説明

車両の制御装置

【課題】循環水路に吐出する冷却水の量が可変制御されるポンプを備え、同循環水路からの冷却水の漏出が予測されるときに、その漏出を抑制する。
【解決手段】冷却部10,20は、車両駆動系の冷却水が循環する循環水路17,26と、この循環水路17,26に循環させる冷却水の吐出量を可変制御することのできるポンプ12,23とを含んでそれぞれ構成される。制御装置91は、エアバッグ装置41が起動したことに基づいて循環水路17,26からの冷却水の漏出が予測されるときには、ポンプ12,23の吐出量を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプ等、吐出量が可変制御されるポンプを通じて冷却水を循環水路で循環させることにより車両の駆動源を冷却する冷却装置を備えた車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関を駆動源として走行する車両にあっては、内燃機関の運転時に発生する熱により内燃機関、特に機関燃焼室近傍が過度に温度上昇することを抑制するため、同機関燃焼室の周囲にウォータジャケットを形成するとともに、ポンプから吐出した冷却水をこのウォータジャケットとラジエータとの間で循環させることにより、機関燃焼室近傍を含め内燃機関を適温に維持するようにしている。従来、こうした冷却装置のポンプとして、機関出力軸にその回転軸が駆動連結される機関駆動式のポンプが広く用いられている。こうした機関駆動式のポンプでは機関出力軸の回転速度に基づいてその吐出量が一義的に決定される。
【0003】
一方、近年では、例えば特許文献1に記載されるように、こうした機関駆動式のポンプに代えて電動ポンプを採用する冷却装置も提案されている。こうした電動ポンプを採用する冷却装置によれば、例えば冷間時には冷却水温がある程度上昇するまで、電動ポンプから吐出される冷却水の量を少なくして冷却水の循環量を制限し、その冷却能力を一時的に低下させることにより暖機の促進を図る等、内燃機関の温度状態に即した精密な冷却制御を実行することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−214280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、冷却水の循環水路を構成する配管類等に亀裂が生じたり、配管類が所定の取付箇所から抜け落ちたりすると、循環水路から冷却水が外部に漏出するおそれがある。内燃機関等、車両の駆動源を冷却するための冷却液には、例えば、車両の環境温度が極めて低いような場合でも凝固することなく所定の冷却能力を維持するために、凝固温度の極めて低いエチレングリコール等の有害成分が含まれている。このため、冷却水が外部に漏出した場合には、その周囲環境に少なからず悪影響を与えるおそれがある。尚、内燃機関を駆動源とする車両について例示したが、こうした冷却水の漏出による悪影響は、例えば電動発電機を駆動源とする車両や、内燃機関及び電動発電機の双方を駆動源とする、いわゆるハイブリッド車両においても同様に生じ得る。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、循環水路に吐出する冷却水の量が可変制御されるポンプを備え、同循環水路からの冷却水の漏出が予測されるときに、その漏出を抑制することのできる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、車両の駆動源を含む車両駆動系を冷却する冷却水が循環する循環水路と、この循環水路に冷却水を吐出して循環させるポンプと、そのポンプの吐出量を可変制御するポンプ制御手段とを含む冷却装置を有する車両の制御装置において、前記循環水路からの冷却水の漏出が予測される特定事象を検出する検出手段を備え、前記ポンプ制御手段は前記特定事象が検出されたときに前記ポンプの吐出量を制限する吐出量制限処理を実行するものであるとしている。
【0008】
この構成によれば、循環水路を構成する配管類等に亀裂が生じたり、所定の取付箇所から配管類が抜け落ちたりするなどして、循環水路から冷却水が漏出している蓋然性が高いときには、ポンプの吐出量を制限するようにしているため、その循環水路から外部に多量の冷却水が引き続き漏出してしまうことを抑制することができる。尚、このようにポンプの吐出量を制限する吐出量制限処理には、ポンプの吐出量について上限値を設定し同吐出量がこれを上回らないようにポンプを制御するものの他、冷却水の吐出そのものを停止して循環水路における冷却水の循環を禁止する、といった態様にてこれを具現化するものも含まれる。また、「車両の駆動源を含む車両駆動系の冷却水が循環する循環水路」には、駆動源そのものを冷却する冷却水の循環水路はもとより、駆動源を作動させる際に発熱を伴う機器を冷却する冷却水の循環水路、更にそうした駆動源の作動時に発熱する機器と併せて駆動源を冷却する冷却水の循環水路のいずれをも含むこととする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制御装置において、前記検出手段は車両に作用する衝撃力を検出するセンサを含み、同センサにより検出される衝撃力が所定の閾値以上であることを前記特定事象として検出するものであるとしている。
【0010】
この構成によれば、車両に衝撃力が作用することにより循環水路から冷却水が漏出する状況となってもこれを適切に予測することができ、循環水路から外部に多量の冷却水が引き続き漏出してしまうことを抑制することができるようになる。尚、「循環水路に作用する衝撃力を検出するセンサ」には、衝撃力を直接検出するセンサはもとより、加速度センサ等、車両に作用する衝撃力と相関を有して変化する他の物理量を検出するセンサも含まれることとする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両の制御装置において、前記検出手段は、前記センサとして車両に設けられた加速度センサを含み、同加速度センサにより検出される加速度が車両の乗員保護装置を起動する所定の閾値以上となったことを前記特定事象として検出するものであるとしている。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制御装置において、前記検出手段は、車両の乗員保護装置が起動したことを前記特定事象として検出するものであるとしている。
【0013】
車両衝突時等、乗員保護装置が起動するときには車両に大きな衝撃力が作用するため、上述したように各循環水路を構成する配管類等に亀裂が生じたり、所定の取付箇所から配管類が抜け落ちたりしやすくなり、循環水路から冷却水が漏出する蓋然性が極めて高くなる。請求項3又は請求項4に記載の発明によれば、このように乗員保護装置が起動するときに冷却水の吐出量を制限するようにしているため、車両衝突等に伴って循環水路から冷却水が漏出する場合であっても、これを確実に検出することができ、循環水路から外部に多量の冷却水が引き続き漏出してしまうことを好適に抑制することができる。
【0014】
特に、請求項3に記載の発明によれば、乗員保護装置を起動させるか否かを判断するための加速度センサを用いて循環水路からの冷却水の漏出を予測するようにしているため、それ専用のセンサを別途設ける必要が無く、それらセンサ類の汎用化を図ることができる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明によるように、加速度センサにより検出される加速度(減速度)が閾値以上であることを条件に乗員保護装置が起動する場合に限らず、車両の走行環境や周囲環境をその他のセンサを通じて監視し、その監視結果により車両の衝突が回避できない状況にある旨判断されるとき起動される乗員保護装置を備えた車両にあって、その起動条件が成立したことも含め、乗員保護装置の起動を特定事象とし、その特定事象が検出されたことをもってポンプの吐出量を制限する、といった構成を採用することもできる。
【0016】
尚、乗員保護装置は、その代表例としてエアバッグ装置を挙げることができるが、その他にも例えば、車両衝突時相当の加速度が検出されたときに、シートベルトを巻き上げて固定することにより乗員を一時的に拘束するシートベルト装置等これも含まれる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制御装置において、前記ポンプは電動回転式のポンプであり、前記ポンプ制御手段は、前記ポンプの回転速度を検出する回転速度センサを含み、その検出される回転速度が目標回転速度となるように同目標回転速度に対応して予め設定された基準制御値に基づいて前記ポンプを制御するものであり、前記検出手段は、前記基準制御値に基づいて前記ポンプを制御したときに、前記回転速度センサにより検出される回転速度が前記目標回転速度よりも高くその乖離度が所定の判定値以上であることを前記特定事象として検出するものであるとしている。
