説明

車両の荷室構造

【課題】カーペット仕様とラゲッジボックス仕様とでサイドトリムを共通化することができて、部品点数を少なくすることができ、サイドトリムを成形するための型費を低廉化できる車両の荷室構造を提供する。
【解決手段】底面部11と、この底面部11の周部から立ち上がる縦壁12とを備えたラゲッジボックス10を車両の荷室に収容し、ラゲッジボックス10の上側開口9を覆うリッド20を設けてある車両の荷室構造であって、ラゲッジボックス10を荷室のフロアパネル6に載置し、ラゲッジボックス10の縦壁12のうち車両前方側の前壁部14の上面部13に上側開放の凹部18を設け、車体に取付けられる部品4に、凹部18に対する入り込み部53を備えたブラケット50を設けて、入り込み部53を凹部18に入り込ませてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
底面部と、この底面部の周部から立ち上がる縦壁とを備えたラゲッジボックスを車両の荷室に収容し、前記ラゲッジボックスの上側開口を覆うリッドを設けてある車両の荷室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の荷室構造では、特許文献1に開示されているように、サイドトリムに荷室内に突出する棚部を設け、この棚部に、ラゲッジボックスの上端のフランジとリッドの周縁部とを載置してあった。
【特許文献1】特開2000−108793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の車両の荷室構造は、前記ラゲッジボックスの上側開口をリッドで覆ったラゲッジボックス仕様と、ラゲッジボックス及びリッドを省いてフロアパネルにカーペットを敷いたカーペット仕様との二つの仕様に対応することができる。そして、両仕様の車両がそれぞれ製造され、カーペット仕様の車両は廉価な仕様の車両として、ラゲッジボックス仕様の車両はそれよりも少し価格が高い仕様の車両として販売されている。
【0004】
ところが、上記従来の構造によれば、サイドトリムの棚部に、ラゲッジボックスの上端のフランジとリッドの周縁部とを載置していたために、カーペット仕様の車両では、不要な棚部が荷室に張出していて荷室が狭くなっていた。
【0005】
カーペット仕様で荷室を広くする手段として、棚部を備えないカーペット仕様専用のサイドトリムを製作することもできるが、そうすると、両仕様でサイドトリムを共通化することができず、部品点数の増加やサイドトリムを成形するための型費の増大を招来する。
【0006】
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、ラゲッジボックス仕様とカーペット仕様とでサイドトリムを共通化することができて、部品点数を少なくすることができ、サイドトリムを成形するための型費を低廉化できる車両の荷室構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、
底面部と、この底面部の周部から立ち上がる縦壁とを備えたラゲッジボックスを車両の荷室に収容し、前記ラゲッジボックスの上側開口を覆うリッドを設けてある車両の荷室構造であって、
前記ラゲッジボックスを前記荷室のフロアパネルに載置し、前記ラゲッジボックスの縦壁のうち車両前方側の前壁部の上面部に上側開放の凹部を設け、車体に取付けられる部品に、前記凹部に対する入り込み部を備えたブラケットを設けて、前記入り込み部を前記凹部に入り込ませてある点にある。(請求項1)
【0008】
この構成によれば、前記ブラケットの入り込み部を、前記前壁部の上面部の凹部に入り込ませることで、ラゲッジボックスを位置固定することができる。また、前記ブラケットを車体に取付けられる部品に設けてあるから、ラゲッジボックス仕様とカーペット仕様とでサイドトリムを共通化することができて、部品点数を少なくすることができる。さらに、両仕様でサイドトリムの形状を異ならせる必要がなく、サイドトリムを成形するための型費を低廉化することができる。そして、ラゲッジボックスやリッドの支持用の棚部がサイドトリムに設けられていないから、カーペット仕様でも荷物の収納空間が車両の左右方向で狭くなることがない。(請求項1)
