説明

車両判別装置及び車両判別方法

【課題】運転者に快適に通過してもらうことができ、迅速かつ高精度に特定分類車両を判別することができる車両判別装置を提供すること。
【解決手段】車両のナンバープレートを撮像しモノクロ画像データを取得する撮像部と、撮像部によって取得されたモノクロ画像データにおけるナンバープレートの輝度情報と、モノクロ画像データにおけるナンバープレートの位置情報とに基づいて、撮像領域における配光中心を演算する配光中心演算部と、判別対象のモノクロ画像データにおけるナンバープレートの位置情報と、配光中心演算部によって演算された配光中心とに基づいて、判別対象のモノクロ画像データにおけるナンバープレートの輝度情報を補正する補正部と、補正部によって補正された判別対象のモノクロ画像データにおけるナンバープレートの輝度情報に基づいて、特定分類車両を判別する判別部とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のナンバープレートから特定分類車両を判別する車両判別装置及び車両判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駐車場や高速道路などでは、車種区分(軽・小型・普通・大型などの分類)によって利用料金が異なることが一般的であるため、それら駐車場や高速道路の料金所などにおいて、特定の分類に属する車両(以下「特定分類車両」という。)を判別すべきニーズがある。
従来、特定分類車両を判別するものとして、ナンバープレートに表示された車種コード(小文字)を撮像し、その撮像された車種コードを識別することにより特定分類車両(例えば、軽自動車)を判別するものがある。しかし、一部の登録自動車と軽自動車とで、車種コードの払出番号が重複しているため、車種コードのみから軽自動車などを精度よく判別することは困難である。
【0003】
また、特定分類車両を判別するものとして、軸数やトレッド(車幅)などの車両諸元をセンサで計測して、これら計測結果により、軽自動車かどうかを判別するものがある。しかし、近年では、例えば法令規定のトレッド幅を超える輸入車が軽自動車として登録されることもあるため、トレッド幅などの車両諸元だけで軽自動車かどうかを精度よく判別することも困難である。
【0004】
そこで、カラーカメラによってナンバープレートを撮像し、そのナンバープレートの背景色の色調によって、軽自動車かどうかを判別するものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、ナンバープレートの背景色は、自家用軽自動車であれば黄色、自家用の軽自動車以外であれば白色、事業用軽自動車であれば黒色、事業用の軽自動車以外であれば緑色と決められているため、それらナンバープレートの色によって、軽自動車かどうかを判別することができる。
【特許文献1】特許第3926673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような特許文献1に記載の車両判別装置のように、カラーカメラを用いた色判定を行う場合、白色光源が必要となるため、車両の運転者に対して、白色光による眩惑を与えてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、運転者に快適に通過してもらうことができ、迅速かつ高精度に特定分類車両を判別することができる車両判別装置及び車両判別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係る車両判別装置は、車両のナンバープレートから特定分類車両を判別する車両判別装置であって、前記車両のナンバープレートを撮像しモノクロ画像データを取得する撮像部と、前記撮像部によって取得されたモノクロ画像データにおけるナンバープレートの輝度情報と、前記モノクロ画像データにおける前記ナンバープレートの位置情報とに基づいて、前記撮像領域における配光中心を演算する配光中心演算部と、判別対象のモノクロ画像データにおける前記ナンバープレートの位置情報と、前記配光中心演算部によって演算された配光中心とに基づいて、前記判別対象のモノクロ画像データにおける前記ナンバープレートの輝度情報を補正する補正部と、前記補正部によって補正された前記判別対象のモノクロ画像データにおける前記ナンバープレートの輝度情報に基づいて、前記特定分類車両を判別する判別部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る車両判別装置は、前記特定分類車両と相関のある説明変数により、判別関数を演算する判別関数演算部を備え、前記判別部は、前記補正部によって補正された前記判別対象の前記ナンバープレートの輝度情報から、前記判別関数演算部によって演算された判別関数に基づいて、前記特定分類車両を判別することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る車両判別装置は、前記説明変数が、前記ナンバープレートの背景部の輝度値を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る車両判別装置は、前記説明変数が、前記ナンバープレートの文字部の輝度値を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る車両判別方法は、車両のナンバープレートから特定分類車両を判別する車両判別方法であって、前記車両のナンバープレートを撮像しモノクロ画像データを取得する撮像ステップと、前記撮像ステップによって取得されたモノクロ画像データにおけるナンバープレートの輝度情報と、前記モノクロ画像データにおける前記ナンバープレートの位置情報とに基づいて、前記撮像領域における配光中心を演算する配光中心演算ステップと、判別対象のモノクロ画像データにおける前記ナンバープレートの位置情報と、前記配光中心演算ステップによって演算された配光中心とに基づいて、前記判別対象のモノクロ画像データにおける前記ナンバープレートの輝度情報を補正する補正ステップと、前記補正ステップによって補正された前記判別対象のモノクロ画像データにおける前記ナンバープレートの輝度情報に基づいて、前記特定分類車両を判別する判別ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、運転者に快適に通過してもらうことができ、迅速かつ高精度に特定分類車両を判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態における車両判別装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態としての車両判別装置を示したものである。
本実施形態における車両判別装置1は、自家用の軽自動車(ナンバープレート:黄色、文字:黒)を判別するものとする。この車両判別装置1は、車両Cが走行する道路Rの脇に設置されるものである。
また、道路Rの両脇には、車両Cの有無を検出する車両検知センサ2が設けられている。車両検知センサ2は、例えば、光学センサやループコイルなどからなるものである。また、車両検知センサ2は、車両判別装置1に接続されている。この車両検知センサ2は、道路Rの両脇に設置された支柱2aと、これら支柱2aに取り付けられたセンサ部(不図示)と、このセンサ部に接続された検知制御部(不図示)とを備えている。
そして、支柱2aの間を車両Cが走行すると、例えば、支柱2a間における検知用の光が遮られたことをセンサ部が検出し、オン信号を検知制御部に出力する。検知制御部は、そのオン信号を読み出すと、トリガ信号を車両判別装置1に出力する。
【0014】
車両判別装置1は、図2に示すように、全体の動作を制御する制御部(配光中心演算部、補正部、判別部、判別関数演算部)10と、種々の情報を記憶する記憶部11と、撮像対象を撮像する撮像部12とを備えている。また、車両判別装置1は、制御部10の演算結果を出力する出力部13と、各種情報の入力を受け付ける情報入力部14と、車両検知センサ2と制御部10とのインターフェースとなる信号入力部15とを備えている。
信号入力部15は、車両検知センサ2から出力されたトリガ信号を受け付け、制御部10に入力する。
撮像部12は、白黒カメラからなるものであり、白色光を使用しないものである。また、撮像部12は、制御部10の指示に基づいて、車両Cが通過する一平面領域を撮像する。この領域を、撮像領域S(図1に示す)とする。撮像領域Sは、支柱2aの間であって、車両Cの進行方向に直交する方向に延在する領域である。撮像部12は、撮像領域Sを撮像することにより、車両CのナンバープレートNを撮像する。また、撮像部12は、撮像領域Sを撮像することにより、撮像領域Sのモノクロ画像データを生成し、そのモノクロ画像データを制御部10に出力する。
【0015】
制御部10は、撮像部12から出力されたモノクロ画像データを読み出し、そのモノクロ画像データの中から、画像処理により、モノクロ画像データにおけるナンバープレートの位置情報を取得する。このときの位置情報は、ナンバープレートの中心点を取るものとする。なお、撮像部12が撮像するのは、撮像領域Sであり、この撮像領域Sとモノクロ画像データとは、それら位置関係が一致している。そのため、モノクロ画像データにおける位置情報は、撮像領域Sにおける位置情報となる。なお、撮像領域Sとモノクロ画像データとの位置関係は完全に一致している必要はなく、例えば、所定領域における両者の位置座標を対応させておいてもよい。
