車両制御装置
【課題】周辺車両のカーブ時の挙動に対応した走行計画を立てる車両制御装置を提供することを課題とする。
【解決手段】自車両の走行計画を生成し、当該走行計画に基づいて車両制御を行う車両制御装置1であって、周辺車両のカーブ走行時の挙動を周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度に基づいて予測する周辺車両挙動予測手段31cと、周辺車両挙動予測手段31cで予測した周辺車両のカーブ走行時の挙動に基づいて自車両の走行計画を生成する走行計画生成手段31eを備えることを特徴とし、周辺車両がカーブを走行したときに、周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度を学習する学習手段31aを備え、周辺車両挙動予測手段31cは、学習手段31aで学習した最大横加速度又は/及び減速度に基づいて周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測すると好適である。
【解決手段】自車両の走行計画を生成し、当該走行計画に基づいて車両制御を行う車両制御装置1であって、周辺車両のカーブ走行時の挙動を周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度に基づいて予測する周辺車両挙動予測手段31cと、周辺車両挙動予測手段31cで予測した周辺車両のカーブ走行時の挙動に基づいて自車両の走行計画を生成する走行計画生成手段31eを備えることを特徴とし、周辺車両がカーブを走行したときに、周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度を学習する学習手段31aを備え、周辺車両挙動予測手段31cは、学習手段31aで学習した最大横加速度又は/及び減速度に基づいて周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測すると好適である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の走行計画を生成し、当該走行計画に基づいて車両制御を行う車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の速度パターン等の走行計画を立て、その走行計画に従って自動運転制御を行ったりあるいは走行計画に基づいて運転者の運転操作と協調して各種運転支援制御を行う技術が開発されている。特許文献1には、自車両の走行計画を生成し、その走行計画に従って自動運転制御を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−129804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自車両の前方に先行車両が存在する場合、その先行車両の走行状況によっては、自車両が走行計画に従って走行できない場合がある。特に、カーブ(交差点での右左折も含む)の場合、先行車両によって減速の度合いや位置等が異なるので、自車両の走行計画に大きな影響を与え、走行計画には無い減速等を行う必要が発生する。最初に立てた走行計画通りに走行できない場合、走行計画を立てる際の低燃費等の条件を達成することができなくなる。
【0005】
そこで、本発明は、周辺車両のカーブ時の挙動に対応した走行計画を立てる車両制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両制御装置は、自車両の走行計画を生成し、当該走行計画に基づいて車両制御を行う車両制御装置であって、周辺車両のカーブ走行時の挙動を周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度に基づいて予測する周辺車両挙動予測手段と、周辺車両挙動予測手段で予測した周辺車両のカーブ走行時の挙動に基づいて自車両の走行計画を生成する走行計画生成手段を備えることを特徴とする。
【0007】
この車両制御装置では、周辺車両挙動予測手段により、周辺車両のカーブ走行時の挙動を、周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度に基づいて予測する。カーブ走行時の最大横加速度や減速度は、車両のカーブ走行特性を示すので、車両がカーブを走行するときの状況(減速状況等)を予測するためには最適なパラメータである。そして、車両制御装置では、走行計画生成手段により、その予測した周辺車両のカーブ走行時の挙動に基づいて自車両の走行計画を生成する。このように、車両制御装置は、カーブ走行時の周辺車両の挙動を最大横加速度や減速度に基づいて予測し、その周辺車両の挙動に応じて自車両の走行計画を生成することにより、カーブで周辺車両の挙動が変化する場合でもそれに対応した走行計画を立てることができる。例えば、カーブ進入に向けて先行車両が減速するような場合でも、この走行計画に従って車両制御することにより、先行車両の減速前に速度を低下させておくことができ、走行計画に無い減速等を行う必要がなく、走行計画通りに走行できる。その結果、走行計画を立てる際の低燃費等の条件を達成することができる。
【0008】
なお、周辺車両のカーブ走行には、周辺車両がカーブに進入するときの減速区間も含む。カーブには、交差点等での右左折も含む。
【0009】
本発明の上記車両制御装置では、周辺車両がカーブを走行したときに、周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度を学習する学習手段を備え、周辺車両挙動予測手段は、学習手段で学習した最大横加速度又は/及び減速度に基づいて周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測すると好適である。
【0010】
この車両制御装置では、学習手段により、周辺車両がカーブを走行する毎に、周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度を学習しておく。そして、車両制御装置では、周辺車両挙動予測手段により、その学習によって取得した最大横加速度又は/及び減速度に基づいて周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測する。このように、車両制御装置では、周辺車両についてのカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度を学習しておくことにより、周辺車両個々(ひいては、運転者個々)のカーブ走行特性を得ることができ、周辺車両のカーブ走行時の挙動を高精度に予測することができる。
【0011】
本発明の上記車両制御装置では、学習手段は、周辺車両がカーブを走行したときに、周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度の時間微分値を学習し、周辺車両挙動予測手段は、学習手段で学習した最大横加速度の時間微分値に基づいて周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測すると好適である。
【0012】
この車両制御装置では、学習手段により、周辺車両がカーブを走行する毎に、周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度の時間微分値(横ジャーク)も学習しておく。そして、車両制御装置では、周辺車両挙動予測手段により、その学習によって取得した最大横加速度又は/及び減速度に加えて最大横加速度の時間微分値も加味して周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測する。このように、車両制御装置では、周辺車両についてのカーブ走行時の最大横加速度の時間微分値を学習しておくことにより、周辺車両個々のより正確なカーブ走行特性を得ることができ、周辺車両のカーブ走行時の挙動をより高精度に予測することができる。なお、最大横加速度の時間微分値によって、カーブをスムーズに曲がるという特性が得られる。
【0013】
本発明の上記車両制御装置では、学習手段は、周辺車両がカーブを走行したときに、当該カーブの道路形状情報に基づいて周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度を学習し、周辺車両挙動予測手段は、走行するカーブの道路形状に応じて、学習手段で学習したカーブの道路形状毎の最大横加速度又は/及び減速度に基づいて周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測すると好適である。
【0014】
この車両制御装置では、学習手段により、周辺車両がカーブを走行する毎に、そのカーブの道路形状情報に基づいて、周辺車両のカーブの道路形状毎の最大横加速度又は/及び減速度を学習しておく。そして、車両制御装置では、周辺車両挙動予測手段により、走行するカーブの道路形状に応じて、その学習によって取得したカーブの道路形状毎の最大横加速度又は/及び減速度に基づいて周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測する。このように、車両制御装置では、周辺車両についてのカーブの道路形状に応じた最大横加速度や減速度を学習しておくことにより、周辺車両個々のカーブの道路形状に応じたより正確なカーブ走行特性を得ることができ、周辺車両のカーブ走行時の挙動をより高精度に予測することができる。なお、カーブの道路形状には、カーブ自体の道路形状の他に、カーブ後の道路の道路形状も含むものとする。道路形状には、道路線形情報の他に、道路幅、車線数、対向車線の有無等の情報も含む。
【0015】
本発明の上記車両制御装置では、自車両の走行計画は、自車両の走行速度についての走行計画であり、周辺車両のカーブ走行時の挙動は、周辺車両のカーブ走行時の走行速度の変化である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、カーブ走行時の周辺車両の挙動を最大横加速度や減速度に基づいて予測し、その周辺車両の挙動に応じて自車両の走行計画を生成することにより、カーブで周辺車両の挙動が変化する場合でもそれに対応した走行計画を立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態に係る自動運転制御装置の構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係るECUにおける処理(学習)の流れを示すフローチャートである。
【図3】第1の実施の形態に係るECUにおける処理(自車両速度パターン生成、先行車両速度パターン生成)の流れを示すフローチャートである。
【図4】第1の実施の形態に係るECUにおける処理(干渉時対応、自車両速度パターン再生成、加減速制御)の流れを示すフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態に係るECUにおける処理(学習)の流れを示すフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態に係るECUにおける処理(自車両速度パターン生成、先行車両速度パターン生成)の流れを示すフローチャートである。
【図7】第2の実施の形態に係るECUにおける処理(干渉時対応、自車両速度パターン再生成、加減速制御)の流れを示すフローチャートである。
【図8】第3の実施の形態に係るECUにおける処理(学習前半)の流れを示すフローチャートである。
【図9】第3の実施の形態に係るECUにおける処理(学習後半)の流れを示すフローチャートである。
【図10】第3の実施の形態に係るECUにおける処理(自車両速度パターン生成、先行車両速度パターン生成)の流れを示すフローチャートである。
【図11】第3の実施の形態に係るECUにおける処理(干渉時対応、自車両速度パターン再生成、加減速制御)の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る車両制御装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
本実施の形態では、本発明に係る車両制御装置を、自動運転を行うハイブリッド車両に搭載される自動運転制御装置に適用する。本実施の形態に係る自動運転制御装置は、少なくとも自車両の速度を制御するために、自車両の走行計画として速度パターンを生成し、その速度パターンに従って走行するように加減速制御を行う。なお、本実施の形態では、自動運転制御における加減速制御についてのみ説明する。また、本実施の形態では、走行計画として、速度についてのみ説明するが、走行計画としては他にも位置(x座標,y座標)、加速度、ヨー角、ヨーレート等の車両の走行に必要な多数のパラメータがある。
【0020】
本実施の形態には、3つの形態があり、第1の実施の形態が先行車両のカーブ走行時の最大横加速度と減速度を学習して先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測する形態であり、第2の実施の形態では先行車両のカーブ走行時の最大横加速度と減速度の他に横ジャークも学習して先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測する形態であり、第3の実施の形態が先行車両のカーブ走行時の最大横加速度と減速度を学習するとともに道路形状に応じて最大横加速度と減速度の補正値を学習して先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測する形態である。なお、カーブ走行時には、カーブに進入する前の減速区間の走行時も含むものとする。
【0021】
本実施の形態に係る自動運転制御装置では、燃費を重視した走行条件を設定した場合の速度パターンを生成する。この燃費重視(低燃費)の速度パターンとしては、加速として高効率加速度と減速としてフリーランを組み合わせた速度パターンである。フリーランは、エンジン及びモータを停止して走行抵抗のみで減速する走行する。
【0022】
図1を参照して、第1の実施の形態に係る自動運転制御装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係る自動運転制御装置の構成図である。
【0023】
自動運転制御装置1は、低燃費を目的とする自車両の速度パターンを生成(再生成)する。特に、自動運転制御装置1は、自車両の前方に先行車両が存在する場合でも速度パターンに従って走行できるように、先行車両のカーブ走行時の最大横加速度と減速度を学習しておいて先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測し、その予測した先行車両のカーブ走行時の速度パターンに応じて速度パターン(特に、カーブ走行時)を再生成する。
【0024】
自動運転制御装置1は、車輪速センサ10、ミリ波レーダ11、ブレーキアクチュエータ20、ハイブリッドシステム21(エンジン22、モータ23、バッテリ24)及びECU[Electronic Control Unit]31(先行車両学習部31a、自車両速度パターン生成部31b、先行車両速度パターン予測部31c、干渉時対応部31d、自車両速度パターン再生成部31e、加減速制御部31f)を備えており、ナビゲーションシステム12からの情報を利用する。なお、第1の実施の形態では、先行車両学習部31aが特許請求の範囲に記載する学習手段に相当し、先行車両速度パターン予測部31cが特許請求の範囲に記載する周辺車両挙動予測手段に相当し、自車両速度パターン再生成部31eが特許請求の範囲に記載する走行計画生成手段に相当する。
【0025】
車輪速センサ10は、車両の4輪にそれぞれ設けられ、車輪の回転速度(車輪の回転に応じたパルス数)を検出するセンサである。車輪速センサ10では、所定時間毎の車輪の回転パルス数を検出し、その検出した車輪回転パルス数を車輪速信号としてECU31に送信する。ECU31では、各車輪の回転速度から車輪速をそれぞれ算出し、各輪の車輪速から車体速(車速)を算出する。
【0026】
ミリ波レーダ11は、ミリ波を利用して先行車両を検出するためのレーダである。ミリ波レーダ11は、自車両の前側の中央に取り付けられる。ミリ波レーダ11では、ミリ波を左右方向にスキャンしながら自車両から前方に向けて送信し、反射してきたミリ波を受信する。そして、ミリ波レーダ11では、そのミリ波の送受信情報(自車両進行方向を中心とした送信角度、送信時刻、受信角度、受信時刻、受信強度など)をレーダ信号としてECU31に送信する。
【0027】
ナビゲーションシステム12は、自車両の現在位置の検出及び目的地までの経路案内等を行うシステムである。特に、ナビゲーションシステム12では、地図データベースから現在位置周辺の道路形状情報(カーブ半径等も含む)を読み出し、その道路形状情報及び検出した現在位置等をナビ信号としてECU31に送信する。なお、ナビゲーションシステムを備えない車両の場合、道路形状情報を格納した地図データベースを備える構成としてもよいし、あるいは、路車間通信等を利用してインフラから道路形状情報を取得する構成としてもよい。また、ナビゲーションシステムを備えない車両の場合、現在位置を取得するためにGPS受信装置を備える構成としてもよい。
【0028】
ブレーキアクチュエータ20は、各車輪のホイールシリンダのブレーキ油圧を調整するアクチュエータである。ブレーキアクチュエータ20では、ECU31からのブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキ制御信号に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。
【0029】
ハイブリッドシステム21は、エンジン22及びモータ23の2つの駆動源を単独あるいは組み合わせることにより車両の加減速を制御するシステムである。ハイブリッドシステム21では、ECU31からの駆動制御信号を受信すると、駆動制御信号に応じてエンジン22及びモータ23を駆動制御、エンジン22のみを駆動制御、モータ23のみを駆動制御、モータ23を回生制御、エンジン22及びモータ23を停止制御(フリーラン制御)等する。エンジン22は、例えば、電子スロットル等のスロットルアクチュエータ(図示せず)で駆動が制御される。モータ23は、インバータ(図示せず)で駆動/回生が制御され、駆動時にはインバータを介してバッテリ24から電気エネルギが供給され、回生時には発電した電気エネルギをインバータを介してバッテリ24に充電する。ちなみに、フル回生を行う場合、バッテリ24に単位時間当たりに充電可能な最大電力によってフル回生量(ひいては、減速度)が決まり、例えば、フル回生によって−0.2G程度の減速度となる。
