説明

車両の自動停止制御装置

【課題】エンジンが誤ったタイミングで再始動することを防止することが出来る車両の自動停止制御装置を提供する。
【解決手段】本発明は、車両停止時に所定自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、自動停止後所定の再始動条件が成立するとエンジンを再始動させる車両の自動停止制御装置であって、所定の自動停止条件の少なくとも一つが車両停止時のブレーキ踏み込み操作であり、また、所定の再始動条件の少なくとも一つがブレーキの踏み込み操作であり、車両停止時、シフトレンジ位置が非走行レンジ位置であるとき、車両停止開始から第1所定期間の間は、ブレーキ踏み込み操作が検出されてもエンジンの自動停止を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の自動停止制御装置に係り、特に、車両停止時所定の自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、自動停止後所定の再始動条件が成立するとエンジンを再始動させる車両の自動停止制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃費の低減、CO2の排出量の抑制などを図るため、交差点などでの車両の停止時、所定の条件が成立したときにエンジンを自動的に停止させ、その後、再発進時に所定のエンジン条件(例えば、ドライバーによるブレーキ操作)が成立したときにエンジンを再始動させる、いわゆる、アイドルストップ車両が知られている。
【0003】
引用文献1には、車両の走行時及び停止時にシフトポジションがニュートラルポジション或いは走行ポジションにあり且つ制動操作が検出された場合に、アイドル状態にあるエンジンを自動停止させるエンジン停止制御装置が開示されている。また、引用文献1の図15には、マニュアルトランスミッションにおいて、停車時、ドライバーが、クラッチペダルを踏み、シフトポジションをニュートラル状態からインギア状態にすると、エンジンを再始動するようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−257121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、長年、マニュアルトランスミッション(以下、「手動変速機」という)付きの車両に慣れたドライバーの中には、オートマティックトランスミッション(以下、「自動変速機」という)付きの車両を運転する場合、停車前の減速時に、シフトレンジを、ドライブレンジ(以下、「Dレンジ」)からニュートラルレンジ(以下、「Nレンジ」)にして停車する傾向を有するドライバーが存在する。これは、手動変速機に慣れたドライバーは、自動変速機のDレンジのように、駆動力がかかった状態での車両の停止を避けたい、という意思が働くためである。
【0006】
このようなドライバーが、Nレンジで減速しながら停車するときは、Dレンジで減速しながら停車する場合のような駆動力(クリープ力)がなく、Dレンジと同様にブレーキを踏むと急停車することになるので、停止時に、何度かブレーキをオン/オフしたり、ブレーキ踏力の増加減を何度か繰り返す場合がある。ここで、本発明者らは、車両の完全な停止時(例えば、車速パルスなどで検出される停止時)に対して、ドライバーが感じる車両の停止時とにずれがあることを、エンジン自動停止装置の一連の開発において実験等により明らかにした。従って、車両が完全に停止した直後でも、ドライバーは、その意思として、車両を停止させるための上述したようなブレーキ操作をする場合がある。
【0007】
従って、エンジン自動停止条件及びエンジン再始動条件として、ドライバーによるブレーキ操作を一つの条件としているアイドルストップ車両においては、先ず、車両停止時の上述したようなドライバーのブレーキ操作をエンジンの自動停止条件として成立させてエンジンを自動停止した後、さらに、車両が完全に停止した直後の上述したようなドライバーのブレーキ操作を、ドライバーの発進意思としてのブレーキ操作としての再始動条件として成立させてしまい、その結果、本来再始動するべきでなく、誤ったタイミングでエンジンが再始動してしまう、という問題が生じる。