車両の前部構造
【課題】走行風によって熱交換器2,3を効率良く冷却するとともに、冠水走行時のリキッドコンプレッションを防止する。
【解決手段】外気導入口6〜8を有するバンパ1と熱交換器2,3左右のシュラウドサイド14aとを結ぶように前後方向に延びる導風プレート18を設けて、外気導入口6〜8から入る走行風を熱交換器2,3に導くようにするとともに、水圧によって開く排水手段20を導風プレート18に設けて、冠水走行時に左右の導風プレート18間に流入する水を外側に排出する。
【解決手段】外気導入口6〜8を有するバンパ1と熱交換器2,3左右のシュラウドサイド14aとを結ぶように前後方向に延びる導風プレート18を設けて、外気導入口6〜8から入る走行風を熱交換器2,3に導くようにするとともに、水圧によって開く排水手段20を導風プレート18に設けて、冠水走行時に左右の導風プレート18間に流入する水を外側に排出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、バンパに外気導入口を開口して走行風をラジエータに導く構造は一般に採用されている。例えば特許文献1には、バンパの左右両サイド寄りに設けた外気導入口からラジエータに向かって延びるダクトを設けることが記載されている。このダクトにはシャッター機構を有する排水用開口が設けられている。シャッター機構は、非冠水時には排水用開口を閉じ、冠水走行によってダクト内に水が流入すると排水用開口を開き、ラジエータ側に水が流入することを防止するようになっている。
【0003】
特許文献2には、ラジエータのシュラウドロア前面よりバンパフェイス裏面に隣接する位置まで延びる足払い用の樹脂製プレートを設けることが記載されている。このプレートは、車両が歩行者と接触衝突した際、歩行者の足を払って、歩行者の上体をボンネット上に傾倒させて、歩行者を二次障害から守るため働きをする。また、このプレートには、車幅方向に並ぶ複数の孔が開口し、バンパフェイスロアの外気導入口から当該プレートの下方に流入する走行風をプレート上方に取り入れてラジエータに導くようになっている。
【特許文献1】特開2002−205559号公報
【特許文献2】特開2008−265399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近の車両では、エンジンルーム内の温度が多くのエンジン部品等の密集によって高くなり易くなっているため、ラジエータやクーラーコンデンサ(熱媒体凝縮用)を効率良く冷却することが要求される。そのため、バンパに外気導入口を車幅方向広く開口させ、走行風をラジエータ等の熱交換器に導入することがなされている。
【0005】
本発明の課題の一つは、バンパの外気導入口から流入する走行風を上記熱交換器に効率良く導くことにある。
【0006】
この課題の解決には、熱交換器の両側に配設されたシュラウドサイド各々とバンパとを前後方向に延びる左右の導風プレートで結ぶことが有効である。
【0007】
しかし、上記左右の導風プレートを設けると、熱交換器前方の空間が左右から仕切られた状態になるため、冠水走行によって当該空間に流入する水が排出されにくくなる。従って、多量の水が流入した場合には、当該空間の水位が上昇してエンジンの吸気ダクトに吸い込まれ、所謂リキッドコンプレッションを招く懸念を生ずる。
【0008】
特に、近年はCd値(空気抗力係数)低減のためのフロントノーズの低下や、断熱性を高める構造の採用等の影響により、上記熱交換器の前方から上方に亘る空間が、狭く且つ密閉性が高いダクトのような状態になってきている。かかる状況において、上記導風プレートの配設は当該空間のダクト化を助長することになり、吸気量の少ない運転状態であっても、当該空間の水位が上昇してくると、エンジンが水を吸い込み易くなる。
【0009】
すなわち、本発明の課題は、上記リキッドコンプレッションの問題を招くことなく、上記熱交換器を走行風によって効率良く冷却することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、導風プレートに排水手段を設けて、冠水走行時に左右の導風プレート間に流入する水を外側に排出するようにした。
【0011】
具体的には、本発明は、外気導入口を有するバンパの後方に熱交換器が配設され、該熱交換器にシュラウドが設けられている車両の前部構造において、
上記シュラウドは、上記熱交換器の両側各々に配設された左右のシュラウドサイドを有し、
上記バンパと上記左右のシュラウドサイド各々とを結ぶように前後方向に延び、上記外気導入口から入る走行風を上記熱交換器に導く左右の導風プレートと、
上記左右の導風プレートの少なくとも一方に設けられ、冠水走行時に上記左右の導風プレート間に流入する水を外側に排出するように水圧によって作動する排水手段とを備えていることを特徴とする。
【0012】
従って、バンパの外気導入口から流入する走行風は左右の導風プレートによって熱交換器に導かれる。その結果、熱交換器の両外側に逃げる走行風量が少なくなるため、熱交換器の冷却(熱交換効率の向上)に有利になる。しかも、バンパの外気導入口から流入して車両前部側方に流出する走行風量が少なくなるため、車両全体の空力特性を高める上でも有利になる。
【0013】
そうして、上記熱交換器前方の空間は、左右の導風プレートによってその両外側の空間から仕切られた状態になっている。しかし、冠水走行によって熱交換器前方の空間に水が流入しても、導風プレートに設けられた排水手段が水圧によって作動し、その水が外側に排出される。従って、当該空間の水位が過度に高くなることが防止される。よって、エンジンの吸気ダクトを熱交換器の上方位置に開口させた場合でも、リキッドコンプレッションを招くことが避けられる。
【0014】
