説明

車両の車体補強構造及びその車体補強構造の組立分解方法

【課題】連結部材のリンクブラケットへの仮預け時に、連結部材の車体前後方向への倒れ及び車幅方向への倒れを確実に抑制することが出来る車両の車体補強構造を提供する。
【解決手段】本発明による車体補強構造は、サイドパネル12に取り付けられたリンクブラケット30と、車幅方向に延びるクロスバー部材44と、これらを連結する連結部材60とを備え、リンクブラケット及び連結部材の各接続部30a,62には、連結部材がリンクブラケットに仮預けされたとき連結部材の車体前後方向への倒れを規制する第1規制部30d,62fが設けられ、リンクブラケット及び連結部材の各接続部30a,62には、連結部材がリンクブラケットに仮預けされたとき連結部材の車幅方向への倒れを規制する第2規制部30c,80が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体補強構造等、特に、格納式屋根と、車体の両側面を構成するサイドパネルとを備えた車両の車体補強構造等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、本出願人により提案された、サイドパネルに取り付けられたリンクブラケットと車幅方向に延びるクロスバーとの連結構造が開示されている。
また、本出願人は、連結部材をリンクブラケットに仮組したときに連結部材の倒れを規制する規制手段を設けた連結構造について出願している(特願2004−367582)。この規制手段は、リンクブラケットに設けた直方体状の突出部と、連結部材に形成された開口部とで構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−186691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した規制手段は、車体前後方向の倒れのみを考慮したものであるので、車幅方向への倒れを規制しにくいものであった。また、上記の出願のように直方体状の突出部とすれば、その上面及び下面を利用して車幅方向の倒れを少しは抑制することが出来るものの十分ではなく、さらに、突出部が直方体状であるので仮組時に作業性が悪いものであった。
【0005】
一方、近年、格納式屋根を電動モータで昇降させるものがある。このような車両においては、クロスバーを取り外さずに、そのような電動モータやリンク機構などのメンテナンスや修理を行うことが要請されている。
【0006】
本発明は、従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、リンクブラケットとクロスバーとそれらを連結する連結部材とを有する車体補強構造において、連結部材のリンクブラケットへの仮預け時に、連結部材の車体前後方向への倒れ及び車幅方向への倒れを確実に抑制することが出来る車両の車体補強構造を提供することを目的とする。
また、本発明は、リンクブラケットとクロスバーとそれらを連結する連結部材とを有する車体補強構造において、連結部材のリンクブラケットへの仮預け時の作業性が良好な車両の車体補強構造を提供することを目的とする。
また、本発明は、リンクブラケットとクロスバーとそれらを連結する連結部材とを有する車体補強構造において、クロスバーを取り外さずに連結部材のみを取り外すことが出来る車両の車体補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明は、格納式屋根と、車体の両側面を構成するサイドパネルとを備えた車両の車体補強構造であって、サイドパネルにそれぞれ取り付けられ、格納式屋根の昇降用リンク部材を支持するリンクブラケットと、これらのリンクブラケットの車幅方向内方に配置され車幅方向に延びるクロスバー部材と、リンクブラケットとクロスバー部材とを連結する連結部材と、を備え、リンクブラケット及び連結部材には、それぞれ、車幅方向に延び互いに重ね合わされると共に互いに固定される平面部を有する接続部が形成され、リンクブラケット及び連結部材の各接続部には、連結部材がリンクブラケットに仮預けされたとき連結部材の車体前後方向への倒れを規制する第1規制部が設けられ、リンクブラケット及び連結部材の各接続部には、連結部材がリンクブラケットに仮預けされたとき連結部材の車幅方向への倒れを規制する第2規制部が設けられていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、第1規制部及び第2規制部により、連結部材の仮預け時に生じる車体前後方向及び車幅方向の両方向における倒れを規制することが出来る。特に、連結部材の重心が接続部に対して車両前方又は車両後方で且つ車幅方向内方に位置している場合に有効である。さらに、第1規制部は車体前後方向の倒れのみを規制すれば良いので、例えばその端面を丸めることが出来、連結部材のリンクブラケットへの仮預け時の作業性及び取り外し時の作業性が良好となる。
