヘッドランプ8、10が配設され、当該ヘッドランプ8、10の下方には車幅方向に延びたフロントバンパ12が配設されている。
【0020】
当該フロントバンパ12内には歩行者(被衝突物)との衝突を検知可能な衝撃センサ14(衝突検出手段)が設けられており、当該衝撃センサ14は車両1に備えられているECU16と電気的に接続されている。当該ECU16は、図示しない車速センサ等の各種センサ類や各種装置等と電気的に接続されており、各種センサ類からの各情報に基づき各種装置を制御する機能を有している。
【0021】
エンジンルーム2の上面には、開閉可能なフロントフード18(フード)が配設されている。
当該フロントフード18は、全閉時には当該フロントフード18の前端に設けられたストライカ18aがフロントバンパ12の上部に設けられたラッチ12aにより固定され、開放時には後端の車幅方向両側部分にそれぞれ設けられたフード跳ね上げ機構20、22を支点として上方に開放する構成をなしている。
【0022】
以下、第1実施例におけるフード跳ね上げ機構20について詳しく説明する。
図2には、本発明の第1実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置において車両左側に設けられているフード跳ね上げ機構20を車両内側から視た側面図が示されており、以下当該図2を参照しながら説明する。なお、車両右側に設けられているフード跳ね上げ機構22も同様の構成をなしている。
【0023】
図2に示すように、フード跳ね上げ機構20は、フロントフェンダ4に固定されているアクチュエータ30及びベースブラケット40、フロントフード18に固定されているフードブラケット50、当該フードブラケット50及びベースブラケット40を連結している中間アーム60(連結部材)、及び当該中間アーム60に設けられているリンケージ70(可動式の係合部材)から構成されている。
【0024】
詳しくは、アクチュエータ30は筒形状をなしており、車両上下方向を軸方向としてフロントフェンダ4の内側面4aに固定されている。当該アクチュエータ30は筒形状の外形部32の内部に、同軸方向に延びる棒形状のロッド(作動部)34、及び当該ロッド34の下方に位置して設けられた所謂火薬式のインフレータ36を備えた構成をなしている。なお、当該ロッド34は上端部分を外形部32より上側に突出させた状態で備えられている。そして、当該アクチュエータ30はECU16と電気的に接続されており、ECU16からの信号に応じてインフレータ36を作動させロッド34を上方に押し出す機能を有している。
【0025】
ベースブラケット40は、フロントフェンダ4の平面部4bに当接している板部材であり、ボルト42、42により車体に固定されている。当該ベースブラケット40の後端には上方に延出したヒンジ部44が形成されている。
フードブラケット50は、フロントフード18の下面と当接した板部材であり、ボルト52、52により当該フロントフード18に固定されている。当該フードブラケット50の車両前端には下方に延出したヒンジ部54が形成されている。一方、当該フードブラケット50の後端には、下方に延出し且つ後方に突出した爪を先端部に有する係合爪部56(係合部材)が形成されている。なお、当該係合爪部56の爪は上下の辺が後方に向かうにつれて近づくよう僅かに傾斜した形状をなしている。
【0026】
中間アーム60は、一端が上記ベースブラケット40のヒンジ部44に、他端が上記フードブラケット50のヒンジ部54にそれぞれピン62、64を介して回動自在に支持されている。つまり、当該中間アーム60は一端が車体に他端がフロントフード18に支持されており、一端及び他端のピン62、64を支点としてそれぞれ上下方向に、回動自在である。
【0027】
リンケージ70は、一端側が上方に、他端側が前方に延びた側面視略L字形状をなしており、屈曲部においてピン72を介して中間アーム60の略中央部分に回動自在に設けられている。そして、当該リンケージ70は、一端側の先端部分に上記フードブラケット50の係合爪部56と係合する係合凹部74が形成されている。当該係合凹部74は後方に突出した係合爪部56の形状に合わせ、上下の辺が前方に向かって拡がった凹形状をなしており、当該係合爪部56の上下から挟むように係合する。
【0028】
一方、当該リンケージ70の他端はアクチュエータ30の軸方向延長上に位置するよう形成されている。
また、当該リンケージ70のピン72周りにはねじりばね76が設けられており、リンゲージ70は当該ねじりばね76により図3で視て時計回り方向、即ち係合凹部74と係合爪部56とが係合する方向に付勢されている。
【0029】
以上のように構成されたフード跳ね上げ機構20は、例えば車両が所定車速以上で走行していたときに歩行者と衝突し、上記衝撃センサ14により当該歩行者との衝突が検出された場合に、ECU16からアクチュエータ30に所定の信号が送られ、当該アクチュエータ30が作動することでフロントフード18を跳ね上げるものである。
