説明

車両の騒音低減装置とその騒音低減方法

【課題】車両の集電装置から発生する空力音やスパーク音などの騒音を低減することができる車両の騒音低減装置とその騒音低減方法を提供する。
【解決手段】車両4が走行すると集電装置5の集電舟5b、ホーン5c、枠組5d、台枠5e及びがいし5fなどから空力音が発生するとともに、すり板5aとトロリ線3aとが離れてこれらの間にスパーク音が発生する。その結果、集電装置5から遮音板6a,6bに向かって騒音S1が空気中を伝播し遮音板6a,6bに到達する。騒音検出部8,9が騒音S1を検出すると、この騒音検出部8,9が騒音検出信号を制御部12に出力し、空力音を低減するための音波発生信号とスパーク音を低減するための音波発生信号とを制御部12が音波発生部10,11に出力する。その結果、音波発生部10,11が音波S2を発生し、空力音及びスパーク音が音波S2によって打ち消されて騒音S1が低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の集電装置から発生する騒音を低減する車両の騒音低減装置とその騒音低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両の騒音低減装置は、架線のトロリ線と接触移動する集電装置(パンタグラフ)の両側に遮音板(パンタグラフカバー)を備えている(例えば、特許文献1参照)。このような従来の車両の騒音低減装置では、車両が走行するときに集電装置のすり板がトロリ線と接触移動することによって発生するしゅう動音や、すり板がトロリ線から離れるときに発生するスパーク音や、集電装置が風を切ることによって発生する空力音などの集電系騒音を遮音板によって遮音し、このような集電系騒音を低減させている。
【0003】
【特許文献1】特開2003-219505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両の騒音低減装置では、遮音板の断面形状を変化させても集電系騒音の低減効果を向上させることが困難であるため、主として遮音板の長さを延長して集電系騒音の低減を図っている。しかし、従来の車両の騒音低減装置では、遮音板の長さを長くすると遮音板自体が大型化し、遮音板から空力騒音が発生してしまう問題点がある。
【0005】
この発明の課題は、車両の集電装置から発生する空力音やスパーク音などの騒音を低減することができる車両の騒音低減装置とその騒音低減方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図1に示すように、車両(4)の集電装置(5)から発生する騒音(S1)を低減する車両の騒音低減装置であって、前記集電装置の遮音板(6a,6b)に向かう前記騒音を検出する騒音検出部(8,9)と、前記遮音板から音波(S2)を発生する音波発生部(10,11)と、前記騒音検出部の検出結果に基づいて、前記集電装置から発生する空力音を打ち消す音波を前記音波発生部が発生するようにこの音波発生部を動作制御する制御部(12)とを備える車両の騒音低減装置(7)である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両の騒音低減装置において、前記騒音検出部は、前記集電装置の一方の側の遮音板(6a)に向かう前記騒音を検出する第1の騒音検出部(8)と、前記集電装置の他方の側の遮音板(6b)に向かう前記騒音を検出する第2の騒音検出部(9)とを備え、前記音波発生部は、前記一方の側の遮音板から前記音波を発生する第1の音波発生部(10)と、前記他方の側の遮音板から前記音波を発生する第2の音波発生部(11)とを備え、前記制御部は、前記第1及び前記第2の騒音検出部の検出結果に基づいて、前記空力音を打ち消す音波を前記第1及び前記第2の音波発生部が発生するように、この第1及びこの第2の音波発生部を動作制御することを特徴とする車両の騒音低減装置である。
【0008】
請求項3の発明は、図1に示すように、車両(4)の集電装置(5)から発生する騒音(S1)を低減する車両の騒音低減装置であって、前記集電装置の遮音板(6a,6b)に向かう前記騒音を検出する騒音検出部(8,9)と、前記遮音板から音波(S2)を発生する音波発生部(10,11)と、前記騒音検出部の検出結果に基づいて、前記集電装置のすり板(5a)とトロリ線(3a)との間に発生するスパーク音を打ち消す音波を前記音波発生部が発生するようにこの音波発生部を動作制御する制御部(12)とを備える車両の騒音低減装置である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の車両の騒音低減装置において、前記騒音検出部は、前記集電装置の一方の側の遮音板(6a)に向かう前記騒音を検出する第1の騒音検出部(8)と、前記集電装置の他方の側の遮音板(6b)に向かう前記騒音を検出する第2の騒音検出部(9)とを備え、前記音波発生部は、前記一方の側の遮音板から前記音波を発生する第1の音波発生部(10)と、前記他方の側の遮音板から前記音波を発生する第2の音波発生部(11)とを備え、前記制御部は、前記第1及び前記第2の騒音検出部の検出結果に基づいて、前記スパーク音を打ち消す音波を前記第1及び前記第2の音波発生部が発生するように、この第1及びこの第2の音波発生部を動作制御することを特徴とする車両の騒音低減装置である。
【0010】
請求項5の発明は、図6に示すように、車両(4)の集電装置(5)から発生する騒音(S1)を低減する車両の騒音低減装置であって、前記集電装置のすり板(5a)とトロリ線(3a)とが離れる離線を検出する離線検出部(16)と、前記集電装置の遮音板(6a,6b)から音波(S2)を発生する音波発生部(10,11)と、前記離線検出部の検出結果に基づいて、前記すり板と前記トロリ線との間に発生するスパーク音を打ち消す音波を前記音波発生部が発生するようにこの音波発生部を動作制御する制御部(12)とを備える車両の騒音低減装置(7)である。
【0011】