【0008】
また、本発明において、好ましくは、リンクブラケットと連結部材とは第2規制部を介して係合可能であり、第2規制部は、リンクブラケットと連結部材とが第2規制部を介して係合したとき、連結部材が第2規制部を中心に回動可能なように構成されている。
このように構成された本発明においては、連結部材が第2規制部を中心に回動可能なようにリンクブラケットに係合するので、確実に仮預けさせることが出来ると共に仮預け時及び取り外し時の作業性が良好となる。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、第1規制部は、連結部材を第2規制部を中心に第1の方向に回動させると、リンクブラケットと連結部材とが第1規制部を介して係合し、或いは、第1の方向と反対の第2の方向に回動させるとその係合が外れるように構成されている。
このように構成された本発明においては、連結部材を回動させることにより第1規制部材による係合及び非係合を行うことが出来るので、確実に仮預けさせることが出来ると共に仮預け時及び取り外し時の作業性が良好となる。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、連結部材を第2の方向に回動させるとき、連結部材とクロスバー部材との間には、少なくとも第1連結部材との係合が外れるまで連結部材がクロスバーと干渉しないように隙間が設けられている。
このように構成された本発明においては、クロスバーを外さなくても連結部材を外すことが出来るので、車体補強構造の組み付け後に、例えば格納式屋根を昇降させるリンクや電動ユニットなどのメンテナンスが容易となる。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、第1規制部は、リンクブラケット或いは連結部材のいずれか一方の接続部に設けられた突出部と、他方の接続部に設けられ突出部を受け入れる開口部とで構成され、第2規制部は、リンクブラケット或いは連結部材のいずれか一方の接続部に設けられたピン部材と、他方の接続部に設けられピン部材を受け入れる孔部とで構成されている。
このように構成された本発明においては、より確実に連結部材の倒れを規制することが出来る。
【0012】
また、上記の目的を達成するために本発明は、格納式屋根と、車体の両側面を構成するサイドパネルとを備えた車両の車体補強構造であって、サイドパネルにそれぞれ取り付けられ、格納式屋根の昇降用リンク部材を支持するリンクブラケットと、これらのリンクブラケットの車幅方向内方に配置され車幅方向に延びるクロスバー部材と、リンクブラケットとクロスバー部材とを連結する連結部材と、を備え、リンクブラケット及び上記連結部材には、それぞれ、車幅方向に延び互いに重ね合わされると共に互いに固定される平面部を有する接続部が形成され、リンクブラケット及び連結部材の各接続部には、互いに係合して連結部材の車体前後方向への倒れを規制する第1規制部が設けられ、リンクブラケット及び連結部材の各接続部には、互いに係合して連結部材の車幅方向への倒れを規制する第2規制部が設けられ、この第2規制部は、連結部材が第2規制部を中心に回動可能なように構成され、第1規制部は、この回動により互いに係合するように構成されている車体補強構造を組み立てる方法において、リンクブラケットをサイドパネルにそれぞれ取り付ける工程と、連結部材を第2規制部によりリンクブラケットに仮預けする工程と、連結部材を第2規制部を中心に回動させて連結部材を第1規制部によりリンクブラケットに仮預けする工程と、連結部材の平面部とリンクブラケットの平面部とを互いに固定する工程と、連結部材とクロスバーとを互いに固定する工程と、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、連結部材の車体前後方向及び車幅方向の倒れを確実に規制しながら仮預けを行うことが出来、さらに、リンクブラケットとクロスバーとを確実に連結することが出来る。
【0013】