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、エンジンが誤ったタイミングで再始動することを防止することが出来る車両の自動停止制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明は、自動変速機を備えた車両において、車両停止時に所定の自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、その自動停止後、所定の再始動条件が成立するとエンジンを再始動させる車両の自動停止制御装置であって、所定の自動停止条件の少なくとも一つが車両停止時のブレーキの踏み込み操作であり、また、所定の再始動条件の少なくとも一つがブレーキの踏み込み操作であり、自動変速機のシフトレンジ位置を検出するシフトレンジ位置検出手段と、ブレーキの踏み込み操作を検出するブレーキ踏み込み操作検出手段と、車両停止時、シフトレンジ位置検出手段により検出されたシフトレンジ位置が非走行レンジ位置であるとき、車両停止開始から第1所定期間の間は、ブレーキ踏み込み操作検出手段によりブレーキ踏み込み操作が検出されてもエンジンの自動停止を禁止するエンジン自動停止禁止手段と、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、停車時のシフト位置が非走行レンジ位置であるとき、車両停止開始から第1所定期間の間は、ブレーキ踏み込み操作が検出されてもエンジンの自動停止が禁止される。従って、その第1期間の間、エンジンの再始動自体がなされず、ドライバーの停止意思としてのブレーキ操作を、発進意思としてのブレーキ操作として再始動条件として成立させることも防止される。その結果、エンジンが誤ったタイミングで再始動することを防止することが出来る。
【0010】
また、上記の目的を達成するために本発明は、自動変速機を備えた車両において、車両停止時に所定の自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、その自動停止後、所定の再始動条件が成立するとエンジンを再始動させる車両の自動停止制御装置であって、所定の再始動条件の少なくとも一つがブレーキの踏み込み操作であり、自動変速機のシフトレンジ位置を検出するシフトレンジ位置検出手段と、ブレーキの踏み込み操作を検出するブレーキ踏み込み操作検出手段と、車両停止時、シフトレンジ位置検出手段により検出されるシフト位置が非走行レンジ位置であり且つ所定の自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させると共に、車両停止開始から第2所定期間の間は、ブレーキ踏み込み操作検出手段によりブレーキ踏み込み操作が検出されてもエンジンの再始動を禁止するエンジン再始動禁止手段と、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、車両停止時、シフトレンジ位置検出手段により検出されるシフト位置が非走行レンジ位置であり且つ所定の自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させると共に、車両停止開始から第2所定期間の間は、ブレーキ踏み込み操作検出手段によりブレーキ踏み込み操作が検出されてもエンジンの再始動が禁止される。従って、その第2期間の間、エンジンの再始動が防止されると共に、ドライバーの停止意思としてのブレーキ操作が、発進意思としてのブレーキ操作としての再始動条件として成立されることが防止される。その結果、エンジンが誤ったタイミングで再始動することを防止することが出来る。
【0011】
本発明において、好ましくは、車両停止開始から第2所定期間の間、シフトレンジ位置検出手段によりシフト位置が非走行レンジ位置から走行レンジにシフトされたことが検出されたことを所定の再始動条件としてエンジンの再始動を許可する。
このように構成された本発明においては、エンジンの再始動が禁止される第2所定期間内であっても、ドライバーの発進要求として走行レンジへのシフトがあった場合に、エンジンの再始動性を確保することが出来る。
【発明の効果】
【0012】
本発明による車両の自動停止制御装置によれば、エンジンが誤ったタイミングで再始動することを防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態による車両の自動停止制御装置を備えたエンジンの概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態による車両の自動停止制御装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態による車両の自動停止制御装置により実行される第1制御例による制御フローを示すフローチャートである。
【図4】図3に示すフローチャートの制御内容の一例を示すタイムチャートである。
【図5】本発明の実施形態による車両の自動停止制御装置により実行される第2制御例による制御フローを示すフローチャートである。