【0018】
冷却水が漏出することにより循環水路に滞留する冷却水の量が減少すると、ポンプに作用する回転抵抗が低下するようになるため、ポンプの実際の回転速度が目標回転速度よりも上昇するようになる。上記構成によれば、目標回転速度に対応して予め設定された基準制御値に基づいてポンプを制御し、実際の回転速度がその目標回転速度よりも高くその乖離度が所定の判定値以上であるときには、循環水路から冷却水が漏出している蓋然性が高いと判断してポンプの吐出量を制限するようにしているため、循環水路から外部に多量の冷却水が引き続き漏出してしまうことを抑制することができる。
【0019】
また上述したように、循環水路に滞留する冷却水の量が減少すると、ポンプに作用する回転抵抗が低下するが、その際の低下度合はポンプの回転速度が高いときほど大きくなる。すなわち、ポンプの回転速度が高いときほど冷却水を吐出する際の攪拌抵抗が増大するため、冷却水量が減少することに起因する攪拌抵抗の低下度合は大きくなり、ポンプの回転速度の上昇は一層顕著なものとなる。このため、請求項6に記載の発明によるように、ポンプの実際の回転速度が目標回転速度より高くその乖離度が所定の判定値以上であることを特定事象として検出する場合にあってこの判定値を目標回転速度が高いときほど大きな値に設定する、といった構成を採用することにより、こうした冷却水量の減少に起因する攪拌抵抗の低下度合に即したかたちで循環水路からの冷却水の漏出を一層的確に予測することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、前記特定事象が検出されたときに前記駆動源の作動時における発生熱量が小さくなるように同駆動源の作動負荷を制限する作動負荷制限処理を実行する駆動源制御手段を更に備えるようにしている。
【0021】
この構成によれば、循環水路から冷却水が漏出している蓋然性が高いときには、駆動源の作動負荷を制限してその作動時における発生熱量を小さくすることができる。このため、駆動源を適正な温度環境下で作動させるのに必要となる冷却能力が低下させることができ、ポンプの吐出量が制限されている状況下であっても駆動源の過度な温度上昇やそれに起因する熱損傷を回避することができる。尚、このように駆動源の作動負荷を制限する作動負荷制限処理は、例えば、車両の駆動源として内燃機関を採用する場合についていえば、時間当たりに噴射される燃料噴射量について上限値を設定し、同燃料噴射量がこの上限値を上回らないように制御する、また、駆動源として電動発電機を採用する場合についていえば、その供給電力量について上限値を設定し、供給電力量がその上限値を上回らないように制御する、といった態様をもってこれを具現化することができる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、車両の駆動源としての内燃機関を含む機械駆動系を冷却する冷却水が循環する循環水路と車両の駆動源としての電動発電機を含む電気駆動系を冷却する冷却水が循環する循環水路とからなる独立した一対の循環水路と、各循環水路に対応して各別に設けられてそれら循環水路に冷却水を吐出する一対のポンプと、それらポンプの吐出量をそれぞれ可変制御するポンプ制御手段とを含む冷却装置を有する車両の制御装置において、前記各循環水路からの冷却水の漏出が予測される特定事象を検出する検出手段を備え、前記ポンプ制御手段は前記特定事象が検出されたときに前記各ポンプの少なくとも一方の吐出量を制限する吐出量制限処理を実行するものであるとしている。
【0023】
この構成によれば、機械駆動系や電気駆動系の循環水路を構成する配管類等に亀裂が生じたり、所定の取付箇所から配管類が抜け落ちたりするなどして、各循環水路から冷却水が漏出している蓋然性が高いときには、各循環水路に冷却水を吐出する各ポンプの少なくとも一方の吐出量を制限するようにしているため、少なくともこのように吐出量が制限された循環水路にあっては、その循環水路から外部に多量の冷却水が引き続き漏出してしまうことを抑制することができる。尚、このようにポンプの吐出量を制限する吐出量制限処理には、ポンプの吐出量について上限値を設定し同吐出量がこれを上回らないようにポンプを制御するものの他、冷却水の吐出そのものを停止して循環水路における冷却水の循環を禁止する、といった態様にてこれを具現化するものも含まれる。また、「電気駆動系の冷却水が循環する循環水路」には、電動発電機を冷却する冷却水が循環する循環水路、インバータ等、電動発電機の電力制御機器を冷却する冷却水の循環水路、更にこうした電動発電機と併せてその電力制御機器の双方を併せて冷却する冷却水の循環水路、のいずれをも含むこととする。また、電動発電機は電動機と発電機とがアセンブリ化されたものはもとより、電動機と発電機とが別体として車両に搭載されるものも含む。そして、「電気駆動系の冷却水が循環する循環水路」は、アセンブリ化されたもの、別体として構成されるもの、いずれのものについても、電動機を冷却する、発電機を冷却する、その双方を併せて冷却するものも含む。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の車両の制御装置において、前記検出手段は車両に作用する衝撃力を検出するセンサを含み、同センサにより検出される衝撃力が所定の閾値以上であることを前記特定事象として検出するものである。
【0025】
この構成によれば、車両に衝撃力が作用することにより循環水路から冷却水が漏出する状況となってもこれを適切に予測することができ、循環水路から外部に多量の冷却水が引き続き漏出してしまうことを抑制することができるようになる。尚、「循環水路に作用する衝撃力を検出するセンサ」には、衝撃力を直接検出するセンサはもとより、加速度センサ等、車両に作用する衝撃力と相関を有して変化する他の物理量を検出するセンサも含まれることとする。
【0026】
請求項10に記載の発明は、請求項8に記載の車両の制御装置において、前記検出手段は、前記センサとして車両に設けられた加速度センサを含み、その加速度センサにより検出される加速度が車両の乗員保護装置を起動する所定の判定値以上となったことを前記特定事象として検出するものであるとしている。
【0027】
請求項11に記載の発明は、請求項に8記載の車両の制御装置において、前記検出手段は、車両の乗員保護装置が起動したことを前記特定事象として検出するものであるとしている。
【0028】
車両衝突時等、乗員保護装置が起動するときには車両に大きな衝撃力が作用するため、上述したように各循環水路を構成する配管類等に亀裂が生じたり、所定の取付箇所から配管類が抜け落ちたりしやすくなり、各循環水路から冷却水が漏出する蓋然性が極めて高くなる。請求項10又は請求項11に記載の発明によれば、このように乗員保護装置が起動したときに冷却水の吐出量を制限するようにしているため、車両衝突等に伴って各循環水路から冷却水が漏出する場合であっても、これを確実に検出することができ、各循環水路から外部に多量の冷却水が引き続き漏出してしまうことを好適に抑制することができる。
【0029】
特に、請求項10に記載の発明によれば、乗員保護装置を起動させるか否かを判断するための加速度センサを用いて各循環水路からの冷却水の漏出を予測するようにしているため、それ専用のセンサを別途設ける必要が無く、それらセンサ類の汎用化を図ることができる。
【0030】
また、請求項11に記載の発明によるように、加速度センサ等、車両に作用する衝撃力を検出するセンサによって乗員保護装置が起動するものに限らず、車両の走行環境や周囲環境をその他のセンサを通じて監視し、その結果により車両の衝突が回避できない状況にある旨判断されるとき起動される乗員保護装置を備えた車両にあって、その起動条件が成立したことも含め、乗員保護装置の起動したことを特定事象とし、その特定事象が検出されたことをもってポンプの吐出量を制限する、といった構成を採用することもできる。
【0031】
尚、乗員保護装置は、その代表例としてエアバッグ装置を挙げることができるが、その他にも例えば、車両衝突時相当の加速度が検出されたときに、シートベルトを巻き上げて固定することにより乗員を一時的に拘束するシートベルト装置等これも含まれる。
【0032】
