車両の車体前部構造
【課題】フロントフードの先端縁が車両の前端に対して後退した位置にある車両において、歩行者の大腿部や頭部が車両に衝突したときの衝撃エネルギーを吸収可能な車両の車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体3の前端部には上下方向に延びるフロントグリル5及びバンパ7が配設され、バンパ7はフロントグリル5から車体後方側へ屈曲して後方側へ延びる。この延びたバンパ7の先端部の近傍位置にフロントフード11のフード先端縁11aが配置され、フロントフード11の先端部の裏面側にラジエータを支持する枠体上部15が車体幅方向に延びて支持された車両1の車体前部構造であって、フロントグリル11、バンパ7、フロントフード11のフード先端部の各内面と、枠体上部15の表面とで囲まれる空間部17内に、車体幅方向に延びて内部が中空で板金製の箱状の衝撃吸収体30が設けられ、衝撃吸収体30は、複数の脚部37を介して枠体上部15に支持される。
【解決手段】車体3の前端部には上下方向に延びるフロントグリル5及びバンパ7が配設され、バンパ7はフロントグリル5から車体後方側へ屈曲して後方側へ延びる。この延びたバンパ7の先端部の近傍位置にフロントフード11のフード先端縁11aが配置され、フロントフード11の先端部の裏面側にラジエータを支持する枠体上部15が車体幅方向に延びて支持された車両1の車体前部構造であって、フロントグリル11、バンパ7、フロントフード11のフード先端部の各内面と、枠体上部15の表面とで囲まれる空間部17内に、車体幅方向に延びて内部が中空で板金製の箱状の衝撃吸収体30が設けられ、衝撃吸収体30は、複数の脚部37を介して枠体上部15に支持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面衝突時に歩行者の脚部や頭部を保護するための車両の車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体の前端部に上下方向に延びて配設されたフロントグリルの上端部の近傍位置にフロントフードのフード先端縁が配置される車両では、例えば、特許文献1に記載されているように、車両が正面から歩行者に衝突すると、歩行者の頭部をフロントフードで受け、フロントフードが撓み変形して衝撃を緩和する技術が開発されている。
【0003】
一方、車体の前端部に上下方向に延びたフロントグリルが配設され、このフロントグリルの上端部からバンパが上方へ延びるとともに車体後方側へ延び、この延びたバンパの先端部の近傍位置にフロントフードのフード先端縁が配置された車両がある。バンパのフロントフード側へ延びるバンパ先端部は、車体幅方向に延びて車体に支持されたビームに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−296851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなフロントフードの先端縁が車両の先端から後退した位置に配置される車両では、車両の前端部とフード先端縁までの距離が、特許文献1に記載されている車両の対応する距離よりも長いため、車両の歩行者への衝突時に、歩行者の頭部がフロントフードの手前側のバンパ先端部に打ち付けられて、抗力が過大化する虞がある。
【0006】
またフロントグリルはバンパを介してビームに支持されているので、歩行者の大腿部がフロントグリルに衝突すると、フロントグリル及びバンパは衝撃吸収性能が低いので、大腿部が受ける抗力も過大化する。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、フロントフードの先端縁が車両の前端に対して後退した位置にある車両において、歩行者の大腿部や頭部が車両に衝突したときの衝撃エネルギーを吸収可能な車両の車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の車両の車体前部構造は、車体の前端部に上下方向に延びて配設されたフロントグリル及びバンパのいずれかの上端部が車体後方側へ延び、この延びた上端部の近傍位置にフロントフードのフード先端縁が配置され、フロントフードの先端部の裏面側にラジエータを支持する剛性部材(実施の形態における枠体上部15)が車体幅方向に延びて支持された車両の車体前部構造であって、フロントグリル、バンパ、フロントフードのフード先端部の各内面と、剛性部材の表面とで囲まれる空間部内に、車体幅方向に延びて内部が中空で板金製の箱状の衝撃吸収体が支持されていることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