以下このように構成された本発明の第1実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の作用について説明する。
【0030】
図3乃至図5を参照すると、図3には本発明の第1実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の開放時におけるフード跳ね上げ機構20の側面図が、図4には本発明の第1実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の歩行者衝突時初期におけるフード跳ね上げ機構20の側面図が、図5には本発明の第1実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の歩行者衝突時後期におけるフード跳ね上げ機構20の側面図がそれぞれ示されている。以下、図2乃至図5に基づき説明する。
【0031】
まず、通常時のフロントフード18全閉状態では、フード跳ね上げ機構20は上記図2に示すようにリンケージ70の係合凹部74がフードブラケット50の係合爪部56に係合されている。
そして、車両1前端のラッチ12aを解除しフロントフード18を開放した場合には、図3に示すように、フード跳ね上げ機構20はリンケージ70の係合凹部74とフードブラケット50の係合爪部56とが係合されていることで、ベースブラケット40後端のヒンジ部44においてピン62を支点として中間アーム60がフードブラケット50、即ちフロントフード18と一体に車両上方向へと回動する。
【0032】
一方、車両1が所定車速以上での走行中、上記衝撃センサ14により歩行者との衝突が検出されると、ECU16から上記アクチュエータ30に所定の信号が送られる。
当該信号を受けたアクチュエータ30はインフレータ36を作動させ、これによりロッド34が上方に押し出される。
このとき、フロントフード18は全閉状態であり、当該ロッド34が上方に押し出されることで、まずロッド34の先端がリンケージ70の他端側と接触する。
【0033】
そして、図4に示すように、さらにロッド34が押し上げられていくことで、リンケージ70はねじりばね76の付勢力に抗して当該図4で視て反時計回りに回動し、当該リンケージ70の係合凹部74とフードブラケット50の係合爪部56との係合が解除される。なお、係合爪部56の上下の辺はリンケージ70の回動方向に傾斜しており、当該係合は良好に解除される。
【0034】
また、さらにロッド34が押し上げられると、図5に示すように、当該ロッド34の先端がフードブラケット50の下面と接触する。このとき、すでにリンケージ70の係合凹部74とフードブラケット50の係合爪部56との係合は解除されていることから、フロントフード18の後部はフードブラケット50を介してロッド34により跳ね上げられる。
【0035】
詳しくは、フロントフード18の先端はラッチ12aにより固定されており、ロッド34によりフードブラケット50が上方に力を受けると、中間アーム60がベースブラケット40に対してピン62を支点に図5で視て反時計回りに回動するとともに、フードブラケット50が中間アーム60に対してピン64を中心に図5で視て時計回りに回動して、フロントフード18の後部が上方へと跳ね上げられる。
【0036】
このようにフロントフード18の後部が跳ね上げられることで、当該フロントフード18とエンジンルーム2内に設けられているエンジン等の各種装置との空間が拡がり、歩行者がフロントフード18に衝突した際の衝撃を低減させることができる。
そして、上記構成の跳ね上げ機構20のように、通常時において中間アーム60をフード18側に固定しているリンケージ70が可動式であることから、たとえ軽度な衝突や、誤作動等により当該リンケージ70の係合が解除された場合であったでも、容易に係合状態を復帰させることができる。
【0037】
また、当該リンケージ70はL字形状のシーソー型であることで、簡単な成形可能な上、歩行者衝突時初期においてロッド34先端がリンケージ70の他端と接触し当該リンケージ70の係合を解除する際の力を小さな力とすることができる。さらに、歩行者衝突時後期において、アクチュエータ30のロッド34がフードブラケット50と接触しフロントフード18を跳ね上げるため、アクチュエータ30の力は直接フロントフード18に伝達するので余計な力を必要とせず、効率よくフロントフード18を跳ね上げることができる。なお、このときロッド34が直接接触するのはフードブラケット50であるため、フロントフード18の強度を確保することができる。さらに、当該フードブラケット50は中間アーム60を支持するとともに、係合爪部56が一体に形成されていることから構成を簡易なものにすることができ、部品点数を削減することができる。