請求項6の発明は、請求項5に記載の車両の騒音低減装置において、前記音波発生部は、前記一方の側の遮音板(6a)から前記音波を発生する第1の音波発生部(10)と、前記他方の側の遮音板(6b)から前記音波を発生する第2の音波発生部(11)とを備え、前記制御部は、前記離線検出部の検出結果に基づいて、前記スパーク音を打ち消す音波を前記第1及び前記第2の音波発生部が発生するように、この第1及びこの第2の音波発生部を動作制御することを特徴とする車両の騒音低減装置である。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の車両の騒音低減装置において、図4及び図7に示すように、前記制御部は、前記集電装置の左右いずれか一方の側が他方の側に比べて騒音対策が重要視されているときに、騒音対策が重要視されている前記一方の側の遮音板から前記音波を発生し、前記他方の側の遮音板から前記音波を発生しないように、前記第1及び前記第2の音波発生部を動作制御することを特徴とする車両の騒音低減装置である。
【0013】
請求項8の発明は、請求項7に記載の車両の騒音低減装置において、前記制御部は、前記車両が複線(2A,2B)を左側通行するときには、進行方向左側の遮音板(6a)から前記音波を発生し、進行方向右側の遮音板(6b)から前記音波を発生しないように前記第1及び前記第2の音波発生部を動作制御し、前記車両が複線を右側通行するときには、進行方向右側の遮音板(6b)から前記音波を発生し、進行方向左側の遮音板(6a)から前記音波を発生しないように、前記第1及び前記第2の音波発生部を動作制御することを特徴とする車両の騒音低減装置である。
【0014】
請求項9の発明は、請求項7又は請求項8に記載の車両の騒音低減装置において、図5及び図8に示すように、前記制御部は、前記車両が通過する沿線(W1,W2)の騒音対策の優先度が一方の側と他方の側とで入れ替わったときには、前記音波を発生させる側と前記音波を発生させない側とが逆になるように、前記第1及び前記第2の音波発生部を動作制御することを特徴とする車両の騒音低減装置である。
【0015】
請求項10の発明は、図1に示すように、車両(4)の集電装置(5)から発生する騒音(S1)を低減する車両の騒音低減方法であって、前記集電装置から発生してこの集電装置の遮音板(6a,6b)に向かう空力音を低減するために、この遮音板からこの空力音を打ち消す音波(S2)を発生することを特徴とする車両の騒音低減方法である。
【0016】
請求項11の発明は、請求項10に記載の車両の騒音低減方法において、前記集電装置の一方の側の遮音板(6a)に向かう前記空力音を低減するときには、この一方の側の遮音板からこの空力音を打ち消す音波を発生し、前記集電装置の他方の側の遮音板(6b)に向かう前記空力音を低減するときには、この他方の側の遮音板からこの空力音を打ち消す音波を発生することを特徴とする車両の騒音低減方法である。
【0017】
請求項12の発明は、図1及び図6に示すように、車両(4)の集電装置(5)から発生する騒音(S1)を低減する車両の騒音低減方法であって、前記集電装置のすり板(5a)とトロリ線(3a)との間に発生してこの集電装置の遮音板(6a,6b)に向かうスパーク音を低減するために、このスパーク音を打ち消す音波(S2)を発生することを備える車両の騒音低減方法である。
【0018】
請求項13の発明は、請求項12に記載の車両の騒音低減方法において、前記集電装置の一方の側の遮音板(6a)に向かう前記スパーク音を低減するときには、この一方の側の遮音板からこのスパーク音を打ち消す音波を発生し、前記集電装置の他方の側の遮音板(6b)に向かう前記スパーク音を低減するときには、この他方の側の遮音板からこのスパーク音を打ち消す音波を発生することを特徴とする車両の騒音低減方法である。
【0019】
請求項14の発明は、請求項12から請求項13までのいずれか1項に記載の車両の騒音低減方法において、図4及び図7に示すように、前記集電装置の左右いずれか一方の側が他方の側に比べて騒音対策が重要視されているときに、騒音対策が重要視されている前記一方の側の遮音板から前記音波を発生し、前記他方の側の遮音板から前記音波を発生しないことを特徴とする車両の騒音低減方法である。
【0020】
請求項15の発明は、請求項14に記載の車両の騒音低減方法において、前記車両が複線(2A,2B)を左側通行するときには、進行方向左側の遮音板から前記音波を発生し、進行方向右側の遮音板から前記音波を発生しないようにし、前記車両が複線を右側通行するときには、進行方向右側の前記遮音板から前記音波を発生し、進行方向左側の遮音板から前記音波を発生しないようにすることを特徴とする車両の騒音低減方法である。
【0021】
請求項16の発明は、請求項14又は請求項15に記載の車両の騒音低減方法において、図5及び図8に示すように、前記車両が通過する沿線の騒音対策の優先度が一方の側と他方の側とで入れ替わったときには、前記音波を発生させる側と前記音波を発生させない側とが逆になることを特徴とする車両の騒音低減方法である。
【発明の効果】
【0022】
この発明によると、車両の集電装置から発生する空力音やスパーク音などの騒音を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る車両の騒音低減装置を模式的に示す正面図である。図2は、この発明の第1実施形態に係る車両の騒音低減装置を模式的に示す平面図である。図3は、図2のIII-III線で切断した状態を示す模式的に示す断面図である。
図1及び図2に示す沿線W1,W2は、軌道2に沿って存在する土地(領域)であり、軌道2を挟み二つに分かれて存在する。沿線W1は、下り線2Aの中心線から近い側(上り線2Bの中心線から遠い側)の土地であり、例えば東北新幹線の場合には下り線2Aを東京方面から仙台方面に向かう車両4の進行方向左側(山側)の土地である。沿線W2は、上り線2Bの中心線から近い側(下り線2Aの中心線から遠い側)の土地であり、例えば東北新幹線の場合には上り線2Bを仙台方面から東京方面に向かう車両4の進行方向左側(海側)の土地である。