また、本発明の衝撃吸収体は、上端部が該衝撃吸収体の底面部に接続され下端部が剛性部材に接続されて車体幅方向に所定間隔を有して配設された複数の脚部を介して剛性部材に支持され、複数の脚部間には、車体の前方から車体内に流入する空気を車体後方側へ流通可能な隙間が形成されていることを特徴とする(請求項2)。
【0010】
また、本発明の脚部は、その上面に衝撃吸収体の底面部の後側に接続される受面を有し、該受面の前端部には下方へ屈曲する段部が設けられ、衝撃吸収体に車体後方側へ向く衝撃荷重が作用すると、衝撃吸収体が段部の前方を下方へ回り込むように回動して脚部を押し潰すことを特徴とする(請求項3)。
【0011】
また、本発明のフロントグリル及びバンパは、衝撃吸収体の表面に取り付けられていることを特徴とする(請求項4)。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係わる車両の車体前部構造によれば、上記特徴を有することで、フロントフードの先端縁が車両の前端に対して後退した位置にある車両において、歩行者の大腿部や頭部が車両に衝突したときの衝撃エネルギーを吸収可能な車両の車体前部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる車体前部構造の要部断面図を示す。
【図2】本発明の一実施の形態に係わる箱状の衝撃吸収体の部分斜視図を示す。
【図3】図1のI矢視に相当する車体前部構造の概略背面図を示す。
【図4】本発明の他の実施の形態に係わる車体前部構造の要部断面図を示す。
【図5】本発明の他の実施の形態に係わる箱状の衝撃吸収体の部分斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の車両の車体前部構造の好ましい実施の形態を図1から図5に基づいて説明する。なお、本実施形態は、車両のうち普通自動車を例にし、特に、フロントフードの先端縁が車両の先端に対して後退した位置に配置された普通自動車について説明する。
【0015】
車両1の車体3の前端部には、上下方向に延びるフロントグリル5が配設され、フロントグリル5の上端部にはフロントグリル5の内側から上方へ延びて車体後方側へ屈曲して後方側へ延びるバンパ7が配設されている。これらフロントグリル5及びバンパ7の一部は、これらの内側に配設される後述する衝撃吸収体30に装着されている。バンパ7の車体後方側へ延びる先端部の近傍には、エンジンルーム9の上部を覆うフロントフード11の先端縁11aが配置されている。つまり、フロントフード11の先端縁11aは車両の前端よりも後退した位置に配置されている。
【0016】
フロントフード11の先端部の下部には下方へ突出するロックストライカ13が設けられている。ロックストライカ13は、これに交差する方向に延びてラジエータを支持する枠体上部15にロック可能に構成されている。枠体上部15は車体幅方向に延び、側面視において上方へ突出するキャップ状に形成されるとともに、枠体上部15の前側端部は前方に屈曲して延びている。つまり、枠体上部15は側面視において段状に形成されている。
【0017】
フロントグリル5、バンパ7、フロントフード11の先端縁11a及び枠体上部15によって囲まれる空間部17に、前述した衝撃吸収体30が設けられている。この衝撃吸収体30について、図1、図2、図3を参照しながら説明する。衝撃吸収体30は、板金製であり、車体幅方向に延びて内部が中空の箱状に形成されている。衝撃吸収体30は、側面視において多角形状に形成され、斜め下方へ傾く底面部と31、底面部31の前後両端部から上方へ延びる前側面部32及び後側面部33と、前側面部32から上方へ延びる前面部34と、後側面部33から前側に延びて前面部34に繋がる上面部35とを有してなる。
【0018】