請求項12に記載の発明は、請求項8〜11のいずれか一項に記載の車両の制御装置前記ポンプ制御手段は前記吐出量制限処理に際して前記機械駆動系の循環水路のポンプによる冷却水の吐出を停止するものであり、前記内燃機関の運転を停止して電動発電機のみを車両の駆動源として選択する選択手段を更に備えるようにしている。
【0033】
車両の駆動源として用いられる内燃機関と電動発電機とを比較した場合一般に、内燃機関は混合気の燃焼によってそのエネルギを得るものであるため、電動発電機やその電力供給機器よりもその発生熱量が大きい。このため、電気駆動系の循環水路と比較して、機械駆動系の循環水路には高い冷却能力が要求されることとなり、ポンプの吐出圧は相対的に高く設定され、循環水路に滞留する冷却水の量も比較的多いものとなる。従って、内燃機関の循環水路において上述したような冷却水の漏出が発生した場合にはそれによる悪影響が一層深刻なものとなる。
【0034】
この点、請求項12に記載の発明では、機械駆動系や電気駆動系の循環水路から冷却水が漏出することが予測される場合には、内燃機関の運転を停止し電動発電機のみを駆動源として車両を走行させるようにするとともに、機械駆動系の循環水路についてはそのポンプによる冷却水の吐出を停止するようにしている。このため、機械駆動系の循環水路から多量の冷却水が外部に漏出することを抑制しつつ、電動発電機による待避走行が可能になる。
【0035】
但し、機械駆動系のみならず、電気駆動系の循環水路においても冷却水の漏出が生じているような場合には、それによる悪影響の程度は機械駆動系の循環水路よりも低いとはいえ、これついても何らかの対処をするのが望ましい。この点、請求項13に記載される発明では、吐出量制限処理に際して電気駆動系の循環水路のポンプを駆動するもののその吐出量については制限する一方、電動発電機に供給される供給電力が所定値以下となるようにこれを制限するようにしている。
【0036】
同構成によれば、電動発電機に供給される供給電力、換言すれば電動発電機やその電力供給機器の作動負荷を制限してそれらの発生熱量を小さくすることができる。このため、電動発電機や電力供給機器を適正な温度環境下で作動させるのに必要となる冷却能力を低下させることができ、電気駆動系の循環水路におけるポンプの吐出量が制限されている状況下であっても、電動発電機や電力供給機器の過度な温度上昇やそれに起因する熱損傷を回避することができるようになる。
【0037】
請求項14に記載の発明は、請求項8に記載の車両の制御装置において、前記各ポンプはいずれも電動回転式のポンプであり、前記ポンプ制御手段は、前記各ポンプについてその回転速度をそれぞれ検出する各別の回転速度センサを含み、その検出される各回転速度が前記各ポンプに対応した目標回転速度となるように同目標回転速度に対応して予め設定された基準制御値に基づいて前記各ポンプを制御するものであり、前記検出手段は、前記目標回転速度に対応して予め設定された基準制御値に基づいて前記各ポンプを制御したときに前記各回転速度センサにより検出される回転速度が前記目標回転速度よりも高くその乖離度が所定の判定値以上であることを前記特定事象として前記各循環水路について各別に検出し、前記機械駆動系及び前記電気駆動系のいずれか一方の循環水路にのみ前記特定事象が検出されないときに、その一方のみを車両の駆動源として選択する選択手段を更に備え、前記ポンプ制御手段は前記吐出量制限処理に際して前記機械駆動系及び前記電気駆動系の他方における循環水路のポンプによる冷却水の吐出を停止するものであるとしている。
【0038】
請求項15に記載の発明は、請求項8に記載の車両の制御装置において、前記各ポンプはいずれも電動回転式のポンプであり、前記ポンプ制御手段は、前記各ポンプについてその回転速度をそれぞれ検出する各別の回転速度センサを含み、その検出される各回転速度が前記各ポンプに対応した目標回転速度となるように同目標回転速度に対応して予め設定された基準制御値に基づいて前記各ポンプを制御するものであり、前記検出手段は、前記目標回転速度に対応して予め設定された基準制御値に基づいて前記各ポンプを制御したときに前記各回転速度センサにより検出される回転速度が前記目標回転速度よりも高くその乖離度が所定の判定値以上であることを前記特定事象として前記各循環水路について各別に検出し、前記機械駆動系及び前記電気駆動系の双方の循環水路について前記特定事象がそれぞれ検出されるときに、前記内燃機関及び電動発電機の双方を車両の駆動源として選択する選択手段を更に備え、前記ポンプ制御手段は前記吐出量制限処理に際して前記機械駆動系及び前記電気駆動系の双方における循環水路の各ポンプを駆動しつつそれらの吐出量を制限するものであるとしている。
【0039】
冷却水が漏出することにより循環水路に滞留する冷却水の量が減少すると、ポンプに作用する回転抵抗が低下するようになるため、ポンプの実際の回転速度が目標回転速度よりも上昇する傾向がみられるようになる。上記請求項14又は請求項15に記載の発明によれば、目標回転速度に対応して予め設定された基準制御値に基づいて各ポンプを制御し、各回転速度センサにより検出される実際の回転速度がその目標回転速度より高くその乖離度が所定の判定値以上であるときには、循環水路が損傷するなどして同循環水路から冷却水が漏出している蓋然性が高いと判断してポンプの吐出量を制限するようにしているため、損傷の生じた循環水路から外部に多量の冷却水が引き続き漏出してしまうことを抑制することができる。尚、上記判定値は、機械駆動系及び電気駆動系の各循環水路について同一の値に設定するようにしてもよいが、特定事象の検出精度を高める上では、機械駆動系及び電気駆動系の各循環水路におけるポンプの諸元や冷却水の滞留量等々に基づいて各別に設定するのが望ましい。
【0040】
請求項16に記載の発明は、請求項15に記載の車両の制御装置において、前記内燃機関及び前記電動発電機の作動時における発生熱量が小さくなるように同駆動源の作動負荷を制限する作動負荷制限処理を実行する駆動源制御手段を更に備えるものであるとしている。
【0041】
この構成によれば、機械駆動系及び電気駆動系の循環水路から冷却水が漏出している蓋然性が高いときには、内燃機関及び電動発電機の双方についてその作動時における発生熱量を小さくすることができる。このため、内燃機関及び電動発電機を適正な温度環境下で作動させるのに必要となる冷却能力をそれぞれ低下させることができ、各ポンプの吐出量が制限されて本来の冷却能力が発揮できない状況下であっても、それら内燃機関及び電動発電機の双方について過度な温度上昇やそれに起因する熱損傷を回避することができるようになる。尚、この作動負荷制限処理は、内燃機関であればその時間当たりに噴射される燃料噴射量について上限値を設定し、同燃料噴射量がこの上限値を上回らないように制御し、また、電動発電機であれば、その供給電力量について上限値を設定し、供給電力量がその上限値を上回らないように制御する、といった態様をもってこれを具現化することができる。
【0042】
また上述したように、循環水路に滞留する冷却水の量が減少すると、ポンプに作用する回転抵抗が低下するが、その際の低下度合はポンプの回転速度が高いときほど大きくなる。すなわち、ポンプの回転速度が高いときほど冷却水を吐出する際の攪拌抵抗が増大するため、冷却水量の減少に起因する攪拌抵抗の低下度合は大きくなり、ポンプの回転速度の上昇は一層顕著なものとなる。このため、請求項17に記載の発明によるように、各ポンプの実際の回転速度が目標回転速度より高くその乖離度が所定の判定値以上であることを特定事象として検出する場合にあってこの判定値を目標回転速度が高いときほど大きな値に設定する、といった構成を採用することにより、循環水路からの冷却水の漏出を的確に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる車両及びその冷却装置を示す概略構成図。
【図2】同実施形態にかかる内燃機関及び機械駆動系の各ポンプについてその駆動処理の処理手順を示すフローチャート。
【図3】第2実施形態にかかる内燃機関及び機械駆動系の各ポンプについてその駆動処理の処理手順を示すフローチャート。
【図4】第2実施形態にかかる機械駆動系のポンプを駆動する際のデューティ比とポンプの回転速度との関係を示すグラフ。
【図5】第3実施形態にかかる機械駆動系及び電気駆動系の各ポンプについてその駆動処理の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(第1実施形態)
以下、この発明の第1実施形態にかかる車両の制御装置について図1及び2を併せ参照して説明する。尚、この車両は内燃機関11及び電動発電機21がその駆動源として搭載された、いわゆるハイブリッド車両である。