【0030】
ECU31は、CPU[Central Processing Unit]や各種メモリ等からなり、自動運転制御装置1を統括制御する。ECU31では、メモリに格納されている各アプリケーションプログラムをロードし、CPUで実行することによって先行車両学習部31a、自車両速度パターン生成部31b、先行車両速度パターン予測部31c、干渉時対応部31d、自車両速度パターン再生成部31e、加減速制御部31fが構成される。ECU31では、一定時間毎に、各センサ10、11及びナビゲーションシステム12からの各信号を受信する。そして、ECU31では、その受信した各信号に基づいて各部31a〜31fでの処理を行い、ブレーキアクチュエータ20やハイブリッドシステム21に各制御信号を送信する。
【0031】
先行車両学習部31aについて説明する。先行車両学習部31aでは、先行車両が存在するか否かを判定し、先行車両が存在する場合には先行車両のカーブ走行時の最大横加速度と減速度を学習する。なお、この学習では、同一の先行車両(ひいては、同一の運転者)に対して学習を行うので、先行車両が変わった場合には学習された各数値が初期化される。
【0032】
具体的には、先行車両学習部31aでは、ミリ波の送受信情報(特に、受信情報がある反射点の情報)に基づいて、自車両の前方の先行車両の有無を判定する。ここでは、ミリ波の反射点をグルーピングしており、自車両の走行車線の前方に反射点をグループピングできた場合に、先行車両を認識できたことになる。先行車両学習部31aでは、先行車両とした認識できたグループの反射点の情報を用いて、ミリ波の速度とミリ波の送信から受信までの時間に基づいて、自車両と先行車両との相対距離を算出する。また、先行車両学習部31aでは、ミリ波の反射波の周波数変化(ドップラ効果)を利用して、自車両とその先行車両との相対速度を算出する。また、先行車両学習部31aでは、ミリ波の受信角度に基づいて、自車両と先行車両との相対方向を算出する。
【0033】
先行車両が存在する場合、先行車両学習部31aでは、自車両の現在位置及び先行車両との相対距離に基づいて、先行車両の現在位置を算出する。また、先行車両学習部31aでは、ナビ情報に基づいて、その先行車両の現在位置でのカーブ半径を取得する。
【0034】
先行車両学習部31aでは、先行車両の現在位置とカーブ半径に基づいて、先行車両がカーブに進入するか否かを判定する。このカーブの進入判定では、先行車両のカーブの進入前の減速区間も含めるために、先行車両の所定距離前方(例えば、300m前方)にカーブ(例えば、カーブ半径が1000m以下)が存在する位置からカーブに進入と判定する。先行車両学習部31aでは、先行車両がカーブに進入中、先行車両の減速度を算出する。先行車両の減速度は、一定時間毎に自車両の速度及び先行車両との相対速度に基づいて先行車両の速度を算出し、その先行車両の速度の時間変化から減速度を算出する。
【0035】
先行車両学習部31aでは、先行車両の現在位置でのカーブ半径に基づいて、先行車両が直線路(例えば、カーブ半径が1000m以上)を走行中か否かを判定する。先行車両が直線路を走行中でない場合(すなわち、直線路と直線路との間のカーブ走行中の場合)、先行車両学習部31aでは、自車両の速度及び先行車両との相対速度に基づいて先行車両の速度を算出する。また、先行車両学習部31aでは、その先行車両の速度とカーブ半径に基づいて、先行車両の横加速度を算出する。横加速度Ay、速度V、カーブ半径Rとすると、Ay=V2/Rである。
【0036】
先行車両学習部31aでは、今回のカーブ内において、算出した先行車両の横加速度の中から最大の横加速度を抽出し、その抽出した横加速度を今回のカーブでの先行車両の最大横加速度とする。また、先行車両学習部31aでは、今回のカーブ内において算出した先行車両の減速度の中で一定値以内(例えば、−0.05G以下)の減速度の区間において減速度の平均値を算出し、その算出した平均値を今回のカーブでの先行車両の減速度とする。なお、この先行車両の減速度は、今回のカーブ内において算出した先行車両の減速度の中の最大の減速度でもよい。
【0037】
先行車両学習部31aでは、現在の先行車両が現在までに走行した各カーブでの最大減速度を集計して平均値を算出し、その算出した平均値を先行車両の平均最大加速度とする。また、先行車両学習部31aでは、現在の先行車両が現在までに走行した各カーブでの減速度を集計して平均値を算出し、その算出した平均値を先行車両の平均減速度とする。この平均最大加速度と平均減速度が、先行車両のカーブでの走行特性を示すパラメータであり、先行車両のカーブ走行時の速度を高精度に予測するためのパラメータとなる。
【0038】
自車両速度パターン生成部31bについて説明する。自車両速度パターン生成部31bでは、先行車両を考慮しないで、自車両の基準となる速度パターンを生成する。ちなみに、直線路の走行時や先行車両が存在しないカーブ路の走行時には、この基準となる速度パターンがそのまま用いられる。
【0039】
具体的には、自車両速度パターン生成部31bでは、ナビ情報の道路形状情報を用いて、上限速度や最大横加速度等を条件として、高効率加速度とフリーランからなる燃費重視の速度パターンを生成する。上限速度としては、例えば、法定速度とする。最高横加速度としては、例えば、自車両の運転者が希望する最大横加速度、あるいは、上記したような先行車両に対する学習手法を自車両に適用して学習によって得られる最大横加速度とする。速度パターンは、一定時間毎の速度のパターン、あるいは、一定の微小間隔毎の速度のパターンである。
【0040】
速度パターンの生成方法の一例を説明する。走行予定経路における一定の微小間隔に分割された領域において、その領域でのカーブ半径と路面の摩擦係数を用いて車両の最高速度を算出する。カーブ半径R、路面摩擦係数μ、最高速度Vとすると、V2=μ×g×Rである。gは、重力加速度である。そして、その各領域の最高速度からなる定常円最高速度パターンを生成する。定常円最高速度パターンを生成すると、走行開始点から走行終了点に向けて隣接する領域間毎に、加速度を算出し、その算出した加速度が上限加速度を超える場合には速度が高い走行終了点側の速度を上限加速度以下となるように低速側に修正する。上限加速度は、車両の走行性能から求められる値と摩擦円からはみ出る値のうちの低い値に設定される。また、走行終了点から走行開始点に向けて隣接する領域間毎に、減速度を算出し、その算出した減速度が上限減速度を超える場合には速度が高い走行開始点側の速度を上限減速度以下となるように低速側に修正する。上限減速度は、車両の走行性能から求められる値と摩擦円からはみ出る値のうちの低い値に設定される。そして、その加減速制限条件を満たす各領域の速度からなる速度パターンが生成される。
【0041】
速度パターンの生成方法の他の例としては、最適化手法がある。最適化手法としては、例えば、「藤岡健彦、江守大昌:自動車技術会論文集 Vol.24,No.3,July 1993,p106−111 ”最短時間コーナリング法に関する理論的研究”」に開示されているSCGRA[Sequential Conjugate Gradient Restoration Algorithm]を用いる。SCGRAでは、拘束条件を満たすまで最急降下法に基づいて収束演算し、評価関数の評価値が最小となるまで共役勾配法に基づいて収束演算する。拘束条件は、車両の走行において絶対に守らなければならない条件である。評価関数は、車両の走行において重視する条件(燃費等)を評価するための関数である。
【0042】
自車両速度パターン生成部31bでは、生成した自車両の速度パターンの平均速度が先行車両の平均速度に対して高いか否かを判定する。先行車両の平均速度としては、一定時間毎に算出していた先行車両の速度を所定区間で平均化した速度である。自車両の速度パターンの平均速度が先行車両の平均速度に対して高い場合、追突の危険性を回避するために、自車両速度パターン生成部31bでは、上限速度の条件を下げて(例えば、−2km/h)、速度パターンを再生成する。
【0043】
先行車両速度パターン予測部31cについて説明する。先行車両速度パターン予測部31cでは、先行車両がカーブに進入した場合、学習によって取得した先行車両の平均最大横加速度と平均減速度を条件として、先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測生成する。
【0044】
具体的には、先行車両速度パターン予測部31cでは、先行車両がカーブを一度でも走行済みか否かを判定する。先行車両が一度もカーブを走行していない場合、その先行車両に対する平均最大横加速度と平均減速度が学習によって求められていないので、先行車両速度パターン予測部31cでは、平均最大横加速度と平均減速度として標準値をそれぞれ設定する。平均最大横加速度の標準値としては、例えば、0.3Gとする。平均減速度の標準値としては、例えば、−0.2Gとする。この各標準値は、実車実験等によって予め設定される。
【0045】
先行車両速度パターン予測部31cでは、先行車両学習部31aと同様の方法で、先行車両がカーブに進入か否かを判定する。先行車両がカーブに進入した場合、先行車両速度パターン予測部31cでは、ナビ情報の道路形状情報を用いて、平均最大横加速度と平均減速度を条件として先行車両のカーブ走行時の速度パターンを生成する。速度パターンの生成方法としては、上記した自車両速度パターン生成部31bで説明した同様の方法を用いる。例えば、最初に説明した生成方法の例の場合、速度パターンの走行開始点を先行車両がカーブに進入を開始した地点とし、走行終了点をカーブの終了地点とし、速度の初期値を先行車両がカーブに進入を開始した地点での速度とし、最大横加速度を平均最大横加速度とし、上限減速度を平均減速度とし、上限加速度を平均減速度と同様の方法で求めた値あるいは干渉判定において重要でないので標準値(例えば、0.15G)とし、これらのパラメータを用いて速度パターンを生成する。
【0046】
干渉時対応部31dについて説明する。干渉時対応部31dでは、先行車両がカーブに進入した場合、先行車両の速度パターンに応じて自車両の速度パターンを再生成するまでに(再生成に計算時間を必要とするため)、先行車両の速度パターンに自車両の速度パターンが干渉する(十分な車間時間を確保できない、衝突の危険性があるなど)と予測される場合、干渉を回避するための車両制御を行う。ここでは、自車両の速度パターンを再生成している間に先行車両との関係で事態の悪化(例えば、衝突の危険性の増大、油圧ブレーキの作動(100%の損失で燃費の悪化))が発生することを最小限にするための車両制御を行う。
【0047】
具体的には、干渉時対応部31dでは、速度パターンの各時刻毎(あるいは、各微小領域毎)に、自車両の速度パターンの各速度と先行車両の速度パターンの各速度に基づいて、自車両と先行車両との車間時間を算出する。そして、干渉時対応部31dでは、その算出した各時刻の車間時間の中から最小の車間時間を抽出する。
【0048】
干渉時対応部31dでは、最小車間時間に基づいて、先行車両の速度パターンと自車両の速度パターンとが干渉するか否かを判定する。この干渉判定では、最小車間時間が車間時間設定値(例えば、1秒)以下か否かで判定する。車間時間設定値は、実車実験等で予め設定される。
【0049】
先行車両の速度パターンと自車両の速度パターンとが干渉する場合、干渉時対応部31dでは、自車両が加速度状態か否かを判定する。自車両が加速状態の場合、干渉時対応部31dでは、加速せずに、暫定のフリーラン走行とするために、フリーランを示す駆動制御信号をハイブリッドシステム21に送信する。さらに、干渉時対応部31dでは、最小車間時間が十分小さく(例えば、最小車間時間が0より小さい)、自車両と先行車両が衝突の危険性があるか否かを判定する。衝突の危険性がある場合、干渉時対応部31dでは、油圧ブレーキを用いずに、暫定のフル回生(回生ブレーキ作動)とするために、フル回生を示す駆動制御信号をハイブリッドシステム21に送信する。
【0050】
自車両速度パターン再生成部31eについて説明する。自車両速度パターン再生成部31eでは、先行車両がカーブに進入した場合、予測した先行車両の速度パターンに応じて自車両の速度パターンを再生成する。ここでは、燃費重視の速度パターンにおいて減速はフレーラン(もしくは、燃料カット)なので、それをさらに効率的に実施するために、自車両の速度パターンが先行車両の速度パターンに干渉することを回避する方法として減速区間の開始点を早める(つまり、フリーランを開始する地点を自車両速度パターン生成部31bで生成した速度パターンでの地点よりも前にする)。
【0051】
具体的には、自車両速度パターン再生成部31eでは、干渉時対応部31dと同様の方法により、最小車間時間に基づいて、先行車両の速度パターンと自車両の速度パターンとが干渉するか否かを判定する。先行車両の速度パターンと自車両の速度パターンとの干渉がなくなるまで、自車両速度パターン再生成部31eでは、速度パターンを生成する際の条件の最高横加速度を徐々に下げて(例えば、0.05G程度下げる)、その下げた最高加速度を条件として速度パターンを生成する。このように最高横加速度を下げることによって、速度パターンにおいて自車両の減速開始点を早めることができ、先行車両がカーブの進入前の減速に対応して事前に減速することができる。
【0052】
加減速制御部31fについて説明する。加減速制御部31fでは、生成した自車両の速度パターンに応じた加減速制御を行う。具体的には、加減速制御部31fでは、自車両の速度パターンに従って走行するように、自車両の現在速度と速度パターンの対応する時刻での速度との偏差に基づいて駆動制御信号(目標加速度、フリーラン、目標回生量等)又はブレーキ制御信号(目標減速度)を生成し、その各信号をブレーキアクチュエータ20、ハイブリッドシステム21にそれぞれ送信する。
【0053】
図1を参照して、自動運転制御装置1における動作について説明する。特に、ECU31における処理については図2〜図4に沿って説明する。図2は、ECU31における処理(学習)の流れを示すフローチャートである。図3は、ECU31における処理(自車両速度パターン生成、先行車両速度パターン生成)の流れを示すフローチャートである。図4は、ECU31における処理(干渉時対応、自車両速度パターン再生成、加減速制御)の流れを示すフローチャートである。
【0054】
車輪速センサ10では、一定時間毎に、車輪の回転パルス数を検出し、車輪速信号をECU31に送信する。ECU31では、車輪速信号を受信し、各車輪の回転速度から自車両の速度を算出する。ミリ波レーダ11では、一定時間毎に、ミリ波を左右方向にスキャンしながら自車両から前方に向けて送信し、反射してきたミリ波を受信し、レーダ信号をECU31に送信する。ECU31では、レーダ信号を受信し、ミリ波の送受信情報(送信角度、送信時刻、受信角度、受信時刻、受信強度など)を取得する。ナビゲーションシステム12では、一定時間毎に、現在位置検出等を行い、地図データベースから現在位置周辺の道路形状情報を読み出し、その道路形状情報や現在位置情報をナビ信号としてECU31に送信する。ECU31では、ナビ信号を受信し、道路形状情報や現在位置情報を取得する。
【0055】
ECU31では以下の処理を一定時間毎に繰り返し行う。まず、ECU31では、ミリ波の送受信情報に基づいて、自車両の前方に先行車両が存在するか否かを判定する(S10)。S10にて先行車両が存在しないと判定した場合、ECU31では、S22の処理にスキップする。
【0056】
S10にて先行車両が存在すると判定した場合、ECU31では、ミリ波の送受信情報に基づいて、自車両と先行車両との相対距離等を算出する。そして、ECU31では、ナビ情報から得られる自車両の現在位置及び先行車両との相対距離に基づいて、先行車両の現在位置を算出する(S11)。また、ECU31では、ナビ情報から先行車両の現在位置でのカーブ半径を取得する(S12)。
【0057】
ECU31では、先行車両の現在位置とカーブ半径に基づいて、先行車両がカーブに進入か否かを判定する(S13)。S13にて先行車両がカーブに進入と判定した場合、ECU31では、先行車両の減速度を算出する(S14)。
【0058】
ECU31では、先行車両のカーブ半径に基づいて、先行車両が直進か否かを判定する(S15)。S15にて先行車両が直進と判定した場合、ECU31では、S22の処理にスキップする。
【0059】
S15にて先行車両が直進でない(すなわち、カーブ)と判定した場合、ECU31では、自車両の速度及び先行車両との相対速度に基づいて先行車両の速度を算出する(S16)。また、ECU31では、先行車両の速度及びカーブ半径に基づいて、先行車両の横加速度を算出する(S17)。
【0060】
そして、ECU31では、今回のカーブ内での各時刻の最大横加速度の中から先行車両の最大横加速度を抽出する(S18)。また、ECU31では、今回のカーブ内での各時刻での減速度を平均化した減速度を算出する(S19)。
【0061】
さらに、ECU31では、先行車両がこれまでに走行した各カーブでの最大横加速度を平均化した平均最大横加速度を算出する(S20)。また、ECU31では、先行車両がこれまでに走行した各カーブでの減速度を平均化した平均減速度を算出する(S21)。
【0062】
ECU31では、現在の先行車両がカーブを1度でも走行済みか否かを判定する(S22)。S22にて現在の先行車両がカーブを1度も走行していないと判定した場合、ECU31では、その先行車両の平均最大横加速度と平均減速度として標準値をそれぞれ設定する(S23)。
【0063】
ECU31では、道路形状情報を用いて、上限速度や最大横加速度等を条件として、高効率加速度とフリーランからなる燃費重視の速度パターンを生成する(S24)。そして、ECU31では、この自車両の速度パターンの平均速度が先行車両の平均速度に対して高いか否かを判定する(S25)。S25にて自車両の速度パターンの平均速度が先行車両の平均速度に対して高いと判定した場合、ECU31では、速度パターンの生成条件の上限速度を下げて(S26)、再度、速度パターンを生成する(S24)。
【0064】
S25にて自車両の速度パターンの平均速度が先行車両の平均速度に対して高くないと判定した場合、ECU31では、先行車両の現在位置とカーブ半径に基づいて、先行車両がカーブに進入か否かを判定する(S27)。S27にて先行車両がカーブに進入していないと判定した場合、ECU31では、S38の処理にスキップする。
【0065】
S27にて先行車両がカーブに進入と判定した場合、ECU31では、道路形状情報を用いて、その先行車両の平均最大横加速度と平均減速度を条件として、先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測する(S28)。
【0066】
