説明

車両シート装置

【課題】車両シートから車椅子に車椅子利用者を移乗させたりする場合に、この移乗を補助する者の車両シートからの抱き上げ動作あるいは車両シートへの抱き下ろし動作における中腰姿勢の負荷を少なくする。
【解決手段】車両シート装置20は、車両室内11から車両室外12の区間を移動可能に構成される。この車両シート装置20には、車両シート21に乗員が着席あるいは離席可能となるように車両室外12に移動した位置で、シートクッション22のうち着座する乗員Pの臀部が当たる部分の高さ位置を高くできるようにチルト機構30が設けられている。また、チルト機構30は、車両室外12に車両シート21が移動した場合に、チルト機構30によるシートクッション22の高さ位置を高くする操作を行う操作コントローラ55が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載される車両シート装置に関する。詳しくは、足腰が弱い車椅子利用者にとって車両の乗降がし易くなるように、車両室内から車両室外の区間を移動可能に構成される車両シートを具備する車両シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に搭載される車両シートにあっては、足腰が弱い車椅子利用者が着席あるいは離席する場合であっても、この着席あるいは離席する動作が有利となるように設計される車両シート装置が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。この車両シート装置にあっては、車両に乗車する乗員として着座する車両シートと、この車両シートの位置を変える移動機構とを備える。また、この移動機構としては、車両室内で車両シートの向きを変えるシート回転機構と、車両室内と車両室外との間で車両シートをスライド移動させるシートスライド移動機構と、車両室外で車両シートを昇降させるシート昇降機構とを備える。この車両シート装置によれば、車椅子から車両シートに移乗できる或いは車両シートから車椅子に移乗できる車両室外の移乗位置と、車両を運転できるように乗車状態となる車両室内の乗車位置との間で、車両シートを移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4033031
【特許文献2】特開2005−247195
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車椅子利用者が車椅子から車両シートに移乗する着席動作の場合や、車椅子利用者が車両シートから車椅子に移乗する離席動作の場合には、この車椅子利用者の移乗の動作を補助する者(以下、『移乗補助者』と称する)が必要である。すなわち、車椅子利用者が車椅子から車両シートに移乗する場合、この車椅子利用者が車両シートに着座するまで、移乗補助者が車椅子利用者を抱きかかえる必要がある。また逆に、車椅子利用者が車両シートから車椅子に移乗する場合、この車椅子利用者が車椅子に着座するまで、移乗補助者が車椅子利用者を抱きかかえる必要がある。
そうすると、移乗補助者は、車椅子利用者の臀部が車両シートの座あるいは車椅子の座に当たるまで車椅子利用者を抱きかかえる必要が生じる。このため、移乗補助者は、車椅子利用者を抱き上げたり抱き下ろしたりする動作に中腰姿勢をとらざるを得ない。それゆえ、腰痛に悩まされる移乗補助者が増えつつある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、車両室内から車両室外の区間を移動可能に構成される車両シートを具備する車両シート装置において、車椅子から車両シートに車椅子利用者を移乗させたり車両シートから車椅子に車椅子利用者を移乗させたりする場合に、この移乗を補助する者の車両シートからの抱き上げ動作あるいは車両シートへの抱き下ろし動作における中腰姿勢の負荷を少なくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明に係る車両シート装置は次の手段を採用する。
すなわち、本発明の第1の発明に係る車両シート装置は、車両室内から車両室外の区間を移動可能に構成される車両シートを具備する車両シート装置であって、前記車両シートに乗員が着席あるいは離席可能となるように前記車両室外に移動した位置で、少なくともシートクッションのうち着座する乗員の臀部が当たる部分の高さ位置を高くできる座面上昇手段と、前記車両シートが前記車両室外に前記車両シートが移動した場合に、前記座面上昇手段による前記シートクッションの高さ位置を高くする操作を行う高さ操作手段と、を備えたことを特徴とする。