底面部31には車体幅方向に所定間隔を有して配設された複数の脚部37が取り付けられ、脚部37は枠体上部15にボルト等の締結手段を介して接続されて、衝撃吸収体30及び脚部37は枠体上部15に支持されている。複数の脚部37間には、車体3の前方から車体内に流入する空気を車体後方側へ流通可能な隙間38が形成されている。脚部37は板金製であり、内部が中空の筒状に形成されている。脚部37は、側面視において多角形状に形成され、下方へ向いて枠体上部15に沿って設置される段状の底面39と、底面39の車体幅方向両端部から上方へ延びる一対の側面40、41と、これらの側面40、41の上端部間に繋がる受面42とを有してなる。
【0019】
受面42は、衝撃吸収体30の底面部31に沿って接触する平面部42aと、平面部42aの前端部において屈曲して下方へ延びてさらに前側に屈曲して前方側に延びる段部42bとを有して形成されている。平面部42aは衝撃吸収体30の底面部31の前後方向長さの半分程度の長さを有して、底面部31の後側にボルト等の締結手段を介して接続されている。
【0020】
段部42bは衝撃吸収体30の底面部31の前後方向長さの略中間部に位置している。このため、衝撃吸収体30に車体後方側へ向く衝撃荷重Fa、Fbが作用すると、衝撃吸収体30は段部42bの前方を下方へ回り込むように回動して脚部37の前側を押し潰す。なお、衝撃荷重Faは、車両1が歩行者に衝突したときの歩行者Mの大腿部Mfから作用する荷重であり、衝撃荷重Fbは、車両1が歩行者に衝突したときの歩行者Mの頭部から作用する荷重である。
【0021】
衝撃吸収体30の前面部34には、前後方向に延びる装着凹部34aが設けられ、この装着凹部34aにはフロントグリル5に設けられた係止突起部5aが挿入されて、フロントグリル5は前面部34に取り付けられている。また衝撃吸収体30の上面部35にはボルト等の締結手段を介してバンパ7の後側が取り付けられている。従って、フロントグリル5とバンパ7は、衝撃吸収体30と一体化されている。
【0022】
次に、車両1が正面から歩行者Mに衝突した場合の車体前部構造の作用について、図1を参照しながら説明する。前述したように、本発明の車体前部構造は、フロントフード11の先端縁11aが車両1の前端に対して後退した位置に配置されていることを前提としている。このため、車両1が正面から歩行者に衝突すると、歩行者Mの大腿部Mfがフロントグリル5に衝突するとともに、歩行者Mの頭部がフロントフード11の先端縁11aの周辺部に打ち付けられる。
【0023】
歩行者Mの大腿部Mfがフロントグリル5に衝突し、また歩行者Mの頭部がフロントフード11の先端縁11aの周辺部に打ち付けられると、このときの衝撃荷重Fa、Fbは、下方を向く方向成分を有しているので、これらの衝撃荷重Fa、Fbによって、衝撃吸収体30は脚部37の段部42bとの接触点Pを支点として衝撃吸収体30が段部42bの前方を下方へ回り込むように回動しようとする。このため、この衝撃吸収体30が回動すると脚部37の前側が枠体上部15上に押し潰され、そして、衝撃吸収体30の底面部31を介して脚部37の後側が押し潰され、さらに衝撃吸収体30自体が押し潰される。つまり、脚部37及び衝撃吸収体30の潰れ挙動は衝撃吸収体30の回動と圧壊の2段階になっている。また、衝撃吸収体30には、フロントグリル5やバンパ7が一体的に取り付けられているので、脚部37及び衝撃吸収体30が潰れる際に、フロントグリル5及びバンパ7も一緒に変形することによってフロントグリル5及びバンパ7でも衝撃エネルギーを吸収することもできる。したがって、歩行者Mに作用する抗力の過大化を抑制することができ、衝突時における歩行者Mの脚部Mfや頭部の保護をより向上させることができる。
【0024】
また、衝撃吸収体30は箱状に形成されているので、衝撃荷重Fa、Fbを面で受けて、衝撃吸収体30の変形を車体幅方向に伝播させることができる。このため衝撃エネルギーの吸収をより向上させることができる。
【0025】
なお、前述した実施例では、衝撃吸収体30がフロントグリル5の上下幅と略同じ幅を有するものを示したが、図4、図5に示すように、上面部35がフロントグリル5の下部に位置するような衝撃吸収体30'でもよい。なお、衝撃吸収体30'の説明に際し、衝撃吸収体30と同一態様部分については同一符号を附して説明を省略する。
【0026】
