説明

車両の補機配設構造

【課題】車室の底部を形成するフロアパネルの後部に設けられた荷室収納部内に車両用補機または荷物等を効率よく収納できるようにする。
【解決手段】車室の底部を形成するフロアパネル1の後部に下方へ凹入した荷室収納部7が設けられ、この荷室収納部7内に重量物である車載バッテリ10等の車両用補機が配設されるように構成された車両の補機配設構造であって、上記車両用補機を支持しつつその荷室収納部7内における配設位置を変更可能にガイドするガイドレール16,17等からなるガイド支持機構を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の底部を形成するフロアパネルの後部に下方へ凹入した収納部が設けられ、この収納部内に重量物である車両用補機が配設されるように構成された車両の補機配設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車体後部に位置するラゲージルームのフロアパネルに開口するスペアタイヤ収納部の下部にバッテリ収納室を連設し、このバッテリ収納室内に、複数の車載バッテリを偏平に倒伏させた状態で収納することにより、複数の車載バッテリをフロアパネルの下部に効率よく収納し、その際に各バッテリをバッテリフレームで予めアッセンブリした状態でバッテリ収納室に固設することにより、ラゲージルーム内における車載バッテリの組付作業を簡素化するように構成されたバッテリの取付構造が知られている。
【特許文献1】特開2005−93299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されているように、車体後部に形成されたバッテリ収容室内に車載バッテリを収容するように構成した場合には、車体前部のエンジンルーム内等に車載バッテリを収容する場合に比べ、スペース的に余裕がある車体後部に、大容量かつ高電圧の車載バッテリを収容することができる。このため、定格電圧の高い車載補機類の使用が可能になるとともに、エンジンと電気モータとの両方を駆動源としたハイブリッド車両用における駆動用電源等として上記車載バッテリを使用可能であるという利点がある。
【0004】
しかし、上記特許文献1に開示されたバッテリの取付構造では、フロアパネルにスペアタイヤの収容部を設けるとともに、さらにその下方に車載バッテリ等からなる車両用補機の収容スペースを設けているため、この収納スペースの深さが大きくなること起因してフロアパネルの上面が相対的に高い位置に設置されること、つまり高床化することが避けられないとともに、上記スペアタイヤの収容部を有効に利用することが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、車室の底部を形成するフロアパネルの後部に設けられた荷室収納部内に車両用補機または荷物等を効率よく収納してその有効利用を図ることができる車両の補機配設構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車室の底部を形成するフロアパネルの後部に下方へ凹入した荷室収納部が設けられ、この荷室収納部内に重量物である車両用補機が配設されるように構成された車両の補機配設構造であって、上記車両用補機を支持しつつその荷室収納部内における配設位置を変更可能にガイドするガイド支持機構を備えたものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の車両の補機配設構造において、上記補機ガイド機構が、荷室収納部内の中央部近傍を中心として円弧状に配設されたガイドレールを備え、このガイドレールに沿って車両用補機がスライド可能に支持されたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の車両の補機配設構造において、車両用補機の移動経路に沿って設置された導電部と、この導電部に接触しつつ車両用補機とともに移動する接点部とを備え、この接点部と導電部とを介して上記ハーネス部材が電気的に接続された状態に保持されるように構成されたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の車両の補機配設構造において、荷室収納部に設置された回転支持部と、この回転支持部を介して回転自在に支持された回転テーブルとにより、上記ガイド支持機構が構成され、上記回転支持部から離間した回転テーブルの部位に車両用補機が配設されたものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の補機配設構造において、車両用補機が予め設定された基準位置に移動した時点で、車両用補機を係脱可能に係止する係止部が荷室収納部に設けられたものである。