また、上記の目的を達成するために本発明は、格納式屋根と、車体の両側面を構成するサイドパネルとを備えた車両の車体補強構造であって、サイドパネルにそれぞれ取り付けられ、格納式屋根の昇降用リンク部材を支持するリンクブラケットと、これらのリンクブラケットの車幅方向内方に配置され車幅方向に延びるクロスバー部材と、リンクブラケットとクロスバー部材とに固定されてそれらを連結する連結部材と、を備え、リンクブラケット及び連結部材には、それぞれ、車幅方向に延び互いに重ね合わされると共に互いに固定される平面部を有する接続部が形成され、リンクブラケット及び連結部材の各接続部には、互いに係合して連結部材の車体前後方向への倒れを規制する第1規制部が設けられ、リンクブラケット及び連結部材の各接続部には、互いに係合して連結部材の車幅方向への倒れを規制する第2規制部が設けられ、この第2規制部は、連結部材が第2規制部を中心に第1の方向及びこの第1の方向と反対の第2の方向に回動可能なように構成され、第1規制部は、第1の方向の回動により互いに係合し、第2の方向の回動によりその係合が外れるように構成されている車体補強構造を分解する方法において、連結部材とクロスバーとの固定を外す工程と、連結部材とリンクブラケットとの固定を外す工程と、連結部材を第2の方向に回動させて第1規制部の係合を解く工程と、第2規制部の係合を解いて連結部材を取り外す工程と、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、連結部材の車体前後方向及び車幅方向の倒れを確実に規制しながら連結部材をリンクブラケット及びクロスバーから外すことが出来る。その結果、例えば格納式屋根を昇降させるリンクや電動ユニットなどのメンテナンスが容易となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、連結部材のリンクブラケットへの仮預け時に、連結部材の車体前後方向への倒れ及び車幅方向への倒れを確実に抑制することが出来る。また、連結部材のリンクブラケットへの仮預け時の作業性が良好となる。また、クロスバーを取り外さずに連結部材のみを取り外すことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
先ず、図1乃至図3により、本発明の実施形態による車体補強構造が適用された車両の後方部分の構造を説明する。
図1は、本発明の実施形態による車体補強構造が適用された車両の後方部分を示す斜視図であり、図2は、本発明の実施形態による車体補強構造が適用された車両の後方部分を左側から見た側面図であり、図3は、本発明の実施形態による車体補強構造が適用された車両の右側後方部分を示す斜視図である。
【0016】
図1に示すように、車両1は、車室の床を構成するフロアパネル2と、このフロアパネル2から車両上方に突出し前後方向に延びるフロアトンネル4と、これらのフロアパネル2及びフロアトンネル4の後端部において斜め上方に後方に傾斜して延びるキックアップパネル6と、このキックアップパネル6の上端部から車両後方に延び荷室の床を構成するリアフロアパネル8と、リアフロアパネル8の後端部で上下方向に延びるリアパネル10と、車両の両側面を構成する上下方向に延びる一対のサイドパネル12とを備えている。
【0017】
車両1は、さらに、車体補強フレームとして、フロアパネル2の左右両端側でそれぞれ車体前後方向に延びる一対のサイドシル14と、フロアトンネル4に形成され前後方向に延びるバックボーンフレーム16と、このバックボーンフレーム16の後端部が接続され左右両側のサイドパネル12間を車幅方向に延びる矩形状の閉断面構造のクロスメンバ18と、を備えている。
【0018】
フロアパネル2には、フロアトンネル4の左右両側においてそれぞれ車幅方向に延びる前側シートブラケット20と、後側シートブラケット22とが形成され、これらのシートブラケット20、22にシート24(左側シートのみ図示)が取り付けられている。
【0019】
図1乃至図3に示すように、一対のサイドパネル12には、それぞれ、リンクブラケット30が固定されている。これらのリンクブラケット30には、それぞれ、メインリンク32と、サブリンク34が取り付けられ、これらのリンク32、34により、ルーフユニット(格納式屋根)28が回動自在に支持されている。ルーフユニット28は、本実施形態では幌であるが、ハードトップでも良い。
【0020】
リンクブラケット30には、さらに、モータ部38a及び減速機38b(図7参照)を有する電動ユニット38が取り付けられている。これらの電動ユニット38は、図2に示すように、歯車や駆動部材などを介して各リンク32、34に接続されており、ルーフユニット28を電動でルーフ格納部36(図2)に格納させ、或いは、屋根の機能を果たすように通常の位置に展開させるようになっている。
【0021】
次に、車体1は、さらに、シート24の背後に車両上下方向に延びる一対のロールバー42と、一対のサイドパネル12の間で車幅方向に延びるクロスバー44とを備えている。
クロスバー44は、車体前方側に配置されたコの字状の前方側クロスバー部材56と、車体後方側に配置されたコの字状の後方側クロスバー部材58とで構成され、これらの部材を組み合わせて矩形状の閉断面が形成される。