【0038】
また、リンケージ70の係合凹部74はフードブラケット50の係合爪部56を上下方向から挟みこむように係合するため、車両1が振動した場合等でも確実に係合状態を維持することができ、さらに振動による騒音の抑制ができる。
以上のことから、本発明の第1実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置では、アクチュエータ30の力を効率よく使用することができ、アクチュエータ30の小型化やコストの低減を実現させることができる。
【0039】
次に第2実施例について説明する。
図6を参照すると、本発明の第2実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置における跳ね上げ機構120の側面図が示されている。なお、当該第2実施例はフード跳ね上げ機構120以外の構成は上記第1実施例と同様であり、同様の構成については詳しい説明を省略する。
【0040】
図6に示すように、第2実施例におけるフード跳ね上げ機構120は、アクチュエータ130、ベースブラケット140、フードブラケット150、中間アーム160、及びリンケージ170から構成されている。
詳しくは、アクチュエータ130は上記第1実施例と同様に外形部132内にロッド134及びインフレータ136を備えた構成であり、フロントフェンダ4の内側面4aに固定されている。
【0041】
ベースブラケット140は、フロントフェンダ4の平面部4bにボルト142、142により固定されており、前端には上方に延出したヒンジ部144が形成されている。一方、当該ベースブラケット140の後部には、上方に延出し、前方に突出した爪を先端部分に有する係合爪部146が形成されている。
フードブラケット150は、フロントフード18の下面にボルト52、52により固定されており、車両後端には下方に突出したヒンジ部154が形成されている。
【0042】
中間アーム160は、一端が上記ベースブラケット140のヒンジ部144に、他端が上記フードブラケット150のヒンジ部154にそれぞれピン162、164を介し回動自在に支持されている。
リンケージ170は、一端が下方、他端が前方に延びた側面視略L字形状をなしており、屈曲部においてピン172を介して中間アーム160の略中央部分に回動自在に設けられている。そして、当該リンケージ170の一端には上記ベースブラケット140の係合爪部146と係合する係合凹部174が形成されている。一方、当該リンケージ170の他端はアクチュエータ130の軸方向延長上に位置している。また、当該リンケージ170のピン172周りにはねじりばね176が設けられており、リンゲージ170は当該ねじりばね176により図6で視て時計回り方向、即ち係合凹部174と係合爪部146とが係合する方向に付勢されている。
【0043】
以上のように第2実施例におけるフード跳ね上げ機構120は、ベースブラケット140のヒンジ部144が前側に、一方フードブラケット150のヒンジ部154が後側に形成されている。また、係合爪部146が車体側のベースブラケット140に形成され、それに伴い係合凹部174が形成されているリンケージ170の一端は下方に延びた形状となっている。
【0044】
以下このように構成された本発明の第2実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の作用について説明する。
図7乃至図9を参照すると、図7には本発明の第2実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の開放時におけるフード跳ね上げ機構120の側面図が、図8には本発明の第2実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の歩行者衝突時初期におけるフード跳ね上げ機構120の側面図が、図9には本発明の第2実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の歩行者衝突時後期におけるフード跳ね上げ機構120の側面図がそれぞれ示されている。以下、図6乃至図9に基づき説明する。
【0045】
まず、通常時のフロントフード18全閉状態では、フード跳ね上げ機構120は上記図6に示すようにリンケージ170の係合部174がベースブラケット140の係合爪部146に係合されている。
そして、フロントフード18開放時には、図7に示すように、フード跳ね上げ機構120はリンケージ170の係合凹部174とベースブラケット140の係合爪部146とが係合されていることで、中間アーム160の他端のピン164を支点としてフードブラケット150とともにフロントフード18が車両上方向へと回動する。
【0046】