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の補機配設構造において、車載バッテリからなる車両用補機がガイド支持機構により支持されたものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、車両用補機を支持しつつ、この車両用補機の荷室収納部内における配設位置を変更可能にガイドするガイド支持機構を設けたため、荷室収納部の底部に下方に凹入したバッテリ格納部等を設けることなく、その内部に車両用補機または荷物等を効率よく収納してその有効利用を図ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、荷室収納部内の中央部近傍を中心として円弧状に配設されたガイドレールに沿って車両用補機をスライド変位させることにより、車両用補機を上記荷室収納部の中央前方部に配設した場合には、荷室収納部の中央前方部を除く部分を広く利用して荷物等を収納し、また上記車両用補機を荷室収納部の左右側方部に位置させた場合には、上記荷室収納部の前方部分および右側方部分または左側方部分を荷物等の収納部として利用できるという利点がある。
【0014】
請求項3に係る発明よれば、上記ガイドレールに沿って車両用補機をスライド変位させることによりその配設位置を任意の位置に移動させた場合においても、上記接点部および導電部を介してハーネス部材が電気的に接続された状態に保持されるため、このハーネス部材の全長を予め長めに設定する等の手段を講じることなく、上記車両用補機に対する導電状態を保持できるという利点がある。
【0015】
請求項4に係る発明では、車体の後方開口部等から上記回転テーブルを回転させることにより、上記車載バッテリ等からなる車両用補機の配設位置を容易に変更することが可能であり、上記荷室収納部を車両用補機および各種の荷物等の収容スペースとして効率よく利用できるという利点がある。
【0016】
請求項5に係る発明では、車載バッテリ等からなる車両用補機が予め設定された基準位置に移動した時点で、この車両用補機を係脱可能に係止する係止部を荷室収納部に設けたため、この係止部による上記車両用補機の係止状態を必要に応じて解除することにより、その配設位置を変更できるとともに、車両の走行時等に車載バッテリの支持状態が不安定になるのを効果的に防止でき、かつ上記車両用補機の配設位置を変更する際に、この車両用補機を予め基準位置に容易かつ安定して係止できるという利点がある。
【0017】
請求項6に係る発明では、スペース的に余裕がある車体の後部に位置するフロアパネルの一部を下方に凹入させることにより形成された荷室収納部内に大容量かつ高電圧の車載バッテリを設置し、この車載バッテリから供給される電力に応じて定格電圧の高い車載補機類を作動させることが可能であるとともに、エンジンと電気モータとの両方を駆動源としたハイブリッド車両用、またはアイドルストップ機能を有する車両における駆動用電源として上記車載バッテリを使用でき、かつ必要に応じて上記車載バッテリの配設位置を変化させることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1および図2は、本発明に係る車両の補機配設構造の実施形態を示している。この車両の車室底部を形成するフロアパネル1上には、互いに独立した左側シート2aおよび右側シート2bからなる中列の乗員用シート2が配設されているとともに、その後方側には、車幅方向に延びる一体のシートクッションを備えたいわゆるベンチシートタイプからなる後列の乗員用シート3が配設されている。上記中列の乗員用シートト2は、図示を省略した運転席シートおよび助手席シートからなる前列シートの後方側に配設されている。
【0019】
また、上記フロアパネル1の下面には、その左右両側辺部に沿って前後方向に延びるようにリヤサイドフレームからなる車体フレーム4が設置されている。図3は、上記乗員用シート2,3を取り外した状態におけるフロアパネル1を上側から見たものである。この図3に示すように、後部車体の側方部には、車室内側に膨出するリヤホイールハウス5が設けられるとともに、その前方側には、車体の前後方向に延びるサイドシル6が設置されている。また、上記フロアパネル1の後方部には、下方に向けて凹入する荷室収納部7が形成され、この荷室収納部7内に車載バッテリ10が収納されるようになっている。
【0020】