【0016】
また、制御部10は、モノクロ画像データにおけるナンバープレートから、文字情報を除く背景の輝度情報のみを抽出し、その輝度平均を算出する。そして、その輝度平均とナンバープレートの位置情報とを記憶部11に記憶する。そして、制御部10は、所定のサンプル数分(例えば1,000台分)の輝度情報及び位置情報が得られると、それら1,000台分の輝度情報及び位置情報から、撮像領域Sにおける配光中心を演算し、記憶部11に記憶する。
さらに、制御部10は、実際に判別する車両Cのモノクロ画像データにおけるナンバープレートの位置情報を取得し、その位置情報と配光中心とから、判別する車両Cのナンバープレートの輝度情報を補正する。
そして、制御部10は、補正した輝度情報から、判別関数に基づいて、特定分類車両を判別する。
なお、これら制御部10の処理の詳細については、後述するものとする。
【0017】
出力部13は、制御部10の判別結果を他の集計分析装置に出力する。
情報入力部14は、判別関数を演算するための後述する説明変数の入力を受け付け、それら説明変数のデータを制御部10に出力する。なお、それら説明変数のデータは、記憶部11に記憶される。
【0018】
次に、このように構成された本実施形態における車両判別装置1の動作について説明する。
車両判別装置1の動作としては、配光中心演算フェーズと、輝度情報補正フェーズと、判別関数による判別フェーズとの3つのフェーズが含まれている。
以下では、それら3つのフェーズについて順に説明する。
【0019】
(配光中心演算フェーズ)
配光中心演算フェーズは、輝度情報補正フェーズの前に、あらかじめ行われるものである。また、配光中心の演算は、例えば1,000台などの所定のサンプル数分のデータを取得してから行われるものである。
図3は、配光中心演算フェーズにおける車両判別装置1の制御部10の処理を示すフローチャートである。
まず、車両Cの前端部が支柱2aの間に入り、検知用の光を遮ると、車両検知センサ2がトリガ信号を車両判別装置1に出力する。車両判別装置1の制御部10は、信号入力部15の出力を読み出し、トリガ信号が出力されたか否かを判定する(ステップS1)。そして、制御部10は、信号入力部15からトリガ信号が出力されていないと判定すると、ステップS1の処理を繰り返す。一方、制御部10は、トリガ信号が出力されたと判定すると、撮像部12を介して撮像領域Sを撮像する(ステップS2)。これにより、車両Cのナンバープレートを含むモノクロ画像が得られる。
【0020】
制御部10は、撮像部12から出力されたモノクロ画像を読み出すと、モノクロ画像の輝度からサンプル用のナンバープレート(以下、「サンプル用ナンバープレート」という。)の中心位置である位置情報を演算し、記憶部11に記憶する(ステップS3)。この位置情報が撮像領域Sにおける位置となる。さらに、制御部10は、サンプル用ナンバープレートの輝度情報から文字の輝度を除いて、背景のみの平均輝度情報を演算し、位置情報と対応させて記憶部11に記憶する(ステップS4)。
そして、制御部10は、カウンタなどにより所定のサンプル数分(例えば、1,000回分)の処理を行ったか否かを判定し(ステップS5)、行っていないと判定すると、ステップS1に戻って処理を繰り返す。一方、制御部10は、所定のサンプル数分の処理を行った(サンプル数を超えた)と判定すると、記憶部11からサンプル数分の位置情報及び平均輝度情報から、撮像領域Sにおける配光中心を演算する(ステップS6)。
【0021】
さて、本実施形態における配光中心の演算手法は、白板と黄板の微妙な白黒調の差異に着目するものである。
なお、ナンバープレートの背景色が白色のものを白板とし、黄色のものを黄板、緑色のものを緑板、黒色のものを黒板とする。さらに、白板及び黄板を白色系とし、緑板及び黒板のものを黒色系とする。
白色系と黒色系とでは、ナンバープレートの背景の輝度が大きく異なることから、所定の閾値を設定することにより、白色系と黒色系とを容易に判別することができる。すなわち、制御部10は、判別しようとするナンバープレートの背景の輝度が所定の閾値以下であると判定すると、そのナンバープレートは黒色系となるから、自家用の軽自動車ではないということを直ちに判別することができる。本実施形態では、制御部10が、ナンバープレートの背景の輝度が所定の閾値以上であると判定した場合(白色系であった場合)に、黄板を高精度に判別するためのものである。
【0022】
白色系の中の白板と黄板とでは、全く同じ条件(アイリス値・CCD・露光時間・ガンマカーブ・照明配光など)で撮像した場合、その背景部や文字部輝度などに差が出る。すなわち、白板の方が黄板よりも明るくなる。