本発明の好ましい実施態様は、上記シュラウドが、上記熱交換器の下側に配設されたシュラウドロアを有し、該シュラウドロアの前面に、上記左右の導風プレート間に亘って車幅方向に広がり且つ前端が上記パンパ裏面近傍まで延設されたアンダープレートが取り付けられていることである。これにより、バンパの外気導入口から流入する走行風が熱交換器前方の空間から熱交換器下方へ逃げることが抑制され、熱交換器の冷却に有利になる。
【0015】
本発明の好ましい実施態様は、上記アンダープレートには、その下方に流入する走行風を上記左右の導風プレート間に導く複数の走行風導入孔が車幅方向に配列されていることである。これにより、アンダープレートの下方から走行風が熱交換器前方の空間に導入され、熱交換器の冷却に有利になる。
【0016】
本発明の好ましい実施態様は、上記導風プレートは、上記シュラウドサイドより前方に延びる第1プレートと、上記バンパより後方へ延び走行風が後方へ導かれるように先端部が上記第1プレートに接触する第2プレートとによって形成され、
上記第2プレートは、上記排水手段を形成すべく、上記水圧によって撓んで先端部が上記第1プレートから外側に離れるように、上記第1プレートよりも軟質の可撓性材によって形成されていることである。
【0017】
これにより、導風プレートに開口を設けて開閉フラップを取り付ける(この場合、開閉フラップを導風プレートに支持する回転軸、並びにそのフラップを閉方向に付勢するスプリングが必要になる。)ことなく、排水手段を構成することができ、排水手段の簡略化ないしコストダウンに有利になる。
【0018】
本発明の好ましい実施態様は、上記第2プレートの先端部は、上記第1プレートの先端部に外側から重ねられていることである。これにより、第1プレートと第2プレートとの間のシール性が高くなるとともに、水圧がかかったときに第2プレートの先端部が外側に撓み易くなり、良好な排水性が得られる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、バンパと左右のシュラウドサイド各々とを結ぶように前後方向に延びる左右の導風プレートを設けるとともに、この左右の導風プレートの少なくとも一方に、冠水走行時に左右の導風プレート間に流入する水を外側に排出するように水圧によって作動する排水手段を設けたから、バンパの外気導入口から入る走行風を導風プレートによって熱交換器に導くことができ、熱交換器を効率良く冷却する上で有利になるとともに、冠水走行によって熱交換器前方の空間に水が流入しても排水手段によって排水することができ、リキッドコンプレッションを招くことが避けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
<実施形態1>
本実施形態に係る車両の前部構造は図1乃至図3に示されている。図1において、1は車両のバンパ、2はバンパ1の後方に配置された熱交換器としてのクーラコンデンサ、3はクーラコンデンサ2の背部に配設された熱交換器としてラジエータである。バンパ1は、バンパフェイス4とバンパレインフォースメント5とを備えて構成されている。
【0022】
バンパフェイス4には、図2に示すように、各々車幅方向に広がる上部外気導入口6と下部外気導入口7とが中間のプロテクタ部4aを挟んで上下に配設されている。さらに、下部外気導入口7の下側のバンパフェイスロア部4bにも車幅方向に延びるスリット状の外気導入口8が形成されている。
【0023】
図1に示すように、バンパフェイス4には、上部外気導入口6及び下部外気導入口7各々をグリル構造にするバンパグリル11が取り付けられている。バンパレインフォースメント5は、プロテクタ部4aの背部を車幅方向に延び、その両端部が前後方向に延びる左右のサイドフレーム(図示省略)の前端に衝撃吸収部材(図示省略)を介して支持されている。バンパレインフォースメント5の前面にはウレタンフォームによる衝撃吸収材13が取り付けられている。
【0024】
図1及び図3に示すように、クーラーコンデンサ2及びラジエータ3は、シュラウド14を介して車体に支持されている。シュラウド14は、クーラーコンデンサ2及びラジエータ3の両側各々に配設された左右のシュラウドサイド14a、上側に配設されたシュラウドアッパ14b及び下側に配設されたシュラウドロア14cを備えてなる。さらに、ラジエータ3の背部には冷却ファン15が設けられ、冷却ファン15は上記シュラウド14に結合されたファンシュラウド16を介して車体に支持されている。ファンシュラウド16の上にはエンジンの吸気ダクト17が支持されて吸気口が開口している。なお、クーラーコンデンサ2、ラジエータ3及び冷却ファン15のシュラウド14,16に対する具体的な支持構造についての図示は省略している。
【0025】
バンパフェイス4の外気導入口6,7の両外側に対応する位置には、バンパフェイス4の裏面と左右のシュラウドサイド14a各々とを結んで前後方向に延びる左右の導風プレート18が設けられている。導風プレート18は、合成樹脂製であり、板面が垂直にされていて、下部外気導入口7の下縁より上部外気導入口6の上縁の上方に至る高さを有する。導風プレート18の高さ方向の中間部には、バンパレインフォースメント5を通すための前方に開口した切欠き18aが形成されている。導風プレート18の前端はバンパフェイス4の裏面に溶着され、導風プレート18の後端はシュラウドサイド14aにビス等で結合されている。
【0026】
上記導風プレート18の切欠き18aを挟んだ上部と下部とには排水口21,22がそれぞれ開口し、各排水口21,22にこれを開閉する開閉フラップ23,24が設けられている。開閉フラップ23,24は、導風プレート18の外側面に設けられ、排水口21,22の前縁部に設けられた回動軸25によって外側に開くように導風プレート18に支持されている。回動軸25にはスプリング(図示省略)が巻き掛けられており、そのスプリングは、開閉フラップ23,24が内側から所定値以上の水圧を受けたときに外側へ開くように、該開閉フラップ23,24を閉方向に付勢している。