一方、歩行者衝突時には、ECU16の信号に応じアクチュエータ130はインフレータ136を作動させ、これによりロッド134が上方に押し出される。
そして、図8に示すように、当該ロッド134の先端がリンケージ170の他端側と接触することで、リンケージ170はねじりばね176の付勢力に抗して図8で視て反時計回りに回動し、当該リンケージ170の係合部174とベースブラケット140の係合爪部146との係合が解除される。
【0047】
また、さらにロッド134が押し上げられると、図9に示すように、当該ロッド134の先端がフードブラケット150の下面と接触し、フロントフード18の後部が跳ね上げられる。
詳しくは、当該第2実施例では、ロッド134によりフードブラケット150が上方に力を受けると、中間アーム160がベースブラケット140に対してピン162を支点に図9で視て時計回りに回動するとともに、フードブラケット150が中間アーム160に対してピン164を支点に図9で視て反時計回りに回動することで、フロントフード18の後部が上方へと跳ね上げられる。
【0048】
以上のような構成の本発明の第2実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置では、上記第1実施例と同様の効果を奏することができる。
次に第3実施例について説明する。
図10を参照すると、本発明の第3実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置における跳ね上げ機構220の側面図が示されている。なお、当該第3実施例はフード跳ね上げ機構220以外の構成は上記第1実施例と同様であり、同様の構成については詳しい説明を省略する。
【0049】
図10に示すように、第3実施例におけるフード跳ね上げ機構220は、アクチュエータ230、ベースブラケット240、フードブラケット250、中間アーム260、及びリンケージ270から構成されている。
詳しくは、アクチュエータ230は上記第1実施例と同様に外形部232内にロッド234及びインフレータ236を備えた構成であり、フロントフェンダ4の内側面4aに固定されている。
【0050】
ベースブラケット240は、フロントフェンダ4の平面部4bにボルト242、242により固定されており、前端には上方に突出したヒンジ部244が形成されている。一方、当該ベースブラケット240の後部には上方に突出したリンケージヒンジ部246が形成されている。
そして、当該リンケージヒンジ部246には、ピン272を介してリンケージ270が回動自在に支持されている。
【0051】
当該リンケージ270は、一端が上方、他端が前方に延びた側面視略L字形状をなしている。そして、当該リンケージ270の一端には係合凹部274が形成されている。一方、当該リンケージ270の他端は先端がアクチュエータ230の軸方向延長上に位置するよう形成されている。また、当該リンケージ270のピン272周りにはねじりばね276が設けられており、リンゲージ270は当該ねじりばね276により図10で視て時計回り方向に付勢されている。
【0052】
フードブラケット250は、フロントフード18の下面にボルト252、252により固定されており、車両後端には下方に突出したヒンジ部254が形成されている。
中間アーム260は、一端が上記ベースブラケット240のヒンジ部244に、他端が上記フードブラケット250のヒンジ部254に、それぞれピン262、264を介して回動自在に支持されている。
【0053】
また、当該中間アーム260の中央部分には、下方に延出し、後方に突出した爪を先端部分に有する係合爪部266が形成されている。当該係合爪部266は上記リンケージ270の係合凹部274と係合可能である。
以上のように第3実施例におけるフード跳ね上げ機構220は、第2実施例のリンケージ170と係合凹部146との配置が逆になっており、中間アーム260側に係合爪部266が、車体側であるベースブラケット240にリンケージ270が設けられた構成である。
【0054】
以下このように構成された本発明の第2実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の作用について説明する。
図11乃至図13を参照すると、図11には本発明の第3実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の開放時におけるフード跳ね上げ機構220の側面図が、図12には本発明の第3実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の歩行者衝突時初期におけるフード跳ね上げ機構220の側面図が、図13には本発明の第3実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の歩行者衝突時後期におけるフード跳ね上げ機構220の側面図がそれぞれ示されている。以下、図10乃至図13に基づき説明する。