ECU31では、各時刻毎に自車両の速度パターンの各速度と先行車両の速度パターンの各速度に基づいて自車両と先行車両との車間時間をそれぞれ算出し、その中から最小車間時間を抽出する(S29)。そして、ECU31では、その最小車間時間に基づいて、自車両の速度パターンと先行車両の速度パターンとが干渉するか否かを判定する(S30)。S30にて干渉しないと判定した場合、ECU31では、S38の処理にスキップする。
【0067】
S30にて干渉すると判定した場合、ECU31では、自車両が加速状態か否かを判定する(S31)。S31にて自車両が加速状態と判定した場合、ECU31では、暫定のフリーランを行うために、フリーランを示す駆動制御信号をハイブリッドシステム21に送信する(S32)。この駆動制御信号を受信すると、ハイブリッドシステム21では、エンジン22及びモータ23を停止する。さらに、ECU31では、自車両と先行車両が衝突の危険性が有るか否かを判定する(S33)。S33にて衝突の危険性が有ると判定した場合、ECU31では、暫定のフル回生を行うために、フル回生を示す駆動制御信号をハイブリッドシステム21に送信する(S34)。この駆動制御信号を受信すると、ハイブリッドシステム21では、バッテリ24の充電能力に応じてモータ23のフル回生を行い(回生ブレーキ作動)、その発電した電力をバッテリ24に充電する。
【0068】
ECU31、自車両の速度パターンと先行車両の速度パターンとの干渉を回避するために、速度パターンの生成条件の最高横加速度を下げ(S35)、その最高横加速度を条件として自車両の速度パターンを再生成する(S36)。そして、ECU32では、その再生成した自車両の速度パターンを用いて上記と同様の方法によって最小車間時間を算出し、その最小車間時間に基づいて自車両の速度パターンと先行車両の速度パターンとが干渉するか否かを判定する(S37)。S37にて干渉すると判定した場合、ECU31では、速度パターンの生成条件の最高横加速度を更に下げ(S35)、その最高横加速度を条件として自車両の再生成する(S36)。
【0069】
S37にて干渉しないと判定した場合、ECU31では、自車両の速度パターンに従って走行するように、自車両の現在速度と速度パターンの対応する時刻での速度との偏差に基づいてブレーキ制御信号又は駆動制御信号を生成し、その各制御信号をブレーキアクチュエータ20又はハイブリッドシステム21に送信する。ブレーキアクチュエータ20では、ブレーキ制御信号を受信した場合、そのブレーキ制御信号に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。また、ハイブリッドシステム21では、駆動制御信号を受信した場合、その駆動制御信号に基づいてエンジン22の駆動又は及びモータの駆動/回生を制御する。
【0070】
この自動運転制御装置1によれば、カーブ走行時の先行車両の速度パターンを最大横加速度及び減速度に基づいて予測し、その先行車両の速度パターンに応じて自車両の速度パターンを再生成することにより、カーブで先行車両の速度が変化する場合でもそれに対応した自車両の最適な速度パターンを立てることができる。例えば、カーブ進入に向けて先行車両が減速するような場合でも、この再生成した自車両の速度パターンに従って加減速制御することにより、先行車両の減速前に速度を低下させておくことができ、速度パターンに無い無駄な減速を行う必要がなく、速度パターン通りに走行できる。その結果、速度パターンを立てる際の燃費重視の条件を達成することができる。
【0071】
また、自動運転制御装置1によれば、先行車両についてのカーブ走行時の最大横加速度及び減速度を学習しておくことにより、先行車両個々(運転者個々)のカーブ走行特性を得ることができ、先行車両のカーブ走行時の速度パターンを高精度に予測することができる。
【0072】
また、自動運転制御装置1によれば、自車両の速度パターンが再生成されるまで、自車両と先行車両の速度パターンが干渉する場合にはそれに対応する車両制御を行うので、自車両と先行車両との干渉を回避でき、安全性を確保できる。さらに、フリーランや回生フレー未によって、油圧ブレーキを必要とするような大きな減速度を未然に防止するので、燃費悪化を最小限に抑えることができる。
【0073】
また、自動運転制御装置1によれば、自車両と先行車両の速度パターンが干渉する場合には最大横加速度を下げて自車両の速度パターンを再生成することにより、速度パターン全体の速度が下がるようなことなく、自車両の減速開始点を早めることによって先行車両のカーブでの減速に対応することができる。
【0074】
図1を参照して、第2の実施の形態に係る自動運転制御装置2について説明する。自動運転制御装置2は、第1の実施の形態に係る自動運転制御装置1と比較すると、先行車両のカーブでのより高精度な速度パターンを得るために、最高横加速度の微分値(横ジャーク)も学習し、その横ジャークも考慮して先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測する点が異なる。自動運転制御装置2は、自動運転制御装置1の構成に対して、ECU32における処理だけが異なるので、ECU32についてのみ説明する。
【0075】
なお、横ジャークに関しては、同じ個人であれば、多くの状況においてばらつきが小さいことが判っている。これはおそらく、横加速度(=走行速度)がその道路の状況に依存するのに対し、横ジャークは運転者の転舵速度に依存するためではないかと考えられる。
【0076】
ECU32は、CPUや各種メモリ等からなり、自動運転制御装置2を統括制御する。ECU32では、メモリに格納されている各アプリケーションプログラムをロードし、CPUで実行することによって先行車両学習部32a、自車両速度パターン生成部32b、先行車両速度パターン予測部32c、干渉時対応部32d、自車両速度パターン再生成部32e、加減速制御部32fが構成される。なお、第2の実施の形態では、先行車両学習部32aが特許請求の範囲に記載する学習手段に相当し、先行車両速度パターン予測部32cが特許請求の範囲に記載する周辺車両挙動予測手段に相当し、自車両速度パターン再生成部32eが特許請求の範囲に記載する走行計画生成手段に相当する。
【0077】
なお、自車両速度パターン生成部32b、干渉時対応部32d、自車両速度パターン再生成部32e、加減速制御部32fについては、第1の実施の形態に係る自車両速度パターン生成部31b、干渉時対応部31d、自車両速度パターン再生成部31e、加減速制御部31fと同様の処理を行うので、説明を省略する。
【0078】
先行車両学習部32aについて説明する。先行車両学習部32aでは、第1の実施の形態に係る先行車両学習部31aと同様の処理を行う上に、以下の処理も行う。先行車両学習部32aでは、先行車両のカーブ走行時の最大横加速度と減速度に加えて横ジャークを学習する。ここでは、横ジャークの学習処理についてのみ説明する。
【0079】
具体的には、先行車両学習部32aでは、現時刻の横加速度Ay(n)を算出すると、現時刻の横加速度Ay(n)とその前時刻の横加速度Ay(n−1)との差分の絶対値を算出し、その値を横ジャークJy(n)とする。そして、先行車両学習部32aでは、今回のカーブ内において算出した先行車両の横ジャークの中で一定値以上(例えば、0.1m/s3以上)の横ジャークの区間において横ジャークの平均値を算出し、その算出した平均値を今回のカーブでの先行車両の横ジャークとする。さらに、先行車両学習部32aでは、現在の先行車両が現在までに走行した各カーブでの横ジャークを集計して平均値を算出し、その算出した平均値を先行車両の平均横ジャークJaveとする。
【0080】
先行車両速度パターン予測部32cについて説明する。先行車両速度パターン予測部32cでは、先行車両がカーブに進入した場合、学習によって取得した先行車両の平均最大横加速度と平均減速度を条件として先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測生成し、その予測した速度パターンを学習によって取得した先行車両の平均横ジャークJaveに基づいて修正する。
【0081】
具体的には、先行車両速度パターン予測部32cでは、先行車両がカーブを一度でも走行済みか否かを判定する。先行車両が一度もカーブを走行していない場合、その先行車両に対する平均最大横加速度、平均減速度及び平均横ジャークが学習によって求められていないので、先行車両速度パターン予測部32cでは、平均最大横加速度、平均減速度及び平均横ジャークとして標準値をそれぞれ設定する。平均横ジャークの標準値としては、例えば、1m/s3とする。そして、先行車両速度パターン予測部32cでは、第1の実施の形態に係る先行車両速度パターン予測部31cと同様の処理により、平均最大横加速度と平均減速度を条件として先行車両のカーブ走行時の速度パターンを生成する。
【0082】
先行車両のカーブ走行時の速度パターンを生成すると、先行車両速度パターン予測部32cでは、その先行車両の速度パターンの全ての時刻について、各時刻の速度V(n)を用いて各時刻の横加速度Ay(n)をそれぞれ算出する。そして、先行車両速度パターン予測部32cでは、その各時刻の横加速度Ay(n)とその前時刻の横加速度Ay(n−1)との差分の絶対値をそれぞれ算出し、先行車両の速度パターンの全ての時刻についての横ジャークJy(n)を算出する。
【0083】
先行車両速度パターン予測部32cでは、算出した全ての時刻の横ジャークJy(n)が学習によって求めた平均横ジャークJaveよりも小さいか否かを判定する。全ての時刻の横ジャークJy(n)が平均横ジャークJaveよりも小さくない場合、その全ての時刻の横ジャークJy(n)が学習によって求めた平均横ジャークJave内に収まるように、Ay(n)とAy(n−1)のうちの大きいほうの値(V(n)とV(n−1)のうちの大きいほうの値)を下げて先行車両の速度パターンを修正する。
【0084】
具体的には、先行車両速度パターン予測部32cでは、先行車両の速度パターンにおける各時刻nについて加速中(V(n−1)=<V(n))か否かを判定する。時刻nで加速中の場合、先行車両速度パターン予測部32cでは、その時刻nの横加速度Ay(n)=その前時刻n−1の横加速度Ay(n−1)+平均横ジャークJaveを算出する。さらに、先行車両速度パターン予測部32cでは、その算出した時刻nの横加速度Ay(n)を用いて、時刻nの速度V(n)=sqrt(時刻nの横加速度Ay(n)×カーブ半径R)を算出する。一方、減速中の場合、先行車両速度パターン予測部32cでは、時刻nの前時刻n−1の横加速度Ay(n−1)=時刻nの横加速度Ay(n)+平均横ジャークJaveを算出する。さらに、先行車両速度パターン予測部32cでは、その算出した前時刻n−1の横加速度Ay(n−1)を用いて、前時刻n−1の速度V(n−1)=sqrt(前時刻n−1の横加速度Ay(n−1)×カーブ半径R)を算出する。この処理を、先行車両の速度パターンの全ての時刻nに対して行う。
【0085】
さらに、先行車両速度パターン予測部32cでは、上記の処理で各時刻の速度V(n)を修正した結果、速度パターンの加減速制限条件を満たさなくなっている可能性があるので、加減速制限条件を満たすように先行車両の速度パターンの全ての時刻nの速度V(n)を再修正する。例えば、この加減速制限条件による再修正については、上記の速度パターンの生成方法の一例として説明した定常円最高速度パターンに対して上限加速度及び上限減速度を超える速度を修正する処理によって再修正を行う。
【0086】
図1を参照して、自動運転制御装置2における動作について説明する。特に、ECU32における処理については図5〜図7に沿って説明する。図5は、ECU32における処理(学習)の流れを示すフローチャートである。図6は、ECU32における処理(自車両速度パターン生成、先行車両速度パターン生成)の流れを示すフローチャートである。図7は、ECU32における処理(干渉時対応、自車両速度パターン再生成、加減速制御)の流れを示すフローチャートである。
【0087】
車輪速センサ10、ミリ波レーダ11、ナビゲーションシステム12については、第1の実施の形態に係る自動運転制御装置1で説明した同様の動作を行う。
【0088】
ECU32では以下の処理を一定時間毎に繰り返し行う。まず、ECU32では、S40〜S47の処理については、第1の実施の形態に係るECU31におけるS10〜S17と同様の処理を行う。先行車両の横加速度Ay(n)を算出すると、ECU32では、その時刻nの横加速度Ay(n)とその前時刻n−1の横加速度Ay(n−1)を用いて、横ジャークJy(n)を算出する(S48)。
【0089】
そして、ECU32では、第1の実施の形態に係るECU31におけるS18、S19と同様の処理により、今回のカーブ内での先行車両の最大横加速度を抽出するとともに(S49)、今回のカーブ内での減速度を平均化した減速度を算出する(S50)。また、ECU32では、今回のカーブ内での横ジャークを平均化した横ジャークを算出する(S51)。
【0090】
さらに、ECU32では、第1の実施の形態に係るECU31におけるS20、S21と同様の処理により、これまでの各カーブでの先行車両の平均最大横加速度を算出するとともに(S52)、これまでの各カーブでの先行車両の平均減速度を算出する(S53)。また、ECU32では、先行車両がこれまでに走行した各カーブでの先行車両の横ジャークを平均化した平均横ジャークJaveを算出する(S54)。
【0091】
ECU32では、現在の先行車両がカーブを1度でも走行済みか否かを判定する(S55)。S55にて現在の先行車両がカーブを1度も走行していないと判定した場合、ECU31では、その先行車両の平均最大横加速度、平均減速度、平均横ジャークに標準値をそれぞれ設定する(S56)。
【0092】
ECU32では、S57〜S59の処理については、第1の実施の形態に係るECU31におけるS24〜S26と同様の処理を行い、自車両の速度パターンを生成する。
【0093】
ECU32では、先行車両の現在位置とカーブ半径に基づいて、先行車両がカーブに進入か否かを判定する(S60)。S60にて先行車両がカーブに進入していないと判定した場合、ECU32では、S79の処理にスキップする。
【0094】
S60にて先行車両がカーブに進入と判定した場合、ECU32では、道路形状情報を用いて、その先行車両の平均最大横加速度や平均減速度を条件として、先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測する(S61)。
【0095】
ECU32では、その先行車両の速度パターンの各時刻の速度V(n)を用いて、先行車両の各時刻の横加速度Ay(n)をそれぞれ算出する(S62)。そして、ECU32では、その算出した各時刻の横加速度Ay(n)とその前時刻の横加速度Ay(n−1)を用いて、先行車両の各時刻の横ジャークJy(n)をそれぞれ算出する(S63)。全ての時刻の横ジャークJy(n)を算出すると、ECU32では、全ての時刻の横ジャークJy(n)が平均横ジャークJaveよりも小さいか否かを判定する(S64)。S64にて全ての時刻の横ジャークJy(n)が平均横ジャークJaveよりも小さいと判定した場合、ECU32では、S70の処理にスキップする。
【0096】
S64にて全ての時刻の横ジャークJy(n)が平均横ジャークJaveよりも小さくないと判定した場合、ECU32では、先行車両の速度パターンにおける時刻nが加速中か否かを判定する(S65)。S65にて時刻nが加速中と判定した場合、ECU32では、平均横ジャークJaveを用いて時刻nの横ジャークJ(n)を小さくし、その小さくした横ジャークJ(n)を用いて時刻nの速度V(n)を小さくする(S66)。一方、S65にて時刻nが加速中でないと判定した場合、ECU32では、平均横ジャークJaveを用いて前時刻n−1の横ジャークJ(n−1)を小さくし、その小さくした横ジャークJ(n−1)を用いて前時刻n−1の速度V(n−1)を小さくする(S67)。そして、ECU32では、全ての時刻nについての処理が完了したか否かを判定する(S68)。S68にて全ての時刻についての処理が完了していないと判定した場合、ECU32では、S65の処理に戻って、次時刻についての処理を行う。一方、S68にて全ての時刻についての処理が完了したと判定した場合、ECU32では、修正した全ての時刻の速度V(n)が加速度制限条件を満たすように再修正する(S69)。ここで、先行車両の最終的な速度パターンが生成されたことになる。
【0097】
ECU32では、S70〜S79の処理については、第1の実施の形態に係るECU31におけるS29〜S38と同様の処理を行う。ECU32の各制御信号を受信すると、ブレーキアクチュエータ20、ハイブリッドシステム21では、第1の実施の形態に係る自動運転制御装置1で説明した同様の動作を行う。
【0098】
この自動運転制御装置2は、第1の実施の形態に係る自動運転制御装置1と同様の効果を有する上に、以下の効果も有している。自動運転制御装置2によれば、先行車両についてのカーブ走行時の横ジャークも学習しておくことにより、先行車両個々(運転者個々)のより正確なカーブ走行特性を得ることができ、先行車両のカーブ走行時の速度パターンより高精度に予測することができる。その結果、自車両のより最適な速度パターンを立てることができ、自車両の燃費向上等の効果を最大限に獲得できる。例えば、先行車両がカーブで想定外の減速等を行った場合でも、それに対応して速度を低下させておくことができ、燃費悪化を回避できる。
【0099】
図1を参照して、第3の実施の形態に係る自動運転制御装置3について説明する。自動運転制御装置3は、第1の実施の形態に係る自動運転制御装置1と比較すると、先行車両のカーブでのより高精度な速度パターンを得るために、カーブ後の道路形状(特に、カーブ後に進入する道路幅)毎の横加速度及び減速度の補正値も学習し、カーブ後の道路形状に応じて横加速度と減速度を補正して先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測する点が異なる。自動運転制御装置3は、自動運転制御装置1の構成に対して、ECU33における処理だけが異なるので、ECU33についてのみ説明する。
【0100】
なお、カーブでの横加速度や減速度は、カーブ後の道路形状に依存して決定される傾向があると考えられる。例えば、交差点の右左折等において、その先の狭い道路に進入してゆく場合には速度を低めにしたいためにカーブ中の最大横加速度が低くなる傾向があり、反対に、その先の広い道路に進入してゆく場合にはカーブ中の最大横加速度が高くなる傾向がある。この傾向を前提として、カーブ後の進入先の道路幅(対面通行困難な道路、センタラインのない対面通行可能な道路、センタラインのある道路等の道路幅)に応じて、横加速度や減速度の補正値を学習する。
【0101】