この衝撃吸収体30'は、前側面部34が上面部35よりもさらに上方へ延びて後方側へ屈曲して車体後方側へ延びている。なお、この延びた面部を、以下、頭部受け面部45と記す。つまり、頭部受け面部45は、前側が支持されて後側が自由な片持ち支持構造になっている。このため、歩行者Mの頭部がフロントフード11の先端縁11aの周辺部に衝突した場合、頭部受け面部45が下方へ撓み変形して衝突エネルギーを吸収することができる。また頭部受け面部45は、片持ち支持構造であり、頭部受け面部45の下方には空間部46を介して衝撃吸収体30'の本体側が配置されている。このため、頭部受け面部45の変形量を大きくすることができ、抗力の過大化を防止することができる。
【0027】
また頭部受け面部45の下側には、空気を流通させる流通孔部45aが車体幅方向に所定間隔を有して複数設けられている。このため、エンジンルーム9内への空気の導入を容易にすることができる。なお、衝撃吸収体30'は前述した実施例と同様に底面部31に接続された複数の脚部37を介して枠体上部15に支持されている。
【符号の説明】
【0028】
1 車両
3 車体
5 フロントグリル
7 バンパ
11 フロントフード
11a 先端縁
15 枠体上部(剛性部材)
17 空間部
30、30' 衝撃吸収体
31 底面部
34 前面部(表面)
35 上面部(表面)
37 脚部
38 隙間
42 受面
42b 段部
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面衝突時に歩行者の脚部や頭部を保護するための車両の車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体の前端部に上下方向に延びて配設されたフロントグリルの上端部の近傍位置にフロントフードのフード先端縁が配置される車両では、例えば、特許文献1に記載されているように、車両が正面から歩行者に衝突すると、歩行者の頭部をフロントフードで受け、フロントフードが撓み変形して衝撃を緩和する技術が開発されている。
【0003】
一方、車体の前端部に上下方向に延びたフロントグリルが配設され、このフロントグリルの上端部からバンパが上方へ延びるとともに車体後方側へ延び、この延びたバンパの先端部の近傍位置にフロントフードのフード先端縁が配置された車両がある。バンパのフロントフード側へ延びるバンパ先端部は、車体幅方向に延びて車体に支持されたビームに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−296851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなフロントフードの先端縁が車両の先端から後退した位置に配置される車両では、車両の前端部とフード先端縁までの距離が、特許文献1に記載されている車両の対応する距離よりも長いため、車両の歩行者への衝突時に、歩行者の頭部がフロントフードの手前側のバンパ先端部に打ち付けられて、抗力が過大化する虞がある。
【0006】
またフロントグリルはバンパを介してビームに支持されているので、歩行者の大腿部がフロントグリルに衝突すると、フロントグリル及びバンパは衝撃吸収性能が低いので、大腿部が受ける抗力も過大化する。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、フロントフードの先端縁が車両の前端に対して後退した位置にある車両において、歩行者の大腿部や頭部が車両に衝突したときの衝撃エネルギーを吸収可能な車両の車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の車両の車体前部構造は、車体の前端部に上下方向に延びて配設されたフロントグリル及びバンパのいずれかの上端部が車体後方側へ延び、この延びた上端部の近傍位置にフロントフードのフード先端縁が配置され、フロントフードの先端部の裏面側にラジエータを支持する剛性部材(実施の形態における枠体上部15)が車体幅方向に延びて支持された車両の車体前部構造であって、フロントグリル、バンパ、フロントフードのフード先端部の各内面と、剛性部材の表面とで囲まれる空間部内に、車体幅方向に延びて内部が中空で板金製の箱状の衝撃吸収体が支持されていることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
また、本発明の衝撃吸収体は、上端部が該衝撃吸収体の底面部に接続され下端部が剛性部材に接続されて車体幅方向に所定間隔を有して配設された複数の脚部を介して剛性部材に支持され、複数の脚部間には、車体の前方から車体内に流入する空気を車体後方側へ流通可能な隙間が形成されていることを特徴とする(請求項2)。
【0010】
