説明

車両の運動制御装置

【課題】車両旋回時に旋回内輪となる側の車輪ブレーキを、アンダーステア状態を解消すべく作動せしめるようにした車両の運動制御装置において、アンダーステア制御と同時に減速制御を行う際に、車両の安定性を確保したまま車体減速度を高める。
【解決手段】ブレーキトルク配分決定手段60は、要求ヨーモーメント演算手段58で得られた要求ヨーモーメントならびに要求減速度演算手段59で得られた要求減速度に基づいて左右前輪のうち旋回内輪および左右後輪のブレーキトルク配分を定め、ブレーキトルク上限値決定手段61は、車輪加速度から車体加速度を減算して各車輪毎の加速度差を算出し、その加速度差および各車輪のブレーキトルクに基づいて定めたブレーキトルク補正値によって車輪がロック状態に陥ることを回避し得る上限のブレーキトルクを定め、ブレーキトルク配分手段60でのブレーキトルク配分量の上限値を定める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右前輪および左右後輪にそれぞれ装着された車輪ブレーキのうち車両旋回時に旋回内輪となる側の車輪ブレーキを、アンダーステア状態を解消すべく作動せしめるようにした車両の運動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両旋回時のアンダーステア状態を解消するために、左右前輪および左右後輪のうち旋回内輪に装着されている車輪ブレーキを制動作動せしめるようにした車両の運動制御装置が、たとえば特許文献1によって既に知られている。
【特許文献1】特許第2583367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに上記特許文献1で開示されたものでは、旋回内輪に装着されている車輪ブレーキを制動作動せしめてアンダーステア状態を解消するにあたり、左右後輪のうち旋回内輪側は車両の安定性を確保するために、また左右前輪のうち旋回内輪側はブレーキ力付加による著しい横力低下を起こさないために、予め設定されているスリップ率に収まるように車輪ブレーキが発揮するブレーキ力を制御するようにしている。
【0004】
ところがタイヤ前後力がピークとなるスリップ率は、荷重、スリップ角および路面の摩擦係数等で変化するので、アンダーステア制御時に車両の安定性を確保するためには、後輪のタイヤ前後力が限界に達したと判定するスリップ率を比較的低く設定する必要がある。またアンダーステア制御と同時に、車両を積極的に減速させて旋回半径を小さくさせる減速制御を実行する場合には、アンダーステア制御が要求するヨーモーメントを旋回内輪のブレーキ力で発生しつつ、さらに減速のためのブレーキ力付加を行う必要があるが、上述のように、後輪のタイヤ前後力が限界に達したと判定するスリップ率を比較的低く設定する必要があるので、車両の安定性を確保したまま車両の減速度を高めることが困難となる。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、アンダーステア制御と同時に減速制御を行う際に、車両の安定性を確保したまま車体減速度を高めることができるようにした車両の運動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、左右前輪および左右後輪にそれぞれ装着された車輪ブレーキのうち車両旋回時に旋回内輪となる側の車輪ブレーキを、アンダーステア状態を解消すべく作動せしめるようにした車両の運動制御装置において、左右前輪および左右後輪の車輪速度を個別に検出する車輪速度検出手段と;それらの車輪速度検出手段で検出された車輪速度に基づいて左右前輪および左右後輪の車輪加速度を検出する車輪加速度検出手段と;車速を検出する車速検出手段と;車体加速度を検出する車体加速度検出手段と;車両運転者の操舵による操舵角を検出する操舵角検出手段と;車両のヨーレートを検出するヨーレート検出手段と;車両の横方向加速度を検出する横方向加速度検出手段と;前記各車輪ブレーキで生じるブレーキトルクを代表する指標を個別に検出するブレーキトルク代表指標検出手段と;前記アンダーステア状態を解消するための要求ヨーモーメントを前記操舵角検出手段で得られる操舵角、前記車速検出手段で得られる車速ならびに前記ヨーレート検出手段で検出したヨーレートに基づいて演算する要求ヨーモーメント演算手段と;旋回半径を小さくするように積極的に減速するための要求減速度を前記操舵角検出手段で得られる操舵角、前記車速検出手段で得られる車速ならびに前記横方向加速度検出手段で得られる横方向加速度に基づいて演算する要求減速度演算手段と;前記要求ヨーモーメント演算手段で得られた要求ヨーモーメントならびに前記要求減速度演算手段で得られた要求減速度に基づいて左右前輪のうち旋回内輪および左右後輪のブレーキトルク配分を定めるブレーキトルク配分決定手段と;前記車輪加速度検出手段で得られた車輪加速度から前記車体加速度検出手段で検出された車体加速度を減算して各車輪毎の加速度差を算出し、前記ブレーキトルク代表指標検出手段で検出される指標に基づく各車輪のブレーキトルクならびに前記加速度差に基づいて定めたブレーキトルク補正値によって車輪がロック状態に陥ることを回避し得る上限のブレーキトルクを定め、前記ブレーキトルク配分手段でのブレーキトルク配分量の上限値を定めるブレーキトルク上限値決定手段と;を備えることを特徴とする。