この第1の発明に係る車両シート装置によれば、座面上昇手段と高さ操作手段とを備えているので、車両シートが車両室外に車両シートが移動した場合に、高さ操作手段により、該車両室外に移動した位置で少なくともシートクッションのうち着座する乗員の臀部が当たる部分の高さ位置を高くすることができる。これによって、車椅子から車両シートに着座する車椅子利用者を移乗させたり車両シートから車椅子に着座する乗員を移乗させたりする場合に、この着座者の臀部位置を高くした状態で車両シートに着座させることができて、この移乗を補助する者の抱き上げ動作および抱き下ろし動作における中腰姿勢をとる機会を少なくすることができる。もって、中腰姿勢の負荷を少なくして、移乗を補助する者の腰痛の発生を少なくすることができる。
【0007】
第2の発明に係る車両シート装置は、前記第1の発明に係る車両シート装置において、使用者により操作入力される操作入力手段を備え、前記高さ操作手段は、前記操作入力手段からの操作入力に基づいて前記座面上昇手段による前記シートクッションの高さ位置を高くする操作を行うことを特徴とする。
この第2の発明に係る車両シート装置によれば、高さ操作手段は、操作入力手段からの操作入力に基づいて座面上昇手段によるシートクッションの高さ位置を高くする操作を行うので、移乗する者の体格や移乗を補助する者の体格に応じて、操作入力手段からの操作入力によって適宜にシートクッションの高さ位置を調節することができる。これによって、シートクッションの高さ位置を移乗を補助する者の好みの高さに調節することができて、移乗を補助する者にとっての利便性を高める。
【0008】
第3の発明に係る車両シート装置は、前記第1または前記第2の発明に係る車両シート装置において、前記シートクッションには、着座する乗員の体重の荷重変化を検知する荷重変化検知手段が設けられており、前記高さ操作手段は、前記荷重変化検知手段からの荷重変化の検知に基づいて前記座面上昇手段による前記シートクッションの高さ位置を高くする操作を行うことを特徴とする。
この第3の発明に係る車両シート装置によれば、高さ操作手段は、荷重変化検知手段からの荷重変化の検知に基づいて座面上昇手段によるシートクッションの高さ位置を高くする操作を行うので、この荷重変化の検知により移乗する者の足が着地しているか否かを検知することができて、移乗する者の体格に応じて、シートクッションの高さ位置を自動的に調節することができる。これによって、移乗を補助する者の操作を不要にしながらシートクッションの高さ位置を自動的に好ましい高さに調節することができ、移乗を補助する者にとって移乗させ易いものとすることができる。
【0009】
第4の発明に係る車両シート装置は、前記第1から前記第3のいずれかの発明に係る車両シート装置において、前記高さ操作手段は、該高さ操作手段による前記座面上昇手段の操作を記憶する記憶手段を備え、該記憶手段に記憶された情報に基づいて前記座面上昇手段による前記シートクッションの高さ位置を高くする操作を行うことを特徴とする。
この第4の発明に係る車両シート装置によれば、記憶手段に記憶された情報に基づいて座面上昇手段によるシートクッションの高さ位置を高くする操作を行うので、他の操作手段や検知手段に基づく制御を省略することができて、シートクッションの高さ位置を自動的に調節することができる。これによって、移乗する者が記憶された情報に合致する場合に、シートクッションの高さ位置の調節を自動かつ簡略化することができ、移乗を補助する者にとって移乗させ易いものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明に係る車両シート装置によれば、この移乗を補助する者の抱き上げ動作および抱き下ろし動作における中腰姿勢をとる機会を少なくすることができ、中腰姿勢の負荷を少なくして移乗を補助する者の腰痛の発生を少なくすることができる。
第2の発明に係る車両シート装置によれば、シートクッションの高さ位置を移乗を補助する者の好みの高さに調節することができて、移乗を補助する者にとっての利便性を高める。
第3の発明に係る車両シート装置によれば、移乗を補助する者の操作を不要にしながらシートクッションの高さ位置を自動的に好ましい高さに調節することができ、移乗を補助する者にとって移乗させ易いものとすることができる。
第4の発明に係る車両シート装置によれば、移乗を補助する者の操作を不要にしながらシートクッションの高さ位置を自動的に検知不要で好ましい高さに調節することができ、移乗を補助する者にとって移乗させ易いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車両シートの移動動作の流れを示す平面模式図である。