【0045】
内燃機関11及び電動発電機21の各出力軸の駆動力は、動力分割機構31に入力されるとともに駆動力伝達系を介して駆動輪33に伝達される。内燃機関11の作動負荷は基本的に燃料噴射量を通じて調節される一方、電動発電機21の作動負荷は蓄電池25からインバータ22を介して供給される供給電力を通じて調節される。尚、電動発電機21は、電気エネルギを機械エネルギに変換する機能に加えて、車両減速時等において車両の運動エネルギを電気エネルギとして回生し、この回生された電気エネルギを蓄電池25に蓄える機能を併せ有している。
【0046】
次に、内燃機関11を含む機械駆動系を冷却する冷却部10について説明する。この冷却部10は、大きくは、内燃機関11の内部において機関燃焼室(図示略)の周囲に形成されたウォータジャケット16と、このウォータジャケット16との間で冷却水が循環するラジエータ14と、このラジエータ14に対する冷却水の流入を許可/禁止するサーモスタット13と、ウォータジャケット16に冷却水を吐出するポンプ12と、このポンプ12から吐出される冷却水をウォータジャケット16やラジエータ14等に循環させる複数の通路からなる循環水路17によって構成されている。内燃機関11の熱により温度上昇した冷却水は、循環水路17を通じてラジエータ14に導入され、同ラジエータ14において外気と熱交換することにより冷却される。
【0047】
次に、電動発電機21及びインバータ22を含む電気駆動系を冷却する冷却部20について説明する。この冷却部20は、大きくは、電動発電機21及びインバータ22との間で冷却水が循環するラジエータ24と、冷却水を吐出するポンプ23と、このポンプ12から吐出される冷却水をラジエータ24、インバータ22、電動発電機21の順に循環させる循環水路26とによって構成されている。電動発電機21及びインバータ22の熱により温度上昇した冷却水は、循環水路26を通じてラジエータ24に導入され、ラジエータ24において外気と熱交換することにより冷却される。
【0048】
機械駆動系及び電気駆動系の各ポンプ12,23はいずれも、モータの出力軸に連結されたインペラ(いずれも図示略)が回転することにより冷却水を吸引及び吐出する電動回転式のポンプである。このモータの回転速度、すなわちポンプ12,23の回転速度が大きくなるほどその吐出量は増大する。こうしたポンプ12,23の回転速度は、そのモータに供給される電力をデューティ制御することにより変更される。すなわち、このデューティ比DTが大きいときほど、ポンプ12,23の供給電力が大きくなり、これらポンプ12,23による冷却水の吐出量も多くなる。尚、これらポンプ12,23には、ポンプの回転速度を検出する回転速度センサ92,93がそれぞれ内蔵されている。
【0049】
一方、車両には、乗員保護装置としてエアバッグ装置41が搭載されている。このエアバッグ装置41は、その内部に設けられたガス発生剤、及び同ガス発生剤に点火して燃焼反応を発生させる点火装置(いずれも図示略)の他、加速度センサ94によって構成されている。この加速度センサ94は車両に取り付けられるか、もしくはエアバッグ装置41に内蔵されている。加速度センサ94の検出値は制御装置91に取り込まれる。この制御装置91は、加速度センサ94の検出値が所定の閾値以上である場合は、車両が衝突して急激に減速し、併せて車両に大きな衝撃力が作用したものと判断して点火装置に点火信号を出力する。そしてこの点火信号に基づいて点火装置がガス発生剤に点火すると、同ガス発生剤の燃焼反応によって生成されたガスがエアバッグの内部に噴出されてこれが車体と乗員との間で膨張展開する。すなわち、エアバッグ装置41が起動する。
【0050】
ところで、機械駆動系及び電気駆動系の循環水路17,26を構成する配管類等に亀裂が生じたり、所定の取付箇所から配管類が抜け落ちたりすると、それら循環水路17,26から冷却水が漏出するおそれがあり、こうした冷却水の漏出は周囲環境に少なからず悪影響を与える点については上述したとおりである。
【0051】
そこで本実施形態においては、循環水路17,26からの冷却水の漏出が予測され得る事象、換言すれば冷却水の漏出が予測される事象(特定事象)が検出されたときには、循環水路17,26から外部に多量の冷却水が引き続き漏出してしまうことを抑制することを目的として冷却部10,20の各ポンプ12,23における冷却水の吐出量を制限する吐出量制限処理を実行するようにしている。以下、この吐出量制限処理を含め、上記特定事象が検出された場合における各冷却部10,20、機械駆動系、電気駆動系にかかる制御について、図2のフローチャートを参照して説明する。尚、このフローチャートに示す一連の処理は制御装置91により所定周期毎に繰り返し実行される。
【0052】
まず、エアバッグ装置41が起動したか否かを判断する(ステップS110)。具体的には、加速度センサ94の検出値が上述した所定の閾値以上となったか否かを判断する。加速度センサ94の検出値が閾値以上となった場合、即ち特定事象が検出された場合(ステップS110:YES)、車両が衝突するなどして同車両に大きな衝撃力が作用したと考えられる。この場合は、そうした車両に作用する衝撃力によって循環水路17,26の配管類等に亀裂が生じたり、配管類が抜け落ちたりするなどして循環水路17,26から冷却水が漏出している蓋然性が高い。このため、制御装置91は、以下に説明する一連の処理からなる冷却水漏出抑制処理を実行する。
【0053】
この冷却水漏出抑制処理ではまず、機械駆動系のポンプ12の運転を停止する(ステップS130)。本実施形態では、循環水路17,26から冷却水の漏出が予測されるときには、機械駆動系のポンプ12の運転を停止して、少なくとも機械駆動系の循環水路17から外部に多量の冷却水が引き続き漏出してしまうことを抑制するようにしている。
【0054】
すなわち、内燃機関11は、混合気の燃焼によってそのエネルギを得るものであるため、電動発電機21やインバータ22と比較して発熱量が大きい。このため、電気駆動系の冷却部20と比較して、機械駆動系の冷却部10には高い冷却能力が要求されることとなる。従って、電気駆動系と比較して、機械駆動系のポンプ12の吐出圧は相対的に高く設定され、その循環水路17に滞留する冷却水の量も比較的多いものとなる。従って、冷却部10の循環水路17において上述したような冷却水の漏出が発生した場合にはそれによる悪影響が深刻なものとなる。このため、本実施形態においては、機械駆動系のポンプ12の運転を停止して、機械駆動系の循環水路17から外部に多量の冷却水が引き続き漏出してしまうことを抑制するようにしている。このように、機械駆動系のポンプ12の運転を停止した後、電動発電機21を駆動源として選択する一方、内燃機関11についてはその運転を停止する(ステップS140)。
【0055】
ここで、加速度センサ94の検出値が上述した閾値以上となった場合には、電気駆動系の循環水路26からも冷却水が漏出している可能性もある。電気駆動系の循環水路26からの冷却水の漏出による悪影響の程度は機械駆動系の循環水路17からの冷却水の漏出によるものよりも低いとはいえ、同電気駆動系の循環水路26についても何らかの対処をすることが望ましい。そこで、電気駆動系のポンプ23の回転速度について上限値を設定し、同回転速度がこの上限値を上回らないように、換言すれば電気駆動系のポンプ23による冷却水の吐出量が上限吐出量を超えないようにこれを制限する(ステップS150)。
【0056】
但し、このように電気駆動系のポンプ23の回転速度を制限すると、冷却部20の冷却能力が低下するため、これら電動発電機21やインバータ22が過度に温度上昇する懸念がある。そこで次に、電動発電機21の供給電力についても上限値を設定し、供給電力がこの上限値を上回らないようにこれを制限する。すなわち、電動発電機21やインバータ22の作動負荷を制限する(ステップS160)。
【0057】
一方、エアバッグ装置41が起動していない場合(ステップS110:NO)、すなわち上述した特定事象が検出されない場合には、内燃機関11、電動発電機21、及び各冷却部10,20を通常制御する(ステップS120)。
【0058】
以上説明した本実施形態によれば、以下に記載の作用効果を奏することができる。
(1)上記実施形態によれば、各冷却部10,20の循環水路17,26から冷却水が漏出することが予測される場合、すなわち上述した特定事象が検出された場合には、機械駆動系の冷却部10におけるポンプ12の運転を停止するようにしている。このため、循環水路17,26に亀裂が生じたり、所定の取付箇所から配管が抜け落ちたりするなどして、同循環水路17,26から冷却水が漏出している状況下にあっても、少なくとも機械駆動系の循環水路17から外部に多量の冷却水が引き続き漏出してしまうことは抑制することができる。