上記フロアパネル1上には、左右一対の外側レール(ロングレール)8,8と、この外側レール8,8の間において前後方向に延びる左右一対の内側レール9,9(ショートレール)とからなるシートスライドレールが設置されている。上記外側レール8および内側レール9は、図4および図5に示すように、上面が開口した所定の強度を有する断面C字状の溝型鋼等からなり、その左右両側壁部が取付ブラケット12を介してフロアパネル1の上面に固定されている。上記取付ブラケット12は、例えば図6に示すように、内側レール9等からなるシートスライドレールの側壁面に溶接等の手段で固着された起立板12aと、取付ボルト26によりフロアパネル1に取り付けられる取付基板12bとを備えたアングル材等からなっている。
【0021】
上記外側レール8は、前列シートの設置部に近接した位置から車体の後端部、具体的にはリヤバンパレインフォースメント11の設置部まで延設され、上記外側レール8の後端部がリヤバンパレインフォースメント11に接続されている。一方、上記内側レール9は、前列シートの設置部に近接した位置から荷室収納部7の前端部近傍まで延設され、その全長が上記外側レール8よりも短く設定されている。また、上記外側レール8および内側レール9は、水平線Hに対して後上がりに傾斜した状態で設置され、中列の乗員用シート2を構成する左側シート2aが、車体左側の外側レール8およびこれに隣接した内側レール9に沿ってスライド可能に支持されるとともに(図4参照)、右側シート2bが、車体右側の外側レール8およびこれに隣接した内側レール9に沿ってスライド可能に支持され、かつ後列の乗員用シート3が、左右一対の外側レール8,8に沿ってスライド可能に支持されている(図5参照)。
【0022】
上記車体フレーム4は、上面が開口した断面コ字状のフレーム本体4aと、その内側辺部および外側辺部の上端に突設された上部フランジ4b,4cとを有し、上記外側レール8の設置部に対応する側方位置でフロアパネル1の下面に沿って車体の前後方向に延びるように設置されている。そして、上記外側レール8の取付ブラケット12と、車体フレーム4の上部フランジ4b,4cとが、上記フロアパネル1を挟んで上下に相対向して設置された状態で取付ボルトにより一体に締結されている。
【0023】
また、図示を省略したインストルメントパネルの内部等に配設された配電ボックス等から、左右のサイドシル6に沿ってフロアパネル1上を車体の後方側に延びるように左右一対のハーネス部材13が設置されている(図3参照)。このハーネス部材13は、上記外側レール8および内側レール9の前方に設けられたフロアパネル1のキックアップ部1aの前面を通って車幅方向の内方側に案内されるとともに、左右の内側レール9の前端開口部から内側レール9の内部に導入されている。そして、上記ハーネス部材13は、図6に示すように、取付金具14を介して内側レール9の底壁部に係止されるとともに、この内側レール9に沿って車体の後方側に延出されるように構成されている。なお、図6において、符号19は、フロアパネル1の上面に止着されたフロアマットである。
【0024】
図7および図8に示すように、上記荷室収納部7内の底壁部には、バッテリ収容皿15をスライド自在に支持するガイドレール16,17が設けられている。上記バッテリ収容皿15には、車載バッテリ10の上面を下方に押圧する押圧板18と、この押圧板18を支持する一対の固定用ステー19とが設けられている。上記ガイドレール16,17は、荷室収納部7の中央部近傍Oを中心として円弧状に配設されることにより、車載バッテリ10を支持しつつ、その荷室収納部7内における配設位置を変更可能にガイドするガイド支持機構を構成している。すなわち、上記ガイドレール16,17に沿ってバッテリ収容皿15がスライド変位することにより、図7の実線で示すように、上記車載バッテリ10が、荷室収納部7の中央前方部に位置した状態から、図7の仮想線A,Bで示すように、荷室収納部7の右側方部または左側方部に位置した状態に変位可能に支持されている。
【0025】
上記ガイドレール16,17の側壁部には、それぞれプラスチック材等の非導電性材料からなる支持プレート21が突設されるとともに、この支持プレート21の上面には、銅板等からなる導電板22が固着されている。そして、上記内側レール9の後端部から荷室収納部7内に導出された一対のハーネス部材13が、上記ガイドレール16の下方部を通過するとともに、上記支持プレート21を貫通して上記導電板22に接続されている。一方、上記バッテリ収容皿15の底壁部には、上記導電板22にそれぞれ接触する一対の接点ピン23が下方に突設されるとともに、この接点ピン23と上記車載バッテリ10の電極10a,10bとがハーネス部材24によりそれぞれ接続されている。
【0026】