【0055】
まず、通常時のフロントフード18全閉状態では、フード跳ね上げ機構220は上記図10に示すようにリンケージ270の係合凹部274が中間アーム260の係合爪部266に係合されている。
そして、フロントフード18開放時には、図11に示すように、フード跳ね上げ機構220はリンケージ270の係合凹部274と中間アーム260の係合爪部266とが係合されていることから、中間アーム260の他端のピン264を支点としてフードブラケット250とともにフロントフード18が車両上方向へと回動する。
【0056】
一方、歩行者衝突時には、ECU16の信号に応じアクチュエータ230はインフレータ236を作動させ、これによりロッド234が上方に押し出される。
そして、図12に示すように、当該ロッド234の先端がリンケージ270の他端側と接触することで、リンケージ270はねじりばね276の付勢力に抗して図12で視て反時計回りに回動し、当該リンケージ270の係合凹部274と中間アーム260の係合爪部266との係合が解除される。
【0057】
また、さらにロッド234が押し上げられると、図13に示すように、当該ロッド234の先端がフードブラケット250の下面と接触し、上記第2実施例と同様にフロントフード18の後部が跳ね上げられる。
以上のように、当該第3実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置においても、上記第1実施例及び第2実施例と同様の効果を奏することができる。その上、当該第3実施例では、可動式のリンケージ270が、非可動部である車体側のベースブラケット240に設けられているため、当該リンケージ270の動きを安定されることができ、アクチュエータ230による当該リンケージ270及び係合爪部266の係合の解除をより確実なものにすることができる。
【0058】
以上で本発明に係る車両のフード跳ね上げ装置の実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、上記実施形態では、リンケージは側面視L字形状をなしていたが、当該リンケージの形状はこれに限られるものではなく、シーソー型形状であれば他の形状でも構わない。
【0059】
また、上記実施形態では、一対の係合部材として、リンケージに係合凹部が、車体側またはフード側に係合爪部がそれぞれ形成されているが、リンケージに係合爪部が、車体側またはフード側に係合凹部が形成された構成でも構わない。また、当該一対の係合部材は爪部と凹部の形状に限られるものではない。
また、上記実施形態ではインフレータでは火薬式であるが、歩行者衝突が検出された際にロッドを押し上げられるものであればよく、例えば歩行者衝突時に解放されるばね等を使用しても構わない。
【0060】
また、上記第1実施例はフード側に係合爪部が、中間アームにリンケージが設けられているが、逆にフード側にリンケージが、中間アームに係合爪部を設けた構成でも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係るフード跳ね上げ装置を備えた車両の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置において車両左側に設けられているフード跳ね上げ機構を車両内側から視た側面図である。
【図3】第1実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の開放時におけるフード跳ね上げ機構の側面図である。
【図4】第1実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の歩行者衝突時初期におけるフード跳ね上げ機構の側面図である。
【図5】第1実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の歩行者衝突時後期におけるフード跳ね上げ機構の側面図である。
【図6】本発明の第2実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置におけるフード跳ね上げ機構の側面図である。
【図7】第2実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の開放時におけるフード跳ね上げ機構の側面図である。
【図8】第2実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の歩行者衝突時初期におけるフード跳ね上げ機構の側面図である。
【図9】第2実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の歩行者衝突時後期におけるフード跳ね上げ機構の側面図である。