【0059】
(2)特に、機械駆動系の冷却部10にあっては、電気駆動系の冷却部20と比較して、そのポンプ12の吐出圧が相対的に高く設定され、循環水路17に滞留する冷却水の量も比較的多いため、冷却水が漏出することによる問題が顕在化しやすいが、機械駆動系の冷却部10における冷却水の循環を停止するようにしているため、冷却水が漏出することにより周囲環境に及ぼす悪影響を最小限に抑えることができる。
【0060】
(3)またこのように特定事象が検出された場合は、内燃機関11の運転を停止する一方、電動発電機21を駆動源として選択し、同電動発電機21により車両を走行させるようにしている。従って、冷却水の漏出を抑制しつつ、電動発電機21による待避走行が可能になる。
【0061】
(4)更に、このように電動発電機21を駆動源として作動させる際、電気駆動系の冷却部20についてはポンプ23の回転速度、すなわちその吐出量を制限するようにしている。従って、電気駆動系における冷却部20の循環水路26から冷却水が漏出し得る状況下であっても、その漏出を抑制して漏出量を最小限にとどめることができる。
【0062】
(5)また、このように冷却部20のポンプ23の吐出量を制限するのに併せて、電動発電機21の供給電力についてもこれを制限するようにしているため、電動発電機21やインバータ22を適正な温度環境下で作動させるのに必要となる冷却能力を低下させることができ、冷却部20の本来の冷却能力を発揮できない状況にあっても、電動発電機21等の過度な温度上昇やそれに起因する熱損傷を回避することができるようになる。
【0063】
(6)エアバッグ装置41に用いられる加速度センサ94の検出値を用いて、循環水路17,26からの冷却水の漏出が予測し得るか否か、すなわち特定事象が検出されたか否かを判断するようにしているため、それ専用のセンサを別途設ける必要が無く、それらセンサ類の汎用化を図ることができる。
【0064】
(7)また、加速度センサ94の検出値が閾値以上となってエアバッグ装置41が起動するとき、すなわち車両に大きな衝撃力が作用したときに、冷却部20のポンプ23の吐出量を制限するようにしているため、車両衝突等に伴って循環水路17,26のいずれかから冷却水が漏出する場合であっても、これを確実に検出することができ、同循環水路17,26のいずれかから外部に多量の冷却水が引き続き漏出してしまうことを好適に抑制することができる。
【0065】
(第2実施形態)
この発明にかかる第2実施形態について先の図1及び図2の他、更に図3及び図4を併せ参照して第1実施形態との相違点を中心に説明する。尚、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付すことによりその詳細な説明を割愛する。
【0066】
本実施形態では、機械駆動系の冷却部10においてそのポンプ12の回転速度センサ92を用いて、各循環水路17,26の少なくとも一方について冷却水の漏出が予測されるか、すなわち特定事象が検出されたか否かを判断するようにしている。尚、本実施形態では、第1実施形態と同様、循環水路17,26からの冷却水の漏出が予測されるときには、機械駆動系のポンプ12の運転を停止して、少なくとも機械駆動系の循環水路17から外部に多量の冷却水が引き続き漏れ出してしまうことを抑制するようにしている。
【0067】
以下、本実施形態における各冷却部10,20、機械駆動系、電気駆動系にかかる制御について、図3のフローチャートを参照して説明する。尚、このフローチャートに示す一連の処理は制御装置91により所定周期毎に繰り返し実行される。
【0068】
まず回転速度センサ92の検出値に基づいて機械駆動系のポンプ12の実回転速度Neaが目標回転速度Netより高くその偏差が判定値α以上であるか否か判断する(ステップS210)。
【0069】
この判定値αについて図4を参照して説明する。上述のように、ポンプ12の回転速度は、そのモータに供給される電力をデューティ制御することにより変更される。この供給される電力のデューティ比DTは、同図4に実線で示すように、ポンプ12の回転速度が目標回転速度Netとなるように同目標回転速度Netに対応して予め設定されている。
【0070】
ところで、循環水路17から冷却水が漏出することにより、循環水路17に滞留する冷却水の量が減少すると、ポンプ12のインペラに作用する抵抗が低下するため、実回転速度Neaの方が目標回転速度Netよりも大きくなる。そこで、本実施形態においては、図4に一点鎖線で示すように、各目標回転速度Netに対応して判定値αを設定し、実回転速度Neaと目標回転速度Netとの偏差がこの判定値α以上であるときには、ポンプの個体差や冷却水の粘度、ポンプのインペラ近傍における一時的な空気の滞留等々、回転速度が上昇する他の要因を考慮したとしても、やはり循環水路17からの冷却水の漏出が予測されると判断するようにしている。
【0071】
また、このように冷却水が循環水路17から漏出して同循環水路17における冷却水の滞留量が減少することに起因する攪拌抵抗の低下度合は、デューティ比DTが大きいときほど大きくなる傾向にある。デューティ比DTが大きいときほど、ポンプの回転速度が高く、すなわち吐出量が大きくなり、冷却水を吐出する際の攪拌抵抗が増大するためである。そこで、本実施形態では、図4に示すように、デューティ比DTが大きくなるほど、すなわち目標回転速度が高いときほど判定値αが大きくなるようにこれを設定している。
【0072】
次に、ポンプ12の実回転速度Neaと目標回転速度Netとの偏差が判定値α以上であると判断した場合(ステップS210:YES)、循環水路17から冷却水が漏出していると判断して、先の図2で説明した冷却水漏出抑制処理(ステップS130〜ステップS160)を実行する(ステップS230)。
【0073】
一方、実回転速度Neaと目標回転速度Netとの偏差が判定値α未満と判断した場合、すなわち各冷却部10,20の循環水路17,26(ステップS210:NO)において冷却水の漏出は生じていない判断した場合、制御装置91は各冷却部10,20、機械駆動系、電気駆動系を通常制御する(ステップS220)。
【0074】
以上説明した本実施形態によれば、先の(1)〜(5)に記載した作用効果に加え、更に以下に記載の作用効果を奏することができる。
(8)本実施形態によれば、冷却水の漏出により循環水路17に滞留する冷却水の量が減少することにより、機械駆動系の冷却部10についてそのポンプ12の実回転速度Neaと目標回転速度Netとの偏差が判定値α以上であるとき、機械駆動系の循環水路17はもとより、電気駆動系の循環水路26にも冷却水の漏出が予測されるとして、ポンプ12の吐出量を制限するようにしているため、循環水路17の損傷等に伴って循環水路17から冷却水が漏出する場合であっても、これを確実に検出することができ、同循環水路17から外部に多量の冷却水が引き続き漏出してしまうことを好適に抑制することができる。
【0075】
(第3実施形態)
この発明にかかる第3実施形態について先の図4の他、更に図5を併せ参照して第1実施形態との相違点を中心に説明する。尚、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付すことによりその詳細な説明を割愛する。
【0076】
本実施形態では、各冷却部10,20のポンプ12,23に設けられた回転速度センサ92,93を用いて機械駆動系及び電気駆動系の双方の循環水路17,26について、それらが冷却水の漏出が予測される状況にあるかを各別に検出するようにしている。すなわち循環水路17,26の双方についてそれぞれ特定事象を検出するようにしている。
【0077】
以下、上記本実施形態における各冷却部10,20、機械駆動系、電気駆動系にかかる制御について、図5のフローチャートを参照して説明する。尚、このフローチャートに示す一連の処理は制御装置91により所定周期毎に繰り返し実行される。
【0078】
図5のフローチャートに示されるように、この一連の処理ではまず、機械駆動系のポンプ12についてその実回転速度Neaと目標回転速度Netとの偏差が判定値α以上であるか否かを判断する(ステップS310)。実回転速度Neaと目標回転速度Netとの偏差が判定値α以上であると判断した場合(ステップS310:YES)、制御装置91は、循環水路17からの冷却水の漏出が予測されると判断して、機械駆動系の冷却部10についての異常フラグFeをその初期値「0」から変更して「1」に設定する(ステップS320)。