また、本発明の脚部は、その上面に衝撃吸収体の底面部の後側に接続される受面を有し、該受面の前端部には下方へ屈曲する段部が設けられ、衝撃吸収体に車体後方側へ向く衝撃荷重が作用すると、衝撃吸収体が段部の前方を下方へ回り込むように回動して脚部を押し潰すことを特徴とする(請求項3)。
【0011】
また、本発明のフロントグリル及びバンパは、衝撃吸収体の表面に取り付けられていることを特徴とする(請求項4)。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係わる車両の車体前部構造によれば、上記特徴を有することで、フロントフードの先端縁が車両の前端に対して後退した位置にある車両において、歩行者の大腿部や頭部が車両に衝突したときの衝撃エネルギーを吸収可能な車両の車体前部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる車体前部構造の要部断面図を示す。
【図2】本発明の一実施の形態に係わる箱状の衝撃吸収体の部分斜視図を示す。
【図3】図1のI矢視に相当する車体前部構造の概略背面図を示す。
【図4】本発明の他の実施の形態に係わる車体前部構造の要部断面図を示す。
【図5】本発明の他の実施の形態に係わる箱状の衝撃吸収体の部分斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の車両の車体前部構造の好ましい実施の形態を図1から図5に基づいて説明する。なお、本実施形態は、車両のうち普通自動車を例にし、特に、フロントフードの先端縁が車両の先端に対して後退した位置に配置された普通自動車について説明する。
【0015】
車両1の車体3の前端部には、上下方向に延びるフロントグリル5が配設され、フロントグリル5の上端部にはフロントグリル5の内側から上方へ延びて車体後方側へ屈曲して後方側へ延びるバンパ7が配設されている。これらフロントグリル5及びバンパ7の一部は、これらの内側に配設される後述する衝撃吸収体30に装着されている。バンパ7の車体後方側へ延びる先端部の近傍には、エンジンルーム9の上部を覆うフロントフード11の先端縁11aが配置されている。つまり、フロントフード11の先端縁11aは車両の前端よりも後退した位置に配置されている。
【0016】
フロントフード11の先端部の下部には下方へ突出するロックストライカ13が設けられている。ロックストライカ13は、これに交差する方向に延びてラジエータを支持する枠体上部15にロック可能に構成されている。枠体上部15は車体幅方向に延び、側面視において上方へ突出するキャップ状に形成されるとともに、枠体上部15の前側端部は前方に屈曲して延びている。つまり、枠体上部15は側面視において段状に形成されている。
【0017】
フロントグリル5、バンパ7、フロントフード11の先端縁11a及び枠体上部15によって囲まれる空間部17に、前述した衝撃吸収体30が設けられている。この衝撃吸収体30について、図1、図2、図3を参照しながら説明する。衝撃吸収体30は、板金製であり、車体幅方向に延びて内部が中空の箱状に形成されている。衝撃吸収体30は、側面視において多角形状に形成され、斜め下方へ傾く底面部と31、底面部31の前後両端部から上方へ延びる前側面部32及び後側面部33と、前側面部32から上方へ延びる前面部34と、後側面部33から前側に延びて前面部34に繋がる上面部35とを有してなる。
【0018】
底面部31には車体幅方向に所定間隔を有して配設された複数の脚部37が取り付けられ、脚部37は枠体上部15にボルト等の締結手段を介して接続されて、衝撃吸収体30及び脚部37は枠体上部15に支持されている。複数の脚部37間には、車体3の前方から車体内に流入する空気を車体後方側へ流通可能な隙間38が形成されている。脚部37は板金製であり、内部が中空の筒状に形成されている。脚部37は、側面視において多角形状に形成され、下方へ向いて枠体上部15に沿って設置される段状の底面39と、底面39の車体幅方向両端部から上方へ延びる一対の側面40、41と、これらの側面40、41の上端部間に繋がる受面42とを有してなる。
【0019】
受面42は、衝撃吸収体30の底面部31に沿って接触する平面部42aと、平面部42aの前端部において屈曲して下方へ延びてさらに前側に屈曲して前方側に延びる段部42bとを有して形成されている。平面部42aは衝撃吸収体30の底面部31の前後方向長さの半分程度の長さを有して、底面部31の後側にボルト等の締結手段を介して接続されている。