【0024】
図1〜図3に示す路盤1は、軌道2を支持する基盤であり、車両4が通過するときに荷重を支持する構造物である。路盤1は、例えば、スラブ軌道区間に設置される路盤コンクリートや、良質な自然土などを用いて締め固められた土路盤などである。
【0025】
軌道2は、車両4が走行する通路(線路)であり、車両4の車輪を案内する一対のレール2aと、一対のレール2aを支持する矩形平板状のプレキャストのコンクリート版からなるスラブ版(軌道スラブ)2bなどから構成されている。軌道2は、図1及び図2に示すように、二本の本線で構成された複線であり、下り線2Aと上り線2Bとから構成されている。下り線2Aは、例えば、東北新幹線の場合には東京方面から仙台方面に向かう車両4が走行する線路であり、上り線2Bは例えば東北新幹線の場合には仙台方面から東京方面に向かう車両4が走行する線路である。
【0026】
図1〜図3に示す架線3は、線路上空に架設される架空電車線であり、所定の間隔をあけて図示しない支持構造物によって支持点で支持されている。トロリ線3aは、集電装置5のすり板5aが接触する電線であり、集電装置5のすり板5aが接触移動することによって車両4に負荷電流を供給する。
【0027】
車両4は、軌道2に沿って走行する移動体である。車両4は、電車、電気機関車などの電気車であり、例えば高速で走行する新幹線などの鉄道車両である。車体4aは、乗客を積載し輸送するための構造物である。車体4aは、集電装置5などの屋根上機器が設置される屋根上面4bを備えている。
【0028】
集電装置5は、架線3のトロリ線3aから電力を車両4に導くための装置である。集電装置5は、図1〜図3に示すように、トロリ線3aと接触するすり板5aと、このすり板5aが取り付けられた集電舟(舟体)5bと、車両4が分岐器を通過するときにこの分岐器の上方で交差する2本のトロリ線3aのうち車両4の進行方向とは異なる方向のトロリ線3aへの割込みを防止するホーン5cと、集電舟5bを支持し上下方向に昇降する枠組5dと、枠組5dを支持する台枠5eと、図1及び図3に示すように車体4aと台枠5eとの間を電気的に絶縁するがいし5fなどを備えている。図1〜図3に示す集電装置5は、車両4の進行方向に対して非対称であり、一方向又は両方向に使用可能なシングルアーム式パンタグラフである。
【0029】
パンタグラフカバー部6は、集電装置5から発生する騒音S1を低減する装置である。パンタグラフカバー部6は、集電装置5が風を切ることによって発生する空力音(風きり音)や、集電装置5のすり板5aとトロリ線3aとの間に発生するスパーク音や、すり板5aがトロリ線3aと接触移動することによって発生するしゅう動騒音などの集電系騒音を低減するために、集電装置5の周囲に設置されている。パンタグラフカバー部6は、例えば、制振性能を有し耐久性と剛性が高い金属製又は合成樹脂製の軽量な薄板状の部材であり、空力抵抗を低減し空力音の発生を抑えるように流線型に形成されている。パンタグラフカバー部6は、図1〜図3に示す遮音板6a,6bと、図2及び図3に示すがいしカバー部6c,6dなどを備えている。
【0030】
図1及び図2に示す遮音板6a,6bは、集電装置5から発生する騒音S1を遮る装置である。遮音板6a,6bは、集電装置5の両側にこの集電装置5の側面を覆う(騒音源を隠す)ようにそれぞれ配置されるパンタグラフ遮音板(二面側壁)であり、遮音板6a,6bの内側側面には集電装置5と対向するように吸音材などが装着されている。図2及び図3に示すがいしカバー部6c,6dは、がいし5fから発生する空力音を低減する装置である。がいしカバー部6c,6dは、集電装置5の前後にこの集電装置5を挟むように所定の間隔をあけて配置されており、図3に示すように車体上面から集電装置5に向かって上方に傾斜する傾斜面を備えている。
【0031】
図1〜図3に示す騒音低減装置7は、車両4の集電装置5から発生する騒音S1を低減する装置である。騒音低減装置7は、図1及び図2に示すように、集電装置5から発生して遮音板6a,6bに向かって伝播する騒音S1を検出し、空力音及びスパーク音と逆位相の音波S2を発生して、この空力音及びスパーク音をこの音波S2によって打ち消す。騒音低減装置7は、例えば、空力音と同振幅で逆位相の音波S2を発生し、この空力音と音波S2とを重ね合わせて空力音を打ち消すとともに、スパーク音と同振幅で逆位相の音波S2を発生し、このスパーク音と音波S2とを重ね合わせてスパーク音を打ち消す能動騒音制御(アクティブノイズコントロール(Active Noise Control))などである。騒音低減装置7は、図1及び図2に示す騒音検出部8,9と、音波発生部10,11と、図1〜図3に示す制御部12などを備えている。
【0032】
図1及び図2に示す騒音検出部8,9は、集電装置5の遮音板6a,6bに向かう騒音S1を検出する手段であり、騒音検出部8は一方の遮音板6aに向かう騒音S1を検出し、騒音検出部9は他方の遮音板6bに向かう騒音S1を検出する。騒音検出部8,9は、例えば、音響エネルギーを電気エネルギーに変換する音響電気変換部であり、騒音S1を受けて振動する振動板の機械振動を電気信号に変換して制御部12に出力するマイクロホンなどである。騒音検出部8,9は、例えば、図3に示すように、遮音板6a,6bの内側側面の上縁部付近に設置されており、図1及び図2に示すように集電装置5を挟むように対向して配置されている。
【0033】
音波発生部10,11は、遮音板6a,6bから音波S2を発生する手段であり、音波発生部10は一方の遮音板6aから音波S2を発生し、音波発生部11は他方の遮音板6bから音波S2を発生する。音波発生部10,11は、例えば、電気エネルギーを音響エネルギーに変換する電気音響変換部であり、制御部12が出力する電気信号を機械振動に変換して振動板を振動させ、平面波状又は球面波状の音波S2を発生するスピーカなどである。音波発生部10,11は、例えば、図1及び図2に示すように、遮音板6a,6bの内側側面の長さ方向の中央部に設置されており、集電装置5を挟むように対向して配置されている。