【0009】
本発明において、
前記凹部の底面に、前記凹部の内周面との間に溝部を形成する突出部を突設し、
前記入り込み部に、下方に突出する第1係合部を設け、この第1係合部を前記溝部に係合させてあると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0010】
前記第1係合部を前記溝部に係合させてあるから、簡単な構造でありながら、ラゲッジボックスをより確実に位置固定することができる。そして、第1係合部の係合対象が溝部であるから、係合対象が係合孔である場合よりも、溝部の壁面で第1係合部を係合案内しやすくて、係合操作をより簡単に行うことができる。(請求項2)
【0011】
本発明において、
前記第1係合部は、前記入り込み部の車両後方側の端部に形成されて、車両の左右方向に延びている点にある。(請求項3)
【0012】
前記溝部に係合する第1係合部は、前記入り込み部の車両後方側の端部に形成されて、車両の左右方向に延びているから、係合位置を確認しやすくて、第1係合部を溝部に係合しやすくすることができる。また、第1係合部が車両の左右方向に延びているから、ラゲッジボックスを車両前後方向で安定して位置決めすることができる。(請求項3)
【0013】
本発明において、
前記凹部が形成された前壁部部分を車両後方側に膨出させて膨出部を形成し、
前記凹部と前記前壁部の非膨出部とを車両前後方向でほぼ同一位置に配置してあると、次の作用を奏することができる。(請求項4)
【0014】
前記膨出部がビードと同様な機能を発揮して前壁部の剛性を強くすることができる。そして、車両前後方向で前記凹部と前壁部の非膨出部とを同一位置に配置してあるから、非膨出部を凹部よりも車両後方側に配置した構造に比べると、荷室の収納空間を大きくすることができる。
【0015】
ラゲッジボックスをフロアパネルに載置する場合、ラゲッジボックスを前下がり傾斜姿勢にして、ラゲッジボックスの前記前壁部の凹部をブラケットの入り込み部の下方に位置させるとともに、前記前壁部の下端部をフロアパネルに載置し、ラゲッジボックスの車両後方側の端部を下ろしながら前記入り込み部を前記凹部に入り込ませる。本発明の上記構成によれば、車両前後方向で前記凹部と前壁部の非膨出部とを同一位置に配置してあるから、ラゲッジボックスを前下がり傾斜姿勢にしたときに、凹部の車両後方側の内周面を比較的高い位置に配置することができ、前記入り込み部の車両後方側の端部を、凹部の車両後方側の内周面に当接させやすくなって、前記入り込み部を凹部に入り込ませやすくすることができる。(請求項4)
【0016】
本発明において、
前記車体に取付けられる部品は、前記車体に着脱自在に取付けられるシートフレームであリ、前記シートフレームから前記ブラケットが車両後方側に延びていると、次の作用を奏することができる。(請求項5)
【0017】
シートフレームは荷室の近くの車両前方側に配置されており、ラゲッジボックスの前壁部とシートフレームとの間隔が短いことから、ブラケットをコンパクト化できて簡素な構造に構成することができる。また、ラゲッジボックスの前壁部をブラケットを介してシートフレームで強固に支持することができ、ラゲッジボックスのガタつきを抑制しやすくすることができる。(請求項5)
【0018】
本発明において、
前記リッドに車両の左右方向に沿う薄肉ヒンジ部を設けて、前記リッドを前記薄肉ヒンジ部周りに折曲自在に構成するとともに、前記薄肉ヒンジ部よりも車両前方側のリッド部を前記ブラケットに取付け固定し、前記薄肉ヒンジ部よりも車両後方側のリッド部を前記ラゲッジボックスの上面部に載置してあると、次の作用を奏することができる。(請求項6)
【0019】
前記薄肉ヒンジ部よりも車両前方側のリッド部をブラケットに取付け固定し、薄肉ヒンジ部よりも車両後方側のリッド部をラゲッジボックスの上面部に載置してあるから、薄肉ヒンジ部よりも車両後方側のリッド部を薄肉ヒンジ部周りに上方に揺動させることで、ラゲッジボックス内に荷物を出し入れすることや、ラゲッジボックスをフロアパネル上に出し入れすることができる。