【0079】
一方、機械駆動系のポンプ12の実回転速度Neaと目標回転速度Netとの偏差が判定値α未満であると判断した場合(ステップS310:NO)、電気駆動系の循環水路26についても機械駆動系と同様に、冷却水の漏出が予測される事象が検出されたか否かを判断する。すなわち、電気駆動系の冷却部20におけるポンプ23の実回転速度Nmaが目標回転速度Nmtよりも高くその偏差が判定値β未満であるか否かを判断する(ステップS340)。
【0080】
電気駆動系のポンプ23も、機械駆動系のポンプ12と同様、冷却水が漏出することにより循環水路26の冷却水量が減少してポンプ23のインペラに作用する抵抗が低下すると、その実回転速度Nmaが目標回転速度Nmtよりも大きくなる。但し、電気駆動系の循環水路26に滞留する冷却水の量は機械駆動系の循環水路17と比較して少なく、またポンプ12,23の各諸元は異なるものであるため、循環水路26から冷却水が漏出したときに生じる実回転速度Nmaと目標回転速度Nmtとの偏差は、機械駆動系のポンプ12とは異なるようになる。そこで、本実施形態では、上述したような事項を考慮することにより電気駆動系の冷却部20に適合したかたちで判定値βを設定するようにしている。即ち、判定値βは定性的には判定値αと同様の傾向を有するものの、判定値αと異なる値に設定されている。
【0081】
そして、ポンプ23の実回転速度Nmaと目標回転速度Nmtとの偏差が判定値β以上であると判断した場合(ステップS340:YES)、電気駆動系の冷却部20における循環水路26から冷却水が漏出していると判断して、電気駆動系の冷却部20についての異常フラグFmをその初期値「0」から変更して「1」に設定する(ステップS350)。一方、ポンプ12の実回転速度Nmaと目標回転速度Nmtとの偏差が判定値β未満であると判断した場合(ステップS340:NO)には、こうした異常フラグFmの変更は行わず、同異常フラグFmはその初期値「0」のまま維持される。そして、このように機械駆動系及び電気駆動系の各冷却部10,20について、それらの循環水路17,26が冷却水の漏出が予測できる状況にあるか否かを各別に判断した後、この一連の処理を終了する。
【0082】
次に、制御装置91は、このようにして設定された各異常フラグFe,Fmに基づいて各冷却部10,20、機械駆動系、電気駆動系について、以下に説明するように各制御を実行する。
【0083】
[異常フラグFe=「0」,異常フラグFm=「0」の場合]
機械駆動系及び電気駆動系の循環水路17,26のいずれについても冷却水が漏出する状況にはないため、制御装置91は各冷却部10,20、機械駆動系、電気駆動系を通常制御する。
【0084】
[異常フラグFe=「1」,異常フラグFm=「0」の場合]
機械駆動系の循環水路17については冷却水の漏出が予測されるため、制御装置91は、機械駆動系のポンプ12の運転を停止する。このようにポンプ12の運転を停止して冷却水の循環を停止すると、内燃機関11を適正な温度環境下で作動させるのに必要となる冷却部10の冷却能力は低下するため、内燃機関11が過度に温度上昇することが懸念される。そこで、制御装置91は、内燃機関11の発生熱量が小さくなるように、内燃機関11の作動負荷を制限する。具体的には、単位時間当たりに噴射される燃料噴射量について上限値を設定し、同燃料噴射量がこの上限値を上回らないようにこれを設定する。
【0085】
一方、電気駆動系の循環水路26については、冷却水が漏出する状況にはないため、制御装置91は、電気駆動系についてその電動発電機21及び冷却部20のポンプ23を通常制御する。
【0086】
[異常フラグFe=「0」,異常フラグFm=「1」の場合]
電気駆動系の循環水路26については、冷却水の漏出が予測されるため、制御装置91は、電気駆動系のポンプ23の運転を停止する。このようにポンプ23の運転を停止して冷却水の循環を停止すると、電動発電機21やインバータ22を適正な温度環境下で作動させるのに必要となる冷却部20の冷却能力が低下するため、電動発電機21及びインバータ22が過度に温度上昇する懸念がある。そこで、制御装置91は、第1実施形態で説明したように電動発電機21の作動負荷を制限する。
【0087】
一方、機械駆動系の循環水路17については、冷却水の漏出する状況にはないため、制御装置91は、機械駆動系についてその内燃機関11及び冷却部20のポンプ12を通常制御する。
【0088】
[異常フラグFe=「1」,異常フラグFm=「1」の場合]
機械駆動系及び電気駆動系の循環水路17,26について、冷却水の漏出が発生する蓋然性が高いため、制御装置91は、機械駆動系及び電気駆動系の双方についてそれらのポンプ12,23の運転を停止する。この際、上述のように機械駆動系及び電気駆動系の各冷却部10,20の冷却能力が低下するため、制御装置91は、内燃機関11及び電動発電機21の作動負荷の制限も併せて実行する。
【0089】
以上説明した本実施形態によれば、先の(1)〜(5)、(8)及び(9)に記載した上記作用効果に加え、更に以下に記載の作用効果を奏することができる。
(10)本実施形態によれば、各循環水路17,26について冷却水の漏出が予測される現象、すなわち特定現象を各循環水路17,26について各別に検出し、冷却水の漏出が予測される循環水路に冷却水を吐出するポンプの運転を停止するようにしているため、循環水路17,26のうち、冷却水の漏出が予測される循環水路については外部に多量の冷却水が流出してしまうことを抑制することができるととともに、冷却水の漏出が生じていない循環水路の冷却部については冷却能力を維持することができる。
【0090】
(11)このように、ポンプの運転を停止した方の駆動系に対する作動負荷を制限するようにしているため、同駆動系における駆動源の過度な温度上昇やそれに起因する熱損傷を回避することができるようになる。
【0091】
(12)各冷却部10,20において、冷却水が漏出する状況にない循環水路に冷却水を吐出するポンプ、及び、同循環水路に対応する駆動源については通常制御を実行するようにしているため、同駆動源を用いて退避走行をすることができるようになる。
【0092】
(13)機械駆動系及び電気駆動系の循環水路17,26の双方について冷却水の漏出が予測されるときには、機械駆動系及び電気駆動系の双方のポンプ12,23の吐出量を制限するようにしているため、各循環水路17,26から冷却水が外部に多量に流出してしまうことを抑制することができるようになる。
【0093】
(14)また、このように機械駆動系及び電気駆動系の双方のポンプ12,23の吐出量を制限するのに併せて、内燃機関11及び電動発電機21の双方についてその作動負荷を制限して作動時の発生熱量が小さくなるようにしているため、内燃機関11及び電動発電機21を適正な温度環境下で作動させるのに必要となる冷却能力をそれぞれ低下させることができ、各ポンプ12,23の吐出量が制限されてその本来の冷却能力を発揮できない状況下であっても、これら内燃機関11及び電動発電機21の双方について過度な温度上昇やそれに起因する熱損傷の発生を回避することができるようになる。
【0094】
(15)冷却水の漏出が予測されるか否かを判断する判定基準となる判定値α,βを各ポンプ12,23の諸元や、循環水路における冷却水の滞留量等々に基づいて各別に設定するようにしているため、冷却水の漏出についての検出精度を高めることができるようになる。
【0095】
尚、本発明の実施態様は上記各実施形態にて例示した態様に限られるものではなく、これを例えば以下に示されるように変更して実施することもできる。また以下の各変形例は、上記各実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0096】
(a)上記第1実施形態では、加速度センサ94の検出値が高くその乖離度が所定の判定値以上となったとき、すなわち冷却水の漏出が予測されるときに、電動発電機21の作動負荷を制限するようにしたが、こうした制限処理を割愛するようにしてもよい。
【0097】
(b)上記第1実施形態及び変形例(a)では、冷却水の漏出が予測されるときに、電気駆動系のポンプ23について吐出量制限処理を実行するようにしたが、こうした制限処理を割愛するようにしてもよい。
【0098】
(c)上記第1実施形態及び変形例(a),(b)では、各循環水路17,26において冷却水の漏出が予測されるときに、駆動源として電動発電機21を選択して内燃機関11を停止するようにしたが、駆動源として内燃機関11を選択して電動発電機21を停止するようにしてもよい。更にこの場合、内燃機関11の作動負荷を制限するようにしてもよい。