【0034】
図1〜図3に示す制御部12は、騒音低減装置7の種々の動作を制御する手段(中央処理部(CPU))である。制御部12は、騒音検出部8,9の検出結果に基づいて、空力音及びスパーク音を打ち消す音波S2を音波発生部10,11が発生するようにこの音波発生部10,11を動作制御する。制御部12は、例えば、騒音検出部8,9が出力する電気信号(騒音検出信号)に基づいて、空力音を打ち消すようなこの空力音と同一振幅で逆位相の音波S2を音波発生部10,11が発生するように、この音波発生部10,11に電気信号(音波発生信号)を出力する。また、制御部12は、例えば、騒音検出部8,9が出力する電気信号(騒音検出信号)に基づいて、スパーク音を打ち消すようなこのスパーク音と同一振幅で逆位相の音波S2を音波発生部10,11が発生するように、この音波発生部10,11に電気信号(音波発生信号)を出力する。制御部12には、図1及び図2に示すように、騒音検出部8,9と音波発生部10,11とが信号線などの通信手段を通して接続されている。制御部12は、図1〜図3に示す騒音検出信号抽出部12aと音波発生信号生成部12bとを備えている。
【0035】
騒音検出信号抽出部12aは、騒音検出部8,9が出力する騒音検出信号から所定の騒音検出信号を抽出する手段である。騒音検出信号抽出部12aは、例えば、騒音検出部8,9が出力する騒音検出信号に基づいて、空力音に相当する騒音検出信号と、スパーク音に相当する騒音検出信号とを抽出するフィルタ回路などである。
【0036】
音波発生信号生成部12bは、騒音検出信号抽出部12aが抽出した騒音検出信号に基づいて所定の音波発生信号を生成する手段である。音波発生信号生成部12bは、例えば、空力音に相当する騒音検出信号を打ち消す音波発生信号と、スパーク音に相当する騒音検出信号を打ち消す音波発生信号とを生成する信号生成回路などである。
【0037】
次に、この発明の実施形態に係る車両の騒音低減方法について説明する。
図1〜図3に示すように、車両4がA方向に走行すると集電装置5の集電舟5b、ホーン5c、枠組5d、台枠5e及びがいし5fなどから空力音が発生するとともに、集電装置5のすり板5aとトロリ線3aとが離れるとこれらの間にスパーク音が発生する。その結果、図1及び図2に示すように、集電装置5から遮音板6a,6bに向かって騒音S1が空気中を伝播し、遮音板6a,6bに直接到達するとともに遮音板6a,6bなどで反射した騒音S1が遮音板6a,6bに到達する。騒音検出部8,9が騒音S1を検出すると、この騒音検出部8,9が騒音検出信号を制御部12に出力し、空力音を低減するための音波発生信号とスパーク音を低減するための音波発生信号とを制御部12が音波発生部10,11に出力する。その結果、音波発生部10,11が音波S2を発生し、空力音及びスパーク音が音波S2によって打ち消されて騒音S1が低減する。
【0038】
この発明の第1実施形態に係る車両の騒音低減装置とその騒音低減方法には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、騒音検出部8,9の検出結果に基づいて、集電装置5から発生する空力音を打ち消す音波S2を音波発生部10,11が発生するようにこの音波発生部10,11を制御部12が動作制御する。また、この第1実施形態では、騒音検出部8,9の検出結果に基づいて、集電装置5のすり板5aとトロリ線3aとの間に発生するスパーク音を打ち消す音波S2を音波発生部10,11が発生するようにこの音波発生部10,11を制御部12が動作制御する。このため、車両4が走行するときに集電装置5から発生する騒音S1を低減することができる。また、既存のパンタグラフカバー部6の遮音板6a,6bを利用して、これらの遮音板6a,6bに騒音検出部8,9及び音波発生部10,11を簡単に取り付けることができる。このため、車両4を大規模に改造することなく騒音低減装置7を安価に設置することができる。さらに、新幹線の場合には在来線に比べて高速で車両4が走行するため、しゅう動音に比べて空力音やスパーク音による騒音S1の影響が大きくなるが、このような騒音S1を音波S2によって打ち消すことができるため、列車の高速化をより一層図ることができる。
【0039】
(2) この第1実施形態では、一方の側の遮音板6aに向かう騒音S1を騒音検出部8が検出してこの遮音板6aから音波S2を音波発生部10が発生し、他方の側の遮音板6bに向かう騒音S1を騒音検出部9が検出してこの遮音板6bから音波S2を音波発生部11が発生し、騒音検出部8,9の検出結果に基づいて、空力音及びスパーク音を打ち消す音波S2を音波発生部10,11が発生するように、この音波発生部10,11を制御部12が動作制御する。このため、遮音板6a,6bに向かって伝播するそれぞれ大きさの異なる騒音S1を騒音検出部8,9が検出し、空力音やスパーク音を打ち消すような音波S2を音波発生部10,11にそれぞれ発生させて、騒音S1を低減させることができる。
【0040】
(第2実施形態)
図4は、この発明の第2実施形態に係る車両の騒音低減装置を模式的に示す正面であり、図4(A)は下り線を車両が走行している状態を示し、図4(B)は上り線を車両が走行している状態を示す。以下では、図1〜図3に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
図4に示す制御部12は、集電装置5の左右いずれか一方の側が他方の側に比べて騒音対策が重要視されているときに、騒音対策が重要視されている一方の側の遮音板6a又は遮音板6bから音波S2を発生し、他方の側の遮音板6b又は遮音板6aから音波S2を発生しないように、音波発生部10,11を動作制御している。
【0041】