【0022】
ロールバー42は、1本の丸パイプをU字状に形成したものであり、逆U字状に上下方向に延びるように配置されている。ロールバー42は、U字状に大きく曲げられた上方部分42aと、その上方部分の左右でそれぞれ上下方向に延びる車幅方向外方側のロールバー外方部42b及び車幅方向内方側のロールバー内方部42cとを有する。
【0023】
図3に示すように、クロスバー44の上面部及び下面部には、それぞれロールバー挿通孔44aが形成されており、ロールバー外方部42b及びロールバー内方部42cは、それらの挿通孔44aに挿通されて下方に貫通している。ロールバー42とクロスバー44とは、ボルト96により互いに締結され、さらに、挿通孔44aにおいて溶接されて互いに固定されている。
【0024】
ロールバー内方部42cは、その下端部がクロスバー44の下壁部から大きく突出しない程度にクロスバー44を貫通している。
ロールバー外方部42bは、クロスバー44の下方で車両前方に向けて斜め下方に延び、その下端部がほぼ三角形状のフランジ52を介してボルト54でクロスメンバ18に固定されている。また、ロールバー外方部42bは、サイドバー48によりサイドパネル12に連結されている。
【0025】
図3に示すように、クロスバー44とリンクブラケット30とは、連結部材60で互いに連結されている。図4乃至図6により、この連結部材60の構造を説明する。図4は、本発明の実施形態によるクロスバー、リンクブラケット及びこれらを連結する連結部材を示す斜視図であり、図5は、図4のV-V線に沿って見た断面構造を示す断面図であり、図6は、本発明の実施形態による連結部材を示す斜視図である。
【0026】
先ず、図4乃至図6に示すように、連結部材60は、第1部材62と、角パイプ64と、第2部材66と、第3部材68と、第1補強部材70と、第2補強部材72とで構成されている。なお、連結部材60を一体成形により形成しても良い。
先ず、第1部材62は、平面視でL字状に形成された板部材であり、車幅方向に延びる第1平面部62aと、この第1平面部62aから車体後方側に折れ曲げられた屈曲部62bと、車体前後方向に延びる第2平面部62bとを有する。この第1部材62は、リンクブラケット30に接続される接続部として構成されている。
【0027】
角パイプ64は、第1部材62に溶接により固定されている。図5に示すように、角パイプ64は、第1部材62の側から車体後方に向けて延びると共にその途中から車幅方向内方に向けて折り曲げられ、平面視でくの字状に形成されている。
この角パイプ64の車体後方側且つ車幅方向外方側の部分には、第2部材66の車幅方向外方端部が溶接され、また、角パイプ64の車体後方側且つ車幅方向内方側の部分には、第3部材68が溶接されている。
【0028】
図5及び図6に示すように、第2部材66は、角パイプ64との溶接部から車幅方向内方に向けて湾曲して延びている。また、図6に示すように、第3部材68は、第2部材66と共に閉断面を形成するように断面コの字状に形成され、その端縁部が第2部材66に溶接により固定されている。
【0029】
図6に示すように、第1補強部材70は、角パイプ62と、第2及び第3部材66、68とに、それぞれ溶接により固定されている。第2補強部材72は、第3部材68の内方に配置されている。第3部材68及び第2補強部材72には、ボルト挿通孔68a、72aによりシートベルトアンカ106(図3参照)が固定されるようになっている。
【0030】
次に、図4乃至図8により、連結部材60とリンクブラケット30との連結構造を説明する。図7は、図4において連結部材を省略して示す斜視図であり、図8は、図4のVIII-VIII線に沿って見た断面図である。
連結部材60は、第1部材62によって、リンクブラケット30に仮預けされると共にリンクブラケット30に取り外し可能に固定されるようになっている。
【0031】
先ず、図7に示すように、リンクブラケット30には、サイドパネル12に固定された本体部分から車幅方向内方に延びる平面部30aが形成されている。この平面部30aは、連結部材60に接続される接続部として構成されている。図7及び図8に示すように、この平面部30aには、車体上下方向に並んだ2つのボルト挿通孔30bが形成されている。また、これらのボルト挿通孔30bに対応してウェルドナット81が設けられている。
【0032】
さらに、平面部30aには、ボルト挿通孔30bの上方の位置に、ピン部材80(図4、図8参照)が挿通されるピン挿通孔30cが形成されている。
さらに、図7に示すように、この平面部30aは、その端縁部から車幅方向内方に突出する突出部30dを有している。この突出部30dは、その車体前方側及び車体後方側の面が平面となっている。この突出部30dは、その車幅方向内方の端縁部が、車体前後方向から見て曲線が連続するように丸められている。