【0007】
また請求項2記載の発明は、左右前輪および左右後輪にそれぞれ装着された車輪ブレーキのうち車両旋回時に旋回内輪となる側の車輪ブレーキを、アンダーステア状態を解消すべく作動せしめるようにした車両の運動制御装置において、左右前輪および左右後輪の車輪速度を個別に検出する車輪速度検出手段と;それらの車輪速度検出手段で検出された車輪速度に基づいて左右前輪および左右後輪の車輪角速度を検出する車輪角速度検出手段と;車速を検出する車速検出手段と;車両運転者の操舵による操舵角を検出する操舵角検出手段と;車両のヨーレートを検出するヨーレート検出手段と;車両の横方向加速度を検出する横方向加速度検出手段と;前記各車輪ブレーキで生じるブレーキトルクを代表する指標を個別に検出するブレーキトルク代表指標検出手段と;前記アンダーステア状態を解消するための要求ヨーモーメントを前記操舵角検出手段で得られる操舵角、前記車速検出手段で得られる車速ならびに前記ヨーレート検出手段で検出したヨーレートに基づいて演算する要求ヨーモーメント演算手段と:旋回半径を小さくするように積極的に減速するための要求減速度を前記操舵角検出手段で得られる操舵角、前記車速検出手段で得られる車速ならびに前記横方向加速度検出手段で得られる横方向加速度に基づいて演算する要求減速度演算手段と;前記要求ヨーモーメント演算手段で得られた要求ヨーモーメントならびに前記要求減速度演算手段で得られた要求減速度に基づいて左右前輪のうち旋回内輪および左右後輪のブレーキトルク配分を定めるブレーキトルク配分決定手段と;前記車輪角速度検出手段で得られた車輪角速度に基づいて車輪角加速度を算出し、それらの車輪角加速度のうち旋回外輪側の前輪に対応する車輪角加速度を最大車輪角加速度として抽出し、最大車輪角加速度から前記旋回外輪側の前輪以外の車輪に対応した車輪角加速度を減算して角加速度差を算出し、前記ブレーキトルク代表指標検出手段で検出される指標に基づく各車輪のブレーキトルクならびに前記角加速度差に基づいて定めたブレーキトルク補正値によって車輪がロック状態に陥ることを回避し得る上限のブレーキトルクを定めて前記ブレーキトルク配分手段でのブレーキトルク配分量の上限値を定めるブレーキトルク上限値決定手段と;を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、アンダーステア制御のために要求ヨーモーメント演算手段で得られた要求ヨーモーメントと、減速制御のために要求減速度演算手段で得られた要求減速度とに基づいて、ブレーキトルク配分手段によって左右前輪のうち旋回内輪および左右後輪のブレーキトルク配分を定めるにあたり、ブレーキトルク上限値決定手段が、車輪加速度から車体加速度を減算することによって得た加速度差によって車輪がロック状態に陥る可能性の大小を判断するとともに、その加速度差に基づくブレーキトルク補正値と、車輪のブレーキトルクとによって車輪がロック状態に陥ることを回避し得る上限のブレーキトルクを定めてブレーキトルク配分手段でのブレーキトルク配分量の上限値を定めるので、アンダーステア制御と同時に減速制御を行う際に、ブレーキ力付加によって車輪がロック状態に陥らないようにして車両の安定性を確保しつつ車体減速度を高めることができる。
【0009】
また請求項2記載の発明によれば、アンダーステア制御のために要求ヨーモーメント演算手段で得られた要求ヨーモーメントと、減速制御のために要求減速度演算手段で得られた要求減速度とに基づいて、ブレーキトルク配分手段によって左右前輪のうち旋回内輪および左右後輪のブレーキトルク配分を定めるにあたり、車輪角加速度のうちブレーキをかけない旋回外輪側の前輪に対応する車輪角加速度を最大車輪角加速度として抽出し、最大車輪角加速度から前記旋回外輪側の前輪以外の車輪に対応した車輪角加速度を減算して得た角加速度差によって車輪がロック状態に陥る可能性の大小を判断するとともに、その角加速度差に基づくブレーキトルク補正値と、車輪のブレーキトルクとによって車輪がロック状態に陥ることを回避し得る上限のブレーキトルクを定めてブレーキトルク配分手段でのブレーキトルク配分量の上限値を定めるので、アンダーステア制御と同時に減速制御を行う際に、ブレーキ力付加によって車輪がロック状態に陥らないようにして車両の安定性を確保しつつ車体減速度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0011】
図1〜図5は本発明の第1実施例を示すものであり、図1はフロントエンジン・フロントドライブ車両の駆動系およびブレーキ系を示す図、図2はブレーキ装置の構成を示す図、図3は制御ユニットのうちアンダーステア制御および減速制御を行うための構成を示すブロック図、図4は要求減速度演算手段で用いられるマップを示す図、図5はブレーキトルク上限値設定手段の構成の一部を示す図である。
【0012】