【図2】車両シート装置の座面上昇動作前を示す側面模式図である。
【図3】車両シート装置の座面上昇動作後を示す側面模式図である。
【図4】車両シートに着座する着座者の車両シートから車椅子への移乗を段階的に示す側面模式図である。
【図5】従来の車両シートに着座する着座者の車両シートから車椅子への移乗を段階的に示す側面模式図である。
【図6】図2および図3と比較できるように図示するチルト機構の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る車両シート装置を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1〜図3は、車両シート装置20について模式的に示す図である。なお、図1の(a)〜(e)は、車両シート21の移動動作の流れを示す平面模式図である。また、図2および図3は、図1(e)における車両シート装置20を側面視した場合の側面模式図である。
図1〜図3に示す車両シート装置20は、車両としての自動車10に搭載される自動車乗員用のシートである。この車両シート装置20は、図2および図3に示すように、乗員が着座する車両シート21と、この車両シート21を移動させるための移動機構50とを備える。なお、この車両シート装置20は、自動車10の助手席として搭載されており、足腰が弱い車椅子利用者にとって乗降のし易いものとするものである。このため、この車両シート21は、図1に示すように、自動車10の内部の車両室内11から、自動車10の外部の車両室外12までの区間で移動可能に構成されている。なお、図1に示す(a)〜(e)は、この移動機構50により車両シート21が車両室内11位置から車両室外12位置に移動する一連の移動動作を示している。
【0013】
すなわち、図1の(a)〜(e)に示す車両シート21の一連の移動動作は、一部のみが図示される移動機構50によりなされる。移動機構50は、詳細構造に関する図示を省略するが、上記した自動車10の車体(不図示)に取り付けられており、車両シート21を移動可能に支持する。この移動機構50は、図示していない、車両室内11で車両シート21の向きを変える回転機構と、車両室内11と車両室外12との間で車両シート21をスライド移動させるスライド移動機構と、車両室外12で車両シート21を昇降させる昇降機構(四節リンク機構52)とを備える。つまり、移動機構50は、具備される回転機構により車両シート21を回転移動させ、具備されるスライド移動機構により車両シート21をスライド移動させ、この移動機構50に具備される昇降機構(四節リンク機構52)により車両シート21を昇降移動させる。
なお、この移動機構50による車両シート21の移動動作は、操作コントローラ55によってなされる。つまり、操作コントローラ55は、上記した各種の機構(回転機構、スライド移動機構、昇降機構)を含む移動機構50に対して、コントロール制御可能に接続されている。そして、乗員(着座者)や移乗補助者が操作コントローラ55を操作することにより、操作コントローラ55から移動機構50に操作入力されることとなる。このように操作入力がされた移動機構50は、操作コントローラ55からの操作入力に基づき、車両シート21を次のような一連の移動動作させる。
【0014】
図1の(a)〜(e)を参照しながら、車両シート21の一連の移動動作について説明する。
この図1の(a)に示す車両シート21は、車両室内11位置となる乗車状態位置となる車両シート21を示している。これに対して図1の(e)に示す車両シート21は、車両室外12位置となる車椅子(不図示)に移乗可能な乗降位置となる車両シート21を示している。このようにして、図1に示す(a)〜(e)の並び順で、乗車位置となる車両室内11位置から、車椅子(不図示)に移乗可能な乗降位置となる車両室外12位置に、車両シート21を移動する動作を示している。逆に言えば、(e)〜(a)の順で、車椅子(不図示)に移乗可能な乗降位置となる車両室外12位置から、乗車位置となる車両室内11位置に、車両シート21を移動する動作を示している。
【0015】
