説明

車両の衝突を回避するための装置

【課題】自車両の移動物体の進行経路までの距離をより良好な精度で推定して衝突可能性の判定精度を向上させる。
【解決手段】車両の周辺の物体を検出し、検出された物体のうち、該車両の進行経路に向けて接近してくる移動物体を判定する。移動物体の進行経路に沿って存在する白線および縁石の少なくとも一方を検出する。車両から、該検出された白線および縁石の少なくとも一方までの第1の距離dlに基づいて、該車両から該移動物体の進行経路までの距離dtを推定する。推定した距離dtに基づいて、車両が移動物体と衝突する可能性を判定し、該衝突の可能性の判定結果に基づいて、衝突回避のための動作を発動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の衝突を回避するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が他の車両等の移動物体と衝突することを回避するための様々な装置が提案されている。下記の特許文献1には、センサによって交差点の存在が検出されたときに、検出領域が左右方向へ広がるように、障害物検出手段の検出領域を切り換え、これにより、交差点での安全性向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−290300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術によると、センサにより、交差点の存在を示す道路上に設けられたマーカを読み込むことで、交差点までの距離を求めている。しかしながら、このようなマーカが設けられていない交差点では、交差点までの距離を良好な精度で推定することは困難である。交差点までの距離を良好な精度で推定することができないと、衝突回避のための動作を適切なタイミングで行うことが困難となる。
【0005】
したがって、交差点の存在を示すマーカが道路上に設けられていない交差点においても、交差点までの距離をより良好な精度で推定することにより、衝突回避のための動作をより適切なタイミングで作動できるようにすることが所望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一つの側面によると、車両に搭載され、衝突を回避するための装置は、前記車両の前部に配置され、該車両の周辺の物体を検出する物体検出手段と、前記検出された物体のうち、該車両に向けて接近してくる移動物体を判定する手段と、前記移動物体の進行経路に沿って存在する白線および縁石の少なくとも一方を検出する検出手段と、前記車両から、前記検出された白線および縁石の少なくとも一方までの第1の距離(dl)に基づいて、前記車両から前記移動物体の進行経路までの距離(dt)を推定する手段と、前記推定した距離に基づいて、前記車両が前記移動物体と衝突する可能性を判定する手段と、前記衝突の可能性の判定結果に基づいて、衝突回避のための動作を発動する手段と、を備える。
【0007】
一般的に、道路には、該道路に沿って白線ないし縁石が設けられている。この発明は、そのことを鑑みてなされたものであり、該白線および縁石の少なくとも一方を検出することにより、交差点の存在を特定する専用のマーカが設けられていない交差点であっても、自車両の、移動物体の進行経路までの距離を、より良好な精度で推定することができる。移動物体の進行経路までの距離を良好に推定することができるので、より適切なタイミングで衝突回避のための動作を発動することができる。
【0008】
この発明の一実施形態によると、上記の車両から移動物体の進行経路までの距離(dt)は、前記第1の距離(dl)と、前記移動物体から、前記白線および縁石の少なくとも一方までの第2の距離(dlt)とに基づいて推定され、該移動物体から該白線までの該第2の距離の値と、該移動物体から該縁石までの該第2の距離の値とは、異なるように設定される。
【0009】
縁石は立体物であるので、移動物体は、白線に対するよりも、縁石に対する方が、より近づきにくい傾向がある。したがって、第2の距離の値dltを、白線と縁石とで異ならせることにより、上記の車両から移動物体の進行経路までの距離dtを、より良好な精度で推定することができる。
【0010】
本発明のその他の特徴及び利点については、以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施例に従う、衝突回避のための装置のブロック図。
【図2】この発明の一実施例に従う、白線を利用して、自車両の交差車両進行経路までの距離dtを推定する手法を説明するための図。