【0033】
一方、図6及び図8に示すように、第1部材62の平面部62aには、上述した各孔30b、30cに対向するように、車体上下方向に並んだ2つのボルト挿通孔62dと、その上方のピン挿通孔62eが形成されている。このピン挿通孔62eには、予め車体前後方向に延びるようにピン部材80が挿入され、このピン部材80は、第1部材62に溶着されている。ピン部材80は、この溶着された状態で、リンクブラケット30のピン挿通孔30cを貫通する程度の長さに形成されている。
【0034】
また、図4及び図6に示すように、第1部材62の屈曲部62bには、上述したリンクブラケット30の突出部30dを受け入れる開口部62fが車体上下方向に延びるように形成されている。開口部62fは、突出部30dの幅(車体前後方向の幅)よりもわずかに大きい幅を有する。また、開口部62fは、突出部30dの高さよりもわずかに大きい高さを有する。
【0035】
図4及び図8に示すように、第1部材62とリンクブラケット30の平面部30aとは、ピン部材80がピン挿通孔30cに挿通され、突出部30dが開口部62fに受け入れられた状態で、ボルト82及びウェルドナット81により互いに固定されている。さらに、図4に示すように、第1部材62の下方部分62gも、ボルト83により、リンクブラケット30に締結されている。
【0036】
次に、図4乃至図9により、連結部材60とクロスバー44との連結構造を説明する。図9は、図5のIX-IX線に沿って見た断面図である。
本実施形態では、連結部材60がリンクブラケット30に固定された後、第2部材66及び第3部材68の車幅方向内方の部分に、クロスバー44が固定されるようになっている。
先ず、第2部材66とクロスバー44との連結構造を説明する。図6に示すように、第2部材66の車幅方向内方の部分には、取付面66aが形成され、この取付面66aには、車体上下方向に並べられた2つのボルト挿通孔66bが形成されている。また、取付面66aの下方端縁部からは、車体前方側且つ車体下方側に向けて折り曲げられたフランジ部66cが形成されている。
【0037】
図5及び図9に示すように、第2部材66の取付面66aとクロスバー44の後方面とが合わせられた状態で、車体前後方向に延びるボルト96が、クロスバー44を貫通し、さらに、ボルト挿通孔66bを貫通して、ナット98により締結されている。このようにして、第2部材66とクロスバー44とが互いに固定される。
【0038】
ここで、ロールバー42のロールバー外方部42bには、上下方向に離間し前後方向に延びる2つの中空円筒状のスペーサ部材94が固定されている。これらのスペーサ部材94は、クロスバー44の閉断面内を前後方向に延び、その両端部が、クロスバー44の前壁部と、クロスバー44の後壁部とに当接している。ボルト96は、これらのスペーサ部材94をも共締めすることにより、ロールバー42とクロスバー44とを互いに固定するようになっている。
さらに、クロスバー44の前壁部に合わせられた補強部材100が設けられており、この補強部材100もボルト96により共締めされている。
【0039】
次に、第3部材68とクロスバー44との連結構造を説明する。図6に示すように、第3部材68には、取付面68bが形成され、この取付面68bには、車体上下方向に並べられた2つのボルト挿通孔68cが形成されている。
ここで、図5に示すように、クロスバー44の前壁部は車幅方向外方に延長されており、この延長された部分と取付面68bとが合わせられている。ボルト102は、上述した補強部材100及びクロスバー44の前壁部を貫通し、さらに、ボルト挿通孔68cを貫通して、ウェルドナット104に締結されている。このようにして、第3部材68とクロスバー44とが固定されている。
【0040】
次に、本発明の実施形態によるリンクブラケット30、連結部材60及びクロスバー44の組み付け方法を説明する。
先ず、サイドパネル12にリンクブラケット30を固定する。その後、このリンクブラケット30に、連結部材60を仮預けする。なお、連結部材60は、図6のような状態に既に組み立てられている。
【0041】
ここで、連結部材60のリンクブラケット30への仮預け方法を説明する。
先ず、連結部材60をリンクブラケット30の前方側からリンクブラケット30に近づけて、第1部材62に溶着されたピン部材80を、リンクブラケット30の平面部30aに形成されたピン挿通孔30cに挿通させる。このときの状態を図10に示す。この図10に示すように、リンクブラケット30の突出部30dと第1部材62とが干渉しないように、連結部材60をピン部材80を中心に斜め上方に傾けた状態で、ピン部材80をピン挿通孔30cに挿通させる。