具体的には、図1(a)は、乗車状態となる車両室内11に位置する車両シート21を示す。なお、符号15はセンターコンソール、符号16は助手席ドア、符号17はセンターピラーである。これに対して図1(b)は、第1移動動作をした車両シート21を示す。この図1(b)の車両シート21は、図1(a)の車両シート21と比較して助手席ドア16側となる外側に向くように左回転移動している。図1(c)は、第2移動動作をした車両シート21を示す。図1(c)の車両シート21は、図1(b)の車両シート21と比較して、着座する乗員の脚が車両室外12に向くまで、更に助手席ドア16側となる外側に向くように左回転移動している。このように左回転移動する車両シート21は、この回転移動とともに車両室外12に向けてスライド移動している。図1(d)は、第3移動動作をした車両シート21を示す。図1(d)の車両シート21は、図1(c)の車両シート21と比較して、車両室内11から車両室外12に向かってスライド移動している。図1(e)は、車椅子(不図示)に移乗可能な乗降位置となる車両室外12に位置する車両シート21を示す。図1(e)の車両シート21は、図1(d)の車両シート21と比較して、車両室外12で降下移動した位置となっている。このように車両室外12で降下移動した車両シート21は、乗員が着席あるいは離席することができるように、移動した位置となっている。なお、この乗員が着席あるいは離席することができるほどに降下移動した車両シート21の位置は、図2および図3に示すように、この車両シート21に着座する乗員(着座者)Pの足が地面Gに着地するまで降下移動した車両シート21の位置である。
【0016】
次に、図2および図3を参照しながら、車両シート21の上昇動作(チルトアップ)について説明する。図2は、上記した図1(e)において車両シート21の座面221の上昇動作前を示す側面模式図である。この図2は、座面221の上昇動作前となる通常乗車位置に位置している。図3は、上記した図1(e)において車両シート21の座面221の上昇動作後を示す側面模式図である。この図3は、座面221の上昇動作後となる移乗可能位置に位置している。
車両シート21は、図示するように、着座する際の座となるシートクッション22と、着座した際の背凭れとなるシートバック23と、着座した際の頭凭れとなるヘッドレスト24とを備える。また、図2および図3に示す符号Pは、シートクッション22に着座する乗員を示している。また、図2および図3に示す符号221は、シートクッション22の座面を示している。
【0017】
なお、上記した車両シート21は、四節リンク機構52に支持されるようにシートベース25を備える。このシートベース25は、上記したシートクッション22を支持している。なお、このシートクッション22は、シートバック23およびヘッドレスト24を支持している。
車両シート21は、図2および図3に示すように、上記した車両シート21を支持するシートベース25を介して、四節リンク機構52により支持されている。この四節リンク機構52は、移動機構50の昇降機構を構成している。なお、移動機構50の昇降機構をなす四節リンク機構52は、車両シート21を降下させるものとした昇降機能を有して構成される。このため、昇降機構をなす四節リンク機構52は、図2および図3に示すように、この車両シート21に着座する乗員Pの足が地面Gに着地するまで、車両シート21を降下させている。
【0018】
ところで、上記したシートベース25とシートクッション22との間には、チルト機構30が設けられている。このチルト機構30は、図2および図3に示すように、シートクッション22の後側部分を昇降させるように機能する。このチルト機構30は、概略、シートクッション22の前側部分に設けられる回転軸支部31と、シートクッション22の後側部分に設けられる昇降駆動部33とを備える。
シートクッション22の前側部分に配設される回転軸支部31は、シートベース25に対してシートクッション22を回転可能にしている。また、昇降駆動部33は、回転駆動する駆動モータ35と、この駆動モータ35の回転駆動力を出力するピニオンギヤ36と、このピニオンギヤ36と噛合するドリブンギヤ37とを備える。駆動モータ35は、シートベース25に支持されている。ピニオンギヤ36は、駆動モータ35の回転軸に取り付けられている。このため、ピニオンギヤ36は、駆動モータ35の回転駆動に応じて回転する。ドリブンギヤ37は、シートベース25に回転可能に支持されている。このドリブンギヤ37は、ピニオンギヤ36と噛合しており、この噛合するピニオンギヤ36の回転駆動力を受けて回転する。
【0019】