【0099】
(d)上記変形例(c)において、電気駆動系のポンプ23の運転を停止して、機械駆動系のポンプ12を運転するようにしてもよい。そしてこの場合、機械駆動系のポンプ12について、吐出量制限処理を実行するようにしてもよい。
【0100】
(e)上記第1実施形態及び変形例(a)〜(d)では、冷却水の漏出が予測されるときに、内燃機関11及び電動発電機21のいずれか一方を駆動源として選択したが、これら双方を駆動源として選択するようにしてもよい。そしてこの場合、それら駆動源の作動負荷にかかる制限については、内燃機関11及び電動発電機21の作動負荷を制限する、内燃機関11の作動負荷のみを制限する、電動発電機21の作動負荷のみを制限する、といった各種の態様にてこれを実行することができる。
【0101】
(f)上記変形例(e)において、更に各ポンプ12,23の吐出量制限処理については、機関駆動系のポンプ12の吐出量のみを制限する、電気駆動系のポンプ23の吐出量のみを制限する、それら各ポンプ12,23の吐出量をいずれも制限する、といった態様にてこれを実行することができる。尚この場合、吐出量制限処理としてポンプ12,23の少なくとも一方の運転を停止するようにしてもよい。
【0102】
(g)第1実施形態及びこれに関連する各変形例において、加速度センサ94が検出値がエアバッグ装置41が起動する判定値以上であるときに、冷却水漏出抑制処理を実行するようにしたが、エアバッグ装置41の起動タイミングと冷却水漏出抑制処理を実行タイミングとを必ずしも同期させる必要はない。例えば、加速度センサの検出値に基づいて、車両に大きな衝撃力が作用し、エアバッグ装置41は起動しないものの、この衝撃力によって各循環水路17,26の少なくとも一方に上述したような冷却水の漏出が予測できるときに、冷却水漏出抑制処理を実行するようにしてもよい。また、加速度センサに限らず車両に作用する衝撃力を直接検出するようにしてもよい。要するに、車両に衝撃力が作用し、循環水路17,26が損傷するなどして冷却水の漏出が予測することができるのであれば、他の物理量を検出するセンサを採用し、このセンサの検出値に基づいて上記冷却水漏出抑制処理を実行することもできる。
【0103】
(h)上記第1実施形態及び第2実施形態で説明した冷却水漏出抑制処理では、電動発電機21及び電気駆動系のポンプ23を運転するようにしたが、これら電動発電機21及び電気駆動系のポンプ23の運転を停止するようにしてもよい。すなわち、機械駆動系及び電気駆動系の各駆動源とそれらの冷却部10,20のポンプ12,23の双方を停止するようにしてもよい。
【0104】
(i)上記第2実施形態では、機械駆動系の回転速度センサ92の検出値に基づいて循環水路17からの冷却水の漏出が予測されるか否か判断するようにしたが、この判断を電気駆動系の回転速度センサ93の検出値に基づいて実行するようにしてもよい。また、この場合において、電駆動系のポンプ23の実回転速度Neaと目標回転速度Netとの偏差が判定値β以上であると判断した場合に、冷却水漏出抑制処理(ステップS230)を行うことが好ましい。
【0105】
(j)上記第3実施形態では、機械駆動系の循環水路17のみについて、冷却水の漏出が予測されるときには、内燃機関11の作動負荷を制限するようにしたが、こうした制限処理を割愛するようにしてもよい。
【0106】
(k)上記第3実施形態では、電気駆動系の循環水路26のみについて、冷却水の漏出が予測されるときには、電動発電機21の作動負荷を制限するようにしたが、こうした制限処理を割愛するようにしてもよい。
【0107】
(l)上記第3実施形態では、機械駆動系及び電気駆動系の循環水路17,26の双方について冷却水の漏出が予測されるときには、内燃機関11及び電動発電機21の双方を駆動源としたが、いずれか一方を駆動源として選択し、他方の運転を停止するようにしてもよい。そしてこの場合、選択したほうの駆動源の作動負荷を低減するようにしてもよい。本実施形態によれば、選択した方の駆動源の過度な温度上昇やそれに伴う熱損傷の発生を回避することができるようになる。
【0108】
(m)上記第3実施形態及び変形例(l)において、選択した駆動源に対応するポンプについて吐出量制限処理を実行し、他方のポンプは運転を停止するようにしてもよい。
(n)上記変形例(m)において、選択した駆動源に対応するポンプの吐出量制限処理について、これを割愛するようにしてもよい。
【0109】
(o)上記第3実施形態では、機械駆動系及び電気駆動系の循環水路17,26の双方について、冷却水の漏出が予測されるときには、内燃機関11及び電動発電機21の双方を駆動源としたが、これら内燃機関11、電動発電機21、機械駆動系及び電気駆動系のポンプ12,23の運転を停止するようにしてもよい。すなわち、機械駆動系及び電気駆動系の各駆動源とそれらの冷却部10,20のポンプ12,23の双方を停止するようにしてもよい。
【0110】
(p)上記実施形態では、駆動源として内燃機関11及び電動発電機21を選択することのできるハイブリッド車について説明したが、駆動源として内燃機関11のみを搭載する車両に適用することもできる。この際、冷却水の循環水路17について冷却水の漏出が予測されるときには、ポンプ12の吐出量を制限する吐出量制限処理を実行するとともに、内燃機関11の作動負荷を制限することができる。
【0111】
(q)上記変形例(p)において、ポンプ12の吐出量制限処理として、ポンプ12の運転を停止するようにしてもよい。
(r)上記変形例(p)または(q)において、冷却水の循環水路17から冷却水の漏出が予測されるときには内燃機関11の作動負荷を低減するようにしたが、こうした制限処理を割愛するようにしてもよい。
【0112】
(s)上記変形例(q)〜(r)において、駆動源として内燃機関11のみを搭載する車両に適用するようにしたが、内燃機関11に代えて電動発電機21のみを駆動源として搭載する車両に適用することもできる。すなわち、電気駆動系の循環水路26について冷却水の漏出が予測されるときには、ポンプ23の吐出量を制限する、電動発電機21の作動負荷を制限する、ポンプ23の吐出量を制限するとともに電動発電機21の作動負荷を制限する、といった態様にてこれを実施することができる。
【0113】
(t)第1実施形態及びこれに関連する上記各変形例では、加速度センサ94の検出値が所定の判定値以上となり、エアバッグ装置41が起動したことを特定事象として検出するようにしたが、加速度センサ94の検出値が所定の閾値以上となることを特定事象として検出するようにしてもよい。または、ミリ波レーダセンサ(図示せず)の検出値に基づいて車両が衝突不可避の状況にあると判断したことを特定事象として検出するようにしてもよい。この変形例によれば、車両に衝撃力が作用することにより循環水路17,26について冷却水の漏出が発生する蓋然性が高くなる状況になっても、これを適切に予測することができ、同循環水路17,26から多量の冷却水が漏出してしまうことを抑制することができるようになる。また、エアバッグ装置41についても、車両に衝撃力が作用することを契機に起動する他の乗員保護装置、例えば、シートベルトを巻き上げて固定することにより乗員を一時的に拘束するシートベルト装置等をこれに代えることができる。
【0114】
(u)上記第2実施形態、第3実施形態、及びこれらに関連する上記各変形例において、ポンプの実際の回転速度と目標回転速度との偏差と判定値とを比較することにより、循環水路からの冷却水の漏出が予測される特定事象を検出するようにしたが、例えばこの偏差をこれら実際の回転速度と目標回転速度との比等、それらの乖離度合を示す値とそれに応じた判定値との比較を通じて上記特定事象を検出することもできる。
【0115】
(v)上記各実施形態及びそれらの変形例では、機械駆動系のポンプ12として電動回転式のポンプを用いるようにしているが、吐出量の変更可能な機関駆動式のポンプを採用するともできる。例えば、内燃機関11の出力軸にクラッチを介してその回転軸が駆動連結され、このクラッチを係合/遮断することにより冷却水を吐出する状態と吐出を停止した状態に切り替えるポンプを採用することもできる。
【0116】