ECU33は、CPUや各種メモリ等からなり、自動運転制御装置3を統括制御する。ECU33では、メモリに格納されている各アプリケーションプログラムをロードし、CPUで実行することによって先行車両学習部33a、自車両速度パターン生成部33b、先行車両速度パターン予測部33c、干渉時対応部33d、自車両速度パターン再生成部33e、加減速制御部33fが構成される。なお、第3の実施の形態では、先行車両学習部33aが特許請求の範囲に記載する学習手段に相当し、先行車両速度パターン予測部33cが特許請求の範囲に記載する周辺車両挙動予測手段に相当し、自車両速度パターン再生成部33eが特許請求の範囲に記載する走行計画生成手段に相当する。
【0102】
なお、自車両速度パターン生成部33b、干渉時対応部33d、自車両速度パターン再生成部33e、加減速制御部33fについては、第1の実施の形態に係る自車両速度パターン生成部31b、干渉時対応部31d、自車両速度パターン再生成部31e、加減速制御部31fと同様の処理を行うので、説明を省略する。
【0103】
先行車両学習部33aについて説明する。先行車両学習部33aでは、第1の実施の形態に係る先行車両学習部31aと同様の処理を行う上に、以下の処理も行う。先行車両学習部33aでは、先行車両のカーブでの横加速度補正値と減速度補正値を学習し、カーブ後の道路種別がある場合にはその道路種別に応じて横加速度補正値と減速度補正値を学習し、さらに、カーブ後の道路幅に応じた道路幅横加速度補正係数と道路幅減速度係数を学習する。ここでは、この補正値や補正係数の学習についてのみ説明する。
【0104】
具体的には、先行車両学習部33aでは、今回のカーブで得られた最大横加速度をこれまでの全カーブから得られた平均最大横加速度で除算し、今回のカーブでの横加速度補正値を算出する。また、先行車両学習部33aでは、今回のカーブで得られた減速度をこれまでの全カーブから得られた平均減速度で除算し、今回のカーブでの減速度補正値を算出する。そして、先行車両学習部33aでは、ナビ情報から得られる今回のカーブの現在位置とともに算出した横加速度補正値と減速度補正値をハードディスク等の記憶装置に保存する。ここでは、個々のカーブでの最大横加速度や減速度を全カーブでの平均値でそれぞれ除算することにより、個々のカーブでの特徴を示す補正値を求めている。
【0105】
先行車両学習部33aでは、カーブ後の道路種別(対面通行困難な道路、センタラインのない対面通行可能な道路、センタラインのある道路等)が取得できるか否かを判定する。カーブ後の道路種別を取得する方法としては、ナビゲーションシステム12の地図データベースから取得したり、路車間通信を利用してインフラ情報で取得したりする。カーブ後の道路種別を取得できる場合、先行車両学習部33aでは、その道路種別についてのこれまでの各カーブでの横加速度補正値を集計して平均値を算出するとともに、これまでのカーブでの減速度補正値を集計して平均値を算出する。そして、先行車両学習部33aでは、その道路種別に対応付けて算出した横加速度補正値(平均値)と減速度補正値(平均値)を記憶装置に保存する。ここでは、カーブ後の道路種別毎の補正値を求めている。
【0106】
先行車両学習部33aでは、カーブ後の道路の道路幅を取得する。この道路幅の取得方法としては、ナビゲーションシステム12の地図データベースから取得したり、自車両の前側方センサ等によって計測したりする。先行車両学習部33aでは、その取得した道路幅を今回のカーブで得られた横加速度補正値で除算して道路幅横加速度係数を算出するとともに、その道路幅を今回のカーブで得られた減速度補正値で除算して道路幅減速度係数を算出する。そして、先行車両学習部33aでは、先行車両がこれまでに走行した全てのカーブでの道路幅横加速度係数を集計して平均値を算出するとともに、先行車両がこれまでに走行した全てのカーブでの道路幅減速度係数を集計して平均値を算出する。そして、先行車両学習部33aでは、その算出した道路幅横加速度係数(平均値)と道路幅減速度係数(平均値)を記憶装置に保存する。ここでは、カーブ後の道路幅とカーブでの横加速度や減速度とは比例関係にあると考え、その比例係数を補正係数として求めている。
【0107】
先行車両速度パターン予測部33cについて説明する。先行車両速度パターン予測部33cでは、先行車両がカーブに進入した場合、今回のカーブに対する補正値、カーブ後の道路種別に対する補正値あるいはカーブ後の道路幅に対する補正係数のいずれかを用いて学習によって取得した先行車両の平均最大横加速度と平均減速度を補正し、その補正した先行車両の平均最大横加速度と平均減速度を条件として先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測生成する。
【0108】
具体的には、先行車両速度パターン予測部33cでは、第1の実施の形態に係る先行車両速度パターン予測部31cと同様の処理により、先行車両がカーブに進入と判定すると、ナビ情報からそのカーブの現在位置を取得し、その取得した現在位置と記憶装置に保存されている各カーブの現在位置とを比較することにより今回のカーブについての横加速度補正値と減速度補正値が記憶装置に保存されているか否かを判定する。今回のカーブについての横加速度補正値と減速度補正値が保存されている場合、先行車両速度パターン予測部33cでは、その横加速度補正値と減速度補正値を記憶装置から読み出す。そして、先行車両速度パターン予測部33cでは、平均最大横加速度にその横加速度補正値を積算し、平均最大横加速度を補正するとともに、平均減速度にその減速度補正値を積算し、平均減速度を補正する。
【0109】
今回のカーブについての横加速度補正値と減速度補正値が保存されていない場合(つまり、先行車両が初めて走行するカーブの場合)、先行車両速度パターン予測部33cでは、カーブ後に進入する道路の道路種別を取得できるか否かを判定する。カーブ後の道路種別を取得できる場合、先行車両速度パターン予測部33cでは、その同じ道路種別に対応付けられた横加速度補正値と減速度補正値を記憶装置から読み出す。そして、先行車両速度パターン予測部33cでは、平均最大横加速度にその横加速度補正値を積算し、平均最大横加速度を補正するとともに、平均減速度にその減速度補正値を積算し、平均減速度を補正する。
【0110】
カーブ後の道路種別を取得できない場合、先行車両速度パターン予測部33cでは、カーブ後に進入する道路の道路幅を取得する。また、先行車両速度パターン予測部33cでは、道路幅横加速度係数と道路幅減速度係数を記憶装置から読み出す。そして、先行車両速度パターン予測部33cでは、取得した道路幅にその道路幅横加速度係数を積算し、横加速度補正値を算出するとともに、取得した道路幅に道路幅減速度係数を積算し、減速度補正値を算出する。さらに、先行車両速度パターン予測部33cでは、平均最大横加速度にその算出した横加速度補正値を積算し、平均最大横加速度を補正するとともに、平均減速度にその算出した減速度補正値を積算し、平均減速度を補正する。
【0111】
そして、先行車両速度パターン予測部32cでは、その補正した平均最大加速度と平均減速度を条件として、第1の実施の形態に係る先行車両速度パターン予測部31cと同様の処理により、先行車両のカーブ走行時の速度パターンを生成する。
【0112】
図1を参照して、自動運転制御装置3における動作について説明する。特に、ECU33における処理については図8〜図11に沿って説明する。図8は、ECU33における処理(学習前半)の流れを示すフローチャートである。図9は、ECU33における処理(学習後半)の流れを示すフローチャートである。図10は、ECU33における処理(自車両速度パターン生成、先行車両速度パターン生成)の流れを示すフローチャートである。図11は、ECU33における処理(干渉時対応、自車両速度パターン再生成、加減速制御)の流れを示すフローチャートである。
【0113】
車輪速センサ10、ミリ波レーダ11、ナビゲーションシステム12については、第1の実施の形態に係る自動運転制御装置1で説明した同様の動作を行う。
【0114】
ECU33では以下の処理を一定時間毎に繰り返し行う。まず、ECU33では、S80〜S91の処理については、第1の実施の形態に係るECU31におけるS10〜S21と同様の処理を行い、カーブでの先行車両の最大横加速度と減速度を学習する。
【0115】
ECU33では、今回のカーブでの最大横加速度を平均最大横加速度で除算し、今回のカーブでの先行車両の横加速度補正値を算出する(S92)。また、ECU33では、今回のカーブでの減速度を平均減速度で除算し、今回のカーブでの先行車両の減速度補正値を算出する(S93)。そして、ECU33では、今回のカーブの現在位置と対応付けて横加速度補正値と減速度補正値を記憶装置に保存する(S94)。
【0116】
ECU33では、カーブ後の道路種別を取得できるか否かを判定する(S95)。カーブ後の道路種別を取得できる場合、ECU33では、その道路種別についてのこれまでの各カーブでの横加速度補正値の平均値を算出するとともに、これまでの各カーブでの減速度補正値の平均値を算出する(S96)。そして、ECU33では、その道路種別と対応付けて横加速度補正値(平均値)と減速度補正値(平均値)を記憶装置に保存する(S96)。
【0117】
さらに、ECU33では、カーブ後の道路幅を取得する。そして、ECU33では、その道路幅を横加速度補正値で除算し、道路幅横加速度係数を算出するとともに、その道路幅を減速度補正値で除算し、道路幅減速度係数を算出する(S97)。さらに、ECU33では、これまでの各カーブでの道路幅横加速度係数の平均値を算出するとともに、これまでの各カーブでの道路幅減速度係数の平均値を算出する(S98)。そして、ECU33では、その道路幅横加速度係数(平均値)と道路幅減速度係数(平均値)を記憶装置に保存する(S98)。
【0118】
ECU33では、S99、S100の処理については、第1の実施の形態に係るECU31におけるS22、S23と同様の処理を行い、先行車両がカーブを1度でも走行していない場合には平均最大横加速度、平均減速度に標準値をそれぞれ設定する。また、ECU33では、S101〜S103の処理については、第1の実施の形態に係るECU31におけるS24〜S26と同様の処理を行い、自車両の速度パターンを生成する。
【0119】
ECU33では、先行車両の現在位置とカーブ半径に基づいて、先行車両がカーブに進入か否かを判定する(S104)。S104にて先行車両がカーブに進入していないと判定した場合、ECU33では、S120の処理にスキップする。
【0120】
S104にて先行車両がカーブに進入と判定した場合、ECU33では、記憶装置に今回のカーブについての横加速度補正値と減速度補正値が有るか否かを判定する(S105)。S105にて横加速度補正値と減速度補正値が有ると判定した場合、ECU33では、その横加速度補正値を用いて平均最大横加速度を補正するとともに、その減速度補正値を用いて平均減速度を補正する(S106)。
【0121】
S105にて今回のカーブの横加速度補正値と減速度補正値が無いと判定した場合、ECU33では、カーブ後の道路種別を取得できるか否かを判定する(S107)。S107にてカーブ後の道路種別を取得できると判定した場合、ECU33では、その道路種別に対応する横加速度補正値と減速度補正値を記憶装置から読み出す(S108)。そして、ECU33では、その読み出した横加速度補正値を用いて平均最大横加速度を補正するとともに、その読み出した減速度補正値を用いて平均減速度を補正する(S108)。
【0122】
S107にてカーブ後の道路種別を取得できないと判定した場合、ECU33では、カーブ後の道路幅を取得し、道路幅横加速度係数と道路幅減速度係数を記憶装置から読み出す(S109)。そして、ECU33では、その読み出した道路幅横加速度係数と今回のカーブ後の道路幅を用いて平均最大横加速度を補正するとともに、その読み出した減速度補正値と今回のカーブ後の道路幅を用いて平均減速度を補正する(S109)。
【0123】
そして、ECU33では、その補正した平均最大横加速度と平均減速度を条件として、先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測する(S110)。
【0124】
ECU33では、S111〜S120の処理については、第1の実施の形態に係るECU31におけるS29〜S38と同様の処理を行う。ECU33の各制御信号を受信すると、ブレーキアクチュエータ20、ハイブリッドシステム21では、第1の実施の形態に係る自動運転制御装置1で説明した同様の動作を行う。
【0125】
この自動運転制御装置3は、第1の実施の形態に係る自動運転制御装置1と同様の効果を有する上に、以下の効果も有している。自動運転制御装置3によれば、先行車両についてのカーブ後に進入する道路の道路形状に応じた最大横加速度や減速度の補正値を学習しておくことにより、先行車両個々(運転者個々)のカーブ後の道路形状に応じたより正確なカーブ走行特性を得ることができ、先行車両のカーブ走行時の速度パターンをより高精度に予測することができる。その結果、自車両のより最適な速度パターンを立てることができ、自車両の燃費向上等の効果を最大限に獲得できる。
【0126】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0127】
例えば、本実施の形態では自動運転のハイブリッド車両に適用したが、運転者による手動運転に対して速度パターンを用いて各種運転支援(協調制御)を行う車両にも適用可能であり、内燃機関、モータ等の単一の駆動源の車両にも適用可能である。
【0128】
また、本実施の形態では周辺車両として自車両の前方の先行車両としたが、自車両の走行に影響を与えるような他の周辺車両が存在する場合にはその周辺車両の速度パターンも予測し、その周辺車両の速度パターンも考慮するとよい。
【0129】
また、本実施の形態では燃費重視を目的とした速度パターンを生成する構成としたが、加速度パターン等の他の走行計画を生成してもよいし、低燃費以外の目的の速度パターンとしてもよい。
【0130】
また、本実施の形態では1つのECUで構成する形態としたが、複数のECUで構成してもよい。
【0131】
また、本実施の形態では先行車両を検出するためにミリ波レーダを適用したが、レーザレーダなどの他のレーダを適用してもよいし、あるいは、ステレオカメラなどの他の手段を適用してもよい。また、車車間通信を利用して、先行車両の情報を取得してもよい。
【0132】
また、本実施の形態では先行車両のカーブ走行時の最大横加速度と減速度を学習し、その学習したカーブ走行時の最大横加速度と減速度を条件として先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測する構成としたが、最大横加速度と減速度のうちの一方だけを学習し、その学習した一方のパラメータを条件として先行車両のカーブ走行時の速度ターンを予測してもよい。
【0133】
また、本実施の形態では先行車両についての最大横加速度と減速度を学習する構成としたが、学習を行うことなく、先行車両の最大横加速度と減速度として標準値等を用いてもよい。
【0134】
また、本実施の形態では自車両の速度パターンを再生成するときに最大横加速度を下げる構成としたが、上限速度を下げる等の他の条件を変更するようにしてもよい。
【0135】
また、本実施の形態では自車両の速度パターンを先行車両の速度パターンを考慮して再生成されるまで、自車両の速度パターンと先行車両の速度パターンとが干渉する場合にはそれに対応する車両制御を行う構成としたが、ECUの計算能力が高く、瞬時に自車両の速度パターンを再生成できる場合には、このような干渉時に対応する制御は必要ない。
【0136】
また、第3の実施の形態ではカーブ後の進入先の道路形状(道路幅等)に応じた最大横加速度と減速度の補正値を学習し、その学習した最大横加速度と減速度の補正値に基づいてカーブ後の進入先の道路形状に応じて最大横加速度と減速度を補正する構成としたが、カーブ自体の道路形状に基づいて学習するようにしてもよいし、学習時に補正値を求めて、最大横加速度と減速度を補正するのではなく、学習時に道路形状に応じた最大横加速度と減速度を学習してもよい。
【0137】
また、第2の実施の形態における横ジャークについての学習と第3の実施の形態におけるカーブ後の進入先の道路形状に応じた最大横加速度と減速度の補正値についての学習を共に行い、その学習した横ジャーク及びカーブ後の進入先の道路形状に応じた最大横加速度と減速度の補正値を共に考慮して先行車両の速度パターンを生成する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0138】
1,2,3…自動運転制御装置、10…車輪速センサ、11…ミリ波レーダ、12…ナビゲーションシステム、20…ブレーキアクチュエータ、21…ハイブリッドシステム、22…エンジン、23…モータ、24…バッテリ、31,32,33…ECU、31a,32a,33a…先行車両学習部、31b,32b,33b…自車両速度パターン生成部、31c,32c,33c…先行車両速度パターン予測部、31d,32d,33d…干渉時対応部、31e,32e,33e…自車両速度パターン再生成部、31f,32f,3f…加減速制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の走行計画を生成し、当該走行計画に基づいて車両制御を行う車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の速度パターン等の走行計画を立て、その走行計画に従って自動運転制御を行ったりあるいは走行計画に基づいて運転者の運転操作と協調して各種運転支援制御を行う技術が開発されている。特許文献1には、自車両の走行計画を生成し、その走行計画に従って自動運転制御を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−129804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自車両の前方に先行車両が存在する場合、その先行車両の走行状況によっては、自車両が走行計画に従って走行できない場合がある。特に、カーブ(交差点での右左折も含む)の場合、先行車両によって減速の度合いや位置等が異なるので、自車両の走行計画に大きな影響を与え、走行計画には無い減速等を行う必要が発生する。最初に立てた走行計画通りに走行できない場合、走行計画を立てる際の低燃費等の条件を達成することができなくなる。
【0005】