【図3】この発明の一実施例に従う、縁石を利用して、自車両の交差車両進行経路までの距離dtを推定する手法を説明するための図。
【図4】この発明の一実施例に従う、衝突回避のための装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明の一実施形態に従う、車両に搭載され、該車両の衝突を回避するための装置10を示す。該装置10は、外界センサ11と、車両状態センサ12と、処理装置13と、衝突回避支援装置15とを備えている。
【0013】
外界センサ11は、この実施形態では、車両の前部に設けられ、車両の周辺に存在する対象物を検出する。好ましくは、外界センサ11は、車両の進行経路に交差する道路上の白線および縁石の少なくとも一方を検出すると共に、該道路上を該車両に向けて接近してくる移動物体を検出するため、車両の前方の左および(または)右の所定領域を検知するように、車両の前部の左および(または)右端部(たとえば、フロントバンパの左および(または)右端部)に設けられている。外界センサ11は、たとえばミリ波やレーザなどの電磁波によるレーダ装置および(または)車両の周辺を撮像する撮像装置を備えるよう構成されることができる。代替的に、たとえば広角のレーザーレーダ等、広い視野角を有するレーダ装置および(または)撮像装置で外界センサ11を実現する場合には、車両の前端中央部に設けてもよい。
【0014】
レーダ装置は、任意の既知の適切なレーダ装置で実現されることができる。レーダ装置は、たとえば、自車両の外界に設定された検出対象領域を、複数の角度領域に分割し、各角度領域を走査するよう電磁波の発信信号を発信する。各発信信号が、自車両の外部の物体(たとえば、他車両や構造物など)によって反射されることで生じた反射信号を受信し、レーダ装置から該物体までの距離および方位を示す信号を生成し、処理装置13に出力する。
【0015】
また、撮像装置は、任意の既知の適切な撮像装置で実現されることができる。撮像装置は、1または複数のカメラにより撮像された画像を取得し、該画像データを処理装置13に出力する。
【0016】
車両状態センサ12は、自車両の速度を検出するためのセンサを備えている。該センサ12は、任意の既知の適切な手段により実現されることができ、たとえば、自車両の駆動輪の回転速度(車輪速)を検出する車輪速センサや、自車両の速度を検出する車速センサや、車体に作用する加速度を検知する加速度センサにより実現されることができる。
【0017】
処理装置13は、中央処理装置(CPU)およびメモリを備えるコンピュータである電子制御装置(ECU)に実現されることができる。図には、処理装置13によって実現される機能がブロックとして表されている。この実施形態では、処理装置13は、物体情報取得部31、自車両情報取得部33、接近移動物体判定部35、白線/縁石判定部37、距離推定部39、衝突可能性判定部41、および衝突回避制御部43を備える。
【0018】
物体情報取得部31は、外界センサ11の出力信号を所定時間間隔で取得し、該出力信号に基づいて、車両周辺に存在する物体のそれぞれについて、該物体の位置、速度および進行方向を含む物体情報を取得する。外界センサ11がレーダ装置の場合には、レーダ装置から出力される信号に基づいて、該物体の位置を求めることができる。外界センサ11が撮像装置の場合には、該撮像装置から出力される画像データから、撮像されている物体を抽出し、該物体の該画像内における位置に基づいて、該物体の位置を求めることができる。該物体の位置を追跡することにより、該物体の速度および進行方向を求めることができる。たとえば、所定時間における該物体の位置の移動距離を該所定時間で除算することによって、物体の速度を求めることができる。
【0019】
自車両情報取得部33は、車両状態センサ12の出力信号を、上記の所定時間間隔で取得し、該出力信号に基づいて、自車両の速度を含む自車両情報を取得する。
【0020】
接近移動物体判定部35は、外界センサ11によって検出された物体のうち、自車両の進行経路に接近してくる移動物体を判定する。たとえば、上記のようにして求めた物体の速度と自車両の速度とに基づいて、移動している物体(移動物体と呼ぶ)を判別する。該判別した移動物体のうち、自車両の進行経路に向かっている物体を、該接近してくる移動物体と判定することができる。
【0021】