しかしながら、画中輝度はナンバープレートの写り具合によっても大きく左右されるため、プレートの被写姿勢や天候等によって、黄板が白板より明るく写ることはしばしばである。特に、工業用のナンバープレート認識装置では、一般に、コスト上の制約からスポット的な照明配光となっている場合が多い。したがって、画中の照明配光が均一でないため、撮像領域におけるナンバープレートの被写位置による輝度の変化を無視することができない。そのため、単純なプレート輝度の比較では、白板と黄板とを精度良く判別することは不可能である。
【0023】
図4は、床面以外からの照明反射のないオープンな空間で、通常の白い板の撮影を行い、撮影領域内で白い板の位置を変えて、その画中輝度の変化を8ビットで示すものである。
図4に示すように、一般的な照明の場合、物体の画中輝度は照明配光中心(220ビット〜の部分)から乖離するに従って暗くなり、その輝度変化の大きさは、同じ位置で白板と黄板を撮影したときに得られる輝度差よりも、相対的に大きい。そのため、撮像領域における配光中心やナンバープレートの位置によって、白板が黄板と誤って判別されたり、黄板が白板と誤って判別されてしまうおそれがある。
本実施形態における車両判別装置1では、黄板と白板の判定の前に、照明配光の影響を取り除いておくものである。
照明配光の影響を取り除くためには、照明配光分布と画中輝度との関係を定量的に知ることが必要である。照明配光分布は、照明設計時に決定され、事前にほぼ得ることができる。しかし、車両判別装置1の設置場所ごとに撮像系の幾何的条件が異なったり、据付調整のバラつきによって微妙な差異が生じたりするので、本実施形態では、オンライン的に実機で補正するものとする。
【0024】
図5及び図6は、サンプル用ナンバープレートの位置情報と背景のみの平均輝度情報との関係を示すグラフである。なお、図5における横軸は、撮像領域Sの横方向の位置に対応するものであり、図6における横軸は、撮像領域Sの縦方向の位置に対応するものである。また、図5及び図6において、1ドットが、撮像領域Sにおける横方向及び縦方向のサンプル用ナンバープレートの1個分の中心位置を示している。
制御部10は、1,000台分のサンプルを記憶部11に記憶し、この記憶部11に記憶された1,000台分のサンプル用ナンバープレートの位置情報と背景のみの平均輝度情報とから、以下のようにして配光中心を演算する。
【0025】
まず、制御部10は、オペレータによってあらかじめ入力された設計時点での撮像領域Sでの照明配光中心(x,y)を、演算によって求めたい配光中心(x,y)の仮値として設定する。そして、制御部10は、記憶部11に記憶された位置情報と平均輝度情報とから、回帰計算により位置情報と平均輝度情報との2次近似関数(P1=f(P2):P1は平均輝度情報,P2は位置情報)を演算する。
なお、図5及び図6における曲線が、2次近似関数を示している。
さらに、制御部10は、2次近似関数を利用して、f’(P2)=0を演算することにより、平均輝度の最も高い位置、すなわち配光中心(x,y)を演算し、記憶部11に記憶する。
【0026】
なお、図5及び図6における配光中心は、(640.256)辺りに存在していることがわかる。
また、上記2次近似関数は、照明分布が単峰性の場合を示しているが、複数の配光中心があるときは、双峰性・多峰性となるので、3次以上の近似線を用いてもよい。また、厳密には、「x-y-z(輝度) 3次元グラフ」の近似局面を微分してピークを求める手法もあるが、ここでは計算量を考慮して上述の手法を採用している。
【0027】
(輝度情報補正フェーズ)
次いで、輝度情報補正フェーズについて説明する。
輝度情報補正フェーズは、判別関数による判別フェーズの前に、あらかじめ行われるものである。
また、輝度情報補正フェーズは、配光中心演算フェーズにおいて得られた配光中心と、撮像部12によって撮像した判別対象のナンバープレート(以下「判別対象ナンバープレート」という。)の位置とに基づいて、判別対象ナンバープレートの輝度の変化を推定し、定量的に補正するものである。
【0028】
図7は、輝度情報補正フェーズにおける車両判別装置1の制御部10の処理を示すフローチャートである。
まず、制御部10は、上記と同様にして、撮像部12によって、判別対象となる車両Cの判別対象ナンバープレートのモノクロ画像を取得する。
そして、制御部10は、ステップS3と同様にして、撮像領域Sにおける判別対象ナンバープレートの位置情報を演算し(ステップS20)、ステップS4と同様にして、判別対象ナンバープレートの背景のみの平均輝度情報を演算する(ステップS21)。
【0029】