そこで、本発明は、周辺車両のカーブ時の挙動に対応した走行計画を立てる車両制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両制御装置は、自車両の走行計画を生成し、当該走行計画に基づいて車両制御を行う車両制御装置であって、周辺車両のカーブ走行時の挙動を周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度に基づいて予測する周辺車両挙動予測手段と、周辺車両挙動予測手段で予測した周辺車両のカーブ走行時の挙動に基づいて自車両の走行計画を生成する走行計画生成手段を備えることを特徴とする。
【0007】
この車両制御装置では、周辺車両挙動予測手段により、周辺車両のカーブ走行時の挙動を、周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度に基づいて予測する。カーブ走行時の最大横加速度や減速度は、車両のカーブ走行特性を示すので、車両がカーブを走行するときの状況(減速状況等)を予測するためには最適なパラメータである。そして、車両制御装置では、走行計画生成手段により、その予測した周辺車両のカーブ走行時の挙動に基づいて自車両の走行計画を生成する。このように、車両制御装置は、カーブ走行時の周辺車両の挙動を最大横加速度や減速度に基づいて予測し、その周辺車両の挙動に応じて自車両の走行計画を生成することにより、カーブで周辺車両の挙動が変化する場合でもそれに対応した走行計画を立てることができる。例えば、カーブ進入に向けて先行車両が減速するような場合でも、この走行計画に従って車両制御することにより、先行車両の減速前に速度を低下させておくことができ、走行計画に無い減速等を行う必要がなく、走行計画通りに走行できる。その結果、走行計画を立てる際の低燃費等の条件を達成することができる。
【0008】
なお、周辺車両のカーブ走行には、周辺車両がカーブに進入するときの減速区間も含む。カーブには、交差点等での右左折も含む。
【0009】
本発明の上記車両制御装置では、周辺車両がカーブを走行したときに、周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度を学習する学習手段を備え、周辺車両挙動予測手段は、学習手段で学習した最大横加速度又は/及び減速度に基づいて周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測すると好適である。
【0010】
この車両制御装置では、学習手段により、周辺車両がカーブを走行する毎に、周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度を学習しておく。そして、車両制御装置では、周辺車両挙動予測手段により、その学習によって取得した最大横加速度又は/及び減速度に基づいて周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測する。このように、車両制御装置では、周辺車両についてのカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度を学習しておくことにより、周辺車両個々(ひいては、運転者個々)のカーブ走行特性を得ることができ、周辺車両のカーブ走行時の挙動を高精度に予測することができる。
【0011】
本発明の上記車両制御装置では、学習手段は、周辺車両がカーブを走行したときに、周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度の時間微分値を学習し、周辺車両挙動予測手段は、学習手段で学習した最大横加速度の時間微分値に基づいて周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測すると好適である。
【0012】
この車両制御装置では、学習手段により、周辺車両がカーブを走行する毎に、周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度の時間微分値(横ジャーク)も学習しておく。そして、車両制御装置では、周辺車両挙動予測手段により、その学習によって取得した最大横加速度又は/及び減速度に加えて最大横加速度の時間微分値も加味して周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測する。このように、車両制御装置では、周辺車両についてのカーブ走行時の最大横加速度の時間微分値を学習しておくことにより、周辺車両個々のより正確なカーブ走行特性を得ることができ、周辺車両のカーブ走行時の挙動をより高精度に予測することができる。なお、最大横加速度の時間微分値によって、カーブをスムーズに曲がるという特性が得られる。
【0013】
本発明の上記車両制御装置では、学習手段は、周辺車両がカーブを走行したときに、当該カーブの道路形状情報に基づいて周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度を学習し、周辺車両挙動予測手段は、走行するカーブの道路形状に応じて、学習手段で学習したカーブの道路形状毎の最大横加速度又は/及び減速度に基づいて周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測すると好適である。
【0014】
この車両制御装置では、学習手段により、周辺車両がカーブを走行する毎に、そのカーブの道路形状情報に基づいて、周辺車両のカーブの道路形状毎の最大横加速度又は/及び減速度を学習しておく。そして、車両制御装置では、周辺車両挙動予測手段により、走行するカーブの道路形状に応じて、その学習によって取得したカーブの道路形状毎の最大横加速度又は/及び減速度に基づいて周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測する。このように、車両制御装置では、周辺車両についてのカーブの道路形状に応じた最大横加速度や減速度を学習しておくことにより、周辺車両個々のカーブの道路形状に応じたより正確なカーブ走行特性を得ることができ、周辺車両のカーブ走行時の挙動をより高精度に予測することができる。なお、カーブの道路形状には、カーブ自体の道路形状の他に、カーブ後の道路の道路形状も含むものとする。道路形状には、道路線形情報の他に、道路幅、車線数、対向車線の有無等の情報も含む。
【0015】
本発明の上記車両制御装置では、自車両の走行計画は、自車両の走行速度についての走行計画であり、周辺車両のカーブ走行時の挙動は、周辺車両のカーブ走行時の走行速度の変化である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、カーブ走行時の周辺車両の挙動を最大横加速度や減速度に基づいて予測し、その周辺車両の挙動に応じて自車両の走行計画を生成することにより、カーブで周辺車両の挙動が変化する場合でもそれに対応した走行計画を立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態に係る自動運転制御装置の構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係るECUにおける処理(学習)の流れを示すフローチャートである。
【図3】第1の実施の形態に係るECUにおける処理(自車両速度パターン生成、先行車両速度パターン生成)の流れを示すフローチャートである。
【図4】第1の実施の形態に係るECUにおける処理(干渉時対応、自車両速度パターン再生成、加減速制御)の流れを示すフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態に係るECUにおける処理(学習)の流れを示すフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態に係るECUにおける処理(自車両速度パターン生成、先行車両速度パターン生成)の流れを示すフローチャートである。
【図7】第2の実施の形態に係るECUにおける処理(干渉時対応、自車両速度パターン再生成、加減速制御)の流れを示すフローチャートである。
【図8】第3の実施の形態に係るECUにおける処理(学習前半)の流れを示すフローチャートである。
【図9】第3の実施の形態に係るECUにおける処理(学習後半)の流れを示すフローチャートである。
【図10】第3の実施の形態に係るECUにおける処理(自車両速度パターン生成、先行車両速度パターン生成)の流れを示すフローチャートである。
【図11】第3の実施の形態に係るECUにおける処理(干渉時対応、自車両速度パターン再生成、加減速制御)の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る車両制御装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
本実施の形態では、本発明に係る車両制御装置を、自動運転を行うハイブリッド車両に搭載される自動運転制御装置に適用する。本実施の形態に係る自動運転制御装置は、少なくとも自車両の速度を制御するために、自車両の走行計画として速度パターンを生成し、その速度パターンに従って走行するように加減速制御を行う。なお、本実施の形態では、自動運転制御における加減速制御についてのみ説明する。また、本実施の形態では、走行計画として、速度についてのみ説明するが、走行計画としては他にも位置(x座標,y座標)、加速度、ヨー角、ヨーレート等の車両の走行に必要な多数のパラメータがある。
【0020】
本実施の形態には、3つの形態があり、第1の実施の形態が先行車両のカーブ走行時の最大横加速度と減速度を学習して先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測する形態であり、第2の実施の形態では先行車両のカーブ走行時の最大横加速度と減速度の他に横ジャークも学習して先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測する形態であり、第3の実施の形態が先行車両のカーブ走行時の最大横加速度と減速度を学習するとともに道路形状に応じて最大横加速度と減速度の補正値を学習して先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測する形態である。なお、カーブ走行時には、カーブに進入する前の減速区間の走行時も含むものとする。
【0021】
本実施の形態に係る自動運転制御装置では、燃費を重視した走行条件を設定した場合の速度パターンを生成する。この燃費重視(低燃費)の速度パターンとしては、加速として高効率加速度と減速としてフリーランを組み合わせた速度パターンである。フリーランは、エンジン及びモータを停止して走行抵抗のみで減速する走行する。
【0022】
図1を参照して、第1の実施の形態に係る自動運転制御装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係る自動運転制御装置の構成図である。
【0023】
自動運転制御装置1は、低燃費を目的とする自車両の速度パターンを生成(再生成)する。特に、自動運転制御装置1は、自車両の前方に先行車両が存在する場合でも速度パターンに従って走行できるように、先行車両のカーブ走行時の最大横加速度と減速度を学習しておいて先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測し、その予測した先行車両のカーブ走行時の速度パターンに応じて速度パターン(特に、カーブ走行時)を再生成する。
【0024】
自動運転制御装置1は、車輪速センサ10、ミリ波レーダ11、ブレーキアクチュエータ20、ハイブリッドシステム21(エンジン22、モータ23、バッテリ24)及びECU[Electronic Control Unit]31(先行車両学習部31a、自車両速度パターン生成部31b、先行車両速度パターン予測部31c、干渉時対応部31d、自車両速度パターン再生成部31e、加減速制御部31f)を備えており、ナビゲーションシステム12からの情報を利用する。なお、第1の実施の形態では、先行車両学習部31aが特許請求の範囲に記載する学習手段に相当し、先行車両速度パターン予測部31cが特許請求の範囲に記載する周辺車両挙動予測手段に相当し、自車両速度パターン再生成部31eが特許請求の範囲に記載する走行計画生成手段に相当する。
【0025】
車輪速センサ10は、車両の4輪にそれぞれ設けられ、車輪の回転速度(車輪の回転に応じたパルス数)を検出するセンサである。車輪速センサ10では、所定時間毎の車輪の回転パルス数を検出し、その検出した車輪回転パルス数を車輪速信号としてECU31に送信する。ECU31では、各車輪の回転速度から車輪速をそれぞれ算出し、各輪の車輪速から車体速(車速)を算出する。
【0026】
ミリ波レーダ11は、ミリ波を利用して先行車両を検出するためのレーダである。ミリ波レーダ11は、自車両の前側の中央に取り付けられる。ミリ波レーダ11では、ミリ波を左右方向にスキャンしながら自車両から前方に向けて送信し、反射してきたミリ波を受信する。そして、ミリ波レーダ11では、そのミリ波の送受信情報(自車両進行方向を中心とした送信角度、送信時刻、受信角度、受信時刻、受信強度など)をレーダ信号としてECU31に送信する。
【0027】
ナビゲーションシステム12は、自車両の現在位置の検出及び目的地までの経路案内等を行うシステムである。特に、ナビゲーションシステム12では、地図データベースから現在位置周辺の道路形状情報(カーブ半径等も含む)を読み出し、その道路形状情報及び検出した現在位置等をナビ信号としてECU31に送信する。なお、ナビゲーションシステムを備えない車両の場合、道路形状情報を格納した地図データベースを備える構成としてもよいし、あるいは、路車間通信等を利用してインフラから道路形状情報を取得する構成としてもよい。また、ナビゲーションシステムを備えない車両の場合、現在位置を取得するためにGPS受信装置を備える構成としてもよい。
【0028】
ブレーキアクチュエータ20は、各車輪のホイールシリンダのブレーキ油圧を調整するアクチュエータである。ブレーキアクチュエータ20では、ECU31からのブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキ制御信号に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。
【0029】
ハイブリッドシステム21は、エンジン22及びモータ23の2つの駆動源を単独あるいは組み合わせることにより車両の加減速を制御するシステムである。ハイブリッドシステム21では、ECU31からの駆動制御信号を受信すると、駆動制御信号に応じてエンジン22及びモータ23を駆動制御、エンジン22のみを駆動制御、モータ23のみを駆動制御、モータ23を回生制御、エンジン22及びモータ23を停止制御(フリーラン制御)等する。エンジン22は、例えば、電子スロットル等のスロットルアクチュエータ(図示せず)で駆動が制御される。モータ23は、インバータ(図示せず)で駆動/回生が制御され、駆動時にはインバータを介してバッテリ24から電気エネルギが供給され、回生時には発電した電気エネルギをインバータを介してバッテリ24に充電する。ちなみに、フル回生を行う場合、バッテリ24に単位時間当たりに充電可能な最大電力によってフル回生量(ひいては、減速度)が決まり、例えば、フル回生によって−0.2G程度の減速度となる。
【0030】
ECU31は、CPU[Central Processing Unit]や各種メモリ等からなり、自動運転制御装置1を統括制御する。ECU31では、メモリに格納されている各アプリケーションプログラムをロードし、CPUで実行することによって先行車両学習部31a、自車両速度パターン生成部31b、先行車両速度パターン予測部31c、干渉時対応部31d、自車両速度パターン再生成部31e、加減速制御部31fが構成される。ECU31では、一定時間毎に、各センサ10、11及びナビゲーションシステム12からの各信号を受信する。そして、ECU31では、その受信した各信号に基づいて各部31a〜31fでの処理を行い、ブレーキアクチュエータ20やハイブリッドシステム21に各制御信号を送信する。
【0031】
先行車両学習部31aについて説明する。先行車両学習部31aでは、先行車両が存在するか否かを判定し、先行車両が存在する場合には先行車両のカーブ走行時の最大横加速度と減速度を学習する。なお、この学習では、同一の先行車両(ひいては、同一の運転者)に対して学習を行うので、先行車両が変わった場合には学習された各数値が初期化される。
【0032】
具体的には、先行車両学習部31aでは、ミリ波の送受信情報(特に、受信情報がある反射点の情報)に基づいて、自車両の前方の先行車両の有無を判定する。ここでは、ミリ波の反射点をグルーピングしており、自車両の走行車線の前方に反射点をグループピングできた場合に、先行車両を認識できたことになる。先行車両学習部31aでは、先行車両とした認識できたグループの反射点の情報を用いて、ミリ波の速度とミリ波の送信から受信までの時間に基づいて、自車両と先行車両との相対距離を算出する。また、先行車両学習部31aでは、ミリ波の反射波の周波数変化(ドップラ効果)を利用して、自車両とその先行車両との相対速度を算出する。また、先行車両学習部31aでは、ミリ波の受信角度に基づいて、自車両と先行車両との相対方向を算出する。
【0033】
先行車両が存在する場合、先行車両学習部31aでは、自車両の現在位置及び先行車両との相対距離に基づいて、先行車両の現在位置を算出する。また、先行車両学習部31aでは、ナビ情報に基づいて、その先行車両の現在位置でのカーブ半径を取得する。
【0034】
先行車両学習部31aでは、先行車両の現在位置とカーブ半径に基づいて、先行車両がカーブに進入するか否かを判定する。このカーブの進入判定では、先行車両のカーブの進入前の減速区間も含めるために、先行車両の所定距離前方(例えば、300m前方)にカーブ(例えば、カーブ半径が1000m以下)が存在する位置からカーブに進入と判定する。先行車両学習部31aでは、先行車両がカーブに進入中、先行車両の減速度を算出する。先行車両の減速度は、一定時間毎に自車両の速度及び先行車両との相対速度に基づいて先行車両の速度を算出し、その先行車両の速度の時間変化から減速度を算出する。
【0035】
先行車両学習部31aでは、先行車両の現在位置でのカーブ半径に基づいて、先行車両が直線路(例えば、カーブ半径が1000m以上)を走行中か否かを判定する。先行車両が直線路を走行中でない場合(すなわち、直線路と直線路との間のカーブ走行中の場合)、先行車両学習部31aでは、自車両の速度及び先行車両との相対速度に基づいて先行車両の速度を算出する。また、先行車両学習部31aでは、その先行車両の速度とカーブ半径に基づいて、先行車両の横加速度を算出する。横加速度Ay、速度V、カーブ半径Rとすると、Ay=V2/Rである。
【0036】