例えば前記車体に取付けられる部品が、前記車体に着脱自在に取付けられるシートフレームであリ、前記シートフレームから前記ブラケットが車両後方側に延びている構成では、前記薄肉ヒンジ部よりも車両前方側のリッド部を前記ブラケットに取付け固定することで、シートフレームが支持するシートとリッドとの位置精度が向上し、前記シートとリッドに隙間が生じるといった精度不良を回避することができる。(請求項6)
【0020】
本発明において、
前記ラゲッジボックスの縦壁のうち車両前後方向に沿う側壁部の車両後方側の端部に第2係合部を設け、
前記第2係合部に対する被係合部を備えたホルダを前記荷室のサイドトリムに着脱自在に取付け、
前記第2係合部を前記被係合部に上方から係合させてあると、次の作用を奏することができる。(請求項7)
【0021】
前記第2係合部を前記ホルダの被係合部に上方から係合させてあるから、ラゲッジボックスの車両後方側の端部をフロアパネルに対してより確実に位置固定することができ、ラゲッジボックスのガタつきを防止することができる。また、カーペット仕様の車両ではホルダを設けなければよく、サイドトリムの構造を、カーペット仕様の車両とラゲッジボックス仕様の車両とで共通化するのに支障が生じることがない。(請求項7)
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、
カーペット仕様とラゲッジボックス仕様とでサイドトリムを共通化することができて、部品点数を少なくすることができ、サイドトリムを成形するための型費を低廉化できる車両の荷室構造を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1に自動車の後部車体の分解斜視図を示してある。符号1はシートクッション、2はシートバック、3はヘッドレスト、4は、シートクッション1の後端部の後方でシートクッション1とシートバック2を支持する金属製のシートフレームである。これらで3人掛けのリヤシート5を構成している。リヤシート5は車体とは別個に製作され、製作後のリヤシート5がフロアパネル6に載置されて着脱自在に取付けられる。
【0024】
シートフレーム4は自動車の左右方向D(以下、「車両の左右方向D」)に沿う丸パイプ状の部品であり、車体に着脱自在に取付けられる部品に相当する。前記シートバック2は起立姿勢と前方に倒伏した姿勢とに切換え自在になっている。フロアパネル6には、スペアタイヤを横置きにして収容するタイヤ収容凹部7を形成してある。そしてリヤシート5の後方に荷室100を形成してある。次に、この荷室100の構造について説明する。
【0025】
図1,図2に示すように自動車の荷室100に、車両の左右方向Dに長い底面部11と、この底面部11の全周部から立ち上がる縦壁12とを備えた上側開放の樹脂製のラゲッジボックス10を収容してフロアパネル6に載置してある。前記底面部11と縦壁12でラゲッジボックス10の荷物の収納空間8を形成している。そして、ラゲッジボックス10の上側開口9を上方から覆う樹脂製のリッド20を設けてある。
【0026】
[ラゲッジボックス10の構造]
図1,図2に示すように、ラゲッジボックス10の縦壁12は、車両の左右方向Dに沿う車両前方側の前壁部14と、この前壁部14の左右両端部から車両後方側に延びて車両前後方向に沿う左右一対の側壁部15と、両側壁部15の後端部の間に掛け渡された後壁部16とから成る。後壁部16の左右両端部16Aは、車両後方側に凸の緩やかな円弧状に形成され、後壁部16の左右中央部には、ラゲッジボックス10の着脱時に使用する手掛け用の穴35が形成されている。前壁部14と側壁部15と後壁部16のいずれも上端部側ほどラゲッジボックス10の径方向外方側(車両前後方向外方側及び車両の左右外方側)に位置するように傾斜させて前記縦壁12を上広がり状にしてある(図5参照)。縦壁12の上端に形成されている上面部13は前記径方向外方側にフランジ状に張り出している。これにより、上面部13の面積を大きくしてある。