【図6】図5に示すフローチャートの制御内容の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両の自動停止制御装置を説明する。
先ず、図1により、本発明の実施形態による車両の自動停止制御装置を備えたエンジンの概略構成を説明する。図1は本発明の実施形態による車両の自動停止制御装置を備えたエンジンの概略構成図である。本発明の実施形態による車両の自動停止制御装置は、走行レンジ(Dレンジ)及び非走行レンジ(Nレンジ)等を有する自動変速機(図示せず)を備える車両に適用される。
【0015】
先ず、図1に示すように、エンジン1は、燃焼室2aを形成するシリンダ2と、このシリンダ2内で往復運動するピストン4と、このピストン4に一端が連結されたコネクティングロッド6と、このコネクティングロッド6の他端が連結されたクランクシャフト8と、燃焼室2aに燃料を供給する燃料供給装置10とを有する。
【0016】
また、燃焼室2aに空気を供給する吸気系統には、吸気を浄化するエアクリーナ12と、このエアクリーナ12から吸気ポート20まで延びる吸気通路13とが設けられ、吸気通路13には、エアクリーナ12を介して吸入された空気の温度及び流量を検出する吸気温/流量センサ14と、吸入空気量を変化させる電子制御スロットルバルブ16と、このスロットルバルブ16の開度を検出するスロットルバルブセンサ18とが設けられている。これらの吸気系統を介して吸入された空気は、燃焼室2aの吸気開口に連通した吸気ポート20及びその吸気開口を開閉する吸気バルブ22を介して、燃焼室2a内に流入する。また、エンジン1は、燃焼室2a内に流入した空気に燃料を噴射することによって得られる混合気を燃焼させる点火プラグ23を有する。
【0017】
燃焼室2a内で燃焼された排気ガスは、燃焼室2aの排気開口に連通した排気ポート24及び排気開口を開閉する排気弁26を介して、エンジン1の排気系統に排出される。排気ガスを排気する排気系統には、リニアO2センサ28と、第1触媒30と、ラムダO2センサ32と、第2触媒34とが設けられている。
【0018】
また、エンジン1は、クランクシャフト8の回転角を検出するクランク角センサ36と、エンジンのシリンダブロックのウォータージャケットを流れるエンジン冷却水の温度を検出するエンジン水温センサ38とを有する。
【0019】
次に、図1に示すように、燃料供給装置10は、燃料を貯留する燃料タンク40と、この燃料タンク40内の燃料を圧送する低圧燃料ポンプ42と、この低圧燃料ポンプ42によって圧送された燃料を濾過する燃料フィルタ44と、低圧燃料ポンプによる加圧圧力を一定にする圧力レギュレータ46と、低圧燃料ポンプ42から圧送された燃料を加圧する高圧燃料ポンプ48と、高圧燃料ポンプ48によって加圧された燃料の圧力を検出する燃料圧力センサ50と、高圧燃料ポンプ48によって加圧された燃料を燃焼室2a内に噴射する燃料噴射弁であるインジェクタ52と、このインジェクタ52に供給される圧力が所定の圧力以上になったとき、加圧された燃料を高圧燃料ポンプ48の上流側に戻す第2燃料圧力調整手段であるリリーフ弁54とを有する。
【0020】
次に、図2により、本発明の実施形態による車両の自動停止制御装置を説明する。図4は本発明の実施形態による車両の自動停止制御装置を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態によるエンジン1は、車両及びエンジン1が備える各センサの検出信号に基づいてエンジン1を制御するエンジン制御ユニット(ECU)80を有する。エンジン制御ユニット80は、具体的には、マイクロプロセッサ、メモリ及びそれらを作動させるプログラム等(以上、図示せず)から構成され、エンジン自動停止制御手段82を有する。
【0021】
車両は、車両の速度を車速パルスにより検出する車速センサ60、ドライバーによるシフト操作による自動変速機のシフトポジションを検出するシフトポジションセンサ62、ドライバーによるステアリング操作によるステアリング舵角を検出するステアリング舵角センサ64、ブレーキ操作により得られるブレーキ液圧を検出するブレーキ液圧センサ70を備え、これらの検出値がエンジン制御ユニット80に入力される。
【0022】
エンジン制御ユニット80は、エンジン自動停止制御手段82により、これらの検出値に基づいて、主に、インジェクタ52、点火プラグ23を制御し、エンジン1の作動継続、自動停止、再始動を制御するよう構成されている。
【0023】