先ず図1において、この車両はフロントエンジン・フロントドライブ(FF)車両であり、車体1の前部には、エンジンEおよび変速機Tから成るパワーユニットPが、駆動輪である左前輪WFLおよび右前輪WFRを駆動すべく搭載される。また左、右前輪WFL,WFRには左、右前輪用車輪ブレーキBFL,BFRが装着され、従動輪である左後輪WRLおよび右後輪WRRには左、右後輪用車輪ブレーキBRL,BRRが装着され、各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRは、たとえばディスクブレーキである。
【0013】
タンデム型のマスタシリンダMが備える第1および第2出力ポート2A,2Bからはブレーキペダル3の踏込み操作に応じたブレーキ液圧が出力されるものであり、両出力ポート2A,2Bはブレーキ液圧回路4に接続され、該ブレーキ液圧回路4からのブレーキ液圧が各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRに作用せしめられる。このブレーキ液圧回路4では、制御ユニットCAで制御されることにより各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRに作用せしめるブレーキ液圧が調節されるものであり、該制御ユニットCAには、前記各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRが発揮するブレーキトルクを代表する指標として各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRのブレーキ圧を個別に検出するブレーキトルク代表指標検出手段としてのブレーキ圧検出器5FL,5FR,5RL,5RR、各車輪WFL,WFR,WRL,WRRの車輪速度をそれぞれ検出する車輪速度検出手段6FL,6FR,6RL,6RR、ステアリングハンドルHで操作された操舵角δを検出する操舵角検出手段7、車両のヨーレートγを検出するヨーレート検出手段8、ならびに車両の横方向加速度αを検出する横方向加速度検出手段9の検出値がそれぞれ入力される。
【0014】
図2において、ブレーキ液圧回路4は、基本的にはX配管形式のブレーキ回路構成を有するものであり、左前輪用車輪ブレーキBFLおよび右後輪用車輪ブレーキBRRに対応した第1液圧路10Aと、右前輪用車輪ブレーキBFRおよび左後輪用車輪ブレーキBRLに対応した第2液圧路10Bと、マスタシリンダMが備えるリザーバRとは別の第1および第2リザーバ11A,11Bと、共通な単一の電動モータ13で駆動されるとともに第1および第2リザーバ11A,11Bのブレーキ液をくみ上げて第1および第2液圧路10A,10Bに吐出可能な第1および第2ポンプ14A,14Bと、マスタシリンダMの第1出力ポート2Aおよび第1液圧路10A間に介設される常開型電磁弁15Aと、マスタシリンダMの第2出力ポート2Bおよび第2液圧路10B間に介設される常開型電磁弁15Bと、第1ポンプ14Aの吸入側およびマスタシリンダMの第1出力ポート2A間に介設される常閉型電磁弁16Aと、第2ポンプ14Bの吸入側およびマスタシリンダMの第2出力ポート2B間に介設される常閉型電磁弁16Bと、第1液圧路10Aおよび左前輪用車輪ブレーキBFL間に設けられる左前輪ブレーキ調圧手段17FLと、第1液圧路10Aおよび右後輪用車輪ブレーキBRR間に設けられる右後輪ブレーキ調圧手段17RRと、第2液圧路10Bおよび右前輪用車輪ブレーキBFR間に設けられる右前輪ブレーキ調圧手段17FRと、第2液圧路10Bおよび左後輪用車輪ブレーキBRL間に設けられる左後輪ブレーキ調圧手段17RLとを備える。
【0015】
左前輪ブレーキ調圧手段17FLは、第1液圧路10Aおよび左前輪用車輪ブレーキBFL間に設けられる常開型電磁弁18FLと、第1リザーバ11Aおよび左前輪用車輪ブレーキBFL間に設けられる常閉型電磁弁19FLと、左前輪用車輪ブレーキBFL側から第1液圧路10A側へのブレーキ液の流通を許容して常開型電磁弁18FLに並列に接続されるチェック弁20FLとで構成される。
【0016】
このような左前輪ブレーキ調圧手段17FLによれば、ブレーキペダル3を踏み込んだブレーキ操作時において、常閉型電磁弁19FLの閉弁時に常開型電磁弁18FLを開弁しておくことにより第1出力ポート2Aの液圧が左前輪用車輪ブレーキBFLに作用することになり、また常開型電磁弁18FLおよび常閉型電磁弁19FLをともに閉じると左前輪用車輪ブレーキBFLのブレーキ液圧を保持することができ、さらに常開型電磁弁18FLを閉じた状態で常閉型電磁弁19FLを開弁することにより左前輪用車輪ブレーキBFLのブレーキ液圧を減圧することが可能となる。
【0017】
右後輪ブレーキ調圧手段17RRは、第1液圧路10Aおよび右後輪用車輪ブレーキBRR間に設けられる常開型電磁弁18RRと、第1リザーバ11Aおよび右後輪用車輪ブレーキBRR間に設けられる常閉型電磁弁19RRと、右後輪用車輪ブレーキBRR側から第1液圧路10A側へのブレーキ液の流通を許容して常開型電磁弁18RRに並列に接続されるチェック弁20RRとで構成されるものであり、常開型電磁弁18RRおよび常閉型電磁弁19RRの開閉を制御することにより、上記左前輪ブレーキ調圧手段17FLと同様に、右後輪用車輪ブレーキBRRの増圧、保持および減圧を切換えて制御することができる。