【0027】
ラゲッジボックス10の底面部11には複数の立ち上がり部17を立設してある。そして、前記前壁部14の上面部13に、上側及び車両前方側Frが開放した左右一対の凹部18を設けてある。詳しくは、前記凹部18が形成された前壁部部分を、自動車の後方側に膨出させて左右一対の膨出部21を形成し、車両前後方向で凹部18と前壁部14の非膨出部22とをほぼ同一位置に配置してある。膨出部21は前壁部14の上端部から下端部にわたって形成されている。左右一対の膨出部21は側壁部15の前端部の近傍に位置する。
【0028】
図4(a),図4(b),図5にも示すように、前記膨出部21は平面視長方形状であり、膨出部21の上面部よりも下側の部分を、車両前方側Frが開放の横断面コの字状に形成してある。つまり、膨出部21の上面部13の下側を車両後方側に凹ませてある。前記凹部18は上方及び車両前方側Frが開放の台座状に形成されている。また、前記凹部18の底面19に、凹部18の内周面18Nとの間に溝部23を形成する突出部32を突設してある。突出部32は、自動車の左右方向から見て上窄まりに形成され、溝部23は前記左右方向から見て上広がりに形成されている。突出部32と溝部23は車両の左右方向Dに延びている。前記底面19を備える凹部18の底壁は前下り傾斜姿勢になっており、この底壁の前端からフランジ36が下方に延出している。
【0029】
図1,図6に示すように、前記左右一対の側壁部15の車両後方側の端部に、左右外方側に膨出する断面コの字状の縦長膨出部24を形成し、前記底面部11よりも高い位置に位置する膨出部24の下面24Mから下方に突出する第2係合部25を設け、この第2係合部25の下端部25Kを膨出させて縦断面半円形状(自動車の左右中心側が直線状、左右外方側が円弧状)に形成してある。また、自動車の荷室100を形成する左右一対のサイドトリム40の下端部を自動車の左右中心側に折曲して折曲部40Aを形成し、この折曲部40Aに、前記第2係合部25に対する係合凹部42(被係合部)を備えたホルダ43を着脱自在に取付けてある。
【0030】
つまり、前記折曲部40Aにホルダ取付け孔41を貫通形成し、ホルダ43の下端部に設けた取付け軸44を、ホルダ取付け孔41に着脱自在に上方から内嵌してある。前記係合凹部42は、上側開放の縦断面半円形状(自動車の左右中心側が直線状、左右外方側が円弧状)に形成されており、この係合凹部42に、ラゲッジボックス10の第2係合部25を上方から取り外し自在に係合(嵌合)してある。
【0031】
[ブラケット50の構造]
図1,図4(a),図4(b),図5に示すように、前記シートフレーム4から車両後方側に延びる板金製の左右一対のブラケット50をシートフレーム4に設けてある。このブラケット50は、シートフレーム4から後ろ斜め上方に立ち上がる断面コの字状のアーム部51と、このアーム部51の車両後方側の端部から車両後方側に延びる水平な上壁部52とから成る。上壁部52は平面視で舌形状に形成され、縦断面下側開放のコの字状に形成されている。上壁部52の上面は、ラゲッジボックス10の上面部13とほぼ同じ高さに位置している。
【0032】
前記アーム部51の車両前方側Frの端部はシートフレーム4に溶接固着されている。そして、前記凹部18に対する入り込み部53をブラケット50の上壁部52に設けてある。この入り込み部53は上壁部52の車両後方側の後半部から成る。また、前記入り込み部53を、ラゲッジボックス10の凹部18よりも幅狭に設定し、入り込み部53の車両後方側の端部に、下方に突出する断面円弧状の第1係合部31を設けてある。
【0033】