ここで、ドリブンギヤ37には、この回転径方向に沿って延びる連結リンク部38が設けられている。この連結リンク部38の先端は、シートクッション22に設けられたガイドスリット39に嵌挿されるようにしてシートクッション22に連結されている。これにより、連結リンク部38が、ピニオンギヤ36の回転駆動を受けてドリブンギヤ37と一体回転すると、連結リンク部38の先端はガイドスリット39内で相対移動しつつシートクッション22を昇降させるように機能することとなる。なお、このシートクッション22のうち、連結リンク部38が連結されて昇降支持される部分は、着座する乗員の臀部が当たる部分に相当する。ここで、チルト機構30は、本発明に係る座面上昇手段に相当する。すなわち、チルト機構30は、車両室外12に移動した位置(図1(e))で、上記した乗員が着席あるいは離席可能となるように、着座する乗員の臀部が当たる部分の高さ位置を高くするようにシートクッション22の座面221を高くするように機能する。
このチルト機構30によるシートクッション22の昇降は、上記した操作コントローラ55からの操作入力により行われるようになっている。なお、操作コントローラ55は、図1(e)に示す乗員が着席あるいは離席可能となるように車両室外12に移動した位置でのみ、チルト機構30に対するシートクッション22の昇降の操作入力が可能となっている。
【0020】
ここで、シートクッション22の高さ位置が図2に示す通常乗車位置となっている場合に、シートクッション22の高さ位置を高くするように操作コントローラ55に操作入力をする。そうすると、この操作コントローラ55の操作入力に基づいてチルト機構30は駆動することとなる。具体的には、チルト機構30は、駆動モータ35によりピニオンギヤ36を回転駆動させ、ピニオンギヤ36と噛合するドリブンギヤ37を回転駆動させる。これにより、連結リンク部38に連結されるシートクッション22の後側部分に位置する座面221を、図2に示す状態から図3に示す状態に移行するように上昇(チルトアップ)させる。このシートクッション22のチルトアップは、本発明に係る座面上昇動作に相当する。また、この車両シート21のシートバック23は、シートクッション22に連結されて構成されている。このため、この車両シート21のシートバック23も、シートクッション22のチルトアップおよびチルトダウンと連動して上昇および下降するようになっている。
【0021】
これとは逆に、シートクッション22の高さ位置が図3に示す移乗可能位置となっている場合に、シートクッション22の高さ位置を低くするように操作コントローラ55に操作入力をする。そうすると、この操作コントローラ55の操作入力に基づいてチルト機構30は駆動することとなる。具体的には、チルト機構30は、駆動モータ35によりピニオンギヤ36を回転駆動させ、ピニオンギヤ36と噛合するドリブンギヤ37を回転駆動させる。これにより、連結リンク部38に連結されるシートクッション22の後側部分に位置する座面221を、図3に示す状態から図2に示す状態に移行するように下降(チルトダウン)させる。このシートクッション22のチルトダウンは、本発明に係る座面下降動作に相当する。なお、この操作コントローラ55は、上記したチルト機構30(座面上昇手段)によるシートクッションの高さ位置を高くする操作を行うための、本発明に係る高さ操作手段に相当する。さらに言えば、この操作コントローラ55は、使用者となる乗員により操作入力される本発明に係る操作入力手段に相当する。
なお、この操作コントローラ55により操作入力された操作信号は、上記したチルト機構30を制御する制御コントローラ(不図示)に送信される。ここで、この検知信号を受信した制御コントローラは、この検知信号の内容に基づいて、シートクッション22の高さ位置を高く或いは低くする操作を、チルト機構30に対して行うものとなっている。
【0022】
上記した実施の形態の車両シート装置20によれば、次の作用効果を奏することができる。図4の(a)〜(d)は、本発明を実施した形態となる車両シート21に着座する乗員(着座者)Pの車両シート21から車椅子への移乗を段階的に示す側面模式図である。これに対して図5の(a)〜(d)は、従来の車両シート21zに着座する乗員(着座者)Pの車両シート21zから車椅子への移乗を段階的に示す側面模式図である。なお、図4および図5には、車両シート21,21zから車椅子に移乗するにあたって、この移乗を補助するための移乗補助者(例えば介護者等)に関する図示を省略している。また、図5に示す従来の車両シート装置20zは、図4に示す本発明を実施した形態となる車両シート装置20と同等に構成されるため、図4に示す車両シート装置20に相当する構成については、上記した車両シート装置20に付した符号末尾に‘z’を追加して示している。
【0023】