【0018】
右前輪ブレーキ調圧手段17FRは、第2液圧路10Bおよび右前輪用車輪ブレーキBFR間に設けられる常開型電磁弁18FRと、第2リザーバ11Bおよび右前輪用車輪ブレーキBFR間に設けられる常閉型電磁弁19FRと、右前輪用車輪ブレーキBFR側から第2液圧路10B側へのブレーキ液の流通を許容して常開型電磁弁18FRに並列に接続されるチェック弁20FRとで構成されるものであり、常開型電磁弁18FRおよび常閉型電磁弁19FRの開閉を制御することにより、上記左前輪ブレーキ調圧手段17FLおよび右後輪ブレーキ調圧手段17RRと同様に、右前輪用車輪ブレーキBFRの増圧、保持および減圧を切換えて制御することができる。
【0019】
左後輪ブレーキ調圧手段17RLは、第2液圧路10Bおよび左後輪用車輪ブレーキBRL間に設けられる常開型電磁弁18RLと、第2リザーバ11Bおよび左後輪用車輪ブレーキBRL間に設けられる常閉型電磁弁19RLと、左後輪用車輪ブレーキBRL側から第2液圧路10B側へのブレーキ液の流通を許容して常開型電磁弁18RLに並列に接続されるチェック弁20RLとで構成されるものであり、常開型電磁弁18RLおよび常閉型電磁弁19RLの開閉を制御することにより、上記左前輪ブレーキ調圧手段17FL、右後輪ブレーキ調圧手段17RRおよび右前輪ブレーキ調圧手段17FRと同様に、左後輪用車輪ブレーキBRLの増圧、保持および減圧を切換えて制御することができる。
【0020】
またマスタシリンダMの第1出力ポート2Aおよび第1液圧路10A間を常開型電磁弁15Aの閉弁によって遮断するとともに常閉型電磁弁16Aを開弁してマスタシリンダMの第1出力ポート2Aを第1ポンプ14Aの吸入側に連通せしめた状態で第1ポンプ14Aを作動せしめ、左前輪ブレーキ調圧手段17FLおよび右後輪ブレーキ調圧手段17RRにおける常開型電磁弁18FL,18RRおよび常閉型電磁弁19FL,19RRの開閉制御を行なうことにより、非ブレーキ操作時に左前輪用車輪ブレーキBFLおよび右後輪用車輪ブレーキBRRの増圧、保持および減圧を制御することも可能である。
【0021】
さらにマスタシリンダMの第2出力ポート2Bおよび第2液圧路10B間を常開型電磁弁15Bの閉弁によって遮断するとともに常閉型電磁弁16Bを開弁してマスタシリンダMの第2出力ポート2Bを第2ポンプ14Bの吸入側に連通せしめた状態で第2ポンプ14Bを作動せしめ、右前輪ブレーキ調圧手段17FRおよび左後輪ブレーキ調圧手段17RLにおける常開型電磁弁18FR,18RLおよび常閉型電磁弁19FR,19RLの開閉制御を行なうことにより、非ブレーキ操作時に右前輪用車輪ブレーキBFRおよび左後輪用車輪ブレーキBRLの増圧、保持および減圧を制御することも可能である。
【0022】
前記制御ユニットCAは、車両の旋回時に左右前輪および左右後輪にそれぞれ装着された車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRのうち旋回内輪の車輪ブレーキをアンダーステア状態を解消するように作動せしめるアンダーステア制御と、左、右前輪用車輪ブレーキBFL,BFRのうち旋回外輪を除く前記各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRを作動せしめて旋回半径を小さくするように積極的に減速するための減速制御とを行うようにして、ブレーキ液圧回路4の作動を制御することが可能であり、制御ユニットCAのうちアンダーステア制御および減速制御を行うための構成について次に説明する。
【0023】
図3において、制御ユニットCAには、アンダーステア制御および減速制御を行うために、ブレーキ圧検出器5FL,5FR,5RL,5RR、車輪速度検出手段6FL,6FR,6RL,6RR、操舵角検出手段7、ヨーレート検出手段8および横方向加速度検出手段9の検出値がそれぞれ入力される。
【0024】
而して制御ユニットCAは、前記各車輪速度検出手段6FL,6FR,6RL,6RRで検出された車輪速度に基づいて左右前輪および左右後輪の車輪加速度を検出する車輪加速度検出手段55FL,55FR,55RL,55RRと、車速を検出する車速検出手段56と、車体加速度を検出する車体加速度検出手段57と、アンダーステア状態を解消するための要求ヨーモーメントを前記操舵角検出手段7で得られる操舵角δ、前記車速検出手段56で得られる車速ならびに前記ヨーレート検出手段8で検出したヨーレートγに基づいて演算する要求ヨーモーメント演算手段58と、旋回半径を小さくするように積極的に減速するための要求減速度を前記操舵角検出手段7で得られる操舵角δ、前記車速検出手段56で得られる車速ならびに前記横方向加速度検出手段9で得られる横方向加速度αに基づいて演算する要求減速度演算手段59と、前記要求ヨーモーメント演算手段58で得られた要求ヨーモーメントならびに前記要求減速度演算手段59で得られた要求減速度に基づいて左右前輪のうち旋回内輪および左右後輪のブレーキトルク配分を定めるブレーキトルク配分決定手段60と、前記車輪加速度検出手段55FL,55FR,55RL,55RRで得られた車輪加速度、前記車体加速度検出手段57で検出された車体加速度ならびに前記ブレーキ圧検出器5FL,5FR,5RL,5RRで検出されるブレーキ圧に基づいて前記ブレーキトルク配分手段60でのブレーキトルク配分量の上限値を定めるブレーキトルク上限値決定手段61とを備える。