すなわち、前記入り込み部53の周部を下方にプレス加工して、下方から見てコの字形の断面円弧状の凸部39を形成し(図4(a),図4(b),図5参照)、コの字形の凸部39のうち、車両の左右方向Dに延びる凸部部分で前記第1係合部31を構成してある。そして、前記上壁部52の入り込み部53を上方から凹部18に相対的に入り込ませ、前記第1係合部31を溝部23に入り込ませて係合させてある。実際には、ラゲッジボックス10をフロアパネル6に載置するよりも前に、シートフレーム4が車体に固定されていて前記上壁部52が位置固定状態にあるので、ラゲッジボックス10の凹部18を前記上壁部52に対して組付け操作して、上壁部52の入り込み部53が上方から凹部18に入り込むようにすることになる。
上記の係合により、車両前後方向及び上下方向への凹部18の位置変更を阻止してある。つまり、ラゲッジボックス10をフロアパネル6とブラケット50とで挟み込んで上下方向の位置変更を規制する。
また、前記コの字形の凸部39のうち、前記第1係合部31以外の凸部部分(車両前後方向に延びる左右一対の凸部部分)で、車両の左右方向Dへの凹部18の位置変更を阻止してある。このように、フロアパネル6に載置されたラゲッジボックス10の車両前後方向・左右方向・上下方向の位置変更をブラケット50で阻止して、ラゲッジボックス10を位置固定してある。
【0034】
[リッド20の構造]
図3(a),図3(b),図5に示すように、リッド20の車両前方側の前半部に、車両の左右方向Dに沿う前後一対の薄肉ヒンジ部27F、27Rを設けて、リッド20を薄肉ヒンジ部27F、27R周りに折曲自在に構成してある。そして、前後一対の薄肉ヒンジ部27F、27R間の中間リッド部20B(薄肉ヒンジ部よりも車両前方側のリッド部に相当)を、前記凹部18の上方に配置したブラケット50の上壁部52にクリップ29で取付け固定し、中間リッド部20Bよりも車両前方側の第1リッド部20Aをシートバック2の下端部の背面に、薄肉ヒンジ部27Fの弾性により当接させ、中間リッド部20Bよりも車両後方側の第2リッド部20C(後ろ側の薄肉ヒンジ部27Rよりも車両後方側の第2リッド部20C)をラゲッジボックス10の縦壁12の上面部13に載置してある。第2リッド部20Cの車両後方側の端部には凸形又は凹形の左右一対の面ファスナ33を設け、この面ファスナ33をラゲッジボックス10の後壁部16に設けた凹形又は凸形の左右一対の面ファスナ34と係合するようして、閉じ状態のリッド20のガタつきを防止してある。
【0035】
前記中間リッド部20Bの上壁部52への取付け構造について説明すると、上壁部52の入り込み部53に形成した第1貫通孔61に下方からフランジ付きの金属製のピン60を貫通させて溶接固着してある。そして、上壁部52の入り込み部53から上方に突出するピン60を、中間リッド部20Bに形成した第2貫通孔62に間隔を空けて下方から挿入し、クリップ29の筒状の軸部29Aを第2貫通孔62の内周面とピン60の外周面との間に上方から挿入してピン60に外嵌(密嵌)するとともに、クリップ29の上端部のフランジ29Bを中間リッド部20Bの上面に圧接させてある。
このように、リッド20を、ラゲッジボックス10への固定ではなく、車体に位置決めされて取付けられる部品に取付けるので、比較的大物部品であるリッド20の車体への位置決めが容易となる。
【0036】
上記の構造により、第2リッド部20Cでラゲッジボックス10の上側開口9を上方から覆った閉塞状態と、ラゲッジボックス10の上側開口9を開放した開放状態とに切換え自在に構成してある。図3(a),図3(b)に示すように、第2リッド部20Cの右側後端部にストラップ45を設け、このストラップ45を取り外し自在に係止させるL字形の係止部46をサイドトリム40に設けてある。前記係止部46は薄肉ヒンジ部27F、27Rの上方に位置し、揺動開放した第2リッド部20C側のストラップ45を係止部46に係合させて、第2リッド部20Cの開放状態を維持できるようにしてある。
【0037】
前述のように、前記第1リッド部20Aをシートバック2の下端部の背面に取付け固定することで、シートバック2を前方に倒伏させて、シートバック2の背面2Hとリッド20でフラットな面を形成した状態と、シートバック2を起立させた起立状態とに切換え自在に構成してある。前記第1リッド部20Aは、シートバック2の背面2Hとラゲッジボックス10の間の空間の上方を覆う。