それから、制御部10は、配光中心演算フェーズにおいて記憶部11に記憶された配光中心を読み出し、この配光中心と判別対象ナンバープレートの位置情報とに基づいて、判別対象ナンバープレートの背景のみの平均輝度情報を補正する(ステップS22)。
ここで、平均輝度情報の補正について説明する。
図8は、照明配光と輝度減衰との関係をモデル化して示す説明図である。
図8における符号Mは、配光中心を中心とした等輝度線を示すものである。等輝度線Mが左右対称でないのは、撮像領域Sを斜めから撮像する撮像機を想定しているためである。斜方撮像だと、左右両サイドのうち逆サイド(正設置なら右側)の照明密度が低くなる。また、上下も路面からの照り返しがあるため、対称ではない。したがって、ここではスポット照明の減衰モデル(x-y2軸、上下左右対称)ではなく、配光中心からの上下左右独立4軸でモデル化している。
【0030】
撮像領域Sにおける配光中心(x,y)に対して、判別対象ナンバープレートの位置がPであるとする。
この位置Pにおける画中輝度pは、以下の式により求めることができる。
p(p0,r,l,d,u)=kr+kl+kd+ku+k+k+k+k+p・・・(1)
なお、式(1)において、変数r,l,d,uは、配光中心からの上下左右への乖離距離を示し、k〜kは、乖離距離による減衰の強さを表す負の定数項、pは、配光中心における判別対象ナンバープレートの画中輝度を示す。
また、式(1)の回帰式は一通りではない。画像処理機が斜方撮像であるため、ここでは独立4軸でモデル化しているが、別の減衰モデルも存在し、同様に扱うことができる。
また、配光中心の推定ズレが有り得ることを考慮して、この減衰モデル(式(1))では、距離の1乗・2乗の両方に従う2次元モデルとした。配光中心の推定位置が本来の中心からずれていた場合は、距離の2乗にかかる減衰項k〜kがマイナス 、逆に1乗項k〜kはプラスとなって吸収できる。
【0031】
さらに、式(1)は、一次元重回帰モデルであり、一定の標本データがあれば、重回帰分析によって解くことができる。制御部10は、記憶部11に記憶された所定サンプル数分の位置情報(r,l,d.u)及び平均輝度情報(p)から、重回帰問題を解いて、k〜k及びpを演算する。そして、制御部10は、以下の式により、判別対象ナンバープレートの平均輝度情報pを補正する。
=p−(kr+kl+kd+ku+k+k+k+k)・・・(2)
すなわち、判別対象ナンバープレートの平均輝度情報pが、配光中心で撮像したと仮定したときの画中輝度pに変換(輝度正規化)される。
なお、制御部10は、判別対象ナンバープレートの背景部のみならず、文字部の平均輝度情報についても、上記の正規化処理(pからp変換)を行う。
【0032】
(判別関数による判別フェーズ)
次いで、判別関数による判別フェーズについて説明する。
上記の配光中心演算フェーズ及び輝度情報補正フェーズによって、判別対象ナンバープレートの平均輝度情報から、配光分布の影響を控除することができる。
しかし、照明配光以外にも多くの要因によって、輝度は変動する場合がある。
ここで、輝度に影響及ぼす要因には、局所的な天候変化(一時的な陰り)など、全くの未知的要因もあるが、既知(推定可能、又はセンシング可能)であって、適切な処理を施すことにより、その影響を控除できるものもある(例えば、プレート姿勢角、車体色調(拡散反射の影響)、大局的天候変化(昼と夜など))。
しかしながら、これらの既知的要因について、個別にその影響を控除するためには、その影響の仕方を予め評価しなければならないため、そのための調査や影響控除のための実装の手間などを考慮すると、現実的ではない。
そこで、本実施形態では、統計的手法である「判別分析法」を利用して、特定分類車両の判定を行っている。
本実施形態では、「軽自動車らしさ」と相関のある要因群を「説明変数」として定義することで、個別の影響の仕方を考慮して控除しなくても、総合的な判断で判別ができる。
【0033】
まず、特定分類車両の判別の前に、実際の所属(軽自動車かそれ以外か)が明確に分かっているデータを標本群として準備する。例えば、事前に収集したデータを標本群とする場合(オフライン標本)は、目視確認等によって正解(軽自動車かそれ以外か)を確認しておく。また、リアルタイムに得られるデータを標本群とする場合(オンライン標本)は、車両諸元のセンシングなど、別の手法で確実に軽自動車かそれ以外かを断定できたデータのみを標本群に加える。
そして、車両判別装置1の情報入力部14などを介して、それら標本群が入力されると、制御部10が、標本群を記憶部11に記憶する。さらに、図9に示すように、標本群に対して、説明変数を定義する。なお、図9においては、標本が1〜N、説明変数が1〜M用意されている。
【0034】
