説明

車両内装品

【課題】大きく湾曲した意匠表面をもつ車両内装品であっても、加圧の力が各々の溶着リブに均一に伝わり、各々の溶着リブを均一に溶着して外観不良を防止する。
【解決手段】アウターパネル2の湾曲部に振動溶着時の加圧方向に対して直交する方向に延びる受け平面24を形成し、受け平面24にインナーパネル3から加圧方向に突出する溶着リブ31を溶着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラブボックスドア、ドアトリム、コンソールドアなどの車両内装品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば樹脂製のグラブボックスドアは、車室内へ表出する意匠表面をもつアウターパネルと、アウターパネルを補強するインナーパネルとからなり、両者を一体化することで形成されている。両者を一体化するには、例えば特開平10−244881号公報などに記載されたように、振動溶着法が広く用いられている。
【0003】
しかしながらグラブボックスドアなどの車両内装品は、一般に意匠表面が大きく湾曲した形状となっている。そのため振動溶着時に溶着リブが倒れ込んで溶着不良あるいは外観不良となる場合があった。そこで上記公報には、インナ部材に形成された溶着リブの倒れを防止する倒れ防止リブをアウタ部材に形成することが記載されている。
【0004】
また特開2003−034187号公報には、相手部材の溶着表面に対する溶着片の進入当接角度を、相手部材の湾曲部から遠ざかるにつれて次第に小さくなるように形成することが記載されている。このように溶着片を傾斜して突出させることで、各々の溶着片の突出方法を振動溶着時の加圧方向と平行とすることができ、各々の溶着片を相手部材の溶着面に均一に当接させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−244881号公報
【特許文献2】特開2003−034187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
振動溶着法は、一対の部材を互いに当接させて加圧しながら振動を加えることで、摩擦による発熱によって溶着リブなどの先端と相手部材の溶着面とを溶着する方法である。したがって加圧の力を各々の溶着リブに均一に伝えるためには、各々の溶着リブの突出方向を加圧方向と平行にする必要がある。
【0007】
しかしながらグラブボックスドアなど大きく湾曲した意匠表面をもつ車両内装品の場合には、各々の溶着リブの突出方向を加圧方向と平行にすると、相手部材の被溶着面に対する溶着リブの角度が部位によって異なることとなり、その角度が小さい溶着リブは角度の小さい側へ倒れ込みやすくなる。そのため加圧の力が各溶着リブに均一に伝わりにくくなり、溶着が不均一になってハイライト部が出現するなど外観意匠が不良となる場合があった。
【0008】
また特許文献1に記載のように倒れ防止リブを形成しても限界があり、上記不具合を確実に防止することは困難であった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、大きく湾曲した意匠表面をもつ車両内装品であっても、加圧の力が各々の溶着リブに均一に伝わり、各々の溶着リブを均一に溶着して外観不良を防止することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の車両内装品の特徴は、意匠表面をもつ樹脂成形体からなるアウターパネルと、アウターパネルと振動溶着により一体化されたインナーパネルとからなり、アウターパネル及びインナーパネルの一方の内側表面には振動溶着時の加圧方向に突出する複数の溶着凸部が形成され、アウターパネル及びインナーパネルの他方の内側表面は断面の接線どうしが互いに交差する第1表面と第2表面をもち、第1表面及び第2表面の少なくとも一方には、溶着凸部の先端に対向し振動溶着時の加圧方向に対して直交する方向に延びる受け平面が形成され、溶着凸部の先端が受け平面に溶着されていることにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両内装品によれば、振動溶着時の加圧方向に突出する溶着凸部が、振動溶着時の加圧方向に対して直交する方向に延びる受け平面と当接して振動溶着されている。したがって大きく湾曲した意匠表面をもつ場合であっても、全ての溶着凸部を均一に溶着することが可能となり、外観不良などの不具合を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例のグラブボックスドアの使用状態を説明する自動車室内の要部斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係るグラブボックスドアの要部断面図である。