上記した車両シート装置20の車両シート21に着座する乗員(着座者)Pが、この車両シート21から不図示の車椅子に移乗するにあたっては、次のような移乗動作を段階的に行うこととなる。なお、図4の(a)に示す車両シート21は、図1の(e)に示す車椅子に移乗可能な乗降位置となる車両室外12に位置する車両シート21であり、図2に示す座面221の上昇動作前の車両シート21である。なお、この際、乗員Pの足は地面Gに着地している。このため、僅かながらも乗員Pの足は地面Gに体重をかけて着地している。図4の(b)に示す車両シート21は、上記したチルト機構30により、シートクッション22の後側部分に位置する座面221を上昇(チルトアップ)させている。なお、この際、乗員Pの足は地面Gに体重の半分近くをかけて着地している。図4の(c)に示す車両シート21は、上記したチルト機構30により、シートクッション22の後側部分に位置する座面221を更に上昇(チルトアップ)させ、乗員Pの腰が浮かぶまでとなっている。なお、この際、乗員Pの足は地面Gに体重の殆どをかけて着地している。
【0024】
ここで、不図示の移乗補助者が、車両シート21のシートクッション22に着座する乗員Pを抱き上げると、図4の(d)に示すようになる。すなわち、移乗補助者により抱き上げられた乗員Pは、車両シート21のシートクッション22(座面221)から腰を浮かして、車両シート21の近くにある不図示の車椅子に移乗させることができる。
この際、図4の(c)に示して説したように、乗員Pの足は地面Gに体重の殆どをかけて着地している。このため、移乗補助者による乗員Pの抱き上げ力は、小さくてすむものとなっている。また、図4の(c)に示すように、乗員Pは前傾姿勢となっているため、移乗補助者による乗員Pの抱き上げ力は、小さくてすむものとなっている。また、図4の(c)に示すように、乗員Pは立ち上がりに近い姿勢となっている。このため、乗員Pの重心位置は高くなっているので、移乗補助者による乗員Pの抱き上げ力は、小さくてすむものとなっている。
また、これとは逆に不図示の車椅子から車両シート21に乗員Pが移乗するにあたっては、上記の説明とは逆の段階的な移乗動作を行うこととなる。すなわち、この車両シート21に着座する乗員(着座者)Pを不図示の車椅子に移乗させるにあたっても、図4の(d)に示す場合にのみに、移乗補助者は乗員Pの抱き上げを行えばよいものとなる。
【0025】
ところで、従来の車両シート装置20zの車両シート21zに着座する乗員(着座者)Pが、この車両シート21zから不図示の車椅子に移乗するにあたっては、次のような移乗動作を段階的に行うこととなる。この従来の車両シート装置20zには、シートクッション22zの後側部分に位置する座面221zを上昇(チルトアップ)させるチルト機構30が設けられていない。このため、図5の(a)〜(d)に示すように、シートクッション22zの後側部分に位置する座面221zの高さ位置は、略一定の位置となっている。このため、不図示の移乗補助者が車両シート21zのシートクッション22zに着座する乗員Pを抱き上げるには、図5の(a)に示す状態の乗員Pを、図5の(b)、図5の(c)、図5の(d)という順で抱き上げていくこととなる。ここで、図5の(a)に示す状態は、上記した図4の(a)に示す状態であるため、乗員Pの足は地面Gに体重の僅かしかかけていない。このため、移乗補助者による乗員Pの抱き上げ力が大きくなってしまう。また、図5の(a)に示すように、乗員Pは後傾姿勢となっているため、移乗補助者による乗員Pの抱き上げ力が大きくなってしまう。また、図5の(a)に示すように、乗員Pはしっかり着座した姿勢となっている。このため、乗員Pの重心位置は低くなっているので、移乗補助者による乗員Pの抱き上げ力が大きくなってしまう。
【0026】
上記した車両シート装置20によれば、図2および図3に示すように、チルト機構30と操作コントローラ55とを備えているので、車両シート21が車両室外12に車両シート21が移動した場合に、操作コントローラ55により、該車両室外12に移動した位置でシートクッション22のうち着座する乗員の臀部が当たる部分の高さ位置を高くすることができる。これによって、着座者を車椅子から車両シート21に移乗させたり、着座者を車両シート21から車椅子に移乗させたりする場合に、この着座者の臀部位置を高くした状態で車両シート21に着座させることができて、この移乗補助者の抱き上げ動作および抱き下ろし動作における中腰姿勢の負荷を少なくして、移乗を補助する者の腰痛の発生を少なくすることができる。