制御部12は、例えば、図4(A)に示すように、車両4が下り線2AをA方向(紙面の手前側から奥側)に走行するときには、進行方向左側の遮音板6aから音波S2を発生し、進行方向右側の遮音板6bから音波S2を発生しないように、音波発生部10,11を動作制御する。一般に、下り線2Aを車両4が走行するときには、この下り線2Aに近い沿線W1側がこの下り線2Aから遠い沿線W2側よりも騒音対策の優先度が高く騒音対策が重要視される。このため、遮音板6aから音波発生部10が音波S2を発生すると、この遮音板6aに向かって進行する空力音やスパーク音を音波S2が打ち消して、沿線W1側の騒音S1が低減する。遮音板6bから音波発生部11が音波S2を発生しないと、この遮音板6bに向かって進行する騒音S1が沿線W2側に放射されるが、沿線W1よりも沿線W2が下り線2Aから離れており沿線W2側に与える騒音S1による影響は少ない。
【0042】
一方、制御部12は、例えば、図4(B)に示すように、車両4が終着駅で折り返して上り線2BをB方向(紙面の奥側から手前側)に走行するときには、進行方向左側の遮音板6bから音波S2を発生し、進行方向右側の遮音板6aから音波S2を発生しないように、音波発生部10,11を動作制御する。一般に、上り線2Bを車両4が走行するときには、この上り線2Bに近い沿線W2側がこの上り線2Bから遠い沿線W1側よりも騒音対策の優先度が高く騒音対策が重要視される。このため、遮音板6bから音波発生部11が音波S2を発生すると、この遮音板6bに向かって進行する空力音やスパーク音を音波S2が打ち消して、沿線W2側の騒音S1が低減する。遮音板6aから音波発生部10が音波S2を発生しないと、この遮音板6aに向かって進行する騒音S1が沿線W1側に放射されるが、沿線W2よりも沿線W1が上り線2Bから離れており沿線W1側に与える騒音S1による影響は少ない。
【0043】
この第2実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、騒音対策が重要視されている側の遮音板6a又は遮音板6bのいずれか一方から音波S2を発生するため、騒音S1の検出や音波S2の発生に必要な電力消費を抑えることができる。
【0044】
(第3実施形態)
図5は、この発明の第3実施形態に係る車両の騒音低減装置を概略的に示す構成図であり、図5(A)は下り線を車両が走行している状態を示し、図5(B)は上り線を車両が走行している状態を示す。
図5に示す騒音低減装置7は、騒音検出部8,9と、音波発生部10,11と、制御部12と、速度検出部13と、路線情報記憶部14と、現在位置検出部15などを備えている。制御部12は、車両4が通過する沿線W1,W2の騒音対策の優先度が一方の側と他方の側とで入れ替わったときには、音波S2を発生させる側と音波S2を発生させない側とが逆になるように、音波発生部10,11を動作制御する。
【0045】
速度検出部13は、車両4の速度を検出する手段であり、車両4の車輪の回転数に応じて発生する距離パルス信号を速度情報として出力する速度発電機などである。路線情報記憶部14は、騒音低減装置7に関する種々の情報を記憶する手段であり、車両4が走行する全区間の沿線W1,W2の騒音対策の優先度に関する情報を路線情報として記憶するメモリなどである。路線情報記憶部14は、例えば、図5(A)に示すように、下り線2Aを車両4が走行する場合であって、この下り線2Aに近い沿線W1側よりもこの下り線2Aから遠い沿線W2側のほうが騒音対策の優先度が高く騒音対策が重要視されているような特別な事情があるときに、この区間の路線の位置及びこの区間の距離などを路線情報として記憶している。路線情報記憶部14は、沿線W1,W2の騒音対策の優先度が変更されたような場合には変更後の路線情報が書き込まれ記憶される。現在位置検出部15は、車両4の現在位置を検出する手段である。現在位置検出部15は、軌道2側の特定地点に設置された自動列車停止装置(ATS)のATS地上子との間で相互に情報を送受信するために車両4側に設置されたATS車上子と、このATS車上子からの信号を受信して現在位置情報(絶対位置情報)を制御部12に出力するATS受信機などを備えている。
【0046】
次に、この発明の第3実施形態に係る車両の騒音低減方法について説明する。
例えば、沿線W1側には住居が少なく沿線W2側には住居が多い場合や、沿線W1,W2側にはいずれも防音壁などの防音構造物が存在するが沿線W2側にはこの防音構造物よりも高い位置に住居がある場合などがある。このような場合には、一般的な事情とは異なり、沿線W1側よりも沿線W2側のほうが特別な事情により騒音対策の優先度が高く騒音対策が重要視される。図5(A)に示すように、下り線2Aを車両4が走行すると、速度検出部13が検出した速度情報と、路線情報記憶部14が記憶する路線情報と、現在位置検出部15が検出した現在位置情報と基づいて、音波S2を発生させる側と音波S2を発生させない側とを逆にする必要があるか否かを制御部12が判断する。音波S2を発生させる側と音波S2を発生させない側とを逆にする必要があると制御部12が判断したときには、遮音板6aから音波発生部10が音波S2を発生させず、遮音板6bから音波発生部11が音波S2を発生させることによって、沿線W2側の騒音S1が低減される。一方、図5(B)に示すように、車両4が終着駅で折り返して上り線2Bを走行する場合であって、音波S2を発生させる側と音波S2を発生させない側とを逆にする必要があるときには、遮音板6bから音波発生部11が音波S2を発生させず、遮音板6aから音波発生部10が音波S2を発生さることによって、沿線W1側の騒音S1が低減される。
【0047】
この発明の第3実施形態に係る車両の騒音低減装置とその騒音低減方法には、第1実施形態及び第2実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第3実施形態では、車両4が通過する沿線W1,W2の騒音対策の優先度が一方の側と他方の側とで入れ替わったときには、音波S2を発生させる側と音波S2を発生させない側とが逆になるように、音波発生部10,11を制御部12が動作制御する。このため、通常の場合とは異なる特別な事情によって沿線W1,W2の騒音対策の優先度が逆になるようなときに、騒音対策の事情に応じて騒音S1を低減することができる。