【0027】
この実施形態では、導風プレート18の排水口21,22と、回動軸25によって開閉自在に且つスプリングにて閉方向に付勢して導風プレート18に支持された開閉フラップ23,24とによって、排水手段20が構成されている。なお、回動軸25は排水口21,22の周囲のいずれの箇所に設けてもよいが、排水口21,22の前縁側に設けることが好ましい。
【0028】
シュラウドロア14cの前面には足払い用の軟質のアンダープレート26が取り付けられている。このアンダープレート26は、その上面が平坦であって、左右の導風プレート18に亘るように車幅方向に広がり、前端はバンパフェイス4の裏面近傍まで延びている。従って、本実施形態の場合、クーラーコンデンサ2とバンパフェイス4との間は、左右が導風プレート18によって仕切られ、下側がアンダープレート26によって仕切られて、上方に開口した仕切り空間になっている。
【0029】
上記アンダープレート26には、車幅方向の全長に亘って間隔をおいて並ぶ複数の走行風導入孔27が開口している。この走行風導入孔27は、バンパフェイスロア部4bの外気導入口8から流入する走行風を左右の導風プレート18間に導入するためのものであり、その走行風の導入を円滑にするために、孔壁の後面27aが上方へ向かって後方に傾斜している。
【0030】
また、バンパフェイスロア部4bにはアンダーカバー28が取り付けられている。このアンダーカバー28の上面には、バンパフェイスロア部4bの外気導入口8から流入する走行風をアンダープレート25の走行風導入孔26に案内する案内壁29が立設されている。この案内壁29は、車幅方向に並ぶ走行風導入孔27の列に沿って、該走行風導入孔27の後側を車幅方向に延びている。
【0031】
なお、図1において、符号30はボンネットを示す。また、図3において、符号31はファンシュラウド16に設けることが好ましい開閉フラップである。すなわち、ファンシュラウド16に導風プレート18と同様の排水口を設け、この排水口に外側へ開く開閉フラップ31を閉方向に付勢して設けることが好ましい。
【0032】
上記車両の前部構造によれば、バンパフェイス4の外気導入口6,7から流入する走行風は、左右の導風プレート18及びアンダープレート26に導かれてクーラーコンデンサ2及びラジエータ3に向かって流れる。すなわち、クーラーコンデンサ2及びラジエータ3の左右両外側及び下側に逃げる走行風量が少なくなり、クーラーコンデンサ2及びラジエータ3の冷却効率が高くなる。また、バンパフェイスロア部4aの外気導入口8から流入する走行風は、アンダーカバー28の案内壁29によって後方へ流れることが遮られてアンダープレート26の走行風導入孔27から左右の導風プレート18間に流入する。従って、クーラーコンデンサ2及びラジエータ3の冷却効率がさらに高くなる。
【0033】
そうして、車両の冠水走行時に水がバンパフェイス4の下部外気導入口7やバンパフェイスロア部4aの外気導入口8からクーラーコンデンサ2の前方の空間に流入し、該空間の水位が上昇すると、水圧によって下側開閉フラップ24が外側に開いて下側排水口22が開口し、水が導風プレート18の外側に排出される。よって、当該空間での水位上昇が抑えられる。冠水走行により、水がバンパフェイス4の上部外気導入口6からも上記空間に流入するなどして、当該空間の水位がさらに高くなると、下側排水口22が開口するだけでなく、上側開閉フラップ23が外側に開いて上側排水口21が開口し、水が導風プレート18の外側に排出される。これにより、当該空間での水位の過度な上昇が抑えられる。よって、エンジンの吸気ダクト17から水が吸い込まれること、すなわち、リキッドコンプレッションを招くことが避けられる。
【0034】
また、ファンシュラウド16に開閉フラップ31を有する排水口を設けると、ラジエータ3の後方での排水性が良くなる。その結果、水がクーラーコンデンサ2及びラジエータ3を通り抜け易くなり、クーラーコンデンサ2の前方空間の水位上昇を抑制する上で有利になる。
【0035】
<実施形態2>
本実施形態については図4及び図5に示されている。本実施形態は排水手段20の構成が先の実施形態1と相違し、他の構成は実施形態1と同じである。
【0036】
すなわち、本実施形態では、導風プレート18が、シュラウドサイド14aより前方に延びる第1プレート18aと、バンパフェイス4のバンパレインフォースメント5を挟んだ上部及び下部各々より後方へ延びる上部第2プレート18b及び下部第2プレート18cとによって形成されている。第1プレート18aはシュラウドサイド14aと一体に形成されている。上下の第2プレート18b,18cの前端はバンパフェイス4の裏面に溶着されている。
【0037】
第1プレート18aは、下部外気導入口7の下縁より上部外気導入口6の上縁の上方に至る高さに形成されている。上部第2プレート18bは上部外気導入口6の下縁より該上部外気導入口6の上縁の上方に至る高さに形成され、下部第2プレート18cは下部外気導入口7の下縁より該下部外気導入口7の上縁に至る高さに形成されている。第2プレート18b,18cは、各々の先端部(後端部)が第1プレート18aの先端部(前端部)に外側から重ねられている。
【0038】