また、上記した車両シート装置20によれば、操作コントローラ55は、操作コントローラ55からの操作入力に基づいてチルト機構30によるシートクッション22の高さ位置を高くする操作を行うので、移乗する者の体格や移乗を補助する者の体格に応じて、操作コントローラ55からの操作入力によって適宜にシートクッション22の高さ位置を調節することができる。これによって、シートクッション22の高さ位置を移乗補助者の好みの高さに調節することができて、移乗補助者にとっての利便性を高める。
【0027】
なお、本発明に係る車両シート装置にあっては、上記した実施の形態の車両シート装置20に限定されるものではなく、次のように適宜箇所を変更して構成するようにしてもよい。なお、以下の他の実施の形態における説明の図示については省略する。
すなわち、上記した車両シート装置20にあっては、シートクッション22の座面221部分に着座センサ(不図示)を設けるものであってもよい。着座センサとしては、着座する乗員Pの体重の荷重変化を検出する適宜の圧力センサが挙げられる。つまり、この着座センサは、本発明に係る荷重変化検知手段に相当する。この着座センサは、シートクッション22に着座する乗員Pの体重の荷重の変化に基づき、検知信号を上記したチルト機構30を制御する制御コントローラ(不図示)に送信する。ここで、この検知信号を受信した制御コントローラは、この検知信号の内容に基づいて、シートクッション22の高さ位置を高く或いは低くする操作を、チルト機構30に対して行うものとなっている。
なお、図1の(b)〜(d)の区間のシートクッション22には、乗員Pの足は地面Gから浮き上がった状態であるため、このシートクッション22にかかる着座者の体重は、着座者の全体重となる。これに対して、図1(e)に示す状態の車両シート21においては、乗員Pの足は地面Gに着地したものとなっているため、シートクッション22にかかる着座者の体重は、着座者の全体重から僅かながら減少した体重となる。このため、上記した着座センサによる乗員Pの体重の荷重変化の検知は容易に行えるものとなっている。
【0028】
また、上において図4の(a),(b),(c)に示しながら説明したように、チルト機構30によるシートクッション22の高さ位置(図4の(a),(b),(c))が変わると、乗員Pの足の地面Gにかける体重も変わることとなる。これにより、シートクッション22の高さ位置(図4の(a),(b),(c))が変わると、シートクッション22にかける乗員Pの体重も変わることとなり、上記した着座センサによる乗員Pの体重の荷重変化の検知は容易に行えるものとなっている。具体的にいえば、乗員Pの体重の荷重の変化を検知できて、シートクッション22の高さ位置に応じた段階的なチルト機構30の制御も可能となる。
このようにシートクッション22の座面221部分に、着座センサ(不図示)を設けた場合には、制御コントローラ(不図示)は、この着座センサからの荷重変化の検知に基づいてチルト機構30によるシートクッション22の高さ位置を高くする操作を行う。これによって、この荷重変化の検知により乗員Pの足が着地しているか否かを検知することができて、乗員Pの体格に応じて、シートクッション22の高さ位置を自動的に調節することができる。したがって、移乗補助者の操作を不要にしながらシートクッション22の高さ位置を自動的に好ましい高さに調節することができ、移乗補助者にとって移乗させ易いものとすることができる。
【0029】
さらに、上記した制御コントローラ(不図示)にあっては、この制御コントローラにより行われた過去のチルト機構30の操作を記憶するように記憶メモリが設けられるものであってもよい。なお、この記憶メモリは、本発明に係る記憶手段に相当する。このようにチルト機構30に記憶メモリが設けられる場合には、この記憶メモリに記憶された情報に基づいてチルト機構30よるシートクッション22の高さ位置を高くする操作を行うことができる。このように記憶メモリに記憶された情報に基づいてチルト機構30によるシートクッション22の高さ位置を高くする操作を行うと、上記したような操作コントローラ55や着座センサ(不図示)に基づく制御を省略することができて、シートクッション22の高さ位置を自動的に調節することができる。これによって、
移乗する者が記憶された情報に合致する場合に、シートクッション22の高さ位置の調節を自動かつ簡略化することができ、移乗補助者にとって移乗させ易いものとすることができる。
【0030】