【0025】
車輪加速度検出手段55FL〜55RRは、車輪速度検出手段6FL〜6RRで検出された車輪速度を微分することで左右前輪および左右後輪の車輪加速度を得るものであり、車速検出手段56は、前記車輪速度検出手段6FL〜6RRで検出された車輪速度に基づいて車速を演算し、車体加速度検出手段57は、車速検出手段56で得られた車速を微分することで車体加速度を得るものである。
【0026】
要求ヨーモーメント演算手段58は、前記操舵角検出手段7で得られる操舵角δならびに前記車速検出手段56で得られる車速に基づいて運転者の意図する目標ヨーレートを定めるとともに、前記ヨーレート検出手段8で検出したヨーレートγの前記目標ヨーレートからの偏差に基づいて、旋回促進のための要求ヨーモーメントを演算する。
【0027】
要求減速度演算手段59は、前記操舵角検出手段7で得られる操舵角δならびに前記車速検出手段56で得られる車速に基づいて運転者の意図する目標ヨーレートを定めるとともに、前記車速検出手段56で得られた車速および前記目標ヨーレートに基づいて目標旋回半径を求める。ここでアンダーステア状態では前記横方向加速度検出手段9で検出された横方向加速度αは、限界の横方向加速度αとみなせるものであり、要求減速度演算手段59は、前記横方向加速度検出手段9で検出された横方向加速度αおよび前記目標旋回半径に基づき、目標旋回半径を前記横方向加速度αで走行したときの車速を限界車速として定め、前記車速検出手段56で得られた実車速および前記限界車速に基づいてオーバースピードの程度を示す係数K1を{K1=(限界車速−実車速)/限界車速}として演算し、図4で示すマップに基づいて、前記係数K1に対応した要求減速度を求める。
【0028】
ブレーキトルク配分決定手段60は、要求ヨーモーメント演算手段58で得られた要求ヨーモーメントならびに要求減速度演算手段59で得られた要求減速度に基づいて左右前輪のうち旋回内輪および左右後輪のブレーキトルク配分を定め、左前輪ブレーキ調圧手段17FL、右後輪ブレーキ調圧手段17RR,右前輪ブレーキ調圧手段17FRおよび左後輪ブレーキ調圧手段17RLの作動を制御するための信号を出力するのであるが、その際のブレーキトルク配分量の上限値は、ブレーキトルク上限値決定手段61で定められる。
【0029】
ブレーキトルク上限値決定手段61は、左右前輪および左右後輪毎に図5で示す構成を有するものであり、車輪加速度検出手段55FL〜55RRの1つで得られた車輪加速度から車体加速度検出手段57で得られた車体加速度を減算した加速度差が第1加え合わせ点62で得られる。而して車両減速時には、車輪加速度はマイナスの符号を有する車輪減速度となり、車体加速度はマイナスの符号を有する車体減速度となるものであり、車輪がロック状態に陥る可能性が大きいほど大きなマイナスの符号を有する加速度差が第1加え合わせ点62で得られることになる。この第1加え合わせ点62の出力は、第1掛け算器63に入力されるものであり、第1掛け算器63では、前記加速度差に(1/車輪半径)を乗算することによって回転角速度が得られる。また第1掛け算器63の出力は第2掛け算器64に入力され、この第2掛け算器64では、第1掛け算器63で得られた回転角加速度に各車輪毎の車輪慣性モーメントを乗算することで補正ブレーキトルクが得られることになる。而して駆動輪の車輪慣性モーメント、この実施例では左右前輪の車輪慣性モーメントは、車輪の重量に変速機Tおよびドライブシャフトの重量を含んで予め設定されるものであり、車輪がロック状態に陥る可能性が大きいほど絶対値が大きなマイナスの符号を有する補正ブレーキトルクが第2掛け算器64で得られる。
【0030】
またブレーキトルク上限値決定手段61は、ブレーキ圧検出器5FL〜5RRで検出されたブレーキ圧に基づいて各車輪のブレーキトルクを算出するものであり、第2加え合わせ点65で、前記ブレーキトルクの1つから前記第2掛け算器64で得られた補正ブレーキトルクが減算される。而してブレーキトルクはマイナスの符号を有するものであり、車輪がロック状態に陥いる可能性が大きいときには第2掛け算器64で得られる補正ブレーキトルクは、絶対値が大きく、しかもマイナスの符号を有するものであり、第2加え合わせ点65から出力されるブレーキトルクの絶対値が小さくなる。一方、車輪がロック状態に陥りそうではないときは第2掛け算器64で得られる補正ブレーキトルクはプラスの符号を有するものであり、第2加え合わせ点65から出力されるブレーキトルクの絶対値は大きくなる。
【0031】
前記第2加え合わせ点65の出力が、ブレーキトルク配分手段60でのブレーキトルク配分量の上限値としてブレーキトルク配分決定手段60に入力されるものであり、車輪がロック状態に陥る可能性が大きくなるほどブレーキトルクの配分量の上限値の絶対値が小さくなる。