先行車両学習部31aでは、今回のカーブ内において、算出した先行車両の横加速度の中から最大の横加速度を抽出し、その抽出した横加速度を今回のカーブでの先行車両の最大横加速度とする。また、先行車両学習部31aでは、今回のカーブ内において算出した先行車両の減速度の中で一定値以内(例えば、−0.05G以下)の減速度の区間において減速度の平均値を算出し、その算出した平均値を今回のカーブでの先行車両の減速度とする。なお、この先行車両の減速度は、今回のカーブ内において算出した先行車両の減速度の中の最大の減速度でもよい。
【0037】
先行車両学習部31aでは、現在の先行車両が現在までに走行した各カーブでの最大減速度を集計して平均値を算出し、その算出した平均値を先行車両の平均最大加速度とする。また、先行車両学習部31aでは、現在の先行車両が現在までに走行した各カーブでの減速度を集計して平均値を算出し、その算出した平均値を先行車両の平均減速度とする。この平均最大加速度と平均減速度が、先行車両のカーブでの走行特性を示すパラメータであり、先行車両のカーブ走行時の速度を高精度に予測するためのパラメータとなる。
【0038】
自車両速度パターン生成部31bについて説明する。自車両速度パターン生成部31bでは、先行車両を考慮しないで、自車両の基準となる速度パターンを生成する。ちなみに、直線路の走行時や先行車両が存在しないカーブ路の走行時には、この基準となる速度パターンがそのまま用いられる。
【0039】
具体的には、自車両速度パターン生成部31bでは、ナビ情報の道路形状情報を用いて、上限速度や最大横加速度等を条件として、高効率加速度とフリーランからなる燃費重視の速度パターンを生成する。上限速度としては、例えば、法定速度とする。最高横加速度としては、例えば、自車両の運転者が希望する最大横加速度、あるいは、上記したような先行車両に対する学習手法を自車両に適用して学習によって得られる最大横加速度とする。速度パターンは、一定時間毎の速度のパターン、あるいは、一定の微小間隔毎の速度のパターンである。
【0040】
速度パターンの生成方法の一例を説明する。走行予定経路における一定の微小間隔に分割された領域において、その領域でのカーブ半径と路面の摩擦係数を用いて車両の最高速度を算出する。カーブ半径R、路面摩擦係数μ、最高速度Vとすると、V2=μ×g×Rである。gは、重力加速度である。そして、その各領域の最高速度からなる定常円最高速度パターンを生成する。定常円最高速度パターンを生成すると、走行開始点から走行終了点に向けて隣接する領域間毎に、加速度を算出し、その算出した加速度が上限加速度を超える場合には速度が高い走行終了点側の速度を上限加速度以下となるように低速側に修正する。上限加速度は、車両の走行性能から求められる値と摩擦円からはみ出る値のうちの低い値に設定される。また、走行終了点から走行開始点に向けて隣接する領域間毎に、減速度を算出し、その算出した減速度が上限減速度を超える場合には速度が高い走行開始点側の速度を上限減速度以下となるように低速側に修正する。上限減速度は、車両の走行性能から求められる値と摩擦円からはみ出る値のうちの低い値に設定される。そして、その加減速制限条件を満たす各領域の速度からなる速度パターンが生成される。
【0041】
速度パターンの生成方法の他の例としては、最適化手法がある。最適化手法としては、例えば、「藤岡健彦、江守大昌:自動車技術会論文集 Vol.24,No.3,July 1993,p106−111 ”最短時間コーナリング法に関する理論的研究”」に開示されているSCGRA[Sequential Conjugate Gradient Restoration Algorithm]を用いる。SCGRAでは、拘束条件を満たすまで最急降下法に基づいて収束演算し、評価関数の評価値が最小となるまで共役勾配法に基づいて収束演算する。拘束条件は、車両の走行において絶対に守らなければならない条件である。評価関数は、車両の走行において重視する条件(燃費等)を評価するための関数である。
【0042】
自車両速度パターン生成部31bでは、生成した自車両の速度パターンの平均速度が先行車両の平均速度に対して高いか否かを判定する。先行車両の平均速度としては、一定時間毎に算出していた先行車両の速度を所定区間で平均化した速度である。自車両の速度パターンの平均速度が先行車両の平均速度に対して高い場合、追突の危険性を回避するために、自車両速度パターン生成部31bでは、上限速度の条件を下げて(例えば、−2km/h)、速度パターンを再生成する。
【0043】
先行車両速度パターン予測部31cについて説明する。先行車両速度パターン予測部31cでは、先行車両がカーブに進入した場合、学習によって取得した先行車両の平均最大横加速度と平均減速度を条件として、先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測生成する。
【0044】
具体的には、先行車両速度パターン予測部31cでは、先行車両がカーブを一度でも走行済みか否かを判定する。先行車両が一度もカーブを走行していない場合、その先行車両に対する平均最大横加速度と平均減速度が学習によって求められていないので、先行車両速度パターン予測部31cでは、平均最大横加速度と平均減速度として標準値をそれぞれ設定する。平均最大横加速度の標準値としては、例えば、0.3Gとする。平均減速度の標準値としては、例えば、−0.2Gとする。この各標準値は、実車実験等によって予め設定される。
【0045】
先行車両速度パターン予測部31cでは、先行車両学習部31aと同様の方法で、先行車両がカーブに進入か否かを判定する。先行車両がカーブに進入した場合、先行車両速度パターン予測部31cでは、ナビ情報の道路形状情報を用いて、平均最大横加速度と平均減速度を条件として先行車両のカーブ走行時の速度パターンを生成する。速度パターンの生成方法としては、上記した自車両速度パターン生成部31bで説明した同様の方法を用いる。例えば、最初に説明した生成方法の例の場合、速度パターンの走行開始点を先行車両がカーブに進入を開始した地点とし、走行終了点をカーブの終了地点とし、速度の初期値を先行車両がカーブに進入を開始した地点での速度とし、最大横加速度を平均最大横加速度とし、上限減速度を平均減速度とし、上限加速度を平均減速度と同様の方法で求めた値あるいは干渉判定において重要でないので標準値(例えば、0.15G)とし、これらのパラメータを用いて速度パターンを生成する。
【0046】
干渉時対応部31dについて説明する。干渉時対応部31dでは、先行車両がカーブに進入した場合、先行車両の速度パターンに応じて自車両の速度パターンを再生成するまでに(再生成に計算時間を必要とするため)、先行車両の速度パターンに自車両の速度パターンが干渉する(十分な車間時間を確保できない、衝突の危険性があるなど)と予測される場合、干渉を回避するための車両制御を行う。ここでは、自車両の速度パターンを再生成している間に先行車両との関係で事態の悪化(例えば、衝突の危険性の増大、油圧ブレーキの作動(100%の損失で燃費の悪化))が発生することを最小限にするための車両制御を行う。
【0047】
具体的には、干渉時対応部31dでは、速度パターンの各時刻毎(あるいは、各微小領域毎)に、自車両の速度パターンの各速度と先行車両の速度パターンの各速度に基づいて、自車両と先行車両との車間時間を算出する。そして、干渉時対応部31dでは、その算出した各時刻の車間時間の中から最小の車間時間を抽出する。
【0048】
干渉時対応部31dでは、最小車間時間に基づいて、先行車両の速度パターンと自車両の速度パターンとが干渉するか否かを判定する。この干渉判定では、最小車間時間が車間時間設定値(例えば、1秒)以下か否かで判定する。車間時間設定値は、実車実験等で予め設定される。
【0049】
先行車両の速度パターンと自車両の速度パターンとが干渉する場合、干渉時対応部31dでは、自車両が加速度状態か否かを判定する。自車両が加速状態の場合、干渉時対応部31dでは、加速せずに、暫定のフリーラン走行とするために、フリーランを示す駆動制御信号をハイブリッドシステム21に送信する。さらに、干渉時対応部31dでは、最小車間時間が十分小さく(例えば、最小車間時間が0より小さい)、自車両と先行車両が衝突の危険性があるか否かを判定する。衝突の危険性がある場合、干渉時対応部31dでは、油圧ブレーキを用いずに、暫定のフル回生(回生ブレーキ作動)とするために、フル回生を示す駆動制御信号をハイブリッドシステム21に送信する。
【0050】
自車両速度パターン再生成部31eについて説明する。自車両速度パターン再生成部31eでは、先行車両がカーブに進入した場合、予測した先行車両の速度パターンに応じて自車両の速度パターンを再生成する。ここでは、燃費重視の速度パターンにおいて減速はフレーラン(もしくは、燃料カット)なので、それをさらに効率的に実施するために、自車両の速度パターンが先行車両の速度パターンに干渉することを回避する方法として減速区間の開始点を早める(つまり、フリーランを開始する地点を自車両速度パターン生成部31bで生成した速度パターンでの地点よりも前にする)。
【0051】
具体的には、自車両速度パターン再生成部31eでは、干渉時対応部31dと同様の方法により、最小車間時間に基づいて、先行車両の速度パターンと自車両の速度パターンとが干渉するか否かを判定する。先行車両の速度パターンと自車両の速度パターンとの干渉がなくなるまで、自車両速度パターン再生成部31eでは、速度パターンを生成する際の条件の最高横加速度を徐々に下げて(例えば、0.05G程度下げる)、その下げた最高加速度を条件として速度パターンを生成する。このように最高横加速度を下げることによって、速度パターンにおいて自車両の減速開始点を早めることができ、先行車両がカーブの進入前の減速に対応して事前に減速することができる。
【0052】
加減速制御部31fについて説明する。加減速制御部31fでは、生成した自車両の速度パターンに応じた加減速制御を行う。具体的には、加減速制御部31fでは、自車両の速度パターンに従って走行するように、自車両の現在速度と速度パターンの対応する時刻での速度との偏差に基づいて駆動制御信号(目標加速度、フリーラン、目標回生量等)又はブレーキ制御信号(目標減速度)を生成し、その各信号をブレーキアクチュエータ20、ハイブリッドシステム21にそれぞれ送信する。
【0053】
図1を参照して、自動運転制御装置1における動作について説明する。特に、ECU31における処理については図2〜図4に沿って説明する。図2は、ECU31における処理(学習)の流れを示すフローチャートである。図3は、ECU31における処理(自車両速度パターン生成、先行車両速度パターン生成)の流れを示すフローチャートである。図4は、ECU31における処理(干渉時対応、自車両速度パターン再生成、加減速制御)の流れを示すフローチャートである。
【0054】
車輪速センサ10では、一定時間毎に、車輪の回転パルス数を検出し、車輪速信号をECU31に送信する。ECU31では、車輪速信号を受信し、各車輪の回転速度から自車両の速度を算出する。ミリ波レーダ11では、一定時間毎に、ミリ波を左右方向にスキャンしながら自車両から前方に向けて送信し、反射してきたミリ波を受信し、レーダ信号をECU31に送信する。ECU31では、レーダ信号を受信し、ミリ波の送受信情報(送信角度、送信時刻、受信角度、受信時刻、受信強度など)を取得する。ナビゲーションシステム12では、一定時間毎に、現在位置検出等を行い、地図データベースから現在位置周辺の道路形状情報を読み出し、その道路形状情報や現在位置情報をナビ信号としてECU31に送信する。ECU31では、ナビ信号を受信し、道路形状情報や現在位置情報を取得する。
【0055】
ECU31では以下の処理を一定時間毎に繰り返し行う。まず、ECU31では、ミリ波の送受信情報に基づいて、自車両の前方に先行車両が存在するか否かを判定する(S10)。S10にて先行車両が存在しないと判定した場合、ECU31では、S22の処理にスキップする。
【0056】
S10にて先行車両が存在すると判定した場合、ECU31では、ミリ波の送受信情報に基づいて、自車両と先行車両との相対距離等を算出する。そして、ECU31では、ナビ情報から得られる自車両の現在位置及び先行車両との相対距離に基づいて、先行車両の現在位置を算出する(S11)。また、ECU31では、ナビ情報から先行車両の現在位置でのカーブ半径を取得する(S12)。
【0057】
ECU31では、先行車両の現在位置とカーブ半径に基づいて、先行車両がカーブに進入か否かを判定する(S13)。S13にて先行車両がカーブに進入と判定した場合、ECU31では、先行車両の減速度を算出する(S14)。
【0058】
ECU31では、先行車両のカーブ半径に基づいて、先行車両が直進か否かを判定する(S15)。S15にて先行車両が直進と判定した場合、ECU31では、S22の処理にスキップする。
【0059】
S15にて先行車両が直進でない(すなわち、カーブ)と判定した場合、ECU31では、自車両の速度及び先行車両との相対速度に基づいて先行車両の速度を算出する(S16)。また、ECU31では、先行車両の速度及びカーブ半径に基づいて、先行車両の横加速度を算出する(S17)。
【0060】
そして、ECU31では、今回のカーブ内での各時刻の最大横加速度の中から先行車両の最大横加速度を抽出する(S18)。また、ECU31では、今回のカーブ内での各時刻での減速度を平均化した減速度を算出する(S19)。
【0061】
さらに、ECU31では、先行車両がこれまでに走行した各カーブでの最大横加速度を平均化した平均最大横加速度を算出する(S20)。また、ECU31では、先行車両がこれまでに走行した各カーブでの減速度を平均化した平均減速度を算出する(S21)。
【0062】
ECU31では、現在の先行車両がカーブを1度でも走行済みか否かを判定する(S22)。S22にて現在の先行車両がカーブを1度も走行していないと判定した場合、ECU31では、その先行車両の平均最大横加速度と平均減速度として標準値をそれぞれ設定する(S23)。
【0063】
ECU31では、道路形状情報を用いて、上限速度や最大横加速度等を条件として、高効率加速度とフリーランからなる燃費重視の速度パターンを生成する(S24)。そして、ECU31では、この自車両の速度パターンの平均速度が先行車両の平均速度に対して高いか否かを判定する(S25)。S25にて自車両の速度パターンの平均速度が先行車両の平均速度に対して高いと判定した場合、ECU31では、速度パターンの生成条件の上限速度を下げて(S26)、再度、速度パターンを生成する(S24)。
【0064】
S25にて自車両の速度パターンの平均速度が先行車両の平均速度に対して高くないと判定した場合、ECU31では、先行車両の現在位置とカーブ半径に基づいて、先行車両がカーブに進入か否かを判定する(S27)。S27にて先行車両がカーブに進入していないと判定した場合、ECU31では、S38の処理にスキップする。
【0065】
S27にて先行車両がカーブに進入と判定した場合、ECU31では、道路形状情報を用いて、その先行車両の平均最大横加速度と平均減速度を条件として、先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測する(S28)。
【0066】
ECU31では、各時刻毎に自車両の速度パターンの各速度と先行車両の速度パターンの各速度に基づいて自車両と先行車両との車間時間をそれぞれ算出し、その中から最小車間時間を抽出する(S29)。そして、ECU31では、その最小車間時間に基づいて、自車両の速度パターンと先行車両の速度パターンとが干渉するか否かを判定する(S30)。S30にて干渉しないと判定した場合、ECU31では、S38の処理にスキップする。
【0067】
S30にて干渉すると判定した場合、ECU31では、自車両が加速状態か否かを判定する(S31)。S31にて自車両が加速状態と判定した場合、ECU31では、暫定のフリーランを行うために、フリーランを示す駆動制御信号をハイブリッドシステム21に送信する(S32)。この駆動制御信号を受信すると、ハイブリッドシステム21では、エンジン22及びモータ23を停止する。さらに、ECU31では、自車両と先行車両が衝突の危険性が有るか否かを判定する(S33)。S33にて衝突の危険性が有ると判定した場合、ECU31では、暫定のフル回生を行うために、フル回生を示す駆動制御信号をハイブリッドシステム21に送信する(S34)。この駆動制御信号を受信すると、ハイブリッドシステム21では、バッテリ24の充電能力に応じてモータ23のフル回生を行い(回生ブレーキ作動)、その発電した電力をバッテリ24に充電する。
【0068】
ECU31、自車両の速度パターンと先行車両の速度パターンとの干渉を回避するために、速度パターンの生成条件の最高横加速度を下げ(S35)、その最高横加速度を条件として自車両の速度パターンを再生成する(S36)。そして、ECU32では、その再生成した自車両の速度パターンを用いて上記と同様の方法によって最小車間時間を算出し、その最小車間時間に基づいて自車両の速度パターンと先行車両の速度パターンとが干渉するか否かを判定する(S37)。S37にて干渉すると判定した場合、ECU31では、速度パターンの生成条件の最高横加速度を更に下げ(S35)、その最高横加速度を条件として自車両の再生成する(S36)。
【0069】
S37にて干渉しないと判定した場合、ECU31では、自車両の速度パターンに従って走行するように、自車両の現在速度と速度パターンの対応する時刻での速度との偏差に基づいてブレーキ制御信号又は駆動制御信号を生成し、その各制御信号をブレーキアクチュエータ20又はハイブリッドシステム21に送信する。ブレーキアクチュエータ20では、ブレーキ制御信号を受信した場合、そのブレーキ制御信号に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。また、ハイブリッドシステム21では、駆動制御信号を受信した場合、その駆動制御信号に基づいてエンジン22の駆動又は及びモータの駆動/回生を制御する。
【0070】
この自動運転制御装置1によれば、カーブ走行時の先行車両の速度パターンを最大横加速度及び減速度に基づいて予測し、その先行車両の速度パターンに応じて自車両の速度パターンを再生成することにより、カーブで先行車両の速度が変化する場合でもそれに対応した自車両の最適な速度パターンを立てることができる。例えば、カーブ進入に向けて先行車両が減速するような場合でも、この再生成した自車両の速度パターンに従って加減速制御することにより、先行車両の減速前に速度を低下させておくことができ、速度パターンに無い無駄な減速を行う必要がなく、速度パターン通りに走行できる。その結果、速度パターンを立てる際の燃費重視の条件を達成することができる。
【0071】