また、上記した車両シート装置20のチルト機構30にあっては、図6に示すチルト機構30Aのように構成されるものであってもよい。すなわち、図6の(A)は、変形例となるチルト機構30Aの座面上昇動作前を示す側面模式図である。また、図6の(B)は、変形例となるチルト機構30Aの座面上昇動作後を示す側面模式図である。この変形例となるチルト機構30Aは、上記した実施の形態のチルト機構30と比較して、回転軸支部31Aをリンクを有した構造とした点で相違する。なお、上記した実施の形態のチルト機構30と同一構成となる箇所については、同一符号を用いて説明を省略する。
つまり、回転軸支部31Aは、回転軸支部本体321と、この回転軸支部本体321にて軸支される軸支リンク部322と、を具備するリンク構造にて構成される。この回転軸支部本体321は、上記した実施の形態の回転軸支部31と同一に構成される。また、軸支リンク部322は、棒状にて構成され、基端が回転軸支部本体321に回転可能に連結され、先端もシートクッション22に回転可能に連結される。また、昇降駆動部33Aの連結リンク部38Aの先端は、ガイドスリット39に嵌挿せずに、シートクッション22に相対移動せずに回転可能に連結されている。このようにチルト機構30Aを構成した場合でも、上記した実施の形態と同様、図6の(A)および(B)に示すように、シートクッション22の後側部分を昇降させるように機能する。
また、上記した車両シート装置20にあっては、図示するようにシートクッション22とシートバック23とが一体的に連動するものであったが、シートバック23を固定状態にしてシートクッション22のみを動くように構成されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
10 自動車(車両)
11 車両室内
12 車両室外
15 センターコンソール
16 助手席ドア
17 センターピラー
20 車両シート装置
21 車両シート
22 シートクッション
221 座面
23 シートバック
24 ヘッドレスト
25 シートベース
30,30A チルト機構(座面上昇手段)
31,31A 回転軸支部
321 回転軸支部本体
322 軸支リンク部
33,33A 昇降駆動部
35 駆動モータ
36 ピニオンギヤ
37 ドリブンギヤ
38,38A 連結リンク部
39 ガイドスリット
50 移動機構
52 四節リンク機構
55 操作コントローラ(高さ操作手段、操作入力手段)
G 地面
P 乗員

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両室内から車両室外の区間を移動可能に構成される車両シートを具備する車両シート装置であって、
前記車両シートに乗員が着席あるいは離席可能となるように前記車両室外に移動した位置で、少なくともシートクッションのうち着座する乗員の臀部が当たる部分の高さ位置を高くできる座面上昇手段と、
前記車両シートが前記車両室外に前記車両シートが移動した場合に、前記座面上昇手段による前記シートクッションの高さ位置を高くする操作を行う高さ操作手段と、を備えたことを特徴とする車両シート装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両シート装置において、
使用者により操作入力される操作入力手段を備え、
前記高さ操作手段は、前記操作入力手段からの操作入力に基づいて前記座面上昇手段による前記シートクッションの高さ位置を高くする操作を行うことを特徴とする車両シート装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両シート装置において、
前記シートクッションには、着座する乗員の体重の荷重変化を検知する荷重変化検知手段が設けられており、
前記高さ操作手段は、前記荷重変化検知手段からの荷重変化の検知に基づいて前記座面上昇手段による前記シートクッションの高さ位置を高くする操作を行うことを特徴とする車両シート装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両シート装置において、
前記高さ操作手段は、該高さ操作手段による前記座面上昇手段の操作を記憶する記憶手段を備え、該記憶手段に記憶された情報に基づいて前記座面上昇手段による前記シートクッションの高さ位置を高くする操作を行うことを特徴とする車両シート装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−60089(P2013−60089A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199313(P2011−199313)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】