【0042】
その後、斜め上方に傾けていた連結部材60をピン部材80を中心に下方に向けて回動させる。そして、突出部30dに第1部材62の開口部62fを嵌める(突出部30dと開口部62fとを係合させる)。このときの状態を図11に示す。この図11に示す位置に配置された連結部材60は、ボルト82及びナット81が締結されていない状態において、その車体前後方向の動きが、突出部30dにより規制され、その車幅方向の動きが、ピン部材80を受け入れるピン挿通孔30cにより規制される。
【0043】
即ち、開口部62fは、突出部30dの幅(車体前後方向の幅)よりもわずかに大きい幅に形成されており、連結部材62が車体前後方向に動こうとしても、この開口部62fが、突出部30dの車体前方側及び車体後方側の平面に当接して、そのような車体前後方向の動きが規制されるのである。このように、突出部30d及び開口部62fが、車体前後方向移動規制部とされている。
なお、このような前後方向移動規制効果が得られるように、突出部30dに相当する突出部を連結部材60に設け、開口部62fに相当する開口部をリンクブラケット30に設けても良い。
【0044】
ここで、突出部30dは、車体前後方向から見て、平面部30aの端縁部からなめらかな円弧状の曲線が連続するように突出しているので、開口部62fをこの突出部30dに嵌めやすくなっている。
【0045】
また、ピン部材80はピン挿通孔30cの内方を車体前後方向に延びており、連結部材62が車幅方向に動こうとしても、ピン部材80がピン挿通孔30cに当接して、そのような車幅方向の動きが規制されるのである。このように、ピン部材80及びピン挿通孔30cが、車幅方向移動規制部とされている。
なお、このような車幅方向移動規制効果が得られるように、ピン部材80に相当するピン部材をリンクブラケット30に設け、ピン挿通穴30cに相当する挿通孔を連結部材60に設けても良い。
【0046】
ここで、図3及び図5で最も良く分かるように、連結部材60の重心は、リンクブラケット30との接続部(仮預けに用いられる部分)よりも、車幅方向内方且つ車体前後方向後方に位置している。従って、連結部材60には、車幅方向内方に倒れ込もうとし、且つ、車体前後方向後方に傾こうとする。しかしながら、上述した車体前後方向規制部及び車幅方向規制部により、連結部材62は、図11に示すようなリンクブラケット30に仮預けされた状態に保持される。その結果、平面部62a、30a同士が互いに相対すると共にほぼ接するような位置に保持される。
【0047】
その後、この仮預けされた状態から、図4及び図8に示すように、ボルト82をウェルドナット81に締結すると、平面部62a、30a同士が完全に接した状態となり、連結部材60がリンクブラケット30に固定される。また、ボルト83も締結される。
【0048】
その後、クロスバー44及びロールバー42が図1に示す位置に配置される。このとき、クロスバー44は、図5に示すように、連結部材60の第2部材66及び第3部材68に対して車体前方側から合わせられる。
その状態で、補強部材100を介してボルト96、102とナット98、104により、クロスバー44が第2及び第3部材66、68に締結されて、クロスバー44が連結部材60に固定される。さらに、図3に示すように、サイドバー48及びフランジ52も車体側に取り付けられる。
【0049】
ここで、図3に示すように、上述したような取付け構造により、連結部材60は、車幅方向内方から電動ユニット38に覆い被さるような状態でリンクブラケット30及びクロスバー44に取り付けられる。このような構造において、例えば、電動ユニット38のメンテナンスや修理等は、上述したような車体補強構造を分解しなければ困難である。しかし、リンクブラケット30、連結部材60及びクロスバー44などを取り外すのは非常に手間がかかる。本実施形態では、連結部材60のみを取り外して、メンテナンス等が容易に行えるようにしている。即ち、本発明の実施形態による車体補強構造によれば、以下のような分解方法が可能である。
【0050】
先ず、連結部材60とクロスバー44との固定を外す。具体的には、ボルト96、102とナット98、104との締結を緩めて、ボルト96、102を外す。
その後、連結部材60とリンクブラケット30との固定を外す。具体的には、ボルト82とナット81との締結を緩めて、ボルト82を外す。
【0051】
このとき、連結部材60は、図11に示すように、車体前後方向規制部及び車幅方向規制部により、リンクブラケット30に仮預けされた状態に保持される。その後、図10に示すように、連結部材60をピン部材80を中心に上方に向けて回動させて、突出部30dと第1部材62の開口部62fとの係合を解く。