そして、上記車載バッテリ10の配設位置を変更する際に、ガイドレール16,17に沿ってスライド変位するバッテリ収容皿15とともに、上記接点ピン21が、導電板22に接触しつつガイドレール16,17に沿って移動することにより、上記車載バッテリ10に接続されたハーネス部材24と、内側レール9内に配設されたハーネス部材13とが、上記導電板22からなる導電部および接点ピン23からなる接点部を介して電気的に接続された状態に維持されるようになっている。
【0027】
また、上記ガイドレール16,17の間には、筒状支持部25の上端に出没可能に保持されたボール体26と、このボール体26を上方に付勢する圧縮コイルばねからなる付勢部材27とにより構成された係止部28が、上記荷室収納部7の中央前方位置および左右両側方位置に配設されている。そして、上記車載バッテリ10が荷室収納部7の中央前方位置および左右両側方位置からなる基準位置に移動した時点で、上記付勢部材27の付勢力に応じてボール体26の上部が、バッテリ収容皿15の底面に形成された凹部29内に嵌入されることにより、車載バッテリ10が上記各基準位置において係脱可能に係止されるようになっている。
【0028】
上記のように車室の底部を形成するフロアパネル1の後部に設けられた荷室収納部7の中央部近傍Oを中心として円弧状にガイドレール16,17を配設し、このガイドレール16,17に沿って重量物である車載バッテリ10からなる車両用補機をスライド変位させることにより、上記車両用補機を支持しつつその荷室収納部7内における配設位置を変更可能にガイドするように構成したため、荷室収納部7の底部に下方に凹入したバッテリ格納部等を設けることなく、その内部に車両用補機または荷物等を効率よく収納してその有効利用を図ることができる。
【0029】
すなわち、上記荷室収納部7の中央前方部を除く部分を広く利用して荷物等を収納する場合には、図7の実線で示すように、車載バッテリ10からなる車両用補機を上記荷室収納部7の中央前方部に配設することにより、その後方部分の全体を荷物等の収納スペースとして有効に利用することができる。また、図7の仮想線Aで示すように、上記車載バッテリ10からなる車両用補機を上記荷室収納部7の右側方部に位置させることにより、上記荷室収納部7の前方部分および左側方部分を荷物等の収納部として利用することができ、かつ図7の仮想線Bで示すように、車載バッテリ10からなる車両用補機を上記荷室収納部7の左側方部に位置させることにより、荷室収納部7の前方部分および右側方部分を荷物等の収納部として利用することができる。このように必要に応じて上記車両用補機の配設位置を変化させることにより、荷室収納部7内に車載バッテリ10からなる車両用補機と、各種の荷物等とを効率よく収納できるという利点がある。
【0030】
なお、上記荷室収納部7の中央部近傍Oを中心として円弧状にガイドレール16,17を配設してなる上記実施形態に代え、図9に示すように、荷室収納部7内に左右一対のガイドレール30を前後方向に延びるように設置することにより、このガイドレール30に沿って上記車載バッテリ10からなる車両用補機を車体の前後方向に移動可能に支持し、あるいは荷室収納部7内に前後一対のガイドレール(図示せず)を車幅方向に延びるように設置することにより、このガイドレールに沿って上記車載バッテリ10を車幅方向に移動可能に支持した構造としてもよい。
【0031】
図9において、上記ガイドレール30の側壁部には、プラスチック材等の非導電性材料からなる支持プレート21が設けられるとともに、その上面には導電板22が固着されている。そして、図8に示す実施形態と同様に、上記内側レール9の後端部から荷室収納部7内に導出された一対のハーネス部材13が、上記支持プレート21を貫通して上記導電板22に接続されるとともに、上記バッテリ収容皿15の底壁部に突設された接点ピン23が上記導電板22に接触することにより、車載バッテリ10に接続されたハーネス部材24と、内側レール9内に配設されたハーネス部材13とが、上記導電板22および接点ピン23を介して電気的に接続された状態に維持されるようになっている。
【0032】
上記のように左右一対のガイドレール30に沿って車載バッテリ10を前後方向に移動可能に支持するように構成した場合には、上記車載バッテリ10の点検または修理等を行う際に、図9の実線で示すように、車載バッテリ10を車体の後方側に位置させることにより、車両の後端開口部から上記車載バッテリ10に容易にアクセスして上記点検作業等を容易に行うことができる。しかも、図9の仮想線で示すように、車載バッテリ10からなる車両用補機を最前端部に位置させることにより、その後方部分を利用して荷物等を効率よく収納できるという利点がある。
【0033】