次に、図3及び図4により、本発明の実施形態による車両の自動停止制御装置による制御内容の第1の実施例を説明する。図3は本発明の実施形態による車両の自動停止制御装置により実行される第1制御例による制御フローを示すフローチャートであり、図4は、図3に示すフローチャートの制御内容の一例を示すタイムチャートである。図3において、Sは、各ステップを示す。
【0024】
先ず、図3に示すように、S1において、車速センサ60により検出された車速パルスにより車両が停車したか否かを判定する。車両が停車していない場合は、S2に進み、エンジンの作動を継続する。
S1において、車両が停車していると判定された場合には、S3に進み、シフトポジションセンサ62により検出されたシフトポジションがDレンジであるか否かを判定する。Dレンジであると判定された場合には、S4に進み、エンジン自動停止作動条件が成立しているか否かを判定する。このDレンジにおけるエンジン自動停止作動条件には、外気温度、エンジン水温、バッテリー状態などの他、所定のブレーキ踏力が含まれる。
【0025】
S1において、車両が停車していると判定された時(車両が停止した時)、図4のt0時点で示すように、後述する安定判定待ちタイマーを作動(カウント開始)させる。
【0026】
次に、S4において、エンジン自動停止作動条件が成立していると判定されなかった場合には、S5に進み、エンジンをアイドリング待機させる。一方、S4において、エンジン自動停止作動条件が成立していると判定された場合には、S6に進み、エンジンを自動停止させる。
【0027】
エンジン自動停止後、S7に進み、S3と同様にシフトポジションがDレンジであるか否かを判定する。Dレンジであると判定された場合には、S8に進み、S8において、ブレーキスイッチ66などにより検出された値により、ドライバーがブレーキペダルを離した操作を行ったか否かを判定する。ブレーキペダルを離した操作を行ったと判定された場合には、S9に進み、インジェクタ52、点火プラグ23などに指令を送りエンジンを再始動させる。S8において、ブレーキペダルを離した操作を行ったと判定されなかった場合には、ドライバーがブレーキを踏んでおり、発進する意思がないものとして、後述するS19に進み、エンジンを再始動しない。
【0028】
次に、S7において、Dレンジであると判定されなかった場合、後述するS18に進み、ドライバーがブレーキを踏んでいるか否かを判定し、ブレーキを踏んでいれば、発進する意思がないものとして、S18に進み、エンジンを再始動しない。
【0029】
ここで、S3の判定ステップに戻る。
S3において、Dレンジであると判定されなかった場合は、本実施形態では、Nレンジである場合である。S3において、Nレンジであると判定された場合、(図4の例では、t0時点でのシフト位置がNレンジの場合である。)、S10に進み、ドライバーの運転操作に変化がないか否かを判定する。ドライバーの運転操作は、ブレーキ操作やステアリング操作などである。ステアリング操作などが行われたと判定された場合、S11に進み、安定判定待ちタイマーをリセットする。
【0030】
この安定判定タイマーは、Nレンジにおいては、ドライバーの停車意思が明確なため、エンジンの自動停止を優先させるのが基本であるが、本実施形態では、主に、車両の実際の停車時に対し、ドライバーが感じる車両の停車時の感覚が遅れることに伴い、実際の車両停車直後のドライバーのブレーキ操作(何度かブレーキをオン/オフしたり、ブレーキ踏力の増加減を何度か繰り返すようなブレーキ操作)による誤ったエンジンの再始動を防止するために設定されるものである。このように安定判定待ちタイマーは、ブレーキ操作の安定待ちを計るためともいえるタイマーであるので、上述したようにS10で、ブレーキ操作入力毎にリセットされるようになっている。この安定判定タイマーの期間T1(図4ではリセットされた時間分も含む)は、初期設定がおよそ1秒であり、車両停車後のドライバーの上述したような感覚遅れの時間よりは長く設定される。そして、タイマー時間はブレーキ操作がなければ一定であるが、停車直後のブレーキ操作がある度にリセットされ、それに応じて、タイマー時間が延びる。
【0031】
S11において、安定判定待ちタイマーをリセットした後、S12に進み、エンジンをアイドリング待機させる。即ち、安定判定待ちタイマーの機能により、エンジンの自動停止が不許可とされる。
S10において、ドライバーの運転操作に変化がないと判定された場合は、S13に進み、安定判定タイマーを減算し、S14において、安定判定タイマーが0になったか否かを判定する。安定判定タイマーが0になっていなければ、上述したように、S12のステップにより、エンジンの自動停止が不許可とされる。
【0032】