代替的に、自車両の進行経路に交差する道路を判別し、該道路上において自車両の進行経路に向かってくる物体を、接近してくる移動物体と判定してもよい。ここで、交差する道路の判別は、たとえば、外界センサ11を撮像装置で構成して、撮像装置により得た画像データに既知の画像処理を施すことにより行うことができ、または、ナビゲーション装置を車両に搭載して、該ナビゲーション装置の地図情報に基づいて行うことができる。
【0022】
白線/縁石判定部37は、車両の進行経路に交差する道路に沿って設けられた白線および縁石の少なくとも一方を判定する。判定対象が白線の場合には、外界センサ11を撮像装置で構成し、前述したように外界センサ11を介して取得された画像データから、白線を検出する。白線の検出手法には、任意の既知の手法を用いることができ、たとえば、特開2001−034770号公報、特開平11−085999号公報等に記載されている。こうして検出された白線のうち、自車両と接近してくる移動物体との間で、該接近してくる移動物体の進行方向に沿って伸長する白線を判定することができる。この場合も、前述したような、自車両の進行経路に交差する道路の判別を利用し、該交差道路上で、接近してくる移動物体よりも自車両側において伸長する白線を判定するようにしてもよい。
【0023】
判定対象が縁石の場合には、外界センサ11を、レーダ装置または撮像装置で構成し、前述したように取得された出力信号または画像データから、縁石を検出する。なお、縁石は物体であるので、物体情報取得部31によって取得された情報を用いてもよい。縁石の検出手法は、任意の既知の手法を用いることができる。たとえば、特開2009−49943号公報には、撮像画像を用い、立体物の高さ情報を利用して縁石を判定する手法が記載されている。また、特開2007−237838号公報およびそこで挙げられている特開平8−210821号公報には、レーダ装置を用いて縁石を検出する手法が記載されている。さらに、特開平7−92263号公報には、超音波距離センサを用いて縁石を検出する手法が記載されており、この場合、超音波距離センサを車両に搭載してもよい。こうして検出された縁石のうち、自車両と接近してくる移動物体との間で、該接近してくる移動物体の進行方向に沿って伸長する縁石を判定することができる。この場合も、前述したような、自車両の進行経路に交差する道路の判別を利用し、該交差道路上で、接近してくる移動物体よりも自車両側において伸長する縁石を判定するようにしてもよい。
【0024】
衝突可能性の判定精度を向上させるためには、自車両から、接近してくる移動物体の進行経路までの距離dtを、良好な精度で推定する必要がある。距離推定部39は、こうして判定された白線または縁石の位置を利用することにより、該距離dtを、より良好な精度で推定する。
【0025】
この推定手法について、図2を参照して具体的に説明する。図2には、道路101と道路103の交差点が示されている。自車両Aは、道路101上を交差点に向けて走行している。道路103上では、他の車両Bが交差点に向けて走行している。以下、道路103を交差道路と呼び、車両Bを交差車両と呼ぶ。
【0026】
車両Aの前部の右側端部に搭載された外界センサ11により、交差車両Bは、その速度および位置が物体情報取得部31により取得され、接近してくる移動物体として判定されている。外界センサ11の位置を原点として、車両Aの進行方向にx軸を設定し、これに垂直な方向にy軸を設定する。交差車両Bについて検出された速度をVyで表し、y方向の位置をPyで表す。道路103上で車両Bが現在の速度Vyおよび進行方向を保ったまま走行すると仮定した場合の車両Bの進行経路が、網掛けされた領域105で示されている。
【0027】
交差道路103上には、車両Bの進行経路105に沿って、白線201および縁石203が設けられている。この例では、白線/縁石判定部37によって、白線201の位置が検出される。したがって、距離推定部39は、まず、該白線201の位置に基づいて、自車両Aの位置(自車両Aの前端中央部とすることができる)から白線201までの、x軸方向に沿った第1の距離dlを算出する。
【0028】
その後、距離推定部39は、自車両Aから、交差車両Bの進行経路105までの距離dt、言い換えれば交差車両Bの自車両A側の側面を延長した線までの距離dtを、以下の式(1)に示すように、第1の距離dlに第2の距離dltを加算することによって、推定する。
【0029】
dt=dl+dlt (1)
ここで、第2の距離dltは、交差車両Bの進行経路105から白線201までのx軸方向に沿った距離、言い換えれば交差車両Bの自車両A側の側面から白線201までのx軸方向に沿った距離を示す。
【0030】