【0032】
次にこの第1実施例の作用について説明すると、車両の旋回時にアンダーステア制御のために要求ヨーモーメント演算手段58で得られた要求ヨーモーメントと、旋回半径を小さくすべく減速制御を実行するために要求減速度演算手段59で得られた要求減速度とに基づいて、ブレーキトルク配分手段60では、左右前輪のうち旋回内輪および左右後輪のブレーキトルク配分が定められるのであるが、ブレーキトルク配分手段60でのブレーキトルク配分量の上限値を定めるブレーキトルク上限値決定手段61が、車輪加速度から車体加速度を減算することによって得た加速度差によって車輪がロック状態に陥る可能性の大小を判断するとともに、その加速度差に基づくブレーキトルク補正値と、車輪のブレーキトルクとによって車輪がロック状態に陥ることを回避し得る上限のブレーキトルクを定めてブレーキトルク配分手段60でのブレーキトルク配分量の上限値を定めている。
【0033】
したがってアンダーステア制御と同時に減速制御を行う際に、ブレーキ力付加によって車輪がロック状態に陥らないようにして車両の安定性を確保しつつ車体減速度を高めることができる。
【0034】
図6および図7は本発明の第2実施例を示すものであり、図6は制御ユニットのうちアンダーステア制御および減速制御を行うための構成を示すブロック図、図7はブレーキトルク上限値決定手段での決定手順を示すフローチャートである。
【0035】
先ず図6において、制御ユニットCBには、アンダーステア制御および減速制御を行うために、ブレーキ圧検出器5FL,5FR,5RL,5RR、車輪速度検出手段6FL,6FR,6RL,6RR、操舵角検出手段7、ヨーレート検出手段8および横方向加速度検出手段9の検出値がそれぞれ入力される。
【0036】
而して制御ユニットCBは、前記各車輪速度検出手段6FL〜6RRで検出された車輪速度に基づいて左右前輪および左右後輪の角速度を検出する車輪角速度検出手段66FL,66FR,66RL,66RRと、車速を検出する車速検出手段56と、アンダーステア状態を解消するための要求ヨーモーメントを前記操舵角検出手段7で得られる操舵角δ、前記車速検出手段56で得られる車速ならびに前記ヨーレート検出手段8で検出したヨーレートγに基づいて演算する要求ヨーモーメント演算手段58と、旋回半径を小さくするように積極的に減速するための要求減速度を前記操舵角検出手段7で得られる操舵角δ、前記車速検出手段56で得られる車速ならびに前記横方向加速度検出手段9で得られる横方向加速度αに基づいて演算する要求減速度演算手段59と、前記要求ヨーモーメント演算手段58で得られた要求ヨーモーメントならびに前記要求減速度演算手段59で得られた要求減速度に基づいて左右前輪のうち旋回内輪および左右後輪のブレーキトルク配分を定めるブレーキトルク配分決定手段60と、前記車輪角速度検出手段66FL〜66RRで得られた車輪角速度ならびに前記ブレーキ圧検出器5FL,5FR,5RL,5RRで検出されるブレーキ圧に基づいて車輪がロック状態に陥ることを回避し得る上限のブレーキトルクを定めて前記ブレーキトルク配分手段60でのブレーキトルク配分量の上限値を定めるブレーキトルク上限値決定手段67とを備える。
【0037】
車輪角速度検出手段66FL〜66RRは、前記車輪速度検出手段6FL〜6RRで検出された車輪速度の微分値を車輪半径で除すことにより各車輪毎の角速度ωを得るものである。またブレーキトルク上限値決定手段67は、前記ブレーキ圧検出器5FL〜5RRで検出されるブレーキ圧に基づいて各車輪毎のブレーキトルクTを演算し、前記角速度ωおよびブレーキトルクTに基づいて、図7で示す手順に従ってブレーキトルク配分量の上限値を定める。なお図7において、添字iは左右前輪および左右後輪毎に変化するものであり、ブレーキトルクTはマイナスの符号を有し、角加速度dωも減速時にマイナスの符号を有するものである。
【0038】
図7において、ステップS1では、各車輪毎の角加速度dωi を角速度ωi の微分によって演算し、ステップS2では、最大(絶対値が最小)となる角加速度dωmax を抽出する。而して左右前輪のうち旋回外輪側にはブレーキをかけないので、左右前輪における旋回外輪の車輪減速度がほぼ車体減速度となり、他の車輪と比べると角加速度が最大となるものであり、車体減速度と同等の車輪減速度となっている車輪の角加速度を、最大の角加速度dωmax として抽出する。
【0039】
ステップS3では、ブレーキ制御対象の車輪のスリップ率増加量に相当する量としてブレーキ制御対象の車輪の角加速度差dωi ′(=dωi −dωmax )を算出する。この角加速度差dωi ′はマイナスの値であり、その絶対値が大きくなることは、車体の減速以上に車輪が減速していることを意味する。
【0040】