S14において、安定判定タイマーが0になったと判定された場合、S15に進み、エンジン自動停止作動条件が成立しているか否かを判定する。本実施形態において、このNレンジにおけるエンジン自動停止作動条件には、外気温度、エンジン水温、バッテリー状態などが含まれ、ドライバーによるブレーキペダルのブレーキ踏力は含まれない。Nレンジにおいては、ドライバーによっては、サイドブレーキをひいて車両停止している場合があるからである。なお、ドライバーによるブレーキペダルのブレーキ踏力をエンジン自動停止作動条件に含むようにしても良い。
【0033】
図4の例に示すように、安定判定タイマーが0になったt2の時点で、エンジン自動停止が不許可から許可に変更される。
【0034】
S15において、エンジン自動停止作動条件が成立していると判定されなかった場合には、S16に進み、エンジンをアイドリング待機させる。
一方、S15において、エンジン自動停止作動条件が成立していると判定された場合には、S17に進み、エンジンを自動停止させる。このように、第1の実施例では、安定判定タイマーが0になった時点でエンジン自動停止が許可され、エンジン自動停止作動条件が成立した時点でエンジン自動停止が実行される。つまり、図4に示すように、車両停止後、少なくとも期間T1の間、エンジンの自動停止が禁止される。
【0035】
S17においてエンジンが自動停止された後、S18に進み、ブレーキ油圧センサ70により検出された値により、ドライバーがブレーキペダルを踏んでいるか否かを判定する。なお、ドライバーによるブレーキ操作は、ブレーキ油圧センサ70の代わりに、ドライバーによるブレーキペダルの操作のオン/オフを検出するブレーキスイッチ、ドライバーによるブレーキ操作の踏み込み度合いを検出するブレーキペダルストロークセンサにより検出するようにしても良い。S18において、ブレーキを踏んでいると判定された場合には、S19に進み、ドライバーの発進意思が無いものとして、エンジンの再始動を不許可とし、エンジンの再始動の指示待機を実行する。
【0036】
一方、S18において、ドライバーがブレーキペダルを踏んでいないと判定された場合には、S20に進み、ブレーキ油圧センサ70により検出された値により、ドライバーがブレーキを踏み込んだか否かを判定する。
【0037】
S20において、ブレーキを踏み込んだと判定された場合、S21に進み、エンジンの再始動を許可し、インジェクタ52、点火プラグ23などに指令を送りエンジンを再始動させる。
一方、S20において、ブレーキを踏み込んでいないと判定された場合、S22に進み、エンジンの再始動を不許可とし、エンジンの再始動の指示待機を実行する。この第1の例では、Nレンジで停車している場合、先ず、ブレーキを踏み込んでから、Dレンジにシフトして発進することが安全であるとの考えに基づき、S20、S22のステップを設けている。
【0038】
次に、図5及び図6により、本発明の実施形態による車両の自動停止制御装置による制御内容の第2の実施例を説明する。図5は本発明の実施形態による車両の自動停止制御装置により実行される第2制御例による制御フローを示すフローチャートであり、図6は、図5に示すフローチャートの制御内容の一例を示すタイムチャートである。図5において、Sは、各ステップを示す。
【0039】
先ず、図5に示すように、S101において、車速センサ60により検出された車速パルスにより車両が停車したか否かを判定する。車両が停車していない場合は、S102に進み、エンジンの作動を継続する。
S101において、車両が停車していると判定された場合には、S103に進み、シフトポジションセンサ62により検出されたシフトポジションがDレンジであるか否かを判定する。Dレンジであると判定された場合には、S104に進み、図3のS4と同様のエンジン自動停止作動条件が成立しているか否かを判定する。
【0040】
次に、S104において、エンジン自動停止作動条件が成立していると判定されなかった場合には、S105に進み、エンジンをアイドリング待機させる。一方、S104において、エンジン自動停止作動条件が成立していると判定された場合には、S106に進み、エンジンを自動停止させる。
【0041】
エンジン自動停止後、S107に進み、S103と同様にシフトポジションがDレンジであるか否かを判定する。Dレンジであると判定された場合には、S108に進み、S108において、ブレーキスイッチ66などにより検出された値により、ドライバーがブレーキペダルを離した操作を行ったか否かを判定する。ブレーキペダルを離した操作を行ったと判定された場合には、S109に進み、インジェクタ52、点火プラグ23などに指令を送りエンジンを再始動させる。S108において、ブレーキペダルを離した操作を行ったと判定されなかった場合には、ドライバーがブレーキを踏んでおり、発進する意思がないものとして、後述するS115に進み、エンジンを再始動しない。