第2プレート18b,18cは、車両の冠水走行に伴ってクーラーコンデンサ2の前方空間に水が流入したときに、水圧によって撓んで先端部が第1プレート18aから外側に離れるように、第1プレート18aよりも軟質の可撓性材によって形成されている。この場合、第2プレート18b,18cの、水圧によって第1プレート18aから外側に離れる先端部が排水手段20を構成している。第1プレート18aは合成樹脂や金属によって形成することができ、第2プレート18b,18cは合成樹脂やゴムによって形成することができる。また、第1プレート18aは、シュラウドサイド14aと別体に形成し、該シュラウドサイド14aに溶着する或いはビス等で結合することができる。
【0039】
従って、本実施形態においても、実施形態1と同様に、バンパフェイス4の外気導入口6,7から流入する走行風、並びにバンパフェイスロア部4aの外気導入口8からアンダープレート26の走行風導入孔27を経て流入する走行風は、左右の導風プレート18及びアンダープレート26に導かれてクーラーコンデンサ2及びラジエータ3に向かって流れ、それらが効率良く冷却される。また、冠水走行によってクーラーコンデンサ2の前方空間に水が流入し、その水位が上昇してくると、下部第2プレート18cの先端部が水圧によって撓んで第1プレート18aから離れ、水が外側に排出され、さらには上部第2プレート18bの先端部が水圧によって撓んで第1プレート18aから離れ、水が外側に排出され、水位の過度な上昇が抑えられる。よって、エンジンの吸気ダクト17から水が吸い込まれること、すなわち、リキッドコンプレッションを招くことが避けられる。
【0040】
そうして、本実施形態の場合は、上述の如く、第2プレート18b,18cの先端部が水圧によって撓んで第1及び第2の両プレート間が開くようにしたから、実施形態1のような開閉フラップ23,24、回転軸25及びスプリングは不要であり、排水手段20の構成が簡単になる。また、第2プレート18b,18cの先端部は、第1プレート18aの先端部に外側から重ねられているから、第1及び第2の両プレート間のシール性が高くなるとともに、水圧がかかったときに第2プレート18b,18cの先端部が外側に撓み易くなり、良好な排水性が得られる。
【0041】
<実施形態3>
本実施形態については図6に要部のみを示す。実施形態2との相違点は排水手段20の構成にあり、他の構成は同じある。すなわち、本実施形態では、第1プレート18aの先端面(前端面)と第2プレート18cの先端面(後端面)とを離脱可能に突き合わせることによって排水手段20を構成している。第2プレート18cは、車両の冠水走行に伴ってクーラーコンデンサ2の前方空間に水が流入したときに、水圧によって撓んで先端面が第1プレート18aの先端面から外側に離れるように、第1プレート18aよりも軟質の可撓性材によって形成されている。図示は省略するが、上部第2プレートについても上記下部第2プレート18cと同様に構成することができる。従って、本実施形態においても実施形態2と同様の効果が得られる。
【0042】
なお、上記各実施形態では、排水手段を左右の導風プレート各々に設けたが、一方の導風プレートのみに排水手段を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態1に係る車両の前部構造を示す縦断面図である。
【図2】同車両のバンパ部分の正面図である。
【図3】同前部構造の横断面図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る車両の前部構造を示す縦断面図である。
【図5】同前部構造の横断面図である。
【図6】本発明の実施形態3に係る車両の前部構造を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 バンパ
2 クーラコンデンサ(熱交換器)
3 ラジエータ(熱交換器)
4 バンパフェイス
5 バンパレインフォースメント
6〜8 外気導入口
14 シュラウド
14a シュラウドサイド
14c シュラウドロア
17 エンジンの吸気ダクト
18 導風プレート
18a 第1プレート
18b 第2プレート
18c 第2プレート
20 排水手段
26 アンダープレート
27 走行風導入孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、バンパに外気導入口を開口して走行風をラジエータに導く構造は一般に採用されている。例えば特許文献1には、バンパの左右両サイド寄りに設けた外気導入口からラジエータに向かって延びるダクトを設けることが記載されている。このダクトにはシャッター機構を有する排水用開口が設けられている。シャッター機構は、非冠水時には排水用開口を閉じ、冠水走行によってダクト内に水が流入すると排水用開口を開き、ラジエータ側に水が流入することを防止するようになっている。
【0003】
特許文献2には、ラジエータのシュラウドロア前面よりバンパフェイス裏面に隣接する位置まで延びる足払い用の樹脂製プレートを設けることが記載されている。このプレートは、車両が歩行者と接触衝突した際、歩行者の足を払って、歩行者の上体をボンネット上に傾倒させて、歩行者を二次障害から守るため働きをする。また、このプレートには、車幅方向に並ぶ複数の孔が開口し、バンパフェイスロアの外気導入口から当該プレートの下方に流入する走行風をプレート上方に取り入れてラジエータに導くようになっている。
【特許文献1】特開2002−205559号公報
【特許文献2】特開2008−265399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近の車両では、エンジンルーム内の温度が多くのエンジン部品等の密集によって高くなり易くなっているため、ラジエータやクーラーコンデンサ(熱媒体凝縮用)を効率良く冷却することが要求される。そのため、バンパに外気導入口を車幅方向広く開口させ、走行風をラジエータ等の熱交換器に導入することがなされている。
【0005】