ここで、説明変数とは、「軽自動車らしさ」と相関のある要因群であり、所属する群(軽自動車/軽自動車以外)を直接的・間接的に、示唆する量である。すなわち、これら説明変数が、特定分類車両判別の際の重み付けとして利用される。
説明変数としては、例えば、以下のようなものがある。
(a)直接的に軽自動車らしさを示唆する量
1.ナンバープレート背景部の輝度値
白色系において、自家用の軽自動車であれば、背景部の色は黄色であり、それ以外であれば白色であるから、軽自動車であれば背景部の輝度は暗くなり、軽自動車以外であればその輝度は明るくなる(軽(暗)←→軽以外(明))。
2.ナンバープレート文字部の輝度値
白色系において、自家用の軽自動車であれば、文字部の色は黒色であり、それ以外であれば緑色であるから、軽自動車であれば文字部の輝度は暗くなり、軽自動車以外であればその輝度は明るくなる(軽(暗)←→軽以外(明))。
3.エンブレムなどの有無
例えば、特定の自動車会社には、大型や普通自動車よりも、軽自動車を多く製造している自動車会社がある。この場合、その自動車会社のエンブレムを識別することにより、軽自動車である確立が増えることになる(軽(エンブレム無し)←→軽以外(エンブレム有り))。
【0035】
(b)間接的に軽自動車らしさを示唆する量(軽自動車らしさの判定に間接的に影響を及ぼす量)
1.プレートの傾き
プレートが傾くと暗く写りやすい。すなわち、同じ輝度値であれば、傾きが大きいものほど、白板(軽自動車以外)の確率が高い。
2.推定外光量
夜ほどプレートが暗く写りやすい。すなわち、同じ輝度値であれば、推定外光量(撮像した時間帯で推定可)が小さいものほど、白板(軽自動車以外)の確率が高い。
なお、上例以外にも、軽自動車らしさ/らしくなさを示唆する説明変数の候補は多数存在するが、説明変数に採用するに当たっては、所属群(軽自動車/軽自動車以外)との相関の有無及び強弱などを評価して決めればよい。
【0036】
このように、説明変数が入力されると、制御部10は、以下のようにして判別関数をあらかじめ演算し、記憶部11に記憶する。
なお、ここでは、説明変数として、背景部の輝度値と、文字部の輝度値の2つを利用するものとする。
制御部10は、統計的な手法に倣い、標本群から2群判別の判別関数を算出する。算出方法としては、最小二乗によるもの(重回帰直線(線形判別関数)、図10に示す)やマハラノビス距離によるもの(中間曲線(非線形判別関数)、図11に示す)などがある。
【0037】
そして、上記のように、判別関数が記憶部11に記憶された状態で、制御部10は、以下のようにして、判別対象の車両が特定分類車両であるか否かを判定する。
まず、制御部10は、輝度情報補正フェーズによって補正された平均輝度情報を読み出すと、記憶部11に記憶された判別関数を読み出す。そして、制御部10は、図10に示すように、判別対象の平均輝度情報の標本群における位置P1を算出し、判別関数に基づいて、位置P1が、軽自動車以外のA群に属するか、軽自動車のB群に属するかを判定する。そして、位置P1はB群に属していることから、制御部10は、判別対象の車両が自家用の軽自動車であると判定し、出力部13を介して判定結果を出力する。
【0038】
以上より、本実施形態における車両判別装置1によれば、配光中心に基づいて、判別対象ナンバープレートの平均輝度を正規化するので、白黒カメラであっても、白板か黄板かを高精度に判別することができる。したがって、白色光を使用することなく、運転者に快適に通過してもらうことができ、迅速かつ高精度に特定分類車両を判別することができる。
また、特定分類車両の判別の際に、説明変数によって重み付けをしていることから、判別の精度を向上させることができる。また、このとき、個々の説明変数の波及効果を定量的に明らかにしたり、それに基づいて控除したりする必要もない。
また、説明変数として、ナンバープレートの背景部の輝度値及び文字部の輝度値を利用していることから、特に相関の強い値を用いることにより、判別の精度を向上させることができる。
なお、適切な説明変数の設定の仕方については、装置の設計に依存するが、上記に例示した要因を始めとしたいくつかの説明変数を用いて、9割程度の判別精度を得ることができた(参考:単純にプレート部輝度の閾値から判別する手法では、判別精度は6割程度であった)。
【0039】
なお、上記実施形態においては、判別対象を自家用の軽自動車としたが、これに限ることはなく、自家用及び事業用の普通自動車、大型自動車などであってもよい。すなわち、白色系から黄板を判別するものとしたが、白板を判別したり、黒色系から黒板又は緑板を判別してもよい。例えば、黒色系であれば、緑板よりも黒板の方が輝度は低いため、上記実施形態と同様にして、黒色系から黒板を判別することができる。