また、上記実施形態では、図8等に示すように、車載バッテリ10からなる車両用補機に接続されたハーネス部材24と、車載バッテリ10の移動経路、つまりガイドレール16,17またはガイドレール30に沿って設置された導電板22からなる導電部と、この導電板22に接触しつつ車載バッテリ10とともに移動する接点ピン21からなる接点部とを設け、上記バッテリ収容皿15をガイドレール16,17またはガイドレール30に沿ってスライド変位させることにより、車載バッテリ10の配設位置を変更した場合においても、この車載バッテリ10に接続されたハーネス部材24と、上記内側レール9の後端部から荷室収納部7内に導入されたハーネス部材13とを電気的に接続した状態に維持することができる。したがって、上記車載バッテリ10の移動を許容するためにハーネス部材13の全長を予め長めに設定する等の手段を講じることなく、上記車載バッテリ10の電力を必要個所に供給することができ、これにより上記車載バッテリ10の配設位置を変更する際にハーネス部材13が絡まり合うという事態の発生を効果的に防止できるという利点がある。
【0034】
なお、上記ガイドレール16,17等によりガイド支持機構を構成した上記実施形態に代え、図10および図11に示すように、上記荷室収納部7の底部中央近傍等に設置された回転支持部31と、この回転支持部31を介して回転自在に支持された回転テーブル32とにより、上記車載バッテリ10からなる車両用補機を支持しつつその荷室収納部7内における配設位置を変更可能にガイドするガイド支持機構を構成し、上記回転支持部31から離間した回転テーブル32の部位、つまり回転テーブル32の外周側部位に車載バッテリ10からなる車両用補機を配設した構造としてもよい。
【0035】
上記回転支持部31は、荷室収納部7の底部上に固定された基板33と、この基板33に保持されたボールベアリング等からなる軸受部材34と、上記回転テーブル32の中央部下面に突設された回転軸35とを備え、上記回転軸35が軸受部材34により回転自在に支持されている。また、上記内側レール9の後端部から荷室収納部7内に導出された一対のハーネス部材13が、上記回転テーブル32の下方に導入されるとともに、回転支持部31の基板33および軸受部材34に形成された貫通孔を通って回転テーブル32の上方に導出され、さらに上記車載バッテリ10の電極10a,10bに上記ハーネス部材13がそれぞれ接続されている。
【0036】
そして、上記回転支持部31を支点として回転テーブル32を回転させることにより、上記車載バッテリ10の配設位置を、図10の実線で示す前方位置等から、仮想線で示す左右両側方位置等に変更することが可能に構成されている。また、上記荷室収納部7の底部上には、上記車載バッテリ10が荷室収納部7の中央前方位置および左右両側方位置からなる基準位置に移動した時点で、回転テーブル32の回転を規制することにより、上記車載バッテリ10からなる車両用補機を上記基準位置に係止する係止部28が設けられている。この係止部28は、図8に示す実施形態と同様に、付勢部材27により上方に付勢されたボール体26を有し、回転テーブル32の所定位置に形成された複数の凹部29に上記ボール体26が選択的に嵌入されることにより、上記回転テーブル32の回転を規制するように構成されている。
【0037】
上記のように上記荷室収納部7に設置された回転支持部31と、この回転支持部31を介して回転自在に支持された回転テーブル32とにより、車載バッテリ10からなる車両用補機のガイド支持機構を構成し、上記回転支持部31から離間した回転テーブル32の部位に車載バッテリ10からなる車両用補機を配設した場合には、車体の後方開口部から上記回転テーブル32を回転させることにより、上記車両用補機の配設位置を容易に変更することが可能であり、上記荷室収納部7を車載バッテリ10からなる車両用補機および各種の荷物等の収容スペースとして効率よく利用できるという利点がある。
【0038】
さらに、上記回転テーブル32を回転させることにより、車載バッテリ10の配設位置を変化させた場合においても、回転テーブル32の上方に導出されて上記車載バッテリ10の電極10a,10bに接続された上記ハーネス部材13の長さが変化することはない。このため、上記実施形態に示すように、導電板22からなる導電部およびこの導電板22に接触しつつ車載バッテリ10とともに移動する接点ピン21からなる接点部等を設けたり、ハーネス部材13の全長を予め長めに設定したりする等の手段を講じることなく、上記ハーネス部材13を車載バッテリの電極10a,10bに接続した状態に保持することが可能である。
【0039】
また、上記実施形態では、車載バッテリ10からなる車両用補機が予め設定された基準位置に移動した時点で、この車両用補機を係脱可能に係止する係止部28を荷室収納部7に設けた構造としたため、この係止部28による上記車両用補機の係止状態を必要に応じて解除することにより、その配設位置を変更することができる。そして、車両の走行時に車載バッテリ10の支持状態が不安定になる等の事態を生じることなく、上記車載バッテリ10の配設位置を変更する際に、この車載バッテリ10を予め設定された基準位置に容易かつ安定して係止できるという利点がある。