本発明の課題の一つは、バンパの外気導入口から流入する走行風を上記熱交換器に効率良く導くことにある。
【0006】
この課題の解決には、熱交換器の両側に配設されたシュラウドサイド各々とバンパとを前後方向に延びる左右の導風プレートで結ぶことが有効である。
【0007】
しかし、上記左右の導風プレートを設けると、熱交換器前方の空間が左右から仕切られた状態になるため、冠水走行によって当該空間に流入する水が排出されにくくなる。従って、多量の水が流入した場合には、当該空間の水位が上昇してエンジンの吸気ダクトに吸い込まれ、所謂リキッドコンプレッションを招く懸念を生ずる。
【0008】
特に、近年はCd値(空気抗力係数)低減のためのフロントノーズの低下や、断熱性を高める構造の採用等の影響により、上記熱交換器の前方から上方に亘る空間が、狭く且つ密閉性が高いダクトのような状態になってきている。かかる状況において、上記導風プレートの配設は当該空間のダクト化を助長することになり、吸気量の少ない運転状態であっても、当該空間の水位が上昇してくると、エンジンが水を吸い込み易くなる。
【0009】
すなわち、本発明の課題は、上記リキッドコンプレッションの問題を招くことなく、上記熱交換器を走行風によって効率良く冷却することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、導風プレートに排水手段を設けて、冠水走行時に左右の導風プレート間に流入する水を外側に排出するようにした。
【0011】
具体的には、本発明は、外気導入口を有するバンパの後方に熱交換器が配設され、該熱交換器にシュラウドが設けられている車両の前部構造において、
上記シュラウドは、上記熱交換器の両側各々に配設された左右のシュラウドサイドを有し、
上記バンパと上記左右のシュラウドサイド各々とを結ぶように前後方向に延び、上記外気導入口から入る走行風を上記熱交換器に導く左右の導風プレートと、
上記左右の導風プレートの少なくとも一方に設けられ、冠水走行時に上記左右の導風プレート間に流入する水を外側に排出するように水圧によって作動する排水手段とを備えていることを特徴とする。
【0012】
従って、バンパの外気導入口から流入する走行風は左右の導風プレートによって熱交換器に導かれる。その結果、熱交換器の両外側に逃げる走行風量が少なくなるため、熱交換器の冷却(熱交換効率の向上)に有利になる。しかも、バンパの外気導入口から流入して車両前部側方に流出する走行風量が少なくなるため、車両全体の空力特性を高める上でも有利になる。
【0013】
そうして、上記熱交換器前方の空間は、左右の導風プレートによってその両外側の空間から仕切られた状態になっている。しかし、冠水走行によって熱交換器前方の空間に水が流入しても、導風プレートに設けられた排水手段が水圧によって作動し、その水が外側に排出される。従って、当該空間の水位が過度に高くなることが防止される。よって、エンジンの吸気ダクトを熱交換器の上方位置に開口させた場合でも、リキッドコンプレッションを招くことが避けられる。
【0014】
本発明の好ましい実施態様は、上記シュラウドが、上記熱交換器の下側に配設されたシュラウドロアを有し、該シュラウドロアの前面に、上記左右の導風プレート間に亘って車幅方向に広がり且つ前端が上記パンパ裏面近傍まで延設されたアンダープレートが取り付けられていることである。これにより、バンパの外気導入口から流入する走行風が熱交換器前方の空間から熱交換器下方へ逃げることが抑制され、熱交換器の冷却に有利になる。
【0015】
本発明の好ましい実施態様は、上記アンダープレートには、その下方に流入する走行風を上記左右の導風プレート間に導く複数の走行風導入孔が車幅方向に配列されていることである。これにより、アンダープレートの下方から走行風が熱交換器前方の空間に導入され、熱交換器の冷却に有利になる。
【0016】
本発明の好ましい実施態様は、上記導風プレートは、上記シュラウドサイドより前方に延びる第1プレートと、上記バンパより後方へ延び走行風が後方へ導かれるように先端部が上記第1プレートに接触する第2プレートとによって形成され、
上記第2プレートは、上記排水手段を形成すべく、上記水圧によって撓んで先端部が上記第1プレートから外側に離れるように、上記第1プレートよりも軟質の可撓性材によって形成されていることである。
【0017】
これにより、導風プレートに開口を設けて開閉フラップを取り付ける(この場合、開閉フラップを導風プレートに支持する回転軸、並びにそのフラップを閉方向に付勢するスプリングが必要になる。)ことなく、排水手段を構成することができ、排水手段の簡略化ないしコストダウンに有利になる。
【0018】
本発明の好ましい実施態様は、上記第2プレートの先端部は、上記第1プレートの先端部に外側から重ねられていることである。これにより、第1プレートと第2プレートとの間のシール性が高くなるとともに、水圧がかかったときに第2プレートの先端部が外側に撓み易くなり、良好な排水性が得られる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、バンパと左右のシュラウドサイド各々とを結ぶように前後方向に延びる左右の導風プレートを設けるとともに、この左右の導風プレートの少なくとも一方に、冠水走行時に左右の導風プレート間に流入する水を外側に排出するように水圧によって作動する排水手段を設けたから、バンパの外気導入口から入る走行風を導風プレートによって熱交換器に導くことができ、熱交換器を効率良く冷却する上で有利になるとともに、冠水走行によって熱交換器前方の空間に水が流入しても排水手段によって排水することができ、リキッドコンプレッションを招くことが避けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