ステップS4では、前記角加速度差dωi ′が予め設定された第1の閾値A(0以下の値)未満であるか否かを判定し、dωi ′<Aであったときには、車輪がロック状態に陥る可能性があるものとしてステップS5に進む。このステップS5で、角加速度差dωi ′の積分値ωi ′(=dωi ′・dt+ωi ′)を演算した後のステップS6では、前記積分値ωi ′が第2の閾値B(0以下の値)未満であるか否かを判定し、{ωi ′≧B}であったときにはステップS7に、また{ωi ′<B}であったときにはステップS10に進む。
【0041】
ここでブレーキの掛け始めは、各車輪の角加速度差を許容しないとブレーキ力を発揮できないので、各車輪の角加速度差を許容する必要があり、また旋回初期や転舵時もヨーレート成分が各車輪の角加速度差を発生されるので、前記ステップS6の判断が必要となるものである。
【0042】
ステップS7では過剰ブレーキトルクT0iを「0」と定める。ここで付加ブレーキトルクが過剰ではないと判断したときには、減速度を高めるためにブレーキトルク増分値Taiを定める必要があり、ブレーキトルク増分値Taiを「E(<0)」と定める。ちなみにブレーキトルク増分値Taiを設定しない場合には、E=0とするのと同様であり、ブレーキ力の発生が不能となる。
【0043】
ステップS7を経過した後のステップS8では、ブレーキトルクの上限値TLiを定めるものであり、{TLi=Ti −Toi+Tai}としてブレーキトルクの上限値TLiが設定される。
【0044】
またステップS4で{dωi ′≧A}と判断したときには、車輪がロック状態に陥る可能性がないものとしてステップS9に進んで、角加速度差dωi ′および角加速度差の積分値ωi ′をそれぞれ「0」に設定してリセットし、ステップS7に進む。
【0045】
またステップS6で{ωi ′<B}であったときにはステップS10に進むものであり、ステップS10では、車体の減速以上に車輪が減速している状態はブレーキトルクが過剰であるために発生したとして過剰ブレーキトルクT0iを{T0i=K2・Ii ・dωi }として算出する。ここでK2は重み係数であり、過剰ブレーキトルクT0iの絶対値はブレーキトルクTi よりも小さいものである。またIi は、各車輪毎の車輪慣性モーメントであり、図6の第2掛け算器64で説明したように予め設定されている。さらにステップS10では、ブレーキトルク増分値Taiを「0」と定め、ステップS10からステップS8に進むことになる。
【0046】
このようなブレーキトルク上限値決定手段67によれば、車体減速度と同等の車輪減速度となっている車輪の角加速度を最大の角加速度dωmax とし、その最大の角加速度dωmax および制御対象の角加速度dωi の偏差である角加速度差dωi ′を算出し、各車輪のブレーキトルクTi と、前記角加速度差dωi ′とに基づいて定めたブレーキトルク補正値とによってブレーキトルク配分手段60でのブレーキトルク配分量の上限値を定めることになる。
【0047】
この第2実施例によっても、上記第1実施例と同様に、アンダーステア制御と同時に減速制御を行う際に、ブレーキ力付加によって車輪がロック状態に陥らないようにして車両の安定性を確保しつつ車体減速度を高めることができる。
【0048】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1実施例を示すものであってフロントエンジン・フロントドライブ車両の駆動系およびブレーキ系を示す図である。
【図2】ブレーキ装置の構成を示す図である。
【図3】制御ユニットのうちアンダーステア制御および減速制御を行うための構成を示すブロック図である。
【図4】要求減速度演算手段で用いられるマップを示す図である。
【図5】ブレーキトルク上限値設定手段の構成の一部を示す図である。
【図6】第2実施例を示すものであって制御ユニットのうちアンダーステア制御および減速制御を行うための構成を示すブロック図である。
【図7】ブレーキトルク上限値決定手段での決定手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
FL,5FR,5RL,5RR・・・ブレーキトルク代表指標検出手段であるブレーキ圧検出器
FL,6FR,6RL,6RR・・・車輪速度検出手段
7・・・操舵角検出手段
8・・・ヨーレート検出手段
9・・・横方向加速度検出手段
55FL,55FR,55RL,55RR・・・車輪加速度検出手段
56・・・車速検出手段
57・・・車体加速度検出手段
58・・・要求ヨーモーメント演算手段
59・・・要求減速度演算手段
60・・・ブレーキトルク配分決定手段
61,67・・・ブレーキトルク上限値決定手段
66FL,66FR,66RL,66RR・・・車輪角速度検出手段