第2の距離dltは、好ましくは、交差道路103の種別に応じて設定される。道路種別は、たとえばナビゲーション装置を車両に搭載し、該ナビゲーション装置の地図情報に格納されている各道路の道路情報から判別することができる。一実施例では、第2の距離dltについて、幹線道路用の値と一般道路用の値が予め設定されて記憶装置に記憶される。たとえば、実験等を介して、幹線道路および一般道路のそれぞれについて、車両が白線に対してどの程度の距離を保って走行するかを予め計測することで、これらの値を予め決定することができる。距離推定部39は、交差道路103が、幹線道路か一般道路か判別し、該判別の結果に応じた値を読み出して、これを第2の距離dltに設定する。他の実施例では、第2の距離dltについて、道路の法定速度に応じた値を予め設定して記憶装置に記憶してもよい。一般に、速度が高くなるほど、白線から離れて走行する傾向があるからである。これについても、実験等を介して、法定速度の違いに応じて、車両が白線に対してどの程度の距離を保って走行するかを予め計測することで、法定速度に応じた値を予め決定することができる。距離推定部39は、交差道路103の法定速度を、上記のようなナビゲーション装置の道路情報から取得し、該法定速度に応じた値を読み出して、これを第2の距離dltに設定する。
【0031】
代替的に、第2の距離dltをリアルタイムに算出するようにしてもよい。たとえば、走行中の各車両がセンサ(プローブ)となり、該車両で計測された走行状態に関するプローブ情報が、所定のサーバ(センター)に集められるプローブシステムを利用してもよい。プローブ情報として、たとえば道路毎に、該道路における各車両の白線からの距離を収集し、該収集した値を平均する。自車両Aには、該サーバとの通信機能を備えた装置(ナビゲーション装置でもよい)を搭載し、該サーバから該平均値を取得して、これを第2の距離dltに設定する。
【0032】
図2の例では、白線201を用いて距離dtを推定する手法を示したが、縁石203を用いてもよく、その例が図3に示されている。距離推定部39は、白線の場合と同様の手法で、自車両Aの、交差車両Bの進行経路105までの距離dtを推定する。ここで、第1の距離dlは、自車両Aから縁石203(より具体的には、縁石203の交差車両B側の側面)までの距離である。第2の距離dltは、交差車両Bの進行経路105(より具体的には、交差車両Bの自車両A側の側面)から縁石203までの距離であり、白線の場合と同様に、実験等を介して予め設定されてもよく、またはリアルタイムに算出するようにしてもよい。
【0033】
一実施形態では、白線の場合の第2の距離dltと、縁石の場合の第2の距離dltとは、異なる値であるよう設定され、より好ましくは、縁石の場合の第2の距離dltは、白線の場合の第2の距離dltよりも大きくなるよう設定される。縁石は立体物であるので、車両は、白線に対するよりも、縁石に対する方が、近づきにくい傾向にあるからである。このように第2の距離dltを可変に設定することにより、距離dtの推定精度を向上させることができる。
【0034】
白線および縁石のいずれか一方を検出して、距離dtを推定してもよい。また、白線および縁石の両方を検出した場合でも、いずれか一方のみを用いて、距離dtを推定してもよい。どちらを用いるかは、任意に設定することができる。距離推定部39は、白線を用いた場合には、白線用の第2の距離dltを用いて距離dtを推定し、縁石を用いた場合には、縁石用の第2の距離dltを用いて距離dtを推定する。
【0035】
こうして、白線または縁石を検出することにより、交差点に専用のマーカが道路上に設けられていない場合でも、自車両Aの、交差車両Bの進行経路105までの距離dtを推定することができる。また、交差車両Bのx方向の位置や自車両Aのx方向位置は、時々刻々と変化するおそれがあるため、交差車両Bのx方向の位置に基づいて直接進路を予測しても、精度が低下するおそれがあるが、本願発明によれば、交差道路103の白線または縁石までの距離dlを計測し、これに、白線または縁石から交差車両Bの進行経路105までの距離dltを加算することにより、距離dtを推定する。すなわち、より細かい2つの区間に分けて距離dtを推定するので、自車両Aから、交差車両Bの進行経路105までの距離を直接推定することに比べ、精度を上げることができる。
【0036】