【0052】
ここで、上述したように、第2部材66には、車体前方側且つ車体下方側に向けて折り曲げられたフランジ部66c(図6及び図9参照)が形成されている。従って、連結部材60をピン部材80を中心に上方に回動させると、このフランジ部66cが、クロスバー44に当接する恐れがある。
【0053】
しかしながら、本実施形態では、クロスバー44とフランジ部66cとの間に隙間S(図9参照)を形成しているので、連結部材60をピン部材80を中心に上方に回動させることが出来るようになっている。この隙間Sは、突出部30dと開口部62fとの係合を解くことが出来るような回動量が得られるような大きさとなっている。
【0054】
突出部30dと第1部材62の開口部62fとの係合を解いた後、連結部材60を前方に移動させて、ピン部材80を、ピン挿通孔30cから外す。このようにして、連結部材60のみを車体側から取り外すことが出来る。
図3や図11から判断出来るように、連結部材60を取り外せば、その下方に配置された電動ユニット38のメンテナンスや修理が容易となることが分かる。このようにして、クロスバー44を取り外すことなく、電動ユニット38のメンテナンスや修理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態による車体補強構造が適用された車両の後方部分を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態による車体補強構造が適用された車両の後方部分を左側から見た側面図である。
【図3】本発明の実施形態による車体補強構造が適用された車両の右側後方部分を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態によるクロスバー、リンクブラケット及びこれらを連結する連結部材を主に示す斜視図である。
【図5】図4のV-V線に沿って見た断面図である。
【図6】本発明の実施形態による連結部材を示す斜視図である。
【図7】図4において連結部材を省略して示す斜視図である。
【図8】図4のVIII-VIII線に沿って見た断面図である。
【図9】図5のIX-IX線に沿って見た断面図である。
【図10】図11に示す仮預け状態にするためにピン部材を先ずピン挿通孔に係合させた状態、或いは、図11に示す仮預け状態から連結部材を回動させて突出部と開口部との係合を解いた状態を示すリンクブラケット及び連結部材を車体前方側から見た正面図である。
【図11】連結部材がリンクブラケットに仮預けされた状態を示すリンクブラケット及び連結部材を車体前方側から見た正面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 車両
12 サイドパネル
18 クロスメンバ
28 ルーフユニット
30 リンクブラケット
30a 平面部
30c ピン挿通孔
30d 突出部
36 ルーフ格納部
38 ルーフユニット昇降用電動ユニット
44 クロスバー
60 連結部材
62 第1連結部材
62a 平面部
62f 開口部
64 角パイプ
66 第2連結部材
68 第3連結部材
80 ピン部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
格納式屋根と、車体の両側面を構成するサイドパネルとを備えた車両の車体補強構造であって、
上記サイドパネルにそれぞれ取り付けられ、上記格納式屋根の昇降用リンク部材を支持するリンクブラケットと、
これらのリンクブラケットの車幅方向内方に配置され車幅方向に延びるクロスバー部材と、
上記リンクブラケットと上記クロスバー部材とを連結する連結部材と、を備え、
上記リンクブラケット及び上記連結部材には、それぞれ、車幅方向に延び互いに重ね合わされると共に互いに固定される平面部を有する接続部が形成され、
上記リンクブラケット及び上記連結部材の各接続部には、該連結部材が上記リンクブラケットに仮預けされたとき該連結部材の車体前後方向への倒れを規制する第1規制部が設けられ、
上記リンクブラケット及び上記連結部材の各接続部には、該連結部材が上記リンクブラケットに仮預けされたとき該連結部材の車幅方向への倒れを規制する第2規制部が設けられていることを特徴とする車両の車体補強構造。
【請求項2】
上記リンクブラケットと上記連結部材とは上記第2規制部を介して係合可能であり、
上記第2規制部は、上記リンクブラケットと上記連結部材とが上記第2規制部を介して係合したとき、上記連結部材が該第2規制部を中心に回動可能なように構成されている請求項1記載の車両の車体補強構造。
【請求項3】