【0038】
[荷室100の使用の態様]
上記構造の車両の荷室構造の使用の態様は次の通りである。
(1) シートバック2を起立させた使用状態
ラゲッジボックス10はフロアパネル6に載置し、ラゲッジボックス10の前壁部14の凹部18にブラケット50の入り込み部53が入り込んで、入り込み部53の第1係合部31が、凹部18の溝部23に上方から係合している。リッド20の第2リッド部20Cはラゲッジボックス10の縦壁12の上面部13に載置してある。すなわち、第2リッド部20Cは、フロアパネル6に載置されたラゲッジボックス10によって、フロアパネル6から所定の高さに支持されている。所定の高さとは、第2リッド部20Cの上面がシートバック2を倒伏させたときの背面2Hの高さとほぼ同じ高さである。
【0039】
この状態で、第2リッド部20Cの後端部を持ち上げて後ろ側の薄肉ヒンジ部27R周りに上昇揺動させ、ストラップ45を係止部46に係止させると、ラゲッジボックス10の上側開口9が開放した状態が保たれて、ラゲッジボックス10の荷物の収納空間8に荷物を出し入れすることができる。
【0040】
また、前記ストラップ45を係止部46に係止させた状態で、ラゲッジボックス10の後端部を上方に持ち上げると、ラゲッジボックス10の第2係合部25とホルダ43の係合凹部42との係合が解除される。そして、前記前壁部14の凹部18の溝部23が前記入り込み部53の第1係合部31に対して回転し、入り込み部53の第1係合部31と凹部18の溝部23との係合が解除されて、ラゲッジボックス10を荷室100から取り出すことができる。これにより、リッド20を荷室100外に取り出さなくてもタイヤ収容凹部7にスペアタイヤを出し入れすることができる。
ラゲッジボックス10をフロアパネル6上に載置するときは上記の手順とは逆の手順になる。すなわち、ラゲッジボックス10を前下がり傾斜姿勢にして、前記前壁部14の凹部18の車両後方側の内周面18Nを、ブラケット50の入り込み部53の車両後方側の端部に当接させる。そして、前記凹部18をブラケット50の入り込み部53の下方に位置させるとともに、前壁部14の下端部をフロアパネル6に載置し、ラゲッジボックス10の車両後方側の端部を下ろしながら入り込み部53を前記凹部18に入り込ませる。ラゲッジボックス10の第2係合部25はホルダ43の係合凹部42に係合する。
【0041】
前記ストラップ45と係止部46の係止を解除して、リッド20をラゲッジボックス10の縦壁12の上面部13に載置した状態では、リッド20に荷物を載置することができる。
【0042】
(2)シートバック2を車両前後方向に倒伏させた使用状態
シートバック2の背面2Hとリッド20の上面とが車両前後方向及び車両左右方向で連なってフルフラットになり、長物の荷物を収納しやすくすることができる。
【0043】
上記の荷室構造を備えた自動車の車体は、前記ラゲッジボックス10とリッド20を省いて、フロアパネル6にカーペット(図示せず)を敷いたカーペット仕様の車体としても製造することができる。つまり、前記カーペット仕様と、ラゲッジボックス10とリッド20を設けたラゲッジボックス仕様との両仕様に、車体の構造を変更することなく対応することができる。カーペットの仕様の自動車では前記ホルダ43やブラケット50を省くことができる。また、カーペット仕様のように荷室の仕様が異なる場合は、シートも別の仕様となることが多く、カーペット仕様用のシートをブラケット50を取付けないものとしておけば、シートの仕様を増やすことなく対応が可能となり、生産性が向上する。
【0044】
[別実施形態]
(1) 上記の構造に換えて、前記ブラケット50を、前記車体に取付けられる部品としてのIS0−FIXのチャイルドシート固定バーに取付けてあってもよい。
(2) 前記突出部31はリブであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】自動車の後部車体の分解斜視図
【図2】ラゲッジボックスの平面図