【0042】
次に、S107において、Dレンジであると判定された場合、後述するS114に進み、ドライバーがブレーキを踏んでいるか否かを判定し、ブレーキを踏んでいれば、発進する意思がないものとして、S115に進み、エンジンを再始動しない。
【0043】
ここで、S103の判定ステップに戻る。
S103において、Dレンジであると判定されなかった場合は、本実施形態では、Nレンジである場合である。S103において、Nレンジであると判定された場合、(図6の例では、t0時点でのシフト位置がNレンジの場合である。)、S110に進み、エンジン自動停止作動条件が成立しているか否かを判定する。本実施形態において、このNレンジにおけるエンジン自動停止作動条件には、外気温度、エンジン水温、バッテリー状態などが含まれ、ドライバーによるブレーキペダルのブレーキ踏力は含まれない。Nレンジにおいては、ドライバーによっては、サイドブレーキをひいて車両停止している場合があるからである。なお、ドライバーによるブレーキペダルのブレーキ踏力をエンジン自動停止作動条件に含むようにしても良い。
【0044】
S110において、エンジン自動停止作動条件が成立していると判定されなかった場合には、S111に進み、エンジンをアイドリング待機させる。一方、S110において、エンジン自動停止作動条件が成立していると判定された場合には、S112に進み、エンジンを自動停止させる。
【0045】
次に、S113において、エンジンが自動停止された時点から、エンジン停止後タイマーが作動され、減算が開始される。図6の例では、t0の時点において車速が0となると共にエンジン自動停止作動条件が成立してエンジンが自動停止し、t0の時点からエンジン停止後タイマーの減算が開始されている。なお、この図6の例によらず、車速が0となった後、所定の時間が経過してから自動停止作動条件が成立してエンジンが自動停止し、その自動停止した時点からタイマーの減算が開始される場合も当然にある。
【0046】
次に、タイマー減算中において、S114に進み、ブレーキ油圧センサ70により検出された値により、ドライバーがブレーキペダルを踏んでいるか否かを判定する。S114において、ブレーキを踏んでいると判定された場合には、S115に進み、ドライバーの発進意思が無いものとして、エンジン再始動不許可とし、エンジンの再始動の指示待機を実行する。
【0047】
一方、S114において、ドライバーがブレーキペダルを踏んでいないと判定された場合には、S116に進み、ブレーキ油圧センサ70により検出された値により、ドライバーがブレーキを踏み込んだか否かを判定する。
【0048】
S116において、ブレーキを踏み込んだと判定された場合、S117に進み、減算中のエンジン停止後タイマーが0になったか否かを判定する。エンジン停止後タイマーが0になった場合、S118に進み、エンジンの再始動が許可され、インジェクタ52、点火プラグ23などに指令を送りエンジンを再始動させる。
【0049】
このように、エンジン停止後タイマーは、車両停止後、エンジン自動停止条件が成立すれば、ドライバーが何度かブレーキをオン/オフしたり、ブレーキ踏力の増加減を何度か繰り返すようなブレーキ操作をしても、エンジンを自動停止させてしまい、その一方、そのようなブレーキ操作による誤ったエンジンの再始動を防止するために、エンジン停止後の所定期間T2(図6参照)はエンジンの再始動を禁止するものである。このエンジン停止後タイマーの期間T2(図6参照)は、およそ2秒に設定され、その期間T2は、その期間T2の終了時点が、上述したようなドライバーの車両停車後の感覚遅れによるブレーキ操作が行われる時間より長くなるように設定される。期間T2が終了した時点で、エンジン再始動条件が成立すれば、エンジンの再始動が実行される。
【0050】
次に、S116において、ブレーキを踏み込んでいないと判定された場合、或いは、S117において、タイマーが0になっていない減算中である場合には、S119に進み、シフトポジションセンサ62によるシフト位置の検出により、ドライバーによるシフト操作がなされたか否かが判定される。具体的には、NレンジからDレンジにシフト操作がなされたか否かが判定される。
シフト操作がなされたと判定された場合には、S118に進み、ドライバーに発進意思があるものとして、エンジンを再始動させる。一方、シフト操作がなされていない、即ち、Nレンジのままであると判定された場合には、S120に進み、エンジン再始動を不許可とし、エンジンの再始動の指示待機を実行する。
【0051】
次に、本発明の実施形態による車両の自動停止制御装置の効果を説明する。