【0040】
なお、上記実施形態では、図8等に示すように、荷室収納部7の底部に固定された筒状支持部25と、その上端に出没可能に保持されたボール体26と、このボール体26を上方に付勢する圧縮コイルばねからなる付勢部材27とにより上記係止部28を構成した例について説明したが、図12に示すように、ばね板材からなる係止板36を荷室収納部7の底部に固定し、その先端部に設けられた突部37を、回転テーブル32またはバッテリ収容皿15の底面に形成された凹部29内に嵌入させることにより、車載バッテリ10を予め設定された基準位置において係脱可能に係止させるように構成してもよい。
【0041】
上記実施形態では、車体前部のエンジンルーム内等に車載バッテリを収納する場合に比べ、スペース的に余裕がある車体の後部に位置するフロアパネル1の一部を下方に凹入させることにより荷室収納部7を形成し、その内部に上記車載バッテリ10を収納するように構成したため、大容量かつ高電圧の車載バッテリ10を設置することが可能である。したがって、この車載バッテリ10から供給される電力に応じ、定格電圧の高い車載補機類を作動させることが可能であるとともに、エンジンと電気モータとの両方を駆動源としたハイブリッド車両用、またはアイドルストップ機能を有する車両における駆動用電源として上記車載バッテリ10を使用できるという利点がある。なお、上記ガイド支持機構により、車載バッテリ10からなる車両用補機を支持しつつその荷室収納部7内における配設位置を変更可能にガイドするように構成した上記実施形態に代え、車室後部に設置されるオーディオ機器もしくはリヤエアコン用のブロア装置等からなる車両用補機を上記ガイド支持機構により支持した構造としてもよい。
【0042】
上記実施形態では、車室の底部を形成するフロアパネル1と、このフロアパネル1に沿って車体の前後方向に延びるように設置された内側レール9からなるシートスライドレールとを具備した車両において、上記フロアパネル1上を車体の前後方向に延びるように設置されたハーネス部材13の少なくとも一部を上記内側レール9に沿って配設し、この内側レール9によって上記ハーネス部材13を隠蔽するように構成したため、乗員の足置き性が悪化し、あるいは足元スペースが狭められる等の問題を生じることなく、車体後部にハーネス部材13を容易かつ適正に配設できるという利点がある。
【0043】
すなわち、上記実施形態では、内側レール9の前端開口部からその内部にハーネス部材13を導入し、上記内側レール9の内部を通って車体の後方側にハーネス部材13を延出するように構成したため、ハーネス部材13の組み付け性を考慮してフロアパネル1の車室内側、つまりフロアパネル1の上面側にハーネス部材13を設置したにも拘わらず、その一部を上記内側レール9により保護することができ、荷物や乗員の足等が上記ハーネス部材13に当接してその断線や漏電等が生じるのを効果的に防止することができる。
【0044】
なお、上記内側レール9の前端開口部からその内部にハーネス部材13を導入し、内側レール9内を通って車体の後方側にハーネス部材13を延出させるように構成した上記実施形態に代え、内側レール9からなるシートスライドレールとフロアパネル1との間に形成された配設空間内に上記ハーネス部材13を配設した構造としてもよい。例えば、図13に示すように、内側レール9の設置部に沿って下方に凹入する凹溝部36をフロアパネル1に形成し、この凹溝部36と内側レール9の下面との間に形成された配設空間内にハーネス部材13を配設した構造とし、あるいは図14に示すように、上方に膨出する膨出部37が底壁部に形成された内側レール9を使用し、上記膨出部37とフロアパネル1との間に形成された配設空間内にハーネス部材13を配設した構造としてもよい。
【0045】
上記のように内側レール9からなるシートスライドレールとフロアパネル1との間に形成された配設空間内に上記ハーネス部材13を配設した場合には、上記内側レール9をフロアパネル1に取り付けるのと同時に、上記配設空間内にハーネス部材13を配設して密封した状態に保持することができるため、このハーネス部材13の配設作業を容易に行うことができるとともに、上記内側レール9およびフロアパネル1によりハーネス部材13を効果的に保護してその損傷を防止できるという利点がある。