【図3】(a)はリッドの平面図、(b)はリッドの側面図
【図4】(a)はシートフレームに設けたブラケットとラゲッジボックスの凹部とを示す斜視図(b)はブラケットの入り込み部がラゲッジボックスの前壁部の凹部に入り込んだ状態を車両前後方向から見た断面図
【図5】シートフレームに設けたブラケットと、ラゲッジボックスの凹部と、リッドとの取付け構造を示す縦断側面図
【図6】ラゲッジボックスの後端部の第2係合部と、サイドトリムの被係合部との係合構造を示す縦断面後図
【符号の説明】
【0046】
4 車体に取付けられる部品(シートフレーム)
6 フロアパネル
9 ラゲッジボックスの上側開口
10 ラゲッジボックス
11 底面部
12 縦壁
13 縦壁の上面部(前壁部の上面部)
14 前壁部
15 側壁部
18 凹部
18N 凹部の内周面
19 凹部の底面
20 リッド
20B 薄肉ヒンジ部よりも車両前方側のリッド部(中間リッド部)
20C 薄肉ヒンジ部よりも車両後方側のリッド部(第2リッド部)
21 膨出部(前壁部部分)
22 非膨出部
23 溝部
25 第2係合部
27R 薄肉ヒンジ部
31 第1係合部
32 突出部
40 サイドトリム
42 被係合部
43 ホルダ
50 ブラケット
53 入り込み部
100 荷室
D 自動車の左右方向
Fr 車両前方側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面部と、この底面部の周部から立ち上がる縦壁とを備えたラゲッジボックスを車両の荷室に収容し、前記ラゲッジボックスの上側開口を覆うリッドを設けてある車両の荷室構造であって、
前記ラゲッジボックスを前記荷室のフロアパネルに載置し、前記ラゲッジボックスの縦壁のうち車両前方側の前壁部の上面部に上側開放の凹部を設け、車体に取付けられる部品に、前記凹部に対する入り込み部を備えたブラケットを設けて、前記入り込み部を前記凹部に入り込ませてある車両の荷室構造。
【請求項2】
前記凹部の底面に、前記凹部の内周面との間に溝部を形成する突出部を突設し、
前記入り込み部に、下方に突出する第1係合部を設け、この第1係合部を前記溝部に係合させてある請求項1記載の車両の荷室構造。
【請求項3】
前記第1係合部は、前記入り込み部の車両後方側の端部に形成されて、車両の左右方向に延びている請求項2記載の車両の荷室構造。
【請求項4】
前記凹部が形成された前壁部部分を車両後方側に膨出させて膨出部を形成し、
前記凹部と前記前壁部の非膨出部とを車両前後方向でほぼ同一位置に配置してある請求項1〜3のいずれか一つに記載の車両の荷室構造。
【請求項5】
前記車体に取付けられる部品は、前記車体に着脱自在に取付けられるシートフレームであリ、前記シートフレームから前記ブラケットが車両後方側に延びている請求項1〜4のいずれか一つに記載の車両の荷室構造。
【請求項6】
前記リッドに車両の左右方向に沿う薄肉ヒンジ部を設けて、前記リッドを前記薄肉ヒンジ部周りに折曲自在に構成するとともに、前記薄肉ヒンジ部よりも車両前方側のリッド部を前記ブラケットに取付け固定し、前記薄肉ヒンジ部よりも車両後方側のリッド部を前記ラゲッジボックスの上面部に載置してある請求項1〜5のいずれか一つに記載の車両の荷室構造。
【請求項7】
前記ラゲッジボックスの縦壁のうち車両前後方向に沿う側壁部の車両後方側の端部に第2係合部を設け、
前記第2係合部に対する被係合部を備えたホルダを前記荷室のサイドトリムに着脱自在に取付け、
前記第2係合部を前記被係合部に上方から係合させてある請求項1〜6のいずれか一つに記載の車両の荷室構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−51329(P2009−51329A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219137(P2007−219137)
【出願日】平成19年8月26日(2007.8.26)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】