先ず、第1の実施例によれば、停車時のシフト位置がNレンジであるとき、車両停止開始から期間T1の間、ドライバーが何度かブレーキをオン/オフしたり、ブレーキ踏力の増加減を何度か繰り返すようなブレーキ踏み込み操作が検出されてもエンジンの自動停止が禁止される。従って、その期間T1の間、エンジンの再始動自体がなされず、ドライバーの停止意思としてのブレーキ操作を、発進意思としてのブレーキ操作として再始動条件として成立させることも防止される。従って、エンジンが誤ったタイミングで再始動することを防止することが出来る。
【0052】
次に、第2の実施例によれば、車両停止時、シフト位置がNレンジであり且つエンジン自動停止作動条件が成立するとエンジンを自動停止させると共に、エンジン停止から期間T2の間、即ち、車両停止時から少なくともT2より長い期間は、ブレーキ踏み込み操作が検出されてもエンジンの再始動が禁止される。従って、そのような期間の間、エンジンの再始動が防止されると共に、ドライバーの停止意思としてのブレーキ操作が、発進意思としてのブレーキ操作としての再始動条件として成立されることが防止される。
これらの結果、第1及び第2の実施例によれば、エンジンが誤ったタイミングで再始動することを防止することが出来る。
【0053】
さらに、エンジン停止から期間T2の間、即ち、車両停止時から少なくともT2より長い期間は、シフト位置がNレンジからDレンジにシフトされたことが検出されたとき、エンジンの再始動が禁止されているエンジン停止後タイマー減算中であっても、ドライバーの発進要求としてDレンジへのシフトがあった場合に、エンジンの再始動性を確保することが出来る。
【符号の説明】
【0054】
1 エンジン
23 点火プラグ
52 インジェクタ
80 エンジン制御ユニット
82 エンジン自動停止制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動変速機を備えた車両において、車両停止時に所定の自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、その自動停止後、所定の再始動条件が成立するとエンジンを再始動させる車両の自動停止制御装置であって、
上記所定の自動停止条件の少なくとも一つが車両停止時のブレーキの踏み込み操作であり、また、上記所定の再始動条件の少なくとも一つがブレーキの踏み込み操作であり、
上記自動変速機のシフトレンジ位置を検出するシフトレンジ位置検出手段と、
ブレーキの踏み込み操作を検出するブレーキ踏み込み操作検出手段と、
車両停止時、上記シフトレンジ位置検出手段により検出されたシフトレンジ位置が非走行レンジ位置であるとき、車両停止開始から第1所定期間の間は、上記ブレーキ踏み込み操作検出手段によりブレーキ踏み込み操作が検出されてもエンジンの自動停止を禁止するエンジン自動停止禁止手段と、を有することを特徴とする車両の自動停止制御装置。
【請求項2】
自動変速機を備えた車両において、車両停止時に所定の自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、その自動停止後、所定の再始動条件が成立するとエンジンを再始動させる車両の自動停止制御装置であって、
上記所定の再始動条件の少なくとも一つがブレーキの踏み込み操作であり、
上記自動変速機のシフトレンジ位置を検出するシフトレンジ位置検出手段と、
ブレーキの踏み込み操作を検出するブレーキ踏み込み操作検出手段と、
車両停止時、上記シフトレンジ位置検出手段により検出されるシフト位置が非走行レンジ位置であり且つ所定の自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させると共に、車両停止開始から第2所定期間の間は、上記ブレーキ踏み込み操作検出手段によりブレーキ踏み込み操作が検出されてもエンジンの再始動を禁止するエンジン再始動禁止手段と、を有することを特徴とする車両の自動停止制御装置。
【請求項3】
上記車両停止開始から第2所定期間の間、上記シフトレンジ位置検出手段によりシフト位置が非走行レンジ位置から走行レンジにシフトされたことが検出されたことを上記所定の再始動条件としてエンジンの再始動を許可する請求項2に記載の車両の自動停止制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−52471(P2012−52471A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195850(P2010−195850)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】