図1に戻り、衝突可能性判定部41は、推定された距離dtに基づいて、自車両と交差車両の衝突可能性を判定する。この実施形態では、自車両が、交差車両の進行経路に到達するまでの間に停止するのに必要な減速度を、該距離dtおよび自車両の速度に基づいて算出すると共に、交差車両が、自車両の進行経路(具体的には、自車両の、交差車両側の側面を延長した線)に到達するまでの間に停止するのに必要な減速度を、交差車両から自車両の進行経路までの距離(図2では、Pyで表される)および交差車両の速度に基づいて算出する。衝突可能性の判定は、両方の減速度の大きさに基づいて行われる。
【0037】
衝突回避制御部43は、衝突の可能性があると判定されたならば、衝突回避のための制御を実施する。衝突回避のための制御には、任意の適切な制御を含めることができる。一実施形態では、衝突回避のための制御として、報知が行われ、衝突回避支援装置15は、報知装置である。
【0038】
報知装置は、任意の既知の適切な手法で実現されることができ、たとえば、触覚的伝達装置、視覚的伝達装置、聴覚的伝達装置のうち、任意の1つまたは複数の装置を用いて実現することができる。触覚的伝達装置は、たとえばシートベルト装置や操舵制御装置などであって、衝突回避制御部43から出力される制御信号に応じて、たとえばシートベルトに所定の張力を発生させて運転者が触覚的に知覚可能な締め付け力を作用させたり、ステアリングホイールに運転者が触覚的に知覚可能な振動を発生させることにより、運転者に報知する。
【0039】
視覚的伝達装置は、たとえば表示装置などであって、衝突回避制御部43からの制御信号に応じて、所定の警報情報を表示したり、所定の警告灯を点滅ないし点灯させることによって、運転者に報知する。聴覚的伝達装置は、たとえばスピーカなどであって、衝突回避制御部43からの制御信号に応じて所定の警報音や音声を出力することによって、運転者に報知する。
【0040】
他の実施形態では、衝突回避支援装置15は、ブレーキアクチュエータである。衝突回避制御部43は、ブレーキアクチュエータに制御信号を送り、該ブレーキアクチュエータを介して車両のブレーキを作動させる。この場合、距離dtを進行する間に自車両が停止するような減速度が生じるようブレーキを作動させることができる。
【0041】
なお、上記の報知およびブレーキ制御のいずれか一方を実施してもよいし、両方を実施してもよい。
【0042】
図4は、この発明の一実施形態に従う、衝突回避のための装置10の動作のフローチャートである。このプロセスは、所定の時間間隔で実行されることができる。
【0043】
ステップS11において、外界センサ11を介して、車両周辺の物体を検出し、該物体の情報(位置、速度、進行方向を含む)を取得すると共に、車両状態センサ12を介して、自車両の情報(速度を含む)を取得し、これらの情報に基づいて、前述したように、自車両の進行経路に接近してくる移動物体を判定する。この実施例では、移動物体が図2に示すような交差車両である場合を説明する。
【0044】
ステップS12において、前述したように、交差道路上の、交差車両の進行経路に沿って伸長する白線および縁石の少なくとも一方を判定し、該判定した白線または縁石までの第1の距離dlを算出する。
【0045】
ステップS13において、交差車両と、白線または縁石の間の第2の距離dltを求める。ここで、ステップS12で求めた第1の距離dlが白線に基づく場合には、第2の距離dltは、交差車両と白線の間の距離となり、第1の距離dlが縁石に基づく場合には、第2の距離dltは、交差車両と縁石の間の距離となる。前述したように、第2の距離dltは、交差道路の種別に応じて予め設定された値を用いてもよいし、リアルタイムに算出されたものを用いてもよい。
【0046】
ステップS14において、前述した式(1)に従い、第1の距離dlと第2の距離dltを加算することにより、自車両の、交差車両の進行経路までの距離dtを算出する。
【0047】
ステップS15において、交差車両が現在の速度および進行方向を一定にしたまま走行すると仮定すると共に、自車両が現在の速度および進行方向を一定にしたまま走行すると仮定して、交差車両の予測軌跡および自車両の予測軌跡を算出する。具体的には、図2の例で説明すると、交差車両Bが、交差点に到達するまでの時間を、|Py|/Vyにより算出すると共に、自車両Aが交差点に到達するまでの時間を、|dt|/Vselfにより算出する。ここで、Vselfは、自車両Aの速度である。
【0048】
ステップS16において、交差車両の予測軌跡と自車両の予測軌跡が交差するかどうかを判断する。具体的には、上記のように算出された交差車両Bの到達時間と自車両Aの到達時間との差が所定値以下の場合には、両車両がほぼ同じ時刻に交差点に到達することを示すので、両車両の予測軌跡は交差すると判断し、ステップS17に進む。該差が該所定値より大きい場合には、両車両の予測軌跡は交差しないと判断し、当該プロセスを抜ける。