FL,BFR,BRL,BRR・・・車輪ブレーキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右前輪および左右後輪にそれぞれ装着された車輪ブレーキ(BFL,BFR,BRL,BRR)のうち車両旋回時に旋回内輪となる側の車輪ブレーキを、アンダーステア状態を解消すべく作動せしめるようにした車両の運動制御装置において、左右前輪および左右後輪の車輪速度を個別に検出する車輪速度検出手段(6FL,6FR,6RL,6RR)と;それらの車輪速度検出手段(6FL〜6RR)で検出された車輪速度に基づいて左右前輪および左右後輪の車輪加速度を検出する車輪加速度検出手段(55FL,55FR,55RL,55RR)と;車速を検出する車速検出手段(56)と;車体加速度を検出する車体加速度検出手段(57)と;車両運転者の操舵による操舵角を検出する操舵角検出手段(7)と;車両のヨーレートを検出するヨーレート検出手段(8)と;車両の横方向加速度を検出する横方向加速度検出手段(9)と;前記各車輪ブレーキ(BFL〜BRR)で生じるブレーキトルクを代表する指標を個別に検出するブレーキトルク代表指標検出手段(5FL,5FR,5RL,5RR)と;前記アンダーステア状態を解消するための要求ヨーモーメントを前記操舵角検出手段(7)で得られる操舵角、前記車速検出手段(56)で得られる車速ならびに前記ヨーレート検出手段(8)で検出したヨーレートに基づいて演算する要求ヨーモーメント演算手段(58)と;旋回半径を小さくするように積極的に減速するための要求減速度を前記操舵角検出手段(7)で得られる操舵角、前記車速検出手段(56)で得られる車速ならびに前記横方向加速度検出手段(9)で得られる横方向加速度に基づいて演算する要求減速度演算手段(59)と;前記要求ヨーモーメント演算手段(58)で得られた要求ヨーモーメントならびに前記要求減速度演算手段(59)で得られた要求減速度に基づいて左右前輪のうち旋回内輪および左右後輪のブレーキトルク配分を定めるブレーキトルク配分決定手段(60)と;前記車輪加速度検出手段(55FL〜55RR)で得られた車輪加速度から前記車体加速度検出手段(57)で検出された車体加速度を減算して各車輪毎の加速度差を算出し、前記ブレーキトルク代表指標検出手段(5FL〜5RR)で検出される指標に基づく各車輪のブレーキトルクならびに前記加速度差に基づいて定めたブレーキトルク補正値によって車輪がロック状態に陥ることを回避し得る上限のブレーキトルクを定め、前記ブレーキトルク配分手段(60)でのブレーキトルク配分量の上限値を定めるブレーキトルク上限値決定手段(61)と;を備えることを特徴とする車両の運動制御装置。
【請求項2】
左右前輪および左右後輪にそれぞれ装着された車輪ブレーキ(BFL,BFR,BRL,BRR)のうち車両旋回時に旋回内輪となる側の車輪ブレーキを、アンダーステア状態を解消すべく作動せしめるようにした車両の運動制御装置において、左右前輪および左右後輪の車輪速度を個別に検出する車輪速度検出手段(6FL,6FR,6RL,6RR)と;それらの車輪速度検出手段(6FL〜6RR)で検出された車輪速度に基づいて左右前輪および左右後輪の車輪角速度を検出する車輪角速度検出手段(66FL,66FR,66RL,66RR)と;車速を検出する車速検出手段(56)と;車両運転者の操舵による操舵角を検出する操舵角検出手段(7)と;車両のヨーレートを検出するヨーレート検出手段(8)と;車両の横方向加速度を検出する横方向加速度検出手段(9)と;前記各車輪ブレーキ(BFL〜BRR)で生じるブレーキトルクを代表する指標を個別に検出するブレーキトルク代表指標検出手段(5FL,5FR,5RL,5RR)と;前記アンダーステア状態を解消するための要求ヨーモーメントを前記操舵角検出手段(7)で得られる操舵角、前記車速検出手段(56)で得られる車速ならびに前記ヨーレート検出手段(8)で検出したヨーレートに基づいて演算する要求ヨーモーメント演算手段(58)と:旋回半径を小さくするように積極的に減速するための要求減速度を前記操舵角検出手段(7)で得られる操舵角、前記車速検出手段(56)で得られる車速ならびに前記横方向加速度検出手段(9)で得られる横方向加速度に基づいて演算する要求減速度演算手段(57)と;前記要求ヨーモーメント演算手段(58)で得られた要求ヨーモーメントならびに前記要求減速度演算手段(59)で得られた要求減速度に基づいて左右前輪のうち旋回内輪および左右後輪のブレーキトルク配分を定めるブレーキトルク配分決定手段(60)と;前記車輪角速度検出手段(66FL〜66RR)で得られた車輪角速度に基づいて車輪角加速度を算出し、それらの車輪角加速度のうち旋回外輪側の前輪に対応する車輪角加速度を最大車輪角加速度として抽出し、最大車輪角加速度から前記旋回外輪側の前輪以外の車輪に対応した車輪角加速度を減算して角加速度差を算出し、前記ブレーキトルク代表指標検出手段(5FL〜5RR)で検出される指標に基づく各車輪のブレーキトルクならびに前記角加速度差に基づいて定めたブレーキトルク補正値によって車輪がロック状態に陥ることを回避し得る上限のブレーキトルクを定めて前記ブレーキトルク配分手段(60)でのブレーキトルク配分量の上限値を定めるブレーキトルク上限値決定手段(67)と;を備えることを特徴とする車両の運動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−114642(P2008−114642A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297512(P2006−297512)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】