<実施形態1>
本実施形態に係る車両の前部構造は図1乃至図3に示されている。図1において、1は車両のバンパ、2はバンパ1の後方に配置された熱交換器としてのクーラコンデンサ、3はクーラコンデンサ2の背部に配設された熱交換器としてラジエータである。バンパ1は、バンパフェイス4とバンパレインフォースメント5とを備えて構成されている。
【0022】
バンパフェイス4には、図2に示すように、各々車幅方向に広がる上部外気導入口6と下部外気導入口7とが中間のプロテクタ部4aを挟んで上下に配設されている。さらに、下部外気導入口7の下側のバンパフェイスロア部4bにも車幅方向に延びるスリット状の外気導入口8が形成されている。
【0023】
図1に示すように、バンパフェイス4には、上部外気導入口6及び下部外気導入口7各々をグリル構造にするバンパグリル11が取り付けられている。バンパレインフォースメント5は、プロテクタ部4aの背部を車幅方向に延び、その両端部が前後方向に延びる左右のサイドフレーム(図示省略)の前端に衝撃吸収部材(図示省略)を介して支持されている。バンパレインフォースメント5の前面にはウレタンフォームによる衝撃吸収材13が取り付けられている。
【0024】
図1及び図3に示すように、クーラーコンデンサ2及びラジエータ3は、シュラウド14を介して車体に支持されている。シュラウド14は、クーラーコンデンサ2及びラジエータ3の両側各々に配設された左右のシュラウドサイド14a、上側に配設されたシュラウドアッパ14b及び下側に配設されたシュラウドロア14cを備えてなる。さらに、ラジエータ3の背部には冷却ファン15が設けられ、冷却ファン15は上記シュラウド14に結合されたファンシュラウド16を介して車体に支持されている。ファンシュラウド16の上にはエンジンの吸気ダクト17が支持されて吸気口が開口している。なお、クーラーコンデンサ2、ラジエータ3及び冷却ファン15のシュラウド14,16に対する具体的な支持構造についての図示は省略している。
【0025】
バンパフェイス4の外気導入口6,7の両外側に対応する位置には、バンパフェイス4の裏面と左右のシュラウドサイド14a各々とを結んで前後方向に延びる左右の導風プレート18が設けられている。導風プレート18は、合成樹脂製であり、板面が垂直にされていて、下部外気導入口7の下縁より上部外気導入口6の上縁の上方に至る高さを有する。導風プレート18の高さ方向の中間部には、バンパレインフォースメント5を通すための前方に開口した切欠き18aが形成されている。導風プレート18の前端はバンパフェイス4の裏面に溶着され、導風プレート18の後端はシュラウドサイド14aにビス等で結合されている。
【0026】
上記導風プレート18の切欠き18aを挟んだ上部と下部とには排水口21,22がそれぞれ開口し、各排水口21,22にこれを開閉する開閉フラップ23,24が設けられている。開閉フラップ23,24は、導風プレート18の外側面に設けられ、排水口21,22の前縁部に設けられた回動軸25によって外側に開くように導風プレート18に支持されている。回動軸25にはスプリング(図示省略)が巻き掛けられており、そのスプリングは、開閉フラップ23,24が内側から所定値以上の水圧を受けたときに外側へ開くように、該開閉フラップ23,24を閉方向に付勢している。
【0027】
この実施形態では、導風プレート18の排水口21,22と、回動軸25によって開閉自在に且つスプリングにて閉方向に付勢して導風プレート18に支持された開閉フラップ23,24とによって、排水手段20が構成されている。なお、回動軸25は排水口21,22の周囲のいずれの箇所に設けてもよいが、排水口21,22の前縁側に設けることが好ましい。
【0028】
シュラウドロア14cの前面には足払い用の軟質のアンダープレート26が取り付けられている。このアンダープレート26は、その上面が平坦であって、左右の導風プレート18に亘るように車幅方向に広がり、前端はバンパフェイス4の裏面近傍まで延びている。従って、本実施形態の場合、クーラーコンデンサ2とバンパフェイス4との間は、左右が導風プレート18によって仕切られ、下側がアンダープレート26によって仕切られて、上方に開口した仕切り空間になっている。
【0029】
上記アンダープレート26には、車幅方向の全長に亘って間隔をおいて並ぶ複数の走行風導入孔27が開口している。この走行風導入孔27は、バンパフェイスロア部4bの外気導入口8から流入する走行風を左右の導風プレート18間に導入するためのものであり、その走行風の導入を円滑にするために、孔壁の後面27aが上方へ向かって後方に傾斜している。
【0030】
また、バンパフェイスロア部4bにはアンダーカバー28が取り付けられている。このアンダーカバー28の上面には、バンパフェイスロア部4bの外気導入口8から流入する走行風をアンダープレート25の走行風導入孔26に案内する案内壁29が立設されている。この案内壁29は、車幅方向に並ぶ走行風導入孔27の列に沿って、該走行風導入孔27の後側を車幅方向に延びている。
【0031】
なお、図1において、符号30はボンネットを示す。また、図3において、符号31はファンシュラウド16に設けることが好ましい開閉フラップである。すなわち、ファンシュラウド16に導風プレート18と同様の排水口を設け、この排水口に外側へ開く開閉フラップ31を閉方向に付勢して設けることが好ましい。
【0032】