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る車両判別装置の実施形態を、道路に設置した様子を示す説明図である。
【図2】車両判別装置を機能ごとに示すブロック図である。
【図3】配光中心演算フェーズにおける車両判別装置の処理を示すフローチャートである。
【図4】床面以外からの照明反射のないオープンな空間で、通常の白い板の撮影を行ったときの照明配光分布と輝度変化を示すものである
【図5】サンプル用ナンバープレートの位置情報と背景のみの平均輝度情報との関係を示すものであって、その横軸を、撮像領域の横方向の位置に対応させたときの様子を示すグラフである。
【図6】サンプル用ナンバープレートの位置情報と背景のみの平均輝度情報との関係を示すものであって、その横軸を、撮像領域の縦方向の位置に対応させたときの様子を示すグラフである。
【図7】輝度情報補正フェーズにおける車両判別装置の処理を示すフローチャートである。
【図8】照明配光と輝度減衰との関係をモデル化して示す説明図である。
【図9】説明変数値と標本群との関係を示す表である。
【図10】最小二乗によって算出された判別関数と標本群との位置関係を示す説明図である。
【図11】マハラノビス距離によって算出された判別関数と標本群との位置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 車両判別装置
10 制御部(配光中心演算部、補正部、判別部、判別関数演算部)
12 撮像部
C 車両
S 撮像領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のナンバープレートから特定分類車両を判別する車両判別装置であって、
前記車両のナンバープレートを撮像しモノクロ画像データを取得する撮像部と、
前記撮像部によって取得されたモノクロ画像データにおけるナンバープレートの輝度情報と、前記モノクロ画像データにおける前記ナンバープレートの位置情報とに基づいて、前記撮像領域における配光中心を演算する配光中心演算部と、
判別対象のモノクロ画像データにおける前記ナンバープレートの位置情報と、前記配光中心演算部によって演算された配光中心とに基づいて、前記判別対象のモノクロ画像データにおける前記ナンバープレートの輝度情報を補正する補正部と、
前記補正部によって補正された前記判別対象のモノクロ画像データにおける前記ナンバープレートの輝度情報に基づいて、前記特定分類車両を判別する判別部とを備えることを特徴とする車両判別装置。
【請求項2】
前記特定分類車両と相関のある説明変数により、判別関数を演算する判別関数演算部を備え、
前記判別部は、
前記補正部によって補正された前記判別対象の前記ナンバープレートの輝度情報から、前記判別関数演算部によって演算された判別関数に基づいて、前記特定分類車両を判別することを特徴とする請求項1に記載の車両判別装置。
【請求項3】
前記説明変数は、
前記ナンバープレートの背景部の輝度値を含むことを特徴とする請求項2に記載の車両判別装置。
【請求項4】
前記説明変数は、
前記ナンバープレートの文字部の輝度値を含むことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両判別装置。
【請求項5】
車両のナンバープレートから特定分類車両を判別する車両判別方法であって、
前記車両のナンバープレートを撮像しモノクロ画像データを取得する撮像ステップと、
前記撮像ステップによって取得されたモノクロ画像データにおけるナンバープレートの輝度情報と、前記モノクロ画像データにおける前記ナンバープレートの位置情報とに基づいて、前記撮像領域における配光中心を演算する配光中心演算ステップと、
判別対象のモノクロ画像データにおける前記ナンバープレートの位置情報と、前記配光中心演算ステップによって演算された配光中心とに基づいて、前記判別対象のモノクロ画像データにおける前記ナンバープレートの輝度情報を補正する補正ステップと、
前記補正ステップによって補正された前記判別対象のモノクロ画像データにおける前記ナンバープレートの輝度情報に基づいて、前記特定分類車両を判別する判別ステップとを備えることを特徴とする車両判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−277056(P2009−277056A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128310(P2008−128310)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】