上記第1規制部は、上記連結部材を上記第2規制部を中心に第1の方向に回動させると、上記リンクブラケットと上記連結部材とが上記第1規制部を介して係合し、或いは、上記第1の方向と反対の第2の方向に回動させるとその係合が外れるように構成されている請求項2記載の車両の車体補強構造。
【請求項4】
上記連結部材を上記第2の方向に回動させるとき、上記連結部材と上記クロスバー部材との間には、少なくとも上記第1連結部材との係合が外れるまで上記連結部材が上記クロスバーと干渉しないように隙間が設けられている請求項3に記載の車両の車体補強構造。
【請求項5】
上記第1規制部は、上記リンクブラケット或いは上記連結部材のいずれか一方の接続部に設けられた突出部と、他方の接続部に設けられ上記突出部を受け入れる開口部とで構成され、
上記第2規制部は、上記リンクブラケット或いは上記連結部材のいずれか一方の接続部に設けられたピン部材と、他方の接続部に設けられ上記ピン部材を受け入れる孔部とで構成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両の車体補強構造。
【請求項6】
格納式屋根と、車体の両側面を構成するサイドパネルとを備えた車両の車体補強構造であって、
上記サイドパネルにそれぞれ取り付けられ、上記格納式屋根の昇降用リンク部材を支持するリンクブラケットと、
これらのリンクブラケットの車幅方向内方に配置され車幅方向に延びるクロスバー部材と、
上記リンクブラケットと上記クロスバー部材とを連結する連結部材と、を備え、
上記リンクブラケット及び上記連結部材には、それぞれ、車幅方向に延び互いに重ね合わされると共に互いに固定される平面部を有する接続部が形成され、
上記リンクブラケット及び上記連結部材の各接続部には、互いに係合して上記連結部材の車体前後方向への倒れを規制する第1規制部が設けられ、
上記リンクブラケット及び上記連結部材の各接続部には、互いに係合して上記連結部材の車幅方向への倒れを規制する第2規制部が設けられ、
この第2規制部は、上記連結部材が該第2規制部を中心に回動可能なように構成され、上記第1規制部は、この回動により互いに係合するように構成されている車体補強構造を組み立てる方法において、
上記リンクブラケットを上記サイドパネルにそれぞれ取り付ける工程と、
上記連結部材を上記第2規制部により上記リンクブラケットに仮預けする工程と、
上記連結部材を上記第2規制部を中心に回動させて上記連結部材を上記第1規制部により上記リンクブラケットに仮預けする工程と、
上記連結部材の平面部と上記リンクブラケットの平面部とを互いに固定する工程と、
上記連結部材と上記クロスバーとを互いに固定する工程と、
を有することを特徴とする車両の車体補強構造を組み立てる方法。
【請求項7】
格納式屋根と、車体の両側面を構成するサイドパネルとを備えた車両の車体補強構造であって、
上記サイドパネルにそれぞれ取り付けられ、上記格納式屋根の昇降用リンク部材を支持するリンクブラケットと、
これらのリンクブラケットの車幅方向内方に配置され車幅方向に延びるクロスバー部材と、
上記リンクブラケットと上記クロスバー部材とに固定されてそれらを連結する連結部材と、を備え、
上記リンクブラケット及び上記連結部材には、それぞれ、車幅方向に延び互いに重ね合わされると共に互いに固定される平面部を有する接続部が形成され、
上記リンクブラケット及び上記連結部材の各接続部には、互いに係合して上記連結部材の車体前後方向への倒れを規制する第1規制部が設けられ、
上記リンクブラケット及び上記連結部材の各接続部には、互いに係合して上記連結部材の車幅方向への倒れを規制する第2規制部が設けられ、
この第2規制部は、上記連結部材が該第2規制部を中心に第1の方向及びこの第1の方向と反対の第2の方向に回動可能なように構成され、上記第1規制部は、上記第1の方向の回動により互いに係合し、上記第2の方向の回動によりその係合が外れるように構成されている車体補強構造を分解する方法において、
上記連結部材と上記クロスバーとの固定を外す工程と、
上記連結部材と上記リンクブラケットとの固定を外す工程と、
上記連結部材を上記第2の方向に回動させて上記第1規制部の係合を解く工程と、
上記第2規制部の係合を解いて上記連結部材を取り外す工程と、
を有することを特徴とする車両の車体補強構造を分解する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−269089(P2007−269089A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94961(P2006−94961)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】