【0048】
(第4実施形態)
図6は、この発明の第4実施形態に係る車両の騒音低減装置を模式的に示す正面図である。
図6に示す騒音低減装置7は、音波発生部10,11と、制御部12と、離線検出部16などを備えており、図1に示す騒音検出部8,9に代えて離線検出部16を備えている。制御部12は、離線検出部16の検出結果に基づいて、集電装置5のすり板5aとトロリ線3aとの間に発生するスパーク音を打ち消す音波S2を音波発生部10,11が発生するように音波発生部10,11を動作制御する。制御部12は、例えば、離線検出部16が出力する電気信号(離線検出信号)に基づいて、スパーク音を打ち消すようなこのスパーク音と同一振幅で逆位相の音波S2を音波発生部10,11が発生するように、この音波発生部10,11に電気信号(音波発生信号)を出力する。制御部12は、スパーク音を打ち消す音波発生信号を生成する音波発生信号生成部12cを備えており、音波発生信号生成部12cは離線検出部16が出力する離線検出信号が入力すると、スパーク音を打ち消すような音波S2を発生可能な予め設定された音波発生信号を生成し、この音波発生信号を音波発生部10,11に出力する。制御部12には、図1に示すように、音波発生部10,11と離線検出部16とが信号線などの通信手段を通して接続されている。
【0049】
離線検出部16は、集電装置5のすり板5aとトロリ線3aとが離れる離線を検出する手段である。離線検出部16は、例えば、すり板5aを通じてトロリ線3aから車両4に導かれた電流(パンタグラフ電流)を測定することによって、すり板5aとトロリ線3aとの離線状態を検出するセンサなどである。離線検出部16は、すり板5aとトロリ線3aとの離線を検出すると電気信号(離線検出信号)を制御部12に出力する。
【0050】
次に、この発明の第4実施形態に係る車両の騒音低減方法について説明する。
図6に示すように、車両4がA方向に走行して集電装置5のすり板5aとトロリ線3aとが離れてこれらの間にスパーク音が発生すると、すり板5aとトロリ線3aとの離線を離線検出部16が検出し、離線検出部16が離線検出信号を制御部12に出力する。その結果、スパーク音を低減するための音波発生信号を制御部12が音波発生部10,11に出力して、音波発生部10,11が音波S2を発生すると、スパーク音が音波S2によって打ち消されて騒音S1が低減する。
【0051】
この第4実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、車両4の基本構造を改変することなく、離線検出部16を利用してスパーク音を簡単に検出し騒音S1を低減することができる。
【0052】
(第5実施形態)
図7は、この発明の第5実施形態に係る車両の騒音低減装置を模式的に示す正面であり、図7(A)は下り線を車両が走行している状態を示し、図7(B)は上り線を車両が走行している状態を示す。
図7に示す制御部12は、集電装置5の左右いずれか一方の側が他方の側に比べて騒音対策が重要視されている場合であって、離線検出部16が離線を検出したときに、図4に示す制御部12と同様の動作制御をする。制御部12は、図7(A)に示すように、車両4がA方向に走行するときに、騒音対策が重要視されている一方の側(沿線W1)の遮音板6aから音波S2を発生し、他方の側(沿線W2)の遮音板6bから音波S2を発生しないように、音波発生部10,11を動作制御する。また、制御部12は、図7(B)に示すように、車両4が終着駅で折り返してB方向に走行するときに、騒音対策が重要視されている一方の側(沿線W2)の遮音板6bから音波S2を発生し、他方の側(沿線W1)の遮音板6aから音波S2を発生しないように、音波発生部10,11を動作制御する。この第5実施形態には、第2実施形態及び第4実施形態と同様の効果がある。
【0053】
(第6実施形態)
図8は、この発明の第6実施形態に係る車両の騒音低減装置を概略的に示す構成図であり、図8(A)は下り線を車両が走行している状態を示し、図8(B)は上り線を車両が走行している状態を示す。
図8に示す騒音低減装置7は、音波発生部10,11と、制御部12と、速度検出部13と、路線情報記憶部14と、現在位置検出部15と、離線検出部16などを備えており、図1に示す騒音検出部8,9に代えて離線検出部16を備えている。制御部12は、車両4が通過する沿線W1,W2の騒音対策の優先度が一方の側と他方の側とで入れ替わった場合であって、離線検出部16が離線を検出したときには、音波S2を発生させる側と音波S2を発生させない側とが逆になるように、音波発生部10,11を動作制御する。制御部12は、図8(A)に示すように、車両4がA方向に走行している場合であって、騒音対策の優先度が沿線W1側から沿線W2側に入れ替わったときには、音波発生部10から発生させていた音波S2を音波発生部11から発生させる。一方、制御部12は、図8(B)に示すように、車両4が終着駅で折り返してB方向に走行している場合であって、騒音対策の優先度が沿線W2側から沿線W1側に入れ替わったときには、音波発生部11から発生させていた音波S2を音波発生部10から発生させる。この第6実施形態には、第3実施形態及び第4実施形態と同様の効果がある。
【0054】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、東北新幹線を例に挙げて説明したが、東海道新幹線などについてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、軌道2が複線である場合を例に挙げて説明したが、軌道2が複々線である場合についてもこの発明を適用することができる。
【0055】