【図10】本発明の第3実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置におけるフード跳ね上げ機構側面図である。
【図11】第3実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の開放時におけるフード跳ね上げ機構の側面図である。
【図12】第3実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の歩行者衝突時初期におけるフード跳ね上げ機構の側面図である。
【図13】第3実施例に係る車両のフード跳ね上げ装置の歩行者衝突時後期におけるフード跳ね上げ機構の側面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 車両
2 エンジンルーム
4、6 フロントフェンダ
12 フロントバンパ
14 衝撃センサ(衝突検出手段)
16 ECU
18 フロントフード(フード)
20、22、120、220 フード跳ね上げ機構
30、130、230 アクチュエータ
34、134、234 ロッド(作動部)
40、140、240 ベースブラケット
44、54、144、154、244、254 ヒンジ部
50、150、250 フードブラケット
56、146、266 係合爪部(係合部材)
60、160、260 中間アーム(連結部材)
62、64、162、164、262、264 ピン
70、170、270 リンケージ(可動式の係合部材)
74、174、274 係合凹部
76、176、276 ねじりばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部に設けられたフード跳ね上げ装置であって、
フード後部に位置し、一端が該フード側に、他端が車体側にそれぞれ回動自在に支持され、該一端または該他端のいずれか一方が該フードの開閉におけるヒンジ機構をなす連結部材と、
一方が前記連結部材に設けられ、他方が前記フード側または前記車体側に設けられ、該一方及び他方のいずれか一方が可動式に構成されてなり、互いに係合することで前記連結部材を前記フード側または前記車体側に固定する一対の係合部材と、
前記車両と被衝突物との衝突を検出可能な衝突検出手段と、
該衝突検出手段により前記車両と被衝突物との衝突が検出された際、作動部が、前記可動式の係合部材と接触して前記一対の係合部材の係合を解除した後、連続して前記フードの後部と接触し該フードを跳ね上げるよう作動するアクチュエータと、
を備えたことを特徴とする車両のフード跳ね上げ装置。
【請求項2】
前記一対の係合部材のうち可動式の係合部材は前記連結部材に設けられており、他方の係合部材は前記車体または前記フードに設けられることを特徴とする請求項1記載の車両のフード跳ね上げ装置。
【請求項3】
前記一対の係合部材のうち可動式の係合部材は前記車体側に設けられており、他方の係合部材は前記連結部材に設けられることを特徴とする請求項1記載の車両のフード跳ね上げ装置。
【請求項4】
前記可動式の係合部材は、一端が前記他方の係合部材と係合可能に形成されているとともに、他端が前記アクチュエータの作動部と接触するよう形成され、該一端と該他端との間の所定の位置で回動自在に支持されたシーソー型形状をなしており、前記アクチュエータの作動部が該他端と接触し回動することで該一端における係合が解除されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の車両のフード跳ね上げ装置。
【請求項5】
前記フードには、前記アクチュエータの作動部が直接接触するとともに前記連結部材の一端を回動自在に支持するヒンジ部を有するフードブラケットが設けられており、
前記車体には、前記連結部材の他端を回動自在に支持するヒンジ部を有するベースブラケットが設けられており、
前記他方の係合部材は、該フードブラケットまたは該ベースブラケットに一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の車両のフード跳ね上げ装置。
【請求項6】
前記一対の係合部材は、一方の係合部材が少なくとも他方の係合部材を上下方向から挟みこむようにして係合することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の車両のフード跳ね上げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−120117(P2008−120117A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302863(P2006−302863)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】