(w)上記各実施形態及び各変形例では、電気駆動系の冷却水が循環する循環水路として、電動発電機21及びその電力制御機器であるインバータ22を冷却するものを例示したが、その他にも循環水路には、電動発電機21のみを冷却するもの、インバータ等の電力制御機器のみを冷却するものも含まれる。また、アセンブリ化された電動発電機21であれば電動機として機能する部位を冷却するもの、発電機として機能する部位を冷却するもの、それら全体を冷却するものも前記循環水路に含まれる。また、電動機と発電機とが別体として車両に搭載されるものにあって、電動機のみを冷却するもの、発電機のみを冷却するもの、電動機及び発電機の双方を冷却するものもこの循環水路に含まれる。
【符号の説明】
【0117】
10…冷却部、11…内燃機関、12…ポンプ、14…ラジエータ、16…ウォータジャケット、17…循環水路、20…冷却部、21…電動発電機、22…インバータ、23…ポンプ、24…ラジエータ、25…蓄電池、26…循環水路、31…動力分割機構、33…駆動輪、41…エアバッグ装置、91…制御装置、92…回転速度センサ、93…回転速度センサ、94…加速度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源を含む車両駆動系を冷却する冷却水が循環する循環水路と、この循環水路に冷却水を吐出して循環させるポンプと、そのポンプの吐出量を可変制御するポンプ制御手段とを含む冷却装置を有する車両の制御装置において、
前記循環水路からの冷却水の漏出が予測される特定事象を検出する検出手段を備え、
前記ポンプ制御手段は前記特定事象が検出されたときに前記ポンプの吐出量を制限する吐出量制限処理を実行する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記検出手段は車両に作用する衝撃力を検出するセンサを含み、同センサにより検出される衝撃力が所定の閾値以上であることを前記特定事象として検出する
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記センサとして車両に設けられた加速度センサを含み、同加速度センサにより検出される加速度が車両の乗員保護装置を起動する所定の閾値以上となったことを前記特定事象として検出する
請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記検出手段は、車両の乗員保護装置が起動したことを前記特定事象として検出する
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記ポンプは電動回転式のポンプであり、
前記ポンプ制御手段は、前記ポンプの回転速度を検出する回転速度センサを含み、その検出される回転速度が目標回転速度となるように同目標回転速度に対応して予め設定された基準制御値に基づいて前記ポンプを制御するものであり、
前記検出手段は、前記基準制御値に基づいて前記ポンプを制御したときに、前記回転速度センサにより検出される回転速度が前記目標回転速度よりも高くその乖離度が所定の判定値以上であることを前記特定事象として検出する
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記検出手段は前記目標回転速度が高いときほど前記判定値を大きな値に設定する
請求項5に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、
前記特定事象が検出されたときに前記駆動源の作動時における発生熱量が小さくなるように同駆動源の作動負荷を制限する作動負荷制限処理を実行する駆動源制御手段を更に備える
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項8】
車両の駆動源としての内燃機関を含む機械駆動系を冷却する冷却水が循環する循環水路と車両の駆動源としての電動発電機を含む電気駆動系を冷却する冷却水が循環する循環水路とからなる独立した一対の循環水路と、各循環水路に対応して各別に設けられてそれら循環水路に冷却水を吐出する一対のポンプと、それらポンプの吐出量をそれぞれ可変制御するポンプ制御手段とを含む冷却装置を有する車両の制御装置において、
前記各循環水路からの冷却水の漏出が予測される特定事象を検出する検出手段を備え、
前記ポンプ制御手段は前記特定事象が検出されたときに前記各ポンプの少なくとも一方の吐出量を制限する吐出量制限処理を実行する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項9】
前記検出手段は車両に作用する衝撃力を検出するセンサを含み、同センサにより検出される衝撃力が所定の閾値以上であることを前記特定事象として検出する
請求項8に記載の車両の制御装置。
【請求項10】
前記検出手段は車両に設けられた加速度センサを含み、その加速度センサにより検出される加速度が車両の乗員保護装置を起動する所定の判定値以上となったことを前記特定事象として検出する
請求項8に記載の車両の制御装置。
【請求項11】
前記検出手段は、車両の乗員保護装置が起動したことを前記特定事象として検出する
請求項に8記載の車両の制御装置。
【請求項12】
前記ポンプ制御手段は前記吐出量制限処理に際して前記機械駆動系の循環水路のポンプによる冷却水の吐出を停止するものであり、
前記内燃機関の運転を停止して電動発電機のみを車両の駆動源として選択する選択手段を更に備える
請求項8〜11のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項13】
前記ポンプ制御手段は前記吐出量制限処理に際して更に前記電気駆動系の循環水路におけるポンプを駆動しつつその吐出量を制限するものであり、
前記電動発電機に供給される供給電力が所定値以下となるようにこれを制限する駆動源制御手段を更に備える
請求項12に記載の車両の制御装置。
【請求項14】
前記各ポンプはいずれも電動回転式のポンプであり、
前記ポンプ制御手段は、前記各ポンプについてその回転速度をそれぞれ検出する各別の回転速度センサを含み、その検出される各回転速度が前記各ポンプに対応した目標回転速度となるように同目標回転速度に対応して予め設定された基準制御値に基づいて前記各ポンプを制御するものであり、
前記検出手段は、前記目標回転速度に対応して予め設定された基準制御値に基づいて前記各ポンプを制御したときに前記各回転速度センサにより検出される回転速度が前記目標回転速度よりも高くその乖離度が所定の判定値以上であることを前記特定事象として前記各循環水路について各別に検出し、
前記機械駆動系及び前記電気駆動系のいずれか一方の循環水路にのみ前記特定事象が検出されないときに、その一方のみを車両の駆動源として選択する選択手段を更に備え、
前記ポンプ制御手段は前記吐出量制限処理に際して前記機械駆動系及び前記電気駆動系の他方における循環水路のポンプによる冷却水の吐出を停止するものである
請求項8に記載の車両の制御装置。
【請求項15】
前記各ポンプはいずれも電動回転式のポンプであり、
前記ポンプ制御手段は、前記各ポンプについてその回転速度をそれぞれ検出する各別の回転速度センサを含み、その検出される各回転速度が前記各ポンプに対応した目標回転速度となるように同目標回転速度に対応して予め設定された基準制御値に基づいて前記各ポンプを制御するものであり、
前記検出手段は、前記目標回転速度に対応して予め設定された基準制御値に基づいて前記各ポンプを制御したときに前記各回転速度センサにより検出される回転速度が前記目標回転速度よりも高くその乖離度が所定の判定値以上であることを前記特定事象として前記各循環水路について各別に検出し、
前記機械駆動系及び前記電気駆動系の双方の循環水路について前記特定事象がそれぞれ検出されるときに、前記内燃機関及び電動発電機の双方を車両の駆動源として選択する選択手段を更に備え、
前記ポンプ制御手段は前記吐出量制限処理に際して前記機械駆動系及び前記電気駆動系の双方における循環水路の各ポンプを駆動しつつそれらの吐出量を制限するものである
請求項8に記載の車両の制御装置。
【請求項16】
前記内燃機関及び前記電動発電機の作動時における発生熱量が小さくなるように同駆動源の作動負荷を制限する作動負荷制限処理を実行する駆動源制御手段を更に備える
請求項15に記載の車両の制御装置。
【請求項17】
前記検出手段は前記目標回転速度が高いときほど前記判定値を大きな値に設定する
請求項14〜16のいずれか一項に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−220154(P2011−220154A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88127(P2010−88127)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】