(2) この実施形態では、車両4が左側通行である場合を例に挙げて説明したが、右側通行である場合についてもこの発明を適用することができる。例えば、図4(A)に示す車両4が複線を右側通行するときには、進行方向右側の遮音板6bから音波発生部11が音波S2を発生し、進行方向左側の遮音板6aから音波発生部10が音波S2を発生しないように、音波発生部10,11を制御部12が動作制御することもできる。また、この実施形態では、空力音及びスパーク音を音波S2によって打ち消す場合を例に挙げて説明したが、騒音源の位置に応じて音波発生部10,11が発生する音波S2の特性を制御部12が変化させることもできる。例えば、がいし5fから発生する空力音よりも集電舟5bから発生する空力音のほうが重要視される場合には、音波発生部10,11が発生する音波S2の特性を集電舟5bから発生する空力音を打ち消す音波S2の特性に変化させることができる。
【0056】
(3) この実施形態では、空力音及びスパーク音を打ち消す音波S2を音波発生部10,11から発生させているが、空力音を打ち消す音波S2を空力音低減用音波発生部から発生させ、スパーク音を打ち消す音波S2をスパーク音低減用音波発生部から発生させることもできる。また、この実施形態では、音波発生部10,11から音波S2を発生させて空力音及びスパーク音を低減しているが、騒音レベルの高いいずれか一方の空力音又はスパーク音のみを低減する音波S2を音波発生部10,11から発生させることもできる。さらに、この第3実施形態及び第6実施形態では、走行位置に応じて音波S2を発生する音波発生部10,11を切り替えているが、走行位置に応じて空力音又はスパーク音のいずれか一方を低減する音波S2を音波発生部10,11から発生させたり、走行位置に応じて集電舟5b又はがいし5fのいずれか一方から発生する空力音を低減する音波S2を音波発生部10,11から発生させたりすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明の第1実施形態に係る車両の騒音低減装置を模式的に示す正面図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る車両の騒音低減装置を模式的に示す平面図である。
【図3】図2のIII-III線で切断した状態を示す模式的に示す断面図である。
【図4】この発明の第2実施形態に係る車両の騒音低減装置を模式的に示す正面であり、(A)は下り線を車両が走行している状態を示し、(B)は上り線を車両が走行している状態を示す。
【図5】この発明の第3実施形態に係る車両の騒音低減装置を概略的に示す構成図であり、(A)は下り線を車両が走行している状態を示し、(B)は上り線を車両が走行している状態を示す。
【図6】この発明の第4実施形態に係る車両の騒音低減装置を模式的に示す正面図である。
【図7】この発明の第5実施形態に係る車両の騒音低減装置を模式的に示す正面であり、(A)は下り線を車両が走行している状態を示し、(B)は上り線を車両が走行している状態を示す。
【図8】この発明の第6実施形態に係る車両の騒音低減装置を概略的に示す構成図であり、(A)は下り線を車両が走行している状態を示し、(B)は上り線を車両が走行している状態を示す。
【符号の説明】
【0058】
1 路盤
2 軌道
2A 下り線
2B 上り線
2a レール
3 架線
3a トロリ線
4 車両
4a 車体
4b 屋根上面
5 集電装置
5a すり板
5b 集電舟
5c ホーン
5d 枠組
5e 台枠
5f がいし
6 パンタグラフカバー部
6a,6b 遮音板
6c,6d がいしカバー部
7 騒音低減装置
8,9 騒音検出部
10,11 音波発生部
12 制御部
12a 騒音検出信号抽出部
12b,12c 音波発生信号生成部
13 速度検出部
14 路線情報記憶部
15 現在位置検出部
16 離線検出部
1 騒音
2 音波
1,W2 沿線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の集電装置から発生する騒音を低減する車両の騒音低減装置であって、
前記集電装置の遮音板に向かう前記騒音を検出する騒音検出部と、
前記遮音板から音波を発生する音波発生部と、
前記騒音検出部の検出結果に基づいて、前記集電装置から発生する空力音を打ち消す音波を前記音波発生部が発生するようにこの音波発生部を動作制御する制御部と、
を備える車両の騒音低減装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の騒音低減装置において、
前記騒音検出部は、
前記集電装置の一方の側の遮音板に向かう前記騒音を検出する第1の騒音検出部と、
前記集電装置の他方の側の遮音板に向かう前記騒音を検出する第2の騒音検出部とを備え、
前記音波発生部は、
前記一方の側の遮音板から前記音波を発生する第1の音波発生部と、
前記他方の側の遮音板から前記音波を発生する第2の音波発生部とを備え、
前記制御部は、前記第1及び前記第2の騒音検出部の検出結果に基づいて、前記空力音を打ち消す音波を前記第1及び前記第2の音波発生部が発生するように、この第1及びこの第2の音波発生部を動作制御すること、
を特徴とする車両の騒音低減装置。
【請求項3】
車両の集電装置から発生する騒音を低減する車両の騒音低減装置であって、
前記集電装置の遮音板に向かう前記騒音を検出する騒音検出部と、
前記遮音板から音波を発生する音波発生部と、
前記騒音検出部の検出結果に基づいて、前記集電装置のすり板とトロリ線との間に発生するスパーク音を打ち消す音波を前記音波発生部が発生するようにこの音波発生部を動作制御する制御部と、
を備える車両の騒音低減装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両の騒音低減装置において、
前記騒音検出部は、
前記集電装置の一方の側の遮音板に向かう前記騒音を検出する第1の騒音検出部と、
前記集電装置の他方の側の遮音板に向かう前記騒音を検出する第2の騒音検出部とを備え、
前記音波発生部は、