【図3】本発明の一実施例に係るグラブボックスドアのアウターパネルの裏面側を示す概略平面図である。
【図4】従来のグラブボックスドアにおいて振動溶着時の挙動変化を説明する要部断面図である。
【図5】本発明の一実施例に係るグラブボックスドアにおいて振動溶着時の挙動変化を説明する要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の車両内装品は、アウターパネルとインナーパネルとから構成されている。アウターパネルは意匠表面をもつので、アウターパネルに溶着凸部を形成すると意匠表面にヒケが発生する場合がある。したがって溶着凸部はインナーパネルに形成することが望ましい。この溶着凸部は、ボス状、リブ状などとすることができる。以下、インナーパネルに溶着凸部が形成された場合を想定して説明する。
【0014】
この溶着凸部は、先端がアウターパネルの内側表面(意匠表面と反対側表面)に溶着されることでアウターパネルとインナーパネルとを一体的に接合する。こうして形成された車両内装品は、溶着凸部が溶着リブである場合には、アウターパネルとインナーパネルとを連結する溶着リブによって補強され、溶着リブによって区画された中空部をもつので軽量となる。
【0015】
アウターパネルの裏面側には、溶着凸部が倒れたりして溶着位置がずれるのを防止するために、位置ずれ防止リブを形成することが望ましい。しかし意匠表面にヒケが生じるのを防止するためには、位置ずれ防止リブの体積をできるだけ小さくすることが望ましい。
【0016】
アウターパネルの内側表面は、接線どうしが互いに交差する第1表面と第2表面を有する。すなわち断面略く字形状あるいは断面円弧形状をなしている。したがってインナーパネルから突出する複数の溶着凸部の先端どうしを連結する面は、アウターパネルの内側表面に沿う断面略く字形状あるいは断面円弧形状となる。
【0017】
インナーパネルから突出する複数の溶着凸部は、振動溶着時の加圧方向に互いに平行に突出している。したがって、例えば第1表面に対して垂直に突出するように溶着凸部を形成した場合には、第2表面に対向する溶着凸部は第2表面に対して直角以外の角度で交差することになる。この場合、第2表面に対向する溶着凸部は、鋭角側へ倒れ込みやすくなる。
【0018】
そこで本発明では、この場合には、溶着凸部の先端に対向し振動溶着時の加圧方向に対して直交する方向に延びる受け平面を第2表面に形成する。したがって振動溶着時には、溶着凸部は受け平面に対して垂直な状態で当接し、加圧されながら振動されることで受け平面と溶着されるので、倒れ込みが確実に防止される。これにより、第2表面においても第1表面と同等に溶着され、全ての溶着凸部を均一に溶着することができる。
【0019】
受け平面は、ボス状の凸部の先端面、凹部の底面、リブの先端面などとすることができる。しかしアウターパネルの意匠面にヒケが生じるのを防止するには、高さの低いリブを形成し、その先端面に受け平面を形成することが望ましい。
【0020】
また受け平面は、溶着凸部の突出方向(振動溶着時の加圧方向)とアウターパネルの溶着面の接線とがなす角度(図5に示すθ)が25〜60°の部位に形成することが好ましく、その角度が30〜50°の部位に形成することが望ましい。その角度が60°を越える部位は受け平面を形成しなくとも溶着リブの倒れ込みが生じにくく、25°未満の部位に形成すると溶着リブの倒れ込みが生じる場合がある。
【0021】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0022】
本実施例では、図1に示すように、車両のグラブボックスドア1に本発明を適用している。このグラブボックスドア1は、図2にその断面を示すように、アウターパネル2とインナーパネル3とから構成されている。
【0023】
インナーパネル3は、ポリプロピレンから射出成形により形成され、板状の基材30と、アウターパネル2に対向する側である基材30の裏面から突出する複数の溶着リブ31と、からなる。複数の溶着リブ31は、振動溶着時における加圧方向にそれぞれ突出した格子状に形成されている。