また、自動運転制御装置1によれば、先行車両についてのカーブ走行時の最大横加速度及び減速度を学習しておくことにより、先行車両個々(運転者個々)のカーブ走行特性を得ることができ、先行車両のカーブ走行時の速度パターンを高精度に予測することができる。
【0072】
また、自動運転制御装置1によれば、自車両の速度パターンが再生成されるまで、自車両と先行車両の速度パターンが干渉する場合にはそれに対応する車両制御を行うので、自車両と先行車両との干渉を回避でき、安全性を確保できる。さらに、フリーランや回生フレー未によって、油圧ブレーキを必要とするような大きな減速度を未然に防止するので、燃費悪化を最小限に抑えることができる。
【0073】
また、自動運転制御装置1によれば、自車両と先行車両の速度パターンが干渉する場合には最大横加速度を下げて自車両の速度パターンを再生成することにより、速度パターン全体の速度が下がるようなことなく、自車両の減速開始点を早めることによって先行車両のカーブでの減速に対応することができる。
【0074】
図1を参照して、第2の実施の形態に係る自動運転制御装置2について説明する。自動運転制御装置2は、第1の実施の形態に係る自動運転制御装置1と比較すると、先行車両のカーブでのより高精度な速度パターンを得るために、最高横加速度の微分値(横ジャーク)も学習し、その横ジャークも考慮して先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測する点が異なる。自動運転制御装置2は、自動運転制御装置1の構成に対して、ECU32における処理だけが異なるので、ECU32についてのみ説明する。
【0075】
なお、横ジャークに関しては、同じ個人であれば、多くの状況においてばらつきが小さいことが判っている。これはおそらく、横加速度(=走行速度)がその道路の状況に依存するのに対し、横ジャークは運転者の転舵速度に依存するためではないかと考えられる。
【0076】
ECU32は、CPUや各種メモリ等からなり、自動運転制御装置2を統括制御する。ECU32では、メモリに格納されている各アプリケーションプログラムをロードし、CPUで実行することによって先行車両学習部32a、自車両速度パターン生成部32b、先行車両速度パターン予測部32c、干渉時対応部32d、自車両速度パターン再生成部32e、加減速制御部32fが構成される。なお、第2の実施の形態では、先行車両学習部32aが特許請求の範囲に記載する学習手段に相当し、先行車両速度パターン予測部32cが特許請求の範囲に記載する周辺車両挙動予測手段に相当し、自車両速度パターン再生成部32eが特許請求の範囲に記載する走行計画生成手段に相当する。
【0077】
なお、自車両速度パターン生成部32b、干渉時対応部32d、自車両速度パターン再生成部32e、加減速制御部32fについては、第1の実施の形態に係る自車両速度パターン生成部31b、干渉時対応部31d、自車両速度パターン再生成部31e、加減速制御部31fと同様の処理を行うので、説明を省略する。
【0078】
先行車両学習部32aについて説明する。先行車両学習部32aでは、第1の実施の形態に係る先行車両学習部31aと同様の処理を行う上に、以下の処理も行う。先行車両学習部32aでは、先行車両のカーブ走行時の最大横加速度と減速度に加えて横ジャークを学習する。ここでは、横ジャークの学習処理についてのみ説明する。
【0079】
具体的には、先行車両学習部32aでは、現時刻の横加速度Ay(n)を算出すると、現時刻の横加速度Ay(n)とその前時刻の横加速度Ay(n−1)との差分の絶対値を算出し、その値を横ジャークJy(n)とする。そして、先行車両学習部32aでは、今回のカーブ内において算出した先行車両の横ジャークの中で一定値以上(例えば、0.1m/s3以上)の横ジャークの区間において横ジャークの平均値を算出し、その算出した平均値を今回のカーブでの先行車両の横ジャークとする。さらに、先行車両学習部32aでは、現在の先行車両が現在までに走行した各カーブでの横ジャークを集計して平均値を算出し、その算出した平均値を先行車両の平均横ジャークJaveとする。
【0080】
先行車両速度パターン予測部32cについて説明する。先行車両速度パターン予測部32cでは、先行車両がカーブに進入した場合、学習によって取得した先行車両の平均最大横加速度と平均減速度を条件として先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測生成し、その予測した速度パターンを学習によって取得した先行車両の平均横ジャークJaveに基づいて修正する。
【0081】
具体的には、先行車両速度パターン予測部32cでは、先行車両がカーブを一度でも走行済みか否かを判定する。先行車両が一度もカーブを走行していない場合、その先行車両に対する平均最大横加速度、平均減速度及び平均横ジャークが学習によって求められていないので、先行車両速度パターン予測部32cでは、平均最大横加速度、平均減速度及び平均横ジャークとして標準値をそれぞれ設定する。平均横ジャークの標準値としては、例えば、1m/s3とする。そして、先行車両速度パターン予測部32cでは、第1の実施の形態に係る先行車両速度パターン予測部31cと同様の処理により、平均最大横加速度と平均減速度を条件として先行車両のカーブ走行時の速度パターンを生成する。
【0082】
先行車両のカーブ走行時の速度パターンを生成すると、先行車両速度パターン予測部32cでは、その先行車両の速度パターンの全ての時刻について、各時刻の速度V(n)を用いて各時刻の横加速度Ay(n)をそれぞれ算出する。そして、先行車両速度パターン予測部32cでは、その各時刻の横加速度Ay(n)とその前時刻の横加速度Ay(n−1)との差分の絶対値をそれぞれ算出し、先行車両の速度パターンの全ての時刻についての横ジャークJy(n)を算出する。
【0083】
先行車両速度パターン予測部32cでは、算出した全ての時刻の横ジャークJy(n)が学習によって求めた平均横ジャークJaveよりも小さいか否かを判定する。全ての時刻の横ジャークJy(n)が平均横ジャークJaveよりも小さくない場合、その全ての時刻の横ジャークJy(n)が学習によって求めた平均横ジャークJave内に収まるように、Ay(n)とAy(n−1)のうちの大きいほうの値(V(n)とV(n−1)のうちの大きいほうの値)を下げて先行車両の速度パターンを修正する。
【0084】
具体的には、先行車両速度パターン予測部32cでは、先行車両の速度パターンにおける各時刻nについて加速中(V(n−1)=<V(n))か否かを判定する。時刻nで加速中の場合、先行車両速度パターン予測部32cでは、その時刻nの横加速度Ay(n)=その前時刻n−1の横加速度Ay(n−1)+平均横ジャークJaveを算出する。さらに、先行車両速度パターン予測部32cでは、その算出した時刻nの横加速度Ay(n)を用いて、時刻nの速度V(n)=sqrt(時刻nの横加速度Ay(n)×カーブ半径R)を算出する。一方、減速中の場合、先行車両速度パターン予測部32cでは、時刻nの前時刻n−1の横加速度Ay(n−1)=時刻nの横加速度Ay(n)+平均横ジャークJaveを算出する。さらに、先行車両速度パターン予測部32cでは、その算出した前時刻n−1の横加速度Ay(n−1)を用いて、前時刻n−1の速度V(n−1)=sqrt(前時刻n−1の横加速度Ay(n−1)×カーブ半径R)を算出する。この処理を、先行車両の速度パターンの全ての時刻nに対して行う。
【0085】
さらに、先行車両速度パターン予測部32cでは、上記の処理で各時刻の速度V(n)を修正した結果、速度パターンの加減速制限条件を満たさなくなっている可能性があるので、加減速制限条件を満たすように先行車両の速度パターンの全ての時刻nの速度V(n)を再修正する。例えば、この加減速制限条件による再修正については、上記の速度パターンの生成方法の一例として説明した定常円最高速度パターンに対して上限加速度及び上限減速度を超える速度を修正する処理によって再修正を行う。
【0086】
図1を参照して、自動運転制御装置2における動作について説明する。特に、ECU32における処理については図5〜図7に沿って説明する。図5は、ECU32における処理(学習)の流れを示すフローチャートである。図6は、ECU32における処理(自車両速度パターン生成、先行車両速度パターン生成)の流れを示すフローチャートである。図7は、ECU32における処理(干渉時対応、自車両速度パターン再生成、加減速制御)の流れを示すフローチャートである。
【0087】
車輪速センサ10、ミリ波レーダ11、ナビゲーションシステム12については、第1の実施の形態に係る自動運転制御装置1で説明した同様の動作を行う。
【0088】
ECU32では以下の処理を一定時間毎に繰り返し行う。まず、ECU32では、S40〜S47の処理については、第1の実施の形態に係るECU31におけるS10〜S17と同様の処理を行う。先行車両の横加速度Ay(n)を算出すると、ECU32では、その時刻nの横加速度Ay(n)とその前時刻n−1の横加速度Ay(n−1)を用いて、横ジャークJy(n)を算出する(S48)。
【0089】
そして、ECU32では、第1の実施の形態に係るECU31におけるS18、S19と同様の処理により、今回のカーブ内での先行車両の最大横加速度を抽出するとともに(S49)、今回のカーブ内での減速度を平均化した減速度を算出する(S50)。また、ECU32では、今回のカーブ内での横ジャークを平均化した横ジャークを算出する(S51)。
【0090】
さらに、ECU32では、第1の実施の形態に係るECU31におけるS20、S21と同様の処理により、これまでの各カーブでの先行車両の平均最大横加速度を算出するとともに(S52)、これまでの各カーブでの先行車両の平均減速度を算出する(S53)。また、ECU32では、先行車両がこれまでに走行した各カーブでの先行車両の横ジャークを平均化した平均横ジャークJaveを算出する(S54)。
【0091】
ECU32では、現在の先行車両がカーブを1度でも走行済みか否かを判定する(S55)。S55にて現在の先行車両がカーブを1度も走行していないと判定した場合、ECU31では、その先行車両の平均最大横加速度、平均減速度、平均横ジャークに標準値をそれぞれ設定する(S56)。
【0092】
ECU32では、S57〜S59の処理については、第1の実施の形態に係るECU31におけるS24〜S26と同様の処理を行い、自車両の速度パターンを生成する。
【0093】
ECU32では、先行車両の現在位置とカーブ半径に基づいて、先行車両がカーブに進入か否かを判定する(S60)。S60にて先行車両がカーブに進入していないと判定した場合、ECU32では、S79の処理にスキップする。
【0094】
S60にて先行車両がカーブに進入と判定した場合、ECU32では、道路形状情報を用いて、その先行車両の平均最大横加速度や平均減速度を条件として、先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測する(S61)。
【0095】
ECU32では、その先行車両の速度パターンの各時刻の速度V(n)を用いて、先行車両の各時刻の横加速度Ay(n)をそれぞれ算出する(S62)。そして、ECU32では、その算出した各時刻の横加速度Ay(n)とその前時刻の横加速度Ay(n−1)を用いて、先行車両の各時刻の横ジャークJy(n)をそれぞれ算出する(S63)。全ての時刻の横ジャークJy(n)を算出すると、ECU32では、全ての時刻の横ジャークJy(n)が平均横ジャークJaveよりも小さいか否かを判定する(S64)。S64にて全ての時刻の横ジャークJy(n)が平均横ジャークJaveよりも小さいと判定した場合、ECU32では、S70の処理にスキップする。
【0096】
S64にて全ての時刻の横ジャークJy(n)が平均横ジャークJaveよりも小さくないと判定した場合、ECU32では、先行車両の速度パターンにおける時刻nが加速中か否かを判定する(S65)。S65にて時刻nが加速中と判定した場合、ECU32では、平均横ジャークJaveを用いて時刻nの横ジャークJ(n)を小さくし、その小さくした横ジャークJ(n)を用いて時刻nの速度V(n)を小さくする(S66)。一方、S65にて時刻nが加速中でないと判定した場合、ECU32では、平均横ジャークJaveを用いて前時刻n−1の横ジャークJ(n−1)を小さくし、その小さくした横ジャークJ(n−1)を用いて前時刻n−1の速度V(n−1)を小さくする(S67)。そして、ECU32では、全ての時刻nについての処理が完了したか否かを判定する(S68)。S68にて全ての時刻についての処理が完了していないと判定した場合、ECU32では、S65の処理に戻って、次時刻についての処理を行う。一方、S68にて全ての時刻についての処理が完了したと判定した場合、ECU32では、修正した全ての時刻の速度V(n)が加速度制限条件を満たすように再修正する(S69)。ここで、先行車両の最終的な速度パターンが生成されたことになる。
【0097】
ECU32では、S70〜S79の処理については、第1の実施の形態に係るECU31におけるS29〜S38と同様の処理を行う。ECU32の各制御信号を受信すると、ブレーキアクチュエータ20、ハイブリッドシステム21では、第1の実施の形態に係る自動運転制御装置1で説明した同様の動作を行う。
【0098】
この自動運転制御装置2は、第1の実施の形態に係る自動運転制御装置1と同様の効果を有する上に、以下の効果も有している。自動運転制御装置2によれば、先行車両についてのカーブ走行時の横ジャークも学習しておくことにより、先行車両個々(運転者個々)のより正確なカーブ走行特性を得ることができ、先行車両のカーブ走行時の速度パターンより高精度に予測することができる。その結果、自車両のより最適な速度パターンを立てることができ、自車両の燃費向上等の効果を最大限に獲得できる。例えば、先行車両がカーブで想定外の減速等を行った場合でも、それに対応して速度を低下させておくことができ、燃費悪化を回避できる。
【0099】
図1を参照して、第3の実施の形態に係る自動運転制御装置3について説明する。自動運転制御装置3は、第1の実施の形態に係る自動運転制御装置1と比較すると、先行車両のカーブでのより高精度な速度パターンを得るために、カーブ後の道路形状(特に、カーブ後に進入する道路幅)毎の横加速度及び減速度の補正値も学習し、カーブ後の道路形状に応じて横加速度と減速度を補正して先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測する点が異なる。自動運転制御装置3は、自動運転制御装置1の構成に対して、ECU33における処理だけが異なるので、ECU33についてのみ説明する。
【0100】
なお、カーブでの横加速度や減速度は、カーブ後の道路形状に依存して決定される傾向があると考えられる。例えば、交差点の右左折等において、その先の狭い道路に進入してゆく場合には速度を低めにしたいためにカーブ中の最大横加速度が低くなる傾向があり、反対に、その先の広い道路に進入してゆく場合にはカーブ中の最大横加速度が高くなる傾向がある。この傾向を前提として、カーブ後の進入先の道路幅(対面通行困難な道路、センタラインのない対面通行可能な道路、センタラインのある道路等の道路幅)に応じて、横加速度や減速度の補正値を学習する。
【0101】
ECU33は、CPUや各種メモリ等からなり、自動運転制御装置3を統括制御する。ECU33では、メモリに格納されている各アプリケーションプログラムをロードし、CPUで実行することによって先行車両学習部33a、自車両速度パターン生成部33b、先行車両速度パターン予測部33c、干渉時対応部33d、自車両速度パターン再生成部33e、加減速制御部33fが構成される。なお、第3の実施の形態では、先行車両学習部33aが特許請求の範囲に記載する学習手段に相当し、先行車両速度パターン予測部33cが特許請求の範囲に記載する周辺車両挙動予測手段に相当し、自車両速度パターン再生成部33eが特許請求の範囲に記載する走行計画生成手段に相当する。
【0102】
なお、自車両速度パターン生成部33b、干渉時対応部33d、自車両速度パターン再生成部33e、加減速制御部33fについては、第1の実施の形態に係る自車両速度パターン生成部31b、干渉時対応部31d、自車両速度パターン再生成部31e、加減速制御部31fと同様の処理を行うので、説明を省略する。
【0103】
先行車両学習部33aについて説明する。先行車両学習部33aでは、第1の実施の形態に係る先行車両学習部31aと同様の処理を行う上に、以下の処理も行う。先行車両学習部33aでは、先行車両のカーブでの横加速度補正値と減速度補正値を学習し、カーブ後の道路種別がある場合にはその道路種別に応じて横加速度補正値と減速度補正値を学習し、さらに、カーブ後の道路幅に応じた道路幅横加速度補正係数と道路幅減速度係数を学習する。ここでは、この補正値や補正係数の学習についてのみ説明する。
【0104】
具体的には、先行車両学習部33aでは、今回のカーブで得られた最大横加速度をこれまでの全カーブから得られた平均最大横加速度で除算し、今回のカーブでの横加速度補正値を算出する。また、先行車両学習部33aでは、今回のカーブで得られた減速度をこれまでの全カーブから得られた平均減速度で除算し、今回のカーブでの減速度補正値を算出する。そして、先行車両学習部33aでは、ナビ情報から得られる今回のカーブの現在位置とともに算出した横加速度補正値と減速度補正値をハードディスク等の記憶装置に保存する。ここでは、個々のカーブでの最大横加速度や減速度を全カーブでの平均値でそれぞれ除算することにより、個々のカーブでの特徴を示す補正値を求めている。
【0105】
先行車両学習部33aでは、カーブ後の道路種別(対面通行困難な道路、センタラインのない対面通行可能な道路、センタラインのある道路等)が取得できるか否かを判定する。カーブ後の道路種別を取得する方法としては、ナビゲーションシステム12の地図データベースから取得したり、路車間通信を利用してインフラ情報で取得したりする。カーブ後の道路種別を取得できる場合、先行車両学習部33aでは、その道路種別についてのこれまでの各カーブでの横加速度補正値を集計して平均値を算出するとともに、これまでのカーブでの減速度補正値を集計して平均値を算出する。そして、先行車両学習部33aでは、その道路種別に対応付けて算出した横加速度補正値(平均値)と減速度補正値(平均値)を記憶装置に保存する。ここでは、カーブ後の道路種別毎の補正値を求めている。
【0106】