【0049】
ステップS17において、自車両について、現時点から減速を開始し、交差車両の進行経路に進入する前に停止するのに必要な減速度G_need1を算出する。自車両と交差車両の進行経路との間の距離はdtであるので、自車両の速度をVselfとすると、以下の式(2)により、必要な減速度G_need1を算出することができる。
【数1】

【0050】
ステップS18において、交差車両について、現時点から減速を開始し、自車両Aの交差車両の進行経路に進入する前に停止するのに必要な減速度G_need2を算出する。図2の例では、該進入するまでの距離はPyであるので、以下の式(3)により、必要な減速度G_need2を算出することができる。
【数2】

【0051】
ステップS19において、自車両の減速度G_need1の大きさ(絶対値)を、所定のしきい値Thr_G1と比較すると共に、交差車両の減速度G_need2の大きさを、所定のしきい値Thr_G2と比較する。自車両の減速度G_need1の大きさが、第1のしきい値Thr_G1より大きく、かつ交差車両の減速度G_need2の大きさが、第2のしきい値Thr_G2より大きければ、ステップS20において、衝突の可能性があると判定する。両車両の減速度が大きいということは、何らかの衝突回避の支援動作を行わない限り、衝突する可能性が高いと考えることができるからである。自車両の減速度G_need1の大きさが、第1のしきい値Thr_G1以下であり、または、交差車両の減速度G_need2の大きさが、第2のしきい値Thr_G2以下であれば、衝突の可能性はないと判定し、当該プロセスを抜ける。ここで、第1のしきい値Thr_G1および第2のしきい値Thr_G2は、同じ値でもよいし、異なる値でもよい。
【0052】
衝突の可能性があると判定されたならば、ステップS21において、衝突回避のための動作を発動する。前述したように、衝突回避のための動作として、報知およびブレーキ制御の少なくとも一方を行うことができる。
【0053】
上の実施形態では、図2において、外界センサ11が、車両の右前方を検知する形態を例に説明したが、車両の左前方を検知する形態にも、本発明は同様に適用されうる。また、上記の実施形態では、移動物体として他の車両を示しているが、移動物体は、車両に限定されるものではなく、たとえば自転車等の他の移動物体に対しても、本発明は適用されうる。
【0054】
以上のように、この発明の特定の実施形態について説明したが、本願発明は、これら実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
10 衝突回避装置
11 外界センサ
12 車両状態センサ
13 処理装置
15 衝突回避支援装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、衝突を回避するための装置であって、
前記車両の前部に配置され、該車両の周辺の物体を検出する物体検出手段と、
前記検出された物体のうち、該車両の進行経路に向けて接近してくる移動物体を判定する手段と、
前記移動物体の進行経路に沿って存在する白線および縁石の少なくとも一方を検出する検出手段と、
前記車両から、前記検出された白線および縁石の少なくとも一方までの第1の距離に基づいて、前記車両から前記移動物体の進行経路までの距離を推定する手段と、
前記推定した距離に基づいて、前記車両が前記移動物体と衝突する可能性を判定する手段と、
前記衝突の可能性の判定結果に基づいて、衝突回避のための動作を発動する手段と、
を備える、衝突回避装置。
【請求項2】
前記車両から前記移動物体の進行経路までの前記距離は、前記第1の距離と、前記移動物体から、前記白線および縁石の少なくとも一方までの第2の距離とに基づいて推定され、該移動物体から該白線までの該第2の距離の値と、該移動物体から該縁石までの該第2の距離の値とは、異なるように設定される、
請求項1に記載の衝突回避装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−113239(P2011−113239A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268332(P2009−268332)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】