前記一方の側の遮音板から前記音波を発生する第1の音波発生部と、
前記他方の側の遮音板から前記音波を発生する第2の音波発生部とを備え、
前記制御部は、前記第1及び前記第2の騒音検出部の検出結果に基づいて、前記スパーク音を打ち消す音波を前記第1及び前記第2の音波発生部が発生するように、この第1及びこの第2の音波発生部を動作制御すること、
を特徴とする車両の騒音低減装置。
【請求項5】
車両の集電装置から発生する騒音を低減する車両の騒音低減装置であって、
前記集電装置のすり板とトロリ線とが離れる離線を検出する離線検出部と、
前記集電装置の遮音板から音波を発生する音波発生部と、
前記離線検出部の検出結果に基づいて、前記すり板と前記トロリ線との間に発生するスパーク音を打ち消す音波を前記音波発生部が発生するようにこの音波発生部を動作制御する制御部と、
を備える車両の騒音低減装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両の騒音低減装置において、
前記音波発生部は、
前記一方の側の遮音板から前記音波を発生する第1の音波発生部と、
前記他方の側の遮音板から前記音波を発生する第2の音波発生部とを備え、
前記制御部は、前記離線検出部の検出結果に基づいて、前記スパーク音を打ち消す音波を前記第1及び前記第2の音波発生部が発生するように、この第1及びこの第2の音波発生部を動作制御すること、
を特徴とする車両の騒音低減装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の車両の騒音低減装置において、
前記制御部は、前記集電装置の左右いずれか一方の側が他方の側に比べて騒音対策が重要視されているときに、騒音対策が重要視されている前記一方の側の遮音板から前記音波を発生し、前記他方の側の遮音板から前記音波を発生しないように、前記第1及び前記第2の音波発生部を動作制御すること、
を特徴とする車両の騒音低減装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両の騒音低減装置において、
前記制御部は、
前記車両が複線を左側通行するときには、進行方向左側の遮音板から前記音波を発生し、進行方向右側の遮音板から前記音波を発生しないように前記第1及び前記第2の音波発生部を動作制御し、
前記車両が複線を右側通行するときには、進行方向右側の遮音板から前記音波を発生し、進行方向左側の遮音板から前記音波を発生しないように、前記第1及び前記第2の音波発生部を動作制御すること、
を特徴とする車両の騒音低減装置。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の車両の騒音低減装置において、
前記制御部は、前記車両が通過する沿線の騒音対策の優先度が一方の側と他方の側とで入れ替わったときには、前記音波を発生させる側と前記音波を発生させない側とが逆になるように、前記第1及び前記第2の音波発生部を動作制御すること、
を特徴とする車両の騒音低減装置。
【請求項10】
車両の集電装置から発生する騒音を低減する車両の騒音低減方法であって、
前記集電装置から発生してこの集電装置の遮音板に向かう空力音を低減するために、この遮音板からこの空力音を打ち消す音波を発生すること、
を特徴とする車両の騒音低減方法。
【請求項11】
請求項10に記載の車両の騒音低減方法において、
前記集電装置の一方の側の遮音板に向かう前記空力音を低減するときには、この一方の側の遮音板からこの空力音を打ち消す音波を発生し、
前記集電装置の他方の側の遮音板に向かう前記空力音を低減するときには、この他方の側の遮音板からこの空力音を打ち消す音波を発生すること、
を特徴とする車両の騒音低減方法。
【請求項12】
車両の集電装置から発生する騒音を低減する車両の騒音低減方法であって、
前記集電装置のすり板とトロリ線との間に発生してこの集電装置の遮音板に向かうスパーク音を低減するために、このスパーク音を打ち消す音波を発生すること、
を備える車両の騒音低減方法。
【請求項13】
請求項12に記載の車両の騒音低減方法において、
前記集電装置の一方の側の遮音板に向かう前記スパーク音を低減するときには、この一方の側の遮音板からこのスパーク音を打ち消す音波を発生し、
前記集電装置の他方の側の遮音板に向かう前記スパーク音を低減するときには、この他方の側の遮音板からこのスパーク音を打ち消す音波を発生すること、
を特徴とする車両の騒音低減方法。
【請求項14】
請求項12から請求項13までのいずれか1項に記載の車両の騒音低減方法において、
前記集電装置の左右いずれか一方の側が他方の側に比べて騒音対策が重要視されているときに、騒音対策が重要視されている前記一方の側の遮音板から前記音波を発生し、前記他方の側の遮音板から前記音波を発生しないこと、
を特徴とする車両の騒音低減方法。
【請求項15】
請求項14に記載の車両の騒音低減方法において、
前記車両が複線を左側通行するときには、進行方向左側の遮音板から前記音波を発生し、進行方向右側の遮音板から前記音波を発生しないようにし、
前記車両が複線を右側通行するときには、進行方向右側の前記遮音板から前記音波を発生し、進行方向左側の遮音板から前記音波を発生しないようにすること、
を特徴とする車両の騒音低減方法。
【請求項16】
請求項14又は請求項15に記載の車両の騒音低減方法において、
前記車両が通過する沿線の騒音対策の優先度が一方の側と他方の側とで入れ替わったときには、前記音波を発生させる側と前記音波を発生させない側とが逆になること、
を特徴とする車両の騒音低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−245380(P2008−245380A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80168(P2007−80168)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】