上記車両の前部構造によれば、バンパフェイス4の外気導入口6,7から流入する走行風は、左右の導風プレート18及びアンダープレート26に導かれてクーラーコンデンサ2及びラジエータ3に向かって流れる。すなわち、クーラーコンデンサ2及びラジエータ3の左右両外側及び下側に逃げる走行風量が少なくなり、クーラーコンデンサ2及びラジエータ3の冷却効率が高くなる。また、バンパフェイスロア部4aの外気導入口8から流入する走行風は、アンダーカバー28の案内壁29によって後方へ流れることが遮られてアンダープレート26の走行風導入孔27から左右の導風プレート18間に流入する。従って、クーラーコンデンサ2及びラジエータ3の冷却効率がさらに高くなる。
【0033】
そうして、車両の冠水走行時に水がバンパフェイス4の下部外気導入口7やバンパフェイスロア部4aの外気導入口8からクーラーコンデンサ2の前方の空間に流入し、該空間の水位が上昇すると、水圧によって下側開閉フラップ24が外側に開いて下側排水口22が開口し、水が導風プレート18の外側に排出される。よって、当該空間での水位上昇が抑えられる。冠水走行により、水がバンパフェイス4の上部外気導入口6からも上記空間に流入するなどして、当該空間の水位がさらに高くなると、下側排水口22が開口するだけでなく、上側開閉フラップ23が外側に開いて上側排水口21が開口し、水が導風プレート18の外側に排出される。これにより、当該空間での水位の過度な上昇が抑えられる。よって、エンジンの吸気ダクト17から水が吸い込まれること、すなわち、リキッドコンプレッションを招くことが避けられる。
【0034】
また、ファンシュラウド16に開閉フラップ31を有する排水口を設けると、ラジエータ3の後方での排水性が良くなる。その結果、水がクーラーコンデンサ2及びラジエータ3を通り抜け易くなり、クーラーコンデンサ2の前方空間の水位上昇を抑制する上で有利になる。
【0035】
<実施形態2>
本実施形態については図4及び図5に示されている。本実施形態は排水手段20の構成が先の実施形態1と相違し、他の構成は実施形態1と同じである。
【0036】
すなわち、本実施形態では、導風プレート18が、シュラウドサイド14aより前方に延びる第1プレート18aと、バンパフェイス4のバンパレインフォースメント5を挟んだ上部及び下部各々より後方へ延びる上部第2プレート18b及び下部第2プレート18cとによって形成されている。第1プレート18aはシュラウドサイド14aと一体に形成されている。上下の第2プレート18b,18cの前端はバンパフェイス4の裏面に溶着されている。
【0037】
第1プレート18aは、下部外気導入口7の下縁より上部外気導入口6の上縁の上方に至る高さに形成されている。上部第2プレート18bは上部外気導入口6の下縁より該上部外気導入口6の上縁の上方に至る高さに形成され、下部第2プレート18cは下部外気導入口7の下縁より該下部外気導入口7の上縁に至る高さに形成されている。第2プレート18b,18cは、各々の先端部(後端部)が第1プレート18aの先端部(前端部)に外側から重ねられている。
【0038】
第2プレート18b,18cは、車両の冠水走行に伴ってクーラーコンデンサ2の前方空間に水が流入したときに、水圧によって撓んで先端部が第1プレート18aから外側に離れるように、第1プレート18aよりも軟質の可撓性材によって形成されている。この場合、第2プレート18b,18cの、水圧によって第1プレート18aから外側に離れる先端部が排水手段20を構成している。第1プレート18aは合成樹脂や金属によって形成することができ、第2プレート18b,18cは合成樹脂やゴムによって形成することができる。また、第1プレート18aは、シュラウドサイド14aと別体に形成し、該シュラウドサイド14aに溶着する或いはビス等で結合することができる。
【0039】
従って、本実施形態においても、実施形態1と同様に、バンパフェイス4の外気導入口6,7から流入する走行風、並びにバンパフェイスロア部4aの外気導入口8からアンダープレート26の走行風導入孔27を経て流入する走行風は、左右の導風プレート18及びアンダープレート26に導かれてクーラーコンデンサ2及びラジエータ3に向かって流れ、それらが効率良く冷却される。また、冠水走行によってクーラーコンデンサ2の前方空間に水が流入し、その水位が上昇してくると、下部第2プレート18cの先端部が水圧によって撓んで第1プレート18aから離れ、水が外側に排出され、さらには上部第2プレート18bの先端部が水圧によって撓んで第1プレート18aから離れ、水が外側に排出され、水位の過度な上昇が抑えられる。よって、エンジンの吸気ダクト17から水が吸い込まれること、すなわち、リキッドコンプレッションを招くことが避けられる。
【0040】
そうして、本実施形態の場合は、上述の如く、第2プレート18b,18cの先端部が水圧によって撓んで第1及び第2の両プレート間が開くようにしたから、実施形態1のような開閉フラップ23,24、回転軸25及びスプリングは不要であり、排水手段20の構成が簡単になる。また、第2プレート18b,18cの先端部は、第1プレート18aの先端部に外側から重ねられているから、第1及び第2の両プレート間のシール性が高くなるとともに、水圧がかかったときに第2プレート18b,18cの先端部が外側に撓み易くなり、良好な排水性が得られる。
【0041】
<実施形態3>
本実施形態については図6に要部のみを示す。実施形態2との相違点は排水手段20の構成にあり、他の構成は同じある。すなわち、本実施形態では、第1プレート18aの先端面(前端面)と第2プレート18cの先端面(後端面)とを離脱可能に突き合わせることによって排水手段20を構成している。第2プレート18cは、車両の冠水走行に伴ってクーラーコンデンサ2の前方空間に水が流入したときに、水圧によって撓んで先端面が第1プレート18aの先端面から外側に離れるように、第1プレート18aよりも軟質の可撓性材によって形成されている。図示は省略するが、上部第2プレートについても上記下部第2プレート18cと同様に構成することができる。従って、本実施形態においても実施形態2と同様の効果が得られる。