先行車両学習部33aでは、カーブ後の道路の道路幅を取得する。この道路幅の取得方法としては、ナビゲーションシステム12の地図データベースから取得したり、自車両の前側方センサ等によって計測したりする。先行車両学習部33aでは、その取得した道路幅を今回のカーブで得られた横加速度補正値で除算して道路幅横加速度係数を算出するとともに、その道路幅を今回のカーブで得られた減速度補正値で除算して道路幅減速度係数を算出する。そして、先行車両学習部33aでは、先行車両がこれまでに走行した全てのカーブでの道路幅横加速度係数を集計して平均値を算出するとともに、先行車両がこれまでに走行した全てのカーブでの道路幅減速度係数を集計して平均値を算出する。そして、先行車両学習部33aでは、その算出した道路幅横加速度係数(平均値)と道路幅減速度係数(平均値)を記憶装置に保存する。ここでは、カーブ後の道路幅とカーブでの横加速度や減速度とは比例関係にあると考え、その比例係数を補正係数として求めている。
【0107】
先行車両速度パターン予測部33cについて説明する。先行車両速度パターン予測部33cでは、先行車両がカーブに進入した場合、今回のカーブに対する補正値、カーブ後の道路種別に対する補正値あるいはカーブ後の道路幅に対する補正係数のいずれかを用いて学習によって取得した先行車両の平均最大横加速度と平均減速度を補正し、その補正した先行車両の平均最大横加速度と平均減速度を条件として先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測生成する。
【0108】
具体的には、先行車両速度パターン予測部33cでは、第1の実施の形態に係る先行車両速度パターン予測部31cと同様の処理により、先行車両がカーブに進入と判定すると、ナビ情報からそのカーブの現在位置を取得し、その取得した現在位置と記憶装置に保存されている各カーブの現在位置とを比較することにより今回のカーブについての横加速度補正値と減速度補正値が記憶装置に保存されているか否かを判定する。今回のカーブについての横加速度補正値と減速度補正値が保存されている場合、先行車両速度パターン予測部33cでは、その横加速度補正値と減速度補正値を記憶装置から読み出す。そして、先行車両速度パターン予測部33cでは、平均最大横加速度にその横加速度補正値を積算し、平均最大横加速度を補正するとともに、平均減速度にその減速度補正値を積算し、平均減速度を補正する。
【0109】
今回のカーブについての横加速度補正値と減速度補正値が保存されていない場合(つまり、先行車両が初めて走行するカーブの場合)、先行車両速度パターン予測部33cでは、カーブ後に進入する道路の道路種別を取得できるか否かを判定する。カーブ後の道路種別を取得できる場合、先行車両速度パターン予測部33cでは、その同じ道路種別に対応付けられた横加速度補正値と減速度補正値を記憶装置から読み出す。そして、先行車両速度パターン予測部33cでは、平均最大横加速度にその横加速度補正値を積算し、平均最大横加速度を補正するとともに、平均減速度にその減速度補正値を積算し、平均減速度を補正する。
【0110】
カーブ後の道路種別を取得できない場合、先行車両速度パターン予測部33cでは、カーブ後に進入する道路の道路幅を取得する。また、先行車両速度パターン予測部33cでは、道路幅横加速度係数と道路幅減速度係数を記憶装置から読み出す。そして、先行車両速度パターン予測部33cでは、取得した道路幅にその道路幅横加速度係数を積算し、横加速度補正値を算出するとともに、取得した道路幅に道路幅減速度係数を積算し、減速度補正値を算出する。さらに、先行車両速度パターン予測部33cでは、平均最大横加速度にその算出した横加速度補正値を積算し、平均最大横加速度を補正するとともに、平均減速度にその算出した減速度補正値を積算し、平均減速度を補正する。
【0111】
そして、先行車両速度パターン予測部32cでは、その補正した平均最大加速度と平均減速度を条件として、第1の実施の形態に係る先行車両速度パターン予測部31cと同様の処理により、先行車両のカーブ走行時の速度パターンを生成する。
【0112】
図1を参照して、自動運転制御装置3における動作について説明する。特に、ECU33における処理については図8〜図11に沿って説明する。図8は、ECU33における処理(学習前半)の流れを示すフローチャートである。図9は、ECU33における処理(学習後半)の流れを示すフローチャートである。図10は、ECU33における処理(自車両速度パターン生成、先行車両速度パターン生成)の流れを示すフローチャートである。図11は、ECU33における処理(干渉時対応、自車両速度パターン再生成、加減速制御)の流れを示すフローチャートである。
【0113】
車輪速センサ10、ミリ波レーダ11、ナビゲーションシステム12については、第1の実施の形態に係る自動運転制御装置1で説明した同様の動作を行う。
【0114】
ECU33では以下の処理を一定時間毎に繰り返し行う。まず、ECU33では、S80〜S91の処理については、第1の実施の形態に係るECU31におけるS10〜S21と同様の処理を行い、カーブでの先行車両の最大横加速度と減速度を学習する。
【0115】
ECU33では、今回のカーブでの最大横加速度を平均最大横加速度で除算し、今回のカーブでの先行車両の横加速度補正値を算出する(S92)。また、ECU33では、今回のカーブでの減速度を平均減速度で除算し、今回のカーブでの先行車両の減速度補正値を算出する(S93)。そして、ECU33では、今回のカーブの現在位置と対応付けて横加速度補正値と減速度補正値を記憶装置に保存する(S94)。
【0116】
ECU33では、カーブ後の道路種別を取得できるか否かを判定する(S95)。カーブ後の道路種別を取得できる場合、ECU33では、その道路種別についてのこれまでの各カーブでの横加速度補正値の平均値を算出するとともに、これまでの各カーブでの減速度補正値の平均値を算出する(S96)。そして、ECU33では、その道路種別と対応付けて横加速度補正値(平均値)と減速度補正値(平均値)を記憶装置に保存する(S96)。
【0117】
さらに、ECU33では、カーブ後の道路幅を取得する。そして、ECU33では、その道路幅を横加速度補正値で除算し、道路幅横加速度係数を算出するとともに、その道路幅を減速度補正値で除算し、道路幅減速度係数を算出する(S97)。さらに、ECU33では、これまでの各カーブでの道路幅横加速度係数の平均値を算出するとともに、これまでの各カーブでの道路幅減速度係数の平均値を算出する(S98)。そして、ECU33では、その道路幅横加速度係数(平均値)と道路幅減速度係数(平均値)を記憶装置に保存する(S98)。
【0118】
ECU33では、S99、S100の処理については、第1の実施の形態に係るECU31におけるS22、S23と同様の処理を行い、先行車両がカーブを1度でも走行していない場合には平均最大横加速度、平均減速度に標準値をそれぞれ設定する。また、ECU33では、S101〜S103の処理については、第1の実施の形態に係るECU31におけるS24〜S26と同様の処理を行い、自車両の速度パターンを生成する。
【0119】
ECU33では、先行車両の現在位置とカーブ半径に基づいて、先行車両がカーブに進入か否かを判定する(S104)。S104にて先行車両がカーブに進入していないと判定した場合、ECU33では、S120の処理にスキップする。
【0120】
S104にて先行車両がカーブに進入と判定した場合、ECU33では、記憶装置に今回のカーブについての横加速度補正値と減速度補正値が有るか否かを判定する(S105)。S105にて横加速度補正値と減速度補正値が有ると判定した場合、ECU33では、その横加速度補正値を用いて平均最大横加速度を補正するとともに、その減速度補正値を用いて平均減速度を補正する(S106)。
【0121】
S105にて今回のカーブの横加速度補正値と減速度補正値が無いと判定した場合、ECU33では、カーブ後の道路種別を取得できるか否かを判定する(S107)。S107にてカーブ後の道路種別を取得できると判定した場合、ECU33では、その道路種別に対応する横加速度補正値と減速度補正値を記憶装置から読み出す(S108)。そして、ECU33では、その読み出した横加速度補正値を用いて平均最大横加速度を補正するとともに、その読み出した減速度補正値を用いて平均減速度を補正する(S108)。
【0122】
S107にてカーブ後の道路種別を取得できないと判定した場合、ECU33では、カーブ後の道路幅を取得し、道路幅横加速度係数と道路幅減速度係数を記憶装置から読み出す(S109)。そして、ECU33では、その読み出した道路幅横加速度係数と今回のカーブ後の道路幅を用いて平均最大横加速度を補正するとともに、その読み出した減速度補正値と今回のカーブ後の道路幅を用いて平均減速度を補正する(S109)。
【0123】
そして、ECU33では、その補正した平均最大横加速度と平均減速度を条件として、先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測する(S110)。
【0124】
ECU33では、S111〜S120の処理については、第1の実施の形態に係るECU31におけるS29〜S38と同様の処理を行う。ECU33の各制御信号を受信すると、ブレーキアクチュエータ20、ハイブリッドシステム21では、第1の実施の形態に係る自動運転制御装置1で説明した同様の動作を行う。
【0125】
この自動運転制御装置3は、第1の実施の形態に係る自動運転制御装置1と同様の効果を有する上に、以下の効果も有している。自動運転制御装置3によれば、先行車両についてのカーブ後に進入する道路の道路形状に応じた最大横加速度や減速度の補正値を学習しておくことにより、先行車両個々(運転者個々)のカーブ後の道路形状に応じたより正確なカーブ走行特性を得ることができ、先行車両のカーブ走行時の速度パターンをより高精度に予測することができる。その結果、自車両のより最適な速度パターンを立てることができ、自車両の燃費向上等の効果を最大限に獲得できる。
【0126】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0127】
例えば、本実施の形態では自動運転のハイブリッド車両に適用したが、運転者による手動運転に対して速度パターンを用いて各種運転支援(協調制御)を行う車両にも適用可能であり、内燃機関、モータ等の単一の駆動源の車両にも適用可能である。
【0128】
また、本実施の形態では周辺車両として自車両の前方の先行車両としたが、自車両の走行に影響を与えるような他の周辺車両が存在する場合にはその周辺車両の速度パターンも予測し、その周辺車両の速度パターンも考慮するとよい。
【0129】
また、本実施の形態では燃費重視を目的とした速度パターンを生成する構成としたが、加速度パターン等の他の走行計画を生成してもよいし、低燃費以外の目的の速度パターンとしてもよい。
【0130】
また、本実施の形態では1つのECUで構成する形態としたが、複数のECUで構成してもよい。
【0131】
また、本実施の形態では先行車両を検出するためにミリ波レーダを適用したが、レーザレーダなどの他のレーダを適用してもよいし、あるいは、ステレオカメラなどの他の手段を適用してもよい。また、車車間通信を利用して、先行車両の情報を取得してもよい。
【0132】
また、本実施の形態では先行車両のカーブ走行時の最大横加速度と減速度を学習し、その学習したカーブ走行時の最大横加速度と減速度を条件として先行車両のカーブ走行時の速度パターンを予測する構成としたが、最大横加速度と減速度のうちの一方だけを学習し、その学習した一方のパラメータを条件として先行車両のカーブ走行時の速度ターンを予測してもよい。
【0133】
また、本実施の形態では先行車両についての最大横加速度と減速度を学習する構成としたが、学習を行うことなく、先行車両の最大横加速度と減速度として標準値等を用いてもよい。
【0134】
また、本実施の形態では自車両の速度パターンを再生成するときに最大横加速度を下げる構成としたが、上限速度を下げる等の他の条件を変更するようにしてもよい。
【0135】
また、本実施の形態では自車両の速度パターンを先行車両の速度パターンを考慮して再生成されるまで、自車両の速度パターンと先行車両の速度パターンとが干渉する場合にはそれに対応する車両制御を行う構成としたが、ECUの計算能力が高く、瞬時に自車両の速度パターンを再生成できる場合には、このような干渉時に対応する制御は必要ない。
【0136】
また、第3の実施の形態ではカーブ後の進入先の道路形状(道路幅等)に応じた最大横加速度と減速度の補正値を学習し、その学習した最大横加速度と減速度の補正値に基づいてカーブ後の進入先の道路形状に応じて最大横加速度と減速度を補正する構成としたが、カーブ自体の道路形状に基づいて学習するようにしてもよいし、学習時に補正値を求めて、最大横加速度と減速度を補正するのではなく、学習時に道路形状に応じた最大横加速度と減速度を学習してもよい。
【0137】
また、第2の実施の形態における横ジャークについての学習と第3の実施の形態におけるカーブ後の進入先の道路形状に応じた最大横加速度と減速度の補正値についての学習を共に行い、その学習した横ジャーク及びカーブ後の進入先の道路形状に応じた最大横加速度と減速度の補正値を共に考慮して先行車両の速度パターンを生成する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0138】
1,2,3…自動運転制御装置、10…車輪速センサ、11…ミリ波レーダ、12…ナビゲーションシステム、20…ブレーキアクチュエータ、21…ハイブリッドシステム、22…エンジン、23…モータ、24…バッテリ、31,32,33…ECU、31a,32a,33a…先行車両学習部、31b,32b,33b…自車両速度パターン生成部、31c,32c,33c…先行車両速度パターン予測部、31d,32d,33d…干渉時対応部、31e,32e,33e…自車両速度パターン再生成部、31f,32f,3f…加減速制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行計画を生成し、当該走行計画に基づいて車両制御を行う車両制御装置であって、
周辺車両のカーブ走行時の挙動を周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度に基づいて予測する周辺車両挙動予測手段と、
前記周辺車両挙動予測手段で予測した周辺車両のカーブ走行時の挙動に基づいて自車両の走行計画を生成する走行計画生成手段
を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
周辺車両がカーブを走行したときに、周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度を学習する学習手段を備え、
前記周辺車両挙動予測手段は、前記学習手段で学習した最大横加速度又は/及び減速度に基づいて周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記学習手段は、周辺車両がカーブを走行したときに、周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度の時間微分値を学習し、
前記周辺車両挙動予測手段は、前記学習手段で学習した最大横加速度の時間微分値に基づいて周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測することを特徴とする請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記学習手段は、周辺車両がカーブを走行したときに、当該カーブの道路形状情報に基づいて周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度を学習し、
前記周辺車両挙動予測手段は、走行するカーブの道路形状に応じて、前記学習手段で学習したカーブの道路形状毎の最大横加速度又は/及び減速度に基づいて周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
自車両の走行計画は、自車両の走行速度についての走行計画であり、
周辺車両のカーブ走行時の挙動は、周辺車両のカーブ走行時の走行速度の変化であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項1】
自車両の走行計画を生成し、当該走行計画に基づいて車両制御を行う車両制御装置であって、
周辺車両のカーブ走行時の挙動を周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度に基づいて予測する周辺車両挙動予測手段と、
前記周辺車両挙動予測手段で予測した周辺車両のカーブ走行時の挙動に基づいて自車両の走行計画を生成する走行計画生成手段
を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
周辺車両がカーブを走行したときに、周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度を学習する学習手段を備え、
前記周辺車両挙動予測手段は、前記学習手段で学習した最大横加速度又は/及び減速度に基づいて周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記学習手段は、周辺車両がカーブを走行したときに、周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度の時間微分値を学習し、
前記周辺車両挙動予測手段は、前記学習手段で学習した最大横加速度の時間微分値に基づいて周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測することを特徴とする請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記学習手段は、周辺車両がカーブを走行したときに、当該カーブの道路形状情報に基づいて周辺車両のカーブ走行時の最大横加速度又は/及び減速度を学習し、
前記周辺車両挙動予測手段は、走行するカーブの道路形状に応じて、前記学習手段で学習したカーブの道路形状毎の最大横加速度又は/及び減速度に基づいて周辺車両のカーブ走行時の挙動を予測することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
自車両の走行計画は、自車両の走行速度についての走行計画であり、
周辺車両のカーブ走行時の挙動は、周辺車両のカーブ走行時の走行速度の変化であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−143742(P2011−143742A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3956(P2010−3956)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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