【0020】
段部42bは衝撃吸収体30の底面部31の前後方向長さの略中間部に位置している。このため、衝撃吸収体30に車体後方側へ向く衝撃荷重Fa、Fbが作用すると、衝撃吸収体30は段部42bの前方を下方へ回り込むように回動して脚部37の前側を押し潰す。なお、衝撃荷重Faは、車両1が歩行者に衝突したときの歩行者Mの大腿部Mfから作用する荷重であり、衝撃荷重Fbは、車両1が歩行者に衝突したときの歩行者Mの頭部から作用する荷重である。
【0021】
衝撃吸収体30の前面部34には、前後方向に延びる装着凹部34aが設けられ、この装着凹部34aにはフロントグリル5に設けられた係止突起部5aが挿入されて、フロントグリル5は前面部34に取り付けられている。また衝撃吸収体30の上面部35にはボルト等の締結手段を介してバンパ7の後側が取り付けられている。従って、フロントグリル5とバンパ7は、衝撃吸収体30と一体化されている。
【0022】
次に、車両1が正面から歩行者Mに衝突した場合の車体前部構造の作用について、図1を参照しながら説明する。前述したように、本発明の車体前部構造は、フロントフード11の先端縁11aが車両1の前端に対して後退した位置に配置されていることを前提としている。このため、車両1が正面から歩行者に衝突すると、歩行者Mの大腿部Mfがフロントグリル5に衝突するとともに、歩行者Mの頭部がフロントフード11の先端縁11aの周辺部に打ち付けられる。
【0023】
歩行者Mの大腿部Mfがフロントグリル5に衝突し、また歩行者Mの頭部がフロントフード11の先端縁11aの周辺部に打ち付けられると、このときの衝撃荷重Fa、Fbは、下方を向く方向成分を有しているので、これらの衝撃荷重Fa、Fbによって、衝撃吸収体30は脚部37の段部42bとの接触点Pを支点として衝撃吸収体30が段部42bの前方を下方へ回り込むように回動しようとする。このため、この衝撃吸収体30が回動すると脚部37の前側が枠体上部15上に押し潰され、そして、衝撃吸収体30の底面部31を介して脚部37の後側が押し潰され、さらに衝撃吸収体30自体が押し潰される。つまり、脚部37及び衝撃吸収体30の潰れ挙動は衝撃吸収体30の回動と圧壊の2段階になっている。また、衝撃吸収体30には、フロントグリル5やバンパ7が一体的に取り付けられているので、脚部37及び衝撃吸収体30が潰れる際に、フロントグリル5及びバンパ7も一緒に変形することによってフロントグリル5及びバンパ7でも衝撃エネルギーを吸収することもできる。したがって、歩行者Mに作用する抗力の過大化を抑制することができ、衝突時における歩行者Mの脚部Mfや頭部の保護をより向上させることができる。
【0024】
また、衝撃吸収体30は箱状に形成されているので、衝撃荷重Fa、Fbを面で受けて、衝撃吸収体30の変形を車体幅方向に伝播させることができる。このため衝撃エネルギーの吸収をより向上させることができる。
【0025】
なお、前述した実施例では、衝撃吸収体30がフロントグリル5の上下幅と略同じ幅を有するものを示したが、図4、図5に示すように、上面部35がフロントグリル5の下部に位置するような衝撃吸収体30'でもよい。なお、衝撃吸収体30'の説明に際し、衝撃吸収体30と同一態様部分については同一符号を附して説明を省略する。
【0026】
この衝撃吸収体30'は、前側面部34が上面部35よりもさらに上方へ延びて後方側へ屈曲して車体後方側へ延びている。なお、この延びた面部を、以下、頭部受け面部45と記す。つまり、頭部受け面部45は、前側が支持されて後側が自由な片持ち支持構造になっている。このため、歩行者Mの頭部がフロントフード11の先端縁11aの周辺部に衝突した場合、頭部受け面部45が下方へ撓み変形して衝突エネルギーを吸収することができる。また頭部受け面部45は、片持ち支持構造であり、頭部受け面部45の下方には空間部46を介して衝撃吸収体30'の本体側が配置されている。このため、頭部受け面部45の変形量を大きくすることができ、抗力の過大化を防止することができる。
【0027】
また頭部受け面部45の下側には、空気を流通させる流通孔部45aが車体幅方向に所定間隔を有して複数設けられている。このため、エンジンルーム9内への空気の導入を容易にすることができる。なお、衝撃吸収体30'は前述した実施例と同様に底面部31に接続された複数の脚部37を介して枠体上部15に支持されている。