【0042】
なお、上記各実施形態では、排水手段を左右の導風プレート各々に設けたが、一方の導風プレートのみに排水手段を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態1に係る車両の前部構造を示す縦断面図である。
【図2】同車両のバンパ部分の正面図である。
【図3】同前部構造の横断面図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る車両の前部構造を示す縦断面図である。
【図5】同前部構造の横断面図である。
【図6】本発明の実施形態3に係る車両の前部構造を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 バンパ
2 クーラコンデンサ(熱交換器)
3 ラジエータ(熱交換器)
4 バンパフェイス
5 バンパレインフォースメント
6〜8 外気導入口
14 シュラウド
14a シュラウドサイド
14c シュラウドロア
17 エンジンの吸気ダクト
18 導風プレート
18a 第1プレート
18b 第2プレート
18c 第2プレート
20 排水手段
26 アンダープレート
27 走行風導入孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気導入口を有するバンパの後方に熱交換器が配設され、該熱交換器にシュラウドが設けられている車両の前部構造において、
上記シュラウドは、上記熱交換器の両側各々に配設された左右のシュラウドサイドを有し、
上記バンパと上記左右のシュラウドサイド各々とを結ぶように前後方向に延び、上記外気導入口から入る走行風を上記熱交換器に導く左右の導風プレートと、
上記左右の導風プレートの少なくとも一方に設けられ、冠水走行時に上記左右の導風プレート間に流入する水を外側に排出するように水圧によって作動する排水手段とを備えていることを特徴とする車両の前部構造。
【請求項2】
請求項1において、
上記シュラウドは、上記熱交換器の下側に配設されたシュラウドロアを有し、
上記シュラウドロアの前面に、上記左右の導風プレート間に亘って車幅方向に広がり且つ前端が上記パンパ裏面近傍まで延設されたアンダープレートが取り付けられていることを特徴とする車両の前部構造。
【請求項3】
請求項2において、
上記アンダープレートには、その下方に流入する走行風を上記左右の導風プレート間に導く複数の走行風導入孔が車幅方向に配列されていることを特徴とする車両の前部構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
上記導風プレートは、上記シュラウドサイドより前方に延びる第1プレートと、上記バンパより後方へ延び先端部が上記第1プレートに接触する第2プレートとによって形成され、
上記第2プレートは、上記排水手段を形成すべく、上記水圧によって撓んで先端部が上記第1プレートから外側に離れるように、上記第1プレートよりも軟質の可撓性材によって形成されていることを特徴とする車両の前部構造。
【請求項5】
請求項4において、
上記第2プレートの先端部は、上記第1プレートの先端部に外側から重ねられていることを特徴とする車両の前部構造。
【請求項1】
外気導入口を有するバンパの後方に熱交換器が配設され、該熱交換器にシュラウドが設けられている車両の前部構造において、
上記シュラウドは、上記熱交換器の両側各々に配設された左右のシュラウドサイドを有し、
上記バンパと上記左右のシュラウドサイド各々とを結ぶように前後方向に延び、上記外気導入口から入る走行風を上記熱交換器に導く左右の導風プレートと、
上記左右の導風プレートの少なくとも一方に設けられ、冠水走行時に上記左右の導風プレート間に流入する水を外側に排出するように水圧によって作動する排水手段とを備えていることを特徴とする車両の前部構造。
【請求項2】
請求項1において、
上記シュラウドは、上記熱交換器の下側に配設されたシュラウドロアを有し、
上記シュラウドロアの前面に、上記左右の導風プレート間に亘って車幅方向に広がり且つ前端が上記パンパ裏面近傍まで延設されたアンダープレートが取り付けられていることを特徴とする車両の前部構造。
【請求項3】
請求項2において、
上記アンダープレートには、その下方に流入する走行風を上記左右の導風プレート間に導く複数の走行風導入孔が車幅方向に配列されていることを特徴とする車両の前部構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
上記導風プレートは、上記シュラウドサイドより前方に延びる第1プレートと、上記バンパより後方へ延び先端部が上記第1プレートに接触する第2プレートとによって形成され、
上記第2プレートは、上記排水手段を形成すべく、上記水圧によって撓んで先端部が上記第1プレートから外側に離れるように、上記第1プレートよりも軟質の可撓性材によって形成されていることを特徴とする車両の前部構造。
【請求項5】
請求項4において、
上記第2プレートの先端部は、上記第1プレートの先端部に外側から重ねられていることを特徴とする車両の前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2010−179708(P2010−179708A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22825(P2009−22825)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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