【0024】
アウターパネル2は、ポリプロピレンから射出成形により形成された板状の基材20と、基材20の表面に一体に積層されたウレタン発泡体層21と、ウレタン発泡体層21の表面に一体に積層された表皮層22とからなる。表皮層22は基材20の端部を覆って裏面側まで巻き込まれている。
【0025】
ウレタン発泡体層21が形成されている表面と反対側の基材20の裏面には、図3にも示すように、複数の位置ずれ防止リブ23が形成されている。そして溶着リブ31は、位置ずれ防止リブ23どうしの間でアウターパネル2の基材20に溶着され、アウターパネル2とインナーパネル3とは強固に接合されている。
【0026】
アウターパネル2の基材20は断面円弧状に形成され、その表面には、断面の円弧の曲率半径が大きな第1表面Aと、第1表面Aと滑らかに連続し断面の円弧の曲率半径が小さな第2表面Bとを有している。当然ではあるが、第1表面Aと第2表面Bは、断面における接線どうしが互いに交差している。
【0027】
振動溶着する際には、アウターパネル2とインナーパネル3とが図2に示すように重ねられ、複数の溶着リブ31はそれぞれ位置ずれ防止リブ23どうしの間でアウターパネル2の基材20に当接する。その状態でアウターパネル2とインナーパネル3とは、複数の溶着リブ31の突出方向に加圧され、図2の紙面に対して垂直方向に振動が加えられて溶着される。したがって第1表面Aでは、溶着リブ31と基材20の表面とは略垂直に当接するが、第2表面Bにおいては、溶着リブ31は斜めに基材20の表面と当接する。
【0028】
ここで従来のグラブボックスドアがこのような形状である場合には、図4に示すように、加圧時に第2表面Bに当接した溶着リブ31は倒れ込んでしまい、第1表面Aと第2表面Bとの間で溶着が不均一になるという不具合がある。
【0029】
そこで本実施例では、図3及び図5に示すように、溶着リブ31の突出方向(振動溶着時の加圧方向)と基材20の溶着面の接線とがなす角度θが40°の部位で、第2表面Bにおける位置ずれ防止リブ23どうしの間に、加圧方向に対して直交する方向に延びる受け平面24をもち紙面と垂直方向に延びる受けリブ25を形成している。受けリブ25は、基材20の振動方向の両端部にそれぞれ形成されている。したがって加圧時には、溶着リブ31は受け面24に垂直に当接するため倒れ込みが防止され、第1表面Aにおける溶着と同様に基材20に振動溶着することができる。なお本実施例では、第1表面Aの端部にも受けリブ25を形成している。
【0030】
したがって本実施例のグラブボックスドアによれば、アウターパネル2とインナーパネル3とを従来と同様にして振動溶着しても、全ての溶着リブ31を均一に溶着できるので、曲面形状の高い意匠表面をもちつつ優れた外観品質を有している。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の車両内装品は、グラブボックスドアばかりでなく、アウターパネルとインナーパネルとを有する車両内装品全てに利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1:グラブボックスドア
2:アウターパネル
24:受け平面
3:インナーパネル
31:溶着リブ(溶着凸部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
意匠表面をもつ樹脂成形体からなるアウターパネルと、該アウターパネルと振動溶着により一体化されたインナーパネルとからなり、
該アウターパネル及び該インナーパネルの一方の内側表面には振動溶着時の加圧方向に突出する複数の溶着凸部が形成され、
該アウターパネル及び該インナーパネルの他方の内側表面は断面の接線どうしが互いに交差する第1表面と第2表面をもち、
該第1表面及び該第2表面の少なくとも一方には、該溶着凸部の先端に対向し振動溶着時の加圧方向に対して直交する方向に延びる受け平面が形成され、該溶着凸部の先端が該受け平面に溶着されていることを特徴とする車両内装品。
【請求項2】
前記溶着凸部は前記インナーパネルに形成され、前記受け平面は前記アウターパネルに形成されている請求項1に記載の車両内装品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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