【符号の説明】
【0028】
1 車両
3 車体
5 フロントグリル
7 バンパ
11 フロントフード
11a 先端縁
15 枠体上部(剛性部材)
17 空間部
30、30' 衝撃吸収体
31 底面部
34 前面部(表面)
35 上面部(表面)
37 脚部
38 隙間
42 受面
42b 段部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前端部に上下方向に延びて配設されたフロントグリル及びバンパのいずれかの上端部が車体後方側へ延び、この延びた上端部の近傍位置にフロントフードのフード先端縁が配置され、前記フロントフードの先端部の裏面側にラジエータを支持する剛性部材が車体幅方向に延びて支持された車両の車体前部構造であって、
前記フロントグリル、前記バンパ、前記フロントフードのフード先端部の各内面と、前記剛性部材の表面とで囲まれる空間部内に、車体幅方向に延びて内部が中空で板金製の箱状の衝撃吸収体が支持されている
ことを特徴とする車両の車体前部構造。
【請求項2】
前記衝撃吸収体は、上端部が該衝撃吸収体の底面部に接続され下端部が前記剛性部材に接続されて車体幅方向に所定間隔を有して配設された複数の脚部を介して前記剛性部材に支持され、
前記複数の脚部間には、車体の前方から車体内に流入する空気を車体後方側へ流通可能な隙間が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の車体前部構造。
【請求項3】
前記脚部は、その上面に前記衝撃吸収体の底面部の後側に接続される受面を有し、該受面の前端部には下方へ屈曲する段部が設けられ、
前記衝撃吸収体に車体後方側へ向く衝撃荷重が作用すると、前記衝撃吸収体が前記段部の前方を下方へ回り込むように回動して前記脚部を押し潰す
ことを特徴とする請求項2に記載の車両の車体前部構造。
【請求項4】
前記フロントグリル及び前記バンパは、前記衝撃吸収体の表面に取り付けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両の車体前部構造。
【請求項1】
車体の前端部に上下方向に延びて配設されたフロントグリル及びバンパのいずれかの上端部が車体後方側へ延び、この延びた上端部の近傍位置にフロントフードのフード先端縁が配置され、前記フロントフードの先端部の裏面側にラジエータを支持する剛性部材が車体幅方向に延びて支持された車両の車体前部構造であって、
前記フロントグリル、前記バンパ、前記フロントフードのフード先端部の各内面と、前記剛性部材の表面とで囲まれる空間部内に、車体幅方向に延びて内部が中空で板金製の箱状の衝撃吸収体が支持されている
ことを特徴とする車両の車体前部構造。
【請求項2】
前記衝撃吸収体は、上端部が該衝撃吸収体の底面部に接続され下端部が前記剛性部材に接続されて車体幅方向に所定間隔を有して配設された複数の脚部を介して前記剛性部材に支持され、
前記複数の脚部間には、車体の前方から車体内に流入する空気を車体後方側へ流通可能な隙間が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の車体前部構造。
【請求項3】
前記脚部は、その上面に前記衝撃吸収体の底面部の後側に接続される受面を有し、該受面の前端部には下方へ屈曲する段部が設けられ、
前記衝撃吸収体に車体後方側へ向く衝撃荷重が作用すると、前記衝撃吸収体が前記段部の前方を下方へ回り込むように回動して前記脚部を押し潰す
ことを特徴とする請求項2に記載の車両の車体前部構造。
【請求項4】
前記フロントグリル及び前記バンパは、前記衝撃吸収体の表面に取り付けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両の車体前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2013−43550(P2013−43550A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182724(P2011−182724)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
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