特に、図13に示すように、内側レール9の設置部に沿って下方に凹入する凹溝部36をフロアパネル1に形成した場合には、この凹溝部36がビードの役目を果たすためにフロアパネル1を効果的に補強することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、フロアパネル1の左右両側辺部に沿って車体の後端部近傍まで延びる左右一対の外側レール8,8からなるロングレールと、左右一対のロングレール8,8の間に左右一対の内側レール9,9からなるショートレールとが設置された車両において、上記左右の内側レール(ショートレール)9,9に沿ってそれぞれハーネス部材13をそれぞれ個別に配設したため、一本のシートスライドレール内に複数本のハーネス部材13を配設するように構成した場合のように、狭いスペース内で複数本のハーネス部材13を絡ませることなく適正に設置するという繁雑な作業を要することなく、各内側レール9内にハーネス部材13を容易に設置できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る車両の補機配設構造を備えた車両の側面断面図である。
【図2】上記車両の車室内の構造を示す平面図である。
【図3】フロアパネルの上部構造を示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】内側シートの取付構造を示す正面断面図である。
【図7】車両バッテリの支持状態を示す平面図である。
【図8】車両バッテリの支持状態を示す側面断面図である。
【図9】本発明に係る車両の補機配設構造の別の実施形態を示す平面図である。
【図10】車両の補機配設構造のさらに別の実施形態を示す平面図である。
【図11】図10の実施形態の側面断面図である。
【図12】補機配設構造のさらに別の実施形態を示す側面断面図である。
【図13】ハーネス部材の配設構造の他の例を示す側面断面図である。
【図14】ハーネス部材の配設構造のさらに他の例を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 フロアパネル
3 乗員用シート
7 荷室収納部
10 車載バッテリ(車両用補機)
13,24 ハーネス部材
16,17,30 ガイドレール(ガイド支持機構)
22 導電板(導電部)
23 接点ピン(接点部)
28 係止部
31 回転支持部
32 回転テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の底部を形成するフロアパネルの後部に下方へ凹入した荷室収納部が設けられ、この荷室収納部内に重量物である車両用補機が配設されるように構成された車両の補機配設構造であって、上記車両用補機を支持しつつその荷室収納部内における配設位置を変更可能にガイドするガイド支持機構を備えたことを特徴とする車両の補機配設構造。
【請求項2】
上記補機ガイド機構が、荷室収納部内の中央部近傍を中心として円弧状に配設されたガイドレールを備え、このガイドレールに沿って車両用補機がスライド可能に支持されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の補機配設構造。
【請求項3】
上記車両用補機に接続されたハーネス部材と、車両用補機の移動経路に沿って設置された導電部と、この導電部に接触しつつ車両用補機とともに移動する接点部とを備え、この接点部と導電部とを介して上記ハーネス部材が電気的に接続された状態に保持されるように構成されたことを特徴とする請求項2に記載の車両の補機配設構造。
【請求項4】
荷室収納部に設置された回転支持部と、この回転支持部を介して回転自在に支持された回転テーブルとにより、上記ガイド支持機構が構成され、上記回転支持部から離間した回転テーブルの部位に車両用補機が配設されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の補機配設構造。
【請求項5】
車両用補機が予め設定された基準位置に移動した時点で、車両用補機を係脱可能に係止する係止部が荷室収納部に設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の補機配設構造。
【請求項6】
車載バッテリからなる車両用補機がガイド支持機構により支持されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の補機配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−120205(P2008−120205A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305415(P2006−305415)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】